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No.16077の一覧
[0] Muv-Luv Alternative TOTAL ECLIPSE その手で守る者(本編更新)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:23)
[1] 第1話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[2] 第2話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:30)
[3] 第3話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[4] 第4話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[5] 第5話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[6] 第6話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:31)
[7] 第7話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 01:32)
[8] 第8話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/05/22 14:59)
[9] 第9話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/07/07 04:56)
[10] 第10話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/08/24 04:03)
[11] 第11話(1999年編)[鬼神「仮名」](2010/09/13 04:05)
[12] 設定(1999年時)[鬼神「仮名」](2011/03/17 08:27)
[13] 第12話(TE編)(1)[鬼神「仮名」](2011/07/13 02:25)
[14] 第12話(TE編)(2)[鬼神「仮名」](2011/08/16 03:37)
[15] 本編関係無しネタ ウィル達を勝手にすくってみました[鬼神「仮名」](2010/08/13 18:04)
[16] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(1)[鬼神「仮名」](2011/06/28 03:19)
[17] 思い付きでDAY AFTER EPISODE01での黒田たちを書いてみた(2)[鬼神「仮名」](2011/07/09 18:06)
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[16077] 第6話(1999年編)
Name: 鬼神「仮名」◆af4fba6e ID:97b06adb 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/05/22 01:31
1999年8月23日
日本帝国仙台基地
第10ハンガー

<明仁>
「これが戦車級駆逐機か」
「大きいですね」
俺とミリィの目の前にはその巨体をハンガーに納めたA-10が鎮座していた。
うわさ以上のゴツイ巨体だ。
両肩に装備しているGAU-8に大型弾倉。
そして膝部分に装備しているジャベリン。
A-10はまさに第1世代究極の姿だろう。
「小型種相手ならこれが一番いいって上層部が言っていたからね。とりあえずこれをもってきたわ。一応は最新型らしいわよ」
「てことはC型ですか。なるほど」
C型は確か性能を第2世代基準にまで上げたモデルだったはず。
それならOBWを採用してあるはずだ。
(なら、M5システムを搭載できるな)
「改修はしてもいいけどこれは使った後国連、言っちゃえば米国に返上するからやるなら適当にね」
「分かりました」
(まぁ、M5システムを解析するには俺のコードが必要だし、かまわないか)
M5システムには明仁の生体認証キーがなければその中を見ることすら出来ない仕組みになっている。
無理にすれば自動的に破壊されるよう仕掛けもしてある。
だからそのあたりは特に心配することではない。
「それと、ノースロックのほうから突撃砲や長刀短刀なんかが届いたわ。保守部品は間引き作戦後には届くらしいから。とりあえず覚えておいて」
「すみません」
「別にいいわ。じゃぁ私は行くわね」
そういい残して博士はハンガーから去っていった。
「とりあえず今日中にこいつを改修するぞ」
「分かりました。そうしないと訓練できませんからね」
「そうだな」
「それに、黒田さんの機体もまだ完成してませんからね」
俺の乗機であるYF-23SBは今だ完成していない試作機。
A-10も改修しなければならないが、A-10のほうは改修するだけだ。
それほど時間はかからないだろう。
問題は23SBだ。
博士は帝国側にYF-23SBを新型戦術機として公開するらしい。
その話を聞いたのが昨日だった。
さすがにA-10とYF-23SB両方を間に合わせるとなると訓練すら危うい状況だ。
「後1週間も無いんだよな。大変だ」
「そうですね。あ、そういえば美穂さんたちは対BETA戦闘訓練に移ったらしいですよ」
「そうか。まぁいずれはやることだが、あいつらはまだ訓練兵だ。俺たちが守ってやらないとな」
「はい!」

