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No.16077の一覧
[0] Muv-Luv Alternative TOTAL ECLIPSE その手で守る者(本編更新)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:23)
[1] 第1話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[2] 第2話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[3] 第3話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[4] 第4話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[5] 第5話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[6] 第6話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[7] 第7話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:32)
[8] 第8話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 14:59)
[9] 第9話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/07/07 04:56)
[10] 第10話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/08/24 04:03)
[11] 第11話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/09/13 04:05)
[12] 設定(1999年時)[鬼神「仮名」](2011/03/17 08:27)
[13] 第12話(TE編)(1)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:25)
[14] 第12話(TE編)(2)[鬼神「仮名」](2011/08/16 03:37)
[15] 本編関係無しネタ ウィル達を勝手にすくってみました[鬼神「仮名」](2010/08/13 18:04)
[16] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(1)[鬼神「仮名」](2011/06/28 03:19)
[17] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(2)[鬼神「仮名」](2011/07/09 18:06)
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[16077] 第7話(1999年編)
Name: 鬼神「仮名」◆af4fba6e ID:97b06adb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/22 01:32
午前7時半頃
新潟沿岸部
第1防衛ライン周辺

<明仁>
明仁とA-01は訓練部隊とは別行動をとっていた。
理由として国連の中隊が訓練部隊と始めから行動を共にしていると目立つからだそうだ。
それ以前に国連と言うだけでこの場で目立っているし意味は無いと思うのだが・・・まぁ、そこはさすがに伊隅大尉でなくても分かっているだろう。
『我々はBETA上陸開始を確認したらB小隊とC小隊を訓練部隊の護衛へ、A小隊は黒田大尉の後方援護だ。黒田大尉もこれでいいか?』
「そのつもりだけど?本当は1人の方がこの場合は楽でいいんだけど、博士がそういうんだから仕方ないさ」
実際電磁投射砲は取り回しが難しいため密集での使用は向いていない。
間違って味方を撃つなんて事はごめんだ。
だが、博士は最低限ということでA-01の1個小隊を俺につけるよう伊隅大尉に言ってきた。
まだ、俺に死なれては困るようだ。
「本当ならここまでしなくてもいいと思うんだけどねぇ」
『黒田大尉も苦労していますね』
「伊隅大尉ほどではないですよ」
伊隅大尉は苦笑した。
『CPよりヴァルキリーズ及びホワイトグリント01へ。震源の移動を感知。BETAが進行してきている。推測される予想時刻は0800だ。BETA出現を確認しだい艦船による艦砲射撃を開始する。以上だ』
『聞いたな?お前たち!BETAが出現したら予定通りB小隊とC小隊はひよっ子たちの護衛だ!』
通信越しに隊員達の声が聞こえてきた。
「いい部隊ですな」
『えぇ。自慢の部下たちですよ』
「それにしても、1時間も早いとは。本当に、BETAとの戦いは何が起こるかわからないですな」
『そうですね』
「あ、ちょっと向こうの仲間と連絡を取りたいのですが構いませんか?」
『テルミドール中尉のことか?別に禁止されているわけでも無いので平気だが』
「わかった。じゃぁちょっと連絡してるので、何かあったら教えてください」
『了解。程々にな』
俺は秘匿回線でミリィへと通信を繋いだ。
『あれ?黒田さん?』
ウィンドにミリィの顔が映る。
久々の実戦ということもあって若干緊張しているようだ。
「そっちはどうだ?」
『もうすぐ目的のポイントに着きます。黒田さんは?』
「俺はもう着いたよ。BETAの上陸予想時間が1時間早まったが、そっちには連絡が行ったか?」
『いえ、何も』
どうやら帝国はもっとも後方に位置する部隊、つまり207訓練部隊のところへは通信を送っていないようだった。
(帝国は何を考えているんだ?まぁ、始まれば始まったで分かることだろうが)
「そうか。まぁ始まれば艦砲射撃の音で分かるか。とりあえずA-01から2個小隊ほどがそっちの護衛に付くし鈴乃や唯衣ちゃんもいるんだろ?訓練部隊のほう頼むな」
『分かりました。黒田さんもがんばってください』
「あぁ。じゃぁな」
俺は秘匿回線を切った。
「しかし、何故唯衣ちゃんがここに」
鈴乃がいるのは分かる。
情報をリークした時点でそのことは考えていた。
しかし、何故この場に唯衣ちゃんがいるのか。
それが不思議でならない。
俺の記憶では今は確か斯衛の実戦部隊である白い牙中隊にいるはずだ。
こんなところにいるはずが無いのだが。
(巌谷中佐あたりが動いたのか?)
