<このWebサイトはアフィリエイト広告を使用しています。> SS投稿掲示板

Muv-LuvSS投稿掲示板


[広告]


No.20952の一覧
[0] Muv-Luv 帝国戦記 第2部[samurai](2016/10/22 23:47)
[1] 序章 1話[samurai](2010/08/08 00:17)
[2] 序章 2話[samurai](2010/08/15 18:30)
[3] 前兆 1話[samurai](2010/08/18 23:14)
[4] 前兆 2話[samurai](2010/08/28 22:29)
[5] 前兆 3話[samurai](2010/09/04 01:00)
[6] 前兆 4話[samurai](2010/09/05 00:47)
[7] 本土防衛戦 西部戦線 1話[samurai](2010/09/19 01:46)
[8] 本土防衛戦 西部戦線 2話[samurai](2010/09/27 01:16)
[9] 本土防衛戦 西部戦線 3話[samurai](2010/10/04 00:25)
[10] 本土防衛戦 西部戦線 4話[samurai](2010/10/17 00:24)
[11] 本土防衛戦 西部戦線 5話[samurai](2010/10/24 00:34)
[12] 本土防衛戦 西部戦線 6話[samurai](2010/10/30 22:26)
[13] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 1話[samurai](2010/11/08 23:24)
[14] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 2話[samurai](2010/11/14 22:52)
[15] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 3話[samurai](2010/11/30 01:29)
[16] 本土防衛戦 京都防衛前哨戦 4話[samurai](2010/11/30 01:29)
[17] 本土防衛戦 京都防衛戦 1話[samurai](2010/12/05 23:51)
[18] 本土防衛戦 京都防衛戦 2話[samurai](2010/12/12 23:01)
[19] 本土防衛戦 京都防衛戦 3話[samurai](2010/12/25 01:07)
[20] 本土防衛戦 京都防衛戦 4話[samurai](2010/12/31 20:42)
[21] 本土防衛戦 京都防衛戦 5話[samurai](2011/01/05 22:42)
[22] 本土防衛戦 京都防衛戦 6話[samurai](2011/01/15 17:06)
[23] 本土防衛戦 京都防衛戦 7話[samurai](2011/01/24 23:10)
[24] 本土防衛戦 京都防衛戦 8話[samurai](2011/02/06 15:37)
[25] 本土防衛戦 京都防衛戦 9話 ~幕間~[samurai](2011/02/14 00:56)
[26] 本土防衛戦 京都防衛戦 10話[samurai](2011/02/20 23:38)
[27] 本土防衛戦 京都防衛戦 11話[samurai](2011/03/08 07:56)
[28] 本土防衛戦 京都防衛戦 12話[samurai](2011/03/22 22:45)
[29] 本土防衛戦 京都防衛戦 最終話[samurai](2011/03/30 00:48)
[30] 晦冥[samurai](2011/04/04 20:12)
[31] それぞれの冬 ~直衛と祥子~[samurai](2011/04/18 21:49)
[32] それぞれの冬 ~愛姫と圭介~[samurai](2011/04/24 23:16)
[33] それぞれの冬 ~緋色の時~[samurai](2011/05/16 22:43)
[34] 明星作戦前夜 黎明 1話[samurai](2011/06/02 22:42)
[35] 明星作戦前夜 黎明 2話[samurai](2011/06/09 00:41)
[36] 明星作戦前夜 黎明 3話[samurai](2011/06/26 18:08)
[37] 明星作戦前夜 黎明 4話[samurai](2011/07/03 20:50)
[38] 明星作戦前夜 黎明 5話[samurai](2011/07/10 20:56)
[39] 明星作戦前哨戦 1話[samurai](2011/07/18 21:49)
[40] 明星作戦前哨戦 2話[samurai](2011/07/27 06:53)
[41] 明星作戦 1話[samurai](2011/07/31 23:06)
[42] 明星作戦 2話[samurai](2011/08/12 00:18)
[43] 明星作戦 3話[samurai](2011/08/21 20:47)
[44] 明星作戦 4話[samurai](2011/09/04 20:43)
[45] 明星作戦 5話[samurai](2011/09/15 00:43)
[46] 明星作戦 6話[samurai](2011/09/19 23:52)
[47] 明星作戦 7話[samurai](2011/10/10 02:06)
[48] 明星作戦 8話[samurai](2011/10/16 11:02)
[49] 明星作戦 最終話[samurai](2011/10/24 22:40)
[50] 北嶺編 1話[samurai](2011/10/30 20:27)
[51] 北嶺編 2話[samurai](2011/11/06 12:18)
[52] 北嶺編 3話[samurai](2011/11/13 22:17)
[53] 北嶺編 4話[samurai](2011/11/21 00:26)
[54] 北嶺編 5話[samurai](2011/11/28 22:46)
[55] 北嶺編 6話[samurai](2011/12/18 13:03)
[56] 北嶺編 7話[samurai](2011/12/11 20:22)
[57] 北嶺編 8話[samurai](2011/12/18 13:12)
[58] 北嶺編 最終話[samurai](2011/12/24 03:52)
[59] 伏流 米国編 1話[samurai](2012/01/21 22:44)
[60] 伏流 米国編 2話[samurai](2012/01/30 23:51)
[61] 伏流 米国編 3話[samurai](2012/02/06 23:25)
[62] 伏流 米国編 4話[samurai](2012/02/16 23:27)
[63] 伏流 米国編 最終話【前編】[samurai](2012/02/20 20:00)
[64] 伏流 米国編 最終話【後編】[samurai](2012/02/20 20:01)
[65] 伏流 帝国編 序章[samurai](2012/02/28 02:50)
[66] 伏流 帝国編 1話[samurai](2012/03/08 20:11)
[67] 伏流 帝国編 2話[samurai](2012/03/17 00:19)
[68] 伏流 帝国編 3話[samurai](2012/03/24 23:14)
[69] 伏流 帝国編 4話[samurai](2012/03/31 13:00)
[70] 伏流 帝国編 5話[samurai](2012/04/15 00:13)
[71] 伏流 帝国編 6話[samurai](2012/04/22 22:14)
[72] 伏流 帝国編 7話[samurai](2012/04/30 18:53)
[73] 伏流 帝国編 8話[samurai](2012/05/21 00:11)
[74] 伏流 帝国編 9話[samurai](2012/05/29 22:25)
[75] 伏流 帝国編 10話[samurai](2012/06/06 23:04)
[76] 伏流 帝国編 最終話[samurai](2012/06/19 23:03)
[77] 予兆 序章[samurai](2012/07/03 00:36)
[78] 予兆 1話[samurai](2012/07/08 23:09)
[79] 予兆 2話[samurai](2012/07/21 02:30)
[80] 予兆 3話[samurai](2012/08/25 03:01)
[81] 暗き波濤 1話[samurai](2012/09/13 21:00)
[82] 暗き波濤 2話[samurai](2012/09/23 15:56)
[83] 暗き波濤 3話[samurai](2012/10/08 00:02)
[84] 暗き波濤 4話[samurai](2012/11/05 01:09)
[85] 暗き波濤 5話[samurai](2012/11/19 23:16)
[86] 暗き波濤 6話[samurai](2012/12/04 21:52)
[87] 暗き波濤 7話[samurai](2012/12/27 20:53)
[88] 暗き波濤 8話[samurai](2012/12/30 21:44)
[89] 暗き波濤 9話[samurai](2013/02/17 13:21)
[90] 暗き波濤 10話[samurai](2013/03/02 08:43)
[91] 暗き波濤 11話[samurai](2013/03/13 00:27)
[92] 暗き波濤 最終話[samurai](2013/04/07 01:18)
[93] 前夜 1話[samurai](2013/05/18 09:39)
[94] 前夜 2話[samurai](2013/06/23 23:39)
[95] 前夜 3話[samurai](2013/07/31 00:02)
[96] 前夜 4話[samiurai](2013/09/08 23:24)
[97] 前夜 最終話(前篇)[samiurai](2013/10/20 22:17)
[98] 前夜 最終話(後篇)[samiurai](2013/11/30 21:03)
[99] クーデター編 騒擾 1話[samiurai](2013/12/29 18:58)
[100] クーデター編 騒擾 2話[samiurai](2014/02/15 22:44)
[101] クーデター編 騒擾 3話[samiurai](2014/03/23 22:19)
[102] クーデター編 騒擾 4話[samiurai](2014/05/04 13:32)
[103] クーデター編 騒擾 5話[samiurai](2014/06/15 22:17)
[104] クーデター編 騒擾 6話[samiurai](2014/07/28 21:35)
[105] クーデター編 騒擾 7話[samiurai](2014/09/07 20:50)
[106] クーデター編 動乱 1話[samurai](2014/12/07 18:01)
[107] クーデター編 動乱 2話[samiurai](2015/01/27 22:37)
[108] クーデター編 動乱 3話[samiurai](2015/03/08 20:28)
[109] クーデター編 動乱 4話[samiurai](2015/04/20 01:45)
[110] クーデター編 最終話[samiurai](2015/05/30 21:59)
[111] 其の間 1話[samiurai](2015/07/21 01:19)
[112] 其の間 2話[samiurai](2015/09/07 20:58)
[113] 其の間 3話[samiurai](2015/10/30 21:55)
[114] 佐渡島 征途 前話[samurai](2016/10/22 23:48)
[115] 佐渡島 征途 1話[samiurai](2016/10/22 23:47)
[116] 佐渡島 征途 2話[samurai](2016/12/18 19:41)
[117] 佐渡島 征途 3話[samurai](2017/01/30 23:35)
[118] 佐渡島 征途 4話[samurai](2017/03/26 20:58)
[120] 佐渡島 征途 5話[samurai](2017/04/29 20:35)
[121] 佐渡島 征途 6話[samurai](2017/06/01 21:55)
[122] 佐渡島 征途 7話[samurai](2017/08/06 19:39)
[123] 佐渡島 征途 8話[samurai](2017/09/10 19:47)
[124] 佐渡島 征途 9話[samurai](2017/12/03 20:05)
[125] 佐渡島 征途 10話[samurai](2018/04/07 20:48)
[126] 幕間~その一瞬~[samurai](2018/09/09 00:51)
[127] 幕間2~彼は誰時~[samurai](2019/01/06 21:49)
[128] 横浜基地防衛戦 第1話[samurai](2019/04/29 18:47)
[129] 横浜基地防衛戦 第2話[samurai](2020/02/11 23:54)
[130] 横浜基地防衛戦 第3話[samurai](2020/08/16 19:37)
[131] 横浜基地防衛戦 第4話[samurai](2020/12/28 21:44)
[132] 終章 前夜[samurai](2021/03/06 15:22)
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

