閑話その17 「政威大将軍殿下が大変お怒りのようです」 【2001年5月21日PM10:30 国連軍横浜基地・B19F】一仕事終えて執務室に戻って来た夕呼は自分の机の上にメモが置いてあるのに気がついた。そのメモを読んだ夕呼はシリンダーが設置されている隣の部屋を覗いた後、自分の秘書を電話で呼び出す。「ああピアティフ? 悪いんだけど今すぐ出かけなきゃいけなくなったわ…行き先? 帝都城よ…ええそう、あそこに行くの。 …あ、それからショットガンを一丁持ってくからそれもお願いね……え? 何でって、決まってるでしょ!あのクソ忌々しい害獣を射殺するのよ!いいからさっさと準備なさい!!」 【PM 11:00 帝都城・斯衛軍詰所】「むう、これはまた珍妙な…なんと大猫の被り物であるか」「ええ、それは知人が学生時代にアルバイトで働いていた中華料理屋の出前用ユニフォームだったのですが、色々あって私が譲り受けたんですよ」「ふむう、これを着て出前をのう…また随分と剛毅な漢がいたものよ」(確かに“彼”はある意味『剛毅な漢』でしたけどね、あなた程ではありませんよ閣下) どうも皆さん、モロボシです。一條家たちの放った刺客を片付けた私ですがもちろんこれは前振りでいよいよこれから本命の一條邸へ殴り込み……の予定なんですが、事もあろうに帝国斯衛軍の怪獣大将閣下が「ワシ自らが彼奴等を成敗してくれるわ!!」と言って譲らないのでちょっとした対策を施しております(笑)「では閣下、この着ぐるみで討ち入り…という事でよろしいですね?」「うむう、仕方なかろうな」いくら何でも斯衛軍大将が素顔で殴り込みとか出来る訳がないし、ついでに言えばこの図体では多少の変装などすぐにバレてしまうだろう。で、あるのならいっそ思い切った変装(仮装?)で行ってみよう…そう考えてコレを用意してみました。型月区に住む私の旧い知人であるシズキ君が高校時代のアルバイトで使用していた出前用の着ぐるみを紅蓮閣下に着て貰い、その姿で殴り込みを…という訳だ。さすがに斯衛軍の大将がこんな物を被って殴り込みとかあり得ないと思われるだろうし、私も知り合いのミシマグループの御曹司から借りて来た熊猫型パワードスーツ(外見は本物のジャイアントパンダにしか見えない)で同行するつもりだし。(…やり過ぎそうになったら止めないといけないしね)まあ巨大な猛獣(?)が二匹暴れ回った結果一條邸が崩壊したとしてもそれは天災というものだろう、うん。 「紅蓮閣下、諸星…なんだその格好は?」「おや月詠大尉、どうかされましたか?」私と紅蓮閣下がそれぞれの着ぐるみに着替えていると、なにやら忙しない表情の真耶さんが現れた。「…まあいい、殿下のお姿が見えんのだがこちらにいらしてはおられんか?」「はて、こちらにはおいでになっては……駒太郎君は何処ですか?」「あ奴の姿も見えんのだ! だから飼い主の貴様に心当たりはないかと聞いておる!」…おかしいな、通信も通じないし一体こんな時間に何処へ?「…ああ、もしもしモロボシだけどジェイムズ君? そっちに駒太郎と殿下は行ってないかい?」《へ? なんやモロボシはん、知らんかったんかいな? 殿下やったら駒之介駒太郎と霞ちゃん連れてついさっき出撃したで~》 …え゛? 【PM 11:15 帝都・一條邸】「…遅い! まだ誰も戻らんのか!?」この館の主、一條直実は何度目かの同じ台詞を口にしていた。昼間の帝都城での一幕の後、しばらくの間はどうしていいのか分からないくらい混乱していた直実であったが、このまま手をこまねいていては確実に殺されてしまうかもしれないという不安と恐怖から配下に命じて諸星を殺して時間を稼ぎ、同時に九條家や他の有力者に泣き付いて庇護を依頼しようと様々に手を打った。だが九條家もそして他の摂家や有力武家も直実の要請を完全に黙殺し、使いを出しても門前払いを食らう有様であった。焦った直実はせめて諸星を確実に殺して時間を稼ぎ、なんとかほとぼりが冷めるのを待とうと自分の配下の刺客の半数以上を彼の暗殺に差し向けたのである。だがしかし…待てど暮らせど彼らは戻らず、見張り役の者たちからの連絡さえも途絶えていた。