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No.1116の一覧
[0] マブラヴ If[悠々自適](2006/03/20 17:48)
[1] マブラヴ If プロローグⅡ[悠々自適](2006/03/22 16:28)
[2] マブラヴ If プロローグⅢ[悠々自適](2006/03/29 21:42)
[3] マブラヴ If 第01話[悠々自適](2006/04/06 15:12)
[4] マブラヴ If 第02話[悠々自適](2006/04/29 22:44)
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[1116] マブラヴ If プロローグⅡ
Name: 悠々自適◆b329da98 前を表示する / 次を表示する
Date: 2006/03/22 16:28


マブラヴ If

プロローグⅡ



10月21日(日)





『やくそく……まもるぞ!』
『タケル……』
 
『おとなになったら、ぜったい会おうな!ぜったいぜったいぜったい会おうな!』
『うん……ぜったい会おう!』
 
『ばいばいじゃないよ!“またね”だよ!』
『またね……?』
 
『またな!また会おうなっ!』
『うん、またね!』





「…………」

寝起きで焦点の合わない目を擦りながら、オレは壁に架かった時計を見る。
時間は7時。
いつもより少し遅めの目覚めだ。
霞がかった様な状態の頭が正常に動き出してくれるまで、暫く天井をボンヤリと見る。


……また、約束の夢を見た
週に一度は必ず見る、約束の夢
子供の頃にした、約束の夢
大切な大切な、約束の夢
オレを形作る、約束の夢
なによりも守りたい、約束の夢

……守れるかどうかも分からない、約束の──


「───ッ!!」

頭にうかんできた『それ』から逃れるように、オレはベットから飛び起きた。
ゆっくりと深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
 
「……だめだな、どうも寝起きはネガティブな思考になっちまう」

頭を掻きながら反省、部屋の空気を換えるために窓を全開にする。
朝の匂いのする空気が、部屋いっぱいに入ってきた。
向かいの窓を見ると、カーテンはまだ閉まっていた。
純夏はまだ寝ているのか──と思った瞬間カーテンが開かれる。

「あっ、タケルちゃんおはよー」
「おう、おはよう」

笑顔でそう言ってくる純夏に、こっちも笑顔で返す。
いつもの光景だ。

「あのさ、おじさんとおばさんの旅行の買い物、何時くらいに行く?」
「あー……とりあえず10時くらいでいいんじゃねえか?」
「そうだね。それじゃ時間になったらそっち行くからね」
「ああ、また後でな」

純夏は手を振って、またカーテンを閉めた。
10月も中旬を過ぎ、すっかり秋らしくなってきた今日この頃。
こんな中途半端な時期に、オレの両親は旅行に行くらしい。
一人息子は受験生だってのに呑気な親もいたもんだ、とため息をつく。
……というか親父のやつは仕事平気なんだろうか?

「……謎だ」

なんとなく脱力して空を見上げる。
天気は晴れ、真っ白い雲が青い空に浮かんでいた。
……こんな天気の日は、いつも思い出す。
約束をした、あの日の事を。

「なあ……元気にしてるか?」

なんとなく──相手に届きもしない問いかけを空にする。
返事は当然無く、その代わりなのか、風が吹き付けてきた。
気温よりも僅かに暖かく感じるそれが、まるで返事の様に思えて……。
 
「サンキュ……あと、おはよう……めいや」

そう笑って言ってから、オレは窓を閉めた。





『大人になったら結婚しよう』

めいやとそんな約束をしたあの日から、オレの生活は変わった。
……と言っても、次の日からってわけじゃない。
初めの一週間くらいは、ただ忘れないことだけを考えていた。
そうすれば絶対守れる。
そう信じて。
……でも時間が経つにつれ、オレの心は不安に染まっていった。

いつになったら会えるのか分からない。
会えても約束を守れるかどうか分からない。
そもそも会った時、めいやが約束を、オレの事を覚えているかも分からない。

そんな嫌な考えにさらされながら、それでもオレは約束を忘れるなんて事は絶対にしなかった。

確かに『忘れる』と言う事は、人が生きていくうえで必要な事だ。
悲しみ・怒り・不安・恐怖……。
そういったものから心を護るには、『忘れる』事がどうしたっている時がある。
でもオレの場合、それには当てはまらない。
オレがそれをしたら、それは『逃げ』になる。
どうしようもない程嫌なことからくる不安を、忘れる事で楽になるならまだいい。
だけど、どうしようもない程大切な事からくる不安を、忘れる事で楽になる。
それを逃げと言わずに何と言うのだろう。
 
