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No.28072の一覧
[0] 光菱財閥奮闘記!! 【9月25日 本編更新】[カバディ](2012/09/25 15:32)
[16] 第Ⅰ章<始動編> 2話 契約 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:32)
[17] 第Ⅰ章<始動編> 3話 目標 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:33)
[18] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》[カバディ](2012/07/06 18:35)
[19] 第Ⅰ章<始動編> 5話 瑞鶴 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[20] 第Ⅰ章<始動編> 6話 初鷹 《7/6改訂更新分》[カバディ](2012/07/06 18:36)
[21] <第Ⅰ章>設定 1980年編 [カバディ](2011/10/13 18:12)
[22] 第Ⅱ章<暗躍編> 1話 商売 《10/28改訂更新分》[カバディ](2012/01/04 16:09)
[23] 第Ⅱ章<暗躍編> 2話 政治 《10/30改訂更新分》[カバディ](2011/10/30 15:50)
[24] 第Ⅱ章<暗躍編> 3話 戦況 《11/4改訂更新分》[カバディ](2011/11/12 16:50)
[25] 第Ⅱ章<暗躍編> 4話 量産 《11/8日改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:59)
[26] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormnt‐》 第1話  集結 [カバディ](2012/01/04 16:10)
[27] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第2話  東欧 [カバディ](2012/01/04 16:11)
[28] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第3話  戦場 [カバディ](2012/01/04 16:13)
[29] 第Ⅱ章<暗躍編> 5話 愚策 《11/12改訂更新分》[カバディ](2011/11/19 16:57)
[30] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第4話  場景[カバディ](2012/01/06 19:10)
[31] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第?話  日常[カバディ](2011/09/12 23:32)
[32] 第Ⅱ章<暗躍編> 6話 冷戦 《11/21改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:27)
[33] 第Ⅱ章<暗躍編> 7話 現実 《12/3改訂更新分》[カバディ](2011/12/03 14:18)
[34] 第Ⅱ章<暗躍編> 8話 権威 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:06)
[35] 第Ⅱ章<暗躍編> 9話 理由 《12/21更新分》[カバディ](2011/12/21 20:09)
[36] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-1話 乱戦[カバディ](2012/07/07 20:08)
[37] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-2話 調整 [カバディ](2011/10/26 19:36)
[38] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-3話 対立[カバディ](2012/01/06 16:08)
[39] 外伝《東欧の地獄編‐Dracula lui mormânt‐》 第5-4話 結末[カバディ](2012/01/06 19:29)
[40] 第Ⅲ章<奮闘編> 1話 新造 《7/8新規更新》[カバディ](2012/09/25 14:27)
[54] 第Ⅲ章<奮闘編> 2話 増援 《9/25新規更新》[カバディ](2012/09/25 15:32)
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[28072] 第Ⅰ章<始動編> 4話 会議 《7/6改訂更新》
Name: カバディ◆19e19691 ID:f630435c 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/07/06 18:35
――――1980年1月19日・東京の高層ビルの一角にて――――――

この日は初めて俺は光菱財閥の幹部連中と合うことになった。

親父の
「いささか急ではあったが、財閥のこれからの運営についての緊急会議を始める。
ここに集められた者たちには、忌憚なき意見を述べてほしい。」

という言葉から始められたこの会議は実質、俺のお目見えに関しての会議と言って良い代物、そのはずだった。

親父としては財閥内だけだが、俺という成功結果を公表して士気を上げたかったこともあるのだろう。前例としてほぼ身一つで光菱財閥という巨大コングロマリッドを作り上げた弥太郎初代総裁、それを凌ぐ可能性を持つ、息子。親父という商才溢れる天才に唯一足りなかった後継ぎ、それも特上の者が降って湧いたのだ。誰しも喜んでいたという。…そこのところは俺にはわからなかったが。

