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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》
Name: カバディ◆19e19691 ID:f630435c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/12/21 20:09
1985年 4月 18日同日

「それにしても日本にそこまでの衛士がいるのか?とい疑問もあるのだが、どうなんだ? 数は増やせど衛士がいなくては話にならんだろう?」

簡単に、そう簡単に日本の国防の問題点をズバッと当ててくるマリヱさんにはイラッとすることも多いが、これは感謝すべきことなのだろう。そう思わないと精神的に来るものがある…

正にその問題点が史実日本の問題点となっているのだから。

「もともと日本の戦術機数は異常だからね。空母削ってまで作ってるわけだし。それによって衛士が足らないくなるのは自然の流れなんだろうね。」


日本のドクトリンとも言うべき、戦術機への盲心。それによる戦術機数は国家規模から考えれば明らかに多い。


マブラヴ史実でも90年代からの大陸派兵に始まり、ユーラシア脱出のための光洲作戦。そして悪天候や政治的問題、世に出されなかったさまざま理由絡み合って生じてしまったあのBETA日本侵攻。

この酷い損耗の中、在日米軍の撤退という思わぬ誤算の中でも戦い抜き、そして一年後には横浜ハイヴ攻略作戦『明星作戦』での主力まで務める日本。

ここまででも異常なのにもかかわらず、たった2年後には甲21号作戦と桜花作戦までこなすとは、概要だけ見れば異常を通り越して異様だ。

なにせ甲21号作戦参加の日本帝国戦術機数約1500機。本国の防衛には最低でも2000機は必要であり、その数を最低でも持っていたことになる。死に体の日本が、だ。


その異常な状況を作りだした原因はどこにあるかを疑問に感じ、この世界に来た(?)当初、調べてみたのだが突飛に飛んだ日本の国策が判明した。

それが戦術機貯蔵計画だ。

日本帝国軍は欧州、ユーラシアのBETAとの戦史研究を進めていくにつれて、あることを発見した…らしい。

それは兵器の雄である戦術機の数が減ることが直接戦線の弱体化に繋がっている点だ。

人類でもっとも有効な兵器が戦術機である以上、それは誰しもが知る事実ではあるが、日本帝国軍参謀本部は、ユーラシアの戦史を実際に味わっていないことから貪欲にその事象の原因を調べていった。

そうして出された結論は、戦術機というものが戦場で唯一のBETA以上の機動力を持つ、有力な機甲戦力であるという、誰でも知っていることに加え、突発的な事故にも対処することができる万能性をもっていたため、というものだった。


戦術機はその戦場の活躍ばかり目がいくが、2機いればだいたいの補給作業をこなせるほど器用だ。

戦車がひっくり返った時に戦術機の手を借りたケースなど、戦場以外でも突発的な事象に対応しケースも多々あり、大型BETAの死骸を陣地からどかす作業や、戦術機がいるいないでは大きな違いを見せている。


もちろんその分、精密兵器である戦術機も損耗する。

だが日本帝国は「その分の損耗を埋められるだけの体制を作り上げれば、戦力全体に広がる損耗を戦術機に集中させることができる」

として日本は撃震を大量に製造しモスボール化など、徹底的な処置を施し貯蔵することにしたのだ。


近接戦に特化した仕様により、あらゆる作業でダメージを負うはずだった関節部の強化を可能にしたし、保存状態の物を少しの改修を加えることで使用可能になるよう考え抜かれたそれは、確かにマブラヴ史実において結果を残している。

その数約1万機。あの数々の戦乱を乗り越えても不知火などではなく撃震が主力機で居続けた理由でもあり、フランスやソ連のように改修機を輸出せず、24年間貯めに貯めて生まれた数だ。

90年代から開始された九ー六作戦を含む大陸派兵。1998年の3600万人の犠牲を出したBETA日本侵攻。1年後の横浜ハイヴ攻略作戦『明星作戦』に始まり、クーデター事件である12・5事件や、甲21号作戦を行い、一週間後には桜花作戦にも参加できる日本。

これ以外にも数々の間引き作戦で損耗を続けてきた日本が、それでも戦い続けたのはこの貯蓄計画が根幹にあったためだろう。

そこまでF-4に思い入れを持っていたからこそ、F-4Xと呼ばれる第2.5世代機に匹敵する戦術機を生み出すことが可能になったのだ。

本来ならその大量の数を揃えるならば、純正の国産戦術機を製造することが最善であったため、あそこまでの国産への執着もあったとされている。

それ意外にも疑問点がたくさんあるが…実際にあの数を実現出来ているわけで、何個もののブレイクスル―をしてきたのだろう…たぶん。


「まあその分、衛士が足りないなんてことが起こってたわけだけど。」

「ん?ああ、今現在日本は激震などのF-4を輸出しているが、史実ほどに戦術機数を充実させるとして、衛士数についてはどうするのだ?お主も言ったが衛士の数がまるで足らんのだろう?」

そうだ。1万機…他の機体を含めると1万という大台を軽くこす戦術機数を持っていた日本。その戦術機を十全に運用出来たならば本土をあそこまで蹂躙されることはなかっただろう。

それを不可能にしたのが衛士の希少性だ。

「確かに日本は衛士の数は史実も今もまるで足りていない。
それはそうなんだけど、いきなり衛士を増やすことはできないし、なにより日本の現体制での衛士対策も結構良い出来だし、日本の歴史が良い塩梅で衛士を増やす方向性に働いているんだよ。くやしいことにね。」

「どういうことだ?」


「衛士特性。それは国によっては千に一人、悪ければ万に一人にしか持ち合わせていない後天性と先天性、二つ合わさってなる才能なのは知ってるよね?」

「そうだな…今の人類にもっとも必要な才でもある。」

「その人類のどの国もほしいであろう衛士特性。その日本での割合は、まず先に結果から言っちゃうけど、2%を超えているんだ。」

「それは高い…のだろうな?」

「脅威的なほどにね。
まず前提として、衛士というのは強靭な肉体を持つ必要があることから10~30代に限られる。そして衛士特性の向上に必要なのは、幼少期からの連続的な訓練が有効であるとされているのは知っているよね?」