冷静に考えればこの時点ですでに諸星の暗殺は失敗に終わったと判断されるべきであろうが、直実も…そしてこの場に来ていた共犯者の二條豊昌もまさか30人の刺客が見張りも含めて全滅したなどありえないという思いに囚われてしまっていた。…あるいは彼らはそう必死に思い込むことで恐怖から逃れようとしていたのかも知れない。 そんな彼らの処へ真の『恐怖』が近付いているとも知らずに… 「一体見張りに向かわせた者達はどうしたのだ!? 何故何も言うて来んのだ!」「も、申し訳ございませぬ! ですが今の処なにがどうなっておるのか…」「…分からぬと申すか?」「は…」力無く答える家老を睨みつける直実であったが、さすがにこの場で怒鳴りつけても無意味だと思いなおして命令する。「…今一度隠密を放て、どうなっておるのか確認して来るのじゃ」家老にそう言ってから直実は客人である二條豊昌に話かけた。「二條殿、お聞きの通り何やら雲行きが怪しいようじゃ…これはこの先の策を色々と講じる必要があると思われよ」その言葉に二條豊昌も頷く。「一條殿…こうなればもはや我らは一蓮托生じゃ、この上はどのような手を使うてでも生き残る術を見出さねば…いっそ将軍家の御命を…」その時、二條豊昌が言いかけた台詞を凛として遮る声がかけられた。 「命をどうしようと言うのですか?」 「なっ…!」「何奴じゃ!?」慌てて声のした方の障子を開いて中庭を見た直実と豊昌は『そこに立つ人物』を見て絶句した。 「一條直実、二條豊昌、この期に及んでまだ愚かな策略を廻らそうとは…恥を知るがよい!」「…あ」「…え」「如何しましたか、まさかこの顔を見忘れた等とは言わぬでしょう?」「で…」「でん…か…?」 …そう、そこにいたのは紛れもなく政威大将軍 煌武院悠陽その人であった。傍に一人の少女(ウサミミ娘)を従えただけで他には誰一人…護衛すら連れずに。本来であれば飛んで火に入る夏の虫とばかりに彼女を始末する絶好の機会であるにも関わらず、一條直実も二條豊昌も何もしようとはしなかった。…いや、身動きする事すら忘れていた。 何故ならそこにいた悠陽はあまりにも大きかったからである。全高数十メートルに達する巨大な政威大将軍 煌武院悠陽が彼らを見下ろしていた…同じく全高数十メートルの巨大なウサミミ少女(幼女?)と共に。 「さて…そなたたちに少々申し聞かせることがあります」にっこり笑ってそう言った悠陽の見下ろす下で一條直実や他の者たちは恐怖と混乱で固まっていた… 【同時刻 帝都城・奥座敷】「ででで…殿下…なんというお姿…いえ…大きさに…」「あ…あわわわわ…」「むううう!!! なんと! 一体いつの間にこのような技を…」「あ…いえ紅蓮閣下…これは果して技なのでしょうか…」 とてつもなく非現実的な光景がミニコマの投射映像に映し出されている。なんと全高数十メートルの大きさに巨大化した悠陽殿下と霞君が一條邸の中庭に降臨して、一條家と二條家の当主にOHANASIをしているのだ。(いやもちろんお説教役は殿下で社少尉は黙って傍に立っているだけだけど)それにしてもまたこれは凄い芸当だよなあ…一体どうやってるのだろう?「…え~と、こんな凄い技が帝国にはあったのですか皆さん?」私がその台詞を口にすると、その場の全員(月詠大尉に侍従長に紅蓮大将に斑鳩少佐)がジロリとした目で私の方を見る。…いやちょっと待て、何故そんな目で私の事を睨むんですか皆さん?言っておきますけどこんなの我々には不可能ですよ? 今まで私がお見せして来た数々の芸(?)はあくまでも我々の世界の進んだ科学技術の賜物であって決して魔法とかじゃないんです。確かに魔法(?)を実現可能なあくまや人形師はいるが少なくとも私にそんな芸はないし、なによりいくら『彼女たち』でもこんな人間の巨大化とか存在の拡大とか出来る筈が…「モロボシ…」その声にふと我に返ると…仁王立ちになった月詠大尉が怖い笑顔で日本刀を振り被ってるのが見えた…ちょっと!一体何をする気ですか月詠大尉~~~!?「…コレハイッタイドウイウコトダ?」と、怖~い笑顔のままで真耶さんがそう仰るのですが…「いやその、どういう事と言われましてもわたくしめにも全く理解出来ない状況でして…その、出来ればその刀をしまっては頂けませんか…?」