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No.20952の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 第2部[samurai](2016/10/22 23:47)
[1] 序章 1話[samurai](2010/08/08 00:17)
[2] 序章 2話[samurai](2010/08/15 18:30)
[3] 前兆 1話[samurai](2010/08/18 23:14)
[4] 前兆 2話[samurai](2010/08/28 22:29)
[5] 前兆 3話[samurai](2010/09/04 01:00)
[6] 前兆 4話[samurai](2010/09/05 00:47)
[7] 本土防衛戦 西部戦線 1話[samurai](2010/09/19 01:46)
[8] 本土防衛戦 西部戦線 2話[samurai](2010/09/27 01:16)
[9] 本土防衛戦 西部戦線 3話[samurai](2010/10/04 00:25)
[10] 本土防衛戦 西部戦線 4話[samurai](2010/10/17 00:24)
[11] 本土防衛戦 西部戦線 5話[samurai](2010/10/24 00:34)
[12] 本土防衛戦 西部戦線 6話[samurai](2010/10/30 22:26)
[13] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 1話[samurai](2010/11/08 23:24)
[14] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 2話[samurai](2010/11/14 22:52)
[15] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 3話[samurai](2010/11/30 01:29)
[16] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 4話[samurai](2010/11/30 01:29)
[17] 本土防衛戦 京都防衛戦 1話[samurai](2010/12/05 23:51)
[18] 本土防衛戦 京都防衛戦 2話[samurai](2010/12/12 23:01)
[19] 本土防衛戦 京都防衛戦 3話[samurai](2010/12/25 01:07)
[20] 本土防衛戦 京都防衛戦 4話[samurai](2010/12/31 20:42)
[21] 本土防衛戦 京都防衛戦 5話[samurai](2011/01/05 22:42)
[22] 本土防衛戦 京都防衛戦 6話[samurai](2011/01/15 17:06)
[23] 本土防衛戦 京都防衛戦 7話[samurai](2011/01/24 23:10)
[24] 本土防衛戦 京都防衛戦 8話[samurai](2011/02/06 15:37)
[25] 本土防衛戦 京都防衛戦 9話 ~幕間~[samurai](2011/02/14 00:56)
[26] 本土防衛戦 京都防衛戦 10話[samurai](2011/02/20 23:38)
[27] 本土防衛戦 京都防衛戦 11話[samurai](2011/03/08 07:56)
[28] 本土防衛戦 京都防衛戦 12話[samurai](2011/03/22 22:45)
[29] 本土防衛戦 京都防衛戦 最終話[samurai](2011/03/30 00:48)
[30] 晦冥[samurai](2011/04/04 20:12)
[31] それぞれの冬 ~直衛と祥子~[samurai](2011/04/18 21:49)
[32] それぞれの冬 ~愛姫と圭介~[samurai](2011/04/24 23:16)
[33] それぞれの冬 ~緋色の時~[samurai](2011/05/16 22:43)
[34] 明星作戦前夜 黎明 1話[samurai](2011/06/02 22:42)
[35] 明星作戦前夜 黎明 2話[samurai](2011/06/09 00:41)
[36] 明星作戦前夜 黎明 3話[samurai](2011/06/26 18:08)
[37] 明星作戦前夜 黎明 4話[samurai](2011/07/03 20:50)
[38] 明星作戦前夜 黎明 5話[samurai](2011/07/10 20:56)
[39] 明星作戦前哨戦 1話[samurai](2011/07/18 21:49)
[40] 明星作戦前哨戦 2話[samurai](2011/07/27 06:53)
[41] 明星作戦 1話[samurai](2011/07/31 23:06)
[42] 明星作戦 2話[samurai](2011/08/12 00:18)
[43] 明星作戦 3話[samurai](2011/08/21 20:47)
[44] 明星作戦 4話[samurai](2011/09/04 20:43)
[45] 明星作戦 5話[samurai](2011/09/15 00:43)
[46] 明星作戦 6話[samurai](2011/09/19 23:52)
[47] 明星作戦 7話[samurai](2011/10/10 02:06)
[48] 明星作戦 8話[samurai](2011/10/16 11:02)
[49] 明星作戦 最終話[samurai](2011/10/24 22:40)
[50] 北嶺編 1話[samurai](2011/10/30 20:27)
[51] 北嶺編 2話[samurai](2011/11/06 12:18)
[52] 北嶺編 3話[samurai](2011/11/13 22:17)
[53] 北嶺編 4話[samurai](2011/11/21 00:26)
[54] 北嶺編 5話[samurai](2011/11/28 22:46)
[55] 北嶺編 6話[samurai](2011/12/18 13:03)
[56] 北嶺編 7話[samurai](2011/12/11 20:22)
[57] 北嶺編 8話[samurai](2011/12/18 13:12)
[58] 北嶺編 最終話[samurai](2011/12/24 03:52)
[59] 伏流 米国編 1話[samurai](2012/01/21 22:44)
[60] 伏流 米国編 2話[samurai](2012/01/30 23:51)
[61] 伏流 米国編 3話[samurai](2012/02/06 23:25)
[62] 伏流 米国編 4話[samurai](2012/02/16 23:27)
[63] 伏流 米国編 最終話【前編】[samurai](2012/02/20 20:00)
[64] 伏流 米国編 最終話【後編】[samurai](2012/02/20 20:01)
[65] 伏流 帝国編 序章[samurai](2012/02/28 02:50)
[66] 伏流 帝国編 1話[samurai](2012/03/08 20:11)
[67] 伏流 帝国編 2話[samurai](2012/03/17 00:19)
[68] 伏流 帝国編 3話[samurai](2012/03/24 23:14)
[69] 伏流 帝国編 4話[samurai](2012/03/31 13:00)
[70] 伏流 帝国編 5話[samurai](2012/04/15 00:13)
[71] 伏流 帝国編 6話[samurai](2012/04/22 22:14)
[72] 伏流 帝国編 7話[samurai](2012/04/30 18:53)
[73] 伏流 帝国編 8話[samurai](2012/05/21 00:11)
[74] 伏流 帝国編 9話[samurai](2012/05/29 22:25)
[75] 伏流 帝国編 10話[samurai](2012/06/06 23:04)
[76] 伏流 帝国編 最終話[samurai](2012/06/19 23:03)
[77] 予兆 序章[samurai](2012/07/03 00:36)
[78] 予兆 1話[samurai](2012/07/08 23:09)
[79] 予兆 2話[samurai](2012/07/21 02:30)
[80] 予兆 3話[samurai](2012/08/25 03:01)
[81] 暗き波濤 1話[samurai](2012/09/13 21:00)
[82] 暗き波濤 2話[samurai](2012/09/23 15:56)
[83] 暗き波濤 3話[samurai](2012/10/08 00:02)
[84] 暗き波濤 4話[samurai](2012/11/05 01:09)
[85] 暗き波濤 5話[samurai](2012/11/19 23:16)
[86] 暗き波濤 6話[samurai](2012/12/04 21:52)
[87] 暗き波濤 7話[samurai](2012/12/27 20:53)
[88] 暗き波濤 8話[samurai](2012/12/30 21:44)
[89] 暗き波濤 9話[samurai](2013/02/17 13:21)
[90] 暗き波濤 10話[samurai](2013/03/02 08:43)
[91] 暗き波濤 11話[samurai](2013/03/13 00:27)
[92] 暗き波濤 最終話[samurai](2013/04/07 01:18)
[93] 前夜 1話[samurai](2013/05/18 09:39)
[94] 前夜 2話[samurai](2013/06/23 23:39)
[95] 前夜 3話[samurai](2013/07/31 00:02)
[96] 前夜 4話[samiurai](2013/09/08 23:24)
[97] 前夜 最終話(前篇)[samiurai](2013/10/20 22:17)
[98] 前夜 最終話(後篇)[samiurai](2013/11/30 21:03)
[99] クーデター編 騒擾 1話[samiurai](2013/12/29 18:58)
[100] クーデター編 騒擾 2話[samiurai](2014/02/15 22:44)
[101] クーデター編 騒擾 3話[samiurai](2014/03/23 22:19)
[102] クーデター編 騒擾 4話[samiurai](2014/05/04 13:32)
[103] クーデター編 騒擾 5話[samiurai](2014/06/15 22:17)
[104] クーデター編 騒擾 6話[samiurai](2014/07/28 21:35)
[105] クーデター編 騒擾 7話[samiurai](2014/09/07 20:50)
[106] クーデター編 動乱 1話[samurai](2014/12/07 18:01)
[107] クーデター編 動乱 2話[samiurai](2015/01/27 22:37)
[108] クーデター編 動乱 3話[samiurai](2015/03/08 20:28)
[109] クーデター編 動乱 4話[samiurai](2015/04/20 01:45)
[110] クーデター編 最終話[samiurai](2015/05/30 21:59)
[111] 其の間 1話[samiurai](2015/07/21 01:19)
[112] 其の間 2話[samiurai](2015/09/07 20:58)
[113] 其の間 3話[samiurai](2015/10/30 21:55)
[114] 佐渡島 征途 前話[samurai](2016/10/22 23:48)
[115] 佐渡島 征途 1話[samiurai](2016/10/22 23:47)
[116] 佐渡島 征途 2話[samurai](2016/12/18 19:41)
[117] 佐渡島 征途 3話[samurai](2017/01/30 23:35)
[118] 佐渡島 征途 4話[samurai](2017/03/26 20:58)
[120] 佐渡島 征途 5話[samurai](2017/04/29 20:35)
[121] 佐渡島 征途 6話[samurai](2017/06/01 21:55)
[122] 佐渡島 征途 7話[samurai](2017/08/06 19:39)
[123] 佐渡島 征途 8話[samurai](2017/09/10 19:47)
[124] 佐渡島 征途 9話[samurai](2017/12/03 20:05)
[125] 佐渡島 征途 10話[samurai](2018/04/07 20:48)
[126] 幕間~その一瞬~[samurai](2018/09/09 00:51)
[127] 幕間2~彼は誰時~[samurai](2019/01/06 21:49)
[128] 横浜基地防衛戦 第1話[samurai](2019/04/29 18:47)
[129] 横浜基地防衛戦 第2話[samurai](2020/02/11 23:54)
[130] 横浜基地防衛戦 第3話[samurai](2020/08/16 19:37)
[131] 横浜基地防衛戦 第4話[samurai](2020/12/28 21:44)
[132] 終章 前夜[samurai](2021/03/06 15:22)
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[20952] 明星作戦 1話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:cf885855 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/07/31 23:06
1999年8月2日 GMT(グリニッジ標準時)1430(日本時間2330) 地球周回低軌道 高度495km 軌道ステーション『ホープ(希望)』


