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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦
Name: カバディ◆19e19691 ID:f630435c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/07 20:08
1985年1月14日 ルーマニア社会主義共和国 トゥルチャ県 ドナウデルタ防衛陣地 第3軍管区


それは濃い霧に濡れてやってきた。

『悪夢だ。』

それがもたらしたのは悲劇でしかなく、今、目の前に示されている戦況と共にその一言に集約されるだろう。

やつらは突然現れた、わけではない。


事前に兆候があったのは確かだ。

だがその兆候が数か月前から何度とあり「今回もはずれか」と誰しもが思うほど繰り返された事象であった。今回にしたっていつもの定期便と違った弱々しい兆候でしかなかったのだ。

それに合わさってルーチンワークと化した警戒体制、そして1年ほど続いた人類側に有利な戦況、後から言えば何とでもいえる様々な負の要素が重なって生まれた目の前の状況。


それがBETA約15万の侵攻。通常の1時間以上も遅い全体像把握だった。

原因としては夜中の悪天候等で早期発見が遅れたこともそうだが、珍しく敵の集団が広域に分割されていたことでその規模を見誤り、楽観が広がったこともある。

それが間違いだと気づき、全ての戦線に最上位警戒態勢を言明されたのが朝の5時ほど。

そこからは比較的速やかに軍上層部に伝達され、すぐさま戦闘態勢に入っている。

それだけを見れば東欧防衛の要、『日々精強となる』と広報から国民に伝えられる『東欧の絶対防壁』の陣容は伊達ではなかったのだ。


それは数にも現わされており、敵のBETAの最終予想数は20万に迫る(欧州全域への同時攻勢を含めれば25万とも)とも言われるのに対し、相対するこちらの戦力はドナウ防衛線だけで約140万を超え、戦闘部隊だけで数えても70万人に迫っていた。

それに伴った精強な部隊、数が充実された軍、これだけみれば人類のボロ勝ちが見えてくるはずだった。

それは敵の機動力、個体戦闘力、耐久力。それを基準に比較するのならば歩兵の数ではなく、機甲部隊の数として比較すべきとも言われているBETA。

人が通れない場所を平然と通ってくる化け物達と相対するための戦線は非常に薄く長いが、それでもこれほどの比率があれば対処できると人類は信じてきたのだ。


だが結果は眼前の通りだ。


"あれだけ"厳重な衛生管理の中で、BETA由来の菌による、バイオハザードの発生。

"あれだけ"「高地を取られるべからず」とされたのにも関わらず、東カルパティア山脈の一部をBETAに占拠されたことによる光線級の打ち降ろし。

確かに日米や、中ソなどの最前線国家が最近提唱し始めた「間引き作戦」を欧州がしていなかったために、一度にここまでの規模で侵攻してくるチャンスを与えてしまったことは確かだろう。

だが10年間続いた戦訓では敵は波状攻撃を是とし、10万を超える大群で一挙に襲ってくるとは考えられなかったのだ。

「相手は人間ではない、BETA。」

誰しもがそう思いながら、動物の生活や習性を把握するため"いつもの方法"で相手の行動を予測しようとしていたことに人類は気づいていなかったのだ。

結局のところそれの思うところ、習性など予測で立ててよいものではない。と光菱は結論付け、"最悪の予測"をいつも見積もることとなっている。まあこれは余談になるか…


話を戻すとその勘違いに加えて、ここ欧州に間引き作戦を行えるほどの余裕がなかったことも事実だった。

間引き作戦を行わなくても自ずと相手から来ることが日常であったし、その日課から外れ、時々ある「休戦月刊」は戦線の回復が急務であったからだ。

だがそれほど数多くの要素があれば戦線の崩壊は何時しか必ず起こりうるものだったのだろう。

その"何時しか"が今日であり、結果として、ドナウ川防衛線の隣に位置するカルパティア防衛線の一部、ドナウ軍集団との接合付近の一部が瓦解。

(東欧戦線はこの二つの戦線によって構築されており、一つの戦線に三個軍集団編成でBETAを押し返している)

普段であればその大規模なBETAの攻勢主力は山脈に流されて、ドナウ川の要塞陣地に引き込まれていくのだが今回だけは違い、山脈側への圧力は減る兆しを見せていなかったのも新たな要素の一つに入った。

さらに運が悪かったことに最近続く雨の影響でドナウ川が氾濫。(昨今の急激な下流の要塞化、BETAの死骸の沈殿の影響も大きい)

その影響から後方総軍から予備部隊ではその場所へ通じる大型路線のうち一つがで使用できず、迂回ルートでは時間がかかることが判明。


だからこそ、ドナウ軍集団司令部は

「これから予想されるBETAの規模であれば軍集団は十分に戦線を維持出来る」

としてその地域の友軍を救うため、何より戦線の崩壊を防ぐために、それの挽回を期するための救援部隊をドナウ軍集団から抽出することになったのだ。

貴重な戦術機甲部隊、その中の即応戦術機甲部隊、2個連隊からなる救援部隊を構築しその戦域に投入し、後方から6時間後に回ってくる戦術機甲部隊を頼りに持ちこたえる算段となった。


が、それでは終わらなかった。

それだけで終わるわけがなかった。


―――それが地下からの侵攻だ。

ドナウ川の氾濫により、各部隊との連携が取りづらくなっている状態。

そこに、軍集団奥深くにまで地中侵攻していたBETAは発見されているだけで14個もの地中道路を築き、後方へと進出したBETAによって東欧戦線全てに混乱が生じたのだ。

その混乱、最初はその規模も不明であり、最初に判明した後方駐屯地が2つ同時に奇襲を受け、壊滅。こちらとしては完全に後手に回った形になる。

原因としてもどこかの戦線が突破されたか、それとも森を浸透突破でもされたのかと原因の究明に明け暮れ、その間に全く違う場所でBETAが"食事"をしているところを複数発見され、その発見者のほとんどが食べられ、行方知らずとなっていった。

