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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 
Name: カバディ◆19e19691 ID:f630435c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/01/04 16:11
pixivにてイラストを挙げました。

題名は「似合ってるよっ!えりこさん」…どっかの小説みたいな名前ですが恵理呼さんを描いてみました。

「光菱財閥 イラスト」で検索していただければ自分の作品群が出ると思いますのでそこから探してもらった方が早いと思います。



では外伝・本編のほうをどうぞ



*********************************


1984年7月5日 ルーマニア社会主義共和国 トゥルチャ県 ドナウデルタ防衛陣地


《ドナウ軍集団司令部より国連軍貴下の部隊へ通達。

ミンスクハイヴからの「師団規模」の梯団を確認。20分後に第1次防衛ラインに接触する模様。貴下の部隊はただちに増援部隊としての出動を要請する。以上》


「やっと動いたか。」
連絡と同時に周された、敵の侵攻状況と予想位置のデータを見ながら一人愚痴る。

こちら側の偵察衛星情報にのせて警告をしたのが3時間前。

以前よりかはこちらを頼ってくれるようになった東欧州社会主義同盟軍、通称《東欧同盟軍》だが事前に要請することを怠る、いや嫌がる習性があるのはいただけない。


が旅団がやるべきことは変わらない。

――相手がどうであろうと。

「ゴースト01より各中隊長に告ぐ。ポイントB-14からH-17の範囲に敵BETAが進行中。

ブリーフィングで予想した通り、いつもの"火消し"だ。

広範囲に被害が広がる可能性を考慮して、ただちに直行。編隊飛行のまま大隊ごとに編成次第、縦型複参陣《トレイル・スリ―》にて予測地域まで移動する。


――ということで旅団の諸君。いつも通り行って帰ってくるとしようか。」


既に支援要請が出されている陣地に対して、移動中である我が幻影旅団。

この部隊の秀いでいている情報収集能力…光菱から回される情報によって動く出したのは10分前。

BETAの血によって赤く変色しだしたドナウ川と遠くに見える黒海沿いを移動しながら、 その直轄貴下の第一、第二、第三戦術機甲大隊に指令を下したのは、すでに師団規模となっている幻影旅団。その団長 黒野大佐である。

つまりは俺だ。

「「「「「「「「了解。」」」」」」」」

そこで返事を返してくれたのは連隊の各中隊長6名と俺が率いる第1大隊副隊長シャルナーク中尉と第2、第3大隊の各大隊長 京楽少佐と浮竹少佐の3名の計9名だ。

「ではシャルナーク中尉、両少佐、しばらく司令部との通信に洒落込むので部隊の運用を任せるよ。」

この旅団は非正規部隊として、表向き戦場でばらばらに動いている“はず”の部隊で構成されているため、通信一つとってもめんどくさい手順を踏まなければならず、必然的に部隊の運用は大隊長任せになりがちだ。

と、そこで京楽少佐がどこか飲み屋に行くような雰囲気で返事を返してくる。

「了~解。第2と第3は浮竹とでやっときますんで、司令部の彼女と仲良くね~大佐。」

…いくら非正規とはいえ、上官にこの態度。

本土ならば即刻罰せられるのだが、この京楽少佐はなぜか許してしまう気風があるのはなぜだろう。

「こら!京楽。大佐に失礼だろ!」
そこでツッコミを入れてくれたのが浮竹少佐、第3大隊の隊長だ。こんな戦場に似つかわしくないほどの優等生かつ人気者であり、京楽少佐の部隊の3日後に来た補充部隊の隊長だ。

