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No.18026の一覧
[0] Muv-Luv Alternative -Ave Maria-[Exige](2010/04/17 15:07)
[1] Muv-Luv Alternative -Ave Maria-[Exige](2010/04/17 15:31)
[2] Muv-Luv Alternative -Ave Maria-[Exige](2010/04/17 15:05)
[4] Muv-Luv Alternative -Ave Maria-[Exige](2010/04/26 19:54)
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[18026] Muv-Luv Alternative -Ave Maria-
Name: Exige◆2f2ac254 ID:f7dd6cb9 次を表示する
Date: 2010/04/17 15:07
  Ave Maria, gratia plena,(めでたし、聖寵みちみてるマリア、
  Dominus tecum,(主、御身と共にまします
  benedicta tu in mulieribus,(御身は女のうちにて祝せられ、
  et benedictus fructus ventris tui Jesus.(御胎内の御子、イエズスも祝せられたもう。
  Sancta Maria mater Dei,(天主の御母聖マリア、
  ora pro nobis peccatoribus,(罪人なる我らの為に、
  nunc, et in hora mortis nostrae.(今も臨終の時も祈り給え。

  Amen




 1944年 大東亜戦争が終結し、翌々年から宇宙開発が盛んになる。
 1950年 本格的な宇宙探査を目的としたダイダロス計画が始動した。
 1958年 火星探査衛星ヴァイキング1号が地表で生物と思われる影を発見し、人類は地球外生命とのコンタクトに沸く。
 1967年 前年に始動した世界的巨大プロジェクト、オルタネイティヴ計画により、火星への橋頭堡として派遣された地質探査基地、プラトー1所属隊員がサクロボスコクレーターにて火星で発見された生命体と接触。以後消息を絶つ。サクロボスコ事件と命名。
 1973年 人類に敵対的な異星起源種、通称BETAによる本格的な地球侵攻開始。中国カシュガルへと着陸。以後オリジナルハイヴと命名。中国軍によって焦土作戦が行われるも、進行速度は衰えず。
 1974年 BETA侵攻により世界人口が30%減。これは人口の集中していた中国、インドが多大な損害を受けたためである。その後も人口減少の一途を辿る。
 2001年 欧州・ソ連・アジア圏がほぼBETA支配下に置かれる。欧州は大英帝国、ソ連はシベリア・カムチャッカ半島、アジアは日本帝国と東南アジア諸国を残すのみとなった。この時点で世界人口は約10億人。




西暦2001年10月22日 時刻0900 横浜基地衛士訓練学校 グラウンド



 それは余りにも唐突で、誰もが反応し得なかった。
 第2滑走路に詰めていた監視員は語る。ほんの数瞬、空が光ったと思うと、直後に巨大な物体が猛烈な速度で飛び出してきたと。
 それは勢いそのままに、滑走路に接触。舗装面のコンクリートを削り取りながら、何度かバウンドし、オーバルコースのある訓練学校のグラウンドを砂煙を上げながら転がった。そして遂には校舎B棟に激突して停止した。
 校舎の窓ガラスは粉々に砕け散り、コンクリート壁は瓦礫の山となった。あちらこちらから捻じ曲がった鉄筋が顔をのぞかせ、周囲は舞い上がった砂埃で視界が酷いことになっていた。
 その日、いつもの通り朝一番の20キロ持久走を終え、15分の休息を取っていた207B訓練部隊の訓練兵たちは突然の暴風に煽られ、全員が転倒してしまっていた。

「うぅ……げほっ、な、何、何なの!?」
「あぅぅぅ、い、痛いですぅ……」

 呻きながら顔を上げた少女たちは酷い有様だった。持久走で汗をかいているところに大量の砂埃を浴びたのだ。全身埃まみれになり、整った顔立ちが台無しとなっていた。
 口の中に砂利が入り、えづきながらどうにか吐き出す。

「何だあれは。……不知火?」
「けど……ちょっと違うね」

 この日は朝からやや風が強く、砂煙は割りとすぐに吹き去っていった。そして姿を現したのは校舎の瓦礫に埋もれている戦術機の姿だった。背中から叩きつけられたようで、項垂れているようにも見える。
 そしてその機体は通常の戦術機に比べて明らかに小さかった。なぜなら左腕と下半身が無かったのだから。




 内線を通じて、雑多な書類が散らばった書斎に呼び出し音が鳴り響く。その番号を見ただけで香月夕呼は相手が誰であるか分かっていた。相変わらず煮詰まって遅々として進まない己の研究に腹を立てていたところに電話が鳴り、仕方無しに苛立ちを腹の底に隠しながら受信機の1番ボタンを押した。