まったくと言って良いほど相手の情報、位置、規模、目的がわからない状態。

それは人類同士の戦争に置いてもとてつもないほどの不利な位置に立たされていることになる。

それはBETAであっても変わらず、その一つ一つの規模は被害から多くないと言われているが、駐屯地をまたたく間に崩壊された場所には少なくとも1000匹以上は潜伏していると見られ、3時間後には周囲に広がっていくだろうという最悪の予測が立つ。


「敵発見したところから出てきたのは全て、1000匹並の規模での物なのか?」

「それともばらばら?これから1万規模のBETAが出てくる危険性もあるのか?」

そうして後方への警戒を強めた司令部は直ちに全体像の把握を急いだ。無人偵察機、偵察装甲歩兵などを使ってだ。

だがどこに飛ばす?必ずと言ってよいほど報告されていない被害地区はあり、想定される場所の範囲は広大となる。

そして相手はどこに何匹いる?そして相手の目標は?司令部?それとも民間人?

相手の目標もその数も、その場所もわからない場合ではしらみつぶししかなく、それでは時間の浪費に繋がり、機動性に富んだBETAはさらに広がり、軍が取り逃がす個体数はかなりの数に及ぶだろう。

もし…守るべき国民が暮らす大地へと進軍していた場合どうするのか。

単純に戦線をほったらかししてお食事に洒落込むのなら、戦略的にはこちらが助かる。挟み打ちもなく、その間に全体を把握できるからだ。

だがそのまま素通りして民間密集地や、逆に戦線へ後方から司令部を襲ったらこの戦線は間も無く崩壊し、『戦線の崩壊』だけでは済まなくなる。


そうしてBETAとの第1防衛ラインであり、50キロもの厚さで何重にも重ねられた主攻線『ドナウ川防衛線』。

そこへ来襲した地下からのBETAだが、その被害個所はなんとドナウ川最終防衛線後方にも出現し始めたことにより、想像以上の分の悪い状態にまで陥ることになる。

それだけでも十分だというのに、さらにドナウデルタ軍集団正面へミンスクハイヴからの増援部隊(約5万)が加わり、後ろと前からの挟撃により軍集団はさらなるパニック状態に陥った。

それが今から1時間前の15時頃である。



「あれほど日本がッ!!光菱が気にしていた地下侵攻をなぜッ!!なぜ気付けなかったッ!!」

最近俺が目にかけている中尉、あの冷徹な吉良中尉が目の前で激昂している。

さきほどの現状説明を聞いていれば他人であれば、「しょうがない」と言えるかも知らないが、こちらが予測していたことが悪いことに当たり、その提言のほとんどが聞いてもらえなかったのならば、この怒りも当然のものとなるだろう。

俺としてはその予測…BETAの予測としてはかなり精度の高いものを立ててくれる財閥のほうも不気味だと思うのだが、他の者達、日切りなしに入ってくる情報を処理する前線戦域統制官などの情報士官でさえ、キレ気味なほどとなっている。


それほどまでに今の現状を形作るのは、持たせるのはきつかったのだ。精神的にも部隊の現状としても。

軍全体から見ても敵正面の攻勢は出血を強いりながら、なんとか持たせてはいるが、20万近くに及ぶ集団が時間を空けずに行う波状攻撃。

その中では今の現状も合わさって時間の問題であり、その窮地による圧力は日に日に高まり、軍全体としても、ここにしてもこのままでは1週間のうちに残らず、奴らの胃に飲み込まれることになるだろう。


それは現在の旅団の状態が証明しており、旅団内の8個大隊がそれぞれ、各戦域で救援任務を請け負っている。

戦域まで直行し、救援。そして帰って補給、整備。また直行。


そのペースは今現在の周辺状況に釣られた窮地により、本国で最近定められた基準を大きく上回っており、衛士もそうだが戦術機のほうが持たず、備蓄部品が底をつきそうな部品も多く出てきている。

特に負担の大きいのが整備科だろう。旅団の主軸が戦術機であり、その任務が救援任務である以上、整備に時間をかけることは戦力の低下を意味する。

そうさせないためにも、この11時間の間、休みと言うモノはありはせず、大隊予備機…と交代された中破以下の機体のべ31機の修理業務が急ピッチで進められている。

その整備課長である涅技術大尉からは
「何だネ、この廃棄品の数は?君が要らぬ要請を受けるから、このような数に上ってのではないのかネ?甘いのも大概にしてもらいたいものだヨッ!!」

というフリーザみたいな声の嘆きを頂いた。…あの人も苦手なんだよね。特に顔が。

まあそんなこんなで、一部俺に対して、だいたいが今の原因、さきほどの地下侵攻探知システムの不備に対しては日本帝国から派遣された者達の怒りは大きいものとなっているのだ。

それは日本帝国軍士官再教育プログラムでまず最初に習う、地下侵攻能力などBETAがこちらよりも優れる点について重点的に行われた成果とも言えるのだが、「やっぱり来たよ…」という感じなのだろう。



だが地下侵攻を阻止する、いや探知するシステムを構築できる余裕が東社同盟にはなかったのも事実だ。

監視設備の設置は支援と言う形で進められてきたが、その整備を完全に行う余裕などいくら日本の影響で持ち直している今の東欧にも無かった。

なにせ1000キロ以上にも続く戦線。そこに何重もの警戒線を地下に築くことなど事実上不可能だからだ。

それに加えて、想定されているだけの地下侵攻など前線の軍が重要視するわけがない。

「もしかして」を対処するよりも被害が出ている前線を強化しようとするのは、当事者としては仕方ないことなのかもしれない。なにせ地下を掘り進める速度自体がナンセンスなのだから、信じる者が少ないと言うのが現実である。