異を唱えるやつもいるだろうが、これがオレの考えだ。
もちろんこれは『今のオレ』の考えで、当時3歳だったオレは当たり前だがこんな難しくは考えなかった。
ただ純粋に、約束を忘れる事ができなかっただけ。
おじさんに抱えられて泣いているめいやとした、オレ達を結ぶ唯一つの絆。
それを忘れる事なんて、何をしたって、どんなに苦しくたって、オレにできる筈がなかった。
それでも不安は消えない。
だから約束を守るために、今の自分に何ができるか考えた。 
それをして、少しでも不安を消そうと考えた。

これも一種の『逃げ』と言えるかもしれない。
それでも先に挙げた『逃げ』とは違い、これはもっとずっと前向きな『逃げ』だった。

思いついた事は、また会う時までにめいやが周りに自慢できるような、約束を覚えていて良かった、約束を守れて良かった、そう思えるような良い男になっていよう。
そんな事だけだった。
そんな事くらいしか当時のオレには思いつかなかったし、実際のところできる事は無かった。
でもそれで良かった。
それからは、とにかく自分を高めていくことに全力を注いだ。
幼稚園の時は歌や遊戯を。
小学校からは勉強や、中学校入学前に始めた剣術、高校の部活での剣道を。
とにかく必死になって努力していった。
そのおかげで学校の成績は小・中・高のどれでもトップクラスだったし、剣術の腕は今年の夏には師匠を超えて、剣道では全国大会三連覇を達成した。
 
……けれどそんな事は、実際のところどうでもいいことだ。
別にそれが悪い事だって訳じゃ無い。
いずれ社会に出ていく事を考えれば、今の状況はむしろこれ以上無いって言うくらい良いものだと言える。
けれど本来の目的、ここまで努力している大本の理由。
めいやに会うこと。
約束を守ること。
それが叶わないんだったら、成績や肩書きなんてものは、オレにとっては本当にどうでもいいものでしかない。
そう思えるくらいめいやとの約束は大切なもので……そして誰よりも何よりも、オレはめいやのことが好きで……。

それはあの頃から変わらない──そしてこれからもずっとそうだと断言できる事。





オレ達は海辺の公園の芝生で昼飯を食べていた。
風は穏やかで、カモメの鳴き声が青空に響いている。
気温は暑くもなく、寒くもない丁度いい具合。
たまにはこんなランチタイムも悪くない。
 
買い物は無事に終わった。
……純夏がシメジの事を松茸と勘違いしてるのを『無事』と言っていいなら。
ちなみにオレはわりと手遅れじゃないかと思っている。
純夏……恨むんならそういう教育をした優しい両親を恨むんだぞ。

「どうしたの?私の顔に何かついてる?」
「いや、別に」

何も知らない哀れな奴から、食べかけのハンバーガーに視線を戻す。
この頃ゲーセンで尊人とバルジャーノンをやっていなかったから、『すかいてんぷる』の松茸御膳は食べようと思えば食べられた。
それをしなかったのは、ひとえに純夏がこのまま松茸を知らない方が面白そうだったからだ。
なんか自分でも酷い奴とか思うが……気にしないでおこう。
そんな事を考えていると、一匹の犬がこちらに寄ってきた。

「あ、犬だ。おいでおいで」

純夏の声に誘われて、犬は座っているオレ達の間に入ってくる。

「ねえ、タケルちゃんのポテトあげていい?」
「なんでオレのなんだよ。自分のにしろ、自分のに」
「はい、ど~ぞ」
「人の話を聞けよ!」

箱ごと差し出そうとする純夏からポテトを取り返したオレはため息を一つ。
その後3本ほど引き抜いて、犬の前にもっていく。

「結局あげるんじゃん。優しいんだ」
「うるせえよ」

純夏のからかいをいなして、犬の目の前でポテトを振る。
犬はオレの目と、右手に持つポテトを暫く交互に見て──。

パクッ

ポテトに噛り付いた。
右手の──じゃなく、左手に持つ箱の方のやつに。

「なにいっ!!?」

驚いて左手を引くが、それがまずかった。
その勢いで箱の中にあったポテトの殆どは、芝生の上に落ちてしまった。

「うわ~、大惨事だね」
「こ、こいつ……できる!」

散らばっているポテトを一心不乱に食していく犬に、オレはあらゆる意味で戦慄した。

それから暫くの間、オレと純夏と犬の三人組はまったりした時間を過ごした。
純夏がオレにポテトをめぐんでくれたり、その隙に今度は純夏のハンバーガーが犬に強襲されたり。
いろいろあったが、まあ悪くない一時だった。
そんな中唐突に、