[20952] 本土防衛戦 京都防衛戦 10話
Name: samurai◆b1983cf3 ID:cf885855 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/02/20 23:38
1998年8月14日 1630 大阪市内 中部軍管区司令部


「・・・20師団は戦術機甲大隊40機の内、残存17機。 27師団は残存29機で、2個師団の撃震の数は合計46機か」

「40師団の撃震は、連隊120機で残存90機。 5師団は流石に激戦を連戦した為だな、連隊で残存は72機。 その内疾風弐型が26機、残りは撃震で46機。 2個師団で合計162機」

「独立機甲戦闘団が・・・ 疾風弐型が2個中隊で21機、韓国軍が10機の、台湾軍が11機。 中国軍は3個中隊で34機。 合計76機。 米軍とインドネシア軍は?」

「米軍のF-15Eは残存29機、F-15Cが56機で、師団合計85機。 インドネシア軍は虎の子のF-18E・スーパーホーネットが27機と、F-5E・タイガーⅡが49機の76機。
合計で161機だから、我が軍と独立戦闘団の残存機数を合わせると・・・ 445機。 それに海軍の基地戦術戦闘団が、4個戦闘団(大隊規模)で133機。 総数578機」

「578機―――5個戦術機甲連隊規模の戦力だが・・・ 第7軍団前面のBETA群は約4万1000に達した。 倍の戦術機甲戦力が有っても、支えきれる保証は無い」

「それに京都北西部だ、第1軍からの連絡だ。 戦術機戦力が65%にまで落ち込んだと、現有戦力は782機。 
重戦術機甲師団(甲編成師団:3個戦術機甲連隊編制)の禁衛師団、第1師団を含んでだ―――南部の6個師団の状況は? 海軍と米海兵隊は?」

「第9軍団は、第31、第38、第49の3個師団で70%を切った、残存246機。 第14、第18、第29師団は酷いモノだ、3個師団で残存141機。 40%を切った、39%。
もっともこの3個師団は独立戦闘団に21機を送り込んでいるから、実際は残存162機・・・ それでも50%を割った、45%だ」

「・・・現時点で、帝国軍中最も経験豊富な3個師団が、『全滅』判定になろうとはな。 あの九州からの大突撃を、まともに喰ったのが痛かった」

「海軍連合陸戦隊第1、第3師団は残存戦術機が508機、70%を少し越す。 2個師団とも、流石は陸軍の重戦術機甲師団並みの大部隊だ、まだ余裕が有る。
同様に、米海兵隊第3師団の残存戦術機数は268機、74%ちょっと残った。 ま、こっちはご登場が最後だからな・・・」

「日米の両海兵戦力で、776機。 南部戦線合計で1163機。 これを遊ばせておく手は無かろう? 米海兵隊は無理としてだ、海軍の2個師団、何とかならんか?」

「内陸への進撃を、海軍が渋っている。 元々、敵前強襲上陸が専門の部隊だ、内線防衛は想定しちゃいない」

「だがな、そうなると第9軍団を動かすしか手は無いぞ? まだ何とか戦える3個師団の246機、それに半死人の3個師団の141機、併せても387機。 海軍2個師団に及ばん」

「だが、その387機を投入すれば、京都南部の戦術機甲戦力は965機。 9個戦術機甲連隊の戦力規模に迫る、何とか支えて時間を稼ぐ事は出来る」

「近視眼だな、その後はどうする? 海軍も、米海兵隊も、この後は引き上げるぞ? まさに『敵前強襲上陸』専門部隊だからな、常駐防衛には向かない。
淀川以南を守る戦力が枯渇する、BETAの何かを止める戦力が無くなるのだ。 駄目だ、第9軍団を動かす事は出来ない。 せめて、海軍の1個師団だけでも・・・」