おじ―――中佐ならこの機体に興味を持つことだろう。
あの人はどちらかといえば国産機主義の固い連中とは違い取り込める技術は貪欲とまでは言わないが取り入れていく人だ。
それに、中佐は俺のことをかなり気に入ってくれていた。
となれば、この機会を見逃すはずが無い。
『黒田大尉、BETA予想上陸時間まであと15分です。そろそろ移動を開始しては?』
「そうだな。それじゃ、後方頼むな。できれば100mくらいは離れていてくれ」
『了解した』
俺はA-01A小隊と共に、もっとも前面へと出ている帝国軍第14戦術機甲大隊の元へと向かった。
『そこの衛士、所属と名前と階級を述べよ』
「斯衛軍第12戦術機甲大隊所属黒田明仁。階級は大尉だ。後方に待機しているのは国連からの派遣部隊だ」
それを聞いた帝国軍の衛士たちは動揺し始めた。
『こ、斯衛!?』
『何故ここに!?』
『おい、それに斯衛の第12戦術機甲大隊の黒田って・・・』
『あの黒田少将の息子の!?』
やはり斯衛と第12戦術機甲大隊、そして黒田の名は目立つようだ。
『お前ら黙れ!・・失礼、私はこの大隊を指揮している武島少佐だ。しかし、斯衛の実戦部隊所属である貴方が何故国連と共にこのようなところに?』
「帝国には新型機のお披露目とその新型機による単機での師団規模BETA殲滅をすると伝えてあるらしいが、少佐は聞いていないか?」
『一応は聞いているが・・・それが新型機か?』
「そうだ。とはいってもまだ完成はしていないが」
『噂に聞く斯衛専用機か?』
確かに斯衛専用機である武御雷は現在開発されているがアレの配備は2000年だ。
「いや、これはどちらかというと新技術の概念検証機と言ったところか。取り合えずは今のところは俺専用機扱いになっている。この機体はどちらかというと米国の技術が使われているのでな」
『ふむ。しかし何故そこに国連が?』
「国連、というよりは香月博士が携わっていいてまぁその護衛として国連の部隊をよこしてきた、ということで理解していただきたい。さすがに斯衛の中でこの技術は使えないので米国とのコネを持つ香月博士に協力をしてもらったというわけだ」
『そうか。そちらも苦労をしているようだ』
『隊長!震源が浅くなってきています!BETAの上陸が近いようです!』
『分かった。黒田大尉、お話はここまでのようですな。我々はこれより任のためこの場を離れます。武運を』
「そちらもな」
武島少佐率いる36機の陽炎が跳躍ユニットを噴かせ、一斉に移動を始めた。
同じタイミングで管制ユニット内にアラームとBETA出現を表すコード991が表示された。
『BETAの上陸を確認!繰り返す!BETAの上陸を確認!』
CPの通信が入ると同時に洋上からの艦砲射撃が沿岸部へと飛んできた。
頭を出した突撃級や要撃級が飛んでくる砲弾によって次々に粉々になっていく。
だが、BETAの上陸はその程度では収まるわけが無い。
次々にBETAが上陸していき、次第に艦砲射撃では対処しきれなくなってきた。
地雷が突撃級を足止めする。
効果的な方法であるが、それでもBETAの物量の前では気休め程度にしかならなかった。
「BETAとの戦いなんてそんなものだろうがな」
俺は電磁投射砲を選択する。
背面に装備されていた砲身が沸き下より現れ、甲高い充電音が周囲に響く。
ウィンドに発射準備完了との表示が映し出された。
「ホワイトグリント01よりHQへ」
『こちらHQ。どうした?』
「洋上艦隊の艦砲射撃をやめてくれ。事前に打ち合わせたとおりにこれよりフェイズ1へと移行する」
『了解した。非常時にはこちらも艦砲射撃を開始させてもらう。幸運を』
通信が終わった直後に洋上艦隊からの艦砲射撃が止まった。
「本当に博士は無茶なことを言う」
出撃前に博士から通信があった。
内容はある程度のBETAが上陸したら艦砲射撃を止めさせ、BETA群へと突入するというものだった。
