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No.12590の一覧
[0] 【完結】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- (冥夜エンドAfter、悠陽ルート)[牛歩](2009/11/07 22:17)
[1] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第02話[牛歩](2009/10/10 16:47)
[2] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第03話[牛歩](2009/10/10 17:43)
[3] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第04話[牛歩](2009/11/07 22:55)
[4] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第05話[牛歩](2009/10/12 01:48)
[5] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第06話[牛歩](2009/10/17 21:52)
[6] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第07話[牛歩](2009/10/12 01:51)
[7] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 最終話[牛歩](2009/11/14 21:39)
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[12590] 【ネタ】Muv-Luv Unlimited -円環の欠片- 第05話
Name: 牛歩◆42d60b86 ID:27c2e476 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/10/12 01:48
2005年9月。
半年間の基礎訓練を終え、総戦技評価演習を合格した訓練兵達の戦術機訓練が開始される。
訓練開始に当たり激励の演説を行った武は、訓練兵たちのがっしりとした体格と、黒々と日焼けした様子に驚く。
副官に確認すると、彼らは基礎体力作りの一環として復興現場での作業に加わっていたのだという。
財政の逼迫している帝国は、基礎体力作りとしてグラウンドを走ることで消費される体力さえも惜しみ、土木作業に従事させることで彼らを錬成したのだ。
重機をあえて使わず、ツルハシや一輪車、スコップを使って人力のみで道路や堤防を彼らは修理し、復旧させてきた。
その作業は小隊単位で毎日の進捗が競われ、それによって彼らはチームワークの重要性と、創意工夫で作業効率を上げることを理解していた。
そしてまた、その作業を通じ触れ合った地域住民達からの感謝の言葉は、彼らの訓練や作業へ取り組む意識をより向上させていた。
志願制ではなく、徴兵制であるが故の士気の低さを懸念していた武は、それが杞憂であったことを喜んだ。


戦術機訓練の開始に伴い、榊千鶴ら教官候補生は晴れて正式な教官、軍曹として各地の訓練校に散っていった。
それを見送った武は彼らとは異なり、少佐へと昇進して技術廠へとその任地を移す。
そこで巌谷榮二中佐らの出迎えを受けた武は、新型戦術機の開発に参画することになる。

不知火は実戦配備から11年が経過し、大規模改装によって性能向上を果たした弐型は米国製部品の採用もあって高価格化が著しかった。
また、最初に実戦配備された壱型甲と比べると、弐型は壱型丙ほどではないにしろ燃費が悪い。
甲21号作戦からなし崩し的に始まった本土防衛線において、補給もままならず燃料が尽きた多くの戦術機が犠牲となった戦訓は、連続稼働時間の、継戦時間の大幅な向上を求めていた。
そして継戦時間の向上はハイヴ4以上のより大規模なハイヴ攻略においても求められるものでもあった。
大日本帝国は、BETAとの長き戦いに疲弊してなお、未だ通常戦力によるハイヴ攻略を諦めていなかったのだ。
それ故に帝国は、安価で燃費が良く、不知火弐型と同等かそれに準ずる機動力を持つ機体を求め、少なくない予算を搾り出しての新型機の開発を決意。
甲21号作戦以前の新型機構想を一旦白紙化し、開発に取り掛かっていたのだ。

その新型機は継戦時間延長の為に機関部の低燃費・省エネルギー化を推し進め、機体重量に関しては炭素繊維強化複合材による一体成型だけではなく、BETAの死骸をも利用することで大幅な軽量化を図っていた。
BETAの死骸、特に突撃級の殻や要撃級の爪は、人には再現出来ないレベルで硬度と靱性のバランスが取れているうえ、軽い。
帝国はその加工方法の研究にはかねてより力を入れており、その成果が新型機に採用されることになったのだ。
それにも拘らず目標とする航続距離と継戦時間には未だ程遠く、開発陣は頭を抱えていた。