1時間後・・・

「なんじゃこりゃぁ!!」
明仁は叫んでいた。
A-10の改修作業を始めてから気づいた事がある。
(これ欠陥品じゃん!)
駆動系は滅茶苦茶、電子機器は何故か全滅、唯一使えるとしたらGAU-8、ジャベリンとそれくらいのものだった。
(俺の機体も完成させなくちゃいけないってのに!なんでこう!)
プツンと何かが切れた音がした気がした。
「はは、はははははははは!これは俺を試しているのか?そうなんだな!だったらやってやるよ!有無言わせない機体にしてやるよ!あははははははは!」
「く、黒田さんが壊れた!だ、誰か衛生兵を!メディックゥ!」
「あははははははは!」
それから数時間にかけて第10ハンガーに笑い声を上げながらA-10を改修する明仁の姿が多数目撃されたそうだ。
近くにいた整備兵の話によるとA-10に「お前いい装甲(肌)してるなぁ」とか「手のかかる機体(女)だなお前は」などと怪しい言葉を連呼していたそうだ。

8月24日午前7時頃
第10ハンガー

「で、出来たぁ!!」
「ふぁ~、出来ましたねぇ~」
2人の目の前には完成したA-10が鎮座していた。
駆動系などはさすがに2人では出来ないので整備兵に協力してもらった。
後は電子機器とM5システムの組み込みは2人だけで行った。
M5システムに関してはこの世界にはまだないものだ。
迂闊に表に出すわけにはいかない。
そのおかげで徹夜となってしまった。
最後のあたりになるとミリィも首をこっくりこっくりとさせ瞼も開いているのか閉じているのか微妙なところだった。
「ふぅ~、これでようやく寝れる・・・ミリィ、部屋に行って・・・て」
「すぅ~、すぅ~」
「寝ちゃったか。まぁいいか」
ミリィもよくがんばってくれていたし、ここで起こしてしまうのも可愛そうだ。
(ま、2時間くらいなら寝られるかな)
俺は寝ているミリィを背負い、自室へと向かった。

約5時間後
自室

<ミリィ>
「んぁ~。あ、あれ?」
気づくとすでに自室のベッドで寝ていた。
(私、いつの間に?)
自室に戻った覚えはない。
記憶もA-10が完成したあたりから消えている。
ふと、傍に誰かの気配を感じだ。
「え?」
すぐ傍、というか同じベッドにうつ伏せになって黒田さんが寝ていた。
「く、黒田さん!?」
「ぐぅ~!がぁ~!お、俺が悪かったぁ!だからもうやめてくれぇ!36mmなんて突きつけないでぇ~」
(へ、変ないびき・・・というか、どんな夢を見てるんですか?)
と、それはともかく何でこんな状況に?
(確か、新しい機体を改修して、それが終わってから、それから、えっと、あれ?)
その先の記憶が無かった。
(もしかして、私寝ちゃってたのかな?)
だとすれば、ここまで黒田さんが連れてきてくれたことになる。
たぶんだがそのまま疲れて寝ちゃったのだろう。
そう考えればこの状況を説明できる。
(黒田さん、ありがとうございます)
「そういえば今何時?」
壁掛けの時計を見るとすでに正午を回っていた。
「く、黒田さん!黒田さん!起きてください!もうお昼過ぎちゃいましたよ!黒田さん!」
「だから俺が悪かったぁ!もう変な装備つけないから許してくれYF-23SBぃ!」
「私はミリィです!起きてください黒田さん!」
その後、明仁が起きたのは1時になってからであり、担当整備兵たち全員に酒を奢ったそうだ。

8月26日
A-01用ハンガー

<明仁>
明仁はYF-23SBを見上げつつ悩んでいた。
(最大の問題だよなこいつは)
YF-23SBに積まれている試06型跳躍ユニット。
これは完全にワンオフパーツだ。
予備など存在しない。
(これを複製するのは間引きまでには間に合わないな)
この機体には詳細なステータスデータを取るために設計図が入力されている。
それを元に作ることは出来る。
だが、これには時間がかかる。
何しろ従来の跳躍ユニットとまったく違うのだ。
この跳躍ユニットを設計、開発しただけでも半年以上はかけていたのだ。
複製をするとしたら半月くらいは必要だろう。
パーツなどをそろえる必要もある。
「とにかく本格的な戦闘できるぐらいまでには仕上げなくちゃなぁ」
跳躍ユニット以外は殆ど完成している。
その仕上げくらいしておけばいいだろう。
(とにかく跳躍ユニットを仕上げる!)
俺は早速作業を開始した。

