新章5話 モテない男の影響
時計の時刻はすでに深夜の2時を回り、消灯時間はとうに過ぎた深夜の横浜基地。
その一角のとあるブリーフィングルームに白銀武少佐と神宮司まりも軍曹がいた。
ノートパソコンから配線で繋がれた投影機が白いスクリーンにBETAの姿を映し出す。
投影機はもう随分と昔から使われているのだろう。本体の中にホコリでも詰まっているんじゃなかろうかと思わせる起動音が妙にうるさい。
「ではこれよりBETAの説明に入ります」
まりもがスクリーンとパソコンを交互に見ながらマウスを操作する。その様子はさながらプレゼンを行うキャリアウーマンのようで中々さまになっている。
ビシッと決めた軍服姿のまりもの表情が若干緊張してるように見えた。
目の前にいる少年は白銀武。
若干17歳にして少佐という肩書きを持つあきらかに他とは類を異とする衛士である。
最初はまりもも訝しげに思っていたがそれも今では納得だ。
先ほどのJIVESの訓練による結果を見れば彼が少佐と呼ばれるのも頷けようというもの。
XM3と呼ばれる新システムをダウンロードさせた武の機動はこれまでの自分の戦術機概念を根底から覆してしまった。
対BETA戦において航空機とは違い、空中でも立体機動を可能として編み出された兵器が戦術機だというのに、武のあの機動を見た後では自分が今まで操っていた機動は立体機動だったとはとてもではないが言えない。
さらに言うならこのXM3の開発にも目の前の少年が関わっていると言う。
卓越した技能に加えXM3を生み出す発想力。どれもが素晴らしい1流の能力と言えよう。
だがまりもはさらに武の別の部分を評価していた。
あのJIVES訓練を計10回、撃破されてはまた挑みの繰り返しで20時間。
自分を含む3人のオペレーターがローテーションで受け持ち武の訓練に付き合い、なおかつそれでも足りないと今こうしてBETAの情報を自分に教えてくれと懇願してきた。
鍛錬に対する集中力がすさまじい。
技術だけでなく精神的なものまで目の前の少年は兼ね備えていたのである。
彼は一体何者なのか? と、まりもは武に対して尊敬の念と共に興味を抱かざるを得なかった。
もちろん疑問は残る。あれほどの戦闘技術を有していながら新種のBETAを知らないとはどうにもおかしい。
しかし夕呼からは自分の知っていることは全部教えてやるように命令されている。
それに階級が上とは言え彼は本来自分より年下だ。
教師を志していた自分として年下の相談を受けるのは悪い気がしない。
「こちらは整備(メンテ)級。2000年、つまり昨年の6月にボパールハイヴ周辺で観測されたのが初めです」
最初表示されたのは武の動きを封じて来たBETA。
体が青黒く、そしてわずかに発光している体の色は頭脳級BETAである反応炉を思い出させる。
発見された年は随分最近の事だなと武は顎に手を当てる。
もしかしたら『新種』は近年発見されたばかりなのではないかと武はあたりを付けた。
それは十分ありえる話だ。そもそもあんなBETAが数十年も昔から出現していたのなら人類はとっくに滅びているだろう。
「全長4.2mと戦車級とほぼ同じサイズ。気をつけるべきは奴らの体液。奴らの体から出ると硬化するその性質は戦術機を初めとした近代兵器が浴びてしまうと、致命的な機動力の低下を受けることとなります。また攻撃方法も口からこの硬化粘液を利用した物のみになります。ただし幸いにも戦闘力としてはそれほど高くはなく戦術機を持ってすれば用意に蹴散らせることが出来るレベルですので、奴らが突如目の前に現れたとしても慌てず距離をとって迎撃することが重要です」
まりもの説明に武は数時間前の訓練の事を思い出す。
機動力を奪う事に特化したBETA。特に自分のように圧倒的な運動量をもって相手を翻弄するタイプの衛士にはこのBETAは注意しなくてはならない。
まったく面倒くさい相手だ。死んだ後にこそ本領を発揮するなど、どこのホラー映画のキャラだというのか。
今度からこいつの事は敬意を込めて『粘着野郎』と呼ぶことにしよう内心武は心に決めた。
「このBETAは今までのBETAと違い、相手を撃破することよりも味方に有利な戦況を作り出す役目を持った存在である事から、現時点においてBETAが戦略を用いてきていることは疑いの余地はありません」
武は頷く。
味方を支援するタイプは確かに今まで武が経験してきた並行世界でもいなかったタイプのBETAだ。
BETAは光線級であれ突撃級であれ、敵を発見→撃破の図式が成り立つ単純な行動しか取ることはなかった。
そこに現れた支援型のBETA。奴らがとる戦術がまだまだ児戯に等しいものだとしても、奴らの攻撃手段のバリエーションが増えることがどれだけ恐ろしい事か武は知っている。
「また余談ですがこのBETAの体液が固まった物質は、ハイヴ内の内壁と同じ物質であることが確認されています。それゆえにこのBETAはハイヴの壁の建築や補修を行っていたものであると考えられています」
