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No.16077の一覧
[0] Muv-Luv Alternative TOTAL ECLIPSE その手で守る者(本編更新)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:23)
[1] 第1話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[2] 第2話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[3] 第3話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[4] 第4話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[5] 第5話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[6] 第6話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[7] 第7話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:32)
[8] 第8話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 14:59)
[9] 第9話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/07/07 04:56)
[10] 第10話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/08/24 04:03)
[11] 第11話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/09/13 04:05)
[12] 設定(1999年時)[鬼神「仮名」](2011/03/17 08:27)
[13] 第12話(TE編)(1)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:25)
[14] 第12話(TE編)(2)[鬼神「仮名」](2011/08/16 03:37)
[15] 本編関係無しネタ ウィル達を勝手にすくってみました[鬼神「仮名」](2010/08/13 18:04)
[16] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(1)[鬼神「仮名」](2011/06/28 03:19)
[17] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(2)[鬼神「仮名」](2011/07/09 18:06)
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[16077] 第8話(1999年編)
Name: 鬼神「仮名」◆af4fba6e ID:f89a1e8b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/22 14:59
明仁と別れてから30分。

<美穂>
「翔太!バックアップよろしく!」
『分かった!』
私は長刀を抜き、要撃級へと斬りかかる。
体液が飛び散り、要撃級の体はそのまま崩れ落ちた。
『下がれ!美穂!』
私は咄嗟に跳躍ユニットを逆噴射させ、後退する。
さっきまでいた場所を120mmAPFSDS弾が飛来し、接近してきた突撃級の強固な装甲を貫通した。
『危なかったぁ。大丈夫か?』
「問題ないわ。ありがとう」
『そか。まぁ、お前ならあのままでも平気だったかもしれないがな』
翔太の笑い声が聞こえる。
(私たちは、まだ生きてるんだよね)
戦闘が始まって約3時間以上。
実質的な戦闘をしたのは大体30分前。
私と翔太は“死の8分”を超えることが出来た。
新任少尉が始めて戦場に出て、そして初陣で死ぬまでの平均時間と言われている8分間。
臨時処置ではあるが少尉としてそれを乗り越えることが出来た。
今更だが体が震えている。
吸水性の良い強化装備を着ていても、自分の手が汗ばんでいるのが分かる。
『笑っている暇があったら1匹でも多くBETAを倒さないか馬鹿者め!』
『す、すみません!』
『“死の8分”を乗り越えたからって楽観的になるんじゃない!』
そう言いながら神宮寺大尉は要撃級へ突撃砲を放つ。
36mm弾が要撃級の体に無数の穴を開けていく。
『そうそう、BETAとの戦いはいつ何が起こるか分からないからねぇ』
そう言いながらミリィが乗るA-10がGAU-8とMK57を一斉に放ち、向かってくる大小さまざまなBETAの死骸を作り上げていく。
だが、この2人はただBETAと戦っているわけではなく、神宮寺大尉の死角をミリィが、ミリィでは倒せないBETAを神宮寺大尉が倒すなどちゃんとした連携を取っている。
初めて分隊を組んだとは思えないほどのコンビネーションだ。
『神宮寺大尉のことは聞いていたけど、ミリィがここまですごいなんて』
「そうね。まるで歴戦の衛士コンビのようね」
2人を見ていると自然とそう思えてくる。
『美穂、前方200mから要撃級が接近してくるぞ!』
「分かった。私たちも負けていられないわよ!」
『おう!』
私と翔太は近づいてくる要撃級を倒すため機体を加速させる。
「接近戦で倒す!バックアップよろしく!」
『任された!』
私は要撃級へと長刀を振りかぶった。
要撃級が同じように前腕を振りかぶったが、私の長刀がそれよりも早く届いていた。
続いてすぐ横にいた要撃級へ翔太が36mmを撃ち込む。
「はぁぁぁ!」
長刀を構え、美穂はBETAへと突撃した。