「PROX(近傍域通信システム)正常、RGPS-S(GPS相対航法システム)チェック―――オール・グリーン」

「AIポイント(接近開始点)、誘導開始する」

漆黒の彼方から見た目はゆっくりと、しかし実際の速度は第1宇宙速度(約 7.9 km/s=約27,400 km/h)以上の速度を維持して、HTV(無人宇宙補給機)が接近してくる。
軌道ステーション側ではGPSを使った誘導システムで、HTVを『ゆっくりと』接近開始点まで誘導する。 やがて後方5km―――AIポイントに到達した。

「AIマニューバ開始、OK?」

「AIマニューバ開始、OK!」

AIポイントからゆっくりと、下方に円弧を描く様な軌道で誘導し、ステーション下方500mに達するまで誘導する―――RI(R-bar Initiation:Rバー開始点)に到達した。
ステーション下部のコーナーキューブ・リフレクタ(反射板)にレーザーを当て、正確な位置測定をしつつ、ゆっくりと接近する。 ランデブセンサ航法、開始。

「―――逸れる、一旦停止」

「一旦停止、了解」

接近速度は1~10m/min 一旦停止や一旦後退、そしてゆっくりと前進(上昇)を繰り返しながら、慎重に距離を詰める。

「―――300、一旦停止、ホールド」

「300了解、一旦停止、ホールド。 ヨー・マニューバ開始」

ホールドポイントで、ヨー方向を180度回転。 ヨー姿勢を0度に戻し接近を再開する。 やがて下方10mまで接近、バーキングポイント(Berthing Point:把持点)で停止する。
全てのスラスターを停止して待機状態になったHTVに向け、ステーションからカナダアーム2が伸びてHTVを握持し、下方(地球側)結合部に取り付ける。

「よし、与圧開始!」

「与圧開始、了解」

空気を圧する様な音と共に圧縮された空気が流入する音がした。 ゲージを確認する―――1気圧、宜しい。
やがて1気圧に与圧されたドッキングブロックにステーション要員が取り付き、ハッチを開放する。 2m四方の大型ハッチが開き、各種船内資材が取り込まれ始めた。

国連軍航空宇宙総軍に所属し、日本帝国航空宇宙軍が打ち上げ・運用を行う3基ある軌道ステーションのひとつ、『ホープ(希望)』で、定期便の積載作業が始まった。
同時に非与圧部のカーゴ輸送コンテナには、宇宙服を着こんだ船外作業員が取り付き、コンテナへのアーム取り付け作業を行っている。
船内物資は食糧・飲料水や衣類、保守部品などだ。 カーゴ内の船外物資はMRV―――多弾頭再突入体、AL砲弾がぎっしり詰まっている。
これは作戦を控え、腹をすかした軌道爆撃艦隊の駆逐艦群へ両日中に搭載される予定だった。 既に今日1日で12便が到着していた。

作業は進み、やがて船内・船外資材の積み込みが終了した。 次はステーション内の廃棄物を詰め込む作業が待っている。


『作業急げ。 さっき通り過ぎて行った第2戦隊(装甲駆逐戦隊)が周回軌道を戻ってくるのは、1時間18分後だ。 戻ってきたらMRVを積み込むぞ』

司令部区画のオペレーターから、急かす声が入る。 積み込み作業をしている船内外の作業員―――日本帝国航空宇宙軍の下士官達―――は一様に、作業ピッチを上げた。
コンテナに取り付けたアームのフックを、ステーションのカーゴブロックへと続く取り入れ口から伸びる特殊鋼ワイヤーに取り付ける。
簡易接続したスラスター・ユニットのコントロールパネルを操作し、ほんの1秒程スラスターを吹かし、ステーション側へ送り届ける。