しかし実際に今起きてしまっている。

旅団の被害も依然と比べ大きいものだ。あの精鋭部隊である第1大隊(俺、移民部隊)、第2大隊(京楽大隊長)、第3大隊(浮竹大隊長)にも被害が出ているほどであり、あの京楽隊長が真面目な顔で、
「まいっちゃうね…」と言っていたほどだ。

全体で見ても度重なる出撃で300組みほどの衛士から36名の死傷者が出ており、使えなくなった戦術機は50を超え、旅団予備機は1時間前から使いきっているという本国から見れば悲惨な状況だ。

と言っても幸いと言うべきか、東社同盟のいらぬおべっかか人員の損耗は"周りから比べれば"少ない。

損耗率だけで言えば16.7%。

この数値は周りの部隊から見れば、その部隊の運用に支障が出るレベルではあるが、組織的運用には絶対的支障にはならず、撤退も許されないくらいだから、ここの戦線の悲惨さが分かるだろう。

10%超と言えば大敗も良い所なのだから。

しかし、今現在旅団の作戦遂行能力はほとんど下がっていない。



これは旅団の日本と言う後方国家の潤沢な支援のお陰でもありが、それ以前に旅団自体の準備のおかげでもある。

なにせ、それ以前からここが重要地点であることがあの光菱より言い渡され、その分戦火に塗れることになるのは誰だって気づくだろう。

なにせあの光菱の若頭がこの俺に指令を与えるのだ。だからこそ、この旅団を守るために、後述する部隊単位での実験をここに舞いこませ、ここの重要度を上昇させてその分の装備の充実と、支援体制、そしてここの基地の拡充を図ってもらったのだ。

……まあそれの折衝を担当してもらった卯ノ花中佐と伊勢中尉からは「忙しいのでお先に失礼します」とか言って最近話を聞いてくれないけどね…俺も最高指揮官として頑張ったんだけど。仕事押しつけしすぎたかな…


ま、そのおかげもあり、多く置かれていた予備機であるグリフォンへ、翔鷹2名から乗り換えが行われたこと等から、全体の損耗率は5%まで回復しているのだ。

士気低下練度低下を含めれば戦力の低下はあるにはあるが、中小破機の31機のうち15機は後1時間あれば戦場に復帰できるまでになっている。

そうなれば数だけで言えば旅団定数を満たす。これだけみれば異常といえる回復速度だろう。

その立役者である後方支援要員、その全てを取り締まる後方総括部長である卯ノ花中佐を中心に、整備科の者達が慌ただしく基地内をかけづり回っている。

この後方支援体制の充実さと、2年間以上も居続けた中隊長が多いことや、実戦経験豊富な大隊長によるヒューマンパワー。

それ以上に昨今の戦術機の性能向上のおかげもあるだろう。

なにもいきなり戦術機の性能が劇的に高まり、一機当千が可能になった、というわけではない。

旅団の中に置いて、グリフォンと言う第2世代機が主力になったことと、整備性の向上、そして先行量産型の翔鷹が大きな役割を果たしているのだ。


国連主力選定となったグリフォン。

北欧、東欧、南欧、西欧の全てにおいてある程度の数が配備され、欧州の中でもっとも互換性の高い機体として欧州総軍の中でも大きな役割を果たしているその機体。

その性能では昨年配備されたF-15と比べると、F-15Aの問題点(燃料搭載量と燃料電池出力の不足…アメリカから見て)を加味しても自体の同じ第2世代機と比べて良いものなのかと言われるほどの違いを見せているのはもう知っているだろう。

だが、欧州には国家、主義が違う国同士を跨いだ5つの大きな戦線。

その状況に置いてグリフォンと言う全ての国家が採用した戦術機があることは、応援部隊である国連や西欧の部隊の補給態勢を確立しやすい大きなメリットがあるのはあまり知られていない。

特に戦力が少ない北欧、南欧、中欧、そして主義と共に規格が違う東欧ではもっとも補給態勢がとれ、尚且つ性能と共に帰還率が高い機体とされるグリフォン。

それにプラスして欧州各国の国連軍基地に優先配備された日本製の補給・整備用レイバー84式 部隊愛称『ドラ○モン』が、各基地の整備性の向上と、急遽回される応援部隊(グリフォン)への補給整備体制確立に大きな役割を果たしていることでさらに上がっているのだ。

なにせ機動性に富んだ戦術機。応援として回されても、補給態勢はともかく、整備態勢が追いつかないことがざらにある。

特に応援部隊が配備される国連軍基地ではそれが顕著で、戦術機整備工場の面積から、外でシートをかぶさりながら整備待ちしている機体を国連軍基地で多く見てきた。

それは戦術機の全高が人より圧倒的に高いためだ。

地面から高い場所にある物はとりにくく、とるためには脚立が必要でそれでも危ない。

こんな基本のことだが整備においてはそれは費用の高騰として大きな影響与えるものだ。

だからこそ、それ専用の整備ユニットが無ければ整備兵がろくに整備できないことをどうにかしようと、日本帝国軍から光菱に依頼があり、移動型の整備用多椀レイバーを開発することが決定。

戦術機を支えつつ、部品の取り外し、取り付けを行うことをそのレイバーに任せることで整備性が格段に上がったのだ。


そして先の問題が原因で、日本帝国内において
「戦術機自体の問題だけではなく、運用上にも問題点が数多くあるのではないか?」

という考えから調査がスタートし、戦術機甲部隊の部隊運用上の諸問題(日本から見た)が数多くあることが露呈、軍内に広まり、運用の見直しを迫られることになるのはとてもおもしろい事象だ。


そうして部隊運用上にもメスを入れることが決定。解決のために新たに調査機関が設立される。

そのまず最初の事象として、戦術機甲部隊に常に付きまとう、重金属雲発生化における指揮系統の維持と、隊長が部隊を把握できない問題に対してメスが入れられた。

そうした背景を利用してここの部隊をテストベットにする代わりに、(実験場の観点、大部隊を運用しなければ表に出てこない問題から)ここの部隊の拡充を図ってもらうように光菱と軍の両方から測ってもらい、旅団全体が実験に取り込まれるようにしたのだ。