1998年8月14日 1635 大阪府 帝国陸軍八尾基地


「・・・そっち、何機残った?」

「酷いものよ、8機・・・ 一気に4人も部下を失うなんて、さ・・・」

「俺も似たようなものだ、拙い指揮をやらかしたな・・・ 余所さんは?」

「ウチは仁科のトコが酷いよ。 あの娘の指揮中隊は淀川で、真っ正面から突破阻止戦闘していたから。 源さんの所は、私の隊と似たようなモノ。
後は葛城のトコかな? 祥子さんの中隊は荒巻少佐が直率していたけど・・・ 今は支倉(支倉志乃中尉)が、臨時指揮官で率いているわ」

「そうか・・・ ウチは戦死した古村と伊崎の中隊が酷い、殆ど『全滅』だ、小隊も残っていない。 
他は佐野と間宮の中隊かな。 流石に木伏さんと和泉さん、それに三瀬さんの中隊は、こっちと似たような状態だ」

「緋色に確認したよ、あの娘の中隊も、1個小隊分を失ったって。 流石に落ち込んでいるわね、表面上はそう見えないけどね」

「何とか2個小隊の戦力を残しているのが、7個中隊。 戦力半減が6個中隊。 ほぼ壊滅状態が2個中隊。
水嶋さんに直衛、それに美園の3個中隊が引っこ抜かれているから、戦力は2個連隊で96機。 29師団が残存45機か、合計で141機」

「あそこは大友と国枝、2人とも生き残ったわね」

「・・・俺達の同期は、しぶといからな―――古村は、残念だった」

「そうだね・・・ 古村は、そうだね、残念だったね。 ・・・でも、私は生き残ったよ?」

「・・・愛姫?」

「私は、生き残ったよ? 圭介?」

―――周りに人目は・・・ 無いな。











1998年8月14日 1645 京都府南部 男山


視界の隅に、何かを捉えた。 それが何かを認識する前に、頭の中で危険信号が盛大に悲鳴を上げるのが判る―――光線級! 危険! 退避!

「ッ! リーダーよりフラガ全機! 山陰に隠れろ! 至急!」

叫びながら、強引に跳躍ユニットを吹かす。 脚元で小型種が数10体、踏み潰されたり噴射炎に焼かれたりしているが、確認する余裕もない。
途端に機体の管制ユニット内に響くレーザー照射警報。 網膜スクリーン上にも鬱陶しい程アラームメッセージが映し出される。
水平噴射跳躍で一気に山陰へ逃げ込む―――何の事か最初判らなかったらしい部下達も、指揮官機の挙動を見て警報発報と同時に行動を起こした。
次々に男山の山麓に飛び込んで来る『疾風弐型』、しかし1、2機、タイミングが遅い機体が有る。 間に合うか?

「ALM!?」

『弾切れ!』

山陰へ逃げ込み、噴射パドルを解放して逆制動をかけつつ、光線級への嫌がらせの手段も尽きたことを思い知らされた。
ズシン! と来る逆制動着地の衝撃を感じ、同時に周囲の部下達の機体を視界に入れて確認する。 その視界の片隅で戦術レーダーを捉え・・・

≪CPよりフラガラッハ! 光線級、レーザー照射開始!≫

『・・・!!』

『がはっ!』

声にならない悲鳴と、何かを吐く様な悲鳴が耳を打った。 咄嗟にステータスを確認する、2機殺られた。

(・・・Bの4番機に、Cの3番機!)

B小隊4番機は、マーカー自体が消滅している。 レーザーの直撃で爆散したか。 
C小隊3番機はレーザーが擦過したようだ、機体が大破、衛士のバイタルパターンが危険レベル。

「CP! 野戦衛生班を呼べ! 1機大破、衛士が重傷!」

≪了解です! こちら、フラガラッハ・マム! 7軍団衛生団本部、野戦衛生班を要請します! 衛士1名が重傷!≫


渡会の声がして、ほんの少しの間が空いただけだが、随分長い時間がたったように思える。 それだけ俺が焦燥感に苛まれている証拠か。
情けない、そう言われるかもしれない。 だがこればかりは慣れるモノでも無い。 表向きは俺も随分、ふてぶてしくなったとか言われるが・・・ 演技も大変だ。

『アタッカーズ・リーダーより全機! 顔を出すな、まだ出すなよ、ローストチキンにされたくなければな!』

『クロウ01より02、03、04! 生きているか!?』

『02、何とか!』

『ゼ、04! います! 03もいます!』

『03です、くそ、チビッちまった・・・』

どうやら、オーガストの中隊も何とか避難に成功した様だ。 ステータスで見る機数は12機、どうやら向うも2機喰われたらしい。
両手と背中の兵装ラック双方に突撃砲を搭載したF-15E。 以前、欧州での最後の作戦で搭乗した経験が有る機体。 
機動性は第3世代機や、第2.5世代機でも『疾風』系や他のF-16系、トーネードⅡ系に比べると重々しさが隠せないが、そのパワフルな動きと安定感は頼もしかった記憶が有る。
全速度域で、安定したトルクで安心して振り回す事が出来た。 軽量型の機体とは異なり、突出した機動領域は無い代わりに、全領域で確実な機動が出来る。
そう言う意味では、新米からベテランまで、乗り手を選ばない機体と言おうか。 第3世代機はともすれば、新米は乗りこなすのが難しい所が有る。

レーザー照射が終わるまでの数10.秒間、山陰に隠れながらそんな取り留めの無い事ばかり考えていた。

『ザッ・・・ こちら、第7軍団衛生団本部。 そっちに回せる連中を物色中だ、ちょっと待ってくれ・・・ 
よし、第7227野戦衛生班、≪ナイチンゲール≫だ、近場で隠れている。 接近経路の安全確保は、そちらで頼む』

≪フラガラッハ・マムより衛生団本部、了解しました。 マムよりリーダー、野戦衛生班のマーカー、確認しました、北300mの位置。 接近経路の確保をお願いします、ルート転送しました≫

「・・・ルート確認。 よし、10分確保する。 フラガラッハ・リーダーより≪ナイチンゲール≫、接近経路を10分間確保する、その間に頼む」

光線属種がレーザーを照射している間と言うのは、逆に言えば他のBETA群も動かないと言う事だ。 連中は同士撃ちだけはしない。
従って、光線級の認識範囲の陰になっているこの山麓に他の方向からBETA―――特に小型種が浸透して来るのだけを防げば良い。
頭の中で彼我の位置関係を把握して、それは可能だと踏んだ。 そして返答した後、ほんの数瞬の間が有って、野戦衛生班の指揮官から応答が有った。

『こちら、第7227野戦衛生班、≪ナイチンゲール≫、指揮官の小林衛生軍曹です。 確保をお願いします、これより救助・収容を行います!』

網膜スクリーンに移ったのは、まだ20歳を少し越したばかりに見える女性下士官だった。
次いで、別口の通信が入る。 どうやら輸送部隊の様だが、どうして輸送隊が?