同日
シミュレータールーム

<まりも>
「次は大規模BETA群との戦闘プログラムだ」
『『『了解!』』』
まりもはシミュレーターの管制室で3人の様子を眺めていた。
(大分BETAとの戦いに慣れてきたな)
初めて見たときはその姿に怯えたり気分を悪くしたりとさまざまだったが、今では多少の興奮などがあるが皆慣れてきたようでメンタル的にも安定している。
『3時の方向よりBETA接近中!距離1000、数60!』
『俺が出る!彩、援護頼む!』
『了解!』
コンビネーションも概ね良好。
動きも悪くない。
だが、
(それでも、新兵には変わりない)
いくらBETAとの戦いに慣れたと入っても所詮シミュレーターだ。
実戦では何が起こるかわからない。
この子達が死の8分を生き残れるかも分からない。
シミュレーターで再現できることもあれば想像もしないことも起きる。
(仲間の断末魔や悲鳴を聞いたらこの子達はどうなるのだろう)
今となりにいる者がいつ死ぬか分からない。
そんな時、この子達は何を思うのだろう。
モニターに全員が戦死したとの表示が映る。
(これが、現実のものになったら)
そうならないことを祈るしか今のまりもには出来なかった。

8月27日
A-01用ハンガー

<明仁>
『各部正常起動してますね』
「見たいだな」
俺はミリィに機体チェックをしてもらいながらYF-23SBを動かしていた。
今日は電磁投射砲の試験を行う日だった。
ちなみに興味があるのか博士、それと正式な顔合わせということでA-01の面々が揃っていた。
A-10の方は昨日試験を行ったが特に問題がないので塗装を行っているところだ。
『博士が戦術機用射撃場の使用許可を取ってくれたので向かいましょう』
「了解だ」
あれから跳躍ユニットは実戦レベルにまではいたったが、100%の出力を出すことは出来ない状態だ。
リミッターを取り付けて80%しか出力を出せないが、それでも現存の戦術機を凌駕する速度を出せるので戦闘での問題はないだろう。
電磁投射砲も完成はしているが何が起こるか分からない。
何せまだ試作段階の兵器だ。
1度使ったとは言えちゃんと使えるのかどうかを調べる必要がある。
俺は使えなければ使えないで装備を担架に変えるだけだから撃てればいいという頭でいる。
だが、博士は電磁投射砲を撃つことを前提にしている。
何せ今回の目的が異常だ。
(師団規模のBETA殲滅か)
師団規模となれば1万以上のBETA群となる。
今回の予想個体数が約10万というのだから10分の1を相手にすることになる。
(確かに電磁投射砲は必要になるよな。10万なんて佐渡島の予想保有個体数だからな)
いくら横浜のBETAが合流したと言っても10万は多い。
それに、いかに高性能な機体であろうと単機で師団規模を相手にするのはきついというレベルの話ではない。
それこそフェニックスミサイルなどをフル装備でもしなければ普通は無理だろう。
(まぁ師団規模を相手にするって時点で無理な話だよな、普通は)
『黒田さん?着きましたよ?』
「あ?あ、もうついたのか」
考え事をしていたせいか、いつの間にか目的の場所へと着いていたようだ。
『タイミングは黒田さんのほうでお願いしますね』
「分かった」
俺は兵装を電磁投射砲で決定する。
稼動担架が展開し、電磁投射砲の砲身がYF-23SBの脇の下から現れる。
同じタイミングで正面に標的が現れる。
「発射する」
俺はトリガーを引いた。
ローレンツ力によって加速した36mm砲弾が砲身より吐き出され、標的を砕いていく。
メインカメラを博士たちのほうへ向けてみると、博士はうっすらと笑みを浮かべ、A-01の面々は驚いたような顔をしていた。
『発射試験はクリアです。次は耐久テストを行います』
「了解っと」
その後も電磁投射砲の試験は順調に進み、その全ての項目を終了した。
『黒田さん、博士が制服に着替えてからミーティングルームに集合とのことです』
「了解」
(さて、A-01の面子に会いに行くとするかな)
俺は着替えるためにロッカールームへと向かった。