といってもこの光菱。以前述べたようにその財閥の象徴が「団結」と言うほど、親方日の丸、光宮家の忠臣がごとく働く社員が多い。

総裁のころから光菱に命を掲げ、父、祖父も光菱で働いていた者も数多くおり、商業の烈士達とまで呼ばれるほどの忠誠心をこの財閥にささげてくれるのだ。

どこからその心が来るのかわからないが、俺からしてみればやりづらいものがある。親父殿はそのおかげで20年前の経営不振となっていた光菱を建て直せたと言っていたが、社員の首を切らずに建て直すなど、親父の腕でなければ不可能だと思う。

まあそんな熱い烈士達の目を納得させられるかが、今回の試験なのだそうだ。
この場で上手く結果を残せばそのまま信用となり、早期に財閥を活用させ、BETAの動きを阻害することにも繋がる。そんな時間との勝負である以上、ここでしくじっていられない。


……まあそんなこと後から気づいたわけで実際は

「親父の体からすっげえオーラ出てんだけど、アレ枯渇しねえのかな?」
などといったバカげた疑問を、緊張から逃れるために思い浮かんでいたものだ。

そんな内心ばかばかしいことを考えていた俺だが、幹部からしたらいくら後継者としても、大事な会議で8歳のガキが総裁のとなりにいる状況に混乱、疑惑があったのだろう。見た感じ

「天主様はどのような人物か、使えるのか」という目でこちらを見てくるのだ。

まあその日集まった人数はそう多くなく、それだけであれば緊張するはずのないもの。たかだが数十人のおっさんの前でのスピーチ、そう割り切ってしまえば中学生ぐらいになれば簡単にこなせるようなものだった。

だが問題はその"質"にあったのだ。

なにせその会議に集められたのは国内第2位の大組織、『光菱財閥』の大幹部たち。総勢50万人以上の頂点である。

言うなれば精鋭中の精鋭であり、戦後の財閥衰退から今まで、財閥の力を取り戻すまで人生を賭してきた人生の先輩方なのだから、なんと言って良いやら、もうすごい。

何が言いたいかって言うと、ここにいるメンバー全員が父、天元のもと、光菱財閥を元の大財閥に押し戻した歴戦の超一流ビジネスマン達って奴なわけだ。

前の人生じゃ一生お目にかかれなかった空気を味わってきょどったな~ワ○ピースの覇気、商気色の覇気みたいなの当てられたみたいな感じ?そんなのないけど。


他にも数人いたにはいたがその時はそれが誰なのかは分かっていなかった。

しかし全員に一致しているのは、全員が全員実力者だということだけがわかり、ボッチ気分を味わっていたわけだ。こんなところで会議するなんて聞いてなかったんだけどなぁ…



でも臆してるだけじゃ何も生まれない。てことで自己紹介から始めたんだが…

発言と同時にかかる幾重もの、そして重厚な視線。今回の会議の重要度から言って、子供だからといって浮かれている者などいないのだろう。

だが、意外なことに視線に蔑みの色が一切なかったのを覚えている。このような席に子供が出席すること自体、許せない者が出てくると思ったのだが、これはありがたかった。

まぁーあいさつはガキにも見られず、大人の挨拶としては幼いところに収めたものにした

…まあ自分の手が震えていたことも演技なら100点だったんだけどね…

そうもいかなかったのは今考えると恥ずかしい思い出だ。


その後に親父から

「うむ、皆も忙しいだろうからな。時間が惜しい。早速本題に入らせて貰う。

―――気づいているとは思うが、亡き初代総裁がお持ちになった天霊樹の力。それが未来を視とうし、人ならざる力を与えるなどといった話を、どこからともなくとも聞いたことがあるだろう。