無論に洋上に待機している帝国艦隊には伝達済みだそうだ。
俺は新潟に着き次第艦隊旗艦でありHQでもある最上へと通信をし、事前に打ち合わせを行った。
艦隊指揮官には同情され、通信士には何度もがんばれという言葉を貰った。
「さてと、派手にいきますかぁ」
俺は安全装置を解除しトリガーに指をかける。
居ないとは分かってはいるが一応レーダーで前面に味方機がいないことを確認し、トリガーを引く絶好のタイミングが来るまで待つ。
地雷で出来た噴煙が少しずつ晴れてきた。
ウィンドに噴煙の中からこちらに向かってくる影が映る。
「フォックス1!」
トリガーを引くと同時に36mmの砲弾がローレンツ力で加速し、発射されていく。
発射された弾は地雷原を越え、突出してきた影―突撃級の強固な装甲を貫通し致命的ダメージを負わせていく。
貫通した弾はそのまま後続の突撃級や要撃級にもダメージを与えている。
だが、
「やっぱり数が多いな」
いくら威力があってもさすがにこれだけではBETAの物量には勝てない。
ガンマウントを展開し、電磁投射砲とマニピュレーター及びガンマウントの突撃砲を組み合わせてBETAへ36mm砲弾と120mm砲弾を撃ち込む。
電磁投射砲から放たれた36mm砲弾が突撃級や要撃級に致命的ダメージかそれに順ずるダメージを負わせ、突撃砲の36mm砲弾で止めを刺し、120mm砲弾が小型種などを吹き飛ばす。
だが、それでも一向にBETAの数は減らない。
「数が多いんだよこん畜生がぁ!」
俺は愚痴りながらも突撃砲と電磁投射砲を駆使しBETAの群れへと接近していく。
だが、接近と同時に電磁投射砲から砲弾のローディング音が途絶えた。
ウィンドにはエンプティマークが点滅している。
「もう弾切れかよ」
俺は弾倉を強制排除し、ナイフシースを取り外し代わりに備え付けた電磁投射砲用予備弾倉保持アームから弾倉をリロードする。
試06型は99型を改良して作った36mmタイプの電磁投射砲だ。
主電力を本体であるYF-23SBの核反応炉から供給することにより小型化。
連射速度も99型の時の問題点と改善点を考慮し、毎分1200発ほどにし、冷却性、耐久性、砲身の過熱問題などをある程度クリアしている。
また重量軽減のため99型のようなベルト給弾式ではなく弾倉式にした。
さまざまな問題点を改善はしたがそれでも問題は残っている。
装弾数と威力だ。
突撃砲とは比べ物にならないほどの連射速度を誇っているため、5000発しかない弾倉ではすぐに底を尽くのだ。
また、36mm砲弾を使用するため99型よりも威力や貫通力は減少している。
(だが、無いよりかはマシか!)
突撃級の突撃を避け、その大きな尻に突撃砲で36mm劣化ウラン弾を食らわせる。
「そろそろ電磁投射砲じゃきついか」
ここまでBETAの群れに接近しては取り回しが悪い電磁投射砲は逆に邪魔になる。
電磁投射砲をマウント状態へと戻し、手にする突撃砲を腰部の保持アームに固定。
長刀を抜き、そのまま目の前にいる要撃級へと切りかかる。
顔とも見えるその感覚器官を切り落としながら機体を跳躍ユニットと各所に備わっているスラスターを使い捻るようにして回転させる。
その回転を利用し、長刀で群がってきた要撃級を斬る。
長刀では届かない位置にいるBETAにはマウントしている突撃砲で攻撃をする。
「まだまだぁ!」
俺は噴射跳躍でさらに奥へとBETAの群れへ侵入した。
逆噴射で小型種を吹き飛ばしながら着地し、すぐさまその周囲一帯にいるBETAを長刀で薙ぎ払い、突撃砲で撃ち殺していく。
群がる要撃級を120mmでミンチにしていく。
「まだまだぁ!」
俺はそのままBETAを斬り捨てながら前進していった。

それから1時間がたった。

「おらぁ!」
要撃級を長刀で一刀両断する。
「これでこのあたりのBETAは一掃したな」
俺はBETAの群れへと突入したが、あまりの数に一時後退していた。
