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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》
Name: カバディ◆19e19691 ID:f630435c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/11/19 16:59
1984年3月4日 大英帝国 ロンドン郊外

「これにて閉会。」

そう議長が言ったとたん、先ほどの喧騒が嘘のように場は静まりかえる。そうして血の流さない戦争が終結を迎え、その場からある者はしたり顔で、ある顔は悔しげにしながら部屋を後ずさっていく。

その戦場となった薄暗い部屋の中に集められたのは、各国の代表として集められた数々の老練な猛者たち。

たしかに個人の持つ武力としては貧弱ではあるが、外交、国の代表としての立場の話し合いでは無類の強さを持つ、スペシャリストばかりだった。

その歴戦の戦士が雌雄を決めた戦場、その残り香を残すその部屋に、いつまでも佇んでいる人物が一人いた。

「これにて例の議題について各国の内諾を得ることに成功した訳ですが…よろしかったのでしょうか、ぼっちゃま。」

そう言った人物は先ほどの会議でもっとも若くありながら、その列椀をおおいに振るった若者であり、今回の日本から派遣された非公式の日本代表者だ。

だが、先ほどまで身体から溢れだるその実力と冷静で冷徹な眼差しによって相手を射竦めた実力者として面影は、今はなぜかかけらもなく、ノートパソコンにその心に満たされた不安を投げかけている。

その先の代表者にして、今や光菱の裏の顔とも呼ばれる人物の名は光宮 吉弘。

今や世界中に広まったネット回線によって繋がれたテレビ電話回線を使って、ノートパソコン越しに俺に話かけてくるその相手だ。

「良かった…と言えるんじゃないかな。結局は計画通りにいったわけだし。―――てかオマエさっきの態度はどこ行ったんだよ。
ホントに操り人形としては一流だけど、己が何かをやるときになったとたん気弱になる癖無くせよ。」

その人物である彼は、最近になって光宮家の養子となった、役者育ちの人物である。

俺達本物の兄弟が儀式に失敗した時を見越して、あらゆる役職をこなせる人物として招き入れ、鍛えられた義兄であり、父天元が作りだした失敗作だ。

――失敗作。そう呼ばれる原因は、親父に鍛えられている時から問題になったいた。

"自身"がないこと。

自信と言い換えても良いが、誰かに命令されたのなら完璧の役をこなせるのだが…命令以外の判断はこなせないという、上に立つ者になければならない資質がまったくと言ってない人物である。

「そうは言っても、ぼっちゃま。こういう性格だからあなたに拾われたんじゃないですか。」

そう、父が見捨てたこの人物を俺は拾った。まだこの体で表舞台に立つことは出来ず、狙われる危険性を考えた場合、このまま裏で引きこもっていたほうが良いかなと判断して、影武者を用意することにしたのだ。

表舞台で、あらゆる役職の者と歓談し成果を残すため。"俺"が表舞台に立つまでに。


「そうなんだけど、見ててなんか情けなくなってくるんだよ。

…まぁ良いや。そんなんだから、俺のしゃべり相手になってくれるわけだし。

で、いつこっちに戻ってこれる?次は日本で韓国の役人たちと決めなきゃいけないことがあるんだよ。」

「ホントにこの仕事ハードですよ!さっきまでの冷や汗がまだ止まらないのに、もう帰ってこいとは…

まぁ帰るまでには、ロンドンからアメリカを回って2日ほどですけどっ!!休ませて下さいよ!!」

「大丈夫。おまえより俺の方が休んでないのは補償する。一週間後に休めるかもしんないから安心しろ。」

「1週間後で、まだ可能性だけとは……はぁ…就職先変えようかな。」

「じゃあ切るぞ。体内通信機器は今の科学力じゃ探知できないから安心しろよ。」それ開発すんの大変だったんだぞ?

「えっ?いm「ブツッツーーツーーツーーー」

「…もうそろそろ、休みやらないと可哀そうだから仕事、他の奴に回してやんなきゃなぁ…でも仕事つまってんだよなぁ。」

「その優しさは当事者に伝えなければ意味がないのではないか?大方吉弘に対してなのだろう?」
いきなりの登場ですね。マリヱさん。

「まぁ…相手は予想どおり、吉弘なんだけどね。仕事もつまってるからその優しさってやつもいかせるかわかんないんで、決定してからにしてるわけ。ぬかよろこびさせないためにね。」

「部下のことも、一応は考えているわけか。
で、その当事者は今、欧州に出向いているんだったな。

…重大な計画があったと言っていたが、それが成功したのか?」

「成功と言うより化かし合いに勝ったと言った方が良いかな。」
特にアメリカに対してだけどね。

「確か、 国際戦術機選定計画についての会議だったはずだな。―――で、結果のほうはどうなったのだ?翔鷹でも押し込んだのか?」

《国際戦術選定計画》
― International Tactical Surface  Fighter Project ―

今や緊急事態に陥っている前線国家のため、国連によって推薦される戦術機のことであり、国連直轄部隊の正式採用戦術機を選ぶための計画でもある。

史実では計画だけされ、政治問題により白紙撤回されたものだが、今回は京都協定に事前に盛り込まれているものだ。


「それこそ、まさかだよ。今回は事前の準備もあまり出来ないし、そもそも、まだ出来てもいない戦術機を押し込めないよ。」

「では、F-14あたりになるのか?」

マリヱがそう思うのは無理もない。
1984年時点での量産可能な戦術機でスペックが高いのはF-14、MIG27、ミラージュ2000の順であり、則配備できる純正第2世代機は海軍機のF-14しかないことになる。

しかし、だ。

「ところがどっこい、第一世代のF-5なんだ。欧州ではね」

マリヱがこちらを怪訝そうに見ている。

『F-5 フリーダムファイター』

1976年に海外輸出向けの機体として開発された、アメリカ製の第1世代戦術機であり、量産性の高さと安さにより欧州を中心にF-4以上の高評価を得ている機体である。

F-4で満たせないこの世界の戦術機需要を埋めるために開発された機体であり、その機体の世界貢献は計り知れないものと言える。

しかし、今回の計画から見れば第1世代機という時代にそぐわないコンセプトに沿って作られた旧式機体のため、世界で量産する必要性はまったくないはずの機体だ。

「…訳がありそうだな。そうでなければ第1世代機が選定されるわけがない。」

そのような機体を俺が進めている理由が分からない。そんな顔で見ているマリヱ。当然だわな。

「だれしもそう思うものだよね。そう、これには訳がある。」

そもそも、この計画は"国際"なんてついてるけど、言っちゃえば欧州のための戦術機計画だ。

1980年になってから出来た〈EU統合軍〉はそれまでのNATO軍よりも指揮系統があいまいなままである、ということはマリヱに言うまでもないだろう。

いまや、西ドイツ国境線が目の前まで来ている現在。そんな状態を打開するためにも即刻ヨーロッパ全軍を一つの指揮系統にまとめ上げなければならない。

しかし、その形を作りあげるための国産戦術機計画、史実の1980年から始まったECTSF(European Combat Tactical Surface Fighter)計画は、前線国家が配備すべき第2世代機の開発は間に合わず、結局その夢が実るのは第3世代機のタイフーンを待たなくてはならなくなった。