それを実際に受け継いだ、初の血族である我が息子からお主らに説明をさせようと今回集まって貰ったのだ。

その力を疑う者もいるだろう、今回の会議にしろ、重要な会議を抜け出す価値があるのかと思うのが普通であろうな。

だがこれから先、どのような話であっても最後まで席を立つことは断じて許さぬ。

今日この席で話合われる内容によって、今後の光菱、いや、日本の趨勢に関わってくることと、肝に銘じて聞いてほしい。」

というカリスマ性全開の仰々しい発言によって話し合いが始まった。

ざわざわしていた空気がこの一言で吹き飛ぶとは親父の重要度、そのカリスマ性が分かるだろう。


だからこそ、親父の影響下でこれからを生きていくことになることを危惧し、少し危険な賭けに出ることにした。


いきなりマリヱを召喚したのだ。如何にも神らしい恰好をさせて。

もちろん召喚というのも神器本体についていた映像装置をこちらの技術で光源を増幅させて映し出された3次元立体映像のことであり、実物ではない。

しかし、この神器の技術はこの時代には不可能な代物であり、この3Dの映像にはみんな驚いてたなあ…マリヱの美しさも合わさってだろうけど。

なぜそのようなことをするかだが、すぐにでも行動に移りたい俺としては、お試し期間なんてまどろっこしいものは無理にでもパージしたい。

だからこそマリヱという信じられる御神体を目の前に見せることで、信用度を上げようと画作したわけだ。


そうして厨2全開の「天来神マリヱ」として召喚されたマリヱ。この時の発言は財閥関係者を驚かせることになる。

なんと己の力(知識等)をneedーtoーknowを被せた上で話したのにも関わらず、一人の幹部が放った「財閥のどのようにして力を貸していただけるのか」という質問に対して「分からぬ」と返したのだ。

これには先ほどの驚きを超え、声を荒げた者もおり、その力が本当であれ嘘であれ事実を示そうとしない態度が気に喰わなかったのだろうと思う。

だからこそその後にマリヱにこう言ってもらったのだ。

「そこの孝明が亡き弥太郎の志を継いでおる。
そやつの望みならば、我は最大限の知を持って孝明の望みを叶えよう。だが我は"知"を孝明に渡すだけ、それを生かし改良していくのは孝明とおぬし達だ。」

と。

なぜNEED TO KNOWを被せたうえで本当のことを話さず、協力するのはオレ経由としたかだが

ぶっちゃけ、俺への求心力が得られないからだ。

それよりも、オーパーツであるマリヱを神に格上げし≧弥太郎さんにすることで、その力を得られる俺自身の格と重要度をすぐにでも上げ、俺自身の財閥内の重要性を上げておきたかったからだ。

そして俺が望むものが財閥、日本の繁栄にあることを明確にすることで、弥太郎さんの実績とマリヱの実力からくる求心力を得られると踏んだためでもある。

そうして明確な順位付けが自然に行われ、質問の方向がマリヱに俺を含んだ状態で再スタートし、今度は俺とマリヱの力がどのような物なのかを示してほしいと言う方向に流れていった。

人は信用が、実績が無ければ人を信じない。それが重要であればあるほど。というのは当たり前のことであり、いきなり神妙奇天烈なヤツが「俺は神だっ!!従えっ!!」と言われても現代社会で信じて従うヤツは皆無だろう。


そのために段階を踏んで、信用を勝ち取ることにしたのだ。

その第1段階が国内の最重要機密の情報。

1982年中ごろに実戦配備となるタイプ82、F-4の強化改修型である瑞鶴についてだ。

82式戦術歩行戦闘機 瑞鶴。

第1、5世代戦術機に相当する機体であり後年、傑作機としての呼び名も多く、日本のこれからのドクトリンを体現した戦術機であるこの機体。

また純国産第三世代戦術機不知火など、これからの開発に大きく関係している機体でもある。

しかし現時点、1981年初頭に始めて試作機が出来るという状態であり、その方向性をまとめる段階でしかない瑞鶴。計画が1979年からスタートしていることから考えれば当たり前だが、1982年までとは斯衛も無茶を言うものだ。

だが将来日本の各企業が城内省の苛烈極まる要求を実現する、言わずもがな、この国の誇る最新鋭機となる…予定の戦術機であることには変わりないのも事実ではある。今現在から見ると急ぎすぎて危なっかしい物だが。