「時間が経つのって早いよね」

純夏がそんな事を言ってきた。

「どうしたんだよ、急に」
「なんとなくね。タケルちゃんががんばってきてもう15年になるのか……って思って」
「……そうだな」

オレは芝生に寝転がり、ぼんやりと考える。
あと2ヶ月もすればオレの──そしてめいやの──18歳の誕生日だ。
約束をしたのが3歳の誕生日だったから、丁度15年経つ事になる。
……本当に……あっと言う間だった気がする。
何かに熱中してたり我武者羅になってたりすると、時間って言うのは速く流れている様に感じるもんだが……そうか、もう15年か……。

「あきらめよう……とか思わない?」
「あん?」

再度やってきた唐突な言葉に顔だけを純夏に向ける。
純夏の顔はいたずらっ子のそれだ。

「ここまでくると、もう意地?」
「……あえて否定はしねえよ」
「私ならいつでもOKだよ?」
「バーカ。いまさらお前にのりかえるなら、初めっから約束守ろうなんて思わねーよ」
「あはは、そう言うと思ったよ」

オレの言葉に純夏は明るく笑う。
こんなやり取りができる様になったのは、高2のバレンタインデーに純夏がオレに告白してからだ。
あの時の事は、めいやと約束をした事の次によく覚えている。




『タケルちゃん、私……タケルちゃんのこと好きだよ』

放課後の学校裏の丘で、顔を赤くしながら純夏は思いを伝えてきた。
いつもの笑ってる時とは違う、真剣な表情でオレを見つめて。
 
なんとなく、純夏がオレを思ってくれている事は気付いていた。
ふとした時に見せる、仕草や表情。
幼馴染だとはいえ、男のオレを毎朝起しに来てくれる事。
そんな事から「もしかしたら」と思っていた。
でも仮にそうだとしても、告白はしてこないでほしかった。
オレが好きなのは、純夏ではなく、めいやだったから。
そしてふってしまったら、もう幼馴染じゃいられない様な気がしたから。

……正直そう言ってくれるのは嬉しかった。
できることなら「オレもだ」と言って抱き締めてやりたかった。
けれど……オレの心の中にある思いは、めいやへのもので……。
その思いだけは、どうしたって裏切れなかったから……。

『ごめんな……』

だからオレは、自分の思いに正直に、純夏のまっすぐな告白に失礼じゃない様に。
ハッキリとそう答えた。
純夏はその言葉に少し震えて……でも笑って、

『……うん……そう言うと思ったよ』
『ありがと。ハッキリ言ってくれて』

そう言って先に帰って行った。
 
それからオレは、帰り道も家に帰ってからも、ずっと純夏の事を考えていた。
これからオレ達はどうなるか。
できる事なら、今までの様に気安くものを言い合える仲でいたかった。
ふった本人が何を勝手な事を──そう自分でも思った。
けれど純夏って言う存在は、オレにとってそんな簡単に失っていいものじゃあ無くて。
友達よりも親友よりももっと身近で、けど恋人とは少し違う──そんな関係。
そう──『幼馴染』って言う、オレ達の関係。
それを失いたくない気持ちは、もう理屈じゃ抑えられないもので……。
だからオレはある事を決めて、その日はそのまま眠った。

そして次の日。
天気は雨。
案の定と言うか、純夏は起しに来なくて……。
その事を少し残念に思いながら、学校に行く準備をして純夏の家に行った。
おばさんに聞くと純夏はまだ眠っているらしく、オレは家の前で待つことにした。
 