<ミリィ>
MK57中隊支援砲とGAU-8を使いBETAを倒していく。
さすがは米国製といったところか、A-10の命中精度は高い。
MK57中隊支援砲との相性もよく、着実にBETAを倒している。
神宮寺大尉も同じ第1世代機である撃震を操りBETAと戦っている。
重い機体であるにも関わらず神宮時大尉は長刀を使い、流れるような動きでBETAを倒していく。
さすが元教導隊出身というとこだろうか。
(2人はどうなってるかな?)
私はメインカメラで2人の機影を確認する。
2機連携で1体ずつBETAを倒しているようだ。
まだまだ無駄な動きが多いが連携としてはまぁまぁだ。
突撃前衛である美穂機を強襲掃討である翔太機がカバーしている。
「あの2人なかなかに動きますね」
『あれくらい動いてくれなければ使い物にならない。私が教えたんだ。あれくらい出来なければ一生訓練学校を卒業させないさ』
その顔には笑みが浮かんでいた。
それは、教え子がちゃんと育ったことへの笑みなのだろう。
『そう。あれくらい出来なければ戦場では一瞬で死ぬ』
「大尉・・・」
大尉の顔が暗くなった。
大尉はこれまで何人もの訓練兵を育ってきたはずだ。
そして、それと同時に、死んだという報告を受けることも多々あったはず。
『死ぬときは一瞬だ。ここで生き残っているからといって慢心してほしくは無い』
「そうですね」
私たちも死ぬときは一瞬で死ぬ。
それはエースであろうと新任であろうと変わりない。
それがBETAとの戦いであり、衛士の定めとも言うべきものなのだろうか。
『しかし、砲撃が生きているというのは嬉しいことだな。おかげで戦術機の損害が少ない』
洋上からの艦砲射撃の音がこっちまで響いてくる。
「恐らくは黒田さんの機体を飛行物体の次に最優先としているのでしょう」
『黒田大尉の機体を?』
「はい。黒田さんの機体には小型の核反応炉が搭載されています。他にも電磁投射砲や高性能CPUやコンピューターなど戦艦クラスに匹敵するレベルの物を搭載しています。恐らくはここにある電子機器の中ではもっとも高性能なものを。レーザー属種の有人機や高度コンピューターを狙う性質から考えると恐らくは黒田さんが今狙われています」
実際、レーザー属種が出現した時以外ではこちらへと照射されていない。
そして、黒田さんが離れてからもこちらへと照射されることは無い。
つまりは黒田さんを優先して狙っているのだ。
『しかし、それでは黒田大尉が危険なのでは?』
「大丈夫ですよ。黒田さんはこの程度では死ぬような人ではありませんから」
それは別に機体の性能とかそういう視点から言っているわけではない。
本当にそう信じているからそう言えるのだ。