『こちら第1755輸送隊、≪ナイチンゲール≫の足代わりをしている。 もう『アンビ(アンビュランス:救急車)』は満員だよ、あちこちで拾い集めているからね。
重傷者らしいけど、状態は? 内臓破裂? 骨折? 火傷? 具合によっては『カーゴ(73式大型トラック)』に詰め込ませて貰うよ』

続いて網膜スクリーンに移った輸送隊指揮官の顔を見て、思わず無意識に天を仰いだ。 どうして、戦場でこの人に・・・
向うも気付いた様だ、最初吃驚した顔だったのが、次の瞬間、魔女のような笑みに変わっている。

『で? どうなの? 『大尉殿』? 悪いけど、上官風を吹かして割り込みは無しね? 戦場は平等ってね』

「・・・ああ、そんな事は言いませんよ、中尉。 ステータスを見た限り、火傷の様です。 ≪ナイチンゲール≫、小林軍曹、どんなものかな?」

『はっきりとは診てみないと判りませんが・・・ 恐らく、カーゴでの搬送でも大丈夫かと』

中尉が大尉に向かって、偉そうな態度と口調で接し、大尉が中尉に丁寧な対応をしている。  余程不思議だったのだろう、衛生班の小林軍曹は訝しげな表情だ。
やがて野戦衛生班が、損傷機体に取り付いた。 既に管制ユニットはこじ開けられている。 数人の衛生兵が機体の中から衛士を引っ張り出す様が見えた。
直撃ではないが、管制ユニット内に高温が発生した為だろう。 強化装備はあらかた焼け焦げている。 少しだけ見えたが、肌が黒く焼けて頭髪も焼け落ちていた。
手際良く、抗生物質やら強心剤やらを投与して、衛士をカーゴへと運び込む。 その僅かな時間、沈黙が気拙くて何となく聞いてみた。

「・・・輸送隊に居たんですか。 ご無事で何より、姉にも知らせておきますよ」

『元々、兵站の予備将校だったしね。 瑞希は元気にしている? 彼女が京都から東京に移ってからは、連絡してないのよね。 チビちゃん達は?』

「姉は、元気です。 甥や姪も、変わらずで―――どうして、輸送隊が衛生隊の真似事を?」

『人手不足、これに尽きるわね。 全く、考えなしの後方参謀の馬鹿共め、兵站路を確保しても、それを戦場に運ぶ足が不足するってのに・・・
直坊、気をつけなさいよ、最前線の兵站確保量は事前想定の60%を切っているよ。 全力戦闘した日には、次は丸腰での戦闘になるからね』

「・・・輸送隊は、本当に地獄耳で。 しかし、60%?」

『幹線道路をまともに使い無いんじゃね、脇道はどこも瓦礫で埋まるか、避難民で埋まっているわ。 近畿地区の主要兵站路は限られている、そこを戦闘部隊が占有したんじゃね・・・』

それから暫く、上級部隊司令部の戦闘指揮の拙さを一通りくさして、野戦衛生隊の収容完了の報告と同時に、大急ぎで走り去って行った。
最後に、友人とその子供達―――俺の姉と、甥に姪―――に、俺が生き残ったら宜しく言っていて、そう言い残して。


『中隊長、BETA群の動きが止まっています。 砲兵部隊から、5分後に面制圧砲撃を開始すると―――何か結構な貫禄の、おっかさんでしたね?』

「・・・よし、面制圧砲撃後、重金属雲発生の後に光線級狩りを開始する。 摂津、A小隊から強襲制圧機をそっちに移す―――俺の姉の、古い友人だ。 確かに三十路半ばの女性だが、子供はいない、そして戦争未亡人だ」

『あのご年齢で予備の中尉と言う事は、予備役に回らず現役のままでしたら、今頃は少佐位にはなっていらしたかも―――済みません、中隊長。 咄嗟の掌握が出来ずに、1機失いました・・・』

「実家は武家だ、もしかしたら斯衛にでも居たかも・・・ それは無いか、勘当同然で家を出たそうだしな―――美園大尉には、俺から詫びを入れる。 摂津、四宮、貴様たちは指揮に専念しろ、雑念を入れるな、いいな?」

『了解・・・』

『・・・判りました』

戦死した1名と、先程運ばれた重傷の1名は、美園の中隊から預かった衛士達だ。 倉木が死に、宇佐美と浜崎が負傷後送された中隊で、補充の意味で3名を預かっていた。
その3名の内の2名。 初陣では無い、もう経験も積んだ連中だったが、初めて余所の中隊での行動となると、どこかで意志の疎通に問題が出る。
俺の部下達は、俺の指揮に馴染んでいるから、咄嗟に自分の上官がどういう行動を取らせるか、薄々は判る。 だが、あの3名は・・・

「・・・ミスだな、俺の」

もっと、気を付けてやらねばならなかったのだ。 幾ら激戦の最中とはいえ、気を付けてやるべきだったのだ―――それが、求められる責任であり、技能なのだから。
小声で呟いたつもりが、聞こえてしまったか。 網膜スクリーン上の四宮が怪訝な表情をしている、摂津は何か察したか、こいつもバツの悪そうな表情だ。
ああ、そうか―――摂津は新任当時から、美園の下に居た。 死んだ1名と負傷した1名は、摂津にとっては言わば『同門』の連中、そう言う事か。

「繰り返すが、美園大尉には俺から話をする、貴様たちは部下の掌握に専念しろ、いいな?」

≪CP、フラガラッハ・マムよりリーダー! 野戦衛生班、離脱を確認しました。 BETA群に動き有り、約1000体が淀川沿いに北東へ移動中!
野戦砲兵旅団、面制圧保撃開始まであと1分、重金属雲発生後にBETA群のインターセプトをお願いします! 光線級の対処は、米軍部隊と海軍第215戦闘団が行います!≫

戦術レーダーに、BETA群の集団から一部の群れが分離して、淀川の河川敷沿いに上がって来るのが見えた。
摂津と四宮の精神状態も少々気になるが、戦闘指揮に影響が出る程ではあるまい。 連中もそれなりに地獄は見てきている。 『死』と言うものに、向き合ってきた連中だ。
後方の第5師団砲兵連隊と、第7軍団直轄野戦砲兵群が一斉に野戦重砲の口火を切る。 MRLSから甲高い飛翔音を残し、誘導弾が放たれた。
瞬く間に迎撃レーザー照射が立ち上る。 レーザーに絡め取られ、ALMやAL砲弾が蒸発し、次いで重金属雲が発生する。
黒がかった灰色に、所々燐粉の様な煌めき―――BETAに喰い荒される前に、こうして大気と土壌が汚染されてゆく。 しかし他に手段は無い。
重金属雲を突いて、最初の実弾頭砲弾が大地に着弾し、炸裂したその時―――「主機を戦闘出力に上げろ! 水平噴射跳躍で一気に距離を詰める!」

―――『了解!』

目標は、南西から上がって来るBETAの小集団。 しかし放置しては、後方の支援部隊が喰い荒される。
噴射跳躍のGを感じつつ、網膜スクリーンに浮かぶ各種情報―――高度、距離、方位、気温、湿度、相対速度と衝突時刻を読み取り、操縦スティックを微妙に、小刻みに動かしコースに乗せる。
目前に小型種の小集団、戦車級の数は少ない、闘士級や兵士級が大半だ。 殲滅は直ぐに行える、その後は反転して側面から大型種を盾に光線級に肉薄する・・・