そこにテストパイロットとして参加した武は、かつての平和な世界の創作物を参考にして新たなアイデアを披露する。
足の裏へキャタピラを取り付け、跳躍ユニットを使用しない高速機動を実現しようというのだ。
跳躍ユニットで飛ぶよりは巡航速度では大幅に劣るものの圧倒的に燃費が良く、また足で走るよりも脚部間接への負担が圧倒的に少ないうえ、走るよりは高速移動が可能になる。
そのアイデアは、即座に採用された。
しかし脚部にキャタピラを取り付けるという発想は斬新ではあったものの、新機軸ゆえの技術的な諸問題と部品点数の増大を齎す。
また足の裏に重量物が追加されたことによって機体バランスが大きく変わり、機体そのものも再設計と多くの追加試験の実施を余儀なくされる。
新戦術機『蜃気楼』の開発は、技術者達の阿鼻叫喚、興奮喚起のプロジェクトX的な混沌の坩堝と化して、進行する。



脚部キャタピラの開発が難航したことにより、手の空いてしまった武の元に神宮寺まりもからの救援要請が入る。
戦術機訓練の開始から早3ヶ月、訓練兵達の操縦技術の向上が当初の想定よりも目覚しく、手に負えなくなり始めているという。
旧OSを知らぬ訓練兵達は、3次元機動という機動概念や先行入力、キャンセルにコンボといった〇四式基幹算譜の能力を十二分に吸収、発揮し、古い機動概念を本能的な部分で捨て切れずにいる教官の度肝を抜くことも珍しくないのだという。
教官との技術的な差が狭まっていることは訓練兵達も理解しており、一部が天狗になり始めているのだと。
その対象は教導用ビデオで模範機動を披露した武にも及び、ハイヴ攻略の英雄もたいした事はないと嘯く輩まで出る始末だと溜息混じりに打ち明ける。
これには武もカチンときた。教本に則った、御行儀正しい機動の場面しか配布されず、元々不満に思っていたのだ。
それでは一つ、本物の3次元機動を教育してやりましょう。
そう言って武がニヤリと笑うと、まりももまた、口元を歪めて頷いた。

翌日。稀代のエースパイロットである白銀武少佐が訓練兵の腕前を試しに来るという知らせが、訓練兵達に通知される。
その知らせは、彼らを奮起させる。憧れの英雄に会えると泣き出す女子と、英雄に挑めると眼を輝かせる男子。そして英雄を倒し、実力を示す時が来たと血気逸る者。
それぞれの思いを胸に、彼らはその日を待ち侘びた。

そして2週間後。武は訓練校を訪れる。
送迎車から降りた武は、熱烈な歓迎の中で校長に迎えられ、威風堂々と演習場へと向かう。
こういった対応は月詠 真那の教育の賜物だった。車から降りた瞬間の喚声に内心ビビっていたのは、彼しか知らない秘密である。

演習場では、観覧席に着いた武の前で、前座として6機編成の訓練小隊単位での演習が披露される。
そこで披露された吹雪の機動は、確かにまりも達教官よりも3次元機動や〇四式基幹算譜の特徴を生かしたものだった。
しかし、武には不満だった。動きが御上品過ぎるのだ。
所詮は雛か、という思いをまったく隠さない武の様子に、白髪の混じり始めた校長は緊張を隠せない。
そして演習が終わった時、武は立ち上がって拍手をしたあと、壇上のマイクに向かう。
3次元機動を3ヶ月という短期間で、よくぞここまで収めた。だが、小さく纏まり過ぎだ。俺が本物の3次元機動を見せてやる。
そう言って武は不敵に哂って見せた。