そのため、そのITSF計画自体はすぐに各国が見向きもしないものとなり、EU連合軍の指揮権もあいまいなままとなるのだが、

「そこで、F-5シリーズをこちらの技術を使って、改修する計画を打ち上げたんだ。」

その目玉が、戦術機の改造機だ。

そもそも、欧州、中東、そしてアフリカが採用しているライセンスF-5シリーズ(フランスのミラージュⅢ、イギリス、西ドイツ、イタリアのトーネード等)は、コストは低いがそれ以上に性能が低い。

そもそもF-5というものが練習機を改修したものであり、本格的な戦線に投入することを前提に考えられていない機体だったからだ。

その問題点をクリアするために日本、いや光菱財閥が国の許しを得て、非公式に(と言ってもバレているんだが…)無償技術協力で仕上げることで欧州、アフリカを中心に貸しを作るのが今回の作戦だ。

XFJ計画の国連承認ヴァージョンと考えていいだろう。

「そんな上手くいくものなのか?日本が携わろうにも不審がられるだろう。F-5系列は日本では製造していないのだから。」

マリヱの言うとおり、日本はF-5を自国配備していないってのは痛い。

その系列であるT-38は練習機として少数配備されてはいるが、日本の戦術機はF-4J撃震からも分かる通り、70年代では最新であったF-4を主力配備する大国の一つだった。

「まぁね。そう予想していたからこそ1981年に日本は、ESTSF計画を立ち上げた欧州主要国に対して、非公式に共同計画を打診していたんだよ。

あちらとしては日本の技術に不安を抱いてはいるが、その立場としてアメリカに頼り過ぎることを良しとしないことは同じだし、跡が無かったからね。

翔鷹と瑞鶴からの各種先進技術立証データや…あとは各種技術と、支援項目を見せたことである程度の信用と利点を得て、計画がスタート。将来、ITSF計画として計画が昇華することを両者が同意したんだ。」

「相手からすればこちらは債権者。半ば脅しだな。」


「相手に対する思いやりだよ。少々、無理やりであろうとそれが良いものであれば将来、脅しに屈したことを良いことと思える日も来るさ。…たぶんね」

相手からの礼などいらんから受け取ってもらいたいだけだ。じゃないと将来的に世界経済の半分近くが無くなってしまう。

「……」


ということで1980年代において一番有効な兵器が戦術機である以上、戦力を増強するための技術支援も必然的の戦術機の改修となる。

この改修案が上手くいかなかった場合、既存の第2世代戦術機ではそのコストの高さと、即時量産性の低さから数を揃えられず、欧州は史実のように墓場となるだろう。

そんな未来にしないためにも欧州の戦術機の技術にテコ入れをしようと考えたわけだ。

もともと欧州は先に言ったF-5シリーズの脆弱性を知っており、時間を稼いで自分達の第二世代の戦術機を協力して開発しようと1980年からESTF計画を立ち上げていた。

だが、マブラヴ史実では新しい概念である戦術機の開発はとても難しいものとなり、各国からの仕様の違いの擦り合わせもあって、計画を遅期として進まなかったわけだ。

そうなるところに日本が魅力的な技術を持参して

「新しい第2世代機を作るのは時間がかかるよね。今日本でも第1世代機の改修機を作ってるんだけど、共同でそっちもやってみない?そっちの国債買ってあげても良いからさ」

と、日本が次善策としてF-5改修機の話を持っていったことになる。


もともと瑞鶴への介入によって、F-4から始まる第1世代機を安価で第2世代機に更新・改修するための研究は進んでいた日本。

さらに幸いなことに頭の中にはF-5シリーズの最終改修型(2、5世代機と言われるミラージュ2000改等)の青写真と、

2005年までに人類が培ったBETAとの情報が入っていたため、今開発している戦術機の技術も取り入れながらF-5シリーズをこの時代に合わせて改造することはそう難しいことではなかった。

「で、光菱としても時間と予算をかけてられない瑞鶴計画と、先の欧州のESTSF計画とを合併することを両国とも合意。
それに反対してきそうなアメリカを巻き込み、世界中のF-4、F-5総合改修するための国際計画に昇華されたわけだ。」

「なんというか…普通ならば失敗しそうなものだな、その計画というのは」

「まあ国際協調路線によって日本が支援強化したことが国際社会で大きく取り上げられていた時だからね。
それが手伝ったのは言うまでもないけど、もともと世界的な不安が大きかったんだよ。これが実現できたのは」

「不安…か?」

「1978年のパレオロゴス作戦から見られる、今の戦術機の方向性の不安だね。
それは後年言われる第1世代機の装甲防御の否定のことなんだけど、今のままの戦術機ではなく、新しい概念の戦術機を前線国家は欲しがっていたんだ。」

その間違いには戦術機で10年近く戦い続けてきた前線諸国としては当然のように気づき始めていた。

人類との戦争では必要であった防御力。

装甲への重要性は戦車級の顎や光線級の出力の高さから見ても、対BETAで見れば正しく“焼け石に水”。そうであればその分を他の分野に分けた方が良いのではないか。という考えは当然噴出する。

「そういうものか…だが元は第1世代機だぞ?第2世代機のほうがやはり後のことを考えればよいのではないか?」


「それを言えるのは"生き残れた場合"なんだよ。マブラヴ史実から見ても1986年にはBETAと相対することになる。そして史実ではそのまま敗北することになるんだ。それまでに開発、もっと言えば量産体制を構築しておかなければ欧州は死ぬと言って良い。

それまでに第2世代機を開発し、欧州全域に十分な量を揃えることなんて現実的な見方をすれば不可能だ。」

もっといえばさらに早く、1984年頃から増産し、揃えなければ勝てない。経済が持たないのだ。

「それに航空機が無くなった今、BETAに機動性で唯一勝る戦術機が必要不可欠。
確かに他の戦力の補充も必要だけど、"動かせない戦力しかない"のと"動かせる戦力"があるのとでは、戦略の自由度としては圧倒的に違う。しかも相手はなにをするかわからないBETA。それに対応するための戦術はどうしても必要になる。大量にね。」

「だからこそコストが低い機体を、なのか。確かに全面戦争をここまで長続きするのであれば、今までの質を重視した量ではなく、量を最重要視しての質の向上に変わってくるのはわからんでもない。

だがな。後方国家が協力して第2世代機を大量に作ってやれば良いではないか。」

たしかにその通りだろう。後方の大国。アメリカ、日本が協力し、最近になって力をつけ始めた後方諸国の大国を巻き込んで製造してやれば数を生産することは可能だろう。

だが数を揃えたとしても意味は無いのだ。

「それを買うお金は前線国家のどこにあるんだい?中東はまだ良いよ。石油と言う莫大な利益の出る資源を持っている。それを担保にしてやれば無理やりだが、将来的に回収する見込みは立つだろう。

だが欧州にはそれがない。今の前線の欧州諸国は戦い続けて経済に傾調できていないし、なにもよりも金が無い。それで税が高いんだ。その分物の価値、物価が上昇するし、関税も上がってしまう。

そうなればどうなる?相手の売る物の価値に比べて、値段が高い。
そうなれば相手の物を買わないようにするだろう?