同時刻
第2防衛ライン周辺

<明仁>
「さすがに数が多いな!」
俺は74式長刀で迫る要撃級を一太刀にて両断する。
横に振り、刀についた体液を振り払う。
『はぁぁ!』
唯衣もまた長刀で突撃級の外皮を切り裂き、後部へと突きたてることで絶命させた。
なぜ俺が74式近接戦闘長刀を使っているのかというと、自分の持つXCIWS-2Bを使うのがもったいないからだ。
何せ突撃砲は弾倉さえあれば使えるが、長刀は刃こぼれを起こしたら交換しなければならない。
しかも試作品であるため俺が提案したライセンス取得が不可能となる可能性もある。
なら、なるべく温存したほうがいい、ということで適当に落ちていた74式長刀を使っている。
逆柄なのでマニピュレーターとの相性は悪いが使えないわけではない。
ただ、その分マニピュレーターへの負担が大きい。
そのところだけを注意して使えば問題ない。
無論最悪XCIWS-2Bを使うつもりではいる。
それはあくまでも最終手段であるが。
ちなみに突撃砲はすでに弾切れとなっている。
さすがに僅かな弾数しか残っていなかったのだからしょうがない。
120mmはもっと重要な場面が来るだろうから温存させている。
『明仁様、本当に大丈夫ですか?』
「あぁ。まぁ大丈夫だろう」
『しかし・・・』
「唯衣が気にすることではない。お前はお前の任に全力で挑んでくれ。俺は俺で何とかするさ」
確かにこの数のBETAを相手にするとなれば大丈夫かと思う気持ちも分かる。
今目の前にいるBETAの数はおおよそ4000ほど。
対してこちらは戦術機が3機だ。
普通相手になるはずが無い。
補給がうまく機能したとしてもこれほどの数をたった3機で相手になどできるはずが無い。
さらに言えば鈴乃と唯衣は落ちている武器を使えばどうとでも戦えるし、過剰な加速などはしていないから推進剤もまだ半分以上は残っているだろう。
こちらも推進剤の心配は無い。
だが、この機体の装備はこの場には存在しないものだらけだ。
突撃砲の弾倉も無ければ長刀も無い。
唯一使える74式近接戦闘長刀を使い個々まで来たが、やはり騙し騙しにしかならない。
少し前から切れ味が悪くなってきているし、マニピュレーターへの負荷もかなり掛かっているだろう。
まして俺の乗るYF-23SBの中身は徹底的にチューンのされた近距離特化型の機体だが、外見は米国のままだ。
唯衣が気にするのも当たり前だろう。
『話している暇があったら敵を倒してください唯衣!』
突撃砲を構えBETAを狙撃していた鈴乃機から通信が入った。
『それは、分かっているが・・・』
『なら実行して。別にすべてのBETAを相手にするわけでないのだから、平気でしょ?』
確かに、すべてのBETAを相手にするわけではない。
むしろそんなことできるはずが無い。
俺たちがここまで突撃してきた目的はレーザー属種を殲滅するためだ。
別にここにいるすべてのBETAを倒すわけじゃない。
邪魔になるものだけを倒せばいい。
まぁ、ぶっちゃけてすべて邪魔なんだが。
「まぁそういうなよ、鈴乃。唯衣だって頑張ってるんだからさ。彩、レーザー属種の数、分かるか?」
「は、はい。光線級が18、重光線級が7です」
最初に聞いたときよりも数がほんの僅かだが減っている。
(砲撃を撃ちもらしたか?それとも他の部隊が攻撃を?)
だが、レーザー属種周辺に砲弾が落ちた後が見当たらない。
あるのは現れたときに出来た大穴だけだ。
(今気にしても仕方ない、か)
「数が減ったか。砲撃が生きているからか、それとも偶然なのか。まぁいい。俺たちのすることは変わりない。このままレーザー属種を殲滅するぞ」
『了解。このまま前進、と言いたいのですが』
『そう簡単には行かせてはくれないようですね』
目の前に要撃級や突撃級、戦車級などが散らばっている。
そして、その置くには要塞級。
まるでこの先には行かせないとでも言っているかのように。
「まぁそうなるよな。ったく、人気者はつらいな。ははははは!」
「く、黒田君!?」
彩が驚いた顔で俺を見ていた。
いきなり笑い出したのだから当然だろう。
俺は74式長刀を破棄し、XCIWS-2Bを両マニピュレーターに選択する。
もうここまできたら温存するだけ無駄だと思った。
「もう、面倒臭い!邪魔するBETA片っ端から殲滅するぞ!」
『了解。お供しますよ、明仁様』
『了解!それでこそお兄様です』
2人が同時に答える。
「行くぞっ!」
俺は手近に居た要撃級へと斬りかかった。