ミーティングルーム

「えっと、博士から説明を受けたと聞いているが改めて自己紹介をする。帝国斯衛軍第12戦術機甲大隊所属の黒田明仁大尉だ」
「国連軍海外派遣部隊所属のレミリー・テルミドール中尉です」
俺は斯衛、ミリィは国連の制服を着てA-01の前へと立った。
「オルタネイティヴ計画第1戦術戦闘攻撃部隊第9中隊隊長の伊隅みちる大尉だ。とは言っても、もう知っているとは思うがな。あの時は助かった。礼を言う」
「いえ、そんなの結構ですよ。あ、ならあの時の約束で返してくださいよ」
「あぁ、分かった。しかし、斯衛とはな。あの時は米国所属と聞いたが、何か事情が?」
「まぁ、そんなとこです。俺こう見えても技官もやってるんですよ。戦術機弄くるんで一時的な転属です」
「そうか。その歳でよくやるな」
無論これは誤魔化す為の嘘だ。
(だが、さすが博士直属の部隊体長だ。聞かなくて良い事は分かってるみたいだな)
軍には『Need to Know』というものがある。
上役が知ってさえいれば下が知る必要はない。
軍とはそういう場所なのだ。
「さて、それでは私の仲間を紹介しよう」
みちるはA-01のメンバーを紹介していった。
隊員全員が女性のみの部隊。
何故ヴァルキリーズと呼ばれているのか今分かった。
「さて、自己紹介も終わったようだしこれから黒田・テルミドールの対BETA模擬戦と行きましょうかね?」
「「え?」」
「大丈夫よ。一応アンタとテルミドールの機体データはシミュレーターに入れてあるから。再現できる限りのところまでしか出来ないけどね」
「「はぁ」」
「伊隅たちも2人の実力は知りたいところだろうしね」
確かに、俺たちの実力を知ってもらうにはちょうど良いだろう。
A-01の面々も興味津々と言ったと様な顔をしている。
「分かりました。なら、フェイズ4あたりのハイヴデータでお願いします」
「あら、そんなに大きく出ていいの?」
「中隊規模ならフェイズ4で中層あたりが限度でしょうから。それを分隊で行って見せるということで俺たちの実力を知ってもらおうと思っただけですよ。それに、いい刺激にもなりますでしょうし」
その言葉に反応してA-01の様子が変わった。
「黒田大尉は分隊でフェイズ4を攻略するというのか?」
「えぇ。博士、機体データは『全て』入力されているのですよね?」
「入っているわ。でも、こちらで分かる範囲の物だけよ。ブラックボックスになっている部分は憶測での数値でしかないわ。乗る前に確かめて頂戴。調整はアンタに任せるから」
「分かりました。じゃぁ皆さんは管制室で見ていてください」
「分かったわ。伊隅、行きましょうか」
「分かりました博士。黒田大尉、お手前拝見させてもらおう」
「えぇ。期待し過ぎない程度に期待していてください」
「・・・・・・どういう意味だ?」
「さぁ?」
博士とA-01は管制室へと向かっていった。

シミュレーター室

俺とミリィは1、2番機に乗り込んだ。
「一応確認しましたが、まぁ規定の範囲内の誤差があるくらいでシミュレーターに使うにはいい具合ですよ」
各種ステータスを確認したが、特に問題は無い。
まぁさすがに主機の出力や最大速度などはしょうがないとして、電磁投射砲をかなり詳細に再現されているようだ。
跳躍ユニットに関してもかなり再現されている。
とりあえず装備は標準タイプでかまわないか。
『そう?なら特に変更するところはないわね?』
「ミリィも問題ないか?」
『はい!大丈夫です!』
「こっちは準備が整いましたのでいつ始めても構いませんよ」
『そういえばコールサインはどうする?』
「じゃぁホワイトグリントでお願いしますよ」
『分かったわ』
それからすぐにウィンドに地下茎構造の映像が映し出される。
『それじゃぁ初めて頂戴』
「了解」
『了解です』
俺とミリィは地下茎構造内を移動し始めた。