「あぁ、やっぱりそうなのか? 自分もこいつの体液をくらった時にそう思ったが……」
BETAの目的は資源発掘。
そのため地下に篭って延々と作業を続けており、それぞれのBETAがそれぞれの役割を担っている。
光線級が硬い岩盤を溶かすのが目的とされたり、母艦級がハイヴ内の坑道を拡大および他のBETAの運搬を目的としているのなら、この整備級は母艦級が掘った穴を補強するのが仕事なのだろう。
ちょうど自動車や家屋に塗料をぬりつけて錆びなどの劣化防止や外装を強化させるのに似ている。
「なるほど……ふと思ったのだが、こいつの体液がハイヴ並みの強度なら捕獲して上手いこと利用すれば戦術機の耐レーザー塗料とか作れないか?」
ハイヴ内ではS-11を爆発させてもビクともしない。
そんな強度をもたせられる塗料なら重光線級のレーザーを数秒と言わず、何十分と持たせる事ができるかもしれない。
「さすがです白銀少佐。おっしゃる様にこのBETAの体液を利用して新しい耐レーザー塗料の開発が推し進められています。……ですが現状は開発困難のようです」
「それは何故?」
「まず、第1に我々はこの物質を人工的に作る事はできない。となればこのBETAを捕獲せざるを得ないわけですが、その作業は命がけという事が上げられます」
なるほど、と武はまりもの言葉に納得した。
別の並行世界でBETA捕獲作戦に携わったA-01部隊が実際命を落している。
「次にこのBETA1体から取れる体液は戦術機を1機塗るのに全く足りません。だいたい戦術機1機作るのに対して20体分の整備級が必要とされており、それだけのBETAを捕獲するのに3人の衛士が命を落す計算となります」
「……それは確かに割に合わないな」
1機の戦術機を作るのに、3人の衛士が命を落していては話しにならない。
せっかく出来た戦術機も乗り手である衛士がいなければ只の大きなオブジェとなってしまうのだ。
「最後にやはりと言うか、このBETAの体液は未知の物質であるためその乾燥・硬質化のメカニズム分かっておりません。つまりは未だに保存方法が見つからない状況にあります」
「……ん? さっきのシミュレーションでは空気に触れたら硬質化したわけだから、何かの液体に保存しておくとかでは駄目なのか?」
「はい。それが例え空気中であれ水中であれ、真空の中であろうとも整備級のBETAから外に出た体液は『数秒』で硬質化されてしまいます」
普通の塗料は溶剤が自然蒸発して乾燥するタイプや、別の硬化剤や触媒を混ぜることにより重合反応を起こし固まるものがあるが、そのどれもが乾燥するまで数十分から数時間かかる。
一見早く乾燥する塗料は性能が良いように思えるが、数秒でかたまる塗料など不良品以外なにものでもない。
考えてみると良い。塗料缶の蓋を開けたら数秒でダイヤモンドのように硬くなっている塗料などどう塗れば良いというのか?
「なるほど……だがあの鉄塔光線級のようなものが存在するなら、何とかしたい所ではあるな」
「はい。光線級はハイヴ内ではレーザーを照射しない。ならばハイヴと同じ材質の塗料をぬればそもそも奴らの照射対象にすらならない可能性すらありますし」
まぁさすがにこれは甘すぎる希望ですが。とまりもは言葉を続けながらリモコンを操作し画面を切り替える。
「続いて先ほど白銀少佐もおっしゃった鉄塔光線級。最大のもので全高は10kmと今まで発見されたBETAの中で郡を抜いて巨大な新種です。底面の直径は200m。円錐形をしており、その外皮は突撃級の装甲殻と同じ強度を誇っています」
「鉄塔光線級……」
最大という言い回しからどうやら同じ鉄塔光線級でも大きさに差があるらしいが、それでも他のBETAと比べたら規格外のサイズである。
自分が知る中で最大の母艦級の5倍以上の大きさもある。
「神宮司軍曹。こいつを倒す手段はあるのか?」
「……あくまで理論上ですが、あまりにも縦に長すぎるアンバランスな造形から120mm砲弾などの集中砲火で根元に上手く傷を負わせられれば、後は自重で崩れるとされています。……が、今まででそれを行えた者は存在しません」
「そうか……」
まりもの言葉に武は苦虫を噛み潰した表情になる。
他の光線級ならばレーザー照射器官を潰せば無力化できる。だがこいつの場合は照射器官が高度10000m上空に存在するのだ。とてもではないが通常の兵装では届くまい。
また集中砲火といってもあの外装だ。
10発や20発打ち込んだとしても微動だにしないだろう。
何百発という砲弾を撃ち込むにしても鉄塔光線級の足元には物量が自慢のBETAの群れがひしめいているのだ。
はっきり言って鉄塔光線級だけに構ってる余裕はあるまい。
他に有効な方法といったらS-11を根元にセットして爆破することぐらいだろうか?
