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No.510の一覧
[0] よこしまなる者[キロール](2004/10/29 22:02)
[1] Re:よこしまなる者[キロール](2005/06/12 01:02)
[2] Re[2]:よこしまなる者[キロール](2005/06/12 01:08)
[3] Re[3]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 20:56)
[4] Re[4]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:01)
[5] Re[5]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:10)
[6] Re[6]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:15)
[7] Re[7]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:22)
[8] Re[8]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:28)
[9] Re[9]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:34)
[10] Re[10]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:42)
[11] Re[11]:よこしまなる者[キロール](2005/06/17 21:48)
[12] Re[12]:よこしまなる者[キロール](2004/11/09 16:15)
[13] Re[13]:よこしまなる者[キロール](2004/11/10 04:01)
[14] Re[14]:よこしまなる者[キロール](2004/11/10 14:43)
[15] Re[15]:よこしまなる者[キロール](2004/11/10 15:54)
[16] Re[16]:よこしまなる者[キロール](2004/11/11 06:24)
[17] Re[17]:よこしまなる者[キロール](2004/11/12 07:07)
[18] Re[18]:よこしまなる者[キロール](2004/11/12 17:17)
[19] Re[19]:よこしまなる者[キロール](2004/11/13 03:58)
[20] Re[20]:よこしまなる者[キロール](2004/11/14 06:25)
[21] Re[21]:よこしまなる者[キロール](2004/11/15 17:48)
[22] Re[22]:よこしまなる者[キロール](2004/11/17 06:15)
[23] Re[23]:よこしまなる者[キロール](2004/11/18 10:51)
[24] Re:よこしまなる者[キロール](2004/11/18 11:44)
[25] Re[24]:よこしまなる者[キロール](2004/11/19 00:21)
[26] Re[25]:よこしまなる者[キロール](2004/11/19 15:31)
[27] Re[26]:よこしまなる者[キロール](2004/11/20 18:25)
[28] Re[27]:よこしまなる者[キロール](2004/11/21 06:53)
[29] Re[28]:よこしまなる者[キロール](2004/11/21 14:26)
[30] Re[29]:よこしまなる者[キロール](2004/11/22 05:46)
[31] Re[30]:よこしまなる者[キロール](2004/11/23 00:12)
[32] Re[31]:よこしまなる者[キロール](2004/11/23 21:43)
[33] Re[32]:よこしまなる者[キロール](2004/11/25 00:15)
[34] Re[33]:よこしまなる者[キロール](2004/11/27 01:02)
[35] Re[34]:よこしまなる者[キロール](2004/11/27 01:16)
[36] Re[35]:よこしまなる者[キロール](2004/11/27 01:44)
[37] Re[36]:よこしまなる者[キロール](2004/12/15 05:07)
[38] Re[37]:よこしまなる者[キロール](2004/12/16 23:20)
[39] Re[38]:よこしまなる者[キロール](2004/12/16 23:33)
[40] Re[39]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 09:05)
[41] Re[40]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 09:06)
[42] Re[41]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 09:07)
[43] Re[42]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 09:08)
[44] Re[43]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 10:59)
[45] Re[44]:よこしまなる者[キロール](2004/12/23 18:47)
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[510] Re[29]:よこしまなる者
Name: キロール 前を表示する / 次を表示する
Date: 2004/11/22 05:46
 ≪横島≫
ヴァチカン市国はローマ法王を国家元首とする独立国家であり、
ヨーロッパの精神世界において可であれ不可であれ絶大なる影響を及ぼしている。
当然ヨーロッパ全土のキリスト教系G・Sとも深いつながりを持っており、ほぼ全てのG・Sに何らかの影響力を与えることができる。
そしてヨーロッパにいるG・Sのおよそ半数は直接的、間接的に命令を下すことができると考えてかまわない。
故に、ヴァチカンが異教のG・Sを雇うなどということは本来前代未聞であるし、ましてや留学中の学生とその弟子を日本G・S協会を通して召喚するなどということは普通では考えられない。
 
「一般には極秘扱いになっておりますが、この宮殿の地下には永いヨーロッパの歴史上、人類が出会った様々な災厄が封印されています。破壊が不可能な魔具、除霊不能な悪魔などです。」
 
「お話は窺っております。枢機卿。この地下に封印されている【ラプラス】を相手にすればよいとか。」
 
「ええ。ここです。」
 
核シェルターの扉のような大仰な扉が上にせりあがる。
 
「おおよそ考えられる限り最強の結界です。中のものが一つでも漏れたら文明が滅びてしまうかもしれませんので。」
 
「なぁ師匠。【ラプラス】って【ラプラスの魔】のことか?」
 
「ん?勉強してるな。だが少し違う。【ラプラスの魔】はナポレオン時代の数学者。ピエール=シモン・ド=ラプラスが考え出した数学的な仮説だ。大雑把に言えば『無限の思考力と無限の計算能力を備える【悪魔】がこの世に存在するならば全宇宙全てのあり方を知り、過去、未来を余すことなく知ることができる。我々にそれができないのはその方程式があまりにも複雑すぎて、未知数が多すぎて計算できないからだ。』ってとこだな。世界のあり方は既に定められているって言う一種の宿命論だよ。」
 