「聞こう」

「そもそも衛士特性なんてものは本来であれば、ある程度の特訓を幼少期から行い、心身ともに研磨し続ければだいたいの者が成り得る凡才なんだ。

もちろんその充実した訓練ってのが肝なんだけどね。」

この訓練を日本帝国が導入したのはとても速い。

1978年の教育法改正からすぐのことだ。先の戦術機貯蔵計画を有効にするためにも参謀本部などの軍部がロビー活動を行った結果であろう。

「その教育方法というのはなんてことはない、幼少期からの衛士育成なのはマリヱもわかるだろう?」

「まあな」

「もちろんそんな費用のかかる育成費用を誰彼かまわず実施できるほど日本の懐事情も甘くはなかったし、その教育方針にしたってそれが衛士特性に繋がる事実にはその時点では辿りついていなかった。

だからその教育を受けられるのは陸軍幼年学校とか一部だけなんだけどね。」

将来軍部に入るであろう者達と体育学部を持つ一部の国公立に対してのみ及ぼすその影響は、その教育規模は以前よりも割増されたが、全てに行き渡ったわけではない。

「その内容は耐G訓練から始まり、継続振動耐性をつけるための日常的な訓練が必要なのは言うに及ばず、武道に精通する体裁きも重要な項目として上がられている。そして意外にも重要なのがその体裁きなんだ。」

「体裁き?」

「通常、人間というのはその動作で発生する反動というのを無意識で計算して行動しているわけだけど、複雑な動作ほど無意識というのが働かない。」

慣れていないから、脳の中に動作制御プログラムが作られていない、とも言える。そして慣れない動作を継続して行うと人は自然、酔う。

「そんなことからも、なにも現代日本の斯衛がバカみたいに武道の練習をやっているのは、ただの精神を鍛えるためではなく、ほとんどが衛士や強化外骨格などで必要とされる"無意識での外乱の把握"にあるんだ。

そしてそれは衛士にも生きていき、人型の機体動作で発生する振動をあらかじめ知ることができるんだ。」

これが地味にデカイ。衛士特性が無い者は長時間の搭乗は身体に悪影響を及ぼす。いわゆる車酔いのようなものだ。

そしてそれは慣れである程度克服できるものなのだが、最初の搭乗である程度の耐性が無い者はそれ以上の成長を期待できない。

振動に慣れる前にやられてしまい、恐怖感しか芽生えないためだ。それほど戦術機の振動は人体にも精神にも悪影響を及ぼす。

その問題をどうにかするためにもある実験を行い、10代の両者、武道経験者、『体幹』などの概念を長年の修行で身に付けた者と、体操選手で比べた実験を施して見た結果、圧倒的前者のほうが平均耐性値が高かったことが実験によってわかっている。

これは先の無意識の外乱の把握に加え、その戦術機の動作が身体の中心、コックピットへのブレを抑えた動作であることと、スリ足に代表される身体のブレを抑える動作ということに加え、動きの考え方が常人と根本から違うのが原因だ。

そして思考トレースシステムを採用されている戦術機の操作は如実に『動きの考え方』の違いが反映される。

それは人間の体であれば、無視して良いほどの動きの無駄や乱れではあるが、人間の10倍の大きさである戦術機では、そのブレによる振動は衛士のストレスの蓄積に直結するのである。


もちろん日ごろからの絶叫マシントレーニングで、ある程度の克服が出来るが、単純な動作しかしないマシンでは戦術機の動作特性には遠く、訓練での効果はあまり期待できるものではなかった。


(それ以外にも戦術機が人型である利点として、3次元機動が必要なハイヴ内において、同じ人型である点から、無意識による振動耐性がつくことが上がられている。

それ以外にも日本帝国が戦術機を最重要兵装にし続ける理由として、
思考トレースによる3次元機動において、人型であるほうが思考トレースによる三次元把握からの、瞬時の動作判断の精度が高いという点や、

地面に着地する時の衝撃吸収率が、人型でありながら操縦者である武術家の思考トレースによる『力の逃し方』があったほうがコンピュータに任せた4足歩行戦車よりも総得点で高かったことが上がられている…らしい。な、なんだってぇー!!!)


他にもこの「武道の心得」は近接戦は元より身体、機体ともに負担のかからない操縦に繋がってくる。歩き方一つとっても意識の違いは戦場で如実に現れるのだ。

残念ながら史実ではその思考トレースによる影響を、動作全てに施せるほどのOSを開発できなかったため一部に限定することになるのだが、その影響で2000年以降の歴史ではXM3の影響を一番受けたのは日本とされるほど自力の底上げに繋がっている。


「イメージと動作を直結する…ということか?ならば例えばだが、アメリカも日ごろからの銃を使った動作が衛士に活きてくるのではないか?」

確かにそうだ。日本の武士がカタナを使った剣術が得意ならば、生粋のアメリカ兵士は射撃に馴染んでいるはずだ。

「そこは日本とアメリカ(日本以外)との意識の違いにも関わってくる。

アメリカなどはその体格もあって動き全般に対し、筋力でどうにかしようとする意識が強いんだ。つまり力を『活かす、反らす』のではなく、『抑え込む』意識が強い。
野球のスイングなんかで比べてみると日本とアメリカの意識の違いがはっきりするよね。」

格闘に対し、その体格で問題を解決できた西洋人は格闘という技術を必要せず、パワーを第一にすることで問題を解決出来てきた歴史を持つ。それは古くからのDNAでもあるのだろう。

しかし日本人はその小さい身体からして、そのままでは自分は弱く外国人には勝てないことを知っていた。

だからこそ技術に頼ったのだ。己の生み出す少ない力を、最大にして相手にぶつけ、相手の力を利用することまでして愚直に。

そうして外敵に対処してきた日本人。

そしてその方針の正当性は今にも当てはまる。いやこれまで以上に当てはまっているのだ。

なぜか?戦術機という同じ体を使うからだ。

同じ体を使うのならば体裁きが上手いほうが圧倒的に強い。それは当たり前のことであり、人の身体を動かす上での知識と経験はそのまま、戦術機の動きにも反映される。

そしてそれは日ごろの意識が衛士特性の平均値を上げる結果に繋がっていく。

それ以外にも射撃と剣術の違いの最たる例が、『動作の固定』である点が大きい。

射撃に必要なのは視線と射線の一致であり、反動を抑え込む形、動作の固定化が大事となるのだが、剣術などの武道は全身の力を『上手く活かす』方法が大事なのであり、根本的な考え方に違いがある。

(※斯衛などが推奨している流派は一撃の重さを意識しつつも、流れる動作にも重点を置いている。)