「神宮司軍曹。こいつの照射器官は全部でいくつある?」
「現在確認されているオリジナルハイヴ周辺に存在する最大の鉄塔光線級は、推定2000を近い照射器官を持っているとされています」
「……お手上げだな」
上空から降り注ぐ2000を超える光線の雨。
たとえ自分の機動をもってしても振り切ることなどできはしまい。
実際さっきのシミュレーション訓練で自分は一度もこいつの攻撃を避ける事は出来なかった。
つまりこいつが攻撃してきたらその時点で詰みである。
「ですが白銀少佐? この鉄塔光線級は欠点がないわけではないのですよ?」
「何……?」
下を向いていた武はまりもの意外な言葉に顔を上げる。
「はい。今までこのBETAによって撃墜された人間は年間どれくらいだと思いますか?」
その質問の仕方はまりもが嘗て自分に『死の8分』を説明してきた状況を思い出させる。
あの時も8分と言う予想を超える返答に驚いたものだ。
年間……1年間にこのBETAにより命を落した人間の総数。
1番多く人類を食い殺している戦車級なら民間人も含め年間1億に迫る数だろう。
まりもの口調から恐らく自分の予想外の返答なのだろうが……。
「んっ……そうだな……10万くらいか?」
「512人です」
「512!?」
それは少ない……。
少なすぎる。
こちらからすれば手がつけようのないくらいの化物なのに、その被害数は平和な日本における道路交通事故による年間死亡者数(約5000人)にも全く及ばない数だとは。
武の驚いた表情にまりもは満足そうに頷き説明を続ける。
「はい。白銀少佐、例えば重光線級の地平線までの照射可能距離を良く考えてみてください。おかしいと思いませんか?」
「重光線級の地平線までの照射可能距離? ……確か16kmだったな? それがどうかしたのか?」
地球は球体の形をしている。そのため地平線の向こう側に隠れてしまえば直線軌道しか描けないBETAの光線はまず当たることがない。
当たる場合は地平線の向こうから顔を覗かせた場合。つまりは航空機が高度500mなどで低空飛行している場合である。
この場合はさらに射程距離が伸びて航空機は重光線級の100km以内に近づく事すらできない。
だが空を飛ばない高さ0m……の生き物はさすがにいないので、例えば蟻などの生き物を重光線級が打ち抜こうとした場合の最大射程距離は16kmである。
「はい。重光線級ですら地平線までの照射距離は16km、これに対して鉄塔光線級の射程距離は800km……」
「800km!?」
でたらめな数字である。
その距離はだいたい東京から北海道までを結ぶ距離だ。
「えぇ、つまりは佐渡島ハイヴにいる鉄塔光線級は『日本にいる人間をその気になれば何時でも撃てる』というわけです」
「――ッ!!」
まりものあまりに恐ろしい言葉に武は言葉を失う。
確かにその通りだ。佐渡島からこの横浜基地までの距離は約300km。
余裕で鉄塔光線級の射程に収まる。
つまり今この瞬間に撃ち殺されてもおかしくはないということだ。
佐渡島にいる鉄塔光線級の射程範囲外といったら日本では九州と北海道の端っこくらいしかないのではないか?
「どういう事だ? 何故鉄塔光線級は攻撃を仕掛けて来ない?」
「それをこれから説明いたします。まず鉄塔光線級はその性質上積極的にレーザー照射する事はありません」
「性質上?」
武が眉をひそめてまりもに問い返す。
言われて見ればシミュレーション訓練でも鉄塔光線級は初めの内は沈黙を守っていた。
まぁ確かに積極的にレーザー照射されたらこちらも命はないのだからその点はありがたいのかも知れないが。
「はい鉄塔光線級はその名の通り建造物のように全く動く事ができないBETAです。つまりはハイヴに戻って燃料補給をすることができません。1度全てのエネルギーを使い切ったら最後、その鉄塔光線級の寿命は尽きます」
「寿命が尽きる?……つまり鉄塔光線級は『使い捨てのBETA』という事か?」
「そのとおりです。順を追って説明します。こちらの画像をご覧ください」
まりもが手にしたリモコンを操作して、別の画像を映し出す。
何やら黒い球体のようなものが描かれている。
横に書かれたデータを見ると大きさはどうやら直径1.2mの球体らしい。
「……それは?」
「鉄塔光線級の種です」
「種!?」
「正確に言えば我々人類が認識する『種』ではないのでしょうが……。まぁそれはさておき、この鉄塔光線級の種を他のBETAが地面に置いていく様子が軌道衛星によって確認されています。地面に置かれた種は数時間後には発芽、そしてそのままどんどん上に伸びていき、およそ半年で10kmの鉄塔光線級に成長します」