そうすれば自然と欧州は輸入超過に陥る。戦争するには海外からの物資、資源が大量に必要になるからだ。そうすればただ赤字が溜まるだけ。そうなれば?」

「通貨安がおこるだろう。その均衡を保つために。各国の価値が相対的に変化するはずだ。そうすれば輸出も行える。それをこちらが良き方向に誘導してやれば良いのではないか?」

「確かに相手の国の総合的価値が低いからこそ、通貨の価値が下がる。それは経済の基本だ。

だけど前線国家はこちらがどれだけ譲歩しようとも、戦争という重荷を背負っているんだ。輸出が利益を上げられるほどに下がれば、逆に輸入する物資、戦争に必要な海外からの輸入品のそれ以上に値段が上がる。

戦争が出来なくなってしまうんだよ。さっきマリヱがいった後方国家が協力して開発した安い第2世代機が、安く見えないほどにね。」

戦争が長続きしている前線諸国の通貨は現に軒並み低い。

この状態、行き過ぎた自国通貨安というのは輸出のメリットよりも輸入に対してデメリットが生じてしまう。

なにより戦争は国内の民間生産能力を軒並み奪ってしまうもの。それが揃えらないからこそ海外からの輸入に頼るのであって、暴論だが戦争や災害にさいなまれたときには自国通貨は高いほうがやりやすい。

これは戦争のない新興国にも言えることであり、ある程度の規模に成長したその国が、未だ経済基盤が未熟であった場合。どこからか派生した経済不安の煽り(今で言えば欧州危機)を喰らって、国内経済の不安の結びついた影響で行き過ぎた通貨安を起こすことがある。

その行き過ぎた通貨安は世界経済が好調であれば良いが、世界経済が不調の場合、安くても買い手が見つからず『買い叩かれる』と同じ状況に陥るのだ。

だからこそ、新興国が先進国に対しスワップ協定を結ぶわけでその利点は侵攻国側にしかなく、負担を肩代わりする側の国(日本やアメリカ)の利益は、相手国がつぶれるリスクが低下することしかない。


確かに外交としての貸しにはなる。だがそれを取り立てようとする意志と実行する力、言ってみれば軍事力がなければただ金を与え、通貨安という利点を相手に与えるだけだ。

(現実でもアメリカはそれが出来るが、日本は不可能。ブラジルのサムライ債での一方的な通知や韓国からの国家賠償と言う名での債権の放棄など、いろいろとしてやられている。欧州危機でのギリシャなどを見ても軍事力による取り立てが出来ない今の状況では、貸した側より借りた側の方が立場が上になる逆転現象が起きている。)

そして今回、欧州などの前線諸国との通貨スワップを結んだ所でBETAに滅ぼされてはそれも意味が無いのだ。

そうなってはまずい。


「前線国家としてもこちらの需要を満たせる低コスト第2世代機が喉から手が出るほどほしい。

また国際協調路線によって制限が無くなった後方国家、メキシコ、ブラジル、南アフリカなどだね。これらも新しい兵器である戦術機がほしかった。この需要はあるんだよ。だったらどうする?」

「前線諸国を組ませつつ、戦術機を開発しなければならないわけだな。」

「そしてその前線諸国で開発能力があるのは今のところ、西欧ぐらいしかない。そして今世界、日米を含めればあり余る第1世代機をそのままにしておくことはもったいない。

―――ならばだ。瑞鶴と同じことをしてやれば良いんじゃないか?
日米欧、西側先進国が組んでさ。」


「だからあそこまで瑞鶴のプランを修正しようとしていたのかッ!!」

そういうことだ。

今はまず"数"という前提。

そして欲しがっているのは機動防御を念頭にした戦術機が欲しいということ。

だが、高い戦術機を今から開発しようとしても時間がかかる

なら今あり待っている前線諸国を含めた第1世代機を、第2世代機のヴァージョンアップし、

その改修部品と共同で開発した新規改修機(改修比率をさらに上げた新規機体)を西欧を含めて計画するしかない。

そしてその余った分を払い下げてやれば良い。後方国家、規模が大きくない国家達に。


「だからこそ経済の不均調を取り除くために、前線国家である欧州にこの計画に一枚かませて、お金をやる必要があるんだ。

今現在、前線諸国の軍事費はその国GDPの15%を超えているのがざらだ。戦前の日本が常時14%ほど――※戦後は一貫してGDPの1%ほど。あの最強のアメリカでさえ3~6%で高い部類入る――だったことから考えればどれだけ経済に悪影響を示すかわかるだろう?

そして前線諸国は兵器がほしい。そして多く兵器を製造できれば自然にコストが下がり、一部は利益として還元される。大量生産はコスト安に繋がるし各国共同計画だからね。

流れとしては今現在、日米などの後方先進諸国が製造して配備してきたF-4、F-5を日米欧の共同で改修。その一部のラインを改造して最初から第2世代機準拠の機体にして前線諸国へと大量に回す。

さらに日米欧共同の新規製造機も前線国家に輸出するわけだ。ここは日米で前線国家の国債を買って金を与えてだね。

で欧州では一応は数を満たした時点で、F-5シリーズを一端後方へ回し、改修。それを諸外国、中南米やアフリカ、東南アジア諸国の中小国へと輸出する。

新規製造機は後方国家で危険性の高い中堅国リビア、エジプト、タイあとは南アフリカなどに限定許可してやれば喰いつくだろうしね。」

「アメリカや日本の純正第2世代機が出たらどうする?そちらを買う国が多くなるのは必定なのではないか?」

「確かにそうだ。でもいきなり今まで持っていなかった兵器、それの最新機だけを購入する軍がいると思う?

だれでも練習機から入るはずだ。そして第2世代機では優しい…というよりスペックが低い今回の機体を、ハイロ―ミックスのロー兼練習機とする国家が増えるんじゃないかな?」

「……そこは詳しく知らんので分からんが、確かにその通りのような気もするな。」


「もちろん世界最大の戦術機製造大国アメリカでもその満たせない需要についてはわかっていたからこそ、今回の案に納得してもらったわけだし、前線諸国の欧州がこちらに頭を下げ、あの日本が世界に好印象を与える行動をしている今、アメリカがそれを蹴るわけにはいかない状況があったればこそなんだけどね。アメリカが孤立しちゃうし。」

マブラヴ史実のようなアメリカの中途半端な独走を許さないためにも、未だ独走に踏む切れていないアメリカを協調の名で押さえつけ、方向性を変えたいがためでもあった。


それにアメリカとしても石油の産地である中東、大きな市場である欧州がつぶれることはなによりも避けたい。

そしてなにより国内に多くある第1世代機、存在価値が下がってしまった機体を各国に払い下げ出来るチャンスを得たことが大きい。第2世代機を生み出した国として是が非でもこの話に乗りたいだろうし、日本にすり寄り始めた世界各国をアメリカの威厳を示すためにもこの計画に同調することになったのだ。


「欧州の状況も史実よりかは少しだが明るいからな。ECTSF計画も活かせるわけか。」

「それに国際戦術機選定計画であることが生きてくる。」

計画のほうももっと合理的なものになっている。

日本の後押しもあり、前衛的なものとなったこの計画では、まず、北アフリカ諸国から国土を国連に貸し出した、"フリーブラッドゾーン"が創設され、そこで製造、活用されることが盛り込まれた。

"フリーブラッドゾーン"

またの名を国連直轄地と言い、文字通り国連が管理し、国による税が発生しない土地のことであり、あらゆる人種がいる国連軍基地が置かれる土地のことだ。

そして今回の計画は正に国際計画。

技術のあるアメリカ、西欧、日本が利益を享受できるように、国際共同でその土地で行われる計画となった。

「それにしても、先の瑞鶴をこの計画の一部にしたことに対して当然、城内省から苦情が来たんだろうな?