そのそもそもの問題のほうだが

「戦術機甲部隊というのが中隊単位に分割した部隊をどう動かすかを軸としている。」というものだ。

これは多少の違いはあるが各国共に基本、この考えが戦術機甲部隊の運用の基本軸であることには変わりない。

これは大隊が中隊三つを有機的にどう動かすか、という方針にも現れており、戦術機甲部隊に置いて基本単位はどうしても中隊となっている。

これだけ見ても今までであれば大きな問題には成らなかっただろう。

だが、戦術機の増産が世界中で開始され、戦術機甲部隊を大規模に運用し、打撃部隊として活用法を見出そうとしている今現在、それは大きな足枷となる。

一度に運用するべき兵器を『中隊単位』で拡散させてしまうことは、打撃力低下を生み、打撃部隊としての"切り札"足り得ないからだ。


だからこそ見直しが図られ、少なくとも大隊を戦術基本単位とし、単体の戦術機甲部隊に求められる作戦遂行能力を向上させる必要があると調査委員会は決定。

その問題の原因とされた

「いくら情報管制官が後方で待機していようと、通信が不安定になりがちな前線において、隊長が部隊の全体を把握して指揮と判断を執らなければならない現状」

を解決する必要があるとしたのだ。

それは搭乗者が一人であるのが基本である戦術機において、一人で把握できる範囲、情報というのは限界があることが原因だろう。

自分の機体操縦、部隊の把握、敵の把握、戦況の把握。こんなものをしながら指揮出来る者など稀であり、衛士特性を加味すれば天才を探した方が早い。

つまりは部隊が大きくならばなるほど隊長がやらなければならない役割が集中し、そのため機能不全に陥るというのが実験結果で明らかになったのだ。

そのため今までであればどうしても12機、一個中隊が限界であり、各小隊長が4機の面倒を見て、戦域の把握を中隊長に任す体制を軸に、中隊事に部隊を運用していたわけだ。

これは機動性がある部隊である上に、陸上で活動を主としているからで、戦車である機甲部隊でさえ、戦車大隊には本部が置かれ、大隊長が本部で指揮をとることが多い事から見ても異常性がわかるだろう。

しかし、戦術機に追随できる指揮車が無い状況では、大隊長が戦域まで出なければ通信体制が万全でない状況によって、容易に部隊の指揮能力が瓦解する。

そのための妥協として中隊を中心にし、後方管制官に情報を一括しているのであり、その体制のために大隊長・中隊長の才覚によって戦術機甲部隊の実力に大きく関わってくる現状が生まれてくるのだ。

言わば戦術機甲部隊は、その打撃力と機動力によって運用上で大きな制約をかけられており、逆に言えばその制約を解いてやればこれまで以上の活躍を果たせることを発見したと言える。

だからこそ、日本でこの分野に力を入れたのだろう。


その具象化が翔鷹の情報担当官・指揮官用機の開発だ。

翔鷹が2人搭乗が可能であることを活かしたそれは、操縦者がその機体を動かす中で、部隊長が部隊の指揮に集中することが強みであり、翔鷹を運用した試験部隊でも良く見られた運用方法だった。

これは周りの他の戦術機に比べて、武器搭載量が多いことと電子装備が充実していたこと、そして試験機ということで重宝しなければという気持ち的な問題が重なり、生まれたもので、

「部隊長が死んじゃったら困るから」ということで後ろに下がり、

「武器弾薬も多く積めるし、隊長すいませんがカバン持ち決定ね」

ということで、部隊の指揮を務める代わりに隊長が弾薬持ちにもされた部隊が、以外にも成果を残したところを試験調査団が見つけたのだ。

そうしたことで、翔鷹のC型《戦術歩行輸送機型》を改造し、2名搭乗のまま電子装備等を強化。

その結果、戦闘力において他の機体には1歩劣るが、これまででは実現できなかった部隊内での情報把握と適切な指揮が出来る翔鷹I型装備が完成することになる。


大隊長と副隊長(部隊内情報管制官)、そして中隊長機がこの機体となることで、大隊の指揮能力と集団機動力が格段に上がりつつ、指揮官機の元々の機体であるC型の凄みである跳躍ユニット4基からなる30トン以上の搭載量によって、部隊の継続戦闘能力の向上にも大きな役割を果たす効果も付随してきたのだ。


これを有効に使うため、実験と称して旅団では大隊を基軸部隊とし、これまで1個戦術機甲大隊当たり36機編成であるところを、36機+(隊長機・副隊長機・護衛補助2機)からなる大隊本部小隊を編入。

40機編成として中隊長3名からなる他の部隊を有機的使える体制を構築したのだ。

また中隊長がいる小隊には新しいポジションとして一機、部隊内データリンクを強化し、データを統括する隊長を補助する『偵察後衛』を設置。

主な任務は戦術機から発進することができる無人偵察機装備を編成に取り入れ、、中隊、大隊周辺にいる敵戦力を事前に把握しつつ、光線級の存在を最初に把握するためのポジションを作りだすことで大隊単位での作戦能力を向上させることになったのだ。


これはただ単なる情報収集能力の向上と言うだけでなく、今まで有効的には行えなかった大隊以上の複雑な指揮を可能とした。

(例えだが1980年代まで戦域データリンクが未熟であったため、中隊単位での戦闘軸として、もし大規模で部隊を運用しなければならない時には中世…とまではいかないが陣形などを軸とした部隊統率法を持つ国も多かった。)