もちろん射撃が上手い人間は戦術機でも射撃が上手い。

だがしかし、コンピューターというものはベクトル把握からして抑え込む形の方が圧倒的に楽なのだ。

つまりは身体の在る部分を固定した動作であったり、関節の固持が必要な射撃において、機械で賄える部分が多く、視線と戦術機の射線を一体化する方向性においてならば、だいたいはコンピューターに任せることができるのだ。

しかし接近戦や普段の動作というのは、毎回同じ動作で全身を動かしているわけではない。

同じルーチンではあるがその度々に各支部の動作に誤差が生まれるものであり、その動きは複雑だ。そしてその誤差を修正するのは思考トレースによる無意識が大きいのである。

そうして力のベクトルを操作する上で必要になる『武道の心得』。

日本のOSにはそれが蓄積され、ある程度その動作に追従できるようにされており、日本人に向いた操縦法が確立された社会では、武道を知らない者でさえも周りの操縦を見習うことで引き上げられていき、『日本人の衛士、特に斯衛が強い』という常識に繋がっているのである。

だから原作の斯衛無双と日本帝国無双に繋がるわけで、今現在も斯衛の若手集団など、こちらと対立することが多い派閥の連中が戦場で活躍しているのだ。くやしいことに…

まあ、そうでなければあの第2世代機最強のF-15Cを瑞鶴で倒せるわけが無いんだが。

(※余談ではあるが長時間の揺れに対する耐性は、男性より女性のほうが強い。そのためマブラヴの世界でも女性衛士が多いのだろう。)


「それに加えてその環境と歴史、言うなれば国民性という文化もそうだ。

日本では斯衛など歴代軍人一族がとても多い。江戸時代なんか武家が総人口の1割に届いていたわけだからね。その流れをくむ者も多いのが現代だ。

そしてその歴史ある一族と言うのは、だいたいにして生まれた瞬間からその運命が決まってしまっている。そんなこと普通の社会ならば悪い影響の方が強いんだけど、衛士関連では良い影響のほうが強いんだよね…」

「なぜだ?」

「まず幼少からの訓練が開始できること、そして金持ちしか許されない衛士訓練を子供に施すことに躊躇いが無いことだね。」


ここに民主主義の弊害が出てくる。人権と言う概念から、生まれてきた者の将来を親が決定出来ない点だ。

そして日本は子供の未来を束縛することが可能な窮屈な社会を作っており、衛士なるために有効な幼少期からの訓練を行う人口が多いため、産業として成り立ち、ノウハウもあるし、なにより訓練衛士の人口が多い。

「そんなもんだから斯衛や軍高官の子たちは、ひどい幼少期を過ごすらしいんだわ。」


世界でも屈指の戦術機を有する日本。

その日本に置いて昔から"武"を司る名家、武家の者達は戦後、さらに教育に熱心になり、衛士を育てることになるのは自然の流れであった。

それは太平洋戦争に負けた責任が武家を主体に取らされたためだ。

明治維新を過ぎても権力を維持した、日本の将家や名家たち。

それは中国、ロシアとの戦争に勝ち、列強に入る頃までは国民はそれを了承し、望んで指揮に従った。勝ち続けたからだ。

しかしその歴史の中で大半を占める国民の慢心と、武家内にも蔓延してしまった血統だけの無能者達。

それは歴史の必然でもあったのだろうが、結果としてあの超大国アメリカに喧嘩を売ることになる。


最終的には最小限の損害…とは言い難い早期講和、条件付き降伏となったのだが、国民としては負けたこと自体許さないものだったらしい。

もちろん、総力戦であったことからして国民の負担は重すぎたせいもあるが、武家、特に明治維新の時に下士から上りつめた者達の子孫たちの失態は目に余るものがあった。


そうして武家は斯衛という閉所に追い詰められ、陸軍の中にはびこっていた血統による人事は砕け散ることになったわけだ。


そうして反省した武家達は周りの目を見返すためにも異常とも言える、スパルタ教育を子に施すようになる。

専用の教育施設を作り、ただ厳しいだけでなく、先進的な検証により得られたデータを使っての教育は心身ともに選ばれた者にふさわしいように磨かれていく。

それは戦後すぐは科学、スポーツといったあらゆる分野に及んだのだが、BETA襲来から方向性を変化していった。

もちろん武家としての在るべき姿、侍を目指すことになる。

それからというもの、戦術機の可能性を見込んだ斯衛と軍は、1970年代より幼年学校から衛士のための訓練を実施することがカリキュラムにまで盛り込んだりと、教育に対してだけは革新的な方法を導入し、日本の教育熱の高さを示す良い例とまで言われている。


それに加えて、慢心などした者は『大戦のトラウマ』とも呼ばれる執拗ないじめに合うことから、斯衛と軍の高官達の子は異常なほど人が出来ている。

ホント、庶民出の者が軍に入った時、空気の違いに戸惑ったほどらしい。

現にアメリカでさえ、教育法改正までしての衛士育成を行う日本に対し、疑問を投げかけていた…が最近の日本衛士の人口当たりの多さと質に対して、導入を検討するべき、と述べる学者も最近では存在する。

結局は廃案とされるのだが。

史実ではアメリカも教育法の改正問題が噴出するのだが、州法に含まれることもあり結局は進まない。

なにより生まれてすぐから、戦う者として育てる精神も方向性を決めてしまう家庭というのも理解できず、民主主義の盟主であるアメリカとしては受け入れがたいものらしい。

ましてや金持ちである名家でしかその高価な教育を受け入れられないという事情もあり、上に立つ者は前線に出るべきでないと考えるアメリカとしては「なんで下を統べる者が前線に出るのか」と疑問に思ってしまうのだろう。


「まあ長々と述べてきたけど、ぶっちゃけ金持ちの名家の坊っちゃんが小さいころから訓練を積めば、結構衛士になれるんだわ。」

「だからこその斯衛か…名家の嫡男はだいたい衛士だったのは、そのような理由があるのだな。遺伝子改造でもしているのかと思ったわ」


「(マリヱも言うようになったなぁ…言うと怒るだろうけど。)
そう解釈しないとやってられないさ。マジで斯衛の連中とか軍家(代々軍に使える名家への揶揄)の部隊は強いからね。
海外派兵でわかったことだけど、同じF-4を使っても斯衛の間接部品の損耗が異常に少なかったし。マジで精鋭だわ、あれ。」