個人的な評価を言わせてもらえば、同じクラスなら真っ先に友達にしておきたいタイプだな。

「いやだって、お相手はあのルーマニア美人でしょ?こんな戦場でずるいんじゃないかなぁって浮竹も思うんじゃない?」

おい…

「非正規とは言え、列記とした上官だぞ。その言葉使いはまずいと言っているんだ!」
「あれ?美人ってところは否定はしないんだねぇ~」

「京楽!!」

「京楽隊長!!浮竹少佐の言うとおり言葉づかいくらい、しっかりして下さい!!」
「七緒ちゃん…くらいって…」

そこでこの回線に入りこんできたのは第2大隊副隊長の 伊勢 七緒中尉だ。

この回線は部隊内指揮官用リンクのため大隊副隊長・中隊長以上でなければ使えないチャンネルであり、通常時では発言は許可制だ。さては盗み聞きしていたな。

「昔から京楽は周りの女性にも迷惑をかけるわ、上官への敬意が足りないわで問題を起こす…」

「そうなんです…。こっちに来てからだって仕事中に美人の女性士官に声かけて、どっかいってしまったことが何度あったか」

「なん…だとっ!?」

「えっと…ごめんね?」

「「反省しているのか!!(ですか!!)」」

…盗み聞きなんてことしなければならないのは、あの京楽少佐の御守をしなければいけないからなんだけどね。

…完全に俺を無視していることにはちょっと言いたいことがあるけど。

「えっと…じゃあ部隊は任せた。」
「えっ?大佐?すすすいませn「大佐、任せて~」「京楽!!」「京楽隊長!!」

ふぅ…
仲が良いな…あれでも機転が利くし、上下とも問題を起こすようなことはないから安心しているのだが女性問題だけは起さないでほしい。あとなぜか俺の影が薄い。


…まぁ、そんなことより両少佐だ。
本来この2名はこの戦場にいるべきではないエリート中のエリートである。

あの山本陸軍退役大将(何歳なのか誰もが知らないという陸軍3大不思議の一つ)の秘蔵っ子らしく、いち早く実戦を経験するためにこの地獄にやってきたらしい…本国にいてもエリート街道まっしぐらなのになんで来たんだ…

「団長、良いですか?」

といきなり声をかけてきたのは俺が直接率いる第1大隊、日本移民兵集団を束ねた多人種部隊の副隊長、シャルナーク中尉だ。

「あぁ、すまない、シャルナーク。なにかな?」
「いやいや、なんか団長沈んでいたから、声かけたほうが良かったかなぁ…って」

「そういう風に聞こえたか?」



「まぁ、嘘なんだけど。実際はウボーとノブナガが先頭をどうするかもめててさ。」

おいっ!!とツッコミいれたいところだが、この第1大隊の中隊長以上のメンバーとは長い付き合いであり、こんな言葉の掛け合いなど日常の一部になっている。

「だろうな。まぁコインでもなんでも決めてくれ。そんなもの隊長が決めるものでもないだろ。」

「…そこは隊長が決めるべきところって突っ込むべきところなんだろうけど…はぁ~ 了解しましたよ大佐殿。大隊はこっちに任せといて。」

といって通信を切る。
未だに移民することを決まってから短いため、部隊での通信は全て翻訳されているため敬語がない。態度からして敬語なんて使わないとは思うが。


そもそも実際に今ここにいる戦力が旅団全てではない。

今現在、部隊を4つに分け、各地に散っている状態である旅団。

砲兵部隊・工兵部隊などは他の激戦区にて活躍しており、今ここにいる一個戦術機甲連隊の他にはもう2個増強大隊がそれぞれ別戦区にて活躍中である。

連隊の運用はこの3人に任せて、あとは司令部への通信いれないとだな。


「こちらは国連軍所属第114連隊 指揮官のゴースト01だ。
ドナウ軍集団司令部、応答願う。」

「こちらドナウ軍集団司令部、ゴースト01どうぞ。」

「定期巡回中だった我が部隊はこれより要請に従い、急行する。
なお、臨時指揮権を持つ第223大隊、第112大隊は即応態勢にて待機、要請については各大隊長に直接願いたい。」

この通信からわかる通り、幻影旅団は普通の軍隊のように運用されているわけではなく、各地区で不足している戦術機甲部隊、つまりは機動防御の一端を任されている形になっている。

そのため師団戦力を持ちながら、連隊規模で各地に分散配置されているわけだ。
まぁ、よそ者の我々に戦線の一部を完全に任せるわけにもいかないというのが相手の本音だろうが。