「ほほう、これは異な事を聞くものだな……貴様以外に一体誰があのような奇天烈な事を仕出かすというのだ!?」そう言われても本当に誰がこんな真似を…いやまて、確か過去にこんな事例を何処かで…「もしもし、おいオシリス! ひょっとして現在進行中のこの事態はお前の仕業か!?」≪その通りですがそれがどうかしましたかマスター(管理者)?≫…あっさり吐きやがったよコイツ。「それがどうしたじゃないだろう!? 一体何の冗談で殿下と社少尉を巨大化なんてしてるんだよオイ!!」≪それは無論、本人たちのリクエストにチビコマ1号と2号が応えたからですが?≫…へ?≪そもそも殿下の無聊とやらを慰めるためとか社少尉の孤独を癒すためとか理由を捏ねまわして彼らのAIが最大限スタンドアローンに活動出来るように再設定しろと言ったのはアナタだったと記憶していますがマスター(管理者)?≫え~と…≪それが原因で煌武院殿下と社少尉はチビコマ経由での電話友達になったそうです…更には殿下が自分の手で一條家たちを成敗したいという要請に応じることになった訳ですが?≫その…≪他に何かご質問は?≫「……とりあえず原因は理解した、だが一体どうやってあの非常識な現象を実現させたんだ?」…認めよう、確かにこれは私の油断と不注意が原因だ。だがしかし、一体どんな方法でこんな非常識な大技を可能にしたというのだ?いくら我々の科学力とオシリスの演算能力を駆使したとしても人間の巨大化…それもこんな短時間でとか絶対にあり得ない…もしあるとしたらそれはアノ暗黒家政…いや!そんな筈はない…そうならないように手は打っておいた筈だ!≪もちろんこれはアナタもよくご存知のDr.アンバーの技術を応用した物ですが?≫ …私の儚い希望はあっさりと打ち砕かれた。「あのなオシリス…『あの家政婦』とは今後一切係わりを持たないようにと優先順位を最高レベルにまで上げた命令を入力しておいたハズだが…?」それなのにどうして彼女の技術の産物がこんな処で暴れてるんだよ!?≪彼女と連絡を取ったのは私ではなくチビコマたちです、彼らが直接Dr.と交渉してあの『システムG』を譲り受けたと聞いていますが?≫…しまった、その手があったか。かつてこのオシリスを暴走させ、無限都市製造機に仕立て上げたアノ狂悪な家政婦が再びこのコンピューターに悪さをしないように私と製作者のシオン君は様々な手を講じて再度のハッキングに対する防護措置を施した。だがしかし、まさかチビコマたちの方から彼女にコンタクトを取っていたとは…「…で、このシステムとやらの仕組みはどうなっているんだ?」もしもこのまま彼女たちが元の大きさに戻れない…などという事になったら一大事だ。まず間違いなく私はそこにいる月詠大尉かさもなくばあの香月博士によって処刑されるだろう…いや、たとえ無事元に戻ったとしても多分…(ガクガクブルブル)≪心配は無用ですマスター(管理者)彼女たちは本当に大きくなった訳ではありません、あの巨大な二人は彼女たちの姿を模った人型なのです≫…ナニ?人間モドキ?(いかん、自分でもかなり頭がテンパッてるようだ…)≪システムGの機能はサンプルとなった人や物の拡大モデルをナノマシンと巨大3次元プリンターで組み上げるという物です。特に人間や動物の場合はサンプル自身が拡大モデルと同化することであたかも自分自身が巨大化したかのような感覚を味わう事が出来るのがセールスポイントだそうです≫「て事は彼女たちはあの巨大な立体複写モデル(?)の中にいるのか?」≪そうです、煌武院殿下も社少尉も自身の拡大モデルの中にフェードインした状態で自分の巨大モデルを動かしているのです…自分の身体のような感覚で≫なんとまあ非常識な…あの家政婦のする事だから当然と言えば当然だが。≪ちなみに巨大モデルの中に同化した状態の彼女たちの事をそれぞれ『G悠陽殿下』と『G霞ちゃん』と呼ぶそうですが≫…さいですか。「いやそんな事はどうでもいい! 早く止めさせるんだ!! こんな巨大化した殿下や社少尉が人目に触れたら一体どうなると思ってる!?」それこそ一大事だ、せっかく私と紅蓮閣下が変装(仮装?)