その例として『武御雷』という未来の戦術機を実戦で活躍出来ていることが上げられるだろう。

整備性を度外視したそのスペックは第3世代機でも最優と言って良く、ハイヴ内の戦闘であれば"斯衛部隊などが使うのであれば"最良の戦術機だろう。

しかしこの戦術機、どう見ても日本以外では使えない。

その動作特性からしてさきほど上げた"日本人の動作意識"などが無ければ使うことさえできず、

整備性も一度整備するば、日本衛士の機体への負担をかけない操縦も合わさり、長く戦場で活躍することは出来るのだが…当たり前だがその分、長くいればいるほど、整備時の負担は加速度的に増加する。

(桜花作戦後の斯衛部隊の整備を任された部隊は、その勝利と目の前の戦術機の中身を知ったことで全員が号泣したほどだ。あの我慢強い日本の整備部隊が、だ。)

それに加えて兵器であれば悪影響しかでないと言われる個人ごとの機体のチューンなど愚の骨頂と言われている。

が、その機体ごとの仕様変更については、割合として特別仕様機(予備機を含め)が政威大将軍機の紫の機体2から始まり、蒼10 赤30~40 黄色100~150機ほどとなっていることや、

桜花作戦後の輸出を見込んだ生産では白(一般指揮官機)500機と黒(一般機)1500機ほどが基準とされており、以外にもそこまで特別仕様にはまっているわけではない。

それに兵器の特別仕様は悪癖とされているが、大量生産が見込め、そこまで急ぐことがないのならば、車や飛行機などもそうだが機体ごとの個人仕様は珍しいことではないため、否定される材料ではないと城内省が声明を出している。

あれっ?武御雷を否定しようとしていたのに擁護している形になってるぞ?まあ良いや。


「そんなことで日本は戦術機甲部隊TUEEEが出来る国でした。ちゃんちゃん。」

「(めんどくさくなって話を途中で切りおったな…)
まあその理由についてはそれで良い。しかし衛士をこれ以上増やしづらいのは本当なのか?」

「確かに急激に増やすことは無理かもしれないけど、幼少からの訓練は租借地や国連直轄地でも開始してるし、ゲームセンターにはJIVESだっけか?あれを劣化させたヤツを光菱が開発して各地に設置してるからこれからは増えてくるんじゃないかな。

…ゲーム機については国からの補助金が無かったらやってられない代物だったけどね。

だから翔鷹の衛士なら10~30代の20%ほどは衛士になることは可能じゃないかな?そこから厳選されればさらに衛士の優秀さは上がるだろうし。」

将来的な予想だけで言えば日本派閥に属する国家を含めれば、衛士特性を持つ者は1000万に上り、その中から優秀な者を選出すれば良い。


「そうだ、戦術機の話に戻るけど翔鷹の販売がある程度は順調にいきそうなんだよね。」

「翔鷹がか?グリフォンと被っていてあまり良いイメージを植え付けられていないように見受けられるがどうなのだ?」

「まあ~それは確かにあるね。」
確かにそうだ。翔鷹の一つの利点として量産性とその安さがある。そしてその二つは国連正式採用機であるグリフォンと丸被りだ。

そしてグリフォンは国連が進めていることに加え、その安さ(一番安いF-5新規製造機は第1世代機F-4Eの7割の値段)から、まずは数を埋めたい各国としてはグリフォンを採用する国は多い。

なによりその量産した数によるアフターサービスに対しても好評であることが大きいだろう。

戦術機先進国同士に平等に利益が分配されることで日本にも金が入るため、むやみにグリフォンの市場を侵すことはできない。

「でも実際に比較しても、性能差には歴然とした差がある。

所詮第2世代機ギリギリの機体であるグリフォンシリーズは最低限のスペックしかクリアしていないわけで、根本から新規技術と斬新なアイデアで作られた翔鷹にはペイロード、余剰重量からして全く歯が立ってないし。」

3年間の習熟による機体の先鋭化はこちらの見込み通りのスペックを実現出来ている。その火力と制圧力。

そして総合兵装選択システムなどによる、基本部分ではない余剰部分の比重は大きく、弾薬搭載量ではグリフォンの2倍に迫り、電子装備に対しても大型のF-15に抗し得る。


「しかし、それは公表出来ればの話なのだろう?なんか言い訳臭いぞ?」

「うぐっ!!」

「それにアメリカの下…未だ影響下とされている日本の現状から、売り込みも余り過激なことはできないのではないか?」

「そうだね。知らなかったら買おうとも思わないし、今の現状ならばこれからの売り込みを過激に行うことも出来ない…

これにも理由があって…というか1980年からの戦術機闘争に関してのお話があるからね…」

「ああ、アメリカをどうするかか」

1980年から始まる国産戦術機の開発。それはもちろん本機の開発もあるが、資源の輸入路から、翔鷹内部の既存技術のパテント…つまりはアメリカの許可を得る必要な物が多くあった。

当時は光菱の発展途上の状態であり、アメリカに対して意見を言える状態ではなかったのだ。

武器を作る上で必要な資源を把握され、いきなり「国産戦術機」と謡ったとしても、あらゆる方法…例えば当時、日本の輸出相手国でブッチギリ筆頭だったアメリカからすれば日本への関税を強化したり、同盟諸外国を通じて締め出しをしたりと、あらゆる妨害に合うことはわかりきっていたのだ。

だからこそ、どのようにすればアメリカに配慮した形で国産機を配備することが出来るのか…そして海外に輸出することが可能なのかを話合われていたのだ。俺に隠れて光菱の上層部が。

1980年の俺はすごい夢見がちだったのだろう…すごい戦術機を作ればそれが売れると思っていたのだから。

しかし現実は甘くなく、大人達からこのまま素直に戦術機を開発したとしても売れない…悪ければ国産化も不可能ではないかとまで言われたのだった。

そうして必要となったのが、国際路線とその目玉であるネット販路とグリフォンになる。

日本に入る資源を多様化し、金融をネットを介することでアメリカの金融街の独走を防ぎ、日本の輸出網を国際化することなど、『国際共同路線』という名の、円の計画的なばら撒きによってアメリカに首根っこを掴まれない状況に作り替えることができる良策とされたのだ。

しかし、それに反対がなかったわけではない。

その時の時代背景としても1970年代頃、政威大将軍や元枢府がお飾りとされていたが経済自体が好調である影響から政治への当たりが強くはなかった。

それが強くなり始めるのは1980年代、政治の混乱が目に見えるようになった影響とBETAへの恐怖、そして経済の後退により、本格的な政治への不振が始めたのだ。

そうした中、政策がすぐに結果を生むことが無いのは誰しも考えればわかることだが、考えない国民。ただマスコミの情報を鵜呑みして判断した国民の数は結構な数に上っていたのだ。