一度見直しを迫られ、陸軍と共同の機体となったことでも腹を立ていた斯衛だ。さらに国際計画に織り込むなど言語道断と考えるのが普通だろう。」

「もちろん斯衛の方から苦情が来たさ。こちらを切り殺す勢いでね。
だからこちらも言い返したわけだ。

“日々近づくBETAに対抗するための今回の国際戦術機計画であり、これが上手くいけばいくほど日本国土へのBETAの侵略の手は遠のく。

それを国際世論が望んだがために実現した今回の計画。

その一助足り得る技術を持っているのであれば、それを提示するのが大国の努め、一大勢力を作ろうとするのならば尚の事必然となってくるのではないのか?

それにそれが成ればBETAは日本より遠のきますぞ?”ってね。」

「正論だが…それで納得するはず無かろうに…」

「もちろんそれで納得するわけがない。
でも日本としての立場としては、戦術機技術による前線諸国への支援と言うのはその利益以上に立場向上に繋がるんだよ。一省庁の顔を窺うってその利を失うのは何とも惜しいし、物に関しては十分なものを開発しているんだ。これ以上の譲歩はないよ。」

「確かにそうだが、利よりも誇り、言ってみれば自尊心を守ることを第一とする、古き考えの輩がはびこる城内省だぞ?そこまで自尊心を砕いてはいつかはクーデターでも起こすのではないか?」

「確かにその言葉、冗談とは思えないんだよね~ほんと。今現在の経済の成長が日本の民間の力だけで実現したと思っている平和バカも多いし、そういう奴に限って爆発する。確かに経済成長はその自国の民の力でもあるけど、それを上手く舵とりできたからこそここまでの成長が出来たんだ。

なにより『政府を牛耳っている光菱らを消して、政威大将軍様に国のかじ取りを任せればもっと良い国になるのでは?いや絶対なる!!』と考える輩は絶対に出てくるさ。今の生活を当然の物と享受している者のなんと多いことか。」

「もはや愚痴だな。それにしても扱いに困るのは城内省か…軍部もだが己の不利益を力によって巻き返そうとする体制を変えていかなければなるまい。」

「戦前よりかは遥かにマシだけどね。クーデターを起こそうとする下地があるのは確かにまずいかな。

…おっと話が脱線してしまったね。話を戻すけど今回の計画で、これまで以上にアメリカの先進技術が手に入ること、そして次代の戦術機計画、内々に見せた国産戦術機に生きることで納得してもらい、次代の斯衛の戦術機開発まで我慢してもらうことで手を打ったわけなんだ。」

国際計画と成れば製造コストから、生産性から何から違う。計画よりも早く、そして安く第2世代戦術機を揃えることができるのは予算に限度の成る城内省としても利点になり得る。

そうして斯衛の予算が引かれずに各種装備を揃えることも教えてやったし、こちら側としても将来の将軍の復建に手を貸すことを了承。

さらに同時に翔鷹という純国産機製造計画が表に出たことで、長年の夢だった国産機製造が適うってことで矛を収めてくれたのだ。少し譲歩しすぎたとは思うけどね。

そうして斯衛を抑え、瑞鶴と機体が何時の間にか国産改修計画から、国際戦術機改修総合計画に吸収されることになるとはだれも予想しなかったことだろう。

陸軍に関しては翔鷹を早く配備できれば言いわけだし。


「で、次は国内の利害関係ではなく、海外の利害関係を調整しなければならなくなったわけだけど」

「困難を極めるだろうな。国際計画と言うのはいつもその方向性の舵取りと、その利権問題で対立し破局となる。」

「確かにね。これに関しては欧州と日本が共謀、アメリカに対して譲歩を引き出そうとしたわけだ。」

「ほう…確かライセンス料の引き下げだったか」

「そう。もともとF-4とF-5はアメリカからのライセンス料金は良心的だ。あのBETAを押し戻すためにも前線諸国には安かったんだよ。日本には少し割高だったけど」

まあアメリカからすれば今の戦術機の市場を形作るための策でもあったわけだけどね

「で最近の第1世代の否定、F-14の開発が表ざたになることでその流れが世界各国、アメリカ自身にも強まった今、さらなるライセンス料の価格下落につながったわけだ。そして1984年には最強の第2世代機であるF-15の配備開始。これによって完全に第1世代機の価値が薄まった。
戦前のドレットノート級の誕生による、大英帝国と同じ道だね。」


「それまでの戦艦を一気に旧式化せしめたドレットノート。たしかに画期的であり、さすがは大英帝国と言わしめた代物ではあるが、それの誕生によってもっともダメージを受けたのは何を隠そう、旧式艦を一番多く持っていたイギリス自身だったな。

確かに第2世代機の誕生は戦前の大英帝国と同じく、アメリカの己の首を縛ってしまった面もあるわけか」

「そういうこと。そのおかげもあってアメリカはこの計画でライセンス料の減衰分の利益を出さなくてはならなくなったわけだしね。

その頑張りが、日欧の先進技術を盛り込んだがための未熟な部分、製品としての完成度を上げる部分に尽力してくれたおかげで、早期に量産化されたわけだけど…その話は今度でいっか。

でさっきも言った通り、まずは数が必要と言うことで、それに同調するように日欧のライセンス料…技術特許料を下げて利益を少なくしつつ、計画の合理化を推し進めて、製造部品の振り分けなどを強調して押し占めることになったわけだ。

さらに製造コストが安くなるように日米欧の利益配分をどうするかだね。」

「それが中身か。国連の元とはいえ、製造してるのは各国企業だからな。そこの詰めの話になるわけだな。」

「そういうわけで会議の議題が、前線国家の代表達が国連幹部を巻き込んで、日米に対しての利益率とライセンス料の値下げを迫った…というのが今回の会議だったってわけだね。」

吉兄が行ったさっきの会議のことね。

「それで人芝居打ったということか。先に言った日欧が共謀というのは。
日本は確か、事前にライセンスを国連に無償譲渡する約束だったはずだから、これはアメリカの利益率を下げるための策略になるわけだな。」

「そういうわけ。利益率を最低限にしつつ、国連税の一部から補助金を出されるという段階で『日本はこれも京都協定の一部となる』
として日本はいやいや欧州の要請に従った形を演じたわけだ。

京都協定を進めた国としての責任としてね。

で、アメリカと一緒に妥協を強いられる形に会議が進行。前線国家の願いを聞くと言う形で妥協を強いられた日米はしょうがなく、値下げに踏み切ったわけだ。
純粋に考えれば日本に利益になる話じゃないからアメリカも疑わなかったしね。共謀に関しては」

これには欧州、ECTSF計画を主導したイギリスの働きが大きく、さすがは大英帝国。覇権を握っていた経験は伊達ではなかった。

また次期常任理事国を増加させる動きにはフランスと同じく、こちらの味方になることは了承してくれたので、日本が圧倒的に不利、というわけではない。


こうしてまで世界に大量に売られることが決まり、その量産性を日本の知識を使って実現しつつ、アメリカの習熟した技術で補完。

欧州の危機感によって計画が加速すれば後は先進諸国としての実力を見せてくれた。

もともとの日本の提示した基礎設計図とその概念が、後押しして計画は順調に進行。

世界の半分以上の規模を持っている国家群であればこれまで比べ、異常なほどの生産が可能になるだろうと世界から期待された。


「で、日米欧間の決着がついたことで人類全体での戦術機の量産開始が適ったわけだな。」

そうして
『いまだ世界の戦術機の主流である、第1世代機を早期に第2世代機に更新する必要がある。』

という名目の元、1981年時世界の大半であった2種、後に東側のベストセラー機であったMIG21が加わり

第1世代機を安価で第2世代機に改修する現行機改修案Aと

さらに第2世代機の数が圧倒的に足りない現状に合わせて、A案ではスッペクが低すぎるために新規製造機B案が浮上。

合計6種の機体計画が同時にスタートし、元々MIG21がF-4のライセンス生産・改修機であり、F-4とF-5とで似通った部分が多くあったため主機などを統一する流れになり、