《了解。貴軍の協力に感謝する。ドナウ軍集団司令部より以上》

相手の声は冷淡な女性の声。

その言葉の中には、提携者として短いながらも感謝の言葉が入っているが、それが軍として表面上であることは言うまでもないだろう。

ここドナウ軍集団は隣のブザウ軍集団と共にバルト川防衛ラインを形成する"同盟"傘下の軍団である。

"同盟"とは東側国家の集団のことであることからも、いかに日本が協力しようとも表向きには仲良くできる組織ではない。

その同盟は今現在、以前のソ連のような機動力を主としての縦深攻撃ドクトリンではなく、東ドイツのような何十もの要塞線による陣地防衛ドクトリンを採用しており、現在だけを見ればそれは成功していると言って良いだろう。


その理由は国連からの支援もあり、同盟が真に協力してあっていることもあるのだが、さらに現実的な理由がある。

BETAの侵攻ルートがばらけたからだ。

本来の歴史通りに進むのであれば、欧州の北部東西ドイツ国境線に集中するはずだったBETAの攻勢。

その一部がこちらのバルト川防衛ライン(ロシアから黒海沿いに東欧へ行くルート)、
アルプス山脈とカルパティア山脈の境にあるモラバ川防衛ライン(ドイツ・チェコからハンガリーへ行くルート)に分散しているのである。

欧州の主攻を務めるミンスクハイヴ(BETAの補給を考えれば一度、ミンスクで補給をしなければならない)から来るBETAに対して、人類は余裕の出てきた東欧陣営とイタリアなどの南欧諸国が強固に防衛した結果、このような戦況となった。


どこかの戦線に敵が集中しだした時に、国連の戦術機甲部隊を中核とした横殴り部隊によって、他の戦線への圧力を低減させ続けた結果でもあり、その成果はこの1年で大きく表されている。

なぜここまで結果が出たのかは色々な組織から、まことしやかな情報にのって議論されているが、こちら側への利点であればハッキリしている。

それはBETAの強さである物量と戦力密集度を半分近くまで下げることに成功しているという点だ。


BETAの犠牲を鑑みない特攻とその速度を維持した大集団には、人類歴史上最高の質を持つ現代の軍隊としても、損耗は必ずしてしまう。

その損耗が限界に達した時に戦線が崩壊するのであり、今現在、欧州は持久戦の形になっている。

その持久戦となった段階で、年間数十万の個体を生産しているBETAに勝てるはずもなく負け続けるしかなかったわけだ。

だが、相手の攻勢が分散し、こちらの許容量内の規模に収まればどうなるだろうか。

戦術の基本理念となる『各個撃破』と『包囲殲滅』は言ってしまえば、相手側の今戦っている戦力を少なくし、こちらの今戦っている戦力を有効に使用できるかの問題であり、これで言えばこちらの戦力は"有効に使えている"。


そして規模が許容量で収まると言うことは、遠距離からの攻撃が可能な人類の軍隊からしたら、損耗度合いが以前より遥かに減少する。

(それを考えれば、以前までは初期に許容量を超え、準備も出来ずに戦力を有効に使えなかったことを意味する。)

もちろん、その戦力を継続的に有効に使用するためには兵站問題も解決していなければ持久戦ではなにもならず、その働きとして大きいのが後方からの支援だろう。


それらの成果があって光菱の悲観的な予想よりも被害も戦力強化も好転しているのである。

「まあ、それも程度問題ではあるけど。…と言ってもこちらに来た当初と見比べたら、ここらへんも大分変わったな」

そうつぶやくほど変化を見せるのはここらへんの防衛陣地群だ。

ルーマニアの至宝と呼ばれたドナウデルタ。そう呼ばれた面影は今は無く、2年前から支援強化により、灰色のコンクリートブロックにBETAの血で汚れた前衛的な芸術陣地と化しているのだ。


こうなったのは先の理由によって時間を得られたことが大きい。

それによって欧州全体として、中欧の3つの防衛ラインにそれぞれ何重もの要塞陣地防衛線を構築して対処できる体制が整いつつあり、攻勢期を凌ぐための強大な防衛線を日々強化しつつ、"定期便"を被害を少なくできるところまで来ているというわけだ。


そしてその3箇所の重要な防衛線の一つ、デルタ川防衛ラインはドナウ川の特徴であるドナウデルタを活かした河川陣地であり、必然的に孤立しがちな各防衛陣地に対して、その特性から戦術機による応援が必要になっている、というわけだ。


そういうことで旅団の主要な戦術機部隊がここにいるのである。



「黒野大佐お時間よろしいでしょうか?」

…あれっ?司令部からいきなり秘匿回線で通信が入ってきた。どうかしたのか?