その社会の流れに邪魔をされたくない光菱はしょうがなく(?)光菱が裏で暗躍できる独裁体制を引き、国際共同路線などに踏み切ったのだ。

もちろん戦術機の国産のためだけにこれらの計画が生まれたわけではない。がそれを含んだ状況を打開するためにも次の段階、国際共同戦術機計画ITSF計画を大きくすることにしたのだ。

それによるITSF計画の申し子、グリフォンシリーズという傑作機達。

結果的にはアメリカの占有率を下げつつ、アメリカ政府でさえ満たせなかった世界への戦術機供給を実現させることになった戦術機を生み出したわけでそれ相応の利益をアメリカも享受している。

しかしこれも最初からアメリカがこちらの言うことを聞くわけが無かった。

なにせ自分の独占していた市場、国際戦術機に選定されなくてもアメリカの力だけでその占有率を維持できるわけで、そのままではITSF計画に乗ってくる確率は低かったのだ。

だからこそ、日本の『国際共同路線』による前線への支援とネットを含む販路の形成…

そして値崩れを起こし始めた欧州・中東市場へ、日本の進出を果たして欲しかったアメリカ政府の思惑に乗り日本は進出したのだ。


そうすることでアメリカの一応の貸しを作った日本は、欧州と共同で極秘で開発中だったグリフォン計画をアメリカ…CIAにわざと見つけさせ、潰せないほどの大きさになっていたその計画にはアメリカから自主的に参加していただいたのだ。アメリカはしてやったりと思わせながらだが。

そうすることでさらに国産共同計画として大きくなり、その技術力によって利益配分が決まる台座に立ったアメリカ。

そのアメリカは戦術機最大の輸出国家であり最先進国であるという自信から…国際共同計画により生じる権益、その多勢を占めることが可能と見込んでいた…のだがそうはいかなかった。

数々の根回しにより、ここまで誘い込まれたアメリカはその思惑と違い、欧州案、日本案、アメリカ案による比較検証の結果、日本案が計画の主流に収まることに決まったのだ。

もちろん、未だ1980年代、戦術機後進国である日本のF-4・F-5両戦術機の基礎案は、穴だらけだった。

しかし基本構造など見るべきところはあの優秀なアメリカの案を二つともに押しのける魅力を秘めており、日本案を計画の主流にしつつ、経験で先を行くアメリカがそれを完成させるところまで推し進める形となったのだ。

ここは国際計画としての適切な評価体制が役に立った。

あのアメリカがその体制を作ったわけだが、結果から行けば皮肉にも逆に自分の足を引っ張ったことになる。己の政治力を使って無理やりにでもアメリカ案を採択させれば良かった(…)のだ。

そうすることでアメリカを利用することで平等な利益配分に決まった国際戦術機計画。その計画によって上手くアメリカに相対する技術を世界に見せ占めた日本。


そして83式支援擲弾砲などのオプションパーツから、西欧、中東、東欧などに利益を分配し、前線国家の味方という印象を持たれた日本はやっと国産戦術機を輸出する体制が整ったのだ。

「まあその売る相手にしたってグリフォンにある程度奪われているわけでデメリットが無いわけではないんだけどね…

でもアメリカに喧嘩を売った状態でいきなり売れるわけが無いし、実力を証明するための下地作りを速攻で行いたかったことや、前線国家を救済するためにも、ただ数を満たすためのグリフォンを必須だったんだ。」

「で、実際に売る相手はどこらへんになりそうなのだ?」

「戦域支援機としてなら東欧を中心に、欧州や中東からもオファーは来てるよ。」

A-10の機動力と近接能力に不満を持っていた前線国家としては、その安さとその火力から翔鷹を限定的に導入することに乗り気だ。

なにせF-14+長距離ミサイルによって形作られるフェニックス一式の半分以下であるからして、高性能よりも安さを基準に配備する国家からすれば、日本への顧客と成り得る。


他にも限定的なものとしてリビアやインド、ブラジル当たりは日本に対して協力的な国家、国連直轄地を作ってくれた国家でもあり、この機体を導入することに前向きだ。

…変わりにエジプトやパキスタン、アルゼンチン、韓国あたりはアメリカの戦術機を選びそうだが。

「ふ~む…意外に数は多そうだが、限定的であればあまり数は期待できなそうだな。」

「もちろん主力戦術機に選定してくれそうな国もある。

まず確定的なのがオーストラリア、インドネシアあたりだね。汎環太平洋同盟としてこれから、日本と同じ道を行く同盟国でもあることもあるし。…後は東南アジア、台湾ぐらいかな。望めそうなところは。」

それらは未だ、自国が戦場になっていない余裕がある国家であり、日本に近い国達だ。

インドネシアやオーストラリアはその位置からしてアジアの後背であり、資源にも恵まれた強国である。

そして極秘での国家間の結託により、一つの勢力を築き上げようとする同士達となった両国は戦術機は元より、陸、海、宇宙の全てにおいて共通した兵器を出来るだけ揃えることに内諾もしている。

もちろん、アメも十分に与えながらだが。

昨今で好調を博している合成食品や軍用食糧には、両国の食材を多く含んでおり、環境面やインフラ事業でも優遇策を施している。

もちろん、軍需生産施設はオーストラリアの租借地内を中心に据えたものであり、日本本土からは高度技術が必要な部品などが主流となっている。

またインドネシアからは次期駆逐艦を共同で購入することも決まっていたりするから、日本のドッグは海運の好景気も合わせてフル回転だ。

「それに海外に派兵する数も少ない国家だから、グリフォンよりも将来性の見込める翔鷹に目がいったわけだ。F-15高いし。」

他にも東欧戦線での極秘実戦証明データに喰らい付いた影響もある。が…

なにより東南アジア諸国からしたら地政学的にも将来を見据えれば、
日本陣営にならずにはいられない状況というのが大きい。


東南アジア諸国はインドや中国への派兵を行ってはいるが、特に中国との関係が上手くいっていないため、将来的に自国領、東南アジアへの侵入される未来が見えている。

そのため国土への侵入を許した場合、もしくは連合軍との国境線での防衛戦において、日本勢と見られるオーストラリアやインドネシア、そして日本よりのマレーシアなどの国の協力が必要になってくる。