「こちら副司令室です」
「おはようございます、香月博士。少々お時間をいただいてよろしいですか?」

 声を聞くなり、夕呼は面倒くさそうな声音を隠そうともせずに、相手、神宮寺まりも軍曹に先を促す。

「現在より5分前、横浜基地に正体不明の戦術機が落着しました。現場に居合わせた我々としては判断のしようが無いため、指示を仰ぎたいのですが」
「戦術機? 今日の予定に実機演習は入っていないはずだけど」
「はい。私もそのような予定は聞き及んでおりません。副指令もご存知ではないとなると、いかがいたしましょう」
「ううん……、とりあえず今あんたが分かる範囲でいいから詳細を教えて頂戴」

 まずは指導監督していた訓練兵たちを避難させたこと。不用意に接近するのは危険と判断し、安全と思われる距離から大雑把に観測したこと。落着した戦術機は不知火の面影が残っているが、肩部等が著しく異なっていること。その塗装とマーキングから国連軍所属であること。そして最早修理して実戦に出すことは不可能であると、一目で分かるほど大破していることを説明した。
 夕呼はしばらくだんまりとしてから、口端を軽く吊り上げてニヤリと笑った。

「分かった。この件はあたしが預かるわ。伊隅……と伊隅は今いないんだった。速瀬たちを回収へ向かわせるから、あんたは通常任務へ戻っていいわよ」

 了解しました、とまりもが通信を切ると、夕呼はすぐに己の直轄部隊の臨時指揮官に連絡を取る。

「ああ、速瀬? ちょっとあんたたちにやってもらいたいことがあるんだけど……」




 不知火のコクピット内で速瀬水月はぼやいていた。

「ったく。なーんでこのあたしが土木作業なんてやらなきゃなんないのよ」

 副指令直々に命じられた不明戦術機回収が、水月の不満の直接的な原因ではなかった。原因は、自分が居残り組みであるというところにあった。2日ほど前からA-01部隊隊長である伊隅みちるを筆頭に、CP涼宮遥、宗像美冴、風間祷子、配属後半年も経っていない新人が3名。
 居残りを命令されたのは自分と、残りの新人組、涼宮茜と柏木晴子である。新人をシミュレータでしごいてみたりしてはみたものの、やはり退屈な基地待機。そしてそこに降って沸いた残骸の回収作業。もとより突撃前衛隊長である彼女にとって、このような後方任務は出来ることなら敬遠したいものであった。

「にしても何なんでしょうね、この不知火モドキ。もうボロボロじゃないですか。おまけに校舎まで……」
「装甲が熱で溶けちゃってるからBETAとの戦闘じゃないわ。まあ要塞級に溶かされた可能性もあるけど、多分対戦術機戦での損傷ね。ミサイルかヒートハンマーか、何でこうなったかは分からないけど」
「あ、速瀬中尉、生体反応あります! 乗ってる衛士は生きてますよ!」
「よし、それじゃあとりあえずは衛士を救出するわよ。ハッチは歪んでるし、何もリアクションを起こさないところを見ると間違いなく気絶してるわ。この損傷だと重症を負っている可能性が高い。くれぐれも手荒に扱うんじゃないわよ! こいつには事情を聞かせてもらわないといけないんだからね!」
『了解!』

 愚痴をこぼしたりと余り緊張感がないが、いざ方針が決まると彼女たちの行動は速い。
 歪んだコクピットブロック周辺をレーザートーチで慎重に切断、不知火の腕で少しずつ手前に引き出していく。当然急激な動作は禁物である。
 そして引き出したコクピットには、年の頃25・6と思われる男性が頭部から血を流して気を失っていた。国連軍正式強化装備を身に付けているので、飛び散った破片による裂傷などはなさそうだった。頭部の怪我も打撲傷であるようだ。
 あれだけの損傷で、この程度の負傷で済んでいるのは運がいいとしか言いようが無い。無論、脳挫傷や脳震盪を起こしている可能性は大いにあるので、即座に救急処置をしなければならないのだが。

「あんまり激しく動かすんじゃないわよ! そう、ゆっくり、ゆっくりとね」

 水月は素早く脈拍、呼吸、瞳孔を調べていく。若干の呼吸の乱れと、やや脈拍が速いという懸案事項はあるが、瞳孔が完全に開くということは無く、とりあえずはよしとする。
 次に骨折が無いかを調べる。強靭な強化装備を着ているため、中で腕が千切れても分からない場合がある。装備の上からそっと手を添えて確認。どうやら骨折も無いようだった。