「こちらは派遣部隊です。ドナウ軍集団司令部の方からの報告を無碍にはできませんよ。」

「この通信の情報はいつも通り残りません。

ですのでいつもどおりで結構ですよ。日本帝国義勇軍 幻影旅団 旅団長 黒野大佐殿」


と先ほどの司令部との通信と比べ、しゃべり方が淡々としたものではなく、帯を崩したような話し方で接してくる。

それがいつも要請をしてくる同盟内の知り合いであっても、20分後に激戦区に急行している今の状態では意外ではある。

が、相手の流儀にのるのも悪くない…か。

「その呼び方はやめてほしいな。ミハエラ・ステレア大尉。君と僕との仲だろう?」

急激にセクハラまがいの会話になっているが気にしないでほしい。

ルーマニア人に対しては、ここに来てから友達になったルーマニア軍人から「極度に仲をよさそうにするのが会話のコツだ」と聞いたのだ。

「…セクハラはやめてください、黒野大佐。国連経由に訴えますよ?」

…どうも対応は間違えたらしい。

ふ~む。あとで尋問が必要なようだ。あの技術中尉っ!!

「と冗談はここまでにして、なにかなステレア大尉。」

「冗談、冗談ですか…いえ、公式ではないのが心苦しいのですが、偵察衛星の情報、軍を代表して感謝致したくご連絡をいれさせていただきました。」

さきほどまでこちらと通信していたあの冷淡な言葉の持ち主とは思えない発言だ。

こんな形の2重連絡も珍しいことではないが、いつもならば先に秘匿回線を開いて、情報を提供してから先のような形だけの通信をする手はずだったのだが…

まぁ、そんなことはどうでも良い。

「いやいや、東欧社会主義同盟を形作るのに力を貸したのが日本、いや光菱なのだから情報を提供するのは当然だよ。

負けてもらって困るのは事実ではあるけど、こちらとしては東欧が早く一致団結してほしいというのが本音かな。」

それが日本の総意でもある。

1983年から《東欧の社会主義国家による対BETA同盟軍》として形作られたのが国家連合軍、「東欧社会主義同盟」

それはソ連からの軍事支援が事実上停止した1980年より議題に上がり始めたもので、各国の利権や勢力争いに揉まれつつも形作られた東欧のEU軍だ。

だがなんと、同盟すること自体を推し進めたのは我らが総帥らしいのだ。

どうやら事前から準備を進めていたらしく、今ある国際協調路線に乗った形で東側の国を巻き込み、同盟を形作る見返りにそれを支援をする体制を構築したらしい。

…それはあり得ない、と思いたいのだが嘘と否定できないところが光菱のすごいところだ。


「…誠に申し訳ありません、としか言いようがありません。

西側諸国との間に立っていただいたこともありますが、憎き西側諸国に先駆けて支援をしていただいたことに引き換え、我が同盟の内情は決して良いとは言えませんので…」

「大丈夫なのかい?そんなこと言ってしまって…。どこに目があるかわからないのではないかな?」

いきなりのカミングアウト。以前であれば粛清されるような会話だが…

「大丈夫ですよ。我がドナウ軍集団を始め、東欧社会主義同盟の軍部、議会は日本よりの姿勢を固めております。

なにより東ドイツでの失敗で学んでいますので、政治的妥当性よりも軍事的合理性を追求することを前線では求められるようになっております。

そんなこともあって、以前よりかはこのような軽口が許されるようになりましてね。」


「…それはこちらとしては喜ばしいことではあるがね。」

それが今の東欧の情勢であると言える。

ソ連以上に軍に権限がないルーマニア、東ドイツを筆頭にする共産主義一党独裁国家は、その政治的合理性を求めたことで国家の防衛に失敗している。

これは1982年、同盟が形成され始めた年に囁かれ始めた噂だ。

その噂は同盟軍と国連軍によって強化されたのにも関わらず、1984年6月の東ドイツ全国土喪失したこと。
ルーマニアは日本をはじめとする義勇軍が無ければ、防衛に失敗していた事実によって今の現状が証明している。