それ以外にも最近の日本勢力による東南アジアへの経済進出などの動き(※後述)もあるだろうが一番影響が大きいのは、元々の歴史の流れにあるだろう。

このマブラヴの世界ではドイツの科学力の成熟が史実以上であり、その結果が第二次世界大戦の戦場に如実に現わされていた。

その影響は太平洋側にも影響しており、ドイツからの技術支援と、史実と比べ1割ほど国力が大きくなっている日本の状況(樺太全島の国土に編入したことなど)、そして欧州側の奮戦も重なって、1943年の中ごろまで大きな負けと言うものはなかったのだ。

しかし1944年、ドイツに落とされた2発の核が大戦にいきなりの終止符を打つ。

それ以前から負ける原因や実際に戦術的敗北が積み重なっていた事実もあるが、"その核の破壊力への恐怖"と"放射線の後遺症の悲惨さ"が人々の噂と連合国側の諜報戦もあり、拡大されて流布(※患者に触っだけで死ぬなどの誤解も入れて)されたことが枢基軸側の士気に直撃し致命的な士気低下を招いてしまう。


それは日本も同じであり、将来日本の負けが見えていた穏健派は京都への原爆投下をなんとか防ぎたい思いに駆られ、核の情報(誤情報も含む)を積極的に流し、条件付き降伏に調印することになんとか成功した。

そのためこの世界では負けた政府側が負けた責任を核に押しつけるためにも、核の恐ろしさが史実以上に拡大されて広まっており、日本では『核が無ければ勝っていた』という意見も多く社会を形成している。

余談だが、その意見と、条件付きの降伏であるためアメリカ側の言論統制が史実よりも優しかったため、反米感情が強い日本国民は以外にも多く、敗北の責任を取らされた軍部将家では核、米に対する反感がいっそう強い。

心の底では核という卑劣なものを使った卑怯なアメリカに、正義の日本が負けたと信じているからだ…

史実ではその後が大変になるため、植民地解放など国際的な見地から相対的に見れば一応は合っているのかもしれないが。


話は戻るが、その影響はこの東南アジアにも広がっており、現に降伏する1944年での戦況としては大きな敗北が最後のマリアナ沖海戦(事実上、降伏するための条件を決めた決戦)を含め、即座に降伏するというほど負けが込んでいるわけでもなかった。

そのため東南アジア諸国への日本は『解放者』としか写っていない(こちらの史実ではその後の2年間、植民地時代と同じかそれ以上のレベルで悲惨になるのだが…)ため、現代日本帝国は東南アジアへの影響はとても強いのだ。


そのため東南アジアは日本と連動した動きが活性化しており、その繋がりを深めるためにも日本産の戦術機の導入にとても前向きなのである。

もちろんアメリカに対しても協力的であるが、比重の問題として、その距離から兵站問題と物流とを比較しても近くの国家に頼ることになるのは避けられない事実であり、西欧への支援に集中しているアメリカ組よりか、実際に被害に合う日本組に近づくことになったのだろう。

(特に東南アジアで力を持つ国、インドネシア、ベトナムが日本側、タイが中立の姿勢を見せていることが大きく、アメリカの『強いアメリカ政策』による1970年代後半の南米への政策を見たことと、昨今の日本の勢いも影響しているとされる。)

アメリカが方針を転換すれば話は急転換しそうなものだが…


もうひとつの台湾についてだがは少し状況が異なる。アメリカ勢力として距離が近いのはダントツでフィリピンではあるが、その距離からしてアメリカと台湾の関係も強い。

以前であれば共産中国との戦いのための繋がりでもあったが、それがBETAとの戦いのためのものに変わり、共産中国との歩み寄りが見られるようになった昨今、共産中国とアメリカとの繋がりも強くなってきている。

その繋がりを絶やさないためにも日本の沖縄との道にある台湾に対し、日本も協力体制を作り上げようとしているが、両国との距離感に対し中立を是としている。

そのため、良好ではありながらも主導権争いで揉め初めた日米間を上手く使っていると言える。

また共産中国が最近、成長著しい日本ではなく、アメリカとの関係を強める働きがあるのもおもしろい。

「それにグリフォンシリーズのようにあそこまで輸出をしようとは元々考えていなかったわけだし。」

「世界のための機体だとか、なんとかほざいていたではないか。まったくお主は…」

「じゃあ実際に翔鷹が本腰にのって大量生産が可能になったとするだろ?
そうして売れまくったら今でも輸出過多になりすぎな日本としては貿易の均衡が保てないじゃん。そうしたら貿易なんて成り立たないし、そもそも瑞鶴から計画を継いでいるグリフォンは技術蓄積と、ハードルが低いから3年くらいで導入することができたんだよ?
早期に数を満たさなければならなかったからグリフォンシリーズの方でまずは満たそうと考えて、急遽方向転換したわけだけど…ダメですかね?」

そうだ。瑞鶴がどのような形になったとしても、以前も説明(第一章5話瑞鶴にて)したとおり、消化不良を起こすことが目に見えていたのだ。

どうやってもそうなるのであれば、日本としては国際計画として昇華することが効率的で国益に繋がるし、国内のF-4を国連直轄地で改良、各国へと売ることで翔鷹の早期配備が可能となる。


「それで悪いとは言わないが…光菱の戦術機開発に携わった人間達はどう見るかの?」

「ええっとそれはだね~そこはほら実際に4000機ほどは輸出が可能そうなんだし、ね?許してっ!!」

「だから開発に携わった人間に言えっ!!」

「はいはい…あとはシリーズ化が一定の成功を収めていることが一つのポイントでもあるのかな。」

グリフォンのF-4・F-5の1型と2型、A~Jとまで型番が決まり、寒冷仕様や砂漠仕様、はたまた海軍仕様(※トルコ、ギリシャ、イギリス仕様海岸線付近での遊撃任務に特化した仕様であり、支援爆撃機のようなものであり、空母からの運用は厳しいと言える代物)まである。