一方
新潟県高田平野
高田城跡周辺

<徳人>
城跡に2個中隊の瑞鶴が並んでいた。
その構成はほとんどが白。
そして、全ての機体共通である左肩の12の数字。
斯衛が誇る実戦部隊であり、黒田徳人少将率いる第12戦術機甲大隊の証だ。
「状況はまずまず、といったところか」
モニターを眺めていた徳人はそう呟いた。
押しているわけでもなく、押されているわけでもない。
だが、確実にBETAの数は減っている。
「情報によれば例の機体の衛士が宣言どおり師団規模のBETAを壊滅させたそうです」
「そうか。それだけを単機で落としたってんなら勲章ものだな」
モニター越しに徳人の目には連携を組む黒い戦術機と不知火、不知火・壱型丙が映っていた。
2本の長刀のみで戦っている黒い戦術機の姿は米国機には見えないほど優雅で、そしてその性能は共に戦っている日本が誇る不知火すら凌駕しているように見える。
(さすが明仁と言ったところか)
傍から見れば1人の無謀の突撃のように見えるが、あれはそうではない。
明仁は仲間と連携をとりながら戦っている。
明仁が攻め、不知火・壱型丙に乗る鈴乃が援護し、不知火に乗る唯衣が脇を固める。
小隊レベルの戦術をあの3機でこなしているのだ。
「しかし、あの戦術機すごいですね。単機で師団規模のBETAを倒し、今は長刀2本でBETAと戦っている。いったい誰があれに乗っているのでしょうか。米国の衛士・・・とは思えません」
部下が疑問に思うのも無理は無い。
長刀を運用しているのは日本を始め欧州やアジア周辺国だ。
米国はその運用ドクトリンから長刀を使わない。
いかに長刀を装備していようとも使い慣れない米国の衛士が使いこなせるわけが無いのだ。
だが、今長刀を持ち戦っているのは紛れも無い米国の機体。
部下はそのことを疑問に思ったのだろう。
「さぁな。日本人かも知れんぞ?」
「・・・確かにそうかもしれませんね。あの戦い方はどこかで見た覚えがありますし」
まぁそれはそうだろう。
何せアレに乗っているのは明仁なのだから。
斯衛で明仁を知らぬ人物は居ないだろう。
黒田家と斯衛軍第12戦術機甲大隊所属となれば自然と有名になる。
この場に居るものは皆明仁と供に戦ったことのある者たちだ。
仲間の戦い方くらい知っているだろう。
『徳人、聞こえているか?』
「あぁ、聞こえている」
妙高高原にある指揮車から雅人が通信を行ってきた。
『今帝国と話が終わった。徳人、参加しても良いそうだ。ただし、第2から第3防衛ラインのみだそうだ。それ以外は斯衛でも認められないらしい』
「分かった。それだけで十分だろう。ったく、頭の硬い奴らだ」
徳人たちは、この作戦に参加するためにここに集まっていたのだ。
元々、鈴乃と唯衣が参加すると決まった時点から第12戦術機甲大隊の参加は決まっていた。
ただ、斯衛は簡単には介入できず、そのため帝国側への参加許可が出るのを待っていたのだ。
「よしお前ら。よく聞け。これから俺たちはここ高田城跡から観音崎まで向かう。観音崎にBETAの野郎が土足で上がってきたそうだ。日本の礼儀をよぉく教えてやれ!」
「「「「オォー!!!」」」」
部下たちの怒声が通信越しに響いてきた。
『こんなことをお前に言うのもあれなんだが・・・死ぬなよ?』
「へっ!ここで俺が死んだら鈴乃ちゃんが悲しんじゃうから死なねぇよ!」
『・・・いや、それは無いな』
返答と同時に通信が切れた。
「・・・ったく、ひでぇダチだなぁおい。おし、野郎共!行くぞぉ!」
徳人率いる第12戦術機甲大隊が出陣した。

同時刻
第3防衛ライン周辺

<ミリィ>
『20700より小隊各機へ。聞こえているな?』
『20703、聞こえています!』
『20701、同じく』
「同じく」
『よし。この先に補給コンテナがある。1度そこで補給を行う。順番は01を先頭に03と私、それから中尉だ。いいな?』
『『「了解」』』
美穂たちは順番に従って補給を始めた。
ここに来るまでに大隊か連隊規模のBETAと戦った。
私の機体はまだ十分過ぎる弾薬が残っている。
推進剤が不安だが、ここで補給さえすれば作戦が終わるまでは十分だろう。
『しかし、向こうは大丈夫なのだろうか』
「黒田さんたちですか?」
『あぁ。さすがに3機だけではきついだろう』
「そうですね」
あのBETAの群れの中であの3人は戦っている。
レーダーで確認できる数で約20000近く。
とてもじゃないが3機でどうこうできる数じゃない。
あの中で3機だけで戦うとなるとゾッとするものがある。
無論3機だけでは無く、帝国の部隊もいるが同じようなものだ。
『01補給完了しました』
『次、03だ』
『了解』
(もうすぐ終わりそうかな)
レーダーに映るBETAの光点は着実に減っている。
レーザー属種は健在のようだが、それも時間の問題だろう。
ふと、レーダー上に戦術機を示す光点が接近してきていることに気づいた。
(2個中隊規模?でも、どこから?)
国連とは考えづらい。
なら斯衛?
それも考えづらい。
斯衛は帝国から許可を貰うか将軍直々に命を貰わなければ動けない。
(じゃぁ、どこの部隊?)
『中尉、どうかしたか?』
「え?」
『中尉の番なのだが?』
大尉ほか、美穂たちの補給が終わったようだ。
「すみません。すぐに始めます」
私は急いで補給を始めた。
(言わなくても平気か)
戦術機であれば、私たちの味方だろう。
それに近づいてきているといってもまだ50km近く離れている。
第3世代の巡航速度でも10分ではたどり着かないだろう。
補給がもうすぐ終わるという時だった。
『よし、中尉の補給が終了次第行動を―』
突如ウィンドに第2級光線照射危険地帯警報の表示とアラームが鳴り響いた。
「なっ!」
数本の光の線がこちらへ向かって照射された。