第1防衛ラインまで後退し、そこで第14戦術機甲大隊と共にBETAを駆逐していった。
A-01A小隊は補給のために一旦第2防衛ライン周辺にまで下がっている。
俺の機体は日本の36mm弾倉や120mm弾倉とは形状が一致しないため補給は出来ない。
なので自機の突撃砲はなるべく温存し、落ちている突撃砲や長刀を使いながら何とかここまで戦ってきた。
それ以外は特に問題が無いのでこうしてこの場にいる。
「お、もう師団規模近くまではやったのか」
『・・・本当に単機で師団規模を相手にしたんですか?』
武島少佐が俺のつぶやきに唖然としながら言葉をかけてきた。
「まぁ、それが命令なんで」
ウィンドを見るとBETAの駆逐数がようやく師団規模まであと一歩というところとなっていた。
ふと、ウィンドに通信が入っている表示があることに気づいた。
『HQよりホワイトグリント01へ・・・ようやく繋がったな。前へ出すぎだ。おかげで艦砲射撃がまったくできなかったぞ。我々の見せ場が無かったじゃないか』
通信士は笑っていた。
「申し訳ない。だが、これも命令なので」
『はぁ・・・通信をしても返事をしない。途中で後退しなければ貴官ごと吹き飛ばすところだったぞ?』
「そ、それは危なかった。BETAを殺すのに集中していたのもで、つい」
本当に危なかった・・・・・・。
いまさらになって汗が吹き出てきた。
46cmや50,8cm砲弾が飛んでくると思うとゾッとする。
『BETAを殺すのに集中するのはいいが周りの状況をよく見ろ。これでは迂闊に撃てやしない。もう少し後ろで戦ってくれ』
「了解。しかし、何か不自然ではないですか?」
『不自然?一体なにがだ?』
「ここまで突出してきたにもかかわらずレーザー属種が見当たらない。もう上陸が始まってから2時間近くは立つ。そろそろ見えてきてもおかしくは無いのだが」
レーダーを確認してもどこにも見当たらない。
要塞級が現れ始めているというのにレーザー属種がいまだに出てこないのが不思議だ。
「BETAの動きが予測不可能なのは分かっている。だが、なんだか嫌な気がしてならない」
『BETAと戦って嫌な気がしないなんて聞いたことが無いが?』
「それはそうだが」
ふとレーダーを見る。
BETAを表す光点が沿岸部から広がってはいるが、始めのときよりもだいぶ収まってきている。
「とにかく、落ち着いているようなので部下と通信をしたいので援護頼めますか?」
『任された』
俺は秘匿回線を繋ぎ、ミリィへと通信を行う。
「01より02へ。そっちは大丈夫か?」
『はい。ですが、何かおかしくないですか?』
「やっぱりミリィもそう思うか?」
『はい』
やはりミリィも同じことを考えていたようだ。
『ずっとレーダーを見ていたんですが上陸したBETAの数が予想の7割程度しかありません。それに、レーザー属種がまったく確認できません』
ミリィのA-10にはこのYF-23SB以上に高精度なレーダーを搭載している。
ミリィがそういうのなら間違いない。
「こっちでも要塞級が上陸し始めているんだがレーザー属種を確認していない。やっぱりおかしいよな」
『はい・・・あれ?』
「どうした?」
『今微弱ですが地下で振動が・・・・・・これは!』
次第にこっちでも確認できるほどの振動がおき始めた。
そして、ウィンドにコード991が表示される。
『コード991!繰り返す、コード991だ!』
HQの叫びと同時に空へと無数の光線が立った。

10分前

<鈴乃>
私は唯衣と国連の訓練部隊と共にBETAが来るのを待っていた。
上陸が始まってすでに2時間近い時間がたっているが依然としてこちらに来る気配は無い。
(作戦が順調に進んでいるということか)
順調なのはいい。
むしろ早く間引き作戦が終わってほしいと思っている。
(早く・・・会いたい)
目の前にその大きな体をさらす機体、A-10の衛士であるレミリー・テルミドール中尉。
(何故、何故お兄様は彼女と一緒に行動を?)