6機の吹雪と、1機の撃震が対峙する。
普通であれば、圧倒的な戦力差。だが、その模擬戦は撃震の圧勝で終わる。
引退の決定した旧式機であるにも拘らず、撃震は縦横無尽の機動を以ってして6機の吹雪を翻弄し、各個撃破して見せたのだ。
そのあまりの機動の違いに、天狗になっていた訓練兵達は愕然として沈黙する。
訓練兵達の動きは喩えるならば清流。教本に則った模範的な動きから逸脱するものではなかった。次の動きを予め入力し、想定外の状況になればキャンセルして次の動作を入れるだけでしかない。
それに対し、武の動きは嵐であった。先行入力とキャンセルの途絶えることのない繰り返し。長めの動作を連続して入力しようと、その手足は更にその次の、次の次の動作を入力し、そして惜しみなく取り消す。
それによって暴風の如く荒々しく駆け抜け、僅かな隙を見つけては模擬弾の豪雨を叩き付ける。隙がなければ弾雨を以って作り出し、稲妻の如き斬撃を叩き込む。
中遠距離戦では廃墟の合間を三角跳びを繰り返して、銃撃の的を縛らせない。的を絞り当てようとして足が止まれば、逆にそこを狙い撃つ。
近接戦になれば、袈裟切りにしようとした吹雪の斬撃は逆袈裟で弾かれ、ワンテンポ遅れて後方から切りかかった1機は、半回転した撃震と鍔迫り合いとなる。
そこを最初の1機が切ろうとすれば、背部の可動兵装担架システムにマウントされていた突撃砲によって、ペイントされる。鍔迫り合いしていた機体もバランスを崩されて青く塗られ、6機の吹雪は沈黙した。

機体性能に因らぬ、操縦技術の差による機動性の差を持って、武は訓練兵達を圧倒したのだ。
天狗になっていた訓練兵達も、一線の衛士との力の差をこうも見せ付けられては、呆然とするしかない。
そこに武からオープンチャンネルでの放送が入る。
小隊単位では相手にならん。貴様らまとめてかかって来い!教官諸君、ヒヨッコ共に一つ、本物の衛士の力を見せてやろうじゃないか!?
その声に、場は熱り立つ。
かくして訓練兵対教官+1の大演習が始まる。
そこでは訓練兵達が日頃の成果を存分に発揮して教官達を翻弄する姿と、逆に教官達が絶妙な連携を以ってそれを撃破する姿が各所で見られた。
日頃から恨み辛みの溜まっていた担当教官を追い詰めたと思ったら、実はそれこそが囮であり、逆に強襲され全滅する訓練小隊。
後方からの援護に徹していたところを、前線を浸透、突破していた教官達に急襲され全滅する訓練小隊。
目まぐるしく変わる戦況に思考が追いつかず、部隊間の連携を乱した所を各個撃破されていく訓練小隊。
そして、白銀武少佐率いる元207B訓練小隊の面々に正面から挑み、その圧倒的な実力差に屈した訓練小隊。
その演習は5対1という圧倒的な差がありながら、少数である教官達の圧勝に終わった。

私達が戦ってきた戦場は常に物量で圧倒されてきた。それ故に、彼我戦力差5倍など我等にとって楽な方だ。
諸君が2ヵ月後に向かう戦場もまた、同様である。残された時間は少ない。今日の経験を生かし、腕を磨け。
そう言い残し、武は帰って行った。
それを見送る訓練兵達にもはや慢心はなく、3ヶ月前、戦術機訓練が始まった頃の熱意が蘇っていた。



それから3ヶ月の間、武は各地の訓練校を回って同様の起爆剤を投与して回った。
昼は訓練校周りするか、偶に技術廠に顔を出し、夜は悠陽と寛ぐ日々が続いた。
そして、2006年3月末日。最初の3次元機動を前提としたカリキュラムを終えた衛士達が、訓練行程を終える。
彼らは帝国軍再建という期待をその身に受け、各地の部隊に配属されていった。
その配属を手薬煉引いて待ち侘びていた先任衛士達は、その実力に驚愕する。
新任達各個の操縦技術が優れているのは当初から伝え聞いていた先任達であったが、それを踏まえた上での連携の見事さ、そして何より泥臭さに舌を巻く。
武の洗礼は、当時訓練兵だった彼らに個人技術の未熟さを教え込むと同時に、本物の衛士の、本物の連携がどういったものかを見せ付け、肌で実感させていたのだ。
そのため彼らは教官達を質問攻めにし、自らに足りぬ物を貪欲に吸収して来た。
その結果、彼らは配属された各任地で、その技量と心意気を高く評価される。
彼らはその道を示した男に肖り、白銀の子供達、プラチナム・チルドレンと呼ばれることになる。
なお、シルバーではなくプラチナであるのは、その希少価値と掛けての意図した誤訳であった。