で、それに関しての情報を披露したわけだ。しかも現時点でクリアされていない最重要機密情報を含んで、出来てもいないのにも関わらずボッコボッコに欠点を上げ連ねて。

これがどれだけのことか、情報の大切さを知るものであればわかるだろう。

曙計画から続く国産戦術機を目指している日本。その一歩である瑞鶴に関して、あらゆるデータで比較しその欠点をも上げ連ねたのだ。

それを聞いてその場にいた幹部、特に光菱重工関連幹部は額に青筋を立てていたほどキレていた。

…まあ実際、斯衛が企業に無理をさせて1,5世代機を作った時点でもう失敗であるわけで、瑞鶴自体が欠陥機というわけでもない。

斯衛の要求からしたら合格しており、拠点防衛用の戦術機としたら第1世代でも屈指だろう。いや良く企業は頑張った。(だからこそキレているわけだが…)

その証拠に斯衛も長年使い続けていることも解るし、頼んだ側の方針が間違っていただけだ。
…それが一番拙いんだけどね。しょうがないことではあるのだけど。

で、それに関してはその欠点を解消する術を明示しつつ、方法を財閥で考えていくこともその場で決定され、その中には配備を遅らせることも考慮に入れるさせるよう政治的に動くことも含んでいる。


…とまあここまでは信用を得るための点火点に過ぎない。

今行ったのは今現在の情報、その中でも国家機密に属する情報をを正確に知っていること。

重要なのはここからだ。

次にその力として開示した情報はなんと、アメリカが誇る第二世代戦術機・F-15についての情報だった。

F-15。さきほどの瑞鶴を否定した明確な理由としても紹介したかったこの機体は将来、全ての面において最強の第2世代戦術機の名を欲しいものにする、世界最優の戦術機だ。

1982年にはもう、その姿は試作型の演習披露などを通じて公にされる予定のその本機は、今の調子であれば1984年にはアメリカ本土を中心に配備され、将来アメリカの力の象徴として長年前線で君臨し続ける鋼の大鷲F-15。

米国の威信をかけて「最新鋭・最強の戦術機」として作らているこの機体。そんな最重要国家機密に属する情報など、他国が盗めるものではない。

で、あればだ。その情報元はどのようなものであれ、超状的なものであり、未来や現在の技術を超越した情報を持つ、そんな存在しかしかありえない。

そうすることでまたしても己の重要度と発言力を上げるために、そのスペックと実戦写真、そしてそこにいた技術者をもっとも驚かした1989年に採用することになるF-15Jの部分設計図。それを開示してみせたのだ。

マリヱの力もありその情報を映写機に映し、今現在試験飛行などで姿を現すXF-15との近似性による証明をすることでその有用性と脅威を、そしてそれに付随しての俺の情報解析度と価値を上げたようとしたのだ。


その映し出された映像は幹部達をあらゆる意味で驚かせた。

それは最初の第2世代機として1982年に正式に配備されるFー14トムキャット、今現在もっとも形ができており、試作機が公開されたばかりの物と似た体形を戦術機がそこに示されていた。

今までの戦術機と一線を超す機体が映し出されており、そうなるであろう未来の戦場で戦う姿が映し出されてもいたからだ。

あまり嬉しくない空気に淀んでいたのを覚えている。

それはそうだ。スペック、明かされた情報だけで見れば、局地戦用である瑞鶴でさえ1対7のキルレシオを示し、現に未来で発生する在日米軍との戦術機中隊格闘訓練での映像では、日本側がボロボロにやられていた。

それは極論だが敵一機で2個小隊を相手取ることができるという証明であり、米国との技術格差があまりにも大きすぎることを意味している。

―――未来のものだからしょうがないんだけど。



まあ、そうした超常的な「情報」によって信憑性を高めた俺。

どちらも今の日本に必要な戦術機の情報であり、周りの見る目は次第にこちらに好意的で宗徒が聖人を見るような、なにか格が違う者を見るようになっていた。


俺はそこで情報開示をやめて、次に会議に進みたくなる…所を抑えまたしてもある重要情報を開示することにした。

普通ならそんな情報開示のバーゲンセールのようなことは愚策に等しい。だが今開示した情報は改ざんの余地があり、そしてその諜報を駆使すれば不可能ではない代物がほとんどなのだ。