『おい、聞いたか?』

「何を?」

作業の合間に、船内外で会話が始まる。 特に船外作業員にとって、何かしらの『音』を聞きたくなるのは、宇宙空間での作業中では誰しも感じる事だ。

『2時間前に食料搭載した『ラファイエット』な。 あれのカーゴ・マスターが言っていたんだが・・・』

「うん? ラファイエット? 第5戦隊のか?」

『ああ、連中、6時間前に『ユニティ』でMRVを搭載したんだけどな。 何時ものハッチじゃ無く、予備の方に回されて、3隻順番待ちさせられたんだと』

「なに? それって、おかしくないか?」

普通、周回軌道に投入されている軌道ステーションでは、迅速な物資搭載の為に、米・欧・日・ソ連(と米国)が運用する全15基あるステーションのどこかで、物資の搭載を行う。
日本帝国が運用責任を持っているのは『ホープ(希望)』、『エイロス(大地)』、『アクア(命水)』の3ステーション。 『ユニティ』は米国の管理ステーションだ。
各ステーションはシステムリンクされて、どこのステーションが多忙で、どこに空きが有るかが判る。 各駆逐艦はその『空き』のステーションで物資の搭載を行うのだ。

「・・・『ラファイエット』は、『ユニティ』の指定だった?」

『らしいな。 で、文句を言ったらしいが、アメちゃんは取り合ってくれなかったとさ。 自国の駆逐艦も順番待ちさせたらしい』

「・・・」

『そのくせ、後続でケネディから打ち上げられてきた2隻―――『キャラハン』、『スコット』には最優先で空きのハッチを割り当てたと。
その2隻はMRVを積み込まず、何か見た事も無いコンテナを各1基ずつ搭載して、さっさと離脱して行ったと』

変な話だ。 そこまで厳重に警戒する『モノ』とは、一体何だ?

「・・・核か?」

『・・・わざわざ、駆逐艦に搭載するか? 月からの迎撃用は、もっと大きい。 あのサイズじゃ精々、戦術核程度の大きさだと言っていた』

戦術核―――なら意味が無い。 月から射出され、地球に落下して行く『あれ』を迎撃・破壊する為には、戦略核弾頭を搭載した迎撃ミサイルが必要だ。
それにそんな代物は『スペースワン』へ持ち込まれる。 もしくは『アーテミシーズ』核投射攻撃衛星群に数発ずつ。

「・・・何だろうな?」

『判らん、アメちゃんの考えている事は』










1999年8月4日 0455 日本帝国 相模湾 旧神奈川県鎌倉市・藤沢市沖20km


『第1部隊の第1、第2戦隊、攻撃開始点集結完了。 単縦陣、完了』

『第7、第9戦隊、続きます。 第1駆逐戦隊、第1支援砲撃戦隊、攻撃開始点到達』

『第2部隊、第3、第5戦隊、単縦陣完了。 第12、第15戦隊続きます』

『第2駆逐戦隊、第2支援砲撃戦隊、展開完了しました』

『目標地点、気温25.4℃、湿度68%RH。 風向は南南西、風速4m/s、天候は晴れ・・・』

CICに続々と情報が入る。 もう間も無く攻撃が開始される、その直前の張りつめた緊張感。 皆がその緊張感に程良く酔っている。

『大東亜連合、タイ海軍の『ナレースワン』、『サイブリ458』、インド海軍の『デリー』、『ゴーダーヴァリ』、『ガンガ』、各艦は第1部隊支援海域に展開。
台湾海軍『康定』、『昆明』、『鄭和』、『岳飛』の4隻、第1駆逐戦隊に続行。 中国海軍『南寧』、『桂林』、『淮南』、『安慶』、第3駆逐戦隊に合流しました』

『インドネシア海軍『ディポネゴロ』、『ハサヌディン』、溺者救助ポジションに展開完了』

大東亜連合各国が派遣した艦艇群も、各々支援海域に着いた。 小型艦艇ばかり故に、正面切って上陸支援攻撃は出来ない。
だがそれ以外にも支援艦隊の盾、洋上に墜落した戦術機からの衛士救助など、地味だが危険で重要な任務は幾らでも有った。

『上陸支援艦隊司令部より入電、『上陸開始準備、宜しい』、以上です』

艦隊の後方、上陸部隊を満載した揚陸艦、補給船団をかき集めた上陸支援艦隊でも、準備は整った様だ。

「・・・参謀長、米軍は?」

「先程連絡が有りました。 浦賀水道にオン・ステージ完了。 我が方の上陸第2派別動部隊も合流」

第1艦隊司令長官、山口右近大将の問いに、参謀長の松永市朗少将が答える。 米海軍第7艦隊の第75-2任務群 (CTU-752)と、第70-2任務群(CTU-702)も展開を完了した。
その後ろには、巨大な兵站能力を有する米第5艦隊の第59任務部隊 (CTF-59)、第55任務部隊(SCF-5)が続く。 これに韓国海軍の『楊万春』、『忠南』が合流した。

これで全ての準備が整った、後は時間を待つのみ。 今頃は遥か彼方の天空で、その雷が降り下ろされている事だろう・・・









1999年8月4日 0500 地球周回低軌道 高度135km 国連軍航空宇宙総軍 軌道爆撃艦隊第1戦隊


『艦隊角度、2度』

『速度、26,800km/h、高度135km。 MRV分離まで180秒』

『艦体表面温度、摂氏2850℃、想定温度内』

『ウランバートル上空を通過、レーザー照射、依然無し』

先制攻撃を仕掛けるべく、軌道爆撃任務の先陣を切る第1戦隊の10隻のHSSTが、再突入回廊に突っ込んでいた。 少しリバースブーストをかけ、速度を減じる。
その後方300秒の位置に第2戦隊、更にその後方300秒の位置に第3戦隊。 それぞれがMRVを満載して低周回軌道から更に高度を下げ、軌道爆撃行程に乗せていた。
やがて熱圏(高度80km-800km)と中間圏(高度80km以下)との境界、中間圏界面が近づいてきた。 高度110km。

『全艦、MRV分離用意』

『高度105km、速度26,200km/h。 ウラジオストーク上空を通過! レーザー照射無し!』

『隊司令より各艦、MRV分離せよ!』

ロックボルトが爆発し、MRVが分離する。 一瞬、MRV本体の簡易スラスターが1回限りの逆噴射を行い、減速して急角度で落下を始める。
10隻全てで40基のMRVを分離―――中には800発もの無誘導AL砲弾が、ぎっしり詰め込まれている。

『艦隊角度、アップ2度! 噴射開始! 周回軌道に復帰する!』

身軽になったHSST各艦が、ロケットブーストをかけ、速度と高度を稼ぐ。 現在の高度100km、速度は26,050km/h。
これを高度400km、速度を27,400km/h―――第1宇宙速度まで回復しなければならない。 でなければ、地上に落下してしまう。

『ロケット点火!』

『艦隊角度、アップ2度! 速度26,300・・・26,800・・・27,000・・・』

真下に見える母星が、次第に丸身を強くして行く。 やがて低周回軌道に乗せた頃、第2陣の第2戦隊が軌道爆撃を敢行した。
全ての軌道爆撃が終了したのは、0506時。 天空より投下されたMRVの数は120基、無誘導AL砲弾は2400発だった。