<みちる>
始まってから役1時間、みちるは目を疑うような光景を目の当たりにしていた。
たった2機の戦術機によってすでに中層近くまで到達していた。
すでに師団規模並みのBETAと戦闘をしたというのに2機には未だ損害は無い。
それどころか一方的にBETAを屠っていた。
常に飛んでいる黒田がテルミドールの進路を確保し、テルミドールの乗るA-10のGAU-8が黒田があけた進路周辺にいるBETAを薙ぎ払いながら進む。
電磁投射砲やA-10の重武装にも驚くが、それ以上に2人のコンビネーションにも驚かされる。
互いにカバーをし合い、無駄の無い動きを見せている。
(これが、この2人の実力だと言うのか!?)
いくら高性能は戦術機とは言えど、自分が使ったらここまでうまく行くのだろうか?
この2人のようなコンビネーションが出来るのだろうか。
皆も同じことを思っているのか2人の映像に釘付けだった。
『こちらホワイトグリント1中層に到着した。これより最下層へと向かう』
「了解よ。しっかし、あっという間に中層まで着いたわね。正直驚きよ」
『そうですか?中層までなら単機でも可能ですよ』
「・・・アンタ、本当に同じ人間なの?」
『失礼ですね。これでも普通の軍人だとっ!思ってますがっ!』
「そんな戦術機造ってる癖に普通とか言ってんじゃないわよ」
『ははははは』
喋りながらもBETAを着実に倒していく。
それも異常なほどの速度で。
「・・・・・・ずいぶんと余裕のようね」
「そのようですね。正直自分の目を疑いたくなりますが」
「そうね。でも、これであの2人の実力は分かったわよね?」
「えぇ。これ以上に無いほど。むしろ自分たちとは違う次元の人間なのだと理解を改めたところですよ」
「まぁ、そうね」
博士はモニターを見つめる。
丁度地下700mほどの地点を過ぎた時だった。

<明仁>
『前方と後方より旅団規模のBETA群接近!前方との距離1500、後方距離2000!』
「後方は無視する。前方1600にある広間まで噴射地表表面滑走しながら邪魔なBETAのみを駆逐する。その後に最短距離の横坑に入る」
『了解です!』
ここまでは順調に来た。
弾の消費が少々多いが、特に問題は無い。
ミリィの方も何も問題が無いようだ。
(中層は超えた。さて、どこまでいけるのやら)
『02フォックス2!』
GAU-8が正面に展開していたBETA達に劣化ウラン弾を降り注ぐ。
(考えても仕方ないか。行けるとこまで行くかぁ)
「01フォックス1!」

最下層反応炉まで約4000m手前付近

『こっちの残弾は0です!』
「こっちもだ。最初遊びすぎたな」
電磁投射砲は反応炉破壊のために最低限残しているため使えず、突撃砲の最後の弾倉も使い果たした。
ミリィのA-10も大型弾倉を排除し、使えなくなったGAU-8も強制排除している。
MK57中隊支援砲も俺が弾切れになるのと同じタイミングで弾切れになったようで投棄したようだ。
『すみません、短刀を貸してくれませんか?』
「おう」
俺はナイフシースに搭載していた短刀をミリィ機に渡す。
『反応炉まで後約4000m。その手前1000m付近に軍団規模のBETA群反応があります』
「長期戦は無理だな。よし、最短距離で反応炉まで飛ぶ。邪魔になるBETAだけ排除するぞ!」
『分かりました!』
俺は突撃砲を捨て、長刀を装備する。
「行くぞ!」

それから30分後
管制室

「なんともまぁ、随分と奥まで行ったわね」
「そうですか?最初のほうで師団規模なんて相手にしなければ多分反応炉まではいけたと思うんですけどね」
俺は博士とともにさっきのシミュレーターでの結果を見ていた。
結果的には反応炉は破壊した。
結果的には、だ。
反応路2000m手前でBETAに囲まれ身動きが取れなくなってしまった。
跳躍ユニットを暴走自爆させ、進路を作り、近づけるだけ反応炉に近づいてから自爆した。
「それでもアンタ1人で2万以上のBETAは相手にしてるわよ?しかも半分は接近戦で」
「そうですか?そんな感じはしなかったんですが」
「・・・アンタ、本当に同じ人間?」
「失礼な!これが普通ですよ!そう思いません?伊隅大尉」
そう言って伊隅大尉を見るとなにやら言いづらいような顔をしていた。
「え、あ、いや。私も博士と同意見なのだが」
「大尉まで!」
そして、その言葉にA-01メンバーとミリィですら頷いた。
「ミ、ミリィまで」
「さすがに分隊でのフェイズ4はちょっと普通じゃないですよ」
「え、いや俺斯衛にいたとき親父にこれくらいは普通だって教えられていたんだけど・・・・・・鈴乃も一緒だったし」
「・・・それきっとイジメですよ」
ミリィの言葉にその場の全員が頷いた。
「あ、あのクソ親父がぁ!」
叫び声が管制室に響き渡った。