「なんかむかつく考え方だな。」
 
「まぁな。だが、この仮説の根底にあるのはアイザック=ニュートンのニュートン力学なんだが、当時と違って現代物理学では物質のあり方っていうのはそういった確固たるものではないって言うのが通説だ。量子力学なんかはそれでは説明がつかないし、電子、陽子、中性子なんか発見される以前の仮説だからな。無論、霊力なんてものは考慮に入っていない。」
 
「んじゃあ【ラプラス】って言うのはなんなんだ?」
 
「元をたどればギリシャ神話にたどり着く。パンドラの箱から逃げ出すことができなかった唯一の災厄。【前知魔】って言うのが本来の名前だ。【ラプラス】っていうのは後々つけられた名前だな。さっきの【ラプラスの魔】から採られたんだろう。元々ギリシャ神話の中では予言は重要な位置にあると同時に持ち主に不幸を呼び寄せた。ティターン神族の【先に考える者】プロメテウスは神々の破滅を予言したがそれをゼウスに教えなかったがために長きに渡り苦痛を与えられ続けた。トロイ戦争のカサンドラ王女はアポロンから求愛されたときその代償に外れる事のない予言の力を与えられたが、その力でアポロンに捨てられボロボロにされてしまう未来を予言してしまったがために求愛を断り、怒ったアポロンから予言を誰からも信じられない。という呪いをかけられた。カサンドラ王女はトロイ戦争の敗北を予言し、自らが暗殺されることを予言しながら誰からも信じられず予言どうりに暗殺されてしまった。」
 
「要するに予知能力の悪魔ってことか?」
 
「それも完全な予知。全てを見通す目とも言っていいでしょう。」
 
「事前に未来を知ってしまえばそこには希望も何も残らない。それが変えられない未来ならなおさらだ。」
 
俺はそこでいったんそこで言葉を切った。
 
「それ以上に、変えることが可能だったとしても未来を事前に知って、歴史を変えようなんてのは余程罪深いものだ。歴史って言うものはそれこそ多くの人間の苦悩があって、決断があって、悲しみがあって、例えそれが滅びの未来だとしても歴史を変えるなんていうのは許されるべきことではないんだ。」
 
例えば、時間を逆行をして未来を変えるとかな。
例え、それが滅びの未来だとしても変えることは許されない。
それでも、俺は・・・。
 
「カトリック教会もそのことは考えているはずだ。」
 
「その通りです。ですが、【ラプラス】を捕らえた当時の法王猊下はその罪を自ら被ってなお、多くの人間が不意の事故で亡くなることを防ごうとされました。」
 
さて、どうかな。
 
「キリスト教はその祖からして全ての民の罪をその身に被ったといいますしね。」
 
「真にその通りです。」
 
だが、俺の罪は俺のものだ。
 
「さて、ここからはあなた方だけでお願いいたします。【ラプラス】は最も奥の牢に捕らえてあります。私との会話はこの通信機で。」
 
「仕事の中身は承っています。」
 
俺は雪之丞を伴って奥に潜っていく。
 
「あの牢に捕らわれているのは不和を撒き散らす【不和の侯爵】アンドラスだ。弱いものいじめは好まず、同程度の力を持ったもの同士の泥仕合を好む。第一次世界大戦はこの悪魔が暗躍したらしい。あの牢にいるのは【黒死病】だな。ペスト自体は病気に過ぎないが、最初にそれを撒き散らしたのがあれだ。
あの牢で暴れているのは。【無価値なもの】ベリアルの分霊だな。それもかなりできのいい奴だ。」
 
授業をしながら奥に進んでいくと最も奥の最も厳重な牢にそれはいた。
 
「やぁ・・・来たね。ふかかいさん。」
 
「ふかかいさん?」
 
『奴の言葉に耳を貸すな。気にせず仕事を続けてください。』
 
「用件はわかっているな?」
 
「あぁ、100年に一度私に占いをさせるのが昔からの決まりだ。次の世紀に何か破滅的な災難が起きないか・・・人間は知らずにいられないんだ。くっくっく。馬鹿なことだな。知ったところでどうすることもできないのに。100年前、私は二度の世界大戦を予告した。それを聞いた奴は自殺したよ。私の予知はどうあがいても避けることが不可能な事実の予告なのだから。それでも聞きたいのかね?知っても不幸になるだけだぞ。」
 