1999年8月4日 0508 日本帝国 相模湾 日本帝国海軍第1艦隊


『ッ! 軌道爆撃艦隊のMRV分離を確認!』

艦橋に更なる緊張が走る。 軌道爆撃艦隊のMRV分離―――本作戦開始を告げる、天空からの雷が撃ち降ろされたのだ。

『MRV高度、35,500(m)!―――重光線級を確認! レーザー照射、来ます!』

瞬く間に数10本の太い迎撃レーザー照射が、天空へ突き刺さる。数か所で先頭の数基が爆散し、高空に重金属雲が発生する。
しかし終末速度で30,000km/hに近い超高速に達している大半のMRVは、その重金属雲を突っ切って地上に殺到した。
どうやら小型の光線級も加わった様だ、迎撃レーザー照射の本数が飛躍的に増加する。 迎撃され、爆散するMRVの数が増える―――端から織り込み済みだ。
第1派、40基のMRVは全て迎撃された。 その結果、高度4,000付近に重厚な重金属雲が発生した。 その上から250秒の間を置いて、第2派が降り注ぐ。


『重金属雲、戦域規定濃度に到達しました!』

軌道爆撃艦隊が実施した軌道爆撃により、濃厚な重金属雲が低空に形成された。

『海岸線のBETA群総数、約1万4800! 『甲上陸点(稲村ケ崎)』、約8000! 『乙上陸点(辻堂)』に約7480!』

『第1、第3潜水艦隊より入電。 攻撃発進位置に着いた!』

『第1強襲上陸連隊第1、第3大隊、及び第2強襲上陸連隊、発進準備宜しい!』

水中に潜む帝国海軍海兵隊の、強襲上陸部隊。 『海神』を有する第1強襲上陸連隊(第2大隊欠)、第2強襲上陸連隊の出撃準備が整った。
全ての報告を受領した第1艦隊司令部。 その中央に仁王立ちする艦隊司令長官、山口海軍大将が無言で海岸線を睨みつけ、振り上げた手を海岸線に向け、振り下ろした。

「全艦隊、艦砲射撃、開始!」

参謀長が叫ぶ。 同時に各級部隊への指令が、一斉に飛び交った。

『第1、第2戦隊、目標、稲村ケ崎から由比ヶ浜! 第10射まではAL砲弾!』

『第7、第9戦隊、目標、七里ガ浜から腰越一帯! グリッド毎に撃ち込め』

『第1駆戦、第1支戦、ALM発射開始! 第1駆戦目標、由比ヶ浜! 第1支戦目標、腰越!』

第1戦隊の戦艦『紀伊』、『尾張』、第2戦隊の戦艦『信濃』、『美濃』の4巨艦から巨砲が火を噴き、巨弾が陸上に撃ち込まれる。
大半は着弾までにレーザー照射を受け、爆散する。 直後に重金属雲が発生した。
巡洋艦は艦砲の他、ALMまで発射して濃密な重金属雲を形成しようとしている。 軌道爆撃3派により、かなり高濃度の重金属雲が形成された。 だがまだ足りない。

『三浦半島の第14軍団砲兵群、支援砲撃開始しました!』

『第14軍団第47師団、韓国軍第4師団、田越川ラインに展開します!』

先に『曙光』作戦で三浦半島を奪回していた第14軍団から、逗子市内の防衛を任じていた第47師団、韓国軍第4師団が側面攻勢の動きを見せる。

『乙上陸点、攻撃開始しました!』

『第3、第5戦隊、砲撃開始した!』

江の島を挟んで隣接する乙上陸点(辻堂)でも、艦砲射撃が始まった。 戦艦『大和』、『武蔵』、大型巡洋艦『最上』、『三隅』が主力の水上打撃部隊だ。
やがて戦艦の艦砲射撃が10斉射を数えた頃、弾種変更の命令が下った。 もっとも最初から予定されていたので、大きな混乱は無い。

『各艦、主砲弾種変更! AL砲弾より九四式通常弾へ変更!』

『砲撃グリッド調整、宜しいか!?』

『重金属雲濃度、185%! 雲海高度985m!』

『爆散高度、650mに調整―――全艦完了!』

再び艦隊司令部より命令が発せられた。 同時に戦艦・大型巡洋艦の508mm、460mm、305mm砲弾が発射される。
斉発(全砲門同時発砲)ではなく、斉射(交互一斉打ち方)なのは、光線属種の『インターバル』特性を逆手に取った、オードソックスな艦砲射撃方法だ。
轟音と共に一旦天空に舞い上がった巨弾群は、今度は急角度で地表に向け襲い掛かる。 濃密な重金属雲のお陰で、未だレーザーによる迎撃は無い。
やがて全砲弾が重金属雲に突っ込んだ―――数瞬後、重金属雲を突き抜ける。 途端に迎撃レーザー照射が立ち上る。
しかし重金属雲の展開高度は980m前後、九四式通常弾の爆散設定高度は650m、300m強しか『余裕』が無い。
8発の508mm砲弾、12発の460mm砲弾、6発の305mm砲弾のうち、レーザー迎撃で溶解したのは7発だけに留まった。
残る19発は高度650mで信管を作動させて爆散、1発辺り1000個前後の爆発性・焼夷性・対装甲用成型炸薬子弾を、地表に向けてばら撒いた。
流石にBETA群の遠距離迎撃の要である光線属種と言えど、僅か高度600m程から超高速で、しかも広範囲に降り注ぐ2万発近い子弾全てを迎撃は不可能だ。
天空に乱舞するかのように、迎撃レーザーが舞い上るが、迎撃出来た子弾の数は精々2割、多く見積もっても3割。
1万5000発前後の爆発性・焼夷性・対装甲用成型炸薬子弾が、海岸線一帯に特大の花火の如く降り注いだ。

小型種BETAはその灼熱の豪雨の中で、消し炭に変わって行った。 肝心の重光線級・光線級も数発から10数発の子弾を身に受け、破裂する様に身を弾かせ斃れる。
要撃級は無防備な上面に手痛い打撃を受け、次々に体を破裂させている。 強固な外殻を有する突撃級でさえ、立て続けの対装甲用成型炸薬子弾の打撃に、耐え切れなかった。

『砲撃エリア、FよりGに移行』

『エリアPのBETA群、殲滅完了。 エリアQへ移行する』

艦砲射撃の全工程が、凡そ半分が過ぎた。 その間、大型艦は九四式通常弾を撃ち込み続け、中小型艦からは重金属雲を引き続き形成する為にALMが発射されていた。
次第に砲撃音、ALMや誘導弾の飛翔音が、相模湾全域に殷々と木霊し始める。 やがて朝日が立ち上り始める頃、その勢いは絶頂に達していた。
戦艦6隻、大型巡洋艦2隻、イージス・打撃重巡洋艦6隻、同軽巡洋艦5隻、イージス・打撃・汎用駆逐艦が26隻。
これに大東亜連合海軍のフリゲート艦が16隻、ミサイル支援艦に至っては100隻に達する。 160隻を越す大小各艦艇から、無数の砲弾、ALM、誘導弾が撃ち込まれる。
相模湾東部海岸線は、まさに炎と鉄量の地獄と化した。 陸上から洋上に向けてレーザー照射が為されるが、意外なほど哀れな数と間隔でしか無い。
そのレーザー照射の大半が、戦艦の対レーザー蒸散塗膜装甲によって吸収される。 重光線級でさえ、1秒程のレーザー照射を浴びせる余裕も無かった。
その殆どは上空から降り注ぐ鉄と炎の災厄に焼かれ、切り刻まれ、まともに艦の装甲を突き破る事が出来なかったのである。