そのような不信を生じる要素を含ませたまま財閥を動かすことはできない。


ならばこそ己の神秘性を増し、これからの財閥の主導権を取るために財閥内で神格化させるために何が必要か…と考えて実施したのが


1月19日の会議当日に起こる、三陸沖で発生した三陸沖地震。その予知だった。



元来、人が神を神と信じるのはその人では成しえない力と知…そして自然災害を予知することであった。

自然災害、それも神の怒りとされてきた"地震"

それを予知するということは今の時代も、起こすものと同じ、信じるものが少なくなった"神"のごとき行いであるからに他ならないからだ。

そうした数々の神秘を見せた俺。それを見る幹部達の目は最初とは雲泥の差と言える眼差しでこちらを見ていた。

どのような疑い深いものでも、ここまでのことをされてある程度の実力(人の域を超えているが…)を持つ者として見なければならないだろう。

親父でさえ10年以上もかかった財閥内での信用、その半分ほどをこの時点で勝ち取ろうとしているのであり、次期財閥総裁に決まっていることから、その脅威の力は直接財閥のために使われることに不安はないだろう。


そうして自身の神秘性を上げた俺は、自然災害の予知を事前に災害救助に使えるのでは?という考えに幹部が至る前に言葉に重ねた。



「―――この事実において、いろいろな意見があるでしょう。あの地震の被害を最小限にできなかったのかと…

そう。このことを事前に通告したとしても、妄言とられるのが普通。

そのことを考慮したとしても、結果から見れば私は北海道の三陸に住む住人を見捨てたことになります。

"目の前に倒れている人間を放っておくような男に日本は救えない
"と聖徳太子は言うでしょう。ですが、私はあえて捨てます。私でさえも。


その事実を言われてから考えた者、そう考えることが不敬と考えた者、そして自分からその事実を公表してしまったことに驚きを隠せない者等、そこにいる幹部達を見回し、言葉を繋ぐ。

「なぜでしょうか?
それはここにいる皆様の信頼を勝ち取ることのほうがこの國の、私たちの愛する日本の国益に則していると判断したからですっ!!

私の力は変えられないであろう未来の知識、そうであっただろう未来、その技術です。確かにいろいろな力を含め、私は常人離れしているのは確かでしょう。マリヱ様からの力が宿っているのですから。
ですが一人であるのも変えられない事実。

その知識を如何にして使うか、厳密に言えばこの知識と力を有用に使える体制と人材を集めるかに今後の日の本の未来にかかわってくるのです。

国難の武足り得るならば、私は物と成りましょう。だからこそそれを使える者達となってほしい。この光菱、ひいてはこの日の本のために。そう私は思います。」

と言葉を重ね、幹部連中に活を入れた。

自分で言った言葉を他人に説明するのはとても恥ずかしいものだが、

愛国心…俺がいた日本ではある種のタブーのようになっていた言葉は、この世界ではある種の毒であると考え、なりふりかまってられないぶん、日本人の弱い部分をついたのだ。

日本人、いや日本人だからこそ団結という美徳をもっとも愛する。そうしなければ村社会である日本であるからして、省かれてしまうからでもあるが、今ここに至ってはとても有益な民族的特徴だろう。

だからこそ次はこの世界で勝ち抜いていける力を見せたわけだが、次は危機、その覚悟を見せてもらおう。利益によって生まれた団結を一層固めるためにも。

そうして会場の大きなスクリーンに映し出されたのは日本の上空から捉えた衛星写真が3枚。

同じ場所を写したのにも関わらず、その3枚の写真は何十年間かけて経済発展をした国のごとく、劇的な変化を物語っていた。

だがそこのにいる幹部達は気づく。これは経済発展による変化ではないと。

なぜならば右に行くほどに緑と、そして経済発展による灰色の建築物達の面積も小さくなり、代わりに茶色の土肌が露出するようになっていたからだ。

そう、それはこの世界に俺が来ることはなかったこの世界の史実。

その日本の未来である1998年時に起こったBETAによる日本侵攻。それを証明するその時の関西上空の衛星写真であった。

もはやこの会場のざわめきは消え去り、絶句による沈黙しか残っていない。

その写真自体は未来の帝国情報省のデータベースにあったものだ。

その当時、それほど厳重な管理が成された情報ではない。2001年の時点ではほとんど価値を見いだせなかったただのデータだ。

だがその情報が示していたのは1998年、その年に行われたBETAの日本侵攻。3600万人という甚大な被害とと九州から一時、関東まで蹂躙された結果を克明に写した写真だったのだ。