なるほどと武は頷く。
最初の説明で『最大の鉄塔光線級』という言い回しをしていたのには、そういった理由があったのかと納得する。
鉄塔光線級の照射器官は2000。
1体で2000体分の重光線級という計算ではなく、1体で2000発の重光線級並みのレーザーを撃てると考えるのであれば確かにまだ話が違ってくるかもしれない。
「成長しきった鉄塔光線級は基本一切何もしません。それは自分がエネルギーを補給する術を持っていないから、なるべくエネルギーの消費を抑えているのだろうと言うのが今の学会での有力な説となっています。そして1度レーザー照射をし、全てのエネルギーを失ったら徐々にその姿を変え、約1ヵ月後に再び種の姿に戻り他のBETAに回収されハイヴに戻って行くという流れになっています」
「鉄塔光線級は植物のような存在というわけか……。では鉄塔光線級は何を照射対象としているんだ?」
世界に一体どれくらいの鉄塔光線級がいるのかは武には分からないが、それでも年間512人しか人類の命を奪っていないのでは、そもそもこのBETAが存在する意味がない。
まぁBETAの行動が人間の理屈に合わない事など良くあることなのだが。
「では続きましてそれを説明いたします。今までの話だと白銀少佐はこいつをウドの大木のような存在と思われたかもしれません。ですが最後まで聞いていただけるとこの鉄塔光線級がどれほど人類にとって脅威になっているか分かっていただけると思います」
まりもの真剣な目を見て、やはりそんなに甘くはないらしいと武は悟った。
「まず鉄塔光線級が人類を攻撃する場合。1つ目はハイヴ攻略の軌道降下兵団……これが鉄塔光線級に当たる軌道で落ちてきた場合です」
軌道降下兵団とはハイヴ突入の先陣をきる部隊である。
高度500kmの地球周回低軌道から命がけのダイブを行う彼らの生存率は2割を切るとされている。
軌道降下兵団が乗り込む『空飛ぶ棺桶』と呼ばれる再突入殻は高度40kmの時点でマッハ7にも及ぶ。
そんなものが直撃すればさしもの鉄塔光線級といえども1撃で沈むだろう。
「鉄塔光線級に当たる場合? ……確かに撃墜しなくては自分が死ぬわけだからそれは分かるが、他の突入部隊はどうしているんだ? 撃墜しなければ軌道降下部隊はハイヴに突入し放題じゃないか?」
「無視してます」
「無視?」
「はい。先ほども説明したように鉄塔光線級は人類を第1の照射対象とはしていません。突入部隊の迎撃はこれまで通り他の光線級が行っております」
「つまりは鉄塔光線級からすれば突入部隊は『直接手を下すまでもない相手』ってわけか。……くそっ! ……舐めやがって!!」
武は力まかせに机を思いっきり叩く。
確かに他の並行世界でも突入部隊がハイヴを攻略できた事などないのだから、迎撃は他の光線級に任せるのは理に適っているのかもしれない。
だが武はそんな鉄塔光線級の行動が気に食わなかった。
BETAの思考回路なんぞ分からない。
別に舐めてるわけではないのかもしれないが命がけ突っ込んでくる相手に対して応戦すらしないで無視を決め込むなど武の中で許せるものではなかった。
「私もそう思います」
まりもも武の言葉に同意するように頷く。
「じゃあ何故鉄塔光線級はオレに攻撃を仕掛けてきた? JIVESでそう設定されているという事は奴らが地上にいる人間を攻撃することもあるという事なのだろう?」
「はい、白銀少佐の仰られるように鉄塔光線級はごくマレですが地上の混戦状態において攻撃を仕掛けてくることがあります。それでも年間で撃破された衛士の数は60前後です」
「わからないな。鉄塔光線級に撃破された衛士達は何故攻撃されたんだ? 何か奴らの気に障るような事をしたのか?」
武は頭を抱える。こう言った『ワケのわからない』行動をとるのはBETAの専売特許みたいなものだから仕方がないと言えば仕方がないのかもしれないが、それだとこちらとしても対処のしようがない。
「学者たちもその問いに大いに悩んでいたのですが、つい3ヶ月ほど前、鉄塔光線級の攻撃を受けた衛士達にある共通点が見つかりました」
「――見つかったのか!?」
これは意外だった。
正直この手の話はBETAの気まぐれで片付けられる事が多かったからだ。
「えぇ、撃破された衛士達は皆が凄腕の実力者たちばかりでした。それも基地内においてトップクラス、部隊の中心となれるような所謂エースと呼ばれるような……。どんなに逆境の戦場においてもこの人がいれば勝てる。そう思わせる人間だけを狙い撃つ鉄塔光線級は別名『エースキラー』と呼ばれています」
部隊の中心となる人物がいなくなる……。
それはどれだけ残酷な事なのだろうか?