艦砲射撃開始から2時間が経過した0705、第1艦隊司令部は今までの戦果を確認し、上陸支援作戦のフェイズ2への移行を命令する。

『強襲上陸第1、第2連隊、発進せよ!』

『第1連隊、稲村ケ崎。 第2連隊、辻堂。 上陸支援砲撃、開始!』

『―――第2潜水艦隊、了解。 『海神』全機、発進せよ!』

『第3潜水戦隊、全『海神』の発進を確認!』

海岸線から16km沖合の水中に待機していた第2、第3潜水艦隊が、2個連隊・5個大隊の『海神』を発進させた。 2箇所の橋頭堡を確保する為に。
同時に艦隊の支援砲撃が、海岸線付近に集中する。 途端に、僅かに生き残っていた光線属種が、後方地域から前進して来た新たな個体群と共に、南へ南下して来た。

『稲村ケ崎、BETA群増加します! 約8800! 辻堂のBETA群、約9200!』

2時間かけて、1万以上のBETA群を葬って来た。 しかし連中は更に1万5000近い『増援』を、横浜から送り込んでいるのだ。

『旧八幡宮跡に重光線級確認! 個体数20!』

『源氏山付近に光線属種、重光線級7、光線級35!』

「―――艦隊、右砲戦用ー意! ・・・撃ッ!」

新たに艦隊の集中砲火と、光線属種のレーザー照射との撃ち合いが始まった。 戦闘開始後2時間が経過し、軌道爆撃で形成した重金属雲はかなり薄れている。
新たな重金属雲を形成するには、AL砲弾・ALMを大量に撃ち込まねばならない。 そして皮肉にも、ある程度の数の『光線属種が必要』とされる。
光線属種はその数を徐々に増やしてきている、問題なのは2時間の砲撃戦で、艦隊のAL砲弾・ALMの数がかなり減少している事だ。
上陸支援で大量のALMや無誘導弾をばら撒く『主役』は、実はロケット砲艦群である。 そのロケット砲艦のミサイル残弾が僅少となり、一旦後方に引いて補給中だった。

「・・・重金属雲を張る暇は有りません、直接叩きあいを行います」

松永参謀長の言葉に、山口司令長官が頷く。 非常に危険だが、勇将として世の海軍に知れる山口大将に、ここで引く手は考えられない様だ。

「あと少しだ、『海神』が上陸に成功し、橋頭堡を確保すれば・・・ 強行上陸第1派を送り込めれば、幾らでも迂回殲滅の方策は有る。
参謀長、戦艦、重巡、軽巡の全てを前に出せ。 盾にする。 光線属種の薄い所は、駆逐艦で対処させろ」

「・・・はッ!」

非情とも取れる命令だが、帝国海軍の各艦、そして各艦長は何も言わず、一斉に命令に従った。 
由比ヶ浜から辻堂・茅ヶ崎一帯を睨むように、戦艦・重巡・軽巡の全艦が単縦陣で海岸線に並行する。
ほぼ水平射撃に近い仰角で巨砲が唸り、巡洋艦の203mm、155mmの高初速砲が立て続けに砲弾を吐き出す。
大型艦の高射砲や、小型艦の主砲として搭載されている127mm速射砲が、1.33秒に1発の高発射速度で、直接照準で砲弾を叩き込む。

陸上からは重光線級の太いレーザーが海上に照射される、レーザー級の細いレーザーの数は100本を越した。
お互いが我慢比べの様に、損害に耐えつつ直接の叩きあいを演じている。 双方に損害が広がった。

『第2戦隊、『美濃』の第3砲塔全壊!』

『第7戦隊、集中照射を受けています! 『摩耶』機関部損傷、中破! 出し得る速力11ノット! 『鳥海』後部艦橋全壊、中破!』

『第1駆戦、駆逐艦『夕雲』爆沈! 『早霜』艦橋喪失、戦列を離れます!』

やられっ放しではない。

『源氏山公園の光線属種、殲滅に成功!』

『八幡宮の重光線級、残存8体! 12体の殲滅に成功しました!』

「ここが我慢のしどころだ! 『海神』上陸まであと2分! 持ち堪えろ!」

―――やがて、時が来た。

『強襲上陸2個連隊、上陸しました!』

『支援艦隊、復帰します! ALM、全力発射開始しました!』

面制圧と重金属雲形成の為の『主役』が戻って来た。 これで何とかなる、これで―――

『第2戦隊、『信濃』! 艦体中央部に重光線級のレーザー直撃!』

これまで耐え続けてきた主力艦の1隻、戦艦『信濃』が艦体中央を、重光線級のレーザーで貫かれた瞬間だった。







1999年8月4日 0715 相模湾 第1艦隊第2戦隊 戦艦『信濃』


初めは鈍い衝撃だった。 続いて艦内部から揺さぶられるような衝撃。 やがて艦内全てが非常用の赤色電灯に切り替わった。

「中部水線装甲部に、レーザー照射直撃!」

「こちらCIC! 機関指揮所、応答せよ! 機関指揮所! こちらCIC!―――機関指揮所、応答有りません!」

「右舷第1防水区画に浸水!」

「ダメコン、急げ!」

艦内が騒然とする。 内務長を指揮官とするダメコン・チームが総出で被害個所に駆けつけ、応急処理を行うべく飛び出してゆく。
艦の速力が見る見る落ちていた。 22ノットで艦砲射撃を加え続けていた『信濃』の速力は、14ノットまで低下している。

「艦長、電路が数か所で寸断されたようです。 現在予備電路に切り替え中、防水壁が幾つか下りません」

「・・・手動は?」

「ダメコンが向かっておりますが・・・」

艦の総合保全責任者でもある副長が、渋い顔で報告する。 まだ艦が沈む様な損害では無い。 第1、第2主砲塔も変わらず砲撃を続けている。
しかしこのままの低速で、立て続けに直撃を喰えば艦の中枢機能を喪失しかねない。 BETAとの戦闘で大型艦が沈むのは、1に弾火薬庫の誘爆、2に指揮中枢の喪失だ。