それに付随された写真の数々、ある者は喰われ、首都である京都が灰燼に化している写真達。

それはここにいる者の想像を絶する悲劇を詳細に現わしていた。

その当時、1億2000万を超えた日本の約3割の国民と半分の大地を蝕んだその事件は日本史上類を見ない負け戦。

あの第2次世界大戦でさえ被害は軍民合わせて400万を超えない域であるにも関わらず、それの10倍近くが約半年の期間で喰われていった日本史上最大の悲劇。


そうした悲劇を物語る写真を見て、その場にいた幹部達は気づいてしまった。いや日本人であればそれの意味することは何も言わずに理解してしまうものなのだろう。

――――「日本はBETAにあらがえなかった」ということに。


それほどまでに今現在のBETAへの恐怖は世界レベルで蔓延している。
何時その時が来るかを誰も口には出さないが、すぐに想像できてしてしまうほどに。

もちろん全ての国民とは言わない。だが財閥の幹部連中は皆、財閥の国際的に広がった情報網によってその現状は知っている。想像が出来てしまうほどにも。


そして写真は続く。

「…佐渡島とここは横浜か…」

幹部の一人がそうつぶやく。

その写真、その場所は荒廃していた。一つの原因、世界の膿によって。

それがハイヴ、あのBETAの巣だ。史実では甲21号ハイヴと呼ばれる佐渡島ハイヴと甲22号ハイヴと呼ばれる横浜ハイヴ。

それらによる国土の蹂躙を示したその写真は愛すべき大地、我らが母を侵された忌子を克明と記している。

「「「「「…………」」」」」」

もはや言葉もでない。

いままでの言葉を信じる者、信じていない者でさえ口を紡ぐほどの事実。それを見せられ冷静でいられる者などいない。

只一人―――俺だけを除いてだが。

目の前で年々高まっていた国民の"不安"が現実となって形となったことで呆然としている幹部達。

それは当たり前だ。国土の蹂躙という形が目の前にあるのだから。


だからこそ、そうならざる得ないからこそ卑怯だがこの場にいる者の求心力は得るために"その事実"が利用させてもらった。

この情報を見せられて冷静でいられる日本人などいない。幹部連中や他数名の者にしたって無意識的に、縋りつく存在に力を貸そうとするだろう。

―――俺のような存在に。


そうして誘導された衝動の元、相手の自発的な行動によって俺の主導の元に財閥が動いていく形になるまで止まらないだろう。止まるはずえない。



その後はもはや大勢のついた戦と変わらず、

「これで私の話を終わりにします。この私が知ってしまった未来にしないためにも、この未来技術と演算能力、そしてこうなってしまうかもしれないという覚悟を駆使してより一層の奮起をお願い致します。

亡き初代総裁もおっしゃった"国家的観念を持って全ての事業に当たれ。"それを実行する時が今なのです。」

という言葉を皮切りに「オレの知識を信じるか」というところから、この情報を活かしてこれからどのように未来を書き換えていくか、どうやっていくかのところまで行きついた。

その後は幹部達の不眠不休の話し合い(殴り合いさえ起こったらしい)によってある程度の方針が決まったわけだが…後で聞いた話なのだが、なんとここには幹部達以外にも重要人物がまぎれ、この会議を観察していたらしい。

始めての会議に余所者入れるなんて…と思ったけど、初代総裁である弥太郎曾祖父の秘密を知っている集団があったとか。


弥太郎さんは当時、その力を使って日本の政府や軍部、五摂家、そして皇家にまで人脈を構築していた。

商売としての横の繋がりと別にして、この国の意志決定にまで影響を与える「日本版フリーメイソンみたいな秘密組織」を作っていたということだ。これはすごい。

どんな知識を弥太郎さんが授かったのかわからないけど、その力を商売だけでなく国家のために使える意志は純粋に尊敬するものだ。
戦前と戦後の違いなのかもしれないが。

もちろん、零からのスタートで弥太郎さんとマリヱとの接続レベルも低かったため、財閥を大きく出来ても国家としての成功は収められるほどの影響はだせなかったらしいんだが…