《東欧の協力体制が整わず、ルーマニアと東ドイツ軍の中にある正規と政治の2重指揮系統、必要以上に肥大化した秘密警察によって両国の前線は瓦解する。》

その避けれない予想は鮮明化され、東欧社会主義同盟を形成された当初、1982年11月にて政治的スキャンダルとともに同盟内に信用度の高い情報と共に情報流出した。

これと実際に派遣された同盟内増援部隊(1982年の12月)により露呈した、党による軍指揮権への政治的介入に関するニュースは、東ドイツをはじめとする共産主義一党独裁国家の強硬派(秘密警察・党の一部)の信頼は大きく失墜させた。


これにより義勇軍、支援している国を始め後方のユーゴスラビアなど、ほとんどの東欧国民と軍部の民意を得て、東欧州社会主義同盟、その最高評議議会という国家の上に置かれた組織が誕生。

その議会に権限を集中させることに成功したのが1983年になってからだ。


そうして議会は動きだし、前線が崩壊する見込みが大きくなっていた東ドイツとチェコスロバキアにて議会の権限を使って国民の退避を敢行したのが1983年2月の始めである。


しかし、そこでも利権の放棄を拒否したいドイツ社会主義統一党との間で軍内部の指揮権問題が起き、退避民の一部がBETAに襲われた事件が"偶然"起きてしまったのである。

この事件は東欧各国で衝撃的事件として取り上げられ、ユーゴスラビアのように秘密警察と党の影響が薄い国家組織として同盟を形作るのに大きな役割を果たしてくれた。

とまぁ…これが今の現状を形作った歴史だ。

光菱はこの時代の流れにどれだけ関与したのだろうか。

まぁ東ドイツ国民の8割は生きながらえることができたことを考えると良い方向に進んでいる…のだが、無理やりな介入はいらぬ不和を招きかねない。

普通であれば、だがイギリスも何かやっているという噂があるわけで、どうもきな臭い。




…んっ?ステレア大尉がこっちを怪訝そうな目でこっちを見ている。


「―――それでは黒野大佐に非公式の御連絡です。

現在師団規模のBETA群接近しておりますが、敵の規模、構成、位置を考え、危険性が高いと予想される地域が戦域マップ上のB-11、C-2、F-5、H-6とあります。

そのため大佐の部隊には、同盟軍貴下の1個戦術機甲大隊が救援しているF-5以外の3箇所に救援していただきたく、大隊単位で振り分けて急行していただきたいとこちらは考えております。」

「了解した。光線級の存在については?」


師団規模…日本の偵察衛星と安価なUAVにより、以前よりかは正確な規模の把握が出来ている前線国家では、師団規模と推定された場合、1~2万の個体群とされている規模のことだ。

そうなるとその中に平均200~400ほどの光線級がいると見られ、その危険性は数が増えることで戦力も乗数倍に上がるのが知られている。

※ちなみにこれは欧州にある5個の戦線(ドイツ、北欧、ギリシャ、オーストリア、ルーマニア)に短ければ5日、長く空いて1カ月に1度定期便として来る集団規模であり、これが前線の日常となっている。


「UAVの撃墜報告からして少数です。また光線級吶喊(レーザーヤークト)も“同盟最強の大隊”の一つを含め4個大隊が既に作戦を開始しています。」
 
クーデターを成功させたあの東ドイツの女傑、その大隊か…

1984年になってから東欧での戦術機も様変わりしており、英雄の大隊にはなんとMiG‐27が配備されているという噂だ。まだ戦場であったことはないのだが。

「良い形で偵察網は構築できているようでなによりだ。…もう少し要請は早かったら言うことないんだけどな。」

そこだけは言っておきたいね。ステレア大尉に言っても意味がないんだけど。

ちなみにステレア大尉は女性である。軍集団参謀本部付きのエリートで、言っちゃえば日本派閥に属する将軍の御令嬢。
将来日本人の誰かと政略、いや戦略結婚するだろうことが決まっている女性だ。