『艦長! 内務長です!』

ダメコン・チームの責任者から切羽詰まった声がスピーカーに流れた。

「艦長だ、内務(内務長)、どうした?」

『艦の速力を落して下さい! 流入浸水の勢いが強過ぎる! 第2隔壁が破られそうです! 第5、第7隔壁の閉鎖が水圧で出来ません!』

一瞬、あちこちで唸り声がした。 大量浸水による艦のバランス崩壊。 沈む要素がまたひとつ増えた。

『ッ! レーザー照射、第11派、来ます!』

「総員、対レーザー防御!」

「全砲門、左砲戦!」

既に艦体陣形の3番艦の位置に居る『信濃』は、折り返し点を周り今は左砲戦で戦っていた。 2番艦『尾張』との差が開き、4番艦『美濃』との差が詰まる。

「・・・取り舵、10度」

「取り舵、ですか!?」

艦長の命令に、副長が思わず確認する。 航海艦橋に居る航海長の息をのむ声が、スピーカーから流れる。 当然だ、取り舵―――左に、陸地に向け舵を切ると言う事は。

「本艦は未だ戦闘力を維持しておる。 そして速力が出ず、艦隊行動に追従出来ぬ。 ならば左に―――より陸上に近づく、これしかあるまい? 戦艦なのだ、本艦は」

誰も、何も言えなかった。 未だ戦闘力を保持した艦が、それも日本帝国海軍の戦艦が、戦場を前に『離脱』するなど有り得ない。
一瞬の静寂の後、艦内は異様な闘志―――或いは追い詰められた切迫感に包まれた、皆がアドレナリンを全開にしている。

その様子を見ていた艦長が、傍らに置いていた航海士―――正規の航海士では無く、少尉候補生の見習航海士を呼んだ。
今までの戦闘で、特に何をする仕事も無く、ただただ興奮しながら戦況を見守っていた若い候補生は、いきなりの指名に緊張しつつ艦長の元に参じる。

「どうやら、機関指揮所への通信網がやられた様だ。 航海士、君は機関指揮所へ走れ、機関長に伝言だ。 『速力10ノットと為せ』―――頼むぞ、綾森候補生」

「―――はッ! 機関指揮所へ伝達! 艦速力10ノット! 航海士、綾森候補生、命令受領しました! 行って参ります、艦長!」

若い顔を緊張させながら命令を復唱し、脱兎のごとくCICを走って出て行く若い部下を見ながら、艦長は思った―――死ぬなよ、と。





「駄目だ、駄目だ! 航海士、こっちは駄目です、火災とガスが発生している!」

「兵曹、機関指揮所へはどうしても、下甲板から左舷第22区画へ降りなきゃならん! 他の経路は!?」

消火活動で顔面を煤だらけにしたダメコン・チームの古参下士官に、綾森候補生が切羽詰まった声で確認する。 乗艦間もない彼は『艦内旅行』を完全に把握出来ていない。
聞かれた下士官は脳内にインプットされた艦内地図を探る様な表情で、まだ『大丈夫だろう』経路を思い出す。 損害箇所、無事な箇所、全体の艦内通路・・・

「・・・右舷、第3兵員室から下って、通信室脇のタラップからなら、第1下甲板に降りる事が出来ます。 そこから艦尾方向に第28区画まで行って左舷へ。
途中の24区画と23区画はもしかしたら閉鎖されているかもしれません、そしたら左舷第3高射砲弾揚塔区画脇のハッチから、機関室に降りる事が出来ます」

「判った、俺はそのルートで行く。 それと済まんが、伝令を1人貸してくれるか?」

「・・・了解です。 おい、前田! 貴様、候補生と一緒に行け!」

前田と呼ばれた若い1等水兵が、元気よく『了解!』と叫んでやって来た。 まだ若い、綾森候補生よりも若い、まだ16、17歳位の少年水兵だった。
もっともそんな若い兵隊は『信濃』だけじゃない、海軍全体に幾らでもいるし、陸軍にも年若い兵隊はごまんと居る―――姉や義兄が言っていたな。
急がなければならない、綾森候補生は伝令の前田1水(1等水兵)と共に艦内通路を走り抜け、タラップを飛び降り、まだ無事な右舷通路をひた走った。
戦闘配置がかかっている中、上甲板の艦内は無人に近い。 艦砲の射撃音だけが響く艦内を、ようやく右舷第28区画まで到達し、そこから左舷区画へと出た。

「よし、ここはまだ閉鎖されていない・・・ 前田1水、23区画まで急ぐぞ」

「はッ! 了解です、候補生! それと僭越ですが、ここから先はマスク(ガスマスク)を装面した方がよいのでしょうか? もしかしたら、ガスが発生しているかもしれません」

「む・・・ わ、判った。 マスク装面!」

確認の形だが、実際は進言、いや『命令』だった。 確かに被弾の衝撃で、ガス検知器が破損しているかもしれない。 念には念を、だ。 それにしても・・・

(・・・兵卒、牛馬、候補生、とは良く言ったもんだよな。 こんな若い1水でも、一端に働いているってのに)

つまり、艦内では少尉候補生が一番の『みそっかす』、『洟垂れ』だと、昔から言われ続けた言葉だ。 まだ何も専門を習得していない彼等は、日々が修行の時。
役に立つ、立たないは兵卒より下。 だから修行に励め、そう言われ続けてきた。 綾森候補生にしてみれば、まさに今それを実感した所だ。

マスクを装面すると、途端に耐えがたい程の蒸し暑い苦しさに襲われる。 だが我慢するしかない。 所々に焼け焦げた跡が有った、そして血痕も。 
一体何名、いや、何十名が負傷したのか?或いは何百名? やがて走り続け、第24区画を通過し、第23区画へ―――

「くそ、駄目だ!」

レーザー被弾の時に爆散したものか、艦内の構造材がめちゃめちゃに散乱して、通路を塞いでいる。 これではこの先の22区画へは行けない。
第3高射砲弾揚塔区画脇のハッチはさっき確認した、やはり構造材が落ちていて入り込めない。 どうしても22区画から入るしかない。
そう思った瞬間、また衝撃が走った。 思わずよろめいて、壁に激突してしまう。 見ると前田1水も呻きながら立ち上がろうとしていた。

「痛ぅ・・・ 前田1水、怪我は!?」

「大丈夫です! 候補生は・・・?」

「俺も怪我は無い、こんな所でしてたまるか・・・ 仕方が無い、別の経路を探すか」

「無いんです・・・」

「・・・何?」

「別の経路はすべて閉鎖されています! 22区画へは、この経路しか・・・!」

泣きそうな表情で、前田1水が叫ぶように言う。 艦内放送でレーザー照射の第2弾を艦中部前方に受けた事を言っていた。 時間が無い。
その時、不意に閃いた―――『戦場じゃ、恥も外聞も無いよ。 クソを垂れようが、小便を漏らそうが、取れる手段は全て取る』、義兄がそう言っていたな。

「・・・まだこの辺、バルジに注水は、されていないよな?」

「はあ、そうですが・・・」

綾森候補生の提案に、前田1水は目を丸くして驚いた。 なんとこの23区画からバルジ(艦の中枢装甲と外殻装甲の隙間、注水区画)に入る。
バルジには縦横に汚水管が走っている、それを伝って22区画まで行き、そこからまた艦内に入ると言うのだ。
普段ならとんでもない話だ、規則で禁じられている。 それにもし衝撃で汚水管が破損していたら?―――頭からクソや小便をひっ被る事になる!
そんな姿での戦死など、真っ平ご免だ。 ご免だが、やらないと機関指揮所に行けない。 減速を伝えないと、艦は次第に流入する浸水でバランスを崩し、最悪転覆する。

