【2001年5月18日 アラスカ国連軍ユーコン陸軍基地・NFCA計画専用ハンガー】「おめぇさんよ、馬鹿か?」「おやっさん、来た瞬間に罵倒はどうかと思う」エレナを引き連れてハンガーに到着した早々にNFCA計画直属の整備班長である『おやっさん』に呆れた様な目を向けられる。その手元には数十枚の資料がファイリングされたボードを持っており、俺の額にグリグリと押し付けながらファイルを渡す。えーと……F-18/EXの整備資料?「許容範囲内だが基礎フレームに若干の歪み!CPUの処理能力が間に合わなかった為に発生したフリーズ6回!脚部関節の過負荷!テメェは機体を一回で殺す気か!?」「大尉、整備班の人達に謝ってください」「サーセン」ドスを効かせた声と顔で睨む整備班長とジト目で見るエレナさん。そんな俺達3人の周りにはそしらぬ顔で……いや、巻き込まれない様に無視して整備を続行する整備兵達。周囲に味方0である俺は目を逸らして吹けもしない口笛を吹きながらその存在を無視するとおやっさんは一回だけ溜め息を吐き、再度説明を続けた。「一番の問題がCPUの処理能力を超えた機体操作だ……お前、あんな動きを続けるつもりなら死ぬぞ?」「それって……滞空ドローン018から020までの撃墜に至った際の機動ですよね?」「そうだ嬢ちゃん。そもそも、あの動きの情報は現行のCPUじゃ処理出来ん。最悪、機体が飛んでる最中にフリーズ、そのまま地面に真っ逆さまだ」「う、うわぁ……」「あー………そういや訓練校時代にそれでF-15を1機ぶっ壊したなぁ」『ちょっと待て(待って下さい)』二人ともその目はなんだ、文句あんのか。F-4で試してぶっ壊してF-15で試してぶっ壊れたんだよ……事故だ事故。―――教官、ムンクの叫び状態だったけどね!とまぁーそれはさて置き、CPUのフリーズが何故起きるのか?……簡単に言ってしまえば『衝突』である。例えば、戦術機が倒れそうになるとする。通常であその際にオートバランサーが働き、機体損傷状況・周辺地形を参考とした『機体に最も危険性の無い倒れ方』を機体側が取ってくれる。しかし、俺はその状況で機体を『自動で倒れる体勢の中で』その中の『自動』を『キャンセルして』動かそうとしている。つまり、二つ以上の作業を同時にこなそうとするから出来なくなる……そういう事だろう。「俺は通常の着地してからロックオン・射撃っていう3つのプロセスよりもっとスムーズに、着地しながらロックオンしつつ射撃、の1つでしたいんだよ」「―――確かに、凡庸性は大きく広がるが……先ずはそれだけの動作情報を処理出来るCPUが無いと無理だ。それとOS……はお前のデータ参考にすれば良いか」「そんな道理、俺の無理で抉じ開ける!」「整備班殺す気かテメェは、俺達が機体に細工して逆に殺すぞ」「マジでスイマセン!」即土下座、額を地面に擦り付ける。正直、XM3が欲しいです……無理か、無理だな。原作でもオルタネイティブ4での研究結果のスピンオフしたからで完成品だしね。俺が打診するってのも手だけど流石にあの“極東の魔女”が衛士の為に作るとは思えん。「あー……せめて、もっと高性能なCPUが手に入ればなぁー」「……必要ってんなら欧州国連軍本部に打診して要請だけはしておくか?上手くすれば総本部まで話が通って議題になるかもしれねーぞ?」「ん~……だな。おやっさん、俺の操作ログ付で送っておいてくれ………知り合いに提督居るし、頼んでみる」「おう了解。俺の同期が国連本部の開発部で働いてっから俺も通して見るぜ」「あの…二人とも食事時の会話って感じで何気に話してますけど………これまでの戦術機機動概念を全て消し去りそうな内容ですよね?」『…………あ、ああ!』「無意識でそんな計画練っていたんですか!?」 Δ ▼【2001年5月19日 アラスカ国連軍ユーコン陸軍基地 第5ブリーフィングルーム】「――――これにて、報告会を終了する。何か意見は?…………無い様だな、では解散!」「あー……終わった終わった」「大尉…じゃなくて少尉!もっとしっかりして下さい!」「俺のスタイルなんだよ、これが」NFCA計画総責任者である中佐殿のありがたーいお話が終わった所で凝り固まった筋肉を伸ばす。5時間にも及ぶ報告会は中々に苦痛だった。周囲の整備兵達はそんな俺たちに苦笑しているが俺からしたら娘に叱られる親父の気分だ。………そういや、俺って前世を含めるともう50歳なんだよなー…………おっさんじゃねーか。「やばい、主にタリサとかに対しての態度って娘に対する感覚だったかもorz」「大尉ー、跪いて無いでPXに行きましょうよー!」「そっとして置いてくれ、エレナ。俺って枯れてるなぁ、って思っただけさ………お前みたいな可愛い娘が居るのに色んな欲求すら持たないなんて……」そりゃあ精神…と言うより魂?年齢は50だし、唯でさえキッツイ戦いの毎日を過ごして来たから色々と賢者状態だけど……なぁ?「か、可愛い!?」「ん?何慌ててんの?事実じゃないか」―――なぁ、皆?「こっちみんな」とか言われそうな顔でまだ資料を纏めていた整備班に向けて問うと『うんうん』と全員が頷く。まぁ想像して見てくれ。彼女を花で表すのなら正しく『百合』だ………如何にも、想像出来そうな容姿じゃないかね?「にゃ、にゃにゃにゃ……!」「ハッハッハッ!ほれ、メシ行くぞー」「はうぅ!?ま、待って下さい大尉ー!」整備兵A「……なぁ、今のレートはどうだっけ?」整備兵B「再来月が19人、来月が11人、今月が9人だ」整備兵C「この様子じゃ今月も負け組みの奢りだなー……財布を空にしてやるか」整備兵D「つか……エレナ嬢ちゃん、健気だなぁオイ」整備兵E「バーラット少尉、ワザと無視してる気がしなくも……」整備兵ABCD「「「「いや、アレは絶対に天然だ」」」」整備兵達が何か言ってたが無視、俺とエレナはエレベーターへ乗り込み一階にあるPXへと足を踏み入れる。………よし。「俺はうどんね、きつね大盛りで」「私はパスタセットで」「はいはい、ちょっと待ってねー」何気に充実してるよね、此処のPXメニュー。うどんとか蕎麦も有れば米もあるし。気になって聞いたけど各国の国連軍基地とメニュー情報を提供しあってるらしい、食事はストレス削減の有効な手段だし……これは正解だな。何気に日本食が食えるのが有難い………横浜のメニューかな?コレ。「戴きます」「大尉、何時も手を合わせてますけどどうしてです?それ」エレナが俺の合唱ポーズに今更だがツッコンでくる………ねぇ、俺ってお前さんとメシを食う様になった1年前からやってたよね?何で今このタイミングでツッコミ入れるの? ・正直に言う ・適当に誤魔化す…………おい、何この選択肢?今更だけど何か脳内に浮かんでるぞこれ。あー……… ⇒・正直に言う ・適当に誤魔化す「これか?日本で戦った時に帝国の兵士達がやってたんだ。食べられる命と作ってくれた人への感謝を表すんだよ」「へぇー…じゃあ、私も……戴きますっ!」「……ッ」「おいユウヤ、どうした?」「……何でもねーよ、VG」………スマンなブリッジス。気付かなかった。