「本当、信じられないぐらい悪運強いわね、こいつ」

 そう呟いて水月は男性の顔をまじまじと眺める。薄く茶色がかった黒髪は男性にしては細く、長めであった。顔つきは、まあそれなりに端整と言えるかもしれない。苦痛のためか眉間に皺がよっている。
 肉体の方は、衛士として何年も過ごしているであろう男性なので、当然強靭なものであると思われた。がっしりとした肩に厚い胸板。ただ、やや細身の骨格でもあるようだった。
 ややして救護班が到着し、男性を担架へ乗せる際に、彼の首にかけられたネックレスというには少々大きい長方形の白銀のプレートが目に入った。

(ロケットかしら?)

 戦場へ赴く際、恋人や家族の写真を持っていくものは珍しくない。おそらくこの男性もそういう人間の一人だったのだろう。水月は至極普通にそう考えた。
 搬送されていく男性を見届けたあと、彼女たちは副指令の命令通り大破した機体を、基地関係者に幻と噂されている90番格納庫へと降ろす作業にかかった。





 人類は滅亡という現実が、日に日に目前へと迫るのを感じていた。
 未だ世界は国家間でのしがらみを捨て切れず、どこかで反目しあっている。もしも最初から手を取り合ってBETA殲滅へと動いていたならば、今日のような状況は避けられていたかもしれない。
 しかし、それは異星技術独占を目論んだ中国のエゴイズムによって早々に崩れ去った。
 これにより、最初期においての原子爆弾・水素爆弾による飽和攻撃によって、比較的柔和であり反応炉を内包した状態である着陸ユニットを破壊するという最大の防衛手段を人類は失ってしまったのだ。
 地表で航空爆撃によって比較的中国軍が優位に立ったのをいいことに、胡坐をかいてしまった。そうしているうちに反応炉は穿孔されたシャフトを通じて地下深くに降ろされ、当時の主戦力であった戦闘車両では対処不可能となった。
 反応炉の存在を知らず、BETAの抵抗に手を焼きつつも、どうにかして異星技術を手に入れようと躍起になる中国共産党本部は、機動部隊と歩兵部隊にBETAの巣、ハイヴへの突入を命じた。とはいうものの、アリの巣のようなハイヴ内を戦闘車両が走行できるはずもなく、多数が各坐した。
 歩兵部隊は小銃やロケットランチャーを手に突入したが、戦車砲という最大火力を欠いた状態では手も足も出ず、突入部隊全員が未帰還となった。
 徐々にジリ貧となっていく戦況に危機感を覚えた共産党本部は戦略核の複数投下という決断を下した。この時点でカシュガルハイヴへ航空爆撃を開始してから18日。
 翌日に戦略核を搭載した爆撃機が基地を飛び立ってからまもなく、彼方から飛来した光線によって瞬く間に撃墜された。それは周囲の空気をプラズマ化させるほど強烈な光線であった。調査するとどうやら新種のBETAによる攻撃のようだった。
 その後、何度も爆撃を試みるも、完全に補足されてしまう。この時点で人類は航空戦力という最大の攻撃力を失った。歩兵と機甲部隊という地上戦力のみとなった中国軍は、どうにか抑えていた戦線をいとも簡単に突破され、戦場は急速に拡散する。
 インド・ソ連・欧州。BETAの進行速度は緩まず、爆撃という切り札を封じられた人類は新たな兵器を作り出す必要性に駆られた。そして1974年に米国にて開発され、正式配備が開始されたF-4は瞬く間に世界中に輸出され、各国で多数の派生機を生んだ。
 戦闘機に変わり、戦術歩行戦闘機という新たな兵器は人類の大きな力となったが、所詮はBETAの侵攻をいくらか遅らせる程度の効果しかなかった。だが、それでも人類は何十年かという猶予を手に入れることは出来た。
 そしてその裏では人類救済のために色を変え形を変え、オルタネイティヴ計画が着々と進行していた。しかし、やはりそこでも対立は避けられず、様々な軋轢が不協和音を奏でていた。




 これはあいとゆうきのおとぎばなし。
 たったひとりのいっすんぼうしがおにがしまにのりこんで、おにをたいじするようなむちゃくちゃなおはなし。

 そして絵本のページは再び開かれる。


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