量産効果を最大に見積もれるよう、その6種の中で部品共通部分を多くすることになったのだ。

もちろんと言うべきか、F-4、F-5、MIG21の中でもっとも第2世代機への改修が容易だったのはF-5だった。その方向性、機動性、運動性、そしてコストの点から見て、F-5の新規製造機がもっとも量産されることになり、この計画の名前でもあったグリフォンの名はF-5シリーズを指し、他の二機についてはGF-4やGーMIGと呼ばれているようだ。


また先に言った通り製造場所も先進諸国ではなく、前線国家に近く関税も税金も物価も低いフリーブラッドゾーンで製造。

F-5のB案を主流にして

F-5の部品製造数を欧州5米3日本2に

F-4は日本4米4欧州2に

MIG21は日本2米2ソ連2にソ連・東欧・中国のそれぞれの仕様に4

の割合で各国に割り振られ、各国がフリーブラッドゾーンに作った出向工場で製造。


日米欧の共同出資会社で組み立て・改修工場を立ち上げることで製造コストを低く見積もることができるとして、国連が後押ししたのだ。

「そんな感じでマリヱも知っている通り、F-4ではなくF-5をこの計画の主流とされて国連主力機に選定。

F-4は改修機A案を第一に、新規製造分に関しては後方国家のゆとりのある国が購入するぐらいで、F-5の新規製造分と比べて数は少なかったわけだ。」

「ここまで聞いておいてなんだが、なぜF-5なのだ?F-4のほうが優秀と聞くが。」

「それはやはりF-5のほうが機動性や運動性を重点に置かれていながらコストが低かったからかな。その分中身が単純だったんだよ。

いやな言い方だけど、F-4はその機体を改修して性能を上げようとすると、いらない部分が多すぎてコストパフォーマンスが低くなってしまうんだよね。」


だがF-4のほうにも利点が無いわけではなく、そのA/B案ともに、元瑞鶴としての斯衛が求めた敏捷性と高さと近接戦闘能力に対して、一定の評価を頂き、近接戦闘を好む国からはF-5案以上の評価を得ている。


「そうした理由からF-5が主力選定機に選ばれ訳で、今あるF-5シリーズの製造ラインを活用させつつ、未来のトーネードADV、ミラージュ2000改のデータを活かせる案として、

最初から作る本機体、ITSF83 グリフォン として売り出すトラッシェ2型。 各国改修使用3種と今あるF-5シリーズを改修するトラッシェ1型各国仕様との部品を共通させ、製造を開始しているのが現状なんだ。」

新造量産型と現造改修型の二種類を同期させ、早期に量産できる体制を作る、それが本計画の意義でもある。瑞鶴で見出した早期に第2世代機を揃えられる唯一の策だった。


そうして実現することになるグリフォンは改修型1983年から、新規製造型が1984年から配備されることになる。


ここまで早期に開発から量産までこぎつけられたのは

日本のデータからまるで未来を知っていたように出された将来設計図など数々の利点があったればこそであり、

なによりそれ以前に行っていた両計画・瑞鶴、ECTSF計画の研究成果に繋がったためであり、3年(瑞鶴が開始された6年近く)ほどでA・B案両方とも軌道に乗ることが出来た。

そんなこんなで1983年後期から最初の量産が開始されるという驚異的なスピードで製造されることとなったわけだ。


その機体の内容で特記すべき内容は、

近接戦を意識し、その要求仕様を追加パーツと内部基本構造の改修によって実現。

一部の装甲材料を変える点と不必要部分の装甲を削り、軽量・強化した上で主機出力を向上し、腰部の弾薬貯蔵量をUP。

また跳躍ユニットを主機換装と本体軽量化も相まって、F-5シリーズで航続性能が1.8倍、運動性がその外装変化と空気抵抗軽減、能動的重心移動を取り入れたこと、跳躍ユニットの強化によって1.6倍になっている点。

内部・ソフト面には特に力を入れ、アビオニクス、光線照射警戒装置、統合データリンクを強化し、日本が輸出しているOSを乗せ総合力をUP。

またその航続性能を活かした各武装オプション(制圧支援用クラスターミサイル装備等)も共有して採用することになった。

またF-4、MIG21の利点をそのまま残すため、両機の改修は全体的な性能向上に加えて近接戦の重要度をF-5よりも上げ、代わりにF-5のほうは機動性。航続性能などを上げることでいち早く戦場に到着できるような仕様でまとまっている。


唯一不満点として運動ベクトルがとんでもないほど変わってしまったため操縦特性が変わってしまったことはパイロットから不満が出ているらしいが…使っているうちに慣れてくれるだろう。

また、両方共に言えることは簡略化できる部分を徹底的に簡略化、この兵器開発に参加している各国で部品を共通させて単価を下げたことや、既存の工場を使えることから即座に量産体制を確立することがこの機体の魅力だ。


そしてそうすることで供給量を満たせる仕様になった今回の計画では、それを受け入れられる需要、京都協定によって生まれた『戦術機特需』が大きいだろう。




「で。新規製造分などはいかほど量産される見込みなのだ?」

お金の話のほうが好きみたいですね。マリヱさん…

「う~ん。最低でもF-5の新造2型が1万4000機、改修する1型一式が全世界にあるF-5シリーズの7割、2万4000機くらいにはなると思うよ。

他にはF-4の新規製造B案が6000、改修するF-4は1万8000ほどで、これにMIG21が付く加えられるから、約8万機近くの戦術機が新しく(一応は)第2世代機として生まれ変わることになるから、戦力は増えるだろうしね。」


この数は日米豪などの後方国家は何年後かに配備される純正第2世代機との更新費用を浮かすために、

前線国家の中でまだ余力のあるインド・西欧・中国・ソ連などの大量に第1世代機をもっていた国は自国の機体を早期にアップデートするために、この計画によってその大半が改修、前線国家に払い下げ、または自国配備を行うことが決定したためであり、

中南米、南アフリカ諸国という新しい市場を制するために、第Ⅱ世代機の先駆けとなる機体として、この次期を見込んだということもある。

そんな事情を含めると単純計算で5年ほどで、最低でも100~200兆円ほどの売上が見込める計算となる。さすが国際計画、半端じゃない。あのアメリカでさえ、市場占有率を下げてでもこの利益に喰いつこうとした理由が分かるはずだ。

それになにより、今回の機体の整備を完璧にに行える国は元々の製造元であるアメリカ以外おらず、改修工場に対しての投資量はアメリカが一番多い。

そこはアメリカ、ただでは倒れないってことの証明だ。

それ以外にも、アメリカのほうもF-15やF-14を日本の翔鷹と同じく、各国にHi-Low mix構想を各国に推し進める方針に転換する予定だったようで、今回の計画に対してもアメリカは好意的でもある。

なにせこの計画、1980年代には避けられそうにない中東、欧州の陥落を防ぐためのものであり、改修機A案の機体寿命が短いことからも、90年代から始まる先の戦術機の更新に、日米は切り替えていたのだ。