国連での情報ではお兄様は香月博士の計画の手伝い的なことをしているらしい。
彼女がその計画に必要な人物なのだか知らない。
だが、先ほどからちょくちょく秘匿回線を使っている。
距離的にここから香月博士に通信をしているとは考えずらい。
なら、残る人物はお兄様だけだ。
今彼女だけがお兄様と喋っている。
今彼女とお兄様だけが繋がっている。
そう思うだけで胸が苦しくなる。
(そんなのは、嫌だ)
『鈴乃?どうかしたのか?』
「え?いや、なんでもない・・・」
『そうか。なにやら深刻そうな顔をしていたからな。何も無いならそれでいい』
「そう・・・ごめん」
(顔に出てしまっていたのか)
自分ではそう思っていなかったが・・・これではいけないな。
「現状は?」
『相変わらずこっちにBETAが来る気配は・・・・・・まて?』
「どうした?」
唯衣がなにかを発見したようだ。
『微弱な振動が・・・・・・近い!』
それと同時に振動と、ウィンドにコード991が表示された。
『BETAだ!鈴乃、周囲警戒!』
「了解!」
私が行動を始めると同時に地面から噴煙が舞い、地中からBETAが現れた。
だが、現れたと同時に横から飛来した弾によって次々に死んでいった。
『鈴乃中尉、ここは私が抑えます!出来れば訓練部隊のほうを頼みます!』
それはレミリー・テルミドール中尉だった。
彼女が駆るA-10が持つMK57中隊支援砲とGAU-8が火を噴き、10kmはあろう先にいるBETAをあっという間に死骸にして積み上げていく。
(有効射程外だというのに、なんという腕だ!)
A-10の装備は10kmも先に届くものは無い。
テルミドール中尉は弾丸が重力によって落ちていくことや砲身の角度を手動で調整して攻撃をしているのだ。
並大抵のことではない。
だが、それも長くは続かなかった。
管制ユニット内に警告音が鳴り響いた。
「第1級光線照射危険地帯警報!?」
それと同時にレーザーが飛び交い、戦車に、戦術機に、その猛威を振るい始めた。
機体がレーザーの照射を受ける前に回避機動を取る。
戦術機には自動でレーザーを回避するように設定がしてある。
だが、どうしても足の遅い第1世代戦術機では避けきれないこともある。
『く、くそぉ!足がぁ!俺の足がぁ!』
『支援砲撃を!支援砲撃をくれ!このままじゃ全滅しちまう!』
『くそ!光線級の排除を専念だ!部隊を早く展開させろ!』
『く、くるなぁ!近づくんじゃねぇ!あぁ・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
さっきまで優位に進んでいたが、予想もしないところからのBETA襲撃。
それもレーザー属種が現れたことによって事態は変わった。
「神宮寺大尉!そちらは平気ですか!」
『平気です。被害は無いです。ですが、訓練兵たちが使い物になるのだろうか』
訓練兵たちはいきなりのBETA出現とレーザーの恐怖を目の当たりにし、戦車級に食い殺され、突撃級に押しつぶされ、要撃級の打撃で死んで行った衛士達の声を聞き精神的に大分来ているらしい。
『今のところは耐えてはいますが、駄目だと判断しましたらこちらでHQへ許可を取り、後催眠暗示を施します・・・本当はしたくなは無いところですが』
「分かりました。我々も最善を尽くします。どうか、がんばててください」
とは言ったものの、現状はそこまでいいものではない。
戦車部隊とMLRS部隊はAL弾およびALMへの交換をしている。
洋上艦隊もAL弾への交換で5分以上は時間が必要だろう。
(その時間が踏ん張りどころか)
艦砲射撃と戦車砲、MLRSさえ機能すれば大分楽になる。
それまでは我々戦術機部隊が何とかしなければならない。
(だが、どうする!?こっちはひよっ子共を抱えているし、戦力的に見てもとてもじゃ無いが対抗できるとは思えない)
第1防衛ラインからの増援は見込めないだろう。
艦砲射撃が始まるまで後4分弱。
(何か・・・手は無いのか?)