下手に気遣って距離が開いたら、もう関係は修復できないかもしれない。
だから家から出てきた所でいつも通りに声をかけて、いつも通りに学校に行こう。
それで上手くいくかは解らない。
逆効果かもしれない。
自分勝手な考えだっていうのも解ってる。
けど初めから正しい答えなんて無いんだ。
だったら少しでも前向きにいってみよう。
純夏も……このまま関係が自然消滅するのはきっと望んでいない。
それが昨日考えてオレの出した結論だった。
 
それからはひたすら待った。
雨の中、制服のズボンが濡れるのも構わずに。
休まずに出てきてほしい。
そう祈りながら。

そして10時を過ぎた頃──純夏が出てきた。
オレがいるとは思ってなかったんだろう、呆然としてる純夏。
その目の前に行って、オレはいつもの調子で言ってやった。

『遅えよ、バカ』

純夏は少しの間また呆然として──その後オレの腕にすがり付いて泣いた。
泣かせた事に罪悪感を覚え、でもその反応を見て安心した。
そして思った。
よかった、オレ達は『オレ達のまま』だ……と。

その後で『何・が・バ・カ・な・の…………よーーーッ!!』という叫びと共にドリルミルキィパンチをくらったのは……まあ仕方の無いことだろう。
もうちょい気の利いた事言えば良かった。
けどあの時はあの言葉が……気なんて使わずに素直に話せるオレ達の……なんか変な言い方だけど『幼馴染って言うカタチ』みたいに思えたんだ。
オレ達に相応しいと……そう思ったんだ。

そして登校途中、オレは約束のことを純夏に全部しゃべった。
理由は……フッた罪滅ぼしって言うのも正直あった。
けどそれよりも純夏に知っていてほしかった。
それまで誰よりも近くにいて、信頼できる純夏だから。
オレが今までやって来た事の意味を。
お前をふったのは嫌いだからって理由じゃない、ちゃんとした理由があるって事を。

純夏はオレが話してる途中にまた泣き出して、

『タケルちゃんは、強いね』

そう言ってオレの事を見つめてきた。
正直なところ、そんな風に言ってくれるとは思わなかった。
普通の奴ならたぶん、「くだらない約束に縛られてる」とか「正気か?」とか言ってくるだろう理由。
オレも自分でそんな風に考えたことがあったから──当然そんな考えは握り潰してきたんだが──純夏も言い方はソフトでも同じ様な事を言うと思ってた。
それが…………。
とても安心して、けれど何と無く恥ずかしかったオレは、
 
『そんなんじゃねーよ。忘れるのが怖かったから、約束にしがみついてきただけだ』

そんな自分でも思っていない苦しい言い訳をしていた。

そしてそれからはまた、いつものオレ達になった。
唯一変わったのが、純夏がオレを起しに来なくなった事。
それはまあ、しょうがない事だろう。
でもそれ以外は何ら変わらずに、オレ達は『幼馴染』という関係を崩す事無く過ごしていった。




「ホントの事言っちゃうとね……」
「ん?」

昔の事を思い出していたオレを、純夏の声が『今』に戻す。

「私……今はタケルちゃんの事好きじゃないんだ」
「……そうか」

どう答えたらいいか解らずに、ただそう返す。
純夏はオレを優しい瞳で見つめながら続ける。

「あの時約束のこと聞いて、それでも暫くは好きだったんだけど……そのうち応援したくなっちゃったんだ」
「応援?」
「うん。昔の約束守ろうとがんばってるタケルちゃんが、とっても綺麗に見えたから」

意外な言葉に暫く呆然とする。
その後ものすごく恥ずかしくなってくる。

「綺麗って……男がそんな事言われても嬉しくねーよ」
「心が、って意味だよ。もう……そんな恥ずかしがらないで。
私は全部知ってるんだから、辛かったら弱音はいてもいいんだよ?」

そう言って優しく笑う純夏が、とても綺麗に見えた。
同時に少し頼ってみたくなって……。
暫く言うか言わないか迷ってから、オレは口を開いた。

「あのさ……」
「なに?」
「オレがめいやのこと好きだっていう気持ちって……間違ってると思うか?」

今のめいやをオレは知らないから、それは15年も前の感情だ。
約束をしたっていうのはあるけど、それでも一緒にいた時間なんてほんの数時間だけ。
それなのに「好き」って言う気持ちを持っているのは……おかしいだろうか?
それがよく判らない。
今まで何度も自分に問いただして来たことを、オレは聞いてみた。