戦場を経験してきたベテランの衛士は仲間の死に対して涙を流したりはしない。
むしろ誇り高く語りついでやる事が最大の供養となると考えているからだ。
だがだからと言って今まで隣にいた仲間が死んで『おぉ○○よ。死んでしまうとは情けない』などという感じで割り切っているわけではない。
衛士とて人間。仲間が殉職すれば当然悲しいし、特にチームの中心となれるような器の人間を失う事は意味が大きい。
主柱を失ったことによりチームの連携が崩れ一気に瓦解、さらにそこから連鎖して他のチームにも波紋が広がり戦局が一気に変るという事もありうるのだ。
「ちなみに先のJIVESではそれを考慮してBETA撃破数が個人で3000を超えたら鉄塔光線級が攻撃を仕掛けてくるように設定されています」
「なるほど……じゃあオレが鉄塔光線級の攻撃対象になったのはむしろ光栄というべき事なのかもな。奴らに『敵』として認識してもらえたってわけだから」
皮肉を込めて肩をすくめる武だったが、その視線は鉄塔光線級の映像に注がれていた。『こいつは戦場で会ったら必ず殺す』と、あたかもそう言っているようである。
「では鉄塔光線級は人類以外の何を照射対象としているのかと言えば、まず1つはBETA戦に置ける制圧攻撃に使用される対レーザー弾頭弾やミサイルなどの兵器です。しかしこれらも基本は他の光線級がまず最初に迎撃することとなっているようです。もっともそれが人類にとってはさらに厄介な事となっているのですが……」
「厄介な事? 最初に他の光線級がレーザー照射を行い、鉄塔光線級がレーザー照射を行うのはその後という事がか?」
積極的に攻撃してこない事の何が問題なのかと武は問い返す。
「はい。我々が制圧攻撃を仕掛ける際にまず最初に行う攻撃は何ですか?」
「言わずと知れた対レーザー弾頭弾、ALMによる重金属雲の発生だろう?」
航空兵器を無力化したBETAのレーザーを対抗するためにあみ出されたALMは、BETAの性質を逆手にとった防御兵器と言っていい。
光線級に打ち落とされる事によって重金属雲を発生させ、BETAのレーザー出力を減衰、その間に面制圧を行うという流れだ。
むしろ武としてはALMが『打ち落とされない』場合が厄介である。
その場合は確かに通常兵器としてALMはBETAに損害を与えるが重金属雲は発生しないため、次の面制圧に繋がらないのだ。
BETAがそういった行動を取った事があるのはオルタネイティヴ4が完成して、00ユニットから人類の情報が漏れた時の世界の話である。
だがしかしこの世界のBETAは戦略を持っているにも関わらずALMを打ち落として来ると言う。
それはむしろ僥倖なのではないか?
だが武の考えは次のまりもの言葉を聞くことで一気に覆る。
「白銀少佐、良く考えて見て下さい。重金属雲の発生する高度は100~500m、それに対して鉄塔光線級の高さは10kmあるという事を」
「――――あッ!!」
成る程そういう事かと武は納得した。
……確かにこれはまりもが言うとおり厄介だ。
つまり他の光線級と違って鉄塔光線級に『重金属雲は効かない』のだ。
高度500m付近に発生した重金属雲。今まではそこから一斉砲撃を行っていたが、この世界ではあたかも雲の上にその頂を持つエベレストのように鉄塔光線級が顔を覗かせている。
これでは面制圧の作戦は成り立たない。
重金属雲が役に立たないBETAがいるなら他の光線級とて気にせずALMを打ち落とせると言うものである。
「ん? 待てよ? 鉄塔光線級からすればわざわざミサイルの迎撃をするよりかは発射母機を撃破したほうが楽じゃないか?」
鉄塔光線級の高度、射程距離をもってすれば重金属雲が発生しようがしまいが戦艦や戦車を撃破したほうがよっぽど早い。
わざわざ飛んでくるミサイルを1発1発打ち落とすよりずっと楽であろう。
「その理由は先ほどの鉄塔光線級は人類を基本攻撃しないという理由に帰結します。あくまでやつらが地上の人間を攻撃するのは『エース級の衛士』に限定されているようです」
「戦艦や戦車なども鉄塔光線級からすれば取るに足らない相手と言うわけか。……気に入らないな」
これまでどおりの戦術でハイヴに近づけるのはありがたいことなのかもしれない。
他の光線級同様、鉄塔光線級が射程内に近づけさせないような行動を取ってきたら一方的な虐殺になるであろう。
……が、やっぱり気に入らない思うのはいたし方がないと言えよう。
「では最後に鉄塔光線級が第1照射対象としているものの説明をいたします。……もしそれが例えば今この瞬間、横浜基地にあるとしたら鉄塔光線級は容赦なく佐渡島から攻撃してきます」
「――ッ!!」
まりもの言葉に武は生唾を飲みこんだ。
つまり鉄塔光線級はソレが目的として作られたBETAという事だ。
「……その第1照射対象とは何だ?」
「G弾です」
「な……ッ!! G弾!? いや、だが……しかし!!」
予想外の解答に武は激しく動揺する。
対G弾のために作られたBETA……そんな存在は武ですら知らない。
