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No.9162の一覧
[0] 癒しの掌 (現実→オリジナルDQ TSモノ)[渋沢](2009/09/08 00:20)
[1] 第1話 「流されて傭兵団」[渋沢](2009/08/21 07:55)
[2] 第2話 「現実は小説よりも」[渋沢](2009/08/21 07:56)
[3] 第3話 「大人への階段」[渋沢](2009/08/21 07:57)
[4] 第4話 「騙す覚悟」[渋沢](2009/08/21 07:58)
[5] 第5話 「これも若さゆえ?」[渋沢](2009/08/21 07:58)
[6] 第6話 「脱走ところによりバイオハザード」[渋沢](2009/06/04 21:29)
[7] 第7話 「躾は大事です」[渋沢](2009/08/21 07:59)
[8] 第8話 「武術」[渋沢](2009/08/21 08:00)
[9] 第9話 「戦闘準備 ……準備?」[渋沢](2009/08/21 08:01)
[10] 第10話 「戦闘開始」[渋沢](2009/09/03 03:42)
[11] 第11話 「デッドライン」[渋沢](2009/09/03 03:42)
[12] 第12話 「団長の責任」[渋沢](2009/09/03 03:43)
[13] 第13話 「秘密の告白」[渋沢](2009/09/03 03:44)
[14] 第14話 「選択」[渋沢](2009/09/03 03:44)
[15] 第15話 「守りの力」[渋沢](2009/09/03 03:45)
[16] 第16話 「話し合いに似たナニカ」[渋沢](2009/09/03 03:45)
[17] 第17話 「神の愛し子」[渋沢](2009/09/03 03:46)
[18] 第18話 「新規則」[渋沢](2009/09/08 00:18)
[19] 第19話 「語らい」[渋沢](2009/09/08 00:19)
[20] 第20話 「恋するおとめん」[渋沢](2009/11/16 05:33)
[21] 第21話 「救援要請」[渋沢](2009/11/16 05:41)
[22] 第22話 「決める権利、決める義務」[渋沢](2009/12/22 06:12)
[23] 第23話 「光幕呪文」[渋沢](2009/12/22 06:21)
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[9162] 第11話 「デッドライン」
Name: 渋沢◆ce041ce8 ID:ff9c15c0 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/09/03 03:42


第11話 「デッドライン」



「アッシュ! アッシュ!?」

ロイの聞いたことのない悲痛な声に、キアは顔を上げることが出来なかった。事態を把握するのが恐ろしかった。

キアがこの呪文に反応できたのは、魔力というものに団員の中で一番敏感であったからだ。

須らく呪文というものは、発動前に魔力が発生する。

特に空間に直接発動するタイプは、その空間内に使用者の魔力が充満するのだ。

前世と今世、魔力がなかった時代とあった時代の二つを経験しているキアは、おそらくこの世界で一番魔力というものを肌で感じ取ることができる。

故に反射的に叫ぶことが出来た。

(どうして、どうして私は……)

あの呪文を防がなかったんだろう。出来たはずなのだ。

心底後悔していた。

攻撃系の呪文を向けられたことが始めてだったとか、とっさに対処できるほど戦闘経験を積んでいなかったとか、理由は色々ある。仕方がなかったと言い切ってもいい

だがそんなもの、今のキアにはただの言い訳に過ぎなかった。

体の震えが止まらない。キアは気づいていないが、涙が止まることなく溢れていた。

もしコレがただの攻撃呪文であれば、事態はまだマシだったかもしれない。どんな大怪我であろうとも、死んでさえいなければキアはなんとかする自信がある。

しかし、今回彼らを襲った呪文は……即死呪文だ。

まず間違いないと思う。実際に呪文を聞いたわけではない。だが自分の本能が、呪いのごとく暗い波動の魔力が、ソレを即死呪文だとキアに確信させている。

自分を責めるあまり、アッシュの死を確認したくないあまり、キアは顔を上げることができなかった。戦場で、敵がいる場所でその行為を行うことがどういうことかを考えることもできなかった。