そして大尉以上の士官生還率が大きく上がることが見込めるようになったのだ。

普通ならば「上の奴が死ぬのが嫌とか言うなよ…」「一緒に前線で戦ってくれる人が良い」「隊長と言えば最前線で隊を率いてレッツパリ―しなきゃダメだろ!!」

と思うかもしれない。

だが、部隊の情報、指揮と言った面で集中している《隊長》というポジションがいなくなれば、それだけで部隊の力は半分以上削がれることになり、実際に戦う者からすれば前に出てくる者、例えるならば突撃前衛が大隊長だった場合など(とても稀だが無いわけではない…)

「おまえは後ろで率いてて!!判断してくれるだけで助かるからさっ!!」
と思う前線部隊員は多い。

これはその隊長が死ねば即指揮系統がマヒすることに繋がりかねないのにも関わらず、戦術機の希少性から隊長機も前線部隊と一緒に戦わなければならない体制となっている現状。

そしてそれによって指揮に集中し、操縦をおろそかにしがちな隊長が最初に死ぬケースが以外にも多いことが原因であり、その後の経験、貴重な大隊長・中隊長経験者がとても少ないことが原因でもある。

もちろん対策はされている。が、死ぬケースが多いことは変わりない。本来ならば部隊が半壊しても指揮官は生き残らなければならないのだ。なにせ経験豊富な佐官、大尉クラスと言うのは戦術機甲部隊にとってなくてはならないものであり、部隊の成熟にもっとも必要な部品なのである。



またこれに乗じて、後に出てくる『制圧支援』というポジションに合わせてC型を改造した戦術歩行爆撃機型も開発され、直ちに旅団に回してもらった。

これは運動性と近接戦闘能力下げつつも、部隊に追随できる機動力とその搭載量を活かした爆撃能力は

体積と重量がかさみがちなミサイル、ロケットポッドではなく、携行弾数が多い低反動大口径砲、片腕、両肩からなる計4門155㎜低反動速射砲によって1機で翔鷹基本型の3倍以上となり《空中戦艦》という異名まで貰っているほどだ。

(通常兵器として運用する上で体積、重量当たりでもっとも破壊範囲が大きいのが爆撃機のクラスター爆弾。その次が重迫撃砲と呼ばれ、一方の艦船の速射砲はロケット弾やミサイルより射程は短いがコスト当たりの破壊効率は高い。

その迫撃砲と速射砲の両者の中間が低反動速射砲。射程は短いが、戦術機の制圧支援機用の92式多目的自律誘導弾システムと同じほどで戦術機に必要な射程は満たしている。)


この3つの新しいタイプの機体によって大隊単位での作戦遂行能力と生存能力は格段に上がったと言える。


そうしてこの1年で準備した戦力と体制により旅団は今、この死地を生き残っているのだ。

話をはしょると旅団と日本が頑張ったから俺達、この戦況だけど生きてますよってことだ。



…と吉良君がまたやってきた。

「大佐失礼します。第4大隊が帰還致しました。大隊長を出頭させますか?」




彼は最近、俺の仕事の役割が戦術機甲大隊隊長などの前線部隊を指揮することが減り、代わりにここの基地司令としての仕事の方が多くなってきたため、第1大隊をシャルナークに隊長代理を任せ、基地司令の副官として配置してもらったのだ。

ほんと仕事熱心で助かるよ。

「う~ん、忙しいだろうから省いてもらって部隊の状況報告と、急速スケジュールの組み立てをやらせといてもらえるかな?データ転送とテレビ電話でね。

あとはそうだね、卯ノ花さんと涅課長に整備の状況報告くらいはしてもらえると良いね。」

「わかりました。と今の会話そのまま送っておきますね。」

「あらあら、データ添付…というか盗聴じゃないかな、それ。」

「…大佐がお許しになったんですよ?忙しいし二度言うのも面倒だから、声を録音して送れるようにしてくれないかって。」

「あれ?そうだったっけ?まあ今みたいな緊急で旅団の中だけにしてよ?上に知られたら大目玉だ。」

「わかってますよ。それがここの、旅団の方向性ですからね。2年もいれば慣れますよ。このぐうたら具合には。」

「ぐうたらとは失礼だね~せめてフレンドリーな軍…それだと逆にまずいか。いろんな意味で」

「移民兵も多いですから下の方では最初から、本土のような下と上との割り切りみたいなのが無かったですけど、士官間でも結構言葉づかいから何からいい加減ですからね。ココ」

「まあそれがここの良い所だよ。前線国家との距離感をいかにつかめる士官を育てる一貫…って言い訳してるけどね。」

「それを上が本気にして、自分が前線に派遣されないように祈るのみですが…と第4大隊長の四楓院少佐が了承とのことです。…将家でも位の高いところの出なのになかなか帰りませんね?」

「大隊を有功に使える隊長は数が多くて助けるけどね。8個大隊にまで増強したわけだし。

…でだ、吉良くん。この戦況を君はどう思っている?」

「そうですね…このままでは確実に戦線の崩壊は、防げないことだけは分かっていますけど、東社同盟軍上がどのような手段で納めるかについては予測がつきませんね。…東ドイツの二の舞になってもらっては困りますが。

戦線の崩壊については東欧の上のほうも分かっているでしょうし、この戦線の犠牲をどう生かすか。それについては意見が割れていると思います。」

確かに吉良くんの言うとおり、ここの崩壊はもはや避けられないものとなっているだろう。

そのために如何にして戦力を減らさずに撤退できるかに趨勢は変わってきており、第1防衛ラインであり、もっとも強大で強固なここが抜けることはとても手痛いものだが、ここを捨てる決断となるのは目に見えている。


「確かに前線である、ここがタダで抜かれるのは東欧全体の終わりに繋がるし、そうなっては南欧戦線も終わってしまう。

そうすれば日本の大目的であった『西欧の維持』など不可能だろうから、日本のほうでも、外交でどうにか穏便な方向性に持って行こうとしているんじゃないかな、見返りがありそうだけど。」