2006年7月。
ハタンガハイヴがG弾によって攻略されてしばらくたった頃、脚部キャタピラの試作品完成の知らせが武の元に届く。
訓練兵への洗礼に、再び各地の訓練校を回っていた武が喜び勇んで技術廠に駆け込むと、そこには試製脚部キャタピラを装備した不知火が待っていた。
武は早く駆け回りたい気持ちを必死で堪えながら、試製脚部キャタピラの10日かけての実機試験と調整を終えた。
そして、遂に実走試験を迎える。そこで武は整地で100km、不整地でも70kmという、当初の想定(整地70km/不整地50km)を大幅に上回る良好な結果を叩き出す。
これにはローラーブレードを参考に、キャタピラを動かしながら走る、といった武の更なるアイディアが大きく影響していた。
技術者達は、腰を落としてキャタピラのみで走行することしか考えていなかったのだ。
その結果に喜んだのも束の間、当初の想定以上の負荷と速度にキャタピラは耐えきれず破損し、武の乗った不知火は派手にコケて大破、関係者を大いに慌てさせる事になる。
このこともあって正式採用後も機体各部への負荷を鑑み、平時においてはキャタピラのみでの走行が推奨されることになるのは余談である。

そうして武の参画から丁度1年後の2006年9月、不知火を改造した実験機ではない、最初の試作機が完成する。
その機体は脚部キャタピラという新機軸の採用により、当初の要求仕様を大きく上回る航続距離と機動性を実現していた。
また背部の2基に加え、各肩に2基ずつ、計6基装備された可動兵装担架システムは、兵装面での継戦時間を大きく引き伸ばした。
そして一体成型を多用し、BETAの殻をも使用した機体は、可動兵装担架システムの増加とキャタピラという新機軸の追加にも拘らず、全体としては部品点数を僅かに減らし、メンテナンス性において元々良好であった不知火と同等なレベルを維持していた。


その後更に半年間をかけて行われた各種試験によって不備の洗い出しと改良が加えられた機体は、ついに実戦試験に投入される。
2007年2月の福岡において、4機の試製蜃気楼は国連軍、いや世界各地からの派遣部隊という世界の眼が見つめる中で、その圧倒的な性能を示す。
脚部キャタピラによる機動性の大幅な向上と、航続距離の延長に加え、可動兵装担架システム増設による継戦時間の延長、限定的ながら火力の増強(可動兵装担架システムに装備した銃器は稼動範囲が限定されるものの、射撃が可能)は、世界に衝撃を与える。
また、この戦闘に際し、米国軍衛士の友軍誤射により片足を失った1機がそのまましばらく戦闘を継続、後続部隊に引き継ぎを済ませてから、他の試製蜃気楼と共に悠々と帰還したことも派遣部隊の面々を驚愕させた。
それまで、脚部を破損した戦術機は跳躍ユニットでの移動しか不可能となり、戦線から離脱する以外になかったのだ。
もし跳躍ユニットも損傷していれば、機体は破棄し、衛士は僚機に回収して貰う事になり、運が悪ければそのまま戦死するしかない致命的な損傷だった。
それが片足さえ残っていれば戦闘を継続することも出来るし、単独での帰還も可能になる。
これによって帰還率がまた大きく向上するであろうことに、各国の衛士らは素直に喜び、本国にその画期的なアイディアの報告を上げた。
かくして大日本帝国の開発した新型戦術機、蜃気楼は〇四式基幹算譜によって実現された柔軟な機動を前提として設計され、脚部キャタピラを標準装備した最初の第4世代戦術機として華々しくデビューした。