「かねてより支援いただいた日本製《ヤタガラス》により偵察網は構築できておるのですが、依然、党第一主義の連中が西側にも日本側にも協力的ではありませんので…同盟内とは言え、申し訳ありません。」

ヤタガラスは日本製のUAVのことだ。飛行船型偵察無人機でとんでもなく安い。どんだけ安いかと言うと、電子装備を交換すればそのまんまで高価なラジコンとして民間で売れるくらいだ。


まぁ、光線級にやられる前提のものだから性能は良くない。しかしGPSと合わせて衛星情報通信を使用することで重金属雲の影響を受けにくい上空に滞在することを含め、高性能の偵察無人機の代わりに最前線より前の上空に留まり続ける任務など、撃墜されることを前提に敵の規模を把握する役割を担っている。


それは飛行船型ならではの運用方法であり、気球と本体の大きさの比率からして、撃墜されたとしても本体が無事に地上に落着しているケースも多いため、ヤラレ偵察機としてこれ以上ないほどのものだろう。


まぁ、そんなことは置いといて、だ。そんな同盟内の内情を、同盟への協力国筆頭となっている日本に対してでも、ここまで露呈してしまって良いものなのだろうか。

「いやいや、君が謝ることではないだろう?」
「ですが…」
「こちら側に近い君だからこそ言えるんだろうけど…まぁ、光菱も私も君を見捨てるつもりはない。そのことは心に留めといてほしいな。」

「大佐///」
あれっ?なんか本土の妻に睨まれているデジャヴが見えるんだけど気のせいか?

なんか話変えないと、なにかがヤバいっ!!

「え、えっと他の戦線からの報告はそちらに届いているのかな。ほら旅団の部下が心配だからね。」

旅団貴下の戦術機甲部隊は実質6個大隊、それはここの軍集団以外にも派遣されている。…実際は旅団内データリンクで即座に知ることは出来るのだが、話を変えたいために仕方なく、だ。

「(…いくじなし)…東西をつなぐモラバ川防衛ラインとカルパティア山脈戦線にはBETAの動きはないため、今回の襲撃は"定期便"だと同盟参謀本部は結論付けているようです。
ですので大佐の部隊には関係ありませんっ。」

「そ、それは良かった。それではもうすぐ重金属雲の影響で回線が使えなくなるから…その、また後で連絡を入れよう。」

なぜか心苦しいのは気のせいか。

「…了解しました。それと各ポイントの前に国連軍用の補給コンテナが置いてありますのでお使いください。

……最後に、私を含め同盟並びに軍は、そちらとの友好が何よりのBETAに対する力になると信じております。そのことをお忘れなきようにお願い致します。

では…あの、お気をつけて。」

東ドイツを主体とする東欧からしたら《核を落とした米帝より"戦前"に同盟だった日本帝国は主義は違えど、協力出来る》と信じやすいのだろう。だからこそ、このステレア大尉の言葉だ。


「ああ。これまでと同じく行動で示していくと思うよ。日本も、俺も。
ではまた、通信以上」

そう言って、信頼を裏切らないように通信を切る。

さてここからが本番だ。その証拠に通信を阻害し始めるほどに対光線級用妨光ガスが濃くなってきている。

隊長機として通信能力を強化されたこの機体でなければ、軍集団司令部、しかもその秘匿回線を繋げることは不可能だろう。

…個人的な考えでは、通信を阻害するデメリットは光線級を抑える以上にデメリットを生じると思うのだが、BETAの発生する毒ガスをも抑えることと50キロ以上ならば高度を高く取れるメリットがあると言われると大きなことは言えなくなってしまう。