それをテストケースにグリフォン以上の発展性を持たせた翔鷹は、中型航空爆撃機並のペイロードを持つタイプさえ開発が可能なご都合…いや傑作機へと進化していた。


「アメリカならCとでも付く、輸送型なんて最大輸送量は40トンを超すとんでもない派生機が生まれそうだしね。たぶんその改良機のほうも結構な売上になりそう。」

「…輸送ヘリでも良いのではないか?」

「そう言えなくもないんだけど、ジェットやロケット関連の技術がこの世界、進んでいるから脚生やした飛行機のほうが採算が合うんだよね。不思議なことに」

もともと、翔鷹自体がその主兵装を外した状態でのペイロードが15トン以上になることを活かし、装甲をできるだけ軽量化した戦術歩行輸送機型。

その形は取ってつけたように脚が4本に翼を生やし、跳躍ユニットを4発に増やしたことで羽の生えたケンタウロスに近い。

もはや見た目も性能も化け物と言ってよい代物だが、戦術機のその利便性から、新規で作るよりも改良した本機体でもその必要な仕事をこなすことが出来ると見込まれた。

その最大輸送量は40トンを超え、前線で尚不足がちな弾薬を運びつつ、その腕を使って弾薬補給を手伝うことも出来る優れモノだ。しかも低地巡航能力が戦術機と同じであるため、最前線での運用が可能である。

さすが戦術機関連の技術はチートにまみれている。



それ以外にも東欧ではこの機体を使ってBETAの死骸を回収することをもくろんでいるらしいが…まあ中型輸送機並のスペックを持つ機体だ、売れないわけがないだろう。


「戦術機以外にも光菱重工が関わっている兵器が配備され始めているから、トータルで考えても良いスタートにはなりそうだよ。」

「やっとか…戦術機が良い形で作用しているようでなによりだ。」

「まさにその通り。翔鷹の役割としてそのようなものがあったわけだし、それがなければ最近の軍需の好調はなかっただろうしね。」

「確かにな、アメリカと比べればその兵器市場、経験共に日本企業がアメリカ企業に勝てるものではない。5年たった今でもな。」

「だからこそ打って出るしかないんだよね」

「客寄せパンダ」正にその役を翔鷹は担ってくれたわけだ。

戦術機の重要性はこれまで口をすっぱくして説明してきたため省くが、グリフォンシリーズ、そして今回の翔鷹という戦術機を開発したおかげで軍需に対しても日本企業へ海外からの目が集中してきているのである。

それは先の戦術機の働きもあるが最近の日本の躍進にもあるだろう。あらゆる分野で画期的なもの(個人的には未だガンダムレベルのチートでもない気がするが…)を開発する日本。

それが今もっとも必要とされている軍需に取り掛かったことは世界手にも「なにかやってくれるのではないか」という期待の目で見てくれる。それだけで大きな影響になるのだ。

それはなぜか?
 
どれだけすばらしい物であれ、新作というのは新しい概念を含むものである。

そうでなければ以前の物を圧倒的に上回ることは出来ないためでもあるが、それ以前の物と比較して全てが上回ることはほとんどない。

そうなった場合、それを世の表に出るにはたまたま戦いで大きな役割を果たすか、その概念を理解できる希有な人物に見つけてもらうしかない。

そう、大抵はを買い取る側の人間はその概念を理解できず、今までの物で満足して、買ってはくれないのだ。

特にその存在からして軍は保守的であり、世に出ずに埋もれていった傑作機は多い。

過去を振り返っても、あの傑作戦車T-34や戦車大国ドイツの戦車たちにもっとも影響を与えたM1940という戦車などは、開発元のアメリカではその新しい概念を理解できず少数の配備に留まるが、ソ連によってその技術は持ちだされ、BTシリーズにその技術は活かされることになる。


時間がおしいこちら側としても、そうなっては困るし、実戦証明まで時間をかけていては結果につながらない。新しい兵器を早く開発して、早く活躍し、早く量産しなければ欧州を守ることなどできないからだ。

だからこそ、新しい物に対して好意的に見てくれる形が大切であり、売り出した当初は薄利多売策にならざるを得ない。

「本当、日本企業全体を海外に打って出させるのは大変だったわ~。日本だけじゃすぐに発展ができなくなるのは目に見えているわけだし。」

「しかしアメリカに喧嘩を売るのはまずいのではないか?軍需に対してだけはアメリカも甘い顔してくれんだろう」

「そうなんだけど、アメリカの兵器も日本が市場解放して買っているし、それまでの根回しでなんとかね…」

話がまた長くなりそうなので説明は省くが、いろいろと折り合いをつけるのはとても大変だったのだ。

「本当はアメリカに技術協力して売りだすのが最善手っぽいんだけど、国内感情やら世界への発言権…アメリカとの同盟を見直すためにもどうしても『武力』が必要なんだよ…嫌なことに」

「お主がそんな玉か…顔がにやけておるぞ?」

「ぶっちゃけ兵器産業おいしいですわ~
拙いこととか軍事機密で押し通れるし、日本の軍需企業は住み分けができてるおかげで市場進出がたやすいたやすい♪」

「国内ならばな…海外など容易くなかろうて」

「確かにね…マジで日本人、島国体質なんだって実感したわ」

今見た場合、日本はオセアニア、東南アジア、南アジア(インドらへん)などの市場に大きく食い込むことに成功したわけだが、当時計画を立てた時は大変だったものだ。

これは経済もそうなのだが日本と言う中途半端に大きい市場が問題なのである。

韓国など小さな自国市場であれば外に打って出ることに迷いはないが、文化、言語の違い、アメリカとの対立、が待っている世界に対し日本企業は国内で満足しがちなのだ。

それは産業だけを見れば致命的なものであり、今回の兵器開発もそうだった。だいたいの者が日本市場だけに的をしぼっていたからだ。

もちろん外需の大きさとは危険と隣り合わせのものであることは言うまでもないだろう。

韓国は史実世界では外需の占める割合は100%を超えるという意味がわからない状況に陥っており、国内大手銀行、国内企業の多くが海外投資家に多くの株を握られている。つまりは利益のほとんど株主に支払わなければならない地獄に陥っているのだ。海外に、だ。