「だがやっと、正面戦力がそろうわけだな。上手くいけば7万機の戦術機、単純計算600個戦術機甲連隊近い戦力で、ユーラシアを囲むことが出来る。
そうすればさすがのBETAの侵攻も食い止めることができるはずだ。」

「そろうまでに何個連隊消滅するかはわからないけどね。
まぁ数はそろうよ。ここまで金をかけたんだ。これに国連のよる自走砲量産部隊を加えてやっと、今の敵の攻勢を十分に抑え込める。」

「このまま上手くいけばだがな。」


「まぁね。いくらかの損耗は勘定のうちに入ってるさ。

それにこれは数だけでなく、前線国家の中に共通規格を持つ戦術機が生まれたことになる。 国際派遣部隊の補給も以前よりかグッと楽になるし、こちらからの支援物資の中に戦術機の部品が含まれれば、緊急的な対応も、その整備も共同で来て効率化が進むんだ。

数字以上の利益が生まれたんだよ。……まあこれを押し込むために各国への円借款や経済支援を日本がしたわけでいくらかの不利益を被ったわけだけど、常任理事国入りが現実味を帯びるほどの成果を出したことには変わりはないさ。」

そういうことだ。利益だけでは、己の輸出による経常黒字を続けたところで、前線国家が疲弊しては将来、日本の国土にBETAを招き寄せることになりかねない。だからこそこちらが買い、あちらに売る、その貿易を成り立たせつつ、その武器輸出で前線を持たせていかなければならないのだ。

「で欧州の軍事に関して言えば戦術機の数には目途が立ったわけだが、その国家間の連携問題はどうにか取り除けたのか?史実の歴史ではその関係の溝が問題視されていたではないか。」

「もちろん、今回の国際計画もそのへんを整えるためでもあるよ。
日米に譲歩させておいて、自分達は仲間割れなんて近代国家として恥だからね。

これと同期してEUの指揮系統は、海軍はやはりイギリスが主導し、陸軍は西ドイツ、フランスが主導することになり、その最高指揮官は各国の推薦で決まることになったらしいし、欧州の状況も好転してきてる。

東欧に関しては、ばらばらにソ連との結びつきを大事にしていたわけだけど、東欧州社会主義同盟という国家連合を作って、ソ連とEUの支援の両方を受けつつ、EUと協調、欧州全土に北アフリカからの支援を含んだ協力体制の構築には成功しそうな感じだね。」


「欧州はそうかも知れんが、貧乏な中東のほうはどうするのだ?
未だに敵の攻勢が続いているのだろう?戦術機もそうだが、他もそろっていないのではないか?」

そう、中東は1984年に入ってから、ユーフラテス川防衛陣地に対して師団規模(3万)以上の大攻勢が毎月のように続いている。

今や半年前に計画的撤退を行ったのにも関わらず、以前までなら危機的な状況に陥っているほどの戦力が川の対岸側に集まりだしている。

具体的には約3カ月で戦線のどこかで軍団規模の攻勢が予想されるほどの危機に晒されている中東。

「それに対して中東のほうも先の戦術機計画以外の秘策があるんだ。」

「秘策?」

「そう秘策、貧乏国家のためのね」

いきなりではあるが「トヨタ戦争」を知っているだろうか。

この戦争ではチャド政府軍と反政府勢力の両者が、トヨタ自動車のピックアップトラックをテクニカルに改造・使用したことで有名となり、その企業名がついた内戦のことである。

その車両の荷台後部に大きく表示された「TOYOTA」のロゴが目立った為「トヨタ戦争」と呼ばれるようになった戦争のことであり、安易に軍用に転用される民生品の危険性を知らしめた戦争である。

その影響は先進国内ですさまじく、紛争地帯へ輸出することを批判する記事が掲載され、同時に各政党へのこの件に関するアンケートが行われるほどだ。

その戦争では、大量のピックアップトラックがほとんどそのままの形で、人員や物資の輸送に使用されたり、荷台に重機関銃や対戦車火器を搭載したりと、車上射撃まで可能にしたテクニカルと呼ばれる車両が広く使われていた。

そんな便利で安価な兵器は、紛争の趨勢を決める存在にすらなったもので、さらに長距離ロケット砲や対空砲を搭載することすらあったのだ。正に貧乏国の機甲部隊である。

「民生工業品を使った機械化部隊の量産計画だよ。

言っちゃえば、BETAのおかげで紛争が少なくなったこの世界で、人類との戦争でも使われた物を、BETA大戦に有効なものにできないかと考えたのが、今回の軍事転用を考慮した民生品開発計画なんだ。」

計画としては、日本の大手自動車会社が協力して、数種類の軍・民両用車(ジープ、ピックアップトラック等)を開発。
銃器周りを中心に技術協力することで、規格を統一、部品共有を促し、トータルコストを下げるのがこの計画の目的であり、薄利多売を基本として、民間でも利用できるように、信頼性を損なわない程度に燃費を上げ、電気自動車タイプも生産計画に入っている。


「そんな、民生品でも使えるものなのか?さきほどのように国際計画でもできるものだろう。」

「う~ん。それも出来るけど、大型自動車はやっぱりアメリカが強い。それやったらアメリカに有利すぎるから、日本国内の計画としたほうが良いんだ。」

そこがアメ車のだいご味でもあるが。

「まぁ、納得できるものだが、それだけではないだろう?」

「もちろんさ。まずは量産量が違う。各種パーツを共有化させて光菱・遠田・冨獄・自動車の大手が協力。最低でも300万台は国内、海外合わせて製造する予定だ。」

さきほどの通り、軍の軽自動車の単価は民生自動車の3倍は違う。
地雷対策等戦争に耐えられるような能力が必要でもあるからだ。

それが300万台。1台当たり能力は低いだろうが、俺の未来技術で若干だが燃費も耐久力も上がっており、民生品としての性能も高い。

それに加えて、値段も国からの大規模な補助金のおかげもあり、販売開始から2カ月しかたっていないが売上は好調だ。

国内では、田舎を中心に人気を博しており、海外ではインド、中東といった前線国を中心に売り上げを伸ばしている。

これは光菱が製造した、低燃費でありながら馬力がある新エンジンのおかげとも言え、各社に格安でライセンス生産をしたおかげで、この規格車は前線国家のスタンダードにまでなりそうな勢いとなっている。

それに付随して、各国にある自動車大型販売店には簡単な修理・改修機能を持たせて客に対してのサービスの向上計画も遂行中だ。

「量がスゴイのはわかった。しかし、そこまでの兵をどこから?」

「もちろん、軍の中で一番多い歩兵部隊だよ。」

ではなぜここまでBETAに対して民間品が有効と考えたかだが、それはBETA個体総合戦闘力の高さに対するためと言える。

BETA一体の戦闘力は極めて高く、その脅威に一番の被害が出てしまうのが一番多い歩兵部隊だ。

歩兵は、戦線で抗している場合はまだ良いが、大型BETAが出てくるとモブになり下がる。

それ以上に困るのが、後退や移動時だ。その時に襲われた時は、各個撃破され、ただ蹂躙される「足手まとい」となるのがBETA大戦の常となっている。

それを防ぐためにも強化外骨格部隊、本当の機械化歩兵が増えているわけだが、発展途上国のような貧乏国は歩兵全てを機械化することなど出来るわけがない。

「だったらその足でまといになってしまう、歩兵のほとんどを機械化(軍事用語的には・・・自動車化とも)しちゃえば良いじゃないと考えたのが、この計画だ。」



また、この計画は車だけではなく、大型船舶、低空飛行用ヘリ、そして装甲列車なんかも計画の中に入っている。


重火器は、中小型BETAの波に、ロケットランチャ―は大型BETAの破壊力に抗するために基本武装としてセットで販売することでさらにトータルコストは下げている。

さすがに今はまだ取り付ける兵器については、ソ連やアメリカなどの兵器製造大国に性能で負け、ブラジル南アフリカ中国エジプトといった途上国兵器製造国にコストで負けているため、海外の兵器が主流だが、そのうち追いつこうとしている。