『こ、来ないで!近寄るなぁ!』
『彩!』
1機の吹雪に数匹の戦車級が取り付いていた。
『いやぁ!近づかないでぇ!あっちいってぇ!』
戦車級は容赦なく吹雪の脚部を食い千切っていく。
『彩!動かないで!今取るから!』
だが、混乱しているためその言葉は届かず、余計暴れるだけだった。
こんな状態ではうかつに突撃砲も短刀も使えない。
次第に戦車級が管制ユニットへと近づいてゆく。
『2番機に鎮静剤を!動かなければ対処が出来る!』
『駄目だ!遠隔操作を受け付けない!』
『助けて!誰か助けてぇ!』
「くそぉ!」
管制ユニットに戦車級が辿り着いた。
私はもう駄目だと思った。
だが、戦車級は体液を待ち散らし、崩れ落ちた。
取り付いていた他の戦車級も次々と飛来する弾丸によって崩れ落ちていく。
「・・・え?」
『だ、大丈夫!?彩!』
『おい、これって・・・』
『鈴乃・・・これはいったい』
私は、弾丸が飛んできたほうへとカメラを向けた。
そこには突撃砲を構えた1つの黒い機体がいた。
「・・・お兄様?」
『ん?何だ?鈴乃』
その声は間違いなくお兄様の声だった。

<彩>
私は涙を流しながら喚いていた。
初めての実戦。
BETAの脅威。
それを目の当たりにして体が硬直した。
そして、いつの間にか戦車級に取り付かれていた。
機体の足が食われていく音が自分が死ぬまでのカウントダウンのように聞こえ、私はなす術が無かった。
(嫌だ!嫌だ!こんなところで死にたく無い!まだ、何も伝えてもいないのに!)
頭の中に黒田君の姿が映った。
走馬灯というやつだろうか。
死ぬんだ、と思った。
管制ユニットのハッチが食い破られ、硫黄のような匂いと共に戦車級の顔とも呼べる部分が見えた。
(あぁ、もう死んじゃうんだ)
そう思った。
だが、目の前に移る戦車級は体液を撒き散らしながら吹き飛んでいった。
「え?」
機体に取り付いている戦車級が次々と崩れ落ちていく映像がウィンドに映った。
『だ、大丈夫!?彩!』
『おい、これって・・・』
『鈴乃・・・これはいったい』
美穂や翔太君、神宮寺教官や篁中尉の声が聞こえてくる。
(私、助かったの?)
呆然とする中、白河中尉の声が聞こえた。
『・・・お兄様?』
そして、それに答えるよう聞きなれた声が聞こえた。
『ん?何だ?鈴乃』
それは間違いなく少し前まで一緒にいた人物だった。
「くろだ・・・くん?」
『大丈夫か?彩』
「は、はい!」
『間に合ってよかったよ』
黒田君はそういって苦笑した。
ウィンドには黒い機体YF-23SBが映っていた。
機体のあちこちに傷がある。
『黒田大尉、申し訳ありません。私が不甲斐無いばかりに』
『軍曹・・・今は大尉か。大尉が気に病むことじゃない。BETAとの戦いはいつ何が起こるか分からないんだからさ』
『しかし、大尉は第1防衛ライン方面にA-01A小隊と共にいたのでは?』
『こっちにBETAが出たって聞いてな。向こうは海軍と第14戦術機甲大隊のほうで何とかなるだろうって。数も相当減らしたからな。A-01A小隊は他のB,C小隊と合流して別に動いてもらっている。問題はこっちだ。さすがにここにレーザー属種が出てくるとは思わなかったよ』
黒田君はそう笑いながら答えた。
(・・・・・・本当に本物の衛士だったんだ)
イマイチ実感できていなかったが美穂や翔太君がこんなにもいっぱいいっぱいなのにミリィちゃんは私たちよりも落ち着いて行動をしている。
黒田君もこんな状況なのに笑っていられる。
(これが本当の衛士なの?)