同日
斯衛軍第12戦術機甲大隊用ハンガー

<鈴乃>
「おい!こいつは通常カラーに塗り替えるのか?」
「いや、カラーリングは露軍迷彩だ。間違えるな!?露軍だからな!」
「装備はどうするんだ?」
「C型の強襲前衛だ。間違えるな!」
ハンガーでは不知火・壱型丙の塗り替え作業と換装作業を行っていた。
「後2日か」
鈴乃はこの数日間で壱型丙を乗りこなせるようになっていた。
第1世代の瑞鶴から第3世代の不知火・壱型丙への機種転換は思いの他難しかった。
反応速度や機動性、挙動がまるで違うのだ。
だが、それでも乗りこなす必要がある。
(お兄様のために)
鈴乃はそれだけを胸に必死になって壱型丙の操縦訓練を続けた。
今では自分の手足のように扱える。
それに、
(自分には第3世代の戦術機の方法が合う?)
いつの間にか不思議と機体との一体感を覚えていた。
それは瑞鶴では味わえないものだった。
「それにしても」
鈴乃は壱型丙の横に置かれている物に目を向ける。
試製99型電磁投射砲。
現在開発が進められている世界初となる戦闘用電磁投射砲だ。
「開発が進められていると思ったらもうここまで完成していたのか」
「形だけね」
後ろから誰かがやってきた。
「ちゅ、中佐!」
「元気かい?鈴乃ちゃん」
その人物は帝国陸軍技術廠・第壱開発局副部長巌谷榮二中佐だった。
「どうしてこの場所に?」
「いや、娘の友人が単機で間引き作戦に参加すると聞いたのでな。出撃の前に話をしておこうと思って来たのだが、邪魔だったか?」
「いえ、そんなことは」
「なら、向こうで少し話をしよう」
私は中佐の後に着いていった。

「それにしても中佐自らお話とは一体どうしたのですか?」
私と中佐はハンガーにある整備士の休息所を借りて話をしていた。
しばらくは使わないということだったのでちょうどよかった。
「そんなに硬くなることも無いだろう。別に知らない仲ではないのだから」
「そう言われましてもこればかりは」
「はぁ・・・そういうところは唯衣ちゃんそっくりだな」
「私と唯衣が、ですか?」
「そういう堅苦しいところとかそっくりだ」
わははは、と中佐は笑って私の肩を叩いた。
唯衣というのは譜代武家である篁家の現当主であり、私の数少ない友人でもある。
斯衛内では生真面目で厳しい堅物などと割と有名人でもある。
中佐は唯衣の父親と友人だったらしく、唯衣の父親が死んでからは唯衣を引き取り親代わりとして育ててきたそうだ。
巌谷中佐といえば瑞鶴で当時最新鋭だったF-15Cを模擬戦で倒すなどの伝説的な記録を持つ有名人だ。
「唯衣は生真面目なだけですよ。きっと本心では中佐に甘えたいところなどがあるでしょう」
「そうか?唯衣ちゃんは俺を父親と見てないんじゃないかと思うときがあるんだが」
「そんなこと無いですよ。恥ずかしがっているだけですよ」
「それならいいんだがな」
そう言いながら目を細めて微笑した。
「で、話って何ですか?まさかそれだけのことを話だけでここにくる中佐じゃないですよね?」
「本当に唯衣ちゃんに似てるなぁ。まぁ、実際そうだがな」
さっきまでの緩い空気が一瞬にして変わった。
これが、歴戦の勇士の持つものなのだろう。
「話は今回の間引き作戦についてなのだが。鈴乃ちゃんは明仁君の生死を確認するための単独行動ということだったな?」
「はい。父と徳人様にはそうするようにと言われています」
「そうか。そこに唯衣ちゃんを入れてほしいのだが」
「唯衣をですか?」
「あぁ。いくら実戦部隊である白い牙中隊に所属しているとは言ってもまだまだ経験不足だ。少しは実践を踏ませてみたいのでな。瑞鶴では目立つので不知火を使うつもりだ。今回は国連側が1機で師団規模を相手にするとの虚言を言っているからな。まぁ、そうでなくても今回は洋上から戦艦での対地砲撃、戦車部隊の後方援護、戦術機1個連隊規模と戦力的には十分すぎる」
確かにそれだけの戦力をつぎ込めば10万のBETAに対抗することが出来るだろう。
「それに場所が場所だからな」
「場所、ですか?」
「確か国連の訓練部隊が第2か第3防衛ラインあたりに布陣してるはずだ。そのあたりに行ってもらおうと思っている」
「なるほど」
確かにそのあたりなら光線級でもない限りさほどBETAの脅威も無いだろう。
「それと、俺も国連、いや香月の言う新型機には興味があるからな。唯衣ちゃんに頼んで実際の映像を取ってもらおうと思っている」
「やはり、主席開発衛士時代などを思い出しますか?」
「まぁ、な。これでも開発局副部長だ。新しい戦術機となれば見てみたいものさ」
そういうと中佐は席から立ち上がった。
「時間をとらせて悪かったな、鈴乃ちゃん」
「いえ、中佐とお話が出来て良かったですよ」
「そうか。いつでも家に来てくれてかまわないぞ?唯衣も喜ぶ」
「はい。暇を見つけて伺います」
「そうか。明仁君、生きているといいな」
ではな、と言い残して中佐は休息所を出て行った。
「きっと、お兄様は生きていらっしゃる」
そう信じ、私は休息所を出た。