こうして全てとは言わないまでも、貧乏国の軍隊でも軽機械化部隊を量産することが可能になったことは大きい。

BETAの戦力が集中する部分に、即座に移動したり、先回りして待ち伏せする機動防御を実行できるようになったからだ。

「他にも、部隊当たりの弾薬量を増加、機動力を持ち、データリンクも簡易的に構築できる。メリットはたくさんあるんだ。」


これは歩兵の最大の敵、「戦車級」の時速80キロの波、それまでの歩兵火力の射程である1キロ圏内を40秒ほどで突っ切るほどの物量に対抗できる瞬間弾薬投射量を中隊単位で持てるだろう。

それに車に搭載するナビと無線で集団運用、集団撤退もスムーズにいく。


「これは命の安い貧乏国にとっては唯一といって良い抵抗策であり、中東は石油生産国だから燃料不足は心配ないわけか。

しかし、ここまで有用ならなぜ、今まで計画されなかったのだ?」


「う~ん。それはBETAにインフラを破壊する概念もないって知らないし、自動車を大量製造できるなら兵器製造にラインをまわしてしまうからじゃないかな。兵器ならいらない部分を削る怖さがあるから単価が上がっちゃうし。

それに、1970代年まで自動車を安心して大量製造できる平和な国はアメリカしかいなかった。最近になって日本がでてきたわけだけどね。」


インフラを破壊する概念のないBETA相手であれば、戦場になったとしても使えるケースが多い。

その可能性があるのならば、自動車の燃費の良さを活かして陣地を移動でき、兵員輸送から地雷施設。
拠点防御のための速射砲台にまで転換できる前線での汎用性を持つ、今回の民生品転用計画の利点は大きい。

取り付ける兵器の汎用性の高さから言っても発展途上国(人件費の低い中国からインドなど)でも量産が可能な安価な兵器を取り付けることが可能である。

「その分、安全性が悲しいことになっているが…良いのか?」

「それはしょうがないよ。高いものは買えないんだから。
民生品だから耐衝撃性も低いし、光線級が出てくれば終わりだけど、何より安い。

換わりに火力と機動力が手に入ったことが大きいからトータルでは大きくプラスになっているし、そこは無視するしかないよ。」


以前よりかはマシである。難民にいきなり家をプレゼント出来ないように、前線の貧乏国家も、まだマシといったレベルの兵器を量産していくしか今は道が無い。

人類相手ならば防弾機能を考慮しなければならなかったが、大抵のBETAは銃のような遠距離兵器を有さないため、近づかせなければ被害は出ないとして、防御を無視。

衝撃で部分的に壊れやすくし、車の生存性を上げることとコストを下げるほうを選んだ。つまりは民生品の耐衝撃構造そのままだ。


他にも光線級が出てくれば致命的な脅威となるが、光線級は少ないためそこまでの対策は出来ない。

なにより戦車の正面装甲を瞬時に焼き切る光線級には、生半可な装甲は意味を持たないため、通常の歩兵よりも重火器を持てるようになったため撃破できる選択ができ、進歩にはなっている。


それにBETAに対しての追撃戦では、いつも逃げられていた人類に"足"が生まれたことは大きく、戦時体制以外は民間に貸し出せば良い。

それにそれを有功に運用するための道路建設、線路建設も国民が一家に一台車を持てば国民にも必要とされる。そうすれば民需、軍需を合わせて大規模な公共事業を進めることが出来るわけだ。



「ふう。これで一応は戦況が一段と落ち着けるわけだな。敵主攻正面の中東、欧州に対して戦力の増強がなった今、そう簡単には落ちんだろうが…」

「これだけでBETAに勝てるかというと…そうではないって言いたいんでしょ?わかってるよ、こんな計画の一つや二つで何十万の兵器を作ったところで足止めにしかならないってことにはねっ!!」


マジで痛い所をついてくる。このマリヱさん。一喜一憂しても良いじゃない、人間だもの。まあそんなこと言えば計画の主導者が人間らしく振る舞えるほど、人類の未来は明るくないとか言われそうだけど。俺まだ10歳超えた、とかそんくらいだぜ?勘弁してほしいものがあるよ…

「なら良いのだがな。」

マリヱさんが何かを言いたげにこちらを見ている。言いたいことはわかるけど鬱になる。

「……現時点での戦力と兵器では、BETAの巣であるハイヴ攻略は不可能、それを提唱しているのは誰でもない、オレだからね。わかっているさ。
…だからこそ、地上戦力を充足させてまで戦線を膠着状態にしたわけだけど。」

そういくら現在の地上戦力を整えようと、ハイヴ攻略は叶わない

それはパレオロゴス作戦やスワラージ作戦(1992年インド大陸反攻作戦)によって証明されてしまっている。

そもそもこちら側の陣地である、優位な地上戦でさえ敗北を重ねている時点で、ハイヴ内部で勝つのは夢のまた夢。

ハイヴの構造から見ても、地形的優位性は圧倒的にBETA側にあり、その走破性、機動力から見ても勝てるものではないのだ。

なにせハイヴはBETAの巣。地下内部の環境は極悪を極め、生身の人間が長期的に滞在できる場所ではなく(※酸素濃度、悪性ガス、高温多湿)、奇襲がしやすいように偽造横坑までついている。

それに加えて母艦級という、ハイヴ内を縦横無尽に移動でき尚且つ戦艦の主砲にまで耐えられるBETAがいるとなればお手上げ状態。

そんな中、現時点の戦術機では武器弾薬と敵の数の比率からして、大広間まで辿りつくことは不可能だろう。


ならば有効な策とは?


はっきり言えば現時点で有効な策などない。だからこそ時間を稼ぎ、地上の戦線を硬直状態にしながら、ハイヴ用の兵器を作る時間が必要なのだ。

「しかしだ孝明。今現在、人類が殺しているBETA数はBETAの生産予想数を大きく割り込んだままなのだぞ。
その予想に従えばBETAの個体数は数年後には約400万体を超える計算になる。それがどういうことになるかわからぬ主ではないだろう?」

聞きたくない現実を叩きつけてくれるマリヱさん…

それの意味することは

「BETAの本格的な攻勢、その時期の到来だろ?」


「そういうことだ。」

今現在、各ハイヴのBETA保有数は完全に必要量を超えている。

では、それ以上の数が全体で溜まった場合どうなるか?
その答えは新たな土地を求めることになるだろう。それは生物であれBETAであれ同じことだ。まことに困ったことなんだけど…ね


「もうそろそろ、後方のカシュガル、ウラリスク、ヴェリスク、スルグードの4つのハイヴを中心に、溢れる個体数が激増することになるのは主も知っているのだろう?