「不幸かどうかは当人が決めることだ。・・・そこにいる限りお前の能力は制限されている。触ったものの100年先までの未来しか予知できない。法王がこれから100年使う予定の日記帳を渡せばおおよそのあらすじは読めるというわけだ。」
 
俺はシュートに日記帳を入れた。
 
【ラプラス】はそれに触れようとしない。
 
「君は世界で最高のG・Sだ。私は100年前に君の存在を知り、今日この日、君を呼び寄せるようにあの日記に書いた。あいにく私は暇でね。この100年間君と遊びたくてうずうずしていたのだよ。」
 
「どういう意味だ?」
 
「なに、この退屈な牢獄生活に娯楽を提供してもらいたいのさ。君の体の一部。そう、髪の毛を一本くれたまえ。そうすれば君の人生を見て楽しむことができる。くれれば未来を予言してあげよう。」
 
「俺の、未来か。」
 
『どうする?奴は本気だ。恐らく君が髪の毛を渡さなければ予言はしないだろう。』
 
「今まで私が見た人間の未来はどれも同じで退屈だった。私の見た自分の未来を聞かずにいられず、その後絶望・・・そして破滅。そればかりだ。君には違う反応が期待できるかもしれない。私はそれが知りたくてたまらないのだ。君が聞きたくないのなら私は話さないから安心したまえ。」
 
俺は文珠で通信機を妨害すると、自分の髪の毛を抜いてシュートの中に入れた。
 
「くくく。まさかこうも易々と渡すとは。これだけでも予想外だ。実に面白い。」
 
「お前は【前もって知る者】であって【全てを知る者】ではない。お前の予言は外れることはないかもしれないが、未来が変化をすれば過去をさかのぼってお前の出した予言のほうが変化をする。世界はより自然な状況を望むからな。世界の修正能力が無数の可能性の中から都合のいい現実を選び出し、作り変える。お前の予言は外れなくとも未来は変えられる。違うか?」
 
「何故そういいきれる?」
 
「世界の未来を全て知るということは、世界そのものに力を働きかけるということだ。そんな真似は神魔の最高指導者にだってできないよ。もし仮にそうでなかったとしても運命ごとねじ伏せる。」
 
「くくく、面白い。面白いなぁ。もう少し話していたかったが、もう予言は終わってしまったよ。さぁ、もっていくがいい。」
 
「確かに受け取った。それでは失礼するぞ。【先に考える者】よ。」
 
俺はきびすを返してもと来た道を帰る。
 
「師匠。【先に考える者】って、さっきの話し出てきた。」
 
「あぁ、多分あいつの本当の名前はプロメテウスだろう。キリスト教が土着の神を魔族に堕とすのは習性みたいなものだしな。【前知】がパンドラの箱から逃げ出すことがかなわなかったのは最初から箱の外にあったからだろう。元々プロメテウスは人を作り上げ、知恵を与え、自らに罰が課せられることを知りながら人間に火を与えた。火を与えられた人間を苦しめるためにゼウスが画策することを知ると箱の中に希望を閉じ込めた慈悲深き巨神だ。ギリシャ神話の中で最後まで箱に閉じ込められていたものの名前は【希望】なんだよ。・・・予想でしかないが、あいつは人間を災厄から救いたくてあそこに閉じ込められているのではないかな?最も、人間はいつもそれをいかす事はできなかったようだが。」
 
俺は枢機卿に日記を渡し、報酬を受け取った。
当初の予定では50億だったのだが、髪を渡したことと口止め料を込みで100億の仕事になる。
これで山や島を買う資金がつくることができた。
                   ・
                   ・
                   ・
≪プロメテウス≫
「やれやれ、私の正体に気がつくとはね。」
 
笑いをかみ殺しきれない。
災厄を予見しながら災厄を防ぐことができずに全てに絶望をしていた私は久しぶりに心が救われる気がした。
あれほど愛した人間が、私の与えた火を用いて殺しあうことをどれほど悔やんだことか。
それでも、それでもあの時私が人間に知識や火を与えずに入られなかったとしてもだ。
彼ならあるいは、私の予言を変えてくれるかもしれない。
彼から渡された髪の毛をつまんで彼の未来を予知する。
 
「くっくっく。やっぱりな。見えているのはずなのに私には理解することができないか。」
 
未来は見えている。だがそれが私にはなんなのか解らない。
解すること不可なり。
正に不可解。
 
「おもしろいなぁ。これほど面白いとは思わなかったよ。」
 
横島忠夫。私の愛する人間を、どうか災厄から守ってあげて欲しい。
よろしく頼んだよ。
不可解さん。


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