「1999年8月5日、明星作戦において2発のG弾により人類は初めてBETAからハイヴ奪還に成功しました」
動揺する武を無視してまりもは説明を続ける。
「日本人としては複雑な心境はあったものの、人類全体はこの実績に歓喜に震えました。……しかしそれからおよそ半年後の2000年2月18日、鉄塔光線級の出現を切っ掛けに整備級などの新種、さらにはBETAの行動が単純突撃戦法から陽動など戦略的行動を取るように進化し、人類は更なる地獄に足を踏み入れる事となりました」
まりもの表情が曇る。
BETAに対して絶対的な兵器が無くなってしまった事、強化されたBETAは彼女だけでなく全人類に絶望を叩きつけたのだろう。
「……G弾は迎撃不能な兵器。搭載されたML(ムアコック・レヒテ)機関により超臨界前にもラザフォード場を展開することができ、これによりBETAの光線だけなく人類の他の兵器ですら無効化してしまいます」
「……あぁ、その通りだ」
G弾同様にML機関を内蔵した凄乃皇・弐型や四型はラザフォード場を展開している限り無敵である。
G弾はその状態で超音速で突っ込んでくるのだ。防ぎようがないはずである。
「だからこそ奴らは最も有効な方法でG弾を無力化してきました。すなわち『発射される前に破壊』する。鉄塔光線級の馬鹿げたサイズはそのためにあります」
「そういうことか。……ようやく合点がいったよ」
武は唇をかみ締める。
いくら無敵のG弾と言えどもラザフォード場を展開される前に撃破されてはどうしようもない。
陸、海では800km内には近づけず、空ならばその距離はさら伸びるだろう。
「呆れるくらいに単純で力押しの作戦ですが奴らの戦法は理に適っています。……G弾にも弱点があり、その1つに射程距離の長さがあります」
「……射程距離?」
「はい。G弾は物によっては5000km以上の射程を持つ弾道ミサイルのそれと比較して遥かに射程距離が短い。大和型戦艦の46cm45口径砲を利用しても50kmに届きません」
「何故G弾は射程距離がそんなにも短い? 何なら弾道ミサイルの弾頭として用いられないのか?」
この世界の人類の科学力ならばその程度のことはわけもないだろうと武は質問を返す。
「理屈上は可能なのですが、それをするにはG弾の別の弱点が大きな障害となります」
「別の弱点?」
「エネルギー消費と制御の困難性です。G弾はラザフォード場を展開することが出来て初めてその真価を発揮できる兵器。しかしこのラザフォード場は希少なグレイ11を大量に消費し、さらには制御が指数関数的に困難になっていきます」
指数関数……つまり10倍の出力を有しようものなら10乗に制御困難になるという事だ。
当然距離が長くなれば長くなるほどラザフォード場を展開し続ける時間がなる。
大量のグレイ11を消費して途中で空中分解してしまったでは話にならない。
言われて見ればその通りだ。G弾より圧倒的にML機関の制御が困難な凄乃皇は00ユニットの演算能力があって初めて動かす事が可能なのだ。
まさかG弾1つ1つに00ユニット並みのコンピューターを取り付けるわけにも行くまい。
宇宙空間からの軌道爆撃をしようにも結果は同じ。
BETAが攻撃を仕掛けてくる高度60kmの時点では水平距離は1000km、ラザフォード場を展開するには距離がありすぎる。
軌道爆撃は重金属雲をばら撒いた後に行うのが有効なのだが『鉄塔光線級に重金属雲は効かない』。
「そうか……」
武は天井を見上げる。
つまりこの世界はすでにオルタネイティヴ5は失敗に終わっているのだ……。
「………………」
武は目を瞑り自分の幼馴染に思いを馳せる。
鑑純夏のことだ。
彼女は今どうしているのだろうか?
この世界に来て武はまだ純夏に会わせてもらっていない。
これは本来異常な事だ。
だがそれも納得した。人類を取り巻く状況がこれほど違うのだ。
恐らくなにか理由があるのだろう。
戦略を用いてくるBETAのいる世界、脳髄にされる絶望的状況よりさらに悪い状態になっていないだろうか?
脳髄、それより最悪な状態は……死?
例えどのような状態でもせめて生きていてくれと、まだ会えぬ幼馴染の安否を武は気遣うのだった。
◆
――同時刻、横浜基地の別の部屋で吾郷は眠りについていた。
ようやく開放された営倉から与えられた部屋。
簡易なベットは硬かったが吾郷は泥のように眠った。
この硬さと冷たさ、どこか懐かしい自分が住んでいた1K6畳のボロアパートで使っていた煎餅布団を思い出させる。
吾郷は夢を見ていた。
数日前の……懐かしい時の記憶の夢だ。
暗い暗い地の底で、今日も吾郷はBETAに資源の採掘を命じる。
醜い醜いその姿は人間のものではない。
自分の周りで蠢く宇宙からの侵略者と同様、人類から忌み嫌われているBETAの姿だ。
上位の存在、あ号標的。
夢……そうこれは夢だ。
自分は今夢を見ている。
夢と分かりつつ吾郷は意識を覚醒させる。
自分は一体いつの頃の夢を見ているのだろう?