それだけをみれば、ある程度の大きさである日本にとって、海外へ打って出る必要もないのかもしれない。通常であればだが。

だが今の現状、日本の高度な技術と生産力を海外は欲しているのであり、国際協調路線にのって光菱商事とネットを介して海外への輸出、輸入経路を形成しているのだ。


「で?実際に売りだしている兵器はなんなんだ?」

「えっ?もうネタバレ?ほら、こんなこともあろうかと的な感じで出したくない?」

「お主は何を言っておるのだ?まったく…」

「マリヱ様もノリが悪い…大型のものはまだ交渉がさだまってないから歩兵火器だけで勘弁ね?」

「…話せ」

「まあ、まずは83式重機関銃と84式多連装ロケット弾発射器、82式81mm迫撃砲などの歩兵でも扱える重火器類だね。これらは安くて性能も高くてホントに助かる。」

いわゆる84式シリーズである。これらは軽装甲自動車郡にも取り付けられる火器であり、東欧の兵器と被っているが高く、性能が良いものが欲しい国にもう売り出している。

「ほとんどが最近、買収した企業の兵器じゃないか。」

「そうですがなにか?」

この80年から"なにか"があったかのように製造された重火器シリーズは、全て、その販売会社の株を買い付けている。

まずは75式重機関銃を改良した重機関銃、83式重機関銃。

この元々の兵器である75式重機関銃を製造していたのは、有名な大企業、日達製作所の関連企業、日達工機だった。この株式を光菱が、競合の冨獄重工と共に全体の6割を購入。

合弁企業のような形にして改良して出来たのが、83式重機関銃である。これは元々、身体の小さい日本人用の重機関銃と言うことで取りまわしが良かったものを、さらに未来のアメリカ製の重機関銃の技術を使って性能を向上させたものだ。

他にも75式120mm多連装ロケット弾発射機を作っていた、旧大阪砲兵工廠の分社の一つ、大阪製作所を完全子会社化。赤字続きで立ち行かなくなっていたため比較的楽に買収できた。

それにより改良された84式多連装ロケット弾発射機は、BETAに対する物量への答えとして、歩兵が扱える兵器としては最大となる瞬間制圧力を持つ兵器へと進化しており、それをテクニカルに載せるように改良もしている。

他にはフランスの迫撃砲をライセンス生産していた東和工業の株式の一部と、元々の軍需企業の株を買い付け、技術融資をして作られた、82式81mm迫撃砲と83式120㎜迫撃砲。

元々主要株主だった日光製鋼所の84式40mm自動擲弾砲など、いろいろな軍需企業に技術融資の見返りとした株式の取得を行っていたわけだ。

これをすすめれば、装輪車を前提にした簡易陣地を道路で結べるだけで、これの派生形の装輪自走ロケット部隊による砲撃支援のもと、軽機械化部隊が簡易陣地を使って火力を集中できる。

また道路の修復は工兵科の新しい速乾性のコンクリートやアスファルトを用いることで即座に修復することになっている。

他にも欧州、中東、東南アジアの経済の回復はなってきてるし、農業生産高も上がってきている。軍にしたってなんとか国連共同の遠征軍も出来始めてるわけで、やっとひと段落、落ち着いたわけだ。

ふう…そう落ち着いたんだ。

なんかいろいろチートして、普通の異世界ならば「チートTUEEEすぎてつまんね」レベルの革新が日々生まれているわけだが、桜花作戦をせずに自力でBETAを殲滅しようとしたら欧州、中東は捨てられないので、マジでギリギリだった。


だが、青春を犠牲にしてまでハードスケジュールを埋めていた俺がここまでやったんだ。まあ~ここまで日本が軌道に乗ればだいたいのことは大丈夫だろ。もうそろそろ休ませてくれ…

ホント、この体とそのスペックのせいで、バリバリ未成年の俺が休むのが睡眠時間だけとかリアルブラックな生活を続けているんだから恐れ入るよ…マジでさ。

最近、心臓の鼓動が体内を通じて聞こえて来た時はびっくりした。あとションベンの黄色具合が異常だった時も、なんか変なツボ入って笑い転げた記憶がある、はちみつかってぐらいwww

えっそれは病気かって?大丈夫でしょ、たぶん…マリヱさんが体調管理してくれてるから死なないらしいし…たぶん





んっ?

なんか外がバタバタうるさいけどなんかあったか?

おっ最近ここに回された人じゃん。どうしたの?

「天主様大変ですっ!!大変な事態が起きましたっ!!!」

「ん?どうしたの?今俺は気分が良いので、だいたいのことは許しちゃうよ?」


「東欧が、東欧のドナウ川防衛ラインが堕ちましたっ!!」









「…えっ?」






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次元管理電脳より追加報告です。

国家連合組織『ASEAN』について新規報告をお伝えします。


《東南アジア諸国連合、通称ASEAN》NEW!!

東南アジアの歴史の流れとして、史実世界よりかBETAによる混乱と、その対策として軍事に傾倒していることから、史実以上に景気が良くはない。

そのような歴史の中、ASEANは1967年から発足しており、昨今のBETAの脅威と日本勢力の好意的な経済進出とその国際協調路線が実を結び、東側陣営であるベトナムやミャンマー、ラオスなども参加し始めており、対BETAのための軍事同盟としての役割が強くなってきている。

しかし歴史的に考えても、タイとラオスの対立やカンボジア、ラオスに軍を駐留させるベトナムに対して批判的なASEANなど、ASEAN内部問題が多くあり、1980年に入った当初、東南アジア諸国がその国の命運をASEANに任せて良いものかという不振も多く上げられていた。

が、国連の情報戦略等により『BETA』の情報規制が緩和され、BETAへの脅威を認識した東南アジア諸国民の意識の変化により「ASEANの団結」が邁進し、ここ3年経済的な繋がりが強まっている。

実際に起きている事象見てみても、対BETA戦のための防衛ラインの構築がASEAN内で進められており、国連を通じた共同インフラ事業としてインド、バングラデシュ、と協力して軍の防衛線の役割を持つ、連合要塞線の建設している。

その傍ら、民間への国際共同鉄道の建設、高速道路、空港路線の建設を急ピッチで進めており、日本企業やその欧州子会社、光菱と協力関係にある海外企業の進出と、その仕事を廻される東南アジア内の子会社によって、全体的にも公共事業としても役割にもなり、その路線に繋がれた首都や重要拠点を中心に(依然と比較してだが)景気が回復してきている。



《外貨獲得手段》

日本への食糧…加工食品の原料
インフラ設備の発達による観光収入
林業・天然ゴム
繊維業
資源 など





以上、次元管理電脳からの追加報告を終了します。

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筆者です。

原作での日本の活躍や国民感情…それを無理やり理由付けして擁護してみました。

否定したり『補正』の言葉で片付けるのは簡単ですが、やはり好きで書いてるマブラヴSSですし、ただ否定するだけでなく、そうなった原因を無理やり臭いですがつけたほうが楽しめると思ったのですが…どうでしょうか?

いろいろと穴はあるでしょうが、少しは見過ごせる大きさになったら幸いです。正直取り繕うのに必死ですが(笑)

では次回にて~




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