「制動、かけろ! B小隊、正面! A小隊、C小隊は側面援護! かかれ!」

跳躍ユニットの噴射パドルを閉塞、逆噴射パドルを全開にしてBETA群の直前にランディングする。 同時に120mmキャニスター砲弾を全機から撃ち出し、面制圧を行う。 吹き飛び、弾け飛ぶ小型種の群れ。 
攻撃をかけつつ、視界の隅で戦術レーダーを確認する。 丁度米軍、オーガストの中隊と、海軍の戦闘団―――『流星』の近接攻撃型が緩やかに弧を描きつつ、光線属種へ接近して行く様が判った。

「5分で殲滅しろ、光線属種の注意は逸れている、ターキー・シュートだ」

光線属種の注意が逸れた隙に、ここから一気に懐へ飛び込めれば。 それが出来れば、この方面の戦況は暫く一息つける。

「陣形、ウェッジ・フォー! 半包囲陣形を取れ、殲滅する!」










1655 大阪府 帝国陸軍八尾基地


「96機。 再編成すれば、2個大隊が出来る。 増強中隊を1個、予備戦力として持てるな」

「29師団は?」

「陽炎であろう、あそこの師団は。 連携はどうかな・・・ いや、45機有るのだ、1個大隊を編成できる。 そうすれば1個戦術機甲連隊を再編制可能だ」

「師団をまたぐ事になる、編制上の問題をクリアしないと画餅だぞ、緋色、それは」

「長門、貴様、ここで指を咥えて見ておれと?」

「まったく・・・ 相変わらず、血の気の多い女だな。 宇賀神少佐に同情する・・・」

「何だと!?」

「ちょっと、落ち着きなさいって、緋色。 圭介もまぜっかえすな! 今、宇賀神少佐と森宮少佐がそれぞれ連隊長に直談判しに行っているわよ。
話の判らないおっさん連中じゃないし、14師団の福田少将も、ウチの師団長も、そうそう頭の固い人じゃないでしょう?」

「・・・福田少将は、あれは柔らかいんじゃない、『変』なんだ・・・」

「実感が籠っておるな、長門?」

「兎に角さ、先任達も乗り気だし。 後任連中の中隊を潰す事になるけれど、そこは泣いて貰うとして・・・」

「ひどい女だ」

「後で覚えておきなさいね、圭介?」

「・・・頼む、惚気は余所でやってくれぬか? 愛姫、長門・・・」











1705 京都市西部 西京区 京都丹波道路『京都縦貫自動車道』 新老ノ坂トンネル東側出口 霊園跡付近 第1軍第2軍団、第37師団機械化歩兵第226連隊


『震動探知、震動探知! トンネルから、小型種多数接近してくる! 推定個体数、約1100!』

『自走高射機関砲! 並べろ、並べて水平射撃で薙ぎ払え!』

『87式の数が足りない! ガスター(M42自走高射機関砲)を出す!』

『ガスター? 40mm砲ならいける! 何でもいい! 87式(87式自走高射機関砲)や89式(89式装甲戦闘車)なんて贅沢は言わん!
ガスターでも73式(73式装甲車)、60式(60式装甲車)でも良い! 12.7mmでも小型種相手なら殺れる! とにかく数を並べろ!』

師団の戦闘車両―――重火器を備えた各種車両が、道路上と言わず、両側に設けられた遮蔽陣地と言わず、数10輌が集まってきた。
40mm、35mm、12.7mmと言った重火力の砲口をトンネルの出口に向け、BETAの出現を待ちかまえる。

『トンネルは対応出来るが、上(山岳部)はどうなっている!? 降ってこられたら、事だぞ!?』

『戦術機部隊に聞け! そっちで対応中だ!』

連隊本管では、師団戦術機甲部隊との状況確認に大わらわだ。 小型種なら、そして今回の様な限られた狭い地形なら、機械化歩兵部隊でも対応は十分に可能だ。
しかし大型種、それも高い機動性を有する要撃級なんかに上から降ってこられたら、どうしようもない。 蹂躙されて終わりだ。

『来た、来た、来たぁ!』

『よぉし・・・ 射撃、開始! 撃て、撃て、撃ちまくれ!』

太い連続した数種類の重低音が、夏の夕日に照らされた山間に響き渡る。 
凄まじい数の火揃がトンネルの出口付近に集中し、這い出て来る小型種BETAが見る見る赤黒く霧散してゆく。
師団が保有する自走高射機関砲、装甲戦闘車、装甲車の大半、いや、偵察車両まで敷き詰め、火網のキル・ゾーンを形成していた。

『弾薬車、こっちだ、早く!』

『気を付けろ、少しだけ掻い潜った連中がいるぞ!』

『重火器中隊! 狙い撃て、始末しろ!』

霊園に陣取った機械化歩兵連隊各大隊の重火器中隊が、重機関銃や迫撃砲を火網から這い出てきた少数の小型種に向け、発砲する。
連隊に各々1個大隊配属される機械化歩兵装甲部隊が、重々しい足音を立てて前進し、装着したブローニングM2重機関銃をBETAに向け、射弾を送り続ける。

―――ポン、ポン!

1個小隊の機械化歩兵装甲部隊がトンネル出口に向け、強化外骨格に1基外付けされているマルチディスチャージャー用のサーメート(AN-M16/TH6テルミット焼夷弾)を射出した。
数瞬の間をおいて出口付近に半径10数m、燃焼温度が摂氏4000度の火炎地獄が出現した。 戦車級が高温で体内圧を膨張させ内部から弾け飛び、兵士級や闘士級が消し炭に変わる。
暫くの間、その高温故に射撃が止まる。 火炎が収まった後には、赤黒く焼け爛れたBETAの残骸が残り、焼け焦げた臭い匂いが辺りに漂っていた。

『・・・殺ったか?』

『まて、視覚を信用するな、センサーで確認しろ!』

指揮戦闘車両の中で、各種センサーのデータが確認される。 震動、音紋、熱源・・・

『畜生! まだ居やがる! 続けて来るぞ、応戦再開だ!』

『第2大隊、下り車線に布陣しろ! 第1大隊は上り射線! 第3大隊、分離帯付近までいったん下がれ、突破してくる奴を殲滅しろ! 機械化歩兵装甲大隊、南側の霊園に布陣! 側面から叩け!』

トンネル出口付近に堆積したBETAの残骸を、新たにトンネル内から現れた小型種の集団が押しのけ、押し潰し、やがてトンネルから這い出してきた。
夕方の西日を受け、既に暗くなって見にくくなっている視界の中で、その暗いトンネル内から異形の集団が再び押し出してきた。

『ぐっ・・・ くそ・・・!』

誰かが我慢しきれず、声を洩らす。 幾ら倒しても、倒しても、湧きでて来るその物量もさることながら、全く感情と言うものを感じないその存在に、恐怖するのだ。
人間相手ならば、大損害を与えれば相手は怯む、その感情は部隊行動にも表れて来る。 その機に乗じて、一気呵成に戦局を決める事すら可能だ。
しかしBETAにはそんな話は通じない。 どれ程『仲間』が倒されようと、一向に気にした様子も感じられず、ひたすら物量で押してくるのだ。
異星起源種と言うより、最早キリング・マシーンの大群と対峙している感覚に陥る。 緒戦を優勢に進めても、時として最後に破れてしまうのはそう言う『感情』と言うファクターが大きい。