意を決した2人は、硬く締めつけられたハッチを解放し、バルジの中に入った。 暗く蒸し暑い場所だ。 途中で本当に汚水を―――大か小か―――を被ってしまった。

別の意味で死ぬような思いをして、ようやく第22区画に辿り着いた。 目指す先に機関指揮所へと降りるハッチがある。 あそこをくぐれば、機関室へのタラップが・・・
2人とも気が急いて、しかし息苦しさと疲労で足がもつれながらハッチをくぐる。 タラップを下り、機関室へ通じる防火・耐水扉を開けて―――

「うわああ!」

背後から前田1水の悲鳴が聞こえた気がした。 同時に背後から突き飛ばされるような衝撃と、熱気が襲い掛かって来た。

「がっ!」

一気に機関室内のプレート通路に体を叩きつけられた、嫌な音がした。 激痛が走る。

『レーザー照射被弾! 艦内下甲板で爆発!』

『左舷第3機械室、全滅!』

『目標、左10時方向・・・ 撃ッ!』

被弾を伝える声と、攻撃命令が同時に聞こえる。 まだだ、まだ『信濃』は負けちゃいない。

「おい、貴様ら、大丈夫か!? ・・・って、おい、貴様、航海士か!?」

誰だろう、誰かが自分に呼び掛けている。 機関科の士官か? 見た気がする、誰だっただろう・・・? それにしても、畜生! 痛い! 全身が痛い!

「おい、負傷者だ! 向うへ運べ!」

その機関科士官が叫び、部下に運ばせて持ち場に戻ろうとしたその瞬間、反射的に綾森候補生はその士官の足首を掴んでいた。

「うおっ!? き、貴様、一体何を・・・!?」

「で・・・伝言・・・」

「なに? 伝言? 艦橋からか?」

「か、艦長より・・・機関長へ・・・『速力、10ノット』・・・」

「なに!? 何と言った? 10ノット? 減速か!?」

痛い、我慢できない程痛い。 おまけに火傷もしたようだ、意識が途絶えそうだ。

「・・・か、艦長より命令です! 『速力10ノットと為せ!』 隔壁が浸水で破られそうです!」

「なにぃ!? おい、長附(機関長附き、機関中少尉がする)! 指揮所に報告! 『速力10ノット』、艦長命令だ、急げ!」

「了解、速力10ノット、了解!」

機関室内が慌ただしくなる。 怒声が飛び交い、機関員が様々なコントロールパネルに飛びつく。 中には手動でバルブの急速開閉を行っている者も居た。
その様子を見ながら綾森候補生は、ああ、やった、これで艦はひとまず大丈夫だ、そう思った。 思った瞬間、意識が途切れた。









1999年8月4日 1430 相模湾 第1艦隊旗艦 戦艦『紀伊』


『第8軍第1軍団、第9軍第14軍団、旧鎌倉市内を制圧完了。 損耗率22%』

『第8軍第8軍団、第16軍団、旧藤沢市を確保。 損耗率20.5%』

『大東亜連合軍第3軍団(インドネシア軍第4、第5、第8師団)、厚木方面に進撃開始しました。 目立った損失は無し』

『戦略予備の第18軍団(第32、第33、第34師団)、国連軍第4軍団(フィリピン軍第6、第9師団)西関東防衛線に合流』

ほんの1時間前まで凄惨な上陸戦が行われていた海岸線は、今は無数の、と言いたくなる程の揚陸艦や、輸送艦から発進した大発(大発動艇)によるピストン輸送で渋滞していた。
強襲上陸2個連隊が力技で確保した橋頭堡に、海軍聯合陸戦第1、第2師団が殺到した。 3割近い損失を出しながらも、内陸への支配地拡張に成功したのが正午過ぎ。
そこから稲村ケ崎に第8軍第1軍団(第1師団、第3師団、禁衛師団)が上陸。 三浦半島の第14軍団の一部(第47師団、韓国第4師団)と共に、旧鎌倉市域を奪回した。
辻堂には第8軍第8軍団(第28師団、第43師団)、第16軍団(第19、第23師団)が上陸、藤沢市域を確保した。
同時に大東亜連合軍第3軍団(インドネシア軍第4、第5、第8師団)が茅ヶ崎に上陸開始、相模川沿いに厚木に向け北上を開始し始めた。

上陸部隊の平均損耗率は23.5% 最悪の数字は強襲上陸2個連隊(『海神』部隊)の56.2%、聯合陸戦第1、第3師団もそれぞれ29.2%、28.9%の損失を出した。

だがそれ以外の部隊は、十分許容範囲内の損失で済んでいる。 今後の侵攻作戦でも十分耐えきれる。
聯合陸戦師団も同様だ、元々が陸軍の師団よりずっと大型の部隊だ(4個旅団=陸戦団編制) 3割の損失でも、陸軍の1個師団の戦力に十分匹敵する。

「2200には、大東亜連合軍が厚木・海老名・大和・町田のラインを確保する予定です。 同時に第18軍団・国連第4軍団が西関東防衛線より進出。
2330までには、登戸から町田までの北部防衛線に展開開始。 南部は第8軍、第9軍が藤沢・鎌倉・逗子・横須賀ラインを確保。 明日の攻勢に備えます」

松永参謀長の報告を聞いていた山口司令長官は、暮れゆく夕焼けを受けた海岸線を見つめ、呟くように言った。

「・・・大山さんに言ってくれ、何とか約束は果たしたと」

「はッ! それと、現時点での艦隊の損害報告です。 『信濃』は何とか、沈没を回避しました」

手渡された紙切れに目を通し、内心で呻く。 大破、戦艦『信濃』、重巡『鳥海』、『摩耶』、軽巡『阿武隈』、駆逐艦『初月』、『清霜』の5隻。
中小破は戦艦『美濃』、重巡『利根』、駆逐艦『照月』、『夏潮』の4隻。 そして重巡『筑摩』、軽巡『仁淀』、駆逐艦『夕雲』、『早霜』、『黒潮』、『秋霜』の6隻が沈んだ。

「・・・明日以降使える艦は、29隻か」

痛いな、と思う。 今朝には44隻の大艦隊の陣容を揃えていたのだ。 たった半日の上陸支援戦闘で15隻が脱落するとは。

「大東亜連合艦隊でも、台湾のフリゲート『康定』と中国の『淮南』が沈みました。 インドの『デリー』、タイの『ナレースワン』が中破です。
戦力は減りましたが・・・ 明日以降は米軍が参加します、自国部隊が上陸を開始しますから、連中も支援砲撃に参加しない訳にはいかんでしょう」

「うん・・・ 戦艦『アイオワ』、『ニュージャージー』に、我が国の最上級に匹敵する大型巡洋艦『グアム』か。
確かに『信濃』、『美濃』の抜けた穴は塞げるか。 それにイージスを始め巡洋艦と駆逐艦が併せて10隻か」