「東欧が陥落し、それに続いて南欧が陥落した場合、欧州へ攻めいているBETAのほとんどに加えて、中東のBETAもトルコとボスポラス海峡を渡って攻めてきますから…

そうですね、西欧に降りかかるBETAの量は今までの約4倍にまで膨れがると研究機関でも言われていますので、持って2年というところでしょうか。」

避けてはならない現実をうなづきによる肯定で吉良中尉に返す。

正にその通りとなるだろう。

忘れてはならないのはここ東欧に日本が力を入れたのは、ただ東欧を救いたいがためではなく、西欧という市場を残したいがためだ。

西欧に降りかかるBETAの量を分散させ、その間に陣地を構築して、戦力を増強。国連軍やEU連合軍のもと国家連合軍としての体制を整えるための東欧戦線であったのだ。

もちろん利益を求めていたことは嘘ではないが、最大の目的がそちらであることから見ても、東欧と西欧どちらかを選ぶとしたら後者に軍配が上がるだろう。いくらここに戦友がいてもだ。

「そうさせないためにも体制を整える時間として東欧には生きてもらわなければならないと、日米双方ともに考えるでしょうから、国連軍からの派兵は通りそうなものですが、問題は時間ですか…」


確かに時間がネックとなるだろう。未だ敵の規模が把握されてから3時間ほどしか立っていないことから見ても、この趨勢を逆転できるほどの戦力がここに回される時間にはとても足りない。

同盟に残されている兵から派遣するとして軍団レベルの派兵で、最速で3日と言ったところだろう。戦術機甲などの編人数が少ない部隊を主軸にしてだ。

それまでにいくらほどの犠牲が出るか。

一週間の籠城。確かにここの戦線は幾重にも折り重なり、その要塞線単独での1ヶ月ほどの籠城は可能だ。

その要塞線を生贄にして時間を稼ぎ、2年前から予備陣地として構築中の第2戦線に人を配置することが最善ではある。

だが、それは全ての戦力を有効に使え、情報や地下侵攻が無い場合にのみ行えるもので、1週間も持たないことは容易に推測でき、それでは後方の部隊編成も敵わないだろう。


「どうやら東社同盟のほうでは撤退も視野に入れ始めているらしいから、そうなればここは安泰なんだけどね」

「ここは幸い、海に近いですからね。幸いなのか意図的なのかは述べるべきではないでしょうが。」

撤退ということならば最速6時間ほどあればここの人員の撤退が済める体制に、今この基地はなっている。それは戦術機甲部隊と言う人員が少なくて済む、部隊編成を主軸としているためでもあるが。

その形、箱としての基地の立地の良さは、国連から、日本からの応援が欲しい東欧の願いが形となって示されたものだろう。


さきほど旅団が持ったのは戦術機のおかげだ。とか新しい概念が云々など威勢の良いことを言ってきたが、肝心かなめの理由としてもう一つある。

それは今旅団が担っている担当地域のBETAの数が少ない場所ということだ。

機動性に富んだ戦力である戦術機甲部隊。それがこの緊急時において次々に引き抜かれるのは言わば当然の事象。

しかし2年間戦場を共にし、信頼関係を幾ら築こうと旅団がお客さんであることには変わず。

貧乏籤をひくことはない居残り組とされた旅団は、当然、東欧の戦術機甲部隊がその引き抜かれた戦域をカバーするため、担当戦域が一時間ごとに増大している、というのが現状だったのだ。

それは引き抜かれた部隊が回される死地に、最大の支援国である日本の部隊を廻すことは、支援量を少なくされる危険性があるという前線国家のお寒い事情と、

死地のその現状をひた隠しにしたい、くだらない思惑があるのだろうが、その立地からして国連軍の増派の受け皿としてもこの基地が機能してもらいたいためでもあり、即時増築すれば軍規模の集団を収容することも可能だ。(ただ置けるだけ、周りの家を強制徴収してやっとではあるが。)


そのような贅沢をしていられない状態になったのが1時間前のなのであり、

だが数が不足している現状、雑事に等しい仕事を大量に回され、予想以上に仕事ができると言うことで旅団の仕事量は異常な量となったのだ。

なにせ目の前の担当戦場は脅威予想度が低いとはいえ、次々と引き抜かれる戦術機甲部隊の代わりに努めるために回される、広大な戦域をカバーするのは至難の業だ。

そのため一つ一つの仕事の厳しさは《死地》と呼ばれるほど凄惨なものではないが、その量が多いため疲弊の比重が大きくなった。

「まあそれだけ見ればここの者達は正しく、お客様だったわけだからね。お仲間を一人でも多くここに来させてほしいがためのさ。」

「確かにそうかもしれませんね。相手側から見ればいくら精鋭や移民兵が主体と言っても、BETAとまともに戦ったことが無い素人集団。

前線の真実を教えることよりかは、相手から金と兵器を吸いだせるよう計らいをするのは自然だったのかもしれません。最近になって腹を割って話せる東欧軍の士官との会話で、自分達の立場が分かりましたよ。自分達の未熟もですが。」


「君も最初から気づけるものではないか…これを知る大半が述べる精鋭による東欧の救済など建前でしかないからね。いくらその実力があるとしても、軍としてBETAと戦ったことがなければ雑兵にしかなり得ない。

だからこそ、持ちあげ、金と兵器を出させるのが東欧の望みだったわけだ。…少し考えれば分かるものだけどね。」



確かにこの旅団の窮地、旅団自身のの実力不足が原因かと思うかもしれない。

所詮は裏の実験場としての場がこことされたからだ。

事実、その蔑称のようにここでは光菱の数々の新型兵器群がここに陸揚げされ、実戦証明を果たし、多くの試験兵器のそのまた多くの問題が噴出する場となっていた。

そのため、それを守るための基地戦力。

そしてそれを十全とした役割を担うための、護衛兼周りへの気配りのための戦術機。

そして東欧の計らいのために増築が容易な広大な土地が付随され、建物の広さで言えば師団としても贅沢な広さとして甘えさせられていた。

しかし旅団もここ1年で、新型兵器のための試験部隊を任される(御守だが…)ことも少なくなり、完全な戦闘団となり戦力の充実化は成ってはいるのだ。

機甲部隊や装甲兵が減り、代わりに正当な国連軍としての戦術機甲部隊が増えたこともそれを裏付けている。

つまりそれがこの戦域の重要性を上、たぶん光菱の若頭当たりが睨み、戦力を整えようとした証明でもあったわけだ。(あれっ?おかしいな…と思ったんだよな。新型回されるし…)