8月28日
日本帝国仙台基地
ブリーフィングルーム

<彩>
「いよいよ明日実戦か」
「そうね。まだ任官もしてないけど、私たち戦うのよね」
私たちは軍曹が来るのを待っていた。
今日は出撃前日、明日の作戦内容の説明を受けるためブリーフィングルームに来ていた。
「・・・黒田たちも明日参加するんだよね」
「そう言ってたな」
黒田君たちは現役の衛士、黒田君は斯衛の大尉でミリィちゃんは国連の中尉。
2人とも実戦経験は当然あるに決まっている。
そんな2人に私たちは守られながら戦うことになる。
「本当のところ、あいつらとは肩を並べて戦いたかったよ。同じ部隊で背中を守りながらな」
「うん」
いろいろと話しているうちに軍曹がやってきていた。
「敬礼!」
「話は終わったな?それではこれより間引き作戦の内容を説明する」
軍曹がディスプレイに新潟沿岸部の詳細マップを表示する。
「BETAの予想上陸時刻は29日午前9時頃。作戦はまず洋上、海中に待機する連合艦隊による機雷攻撃から始まり、次に海神による魚雷攻撃、BETAが上陸したらまずこのラインまでBETAを誘う」
そう言って沿岸部より150m付近を指す。
そこには無数の光点が移っていた。
「この地点周辺には地雷が設置してある。あらかじめデータを送るから後で詳しい位置を覚えておけ。次に戦艦による艦砲射撃とMLRSでの攻撃を開始する。それまで我々戦術機部隊の出番は無い。我々の出番は艦砲射撃やMLRSを逃れたBETAの駆逐だ。我々は第2防衛ラインと第3防衛ラインの間に布陣する。第3防衛ラインは言わば最終防衛ラインと同じだ。ここまでBETAが早々来るとは思えないがBETAとの戦闘はいつ何が起こるかわからない。後方だからといって気を抜くな?」
「「「了解!」」」
次に第2防衛ラインと第3防衛ラインが映し出されていた。
「第2防衛ラインにBETAが近づいてきたらまず戦車部隊が砲撃を開始する。我々は戦車ではカバーできない側面からのBETAを撃破する」
ディスプレイには戦車部隊の位置と戦術機部隊の位置が表示された。
「戦車部隊はBETAが来るであろう予想進路の正面に布陣している。我々戦術機部隊はこの両側面にて待機、BETAを側面から叩く」
軍曹はディスプレイを全体マップへと切り替えた。
「光線級の上陸が確認されたら帝国軍第12戦術機甲大隊が殲滅するために突撃する。その時点で我々は第3防衛ラインへと下がり、状況が終了するまで即応体制で待機。以上がこの作戦の内容だ。何か質問はあるか?無いならもう1つ話すことがある」
「話すこと、ですか?」
「あぁ。明日の作戦で、我々の布陣する位置に斯衛の2名の中尉殿が来ることになった」
「「「!?」」」
「斯衛軍第12戦術機甲大隊所属の白河鈴乃中尉殿と白い牙中隊所属の篁唯衣中尉殿だ。名前くらいなら聞いたことがあるだろう?」
確か、白河家と篁家は同じ黄色だったはず。
白河家は斯衛でもかなり有名であの斑鳩家とも親交がある譜代武家だ。
篁家は確か現当主が17歳で現在帝国軍の第壱開発局副部長で斯衛では伝説的な衛士である巌谷中佐が親代わりとなっていると聞いたことがある。
「あの」
「何だ?板井」
「第12戦術機甲大隊ってことは、あ―黒田大尉と何か関係が?」
そういえば、黒田君も確か同じ部隊だったはず。
「そうらしいな。黒田大尉の部下の1人であることは間違いないらしい」
軍曹はディスプレイの映像を消した。
「こんな形での初陣は例に無い。今夜の出発までに十分に休んでおけ。以上だ」
「敬礼!」
軍曹は何も言わずにブリーフィングルームを出て行った。
(明日、がんばらなくちゃ)
そう、心の中で意気込んだ。