『怯むな! 連中は只真っすぐ押してくるだけだ! 光線級がいなけりゃ、只の射的と同じだ! 
地形を利用しろ! 火力網を築け! 人類には知恵と言う武器が有る事を、思い知らせてやれ!―――射撃開始!』

再び唸る重火器群。 もう、銃身加熱などと心配している場合でも無い。 ひたすら、目標に向けて火力を叩きつける。
40mm、35mm砲弾が小型種に直撃し、粉々に吹き飛ばす。 12.7mm機銃弾が兵士級や闘士級の胴体を、真っ二つに引き裂く。
出口がさほど大きくない事も幸いした。 出て来る先から重火器の火力を叩きつけられ、小型種の群れは大きくその数を減じ、醜悪な肉の堆積と化して行く。

『よし・・・ この調子なら。 この調子で片付ければ、ここは阻止出来る・・・!』

指揮車両で各種モニターを見つめ、戦況を確認した連隊長がそう呟いたその時、悲鳴のような通信が入ってきた。

≪371戦術機甲大隊より226連隊! 西山の無線中継所跡を抜かれた! 要撃級約30、戦車級約500、そちらに向かう!≫

その声に司令部内が慄然とする。 西山の無線中継所!? ここから直線距離で600m程しか離れていない!
連隊長が咄嗟に部隊配備状況を示すモニターを見る。 第1、第2大隊―――無理、抗戦中。 第3大隊、大半は第1、第2の支援に回っている、1個中隊なら抽出できるか。
機械化歩兵装甲大隊、丁度背後に強襲される形になる、ならば急速反転させて迎撃に。 山間部なら大型種も動きが制約を受ける、強化外骨格装備の部隊ならば・・・!

『迎撃しろ! 迎撃だ! ここを抜かれたら―――後ろは京都市内だぞ!』









1720 大阪府 帝国陸軍八尾基地


「何とかゴリ押しを通した。 但し、後で指揮官連中は全員、始末書モノだ」

「100枚でも、200枚でも書きまっせ」

「そこまで書いたら、もう懲罰モノでは? 木伏さん?」

「源、気分や、気分!」

「で? 具体的にどう再編制するんですか? あ、麻衣子は源と一緒の隊の方が良い?」

「・・・一言多いわよ、沙雪」

「2個大隊、指揮は私と森宮君で行う。 岩橋君には、予備隊を率いて貰う」

「って事は、6個中隊と2個指揮小隊・・・ 若い衆には泣いて貰わなアカンなぁ」

「決定事項ですか・・・ 葛城、佐野、仁科。 だそうよ?」

「仕方ないさ、間宮。 俺のトコもお前のトコも、佐野と仁科のトコも、2個小隊を維持出来ないしな。 だろう? 佐野?」

「まあ、今回は泣きますか。 なあ? 仁科?」

「葛城さんも佐野さんも、間宮さんも物分かりが良過ぎる・・・ はあ、向うで杏(美園杏大尉)も泣いているそうですし、仕方ないかぁ・・・」

「そう言う訳だ、では編制は次の通りとする。 混成第1大隊、指揮官は宇賀神少佐。 第1中隊、木伏大尉。 第2中隊、源大尉。 第3中隊、三瀬大尉。
混成第2大隊は私、森宮少佐が指揮を執る。 第1中隊、和泉大尉。 第2中隊、長門大尉。 第3中隊、伊達大尉。
予備隊は岩橋少佐。 佐野大尉と葛城大尉、間宮大尉はここで各小隊の指揮を執れ。 大尉に小隊指揮とは済まぬが、こちらとしてはより安心出来る」

「構いませんよ、森宮少佐。 なあ? 佐野、間宮?」

「・・・岩橋少佐、私と仁科は? まさか、ここに来て居残りとは聞けません」

「最後まで聞け、神楽。 仁科大尉は混成第2大隊・・・ 私の指揮大隊で、指揮小隊の指揮を執れ。 神楽大尉は混成第1大隊の指揮小隊指揮官だ。
期数でいけば、貴様にも中隊指揮を、と思ったのだが。 済まんが神楽、指揮小隊の指揮官は大隊長の守り手だ、頼む」

「ッ! そ、そう言う事でしたならば・・・!」

「・・・この女ってば、張り切っちゃって、まぁ・・・」

「何か言ったか? 愛姫?」

「いいえ?」

「では、1745には達する! 各部隊指揮官は機体の整備状況を確認! 1750にブリーフィング・ルームに集まれ。 以上!」










1725 大阪府大阪市北部 南部防衛線 中部軍管区司令部


「京都の西で戦線を突破されました」

「どこだ? 突破したBETAの規模は?」

「老ノ坂防衛線です、第37師団戦区です。 突破したBETA群は約2800、現在第2師団残余と、斯衛第2聯隊戦闘団が防戦中。 斯衛第1聯隊戦闘団の一部も急行中です」

「・・・数が足りないな?」

「はい、しかし第1軍には予備戦力はもうありません。 南に展開する第2軍第7軍団から抽出するしか方法は・・・」

「第7軍団とて、ギリギリの防戦を展開中だ。 ここで戦力を抜いてしまっては、あっという間に戦線が瓦解する、ううむ・・・」

軍集団参謀部の高級参謀達が頭を抱え、唸るその時、参謀部付きの通信将校が1枚の通信紙を手に報告に来た。
その若い通信将校の表情は、喜んでいいのか、非難していいのか、どうにも判らず困惑した表情だった。

「たった今、米海兵隊第3師団のジルマー少将(アイザック・C・ジルマー海兵少将)から連絡が入りました。 『京都に向かう』―――以上です」

「なにぃ!? 京都へだぁ!? そんな要請は誰も・・・」

素っ頓狂な声を上げる作戦参謀を意識的に無視し、通信将校が続きを言う。

「それと・・・ 海軍連合陸戦隊第3師団の大田中将(大田稔海軍中将)からも、師団を北上させる旨、連絡が入りました。 
既に柴崎少将(柴崎恵三海軍少将)の第32陸戦団(旅団戦闘団)が移動を開始。 岩淵少将(岩淵賢次海軍少将)の第31陸戦団も15分後に行動を開始すると・・・」

本来、海軍連合陸戦第3師団も、米海兵隊第3師団も、臨時とはいえ第2軍の指揮命令下にある。 戦場での独断専行は厳に罰せられる所だ。
しかし今回の独断専行は、陸軍―――本土防衛軍のジレンマを解消して呉れる、またとない機会だ。 京都への増援兵力の不足、それを補って余りあると言う。
元々、第9軍団から増援を出すべきだが、そうすると今後の南部防衛戦力が全く不足をきたす事になってしまう。 
しかし、京都方面の第1軍も、第2軍第7軍団も悲鳴を上げて増援を要請し続けている。 そしてその要求に軍集団司令部は頭を悩ませていた。
同盟国軍や、命令系統の異なる海軍部隊に当初の予定には無い、消耗を強いる激戦場への投入命令は憚られる(時に米軍は、帝国の内部問題故に)
かと言って、現在最も戦闘力を有する『予備戦力』は、この同盟軍部隊と海軍部隊しかないのだ、これはジレンマ以外の何物でもなかった。