<美穂>
突然のことに体が反応できなかった。
機体が自動で回避行動をとり、レーザーを避ける。
「ぐぅぅぅ!」
急激なGが体へとかかる。
正面を見ると他のBETAとの隙間からのぞく目があった。
『全機回避行動を取れ!光線級に丸焼きにされるぞ!』
だが、回避行動をとる前に第2射が照射された。
機体が再度自動回避を行おうとするが、間に合わず脚部と跳躍ユニットにレーザーが被弾した。
「きゃぁぁぁ!」
機体がバランスを失い、崩れ落ちた。
『美穂!?うわぁぁぁ!!』
翔太もレーザーを受けたらしく、機体の腰から下が無くなっていた。
下半身を失った吹雪が地面へと落ちていく。
『あ、足がぁ!あしがぁ!』
「翔太!?」
『どうした!』
『くそぉ!俺の足を焼きやがってぇ!』
翔太の機体。
レーザーを受けた部分から管制ユニットが見えていた。
そして、そこには膝から下を無くし、血を流している翔太の姿が見えた。
『しょ、翔太ぁ!!ぐあぁぁぁ!』
背後から突撃級が突撃してきた。
その巨体から繰り出された突撃で機体が地面を10mほど転がっていった。
機体各所が赤く染まり、ウィンドに戦闘不能状態と表示された。
機体の中にも回線がショートし、火花を散らす音が聞こえてくる。
「く、くそぉ!いっ!ぅ・・・・・・っ!」
背中と左足、左腕に激痛が走った。
左腕には金属片が突き刺さり、左足は突撃されたとき歪んだ管制ユニットのフレームに挟まれていた。
太ももから血が流れ、足元へと流れ落ちていく。
背中からも血が流れていく感覚がある。
背中にも金属片などが刺さっているのだろう。
「こ、こんな所でぇ!くっ!」
私は機体を起こそうとしたが、いくら動かそうとしても機体は動くか無かった。
不意に影が機体を覆っていた。
『逃げろ!神野!』
「え?」
ウィンドを見ると、そこには要撃級が居た。
まるで地面に這い蹲る私を見下ろし、笑っているかのように。
(あぁ、私ここで死ぬのか)
腕を振り上げるモーションがゆっくりと見える。
走馬灯というやつなのだろうか。
ゆっくりと、要撃級の腕が動き始めた。
大尉が何か言っているが、うまく聞き取れなかった。
私は、来るであろう衝撃を想像し目を閉じた。
(ごめんね、彩。約束、守れないや)
死を覚悟した、が要撃級の腕は振り下ろされることは無かった。
『ふぅ。危なかったなぁ譲ちゃん』
目を開くと、そこには要撃級ではなく白い戦術機・瑞鶴が立っていた。
その手には長刀が握られていて、BETAの体液が付着していた。
『おい!そっちの坊主は生きてるか?』
『まだ息はあります!ですが、出血が酷くこのままでは命にかかわると思われます』
『よし、この譲ちゃんとその坊主を2個小隊で後方に連れて行け!その2人の状態が安定するまでそこで待機だ!息子の友人だ。絶対に死なせるな!』
『了解!』
私の吹雪が両脇から瑞鶴によって支えられ、起こされる。
翔太の吹雪は抱きかかえるようにして持ち上げられた。
機体が揺れ、大尉の機体やミリィの機体が遠ざかっていく。
揺れる際に体へと突き刺さっている金属片が痛みを私に与える。
(あぁ、私、まだ生きているんだ)
私はそのまま気を失った。