「判んない」
「はええよっ!」

一秒もせずにそう返す純夏につっこむ。

「でもさ……」
「ん?」
「もし『間違ってる』って言ったらタケルちゃん、めいやの事好きじゃなくなる?」
「……まさか」
「なら自信を持っていいんじゃないのかな?」

その言葉にハッとする。
…………そうだよな。
間違ってたって関係無いよな。
オレの気持ちは何したって変わらなんだ。
そうだ、しょうがないじゃん。
オレはめいやが好きなんだから。
自信を持とう。
 
「純夏」
「なに?」
「サンキュ」
「どういたしまして」

そう言って、お互いに笑いあう。
笑いながら、オレは心からこう思った。

ああ…………こいつがいてくれてよかった。





「おじさん達行っちゃったね」
「ああ」

夜、窓越しにいつもの会話をする。
これをしていると、今日も終わるんだなと感じる。
あの後オレ達は荷物を持って帰り、オレは荷造りを手伝い、意気揚々と出かける親父達を見送った。
その姿に一瞬殺意を覚えたのは秘密だ。

「そういえば、結局旅行の行き先はどこだったの?」
「ん?」
「ほら、おばさんは『シルクロードで行くエーゲ海の伝説と神秘ツアー』って言ってたし、おじさんは『極寒のシベリア満腹体験』って言ってたんでしょ?」
「あ、聞いとくの忘れてた」
「はあ」

純夏は呆れてる。
まあ、オレとしてはそのどちらだろうが、実は世界一周だったりしてもいいんだが。
親父達がいるにしろいないにしろ、やることに変わりは無い。
勉強と剣術の鍛錬と、気分転換にバルジャーノンを少々。
それで日々は過ぎていって、すぐに帰ってくる日になるだろう。
 
「ねえ、明日起しに行ってあげようか?」
「は?なんだよ突然」
「おばさんにタケルちゃんの事頼まれたの。いいでしょ?」

目を輝かせて言う純夏。
少し懐かしいそれに、いいかもしれない、と思う。
しかし一つ問題がある。

「お袋がいないから入れないぞ?」
「平気平気、私にまかせといて!」

妙にテンション上げている純夏を見ながら、その自信の理由を予測する。
……一つしか思い浮かばないが、まあコレだろう。
それと同時にふと、悪戯心が芽生えた。
状況を脳内でシミュレートする。
…………面白いかもしれない。

「分かった、じゃあよろしくたのむぞ」
「うん、まかせてよ!」
「じゃあな」
「おやすみ~」

純夏がカーテンを閉めるのを見てから、オレも窓を閉める。
そしてオレは玄関まで行き、しっかりとチェーンロックをした。

「すまんな、純夏。なんか面白そうなんだ」

心からの……では無いが、まあそれなりの謝罪をして自室に戻る。
そして、これから何をしようか、と考えた。
勉強はキリのいいところまでしたし鍛錬もした、バルジャーノンという気分でもないし……。
……今日はもう寝よう。
そう結論して、明かりを消してベットに入る。
目を瞑ってふと、今日は何の夢を見るのかな、と思った。

……できればまた、あの約束の夢を見たい。
今のオレには、夢の中でしかめいやに会う事は出来ないから。
だけど必ず……また会ってみせる。
根拠も何も無いけれど……不安は当然あるけれど……叶わないかもしれないけれど……。

それでもオレは諦めない。

「……おやすみ……めいや」

いつか本人に言える日が来ることを願いつつ、オレは睡魔に身を委ねていった。




つづく





あとがき

ヘタレ&鈍感じゃない主人公は好きですか?(あいさつ)
どうも、悠々自適です。
というわけでプロローグⅡです。
今回のテーマはタケルの心、そして純夏との関係です。
原作とはけっこう違うこのタケルが、この物語の主人公です。
もし約束覚えてたらこんな感じになると思うんですよ、彼。
少し不器用で、でも真っ直ぐないいやつに。
3歳という幼い時期に「人生の目標」とも言えるものを得てしまったら、こんな風になるんじゃないかなと思います。
……と言うか正直な話、こんなタケルでいてほしいんですよ、私が。
冥夜と幸せになってほしいんですよ!(あ、本音が……)

それではまた、次の話のあとがきでお会いしましょう。


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