1歳しか違わない2人に少し壁を感じた。
『明仁様、お久しぶりです』
『そう硬くなるなよ、唯衣ちゃん。もうちょっと柔らかくなったらどうだい?』
『明仁様もそう呼ばないでください!ここは戦場ですよ!・・・はぁ、しかしこの状態では柔らかくなろうにもなれませんよ』
『そうだな。現状はよろしくない』
黒田君や篁中尉たちが言うとおり現状は良くない。
沿岸部とこの第2防衛ライン上のBETA。
しかもこちら側にはレーザー属種がいて、戦力の大半は第1防衛ライン付近だ。
戦力的にきつい。
『彩の機体はもうどうしようもないな。よし、俺の機体に乗れ』
「え?・・・えぇ!」
突然の提案に私は驚いた。
他の人たちも同様に驚いている。
何しろ黒田君の乗る機体は博士が関わっている最新鋭の機体だ。
私なんかが乗れる機体ではない。
『大尉!その機体は博士の!』
神宮寺教官も同じことを思っているのだろう。
『今この状態で機密も何も無いだろう?人命が最優先だ。それに、これは俺が作った物だ。博士が作ったものじゃない。どう使おうが俺の勝手であろう?』
そう言ってハッチが開き、複座型管制ユニットが前進してくる。
そこには黒い99式衛士強化装備を着た黒田君が座っていた。
機体が跪き、その手を吹雪の管制ユニットへと近づけてくる。
『彩はまず手に乗ってくれ』
「は、はい!」
私は吹雪から出て、黒田君の乗るYF-23SBの手に乗った。
手が動き、複座型管制ユニットへと近づく。
「こっちだ」
黒田君が手を伸ばしてくる。
私は、その手を握り引っ張ってもらい、管制ユニットへと乗り移った。
私が後部座席へ座ると同時にユニットが後退し、ハッチが閉じる。
ハッチが閉じると各種電子機器が光り始める。
ふと、視界に1本の刀が写った。
斯衛では刀を帯刀している人は多く、高位の武家になるほどその確率は高いと聞いたことがある。
大抵はお守り代わりらしい。
「軽い鎮静剤だ。今は落ち着いているようだけど、念のためな?」
そう言って黒田君は私に鎮静剤を打ってくれた。
「それと、悪いが彩にはCPの真似事してもらいたい」
「真似事・・・ですか?」
「あぁ。というか喋り辛いだろうから前のとおりでいいからな」
「う、うん」
黒田君の言う真似事というのは後部座席での簡単なナビゲートすることらしい。
さすがに1人では戦域全てを把握できないそうだ。
「BETAがどう動いているかとか、味方がどこにいるのかとか俺が聞くからそれに答えてくれればいいよ」
「う、うん!」
「じゃぁマップを繋ぐな」
ウィンドに広域マップが映し出される。
「・・・す、すごい!」
映し出されたものは吹雪では到底足元にも及ばないほどの情報量を持つものだった。
マップ内の全ての戦術機の位置や、BETAの現在上陸が確認されている種類と数、その割合などが細かに表示されている。
『黒田大尉、指示をお願いします』
「へ?なんで俺?」
『現状この場でもっとも階級が上なのは大尉だけです』
神宮寺教官は大尉ではあるが臨時だ。
現大尉である黒田君のほうが発言権は高い。
それに確か博士が黒田君には大佐レベルの発言権が与えてあるらしい。
つまり、通常の大尉よりも実際の階級は高いということらしい。
「あぁ~、そうか。そうだな」
黒田君はマップを見る。
10km先にはBETAを表す光点が無数に動いている。
その中でも一際大きな光点があった。
「とりあえずはレーザー属種の駆逐が最優先だ。俺をトップとした鈴乃、唯衣の3機で行う」
その提案に、神宮寺教官が反対した。
『む、無茶ですよ大尉!さすがに敵の数が多すぎます!』
「無茶でも何でもやらなくちゃならないのが現実だ。そっちの部隊にはミリィを組み込む。さすがにA-10の足じゃ無理だからな。みんなを守ってやれよ?」
『分かりました!』
「彩、レーザー属種までの距離と数を」
「は、はい!えっと、レーザー属種との距離はおよそ10km、数は光線級が22、重光線級が10です!」
「まぁ、その程度なら平気だろう。そうだよな?鈴乃」
『はっ!この身に変えても』
「唯衣」
『分かりました』
2人は即答した。
「では、行くか!」
『『了解!』』
黒田君は跳躍ユニットを吹かし、進路をレーザー属種のいるほうへと向けた。

<明仁>
本当に、俺の提案は無茶だろう。
分隊以上小隊未満というこの不安定な部隊でレーザー属種を狩に行くというのだから。
(鈴乃と唯衣にも無理をさせるな)
2人はこの若さで斯衛でもそれなりの実力を持つ衛士だ。
だが、経験が圧倒的に不足している。
(・・・中佐、荒療治でもするつもりなんですか?)