「テオ、キアを!!」

団長の焦りを感じる声が聞こえる。

ふいに抱き上げられる感触。急に反転した視界の中で、団長を始め団員たちの背が見える。そしてそれはどんどん遠くなっていくのだ。

隣には同じようにアッシュを抱きかかえたロイが。

「っ! テオさん、離して! 降ろして!!」

もう足手まといはイヤだった。

「うるさい!! 大人しくしていろ!!」

今日は皆の聞いたことのない声色ばかりを耳にする。テオが自分に怒鳴るなんて初めてだ。抱きしめてくる腕の力は痛いくらいで、その表情もすごく痛ましい。

テオもいっぱいいっぱいだった。足手まといな自分が心底悔しかった。

かみ締めた唇から血が出ていることにもおそらく気づいていない。

あの時、キアが警告を発していなければおそらく全滅していた。

いつも親父からさんざん聞かされている。本当に恐ろしいのは力が強いヤツでも、技が凄いやつでもない。遠距離の呪文使いだと。

自分たちには外側にある魔力を察知することができない。殺気を感知できる距離であれば回避することも出来るかもしれないが、呪文の中にはこちらの知覚外から致命的な攻撃をしてくるものもいると。

分かっていた。分かっていたつもりだった。でも全然分かっていなかった。

真実そのことを実感として知っていたとしてもどうしようもない、あれはそういう類のものだ。しかしそれでも……

自分の力のなさが恨めしかった。離れていく背中の傍にいれないのが涙が出るほど悔しかった。

そしてそれ以上に、アッシュが心配だった。

そういえば、どうしてキアは警告を発することができたのだろう……?

「テオ、アッシュが、アッシュが……!」

涙混じりの声がロイから放たれる。実際泣いていた。

「無事なのか!? アッシュは、生きているか!?」

「脈が、どんどん弱くなっていってるんだ! どうしよう、このままじゃアッシュが、アッシュが死んじまう……!!」

変化は劇的だった。

大人しく、というより脱力してテオに身を任せていたキアがばっと顔を上げたのだ。そしてロイの腕に収まるアッシュを視界に入れた瞬間、



「止まれぇぇぇぇぇええええ!!!!!!!」



半ば反射的に足を止めていた。あまりの声量にテオなんかは鼓膜が破れるかと思ったほどだ。

「ッ!? き、キア?」

そして力が抜けた一瞬の隙を突いてキアはテオの腕から無理やり脱出した。具体的に言えば顎に肘入れた。

油断した一瞬を突いた会心の一撃だった。

「おおぉぉおぉおぉぉおおおううううぅぅぅぅぅうううう」

視界が、視界がブレる……!!

情けなくも地に蹲るハメになったテオだった。

何が起こったのかわからなかったロイだったが、「アッシュ降ろして!!」とすさまじい気迫を放つキアに半ば本能で従った。逆らえない何かがあった。

「キア? いったい何を」

「黙って」

「ハイ」

あれ、キアってこんな子だったっけ……?

ひきっつった表情をするロイを無視して、キアはアッシュの首筋に手を当て、脈を調べる。

たしかに、弱弱しかったがまだ生きている。呼吸も小さいながら行っている。

瀕死とはいえアッシュは確かに生きていた。

(よかった………)

これならば。

キアは溢れてきた涙を拭うと、すぐにアッシュの胸に手を当てた。

よく考えれば、この世界の呪文とキアの知識にある呪文には差異があった。ザキが即死の呪文でない可能性は十分にあったのだ。

お陰でどんな効果やらいま一つ分からないで習得している呪文もあるが、今はそれに感謝を。

休息呪文ベホイミ

見たところ外傷はなかった。ザキがどういった類の呪文なのかは分からないのが本当に困る。

おそらく、ホイミではダメだ。あれは傷の治療しかできない。

ザキが相手の体力を極限まで削る類の呪文だと想定して、ベホイミを使うことにする。

ふわり、と白い光に包まれるアッシュ。

「これ…は……」

ロイは目の前の光景に目を見開く。

いまだフラフラのテオも口をポカーンとあけた表情で固まっていた。

それは幻想的な光景だった。

月明かりの下、キアの手から放たれる白い光と、それに包まれるアッシュ。

なんだか一枚の絵画を見ている気分になった。

「あれは……呪文か?」

「……ああ、たぶん。見たことはないがきっと……回復呪文」

テオは幼い頃、リューに尋ねたことがある。一発で怪我を治すことはできないのか、と。

「そういう呪文はあるにはあります。ですが……きわめて珍しい呪文です。私が通っていた魔術学院のある都市でさえ、その類の呪文を使える人は都市全体でみても両手の指で数えられるほど。実際に見たことすらありません」