し正体を隠してあそこに突貫をかけようとした苦労が水の泡…いや、それどころか殿下の信用や名声にとんでもない傷が…≪その心配も無用です、彼女たちの姿は一條邸の外側や周辺からは見ることが出来ませんから≫…え? だってあんな巨大な姿なのに?≪現在一條邸の周りにはメビウスの重力制御技術を応用した防音及び光学迷彩フィールド『偽固有結界・お仕置き空間』が展開されています。フィールド内で発生する音は例え爆撃の音でも外部には漏れませんし、光学迷彩によって外部からは一條邸には何の異常もないように見えています≫「…それもあの家政婦の仕業か」≪そうです、彼女の雇い主に発見されずに作業を行う場合の裏ワザを応用したという事でした≫「まったく、アノ家のお嬢さんはもっとしっかりと使用人を監督してもらわないと…」≪それとマスター(管理者)、そのミス・トオノから伝言を預っていますが?≫「…へ?」≪『これで私たちのプライバシーをドラマのネタに使った件はチャラにして差し上げます』…との事ですが≫…しまった、バレてたか。この世界の皆様に多少の娯楽を安価で提供しようと考えた私は、TV向けの連続ドラマとアニメを制作したのだが…アニメに関してはスミヨシ君たちの自主製作だがドラマの脚本に関していいものが見つからなかったため、知人の係わった事件をそのままドラマ化するという暴挙(?)に出てしまったのだ(いやついノリで…なにせ設定と脚本さえ出来れば後はオシリスが実写そっくりのCGムービーを製作してくれるし)そしてその知人こそがトオノ家の当主とその兄、そして件の狂悪家政婦とその妹だった。バレたら当然プライバシーの侵害で訴えられるだろうから黙っていたのだが…シオン君あたりが良心の呵責に耐えかねて告白でもしたのだろうか?≪…という訳で今回の件に関しては全面的にアナタに責任がある事は明白ですので、そちらで発生しつつあるトラブルに関してはマスター(管理者)自身で対処して下さい≫こちらで発生しつつあるトラブルって…それはつまり「ドウヤラハナシガマトマッタヨウダナ、モロボシ?」…ひいいいいいっ!!(絶体絶命諸星) …薄れゆく意識の片隅でお城の侍従たちが香月博士の来訪を告げる声を聞いたたような気がした。 【同時刻 一條邸・中庭】「…さて、そなたたちの側に何か言い分はありますか?」思う存分日頃のストレ…いやもとい不埒者へのお説教を言い尽くした悠陽は一條直実らにそう尋ねた。「…てむ~~くぉぱあ~~~~~わぴい~~~~」「ご#G=&っ>B$P!ど+@¥い6D%~?C◎た◆凹~……」もはや直実も豊昌も自分が何を言っているのかすら分からない程に錯乱しているようである。「そうですか、ここまで言い聞かせても分からぬとあらば止むを得ますまい…霞さん、成敗を!!」そんな二人の様子を勝手に解釈して巨大幼女(G霞)に処断を命じるG悠陽(暴君である)そして悠陽に成敗を命じられたG霞は両手を高々と振り上げ…その手に空から1本の竹刀が降臨する。 「…殿下に代わってお仕置き、です……えくす、かりばー」(棒読み) G霞が振り下ろす竹刀の周りで発生する抗重力フィールドの淡い輝きが、恐怖と狂気を顔に張り付かせた一條直実とその館の上にゆっくりと落とされていった… 【PM 11:45 土管帝国・某所】「皆大義でした、お陰で無事に事を成し遂げられました…そなたたちに心からの感謝を」一條邸に怒りの一撃を下した悠陽や霞たちは土管帝国に戻っていた。(自分の巨大な人型から抜け出すためにはオシリスによる処置が必要だからだ)そこで自分の我儘に付き合ってくれた霞やチビコマたちに御礼の言葉を述べる悠陽だった。「…お手伝い出来てよかったです」《うんうん、霞ちゃんも頑張ったもんね~~》《まあ朝になったら大騒ぎだと思うけど~~一応非殺傷設定にしておいたから大丈夫でしょ~~》「…無闇に命を奪おうとは思いませぬが、我が妹に危害を加えようとした事だけは許せませんでした…これで今後はこのような事が無くなってくれれば良いのですが」そう語り合う悠陽たちの処にジェイムズ君がやって来る。《楽しく話をしてるところスミマセンけどな~~、そろそろお城に戻らんとモロボシはんが真耶さんと香月博士に殺されてまうで~~?》「…まあ、香月博士までどうして?」「…あ」《あれ、どうかしたの霞ちゃん?》