<明仁>
俺がその報告を受けたのは鈴乃と唯衣の機体の装備および推進剤補給をするために一時的に後退しているときだった。
内容は、翔太と美穂が光線級に攻撃され、戦線を離脱したということだった。
それを聞いた彩は一瞬錯乱状態になったが、生きていることが分かって今は落ち着いている。
「それで、2人は大丈夫なんだな?」
『はい。ただ、翔太君はレーザーで両足を無くしたそうです。美穂さんのほうも助けてくれた部隊の黒田徳人って言う隊長さんが言うには出血多量と下半身と背骨に金属片が突き刺さっていて危ない状態だそうです』
「え?黒田・・・徳人だって?」
『はい。隊長さんは黒田徳人少将と言っていますが、もしかして黒田さんの知り合いですか?』
「あ、あぁ。俺の親父だ」
まさか斯衛が、しかも第12戦術機甲大隊が参加することになるとは思いもしなかった。
いくら数少ない実戦部隊であろうとそう簡単に参加することは出来ないはずだ。
それに、少将という立場上親父が直接出ることはさらに難しいはずだ。
(今度はいったい何をしでかしたんだよ・・・親父は)
いつも何かを仕出かす親父のことだ。
今回も雅人様に迷惑をかけたのだろう。
(・・・雅人様、白髪、また増えるんだろうな・・・もう真っ白だけどさ)
『明仁様。補給完了しました』
『こちらも終了しました』
話しているうちに2人の補給が終わったようだった。
俺の機体はこの場では補給が出来ない。
(この場で使えるのは65式短刀くらいしかないな)
俺も補給コンテナへと向かい、65式短刀を取り装備する。
『この不知火・壱型丙という機体。推進剤の減りが異様に早いですね』
『仕方ないさ。発展性の無い不知火を無理に改修しているのだ。後は鈴乃の腕しだいだろう』
確かに不知火は発展性の無い機体だ。
でも確か、弐型ってのがあったはず。
(あれ?でも開発されるのはいつだったっけ)
『お兄様?どうかなされましたか?』
「え?あぁ、いや、なんでもない」
余計な心配をさせたようだ。
(この件はこの戦闘が終わってから考えるか)
『そうですか。こちらはいつでも大丈夫です」
「分かった。実は、今ここに第12戦術機甲大隊が援軍として来たらしい」
『おじ様が!?』
『なぜ黒田少将がこのような場に?』
「分からないが、まぁあの馬鹿親父のことだ。特に理由がなくても来るだろう」
確か明星作戦のときも参加しようとしていたはずだ。
自分の立場を考えない親父らしい行動と言えばそうなのだが。
「ともかく、後方はこれで固まった。後は俺たちでできる限りの光線級たちを潰すだけだ」
今はとにかくレーザー属種を潰すことが最優先事項。
補給コンテナから短刀を2振り取り出す。
これが今できる最大限の補給だ。
(帝国は・・・大隊規模がこっちへと移動中か)
上陸したBETAの7割は殲滅できたはずだ。
後はレーザー属種さえ潰せば艦砲射撃と戦車、MLRSで潰すことができる。
俺は跳躍ユニットに火を入れ、機体を加速させる。
鈴乃と唯衣がそれに続く。
跳躍ユニット主機の出力が次第に上がり、巡航速度に達する。
レーダーが正面にBETAの集団を捉えた。
「前方11時要撃級10!突撃級8!小型には構うな!」
『『了解!』』
ガンマウントから120mmAPCBCHE弾を左右4発発射し、直撃、衝撃、爆風で要撃級と突撃級にダメージを負わす。
俺に続いて鈴乃と唯衣がダメージを負った要撃級と突撃級へ36mmを撃ち込み、止めを刺していく。
『あっ』
撃ち洩らしたのか、唯衣が機体を止め戻ろうとした。
「戻るな!仕留め切れなかった奴は後から来る帝国に任せて俺たちは目玉潰すぞ!次!2時要撃級9!突撃級4!」
『『了解』』
俺はさっきと同じように120mmを3発放ち、前へと進む。
撃ち終えた弾倉が強制排除され、新しい弾倉が自動装填される。
鈴乃と唯衣も同じように仕留められる奴だけを仕留め、深追いはしない。
「うぉぉぉ!!」
俺は最大速度で通り過ぎる突撃級の側面へと向かい、短刀で脇を切り裂く。
突撃級の亡骸は体液を撒き散らし、勢い止まらず小型種複数と要撃級を巻き込んでいった。
後続にいた2体の突撃級が止まりきれず、先ほどの亡骸へと衝突する。
それが連鎖していき、突撃級は自らの突撃で仲間を殺していった。