8月29日
午前8時
新潟第2防衛ライン周辺

<鈴乃>
『この辺りか?』
「うん、間違いない。ここで合ってる。国連の部隊は後10分で着くみたい」
『そうか』
私と唯衣は国連との合流地点へと来ていた。
本来なら合流するはずがないのだが、急遽合流することとなった。
『鈴乃、明仁様は生きていると思うか?』
「分からない。だけど、死んだと分からない以上生きてると信じたい」
『・・・そうか。強いのだな、鈴乃は』
「強くないよ。ただ、本当のことを知りたいだけ」
『分かった』
レーダーに接近する機影を見つけた。
(5つ?)
『こちらは、国連軍第207訓練部隊指揮官神宮寺まりも臨時大尉です。鈴乃中尉と篁中尉で間違いないですか?』
『間違いない。遠いところご苦労だった。よろしく頼む』
「ところで大尉。黒田大尉の姿が見えないのだが」
そう、レーダーには機影が5つしか映っていない。
機種が撃震、吹雪、A-10と表示されている。
だが、明仁が乗っているのはYF-23という機体の改修機。
つまり、この場に明仁はいないのだ。
『黒田大尉は香月博士の提案ですでに第1防衛ラインのほうへと向かっています』
「な、何故?」
『後方にいては宝の持ち腐れだと』
「・・・そうか」
確かに師団規模を相手にすると香月は言っていた。
なら、ここではなく第1防衛ラインへと向かったほうが良いだろう。
『それと、黒田大尉からお言葉を預かっています』
「大尉は、なんと?」
『「訓練部隊のほうを頼む。頼りにしているよ、鈴」と、それだけを』
「!?」
これを聞いて1つだけ確かなことが分かった。
(間違いなく、お兄様は生きていらっしゃる!)
ウィンドに警告表示と共にアラームが鳴る。
『コード911か』
『始まりましたね』
遠い沿岸方面から艦砲射撃の音が鳴り響いた。
間引き作戦が始まった。



あとがき
すっごく時間かかりました。
卒業式とかその練習とか車の教習(現在進行中)などで1日の半分以上は家の外でなかなかかけない状態でしたので。
おまけにキーボードが壊れたので新しいものに交換したりと。
本当はこんなに何日にも分割せずに2日ていどで書くつもりだったんですがそれでは詰めすぎになるだろうと思って何日かに分けましたので結構滅茶苦茶になっています。

始まった間引き作戦。
単機で師団規模に挑む明仁は1つの疑問を感じていた。
いつになってもレーザー属種が表れない。
その疑問は最悪の結果となって現れた。
次回も見ていただけると幸いです。


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