『……!?』
疑問に思う吾郷の脳裏にある映像が送られてくる。
黒い空間の歪みが地表にいたBETA……のみならずハイヴ、さらには大陸の一部までもろとも消し飛ばす。
『あぁ、そうか……。これはあの時の映像か』
五次元効果爆弾。通称『G弾』と呼ばれる人類の切り札の1つが使用された時の記憶である。
吾郷があ号標的だった世界では日本はBETAの侵攻から逃れられる事が出来た。
そのためこのG弾は横浜ハイヴではなく別の場所で使用されたものである。
使用されたG弾の数は2発。
これは横浜ハイヴの時と同じ数のものだ。
『さて、それじゃまぁ早速G弾の対策に移るとしますかね』
吾郷はマブラヴの原作知識からG弾が使用されるという事がわかっていたため、その時と同じようにG弾を無効化する方法を考える事にした。
自分のアホな『美女は生かすイケメン殺す作戦』により今のBETAは、他の並行世界のそれと比較してあまりに弱すぎる。
そのため情けない話こちらの方が今現在は不利な状況だ。
だが、ここで吾郷が人間としての臨機応変さを見せたらどうなるか?
吾郷がその気になれば新種のBETAを作成させることはもちろん、素人ながらも戦略をBETAに持たせる事ができる。
そうすれば再びこちら側が有利となろう。
当然G弾だってわざわざまともに喰らってやるつもりは毛頭ない。
G弾はBETA由来の物質を使用した兵器である。
そのためこちらの知識を持ってすれば、例えばハイヴ内にG弾が開放された際に生じる極大化されたラザフォード場の重力偏差を無効化する機能をハイヴ内に設けるなど、何らかの対抗策があるはずである。
『ふふふ……うん、よし! 完璧だ!!』
頼みの綱のG弾が全く効かなくなったとしたら人類はどんな顔をするだろうか?
吾郷は内心ほくそ笑みながらあ号標的としての知識をフル稼働させていく。
たまに吾郷は無意識の内に『うん、よし! 完璧だ!!』と口ずさむ。
これはこの男の一種の癖である。
それは別にいい。
人間1つや2つ何かしらの癖は持っているものだから、それ自体はどうという事はない。
だが問題のなのは、この台詞を言うとき吾郷にとって負けフラグが立っているのだ。
その的中率はある意味予知能力と言っても過言ではない。
この台詞を吐いた後では例えばテストで名前を書き忘れてたり、次の日インフルエンザにかかったりなど、ともかく碌なことが起きない。
『………………』
G弾対策を考えてから既に1時間が経過した。
あ号標的の吾郷は、内心猛烈にあせっていた。
『……オイオイ嘘だろ? 勘弁してくれよ』
――無理!
――無理でございます!
――G弾を無効化できる方法はございません!!
それが吾郷が導き出した答えであった。
『あっれれぇ~? おっかしいぞ~~? 確かマブラヴ・アンリミテッドのオルタネイティヴ5が発動した世界では人類はBETAに負けたんじゃなかったか? てっきりBETAが対G弾の『何か』を生み出したと予想してたんだけど、これじゃあどう足掻いたってG弾防げんぞ? くそ! これじゃあ『オレにG弾は通用しない(キリッ』って言えないじゃないか!!』
などと予想が外れまくって涙目になりそうな吾郷だったがそれも致し方ないこと。
吾郷はオルタクロニクルズをプレイした事がないので、オルタネイティヴ5が発動した後の世界を知らないのだ。
バーナード星系に一握りの人類が逃れた後のG弾による総攻撃は、ユーラシア大陸ごとBETAのハイヴを全て吹き飛ばした。
そしてその後に人類に訪れた世界は平和な世界ではなく、大海崩、通信障害に塩の大陸などの過酷な世界であった。
この死の星と成り果てた地球と共に歩む事となった人類に追い討ちを掛けるかのように、BETAが再び地中から姿を現す。
そう、G弾全てを注ぎこんでもBETAを殲滅するには至らなかったのだ。
これによって人類は滅びの道へと歩んで行く事となるわけだが、1つ言える事はとにもかくにもBETAにG弾はメチャクチャ効くという事である。
少なくとも現時点において吾郷にG弾を防ぐ手段は見つからなかった。
00ユニット専用機であるXG-70b凄乃皇・弐型と同じML機関を持ち、重レーザー級の照射を無効化するラザフォード場を展開しながら突っ込んでくるのだからBETAだけでなく、人類ですら迎撃不能の兵器。
こちらで出来る対応策といったら、せいぜいG弾の効果の及ばないさらに地下深い場所に大広間を移すくらいである。
レーザーの集中照射を行うことで若干起爆を早められるかもしれないが、ほとんど焼け石に水だろう。そもそも人類とてG弾投入前にハイヴ付近の光線級の掃討、ならびに重金属雲を用いるなどの対策くらいは取って来る筈だ。
『あぁ! くそう。俺にG弾が作れればまた話は違ってくるのに……!!』
現時点で1番確実なG弾の迎撃方法は同じG弾を用いるしかないという解答は導き出せたのだが、残念ながら吾郷にはG弾を作ることは出来なかった。
何故ならG弾はあくまで『人類の科学』により生み出された兵器だからである。
確かに原料となるグレイ11はこちらに唸るほどあるが、火薬すら作り方のわからない吾郷の科学知識では到底G弾を作ることはできないのである。
そう考えると、00ユニットを利用して人類の知識を吸収しようとしていた原作であるマブラヴ・オルタネイティヴのあ号標的の行動はそれは恐ろしいものである。
夕呼が確か懸念していたはずだ。人類の化学兵器をBETAが生み出してくるかもしれないと。
そしてあ号標的となった吾郷の立場から言えばそれは可能であると断言できる。
『ぐわぁー!! くそッ! しくじった! 00ユニット生み出せる状況に持っていくべきだったかなぁ?』
もし自分が00ユニットの知識を吸収できれば『戦術機級』のBETAとか作るのに!!