15隻の脱落が有ったが、新たに米第7艦隊から12隻の追加だ。 それだけでは無い、米第5艦隊の巡洋艦と駆逐艦が6隻で、合計18隻。

「問題は、向うの指揮官、アームストロング少将ですが・・・」

「なに、従わせるさ。 向うだって自国だけじゃどうしようもない、『寄らば大樹の樹』さ。 今夜中にウィラード(国連太平洋総軍司令官)に話を付けておく」

話をつける、か―――この人なら通信回線越しに、ウィラード大将と喧嘩しかねんな。 GF(連合艦隊)司令部と軍令部、双方からも話をして貰った方が良いな。
上がイケイケだと、下の補佐役はどうしても調整型になってしまう。 そんな好例の松永少将は、内心でそっと溜息をついた。 
つきながら、さて誰に話を持って行こうか? そんな事ばかりを考えていた。









1999年8月8日 1730 相模湾東部海域 第4上陸支援艦隊 作戦指揮艦『夕張』


「上陸第1派は何とか成功した様だな。 第2派の大東亜連合軍も順調だ、これで明日の本番を迎えられる」

艦内の作戦室で、地図を広げて18師団作戦課長の広江直美中佐が、独り言のように呟いた。 作戦は順調に推移している、明日の本番を控え、万全の状態だった。

「夜半には攻撃発起点までの確保が完了すると、報告が有りました。 我々は明日0530、予定通り横須賀に上陸します」

「周防、上陸地点の情報は? BETAの動きはどうだ?」

「第14軍団からの連絡では、比較的散発状態であると。 今日の動きも、相模湾へは総数で3万からのBETA群が殺到しましたが、三浦半島へは精々2000程度だったと。
聯合陸戦第3師団も、戦力の85%を回復した様です。 半島の守りは47師団、49師団に韓国軍2個師団で大丈夫でしょう。
第7師団と聯合陸戦第3師団は、我々第13軍団に付き合って貰います。 統一中華の2個師団も。 合計で6個師団・・・陸戦隊を計算すれば、6.5個師団」

師団G2(情報課)からの情報をもとに、部下の周防直衛大尉が所見を述べる。 順調だ、不気味なほど順調だった。
先程までの軍団作戦会議の席上、軍団司令部も師団司令部も、比較的楽観論が支配していた。 当然歴戦の部隊だけに、完全に舐めてかかる様な愚はしなかったが。
それでも数名の『苦労性』の人間は居た。 広江中佐もそうだし、周防大尉もそうだった。 彼等は楽観するには、余りに多くの負け戦を見過ぎている。

作戦会議が終わり(軍団司令部が乗り込む作戦指揮艦『天竜』で行われた)帰艦した途端に広江中佐が周防大尉を捕まえ、ぶちまけたのだ『アレで良いと思うか!?』と。

「数は相応の数ですし、司令部内で全員が楽観しなければいいのでは? 作戦課長が悲観論でストッパーをすれば、歯止めになりますよ」

「なんだ、周防。 貴様、私だけ貧乏くじを引かせる気か!?」

「偶には引いて下さい。 少しは部下を労わって下さい。 大尉風情で将官連中に睨まれるのは、ご免です。 その代わり、中佐に代わって耳はそばだてておきますから」

「可愛くない奴だ、まあいい。 今更作戦を弄る訳にも行かんしな、精々、注意を払っておけ」

そう言って苦笑した広江中佐が、周防大尉に向かって思い出したように言った。

「・・・海軍から何か連絡は有ったのか? 『信濃』は随分と叩かれていた」

部下である周防大尉の義弟が、戦艦『信濃』の乗り組みだった。 酷く叩かれ、それでも砲撃を敢行していた『信濃』だったが、最後はよろめく様に海域を離脱していった。

「いえ、まだ何も。 向うも大わらわでしょうから、暫くしてからでないと、判らないと思います」

「そうか・・・ 貴様の嫁は? どうしている?」

「表向き、何も変わらずに。 こちらからも、特には何も」

「・・・その方が良いな。 あいつも歴戦だ、そのくらいの覚悟は有るだろう。 全ては作戦が終わってからだな」

周防大尉も無言で頷いた。 戦場にあって完全な安全など有りはしない、元戦術機乗りの妻なら、それは十分理解している筈だ。 だが肉親の事となると・・・
今日は出番が無かった。 だから戦闘海域を少し離れた場所で『観戦』する事になったが、やはり強行上陸作戦は被害が大きい。
艦の数か所から爆炎を噴き上げ、時々小爆発を繰り返しながら、僅か8ノットと言う、這うような速度で戦場を離脱して行く『信濃』の姿が脳裏に蘇る。
艦内は酷い状態だろう。 あの爆炎一つ、爆発一つで数10人、数100人が傷つき、死んで行く事になるのだから。

(・・・死ぬんじゃないぞ)

生死の判らぬ義弟に向けて、周防大尉は内心で祈るように呟いた。









1999年8月5日 0015 太平洋鹿島灘 戦艦『信濃』艦内


あちこちで阿鼻叫喚の声が響く。 苦痛に呻く声、すすり泣く声、絶叫の様な悲鳴。 艦は酷い有様だった。 都合8本もの、重光線級のレーザー照射の直撃を喰らったのだ。
主砲はとうとう、全砲塔が使用不能になった。 速射砲も左右両舷とも、7割が破損した。 機関も重大な損害を受け、出し得る速力は最大でも8ノット。
なんとか自力航行しつつ、松島湾に向けて北上中だった。 傍らには中破した僚艦『美濃』が随走していた。

「・・・」

負傷者を『寝かせて』いる通路の隅で、頭に包帯を巻き、骨折した左手を吊って、その様子をぼんやりとその光景を眺めていた。 モルヒネが効いていた。
正直、記憶が飛んでいてはっきり思い出せない。 あの時、機関室まで伝令に出かけ、艦長の命令を伝え、それから・・・

(それから・・・ どうなったんだっけ?)

そこで記憶が飛んでいた、気がつけば艦が相模湾から離脱していたのだ。 あっけない、実にあっけない初陣だった。
隣で呻き声がする。 包帯でミイラの様にぐるぐる巻きに巻かれた、前田1水だった。 彼は打撲と骨折もだが、火傷が酷かった。
ぼんやりしていると、頭に包帯を巻いた士官が近づいてきた。 機関科の士官だ。 彼は自分を見るなり、相好を崩した。

「おう、航海士、今日はお手柄だったな!」

その意味が判らない。

「・・・は?」

その表情に、機関科の士官(機関大尉だった)が呆れた様に、そして彼が初陣だったと思いだし、諭すように言った。

「おいおい、貴様が機関室まで伝令に来なければ、『信濃』は浸水でバランスを崩して転覆していた所だぞ? 実に危ないタイミングだったんだ。
貴様が来たからこそ、速度を落として転覆を免れた。 その後も戦闘に参加できた。 話しを聞いた、咄嗟にバルジの中を通ったってな―――大殊勲だ」

それだけ言うと、精々養生しろよ、まだまだ戦は続くからな、そう言ってその機関大尉は去って行った。

―――ああ、まだ戦いは続くのかぁ・・・ 

そう、ぼんやりした意識で思った。 綾森喬海軍少尉候補生の初陣は、こうして終わった。






1999年8月5日 0025 日本帝国軍・国連太平洋総軍第11軍・大東亜連合軍派遣軍の連合軍は、旧神奈川県内南部の戦域確保に成功した。

『明星作戦』、そのハイヴ攻略フェイズ発動まで、あと5時間に迫っていた。




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