なんとかアメリカとの戦争も条件付き降伏にまで出来たとか。

そう考えると俺より万倍すごいよね。0からここまでできるのは。


結局、戦後戦争責任もあって自動的に解散されたことになったらしいけど、人脈だけは保たれていたらしく、親父はその組織の復興と拡大を進めているらしいのだ。…そこらへん話してくれないんだよね…


で、その流れを汲む公家の皇室財産の管理人や、将家御用達の財産運用会社、日本銀行の運用委員会の委員長など日本の金を司り、信用の置ける人間を招いていた…とのこと。

で、今回の顔合わせはその組織との面会としても開かれたらしく、評価試験は一応は合格。

さきほどの《やりすぎな自己紹介》のおかげか未来知識を使って、光菱の資産だけでなく皇室、将家、日本銀行と裏で組んで大量の金を運用して、増やす計画を俺にやらせることになり、その信用度は予想を超えて高まった。

つまりはこれからの作戦資金にする重要な金を任されたことに他ならず、見事今回の試験に合格し計画にゴーサインが出されたわけだ。

(あとで親父に聞いたらパフォーマンスのやりすぎだと叱られたが…)


この闇の資産運用部門と、アメリカにばれないよう慎重に日本の根元に侵入する組織構築部門。そして、俺の未来技術を使った技術開発部門を主軸にした計画を実行していく運びになっていくわけだ。

まずは資金集めとはさすがではあるが、まず金が必要であるのはどの社会でも変わらないだろう。

だからこそ俺の最初の仕事は国内の金を増やし、そのほとんどをこちらの思惑で流せる体制作りとなるだろう。

さて頑張りますか、財閥の力を使ってね。



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次元管理電脳より追加報告

主人公が「光菱財閥」主要幹部と接触しました。NEW!

財閥主要人物における信用度が53%に向上しました。NEW!

光菱財閥内の緊急会議において「政府への干渉」「組織戦略の見直し」が取りきめられました。---成長予測が上方修正されました。NEW!



以上、次元管理電脳からの追加報告を終了します。


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‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

筆者です。

途中、地震について書いた時、読者の中に地震被災者がいらっしゃる場合、そのお心を害してしまわないか、と消すか思い悩んだのですが、"変えられない未来"として作品内で表すと地震しか思い浮かばず、そのままとなりました。

気分を害してしまった読者の皆様が居りましたら、ここで謝罪致します。申し訳ありませんでした。




さてさて、本編です。頭の中の知識はまず、財閥の求心力を集めるために使いました。戦術機の設計図が手に入っても、今の日本じゃすぐに作れませんし、何より完成まじかのF-15を日本が似たもの作ったらアメリカの心象最悪ですからね。

また、ここまで求心力にこだわるのは、主人公が昔、人に裏切られた経験があるという裏設定があるためです。作品内で書こうと思ったら長くなって消しました。

それに今の主人公、小学生の悪ガキですし。コナン君が調子にのってる感じですね。

途中で出てきた
「国家的観念を持って全ての事業に当たれ。」もそうですが
「小僧に頭を下げると思うから情けないのだ。金に頭を下げるのだ」とはこの財閥のオリジナルである三菱財閥、その岩崎弥太郎さんの言葉の一文を抜き出した言葉があります。それをこの財閥の幹部達は実現できるのでしょうか。ちなみに子供とは孝明くんのことですよ♪


また"目の前に倒れている人間を放っておくような男に日本は救えない"という言葉も聖徳太子の言葉から引用しております。そうでもしないと言葉に力がないからです。…主に筆者の実力不足のため。


軽口はここらへんにして、本編のほうは、これから独自解釈による、独自設定、オリジナル歴史の嵐になっていきます。少々のご都合主義はお許しを。



では次回にて



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