諦めて自然に治しなさいと言われてぶーたれた記憶が。

「なあ。じゃあアッシュは……アッシュは助かるんだな!」

「ああ、おそらく」

嬉しそうな声を上げるロイと、まだどこかボーっとしているテオ。目の前の光景がいまだ信じられないのか、先ほどの一撃がまだ効いているのか。

しかし、おそらくアッシュは助かる。

なんでキアがそんな呪文を使えるのかとか、なんで黙ってたとか聞きたいことは色々あるが、そんなものは今はどーでもいいのだ。

目の前の光景にだんだん現実味を帯びてきた。

二人は期待でキラキラした目でキアとアッシュを見守ることにした。

しかし一方、キアの表情は優れなかった。

(効いていない……? いや違う、回復した端から減ってるんだ。コレ、ただ単純に体力を削る呪文じゃない)

これでは命を繋ぐことはできるが、根本的な解決にならない。しかもキアの魔力が尽きるまでというリミットつきだ。

解毒呪文キアリー

毒かと思いキアリーを試してみる。白い光が消え、薄緑色の光がアッシュを包む。

(違う、これも効いていない。じゃあコレはどう?)

快復呪文キアリク

次は水色の光が。

しかしこれもまた効かない。キアの表情に焦りが浮かぶ。

(どうしよう……。落ち着け、落ち着け。ここで混乱したら今までの二の舞だ……)

他に何かなかったか……?

効果が分からなかった呪文の中で、ソレらしいものが……。

(……あった。あと二つ、ソレらしいのが)

覚醒呪文ザメハ

キィンと澄んだ音が周囲に木霊する。それに呼応するように今まで閉じていたアッシュの瞳がゆっくりと開かれた。

「……にぃちゃ………ん?」

「アッシュ!」

「目が覚めたか、アッシュ!」

違う……ッ!

テオとロイが嬉しそうな声を上げてアッシュの傍によるが、アッシュの表情は今だ苦しそうなままだ。

(失敗した失敗した失敗した……!!)

意識がなかったのは体の防衛反応だった。

起きているよりも眠っているほうが体に負担が掛からない。決して呪文で無理やり眠らされていたわけではない。それを無理やりたたき起こしたりなんかしたら……!!

「あッ……づぅ……」

案の定アッシュは苦しみだした。

小さな体を丸めて、荒い息を吐いている。

どう見ても治ったようには見えなかった。

「アッシュ、おいアッシュ!! しっかりしろ、しっかりしてくれよ!!」

「キア! アッシュは治ったんじゃないのか?」

二人の必死な声に、キアこそ叫びたい心境だった。

問いを無視して、キアは最後に残った呪文を発動させようと手を伸ばす。

(もしコレが効かなかったら……)

そう思うと、呪文を紡ぐのが怖くなる。

しかしこのままだと確実にアッシュは死ぬ。自分の恐怖なんてなんだというのか。

助けるのだ。絶対絶対助けるのだ。

もし効かなかったらずっとベホイミを掛け続ける。それこそ治療法が見つかるまで、ずっとずっと。何日でも何日でもだ。

それで自分がぶっ倒れたとしても、死んでしまったとしてもいい。

絶対に、治すのだ……!!

「シャナクッ!」

温かみを感じさせる橙色の光がアッシュを包む。

(お願い……!!)

それはすでに祈りを超えた何かだった。




※解毒呪文<キアリー>※
毒を中和する治癒系回復呪文。
薄緑色の光をしており、体内に潜む毒の類を無効化する性質を持つ。
また、体内だけでなく毒を含む物質から毒を中和することもできる。

※快復呪文<キアリク>※
体の異常を正常に戻す治癒系回復呪文。
水色の光をしており、狂った体の働きを正常に戻す作用がある。
具体的に例を挙げると頭痛、肩こり、腰痛、生理痛とか。実は風邪とか癌にも効く。

※覚醒呪文<ザメハ>※
精神を正常に戻す治癒系回復呪文。
光などのエフェクトはなく、澄んだグラスのような音が響く。
幻覚、洗脳、昏睡など意識に作用するものから開放する性質を持つ。



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コミカル0%のシリアスでお送りします。
0%……だよね?
シリアスが書けなくなったなんてまさかそんなバカなこと。




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