安易と言うなかれ。
良いじゃないか。かっこいいじゃないか。多分自分以外の人間だってあ号標的に憑依したら同じようなBETAを作るはずさ!!
などと無い物ねだりする吾郷は我に返る。
『って今は問題はそっちじゃない!! どうすっかなG弾対策?』
こちらから迎撃不能、自分にはG弾を作れないとなればあとは人類にG弾を使用させないようにするしかないのだが……。
『……ん? 待てよ? ひょっとしたらいけるんじゃないか?』
この時吾郷に衝撃が走った。
それはさながらロマサガのキャラが新技を覚えた時の状況に等しい。
『フフッ! 来た……!! 行けるぞ!』
そう、G弾が迎撃不可能なら『発射される前に破壊』してしまえばいいのである。
幸い自分はすでに植物級(吾郷命名)という成長すると高さ10kmまで育つ人類観察用のBETAを生み出している。
その頂上に他の光線級と同じようにレーザー照射器官を設けてやればその射程距離は……。
『良くわかんないが、きっとすんげぇ距離になるだろう!!』
あ号標的の知識がある癖して計算がめんどくさかった吾郷はアバウトな答えを導き出した。
恋愛に関しては色々悩む癖して、こういうところでは吾郷は大雑把な性格をしているのだ。
『植物級の全高は10km、これなら重金属雲の影響も受けまい。でもこいつ等動けないからエネルギー節約しなくちゃいけないからなー。基本の攻撃は今までどおり他の光線級に任せよう。植物級の照射対象はあくまでG弾が第1……次に面制圧攻撃とか人類が仕掛けたら他の光線級をサポートするくらいは援護射撃させてやるか? 後は……あぁ! そうだこれは忘れてはいけない!』
大切なことを思い出したように吾郷は更なる追加命令を植物級に与えていく。
『イケメン!! こいつらはちゃんと攻撃しないと! まぁ、あくまで植物級は対G弾に専念させたいからこれは最後だな。植物級の周辺で戦闘が行われている時限定って感じにしておこう』
気に入らないイケメンだが常に狙い撃ちしてたら植物級のエネルギーはあっという間に底を尽いてしまう。
『ん~、いや!! もっとエネルギー節約させておく必要があるか?』
対G弾に備えるだけでなく、植物級は対制圧攻撃の迎撃にも補助的ながら参加するのだ。
吾郷としてはもう少しだけ対人間には節約した方が良い様な気がした。
衛士以外の戦術機母艦や戦車、歩兵などの他の兵士は捨ておいて大丈夫だろう。この世界のイケメンというのは戦場の花形である衛士に限られているのだ。
『よし! ではこうしよう! 地上で戦っている衛士。周りの女がイケメンの勇士を見て『かっこいい///』とか『素敵///』とか好感度アップしたような台詞をほざいたら植物級のチョッピング・ライト(打ち下ろしの光線)をお見舞いしてやろう』
このまま生還したら奴らは間違いなくベッド・インするに違いない。
そんな事はとてもじゃないがモテない男の代表格である自分としては許容できない。
植物級の高さなら例え混戦状態でも容赦なくレーザー照射を行うことが出来る。
『奴のチンコ打ち抜け!』とばかりに集中砲火を浴びせてやればひとたまりもあるまい。
普段から女が両手に余るようなリア充な生活を送っているのだ。
彼らが戦場においてくらい、この程度のハンディキャップを背負うのはむしろ当然と言えよう!
『よし! 植物級の役割はこれくらいにして後は他に新たなBETA生み出したり、戦術を叩き込む必要があるな。……あぁ、あとハイヴの内壁の整備しいてるBETAも戦場に送り出しておくかついでに! あいつの体液をくらえば戦術機は無力化するだろうし即戦力だ! うはは~~! 何か楽しくなってきた! うん、よし! 完璧だ!!』
などと上機嫌な吾郷だったが話は旧章の『最終話 Muv-Luv Alternative モテない男の最後の声を聞け!!』に戻ることとなる。