その矢先の、動かしたかった当人達による、独断専行。 まさに渡りに船。 情報参謀が戦力リストを再確認し、独り得心して作戦参謀に向かって言った。

「おい、G3、ここは大丈夫だ、達しろよ」

「・・・うむ、達する。 『連合陸戦第3師団、米海兵第3師団は北上、京都防衛に参戦せよ』―――達したぞ、書面は事後を持って為す、だ」

「よし、通信! おらんのか!? 通信! 緊急電だ!」

「軍集団司令官閣下、参謀長閣下には、俺から話を通す。 G4(後方主任参謀)、兵站計画の変更は?」

後からおっとり刀で入室して来たG4(彼の主戦場は、後方兵站本部だ)に、作戦主任参謀が声をかけた。

「予備計画の乙案、その3だ。 直ぐに達する。 それと相談だがな、第二京阪(第二京阪道路)を使わせてくれ。 宇治の辺りに前進兵站拠点を作っておきたい」

「・・・1号線が混雑する。 枚方から307号で、田辺西から京奈和(京奈和自動車道)では駄目か? それなら巨椋から京滋バイパスで宇治まで近い」

「判った、それで良い」





「・・・最前線で負傷者拾いの次は、民間避難民のタクシー代わり! ようやく本来の輸送隊任務と思ったら、今度は交通整理って、どう言う事よ!?」

「しかし、中尉殿、誰かがやらなきゃ・・・」

「私はね! 輸送隊指揮官なの! 交通整理は野戦憲兵隊辺りの仕事でしょうが!」

「近畿管区国家憲兵隊は、大半が重武装機械化歩兵部隊として最前線ですよ。 連中も人手不足の様で・・・」

「こっちも人手不足なの! こら、そこ! 割り込みするな! 順番を守って! 何? 『さっさと通せ、この年増』、だと・・・!?」

「・・・ああ、思いっきり地雷を踏んだ・・・」

「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」

「・・・良い度胸だね、そこの坊や。 いいか? よぉく聞きな? 貴様の部隊は今後、戦場での補給は要らないって言うんだね? そうなんだね・・・? 貴様の上官、連れてこいッ!!」





『“From the halls of Montezuma To the shores of Tripoli, We fight our country's battles In the air, on land, and sea.”(モンテズマの間から トリポリの海岸まで 我らは祖国のために空、陸そして海で戦う)』

米海兵隊の戦闘車両が、長々と連なって移動を開始している。 戦闘にM1A1エイブラムス戦車、その後ろにLAV-25装甲兵員輸送車やHMMWV(ハンヴィー)高機動多用途車が列を為している。
轟音と共に先に進出するのは、海兵隊所属機であるF-18Eスーパーホーネット。 強襲戦闘大隊(戦術機甲部隊)所属機だ。

『“First to fight for right and freedom,And to keep our honor clean, We are proud to claim the title Of United States Marines.”(正義と自由を守り最初に戦う者として そして我らの高潔な名誉を守るため 我らが誇りとするその名は 合衆国海兵隊)』

延々と連なるその隊列を横目に、やや冷めた目で見つめながら、隣接する部隊の指揮官が部下を振り返り確認する。

「・・・第32陸戦団は、予定通りの時刻に到達可能かな?」

「はっ、閣下。 途中の会敵さえなければ、2時間後には京都市内への突入となります。 第31陸戦団もその20分後には到達可能」

「うん、良いね。 出来れば柴崎君(第32陸戦団長)を孤立させたくない、岩淵君(第31陸戦団長)には少々急ぐようにと」

「了解しました、では至急電で」

走り去ってゆく部下の後ろ姿を見ながら、指揮官―――大田稔海軍中将は内心で上官に感謝した。
今回の独断専行、大田中将の行動を『事後承認だぞ』と言って見逃してくれたのは、陸戦部隊の統一指揮を執っていた、海兵同期の連合陸戦第1師団長・市之丸利助海軍中将だった。
米海兵隊のアイザック・C・ジルマー海兵少将から打診を受けた時は、流石に迷いはした。  しかしジルマー少将の言葉に『米軍だけに任せていられるか!』と、年甲斐もなく熱くなったのは確かだ。

―――『Vice Admiral Oota. If the Army and the Navy Ever look on Heaven's scenes, They will find the streets are guarded By United States Marines.
(大田中将、もし陸軍と海軍が天国を見上げたならば、彼等は知るでしょう。 天国への道を護るのは、合衆国海兵隊なのだと)』

そう言って、彼は独断専行を為す事を宣言した。 実際に京都の南部では米陸軍第25師団が、帝国陸軍と共に苦戦している。
今もなお、琵琶湖には米第3艦隊の2戦艦『ミズーリ』、『ウィスコンシン』が帝国海軍戦艦部隊と共に、砲撃支援を行っている。
そればかりでは無い、大阪湾からは第1艦隊と共に米第7艦隊が、泉州沖と伊勢湾からは日米の母艦戦術機部隊が、長駆支援を続行中だった。

その中で『帝国の』国内事情に拘泥されて、友軍の危地を見逃す事は出来ないと言う事か。
帝国海軍軍人としては、陸軍―――本土防衛軍のジレンマは良く判る。彼等とて増援を出したくない訳ではない。 しかし出せない、大局的に、今後を鑑みて。
軍事戦術的には、早々に撤退すべきなのだ。 その後、盆地へ大火力の集中攻撃をかける。 敵を分散させ、同時にこちらの戦力も分散してしまう愚を避け、集中して殲滅する。
或いは各個撃破。 特に京都はBETAに喰わせるに任せて時間を稼ぐ。 その間に全兵力を別のBETA群に叩きつけて始末を付ける。
しかし現状は、それは許されない―――国内政治がそれを許さない。 どうしても受け身になってしまう。 そして戦力の逐次投入という愚を犯す。

米軍としては、その様な帝国内部の情勢などに関わっておれない、そう言う事か。 いや、米軍の将官は帝国の将官より余程、政治的判断に秀でている。
彼等は大佐時代に、将来の将官として徹底的に国内・国外政治に対する対応を叩き込まれるのだ―――将官へ昇進する予定者だけであるが。
つまり、そう言う事だ。 本土防衛軍のジレンマを解決し、京都防衛に参戦する事で自国の(米国の)立場を有利にする。
独断専行? 中部軍集団司令部よりの『一札』は、手にしたではないか。 『書面は事後を持って為す』と。

その辺は恐らく、市之丸も判っていたに違いない。 そして米国の優位性を少しでも抑える為には、連合陸戦隊のどちらかが付き合わねばならぬ、と言う事も。
そして市之丸は先任だった、連合陸戦隊のこの場での指揮官だった、独断専行は許されない。 そしてあいつは、俺の性格をよく知っている。