その数は少なく見積もっても約40万。これまでの経験から言えば50万を超えるだろう。

これが前線に到達するまでに如何に対策を企てるかだったのではなかったか?初期の戦略目標がだ。」

「うわぁ…それを言わないでよ…考えてる、考えてるさ。

でもホントBETAの物量、生産量が半端じゃないな。敵の生産工場を潰せないのは本当に痛い。困るってもんじゃないよ…」

そして今、BETAの攻勢期が迫ってきているのだ。これを凌がなければ人類の未来はないわけだが…


各ハイヴの生産された規定数以上の個体は、最前線に移動する。

そのことからわかることは…内陸部ハイヴの生産した戦力によって、今の時点の人類と比較した場合、約3倍の戦力が…BETA側で生産されている計算になる。


もちろんこれ全てが戦力として使われているわけではない。資源回収からハイヴ拡大、各地域維持、そして攻勢など、その目的が資源回収である以上、全てが攻勢に使われているわけではない。


が、使うこともできるのがBETAなのだ。どんだけ怖いかわかるだろうか…


これは先の国際計画が全世界に浸透すれば多少改善されるだろうが、敵の倍以上の回復速度は変わらないだろう。

しかも人類は、教育しなきゃ戦力化できない。つまり負け始めたらもう勝敗を変えられないわけだ。こんなんじゃいつまでも戦線は保てないってね。

しかも、それは通常時のことだ。戦力を貯めることでその回復力を見せずに着々と戦力をため続けてきたBETA。

それがあふれ出るのは遅くとも1984年後期。そこから3年はBETAの攻勢時期になる。

その主力が追加兵力50万。



史実の佐渡島ハイヴ、甲21号作戦時の約2倍の戦力がそろい、そのほとんど約30万の戦力が集中運用され、そのまとまった部隊がソ連、欧州、中東と順に打撃を与えていくのが史実である。




これを発見したのは1980年の8月。


BETAの行動データの整理から、欧州陥落の原因がなにであるかを突き止めようとして出てきたのがこの大規模定期便の存在だ。

7~8年に一回ほど余剰戦力を集中運用し、膠着していた戦線を吹き飛ばすための集団だと見られ、史実通りであればまずは北方ソ連を蹂躙してノギンスクハイヴを作り、そのまま逆時計周りに欧州をついたのが1985年ほど。これで西欧の2大巨頭、西ドイツ、フランスが無くなってしまうことになる。

現段階では史実より奮闘している影響でいくらか敵戦力の減少に成功し、BETA側の決行時期はいくらか伸ばしていると予想されているる。

これは人類の、いや光菱の努力の成果というものだろう。

だが、決行時期を延ばしたとしても、結局はハイヴを潰せる手段が無い以上、敵は来る。

それが遅くとも1986年。

敵の規模は先ほど述べた述べ50万のBETA。先進国でも1か月で制圧できるほどの規模だ。

正に圧倒的暴力っ!!!



上記二つの計画と、国連を通じた兵器の大量製造・共同購入は全て、これを耐えるものだったというわけだ。

そのためにも遅くても1986年後期までに、欧州・中東にそれぞれ2000機以上の戦術機とそれ以上の装甲車両。それを支援するための砲撃部隊。そしてそれを持たせる兵站部隊を持つ大組織を作りださなければならない。

その規模は3年で、今の日本帝国総兵力の2倍を作りだせと言われていることに等しく、日米が協力したとしても苦しいというのが本音だ。




「私の戦闘力は53万です。」これを言われた側の境地がわかる。

光が見えたと思っても、それを叩き潰してくるBETA。


しかし、負けが許されない。タイムリミットは長くて2年。これまで以上に頑張らなければいけないが、ミスッたらこれまでの努力が泡となる。





ふぅ…じゃあ他の話に変えて気分を変えなきゃな。






「じゃあ…BETAの方はこれ以上、特別な計画があるわけじゃないから次は、日本のほうだけど…

今現在、アメリカの勢力下に入っている日本は、国際社会で軍事的に成果を出さない限り、真の独立、日米同盟の改定はできるはずもないことはわかるよね。」

「うむ。日本の現状についてか。
輸出産業のほうもアメリカとの小さくない軋轢が発生している今、これ以上の行動は出来ないと聞いている。今でさえFー4のライセンス料を上げるとか脅してくるほどらしいぞ?どうするのだ?」


「そっちのほうは周りから既成事実で埋めていくしかない。

みんな意外に気づいてないけど、国内のアメリカの影響力と海外から見る日本の立場とを比べると、海外や国民からはアメリカの犬と見られがちだが、実際はそうでもないんだ。…ちなみに俺がした国際外交の前の話ね。」

「そうなのか?」

「じゃなきゃ征夷大将軍を大東亜戦争敗戦時に戦犯扱いしてるはずだ。皇帝ではなく、その代行者なのにだ。

それにBETAの日本侵攻時に米国の命令を聞かないなんて出来ねぇさ。

だからこそ、いまだに日本の影響力のある東南アジアと、オーストラリアとの関係を使おうと思ってる。日本とアメリカとの対等な友好国になるためにさ。」


「どういうことだ?」


「ぶっちゃけちゃうと、

オーストラリアに租借の打診をするってわけだ。」




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次元管理電脳より追加報告


中東戦況情報が追加されました。NEW!

《中東戦況》
主人公が来てからの2年間の未来状況変化です。

※アメリカを100とした暫定的数値です。※

京都協定の効果を表示しています。

国連戦術機選定計画・民生自動車量産化計画の効果を含めました。NEW!


〈戦力〉がプラス5ポイント上昇しました。NEW!
「36→29」となる未来が
「36
→31(※2年後、国連による直接的ポイントを抜いた数)
→36(※国連の直接的ポイントを追加した数)」に変化しました。

〈兵站〉がプラス11ポイント上昇しました。NEW!
「27→20」が「27→23→44」に変化しました。

〈資金〉がプラス6ポイント上昇しました。NEW!
「30→19」が「30→22→28」に変化しました。

〈資産・資源〉が18ポイント減少しました。NEW!
「118→63」が「118→93→75」に変化しました。

〈国土〉が2ポイント上昇しました。NEW!
「32→26」が「32→28→30」に変化しました。


・総合的な戦況報告です
「滅亡的」→「敗戦確実」に変化しました。NEW!
※戦略的撤退の成功確立が《絶望的》から《肯定的》に変化しました。※

中東連合は戦力、国力の短期的維持に成功する見込みです。

ユーフラテス川陣地よって敵の攻勢を止めることが成功しています。NEW!

※陣地修復率がBETAによる被害を上回っているため通常のBETAの攻勢なら6年は持ちこたえられると見込まれています。
ですが、BETA側が陣地に対して大規模な地下侵攻の準備を行っており、それに気づいていない人類という状況では、6年も持たないことが予測されます。


以上、次元管理電脳からの追加報告を終了します。


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筆者です。

話のほうもチートが過ぎると思いますが、温かく見守ってもらうと助かります。そしてなにより設定話が長いッ!!すいません…

各話継ぎ接ぎして約2万字追加して一話作ってみました。

※戦術機のイラスト2枚、pixivにて挙げました。

今回のお話で紹介される機体
国連統合軍 正式採用戦術機 ITSF83 (F-5ベース)グリフォンの2種類です。

ケータイの方並びに感想欄から探すのが面倒と言う方は「pixiv 光菱財閥」または、「光菱財閥」で作品群が見つかると思います。

では次回にて。


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