護衛能力ではなく、完全な攻勢部隊としての役割を担うことになった旅団。

それは7個戦術機甲大隊―――1個大隊は特別編成で40機―――に及び、ここ東欧の一個軍に配備されている戦術機数よりも多い。(全て極東国連軍からの派遣部隊として登録されている)

※例:激戦区であるドナウデルタ第6軍集団に配備されているのでさえ、昨今の戦術機増加に伴って20個戦術機甲大隊=約7個連隊。

東社同盟は同盟結成後、戦線を構築していた軍集団に新規の軍を編入させたため、軍集団を構成する軍が4個軍であり、一個軍に配備されている戦術機甲連隊の数は2を切る。

そして2個連隊が抽出され、前面からの攻勢で合計1個連隊分が消滅していた。

その結果、戦域の増加も合わさって6個連隊分の広大な範囲の救援要請任務が旅団に回されてきている。

ここまで旅団が疲弊している姿を見るのは初めてだった。何度も部下を亡くしたし、友軍が赤蜘蛛の中に消えていくのも、片手では足りないほど見てきた。

だが軍が、軍集団という規模の要塞が目の前で崩れていく現状は始めてだ。

幸いと言うべきか、その対応に合わせてか旅団の作戦基本単位は一個大隊を基軸とした編成であり、即座に各大隊長が各々の部隊を率いて戦場を駆けずり回っている。



それは総数で言えば2個連隊強というほどの部隊が合計6個連隊が管轄している戦域をカバーしつつ戦力を維持していることから、実力と共に証明している。いくら戦闘回数と一回当たりの個体数が少ないとは言えだ。

だが、全体を挽回できるほどでは決してない。

今現在、毎分ごとに死者が出ている現状は変わりようのない事実であり、なにも手を打たなければ、最低でも400万人。それ以外の国民などを含めれば1000万を超え、ここがなにも出来ずにただ崩壊するば、東欧と南欧全てがBETAの支配領域に飲み込まれることは変えようのない事実と成って、人類に降りかかる。


「――だが、ここが堕ちるのはこちらから見ればあくまで既定路線。それを含めて時間を稼ぎつつ、"あること"を実現させるた犠牲を少なくしたまま、時間を稼ぐのが日本の、最高指導者達が望むことだ。

だからこそ、ここを我々が持たせているのはただ逃げるためでもなく、その時間を稼ぐため。上もそう動いてくれる…はずだ」

「大佐、まさにそのようです。

国連軍キプロス要塞群に滞在中だった日本派遣艦隊から追加報告が入ってきました。


『日本帝国海軍・第3派遣艦隊より、国連統合軍及び東欧州社会主義同盟共同統轄基地群サルチオラ軍港へ

我、国連統合軍地中海方面総軍より緊急要請令第332を受託。

本艦隊はバンクーバー協定並びに京都協定に基づき、本日1745までに『荷物』を届け次第、直ちにその方を全力支援す。しばし待たれたし』

だそうです。」

「やっとという感じだけど無茶したなあ…この速度から見ても、1時間前にはキプロスを出発してるだろうからね。まあ助かるけど。荷物はやっぱりあれかな。」

もっとも若いハイヴ、中東のガシアンテップハイヴへの前線基地としてキプロス島に建造された国連統合軍 地中海方面総軍所属の「キプロス要塞群」

そこに"たまたま"派遣されていた日本派遣艦隊とそこへ部隊を輸送していた帰りの輸送船団。

それを使っての東欧への救援部隊を派遣することになったのが8時間前らしい。早すぎる。

その計画が即座にまとまったとされるのが5時間前であり、今の緊急性から考えてアメリカ、西欧への根回しをせずに、いや、する必要がないほど切迫している状況から、キプロス島にいる国連軍戦術機甲部隊を中心に選抜。

もともとキプロス基地から南欧からの緊急応援要請に答えるための計画が練り込まれていたこともあり、ここまでスムーズに部隊編成が行えたわけだ。

もちろん表向きには言えないが、東欧への救済処置も考えられており、未だにギクシャクしている西側陣営(日本ではない)と東欧との距離を縮め、逆に東欧とソ連陣営との距離を置かせることで、窮地に立たされている欧州全土の指揮系統を統一させたい思惑があったわけだ。もちろん、それだけしか利が無いのだが。

そうして詰め込めるだけ詰め込んだ部隊を戦闘に、随時定時輸送船団を使って物資、部隊を送り込むことが決定しており、

ルーマニア最大にして東欧最大の国連軍基地コンスタンツァ軍港に物資を、最前線の国連と同盟の共同統治している軍港であるここ、サルチオラ軍港に部隊を派遣することになっている。

(※ルーマニアのラジム湖、シノエ湖はドナウデルタ要塞着工時に、海と繋げられた。)

それが開始されるのが19時ほどになるであろうことから見ても、アメリカから切り離された国連第2緊急即応戦闘団を含んだ艦隊が到着するのが少なくともあと24時間かかることから考えれば、『神速』と言って良い早さだ。