そのような無駄な考えを頭を振りながら消失させ、部隊内データリンクを主に切り替えながら再度隊長達に命令を告げる。


「では浮竹少佐。第3大隊を率いて戦域マップのC-2に。京楽少佐は第2大隊を率いてB-11に急行してくれ。

今渡したデータに補給コンテナが3戦分用意されているから、そこで再度補給してから…まぁそこのローテは大隊長に任せよう。

光線級の数は100未満。高度40までなら安全圏内だ。いつも通り存分に狩ってくれ。」


「「了解。」」

そう最小限の言葉を残し、36機ずつの戦術機部隊が編隊機動のまま離れていく。

戦闘開始まで幾分か時間がある。一番最初に戦闘が開始するのは第1大隊だろうからあと20分ほどだろう。


「信じている、か」

その各大隊が本体から離れているのを眺めながらさきステレア大尉の言葉を思い出す。最後の言葉は俺に対してだが、他はここ東欧の状況を知っている者の総意なのだろうな。と



なにせ1980年初頭の東欧はとにかくひどかったのだから。

1978年末のパレオロゴス作戦の失敗によりソ連と西側の戦力が東欧から引き上げられ、それに加えて東西の不仲がその作戦失敗の責任問題を絡めて噴出。

そのせいもあり孤独に陥り、国民の退避も出来ない状況だった東欧は、味方同士でさえ協力する体制も出来ていない末期に陥っていたのだ。

数字で表せばさらにその残酷さが際立つだろう。

1980年~1982年までにBETAによる死者・行方不明者は東欧同盟の全人口の1億4000万のうち約2500万。

これに東ドイツを始めとした独裁政党による裏切り者・亡命者狩りや経済不況による餓死・病死・凍死を含めると3600万を超えている。

総人口の3割近くが3年で消えていることからして、どれほどの地獄だったのだろうか。


だが、そこから1983年に入って急激に環境が変わる。

さきほどの同盟の形成に加え、義勇軍、国連と友好国からの支援、東西の不仲の解消。
公正な貿易網を使用でき、同盟議会による社会構造改革を行ったことで軍が全力を出せる今の状況は、依然地獄のままだが"生きられる地獄"に変わっている。


特に東ドイツ国民は同盟議会により戦略的撤退が可決され、北アフリカや中南米に退避できるようにまでなったことから、
以前、俺よりだいぶ年上の東ドイツ軍の老中将が泣きながら感謝をしてきたほどであり、日本に友好的な国が増えている。…俺も少しだけだが日本が好きになったもんだ。

―――まぁ総裁ならただ恩を売るだけでなく、利益も上げているのだろうが。


「大佐。戦闘準備をお願いします。」

「わかった。シャル。」

そう考えていたら、いつの間にか指定されていた戦場に近づいていたらしい。副隊長となっているシャルナークが話しかけてきた。

では純粋な大隊長に戻りますかね。


「ゴースト01より各小隊長へ、聞いていたな。いつも通りの戦場だ。」

「やっと戦場だぜぇぇええ!!!」「って言っても先頭オレだけどな。」「あっ?」「ウボォ―、コインで決めただろ?」「あ」「でもノブナガ先頭ヘタクソね」「フェイッ!!」「まぁ本当だけど」

はぁ…小隊単位で運用するのは疲れる…師団長兼連隊長兼大隊長…

パクノダとフランクリンに中隊長をやってもらってるけど、中尉だらけのこの大隊だと実質大隊の次が小隊だ。過労死する…


「ではウボォ―を先頭に雁行隊形。ノブナガとフィンクスの小隊で脇を固めて梅雨払いをしてもらう。…まぁいつも通りだな。」


「おっしゃぁああ!!!1番槍ぃいい!!!」「ずりいぞウボォ―っ!!!コインで勝ったの俺なのにっ!!」「団長そりゃねぇよ…」「普段通りね」「団長の後ろはボクだけどね◆」「ヒソカ、殺すよ。」

まぁ、なにか言っているが気にしない。難民部隊として各地で鍛え上げられた者を移民軍として組織されたこの大隊、その中に弱者はいない。


「では行こうか。」

「「「「「「「「「「「「了解」」」」」」」」」」」」

もはや連日の戦場と化しているデルタ川防衛ライン。そこに新鋭機であるグリフォンとそれ以上に見慣れない戦術機を少数含んだ部隊が人工的な霧を裂いていく。

どうやら今日も地獄のようだ。


~後篇に続く~





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※筆者です

未だに戦闘が始まりません…次回も外伝を上げる予定です。

おわかりの方もいるでしょうが、マブラヴ外伝小説 シュヴァルツェスマーケンを読みました。感化されました。愕然としました。

それにしてもイングヒルト少尉可哀そうです…この作品の中でも生き残っていてほしいものです。



それでは1週間後お会いしましょう。


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