(・・・馬鹿だな)
『はぁ!』
『せやぁ!』
一方鈴乃と唯衣は長刀で突撃級に平面機動挟撃を仕掛け、仕留めていた。
長年の付き合いのためか絶妙なコンビネーションで戦っている。
(2人が武御雷に乗ったらいい前衛コンビになるな)
武御雷の近接戦闘能力なら2人の技術を100%引き出すことができるだろう。
事実元の世界、というか未来では武御雷を十分に使いこなしていた。
部隊こそ違うが、この2人の連携は長く同じ部隊で共に過ごしたかのように見える。
「この調子で―」
と、言いかけた時、アラームが鳴り響いた。
「何が―うぉ!」
「うぅっ!」
機体がいきなり自動回避を始め、急激なGが俺と彩の身体を襲う。
アラームの正体が光線級によるものだと理解したのは右肩先端部分をレーザーがかすり、溶かされてからだった。
溶かされた部分から火花が散り、ウィンドには左肩スラスター使用不可そしてスラスター部分が真っ赤に表示されていた。
(あ、危なっ!)
ほんの少しでも遅かったら管制ユニットをごっそり持っていかれていただろう。
辛うじてM5システムのお陰で避けられたような物だが、迂闊だった。
(俺がしっかりしないでどうする!)
今、この機体に乗っているのは俺だけではない。
彩も共に乗っているのだ。
こんなところで死なせるわけにはいかない。
「大丈夫か?彩」
「だ、大丈夫・・・」
そうは言っているがバイタルモニターを見る限り外面的な問題は無いが、息遣いなどから推測してかなり身体にきているだろう。
心拍数もかなり上がっている。
もしかしたら加速度病になりかかっているのかもしれない
それもそうだ。
高速巡航での3次元多角機動などは並みの戦術機ではできない。
まして吹雪しか乗ったことの無い彩にとっては苦痛でしかないだろう。
『お兄様!大丈夫ですか!?』
「心配ない!それより次がくるぞ!」
鈴乃が心配したのかこちらへ来ようとしたが、そんな暇は存在しない。
インターバルを終えた光線級が再度こちらへと照準していた。
「クソが!」
俺はガンマウントから残っている120mmを全弾光線級共へと撃ち込む。
だが、光線級から放たれたレーザーとかぶり、12発中5発が蒸発した。
生き残った7発も間に入ってきた要撃級や突撃級に阻まれ、命中したのは僅か3発のみだった。
鈴乃と唯衣も120mm、36mm砲弾を撃つが他のBETAが邪魔でうまく当たっていないようだ。
削れたのは光線級僅か4体のみだった。
『明仁様!このままでは!』
「あぁ。分かっている」
分かっている。
このままではいずれ退路を失い全滅するのは目に見えている。
それに、さっきから洋上からの艦砲射撃と戦車からの支援の勢いがなくなり始めている。
どちらにせよ支援が不十分な状態でこのままはまずい。
「そうなれば、やっぱりこれしかないか!」
俺は短刀を捨て、XCIWS-2Bを装備する。
突撃砲による殲滅が難しいのなら後は長刀で斬り込むしかない。
ここで立ち往生しているくらいなら出来るだけ攻め込み、光線級達をより多く倒しておいたほうがいい。
「鈴乃!唯衣!援護頼むぞ!」
『承知!』
『分かりました!』
「・・・行くぞ!」
俺はフットペダルを踏み込み、最大速度でBETAへ突撃を開始した。







あとがきめいたもの?

更新が遅れて本当に申し訳ありません。
ごめんなさい。
時期的にいろいろと事情が重なってしまったことと自分が入院していたことが重なってかなり遅れました。
学校から家に帰っても課題が山積みでキーを打つ時間が本当に取れませんでした・・・
いろいろと間が開いてしまったため第8話は大分継ぎ接ぎになったような気も・・・・・・
ご指摘がありましたら何なりと言ってください。

収縮し始める戦闘。
一方香月博士はミリィに関してとある確信にたどり着いた。
それは、ミリィの出生にかかわり、そして香月博士にとっても無視しがたい事実だった。
次回も出来ればご覧ください。

PS
トップにも書きましたがTE編での試験小隊名とYF-23SBの和名を募集しています。
ご協力お願いします。


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