「…出かける時に博士に書き置きを残して来ました」「まあ、ではそれで?」「…すぐに戻るからと書きましたけど」「…これは急いで戻らねば諸星の命に関わるかも知れませんね」 【24:00 帝都城・奥座敷】「…思うに思春期の少女たちというのは非常に多感でかつ繊細な心を持っているのだと思います。それ故に悠陽殿下や社少尉のように日頃から過大な期待と責任を負わされる立場にある場合、その繊細な心にかかる負担の蓄積に対する反動もまた極めて大きくかつ予想もつかない動きをする物ではないでしょうか?今回の件に関しましても謂わばその例に属する物であり、彼女たち自身はもちろん他の誰かに責任をどうこうというよりは今後の彼女たちの精神の負担を軽減すべく我々周囲の大人たちが気を配ることに重点をおいて議論すべき事柄であり、決してこのような一時の感情に駆られた無意味な刑罰は何ら問題の解決には寄与しないと………だからそろそろ勘弁しては頂けませんか、御三方?」 「…ねえ、こいつまだ喋れるわよ?」「ではもう一枚石を抱かせましょう」「承知しました」「マジで止めて下さい!! 本当に私の足がプレスされちゃうぢゃないですか~~!!!」え~皆さん、お聞きになって分かるように現在絶賛拷問中のモロボシでございます。殿下(と御供の社少尉)の『ご乱行』の全責任を真耶さんと侍従長、それに香月博士の三人から追及されまくった結果『石抱きの刑』(算盤板抜き)に処せられている私です。…ハッキリ言って算盤板とかなくても充分に残酷刑だろこれは!!「…たかが正座の上に石板を2枚載せただけで何をほざいておるか軟弱者が! 紅蓮閣下の方に比べれば子供並の処分であろうが?」いや月詠大尉アナタたち斯衛や、ましてそこで奇怪な修業(?)に耽っている宇宙生命体を基準にそんな事を言われましても…そう涙目で向ける視線の先では悪ノリの連帯責任とやらを追及された紅蓮閣下がお仕置きを受けている。具体的にはブリッジの姿勢を保った紅蓮大将の腹筋の上で別のバケモノ…いやもとい、斯衛軍第6特務中隊所属の花園優花中尉と枢斬暗屯子少尉がアームレスリングを行っているのだ。「ぐうっ…流石に怒麗巣(どれす)使い二人が相手では少々キツイのう真耶よ、そろそろ終わりにしてはくれんか?」「まだ反省が足りないようですね閣下…花園!枢斬! 本気でヤレ!」「あいよ!」「はっ!」「ぐむうUUUUUUUUUUU!!!!!!」…怪獣の上で怪獣が遊んでいる光景は中々お目にかかる事は出来ないのだが残念ながら今の私はそれを楽しむどころではない。いくら畳の上だからといってこのまま膝の上に石板を乗せられていたら本当に足が潰れてしまう!!『ジェイムズ君!! 殿下と社少尉はまだなのか!?』《もうちょっとでそっち行くからがんばってえな~~モロボシはん》とほほほほ…… …私と紅蓮閣下が帰還した悠陽殿下の取りなしで助命されたのは、それから数分後の事でした。 閑話17終り 【おまけその1・霞の置手紙】「…それで霞君、どうして置手紙なんて書いたの?」「…外出する時はそうするものだって駒之介さんが言いました」「いや確かにそうなんだけど…まあいいか、それで何と書いたの? あの博士の怒りようは尋常じゃなかったけど?」「…はい、“少しの間悠陽殿下と駆け落ちしますので探さないで下さい、すぐに戻る予定です”…と書きました」「………何故駆け落ち?」「…言葉の使い方間違ってたでしょうか? …駒之介さんのアドバイスに従ったんですけど?」…駒之介くん、キミは今後半年間天然オイル抜きだからね(怒)《え~モロボシさん酷いです~~~》(泣) 【おまけその2・とある家政婦と雇い主の終りなき戦い】「…そう、それじゃ目論見通りあの人は今頃大変な事になっているでしょうね」「はい…これで今まで黙っていた事には…」「ええ、あなたには恨み事は言わなくてよシオン? それにお陰さまであの忌々しいシステムもお払い箱に出来たことだし…そうよねコハク?」「はい~~もうあのような旧式システムには用はありません~~ 何故ならすでに最新の技術を投入した『積極的防衛ロボット・メカアキハ様G型』が完成しておりまして~~」 「…死になさい!」(踵落とし)