F-4EJ撃震とその派生機である瑞鶴を全機退役、一部を残し中古として売り払った上、不知火の輸出も始めていた(F-15J陽炎はライセンス契約の都合上、中古であっても輸出できなかった)大日本帝国は、輸出用不知火へのオプションとして脚部キャタピラと肩部追加可動兵装担架システム(各肩1基)を追加する。
それに対し、極東連合や中東連合の加盟国のような、生産設備を持たず、既に日本製戦術機を導入し始めていた国々からは受注済みの機体の仕様変更と、購入済みの機体の改装に関する問い合わせが多数寄せられる。
それ以外の今まで試験的に少数購入していた国々や、自前の生産設備を持つ国々からも脚部キャタピラの購入やライセンス生産に関して問い合わせが来るに到り、メーカーや関係各省庁の面々は嬉しい悲鳴を上げることになる。
甲21号作戦において主力となった不知火はそのコストパフォーマンスの良さもあって評価は元々高く、売り上げは好調であった。
それに加えて最初の第4世代戦術機の開発によって日本の戦術機の評価は鰻登りであった。


2007年3月、蜃気楼の開発データをフィードバックした不知火が大分国連基地に納入される。
脚部キャタピラと肩部追加可動兵装担架システムを取り付けられた以外に従来機との違いはなかったものの、その機体は便宜上、不知火参型甲(壱型ベース)または参型乙(弐型ベース)と呼ばれることになる。
壱型は総合性能では弐型に劣るものの、配備開始から13年を経て向上した信頼性と、高いコストパフォーマンスから、財政状況の厳しい前線各国によく売れていた。
これには戦術機の生産現場を見た武が、曖昧な記憶の中からトヨタの生産方式に関する記憶を掘り起こし、それを元に巌谷らがその生産方法を模造し、導入したことにより生産コストが大幅に低下したという裏事情もあった。
これにより、人件費の安さ(BETA大戦は第2次大戦からの帝国の復興を助長してくれたが、BETAの東進によってバブルは到来しなかった)と為替相場(帝国はBETAの本土上陸の少し前から貿易赤字に陥っており、この世界での円は安い)と相まって日本の戦術機の価格は安かった。
なにせ一部にしか高価な米国製部品を使っていない不知火弐型は米国純正のF-15よりも安かったうえ、安価な日本製部品しか使っていない壱型はそれより更に安く、米国純正F-16の最新モデルとほぼ同価だったのだ。
勿論、不知火よりも更に安い吹雪の実戦仕様機もまた、アフリカ諸国を中心に好評だった。


不知火参型の機体情報はほとんどが公開されており、他国の衛士であっても所属団体を通して申請すれば、簡単な講習の後に乗ることが出来た。
帝国は大分国連軍基地を、日本の兵器展示場として大いに活用していたのだ。
その結果、不知火参型は世界各地から大量の注文を受け、大量増産に踏み切ることになる。
これは中京工業地帯の復興を大いに後押しし、我々の世界の朝鮮戦争による特需と同様に、日本の工業力を当初の予定を大きく上回る勢いで回復させることになる。
それに伴って求められる労働力は、未だ帰還の目処の立たない関西以西の避難民達に職を与えた。
しかし国土復興にも労働力が必要とされていた為に労働力の不足が社会問題化する。
これは海外に難民として流出した日本人達の帰国を後押しし、また国内に残った者達との軋轢を抑えた。
人間は物事が充実していると、過去の事は案外簡単に水に流せるようだった。

この日本の好景気は戦術機や電磁投射砲といった兵器や、被服や医療品といった軍需物資の輸出によって支えられており、自らの得意分野と被る米国に苛立ちを覚えさせるが、具体的な行動には移させなかった。
これには榊の死ぬ死ぬ詐欺紛いの脅迫に米国側がドン引き、極東絶対防衛ラインの担い手である日本が破綻しては不味いという思惑もあった。
北の将軍様の不在は、米国に死ぬ死ぬ詐欺への耐性を与えていなかった。
もっとも、鉄源ハイヴをG弾で攻略しないという、日本への嫌がらせは忘れなかったが。





■後書き■

ボクの考えた新型戦術機、登場です。
オリジナル要素は極力避けようとしたのですが、話の流れからどうしても出さざるを得なくなった代物です。
脚部キャタピラは、ナデシコのエステバリスや、コードギアスのナイトメアフレームとかをイメージしてください。

感想、ありがとうございます。
面白い、と言って頂けると、今までポチポチと暇を見つけては書いてきた甲斐があった、と嬉しく思います。
後3回で完結しますので、最後まで楽しんで頂けると幸いです。


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