おそらくだが、中佐が唯衣をこの場にこさせたのは実戦慣れさせるためなのだろう。
・・・本当に親馬鹿だ
「前方6km先より突撃級!数30!」
彩のナビゲートの声が自分の耳と通信機越しに聞こえてくる。
彩も始めての実戦でアレだけの思いをしたのによくがんばっている。
「了解!聞いたな?これよりBETAっていう波に乗るぞ!前方の邪魔な突撃級への攻撃はまず俺が行う!それに続いて2人が仕掛けろ!」
兵装・電磁投射砲を選択する。
「突撃級を叩いたらレーザー属種まで直進だ!やつらは仲間に当たるような攻撃はしない。うまく他のBETAを楯にして進むぞ!」
『『了解!』』
ウィンドに発射準備完了のアイコンが点滅する。
「行くぞ!」
安全装置を解除し、トリガーを引く。
放たれた36mm砲弾が突撃級のモース高度15度の硬さを誇るその装甲を貫いてゆく。
「うぅ!」
巡航速度以上で電磁投射砲を使っているせいか、振動が強く彩がうめき声を上げていたがここで止まるわけにはいかない。
4秒足らずで電磁投射砲の全ての弾薬が無くなった。
デッドウェイトになるので弾倉を強制排除する。
俺は続いてXAMWS-24を両手に選択する。
「鈴乃!唯衣!左右に展開!突撃級の穴を抜けながら殲滅!いくぞ!」
2人は俺が作った穴へ針が布を縫うようにして通っていく。
俺は、突撃級の横を通り過ぎながら柔らかい後部を突撃砲の銃剣で切りつける。
鈴乃や唯衣も長刀を使い、同じように通り過ぎる手前で後部に攻撃を与えていく。
突撃級の壁を抜けると、そこには66mの巨体ともっともよく見るタコ野郎が並んでいた。
「彩、敵の数は?」
「要撃級が40に要塞級が12です。あとは小型種が無数に・・・っく!」
彩の様子が少しだがおかしくなっている。
鎮静剤と急加速や急減速を行ったせいだろう。
吹雪では到底到達できないもののはずだ。
(これは早めに終わらせないと危ないな)
「目玉の周りにタコ助60体と要塞級が22体いる。チビには構うな!まずはこいつらを片付けるぞ!」
『『了解!』』
目の前に広がる要撃級と要塞級。
手早く片付けたいところだが遂行弾薬がそろそろ最後となりつつある。
(一応積めるだけ積んだんだけどな・・・弾倉)
この機体には通常のYF-23には無いウェポンラックが存在する。
機体の大型化の時余ったスペースを使って作ったものだ。
最大でXAMWS-24の36mm弾倉6つに120mm弾倉8つを積むことが出来る。
だが、現状36mmが2つに120mmが3つだ。
既にガンマウントの突撃砲は残弾0でマニピュレーターのほうは既に100発を切っている。
(ここにせめてAMWS-21でもあればなぁ)
アレなら機体とのマッチングがいいので戦力的にも使えるが、87式突撃砲ではマッチング出来ず、弾がなかなか当たらないのだ。
『ホワイトファング01フォックス2!』
『ホワイトグリント04フォックス2!』
鈴乃と唯衣が群れを成している要撃級へ120mmを撃ち込み、そこへ突入していく。
やはり旧知の仲である2人だ。
コンビネーションがいい。
「うだうだしてられないな」
「な、何か言った?」
「いや、なんでもないよ」
俺は残っている弾を全て適当に要塞級へと撃ち、空にする。
弾倉が排除され、最後の弾倉が2丁の突撃砲に自動装填される。
「邪魔なんだよ!」
目の前に現れた要撃級を銃剣で突き刺し、そのまま36mmを撃ち込む。
体液を撒き散らして絶命していく。
マップには現在位置と、ミリィがいる訓練部隊の位置が表示されていた。
向こうもBETAと戦っているようだ。
(さっさと終わらせないと、あいつらが危ない)
俺はフットペダルを踏みしめた。




あとがき
教習所がようやく第2段階になった作者です。
忙しいです。
4月10日までには卒業しなければならないです。(笑)
・・・言い訳です。(苦笑)
書く(タイプ)する時間がかなり無いですね・・・
1日30分あればいいところですよ。
そろそろ機体やキャラクター説明みたいなものでも書こうかと思っています。
早ければこれを投稿した日には上げるつもりです。

レーザー属種を殲滅するために行動をする明仁たち。
一方ミリィや神宮寺大尉率いる訓練部隊も死闘を繰り広げていた。
次回をもまたよろしくお願いします。


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