「・・・師団全部隊に達する。 米海兵隊第3師団に遅れる事は許されない、各員一層奮励、努力せよ」


大田中将の指揮車両の通信アンテナに、小さな『Z旗』がへんぽんと翻った。










1800 大阪府 帝国陸軍八尾基地


『結局、29師団も話に乗って来たって事!?』

『連中も、殴られっぱなしは腹に据えかねていたんだろうさ!』

『何はともあれ、1個戦術機甲連隊戦力! 丙師団が多い第7軍団にとっては、喉から手が出る程ってね!』

『先任指揮官より各隊! 余計な損害は出すなよ? それでさえ、師団の戦術機甲戦力は枯渇寸前だ、ここで壊滅して見ろ! 先に逝った連中に、靖国で合わす顔が無い!』

『靖国かぁ、予定では、当分先の話でんなぁ・・・』

『あれ? 木伏さん、木伏さんって戎神社に行くんじゃ・・・?』

『こら、和泉! ワシャ、えべっさん(戎様)かい!?』

『・・・毎度ながら、このノリは苦労するよな』

『思えば、新任当時から変わらないよね・・・』

『で、ここに周防がいたら、美弥さんから木伏さんとセットでからかわれる、だったな・・・』

『で、祥子さんが笑顔で怒る・・・』

『29師団、混成第3大隊、黒河内少佐だ。 宇賀神さん、森宮君、そろそろか?』

『先任指揮官より各部隊長へ、口を閉じろ、馬鹿モン。 黒河内君、宜しく頼む―――全機、主機を上げろ、戦闘出力だ!』

―――『了解!』











1805 京都府南部 淀付近


≪BETA群、第9派! 推定個体数、約2万2000! 距離、1万1200! 接敵予想時刻、1811! フラガラッハは旧京阪国道沿い、第5師団側面をサポートして下さい!≫

「独機団戦術機甲指揮官より各中隊に告ぐ! 地形を使え、起伏を盾にしろ! 河を利用しろ! 
≪イシュタル≫、≪フラガラッハ≫、≪チンロン≫、淀川の渡河を何としても防げ! ≪パイフー≫、≪ファラン≫、≪チルソン≫、日本軍27師団の側面支援だ!
≪ジューファ≫、≪ムーラン≫、日本海軍部隊と一緒に久御山で孔を塞げ、そこを突破されると京都市内に一直線だぞ! 全中隊、いいな!?」

周蘇紅少佐が声を枯らして戦闘管制に当っている。 彼女の戦歴でも、ここまで切羽詰まった状況は久しぶりだ。
戦闘団本部がある中書島からでは状況が把握しづらいとして、より最前線に近い淀まで戦闘指揮車両を前進させての戦闘指揮管制だった。

状況は刻一刻と悪化している。 停滞していたBETA群が行動を再開したと思ったら、いきなり約半数―――2万以上の個体群が一斉に突進をかけてきたのだった。
日本軍第7軍団司令部は全力迎撃を命ずると同時に、悲鳴のような増援要請を第2軍司令部と、中部軍集団司令部、その双方に発していた。

そして、今現在も戦況は刻一刻と悪化している。

『第20師団司令部、音信途絶!』

『第27師団司令部より、援軍要請!』

『第40師団第402戦術機甲大隊、全滅! 第402戦術機甲大隊、全滅です!』

『米第25師団より、『1号線の維持困難、可能な限り耐久す』―――“KIP”・ワード少将(アレクサンダー・E・ワード米陸軍少将)から入電です!』

『インドネシア第2師団“シリワンギ”、田辺から米25師団の支援に入りました!』

『海軍第323、第204戦術機甲戦闘団、市消防団本部のラインを塞ぎにかかった! 第215戦術機甲戦闘団、男山の増援に入ります!』

『北の山間部の守り!? 他に部隊は・・・ 海軍の第217だ! 第217戦術機甲戦闘団、あれを出せ!』

『“宮様大隊”をか!?』

『海軍から了解は得ている! 他に戦力が無い!』

『砲兵旅団群、第18斉射!』

『機甲部隊を正面からどけろ! 突撃級に踏みつぶされるぞ!』

『自走高射部隊、側面から掃討を行え! 正面は戦術機甲部隊だ、大型種の突進に戦車や自走砲は役に立たん!』

戦線は淀川対岸の島本町から、河を挟んで橋本、男山前面の八幡市北部、そして国道1号線を守るラインを死守しようとしていた。
ここを突破されれば、広大な巨椋池の南北両岸沿いに京都市内へ、そして木津川沿いに平坦地を南進すれば、奈良盆地へと突入されてしまう。
それは今なお、脱出が済んでいない政威大将軍の身の安全が保てず、そして近畿の一大避難場所と化している、大阪の後背をBETAに奪われる事になる。

『第1中隊、イシュタル・リーダーだ! イシュタルが右翼から突っ込むよ! BETA群の側面を突破する! 
第5中隊! ≪フラガラッハ≫! 周防、アンタのトコは正面だ! 突撃級の突破を阻止!  曹大尉、第7中隊≪チンロン≫は間隙を塞いで!』

『フラガラッハ、了解。 中隊陣形、ウェッジ・スリー! ここで押し止めるぞ、誘導弾をありったけ放て!』

『チンロン・リーダー、ラジャ。 ≪フラガラッハ≫、周防大尉、左翼の間隙を埋める! 正面、任せた!』

周蘇紅少佐は、先程から刻一刻と変化する状況に振り回されていた。 つい先ほど出した指示を、直ぐに修正せねば状況に対応できない、そんな場面に直面していた。
南岸の戦況は、あと数100mで光線級が照射危険範囲に入る所まで切迫していた。 地形を利用し、起伏を盾に防戦するが、元々それ程起伏に富んだ地形では無い。
そしてBETA群は中小規模の集団で、四方八方から絶え間なく襲いかかってくる。 これが小型種だけであるとか、大型種の1群であるとか。 そんな纏まった集団で有ればまだ対応はし易い。
だが小型種を掃討している隙に、突撃級が突進をかましてくる。 突撃級を撃破しようとすると、その背後から要撃級が高機動突撃を仕掛けてくる。 それにかまけていると、纏まった数の戦車級が四方から群がってくる。

日本軍第5師団も、国連軍の2個師団(米軍とインドネシア軍)も、無秩序なBETA群の波状突撃に対応を迫られ、統一された戦術防御が取れないでいた。
救いは日本海軍基地戦術機甲部隊が4個戦闘団(4個大隊)、増援として参戦して来た位か。 その内半数はF-4系の機体だが(84式『翔鶴』)、残りは最新の第3世代機だ。
自分の指揮する部隊の持ち場には、その内1個戦闘団(大隊)が新たに加わった。 『部下達』の負担がこれで減ってくれれば・・・!

―――その時だった。

『米25師団、後退します!』

『インドネシア第2師団、予定地点まで進出できず! BETA群の圧力が強い・・・!』

『八幡の第5師団、独機団、海軍第215戦闘団、孤立します!』


―――馬鹿な。

思わずわが耳を疑った。 ここで後退!? 後退する場所など有るものか! 
しかし、現実に米第25師団はこちら―――淀方面へと巨椋池、そして木津川を渡って後退してくる。 インドネシア軍は田辺方面の阻止に懸命だった。

「馬鹿な・・・ そんな、馬鹿な! あそこには、あそこには私の『部下』達が、未だ死戦をしているのだぞ!?」





前を表示する / 次を表示する
感想掲示板 全件表示 作者メニュー サイトTOP 掲示板TOP 捜索掲示板 メイン掲示板

SS-BBS SCRIPT for CONTRIBUTION --- Scratched by MAI
0.035533905029297