最近の上は10年前と違って、即決即断が出来てよく動いてくれるからとても助かる。

さて、代わりに今度はここが頑張らないといけないね。


「吉良中尉。もはやここは負け戦であることは変わりようのない事実だ。今現在、国連として、同盟として目標は犠牲を少なく、どうやって撤退を行うかに移行しているだろう。

ならばだ。
そのために撤退戦をスムーズに行うために、即応戦術機甲部隊がここに来ることが決定されるのはわかるだろう?」

「防衛戦において戦術機にもっとも求められるのは、敵の主攻を抑え、時間を稼ぐこと、ですからね。」

「そういうことだね」と肯定を返しながら一人、これからのこと、この基地について考えをめぐらす。

もはや予備戦力や、新たな戦力を投入して挽回できる状況を超えてしまっている。陸上の運送ルートの多くがマヒしていることを含め、脚の遅い人類側があのBETA相手に撤退戦を挑もうというのだ。

そうなれば、資材、物資を置いて人員の撤退を優先することが決定している以上、海上からの脱出が優先されるため、ここから脱出する人員は80万人を超え、そのほとんどを無事、送り出さなければならない。

なぜ国連軍がそのような重要な作戦の一部と運用を任せられているかは、ここに荷揚げされるための船舶や、その港の施設を東欧単独では揃えられなかったためであり、その管轄が同盟と国連との共同とされているが、その内実、ここの運営を任されているのは国連から任せられた企業と、国連軍だからだ。

それは東欧同盟では荷揚げされ次第、届けられるまでにどれだけ物が無くなっているかが問題とされたためであり、海軍に費用を割けなかった東欧の悲しい事情がある。

だからこそ、ここの運用法を知るのは、東欧と国連に顔を聞き、物資の受け渡しを知る俺達ということ…らしく、一介の大佐風情が80万の撤退支援を指導していかなければならないことになるわけだ。

その事実を証明するように、戦術機部隊を指揮する間もなく、階級は上がらなかったが色々と要職が追加され、~兼~兼~兼と責任と
実際の指揮系統(本来の役職は別にいるが実際は俺が指揮する)が大きくなっていく。

命が、重いッ!!たぶんおれがここで自殺すればこの撤退戦は失敗に終わるほど集中しており、それを知ったBETAはすぐさま俺を殺しに来るだろう。

…まあ現実逃避はそこまでにして、これからどれだけ犠牲を少なく撤退できるかが、カギであり、俺の首に繋がってくるだろう。

それを成功させるために、戦術機甲部隊などがここに回され、死守することになるわけだ。成功しても、役職が不鮮明に置かれたここでは報償はもらえても、前線勤務をまた言い渡されることは決まっているし、失敗すればスケープゴートにされるのは目に見えている。

また貧乏くじを俺達がひいたことになる。
まあ部下にまで責任を押し付けないように、ありとあらゆる権限を俺に委譲させ、それから部下に渡しているため、どうにか火の粉は俺と…吉良君ぐらいで済みそうだが


…マジで不幸だ。

「では大佐、そのことを課長以上の者に伝えたほうがよろしいでしょうか?」

「そうだ。だからこそ吉良君。卯ノ花さんに最低でも増派として一個師団が2時間以内に来ることになりそうだから、予定通りにお願いと伝えてもらえるかな。

面積等は取らせてあるし、輸送車もどうにか目途が立ちそうだからさ。」

「自分で言って下さいよ…僕だって怖いんですから…卯ノ花隊長の怒った笑顔」

「俺に対してはもう凍てついてるから、まだマシでしょ。頼むよ吉良中尉。」

「…分かりましたよ大佐殿。」


と、最後は階級を示して抑え込まれてしまった吉良君がしぶしぶ退室していく。

ちょっとかわいそうなことをしてしまったかな?と考えつつ、ここの現状を振り返ってみる。

ここは最前線であり、ドナウデルタへの物資を海上から行えるように作られた、同盟と国連共同の基地群が乱立しており、ぶっちゃけちゃえば逃げ道だ。

それを如何にして持ちこたえるかがここの命運を握っていると言って良く、あと2日でこの戦乱の趨勢が決まると言って良いだろう。


今考えれば絶対これ、見越してやがったなと光菱の連中に愚痴を言いたくなってくる。トルコのボスポラス海峡にしたって拡張工事を行っていたわけだし、ここまで増派がスムーズにいくことにしたって、どこまでが既定路線なのかわかったものではない。

まあ今回の襲撃を読んでいれば事前に連絡や、その対策が後手とならないだろうから、あちらにしたって緊急だったんだろうが。

まあどのような撤退戦になるかはまだ確定していないが、海に面している以上、ここに物資と人が集められることは決しているだろう。


「ここからが本番、か」

そう呟かずにはいられないものだが、それだけ期待されているということにしておこう。


では受け入れ態勢整えるためにも、頑張りますか。…問題は日本将官と同盟将官の繋ぎをどれだけこなせるかだな。


~中編へ続く~

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

筆者です。

実戦とか思いつきで書くモノではないですね。混乱します。

さて本編は大撤退戦となりました。

本来ならば、「東欧戦線は崩壊した」「なん…だとっ?」ぐらいで終わらそうと持ったのですが

詳しく書いてみたら面白そうじゃね?ということで書いてみたらカオスに…そして黒野大佐の首が危うくになりました。

次回は2週間ほど先として…

また改訂作業と並行して、上げていこうと思います。第1章1~5話を2日ごとに上げて、最後に外伝ノ中編をと。

改訂についてですが、1982年からスタートであるこの本作を1年前倒しにしようかと考えました。

ゴールである結果は変わらないのですが、82年からスタートしていきなり海外に手を出したり、戦術機開発の開発速度から政治中枢に手を伸ばせる速さが異常に見えてしまい、作り直したくなって…何度もの改訂、ほんとすいません。

81年からだからこそできることについても、手を入れて改訂しますので、「あ~ここ変えたんだな」ぐらいの気持ちで読み直していただけると助かります。

また改訂作業を行いながらも、外伝の進行のほうはなるべく遅れないように心がけたいと思っています。

では失礼します。


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