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No.3797の一覧
[0] 俺はここで生きていく (現実→オリジナルなドラクエっぽい世界) [ノンオイル](2009/03/29 23:44)
[1] 序章 第一話[ノンオイル](2008/12/19 22:25)
[2] 序章 第二話[ノンオイル](2009/02/24 02:50)
[3] 序章 第三話[ノンオイル](2009/02/24 02:50)
[4] 序章 第四話[ノンオイル](2008/12/19 22:26)
[5] 序章 第五話[ノンオイル](2009/02/24 02:49)
[6] 序章 第六話[ノンオイル](2009/02/24 02:49)
[7] 序章 第七話[ノンオイル](2009/02/24 02:51)
[8] 序章 第八話[ノンオイル](2008/12/19 22:27)
[9] 序章 第九話[ノンオイル](2008/12/19 22:28)
[10] 序章 第十話[ノンオイル](2008/12/19 22:29)
[11] 序章 第十一話[ノンオイル](2008/12/19 22:29)
[12] 序章 第十二話[ノンオイル](2008/12/19 22:30)
[13] 序章 第十三話[ノンオイル](2008/12/19 22:31)
[14] 第一章 第十四話[ノンオイル](2008/12/19 22:33)
[15] 第一章 第十五話[ノンオイル](2009/02/24 02:44)
[16] 第一章 第十六話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[17] 第一章 第十七話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[18] 第一章 第十八話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[19] 第一章 第十九話[ノンオイル](2008/12/19 22:35)
[20] 第一章 第二十話[ノンオイル](2009/02/24 03:14)
[21] 第一章 第二十一話[ノンオイル](2009/02/24 03:14)
[22] 【オマケその一】 魔法について ―― とある魔法使いの手記 3/29  【それぞれの魔法について】 追加[ノンオイル](2009/03/29 23:42)
[23] 第一章 第二十二話[ノンオイル](2009/02/28 19:22)
[24] 第一章 第二十三話[ノンオイル](2009/03/17 21:41)
[25] 第一章 第二十四話[ノンオイル](2009/03/19 18:13)
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[3797] 第一章 第二十三話
Name: ノンオイル◆eaa5853a ID:aa12ef82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/03/17 21:41
リアです……。
ここは……どこでしょうか。
真っ暗で何も見えません。
見えないだけ……それとも、わたしは気づかないうちに目を閉じてしまっていたのでしょうか。
どっちが前でどっちが後ろなのか……いいえ、それだけじゃなく、上下すらあやふやになっています。

『ほっほっほ。魔法が使えるようになりたいとな? ……なぜそんなに使えるようになりたいのじゃ?』

突然背後からそんな声が聞こえ、後ろを振り返ると、仄かに明かりが灯り、それとと共に、見覚えのある姿が浮かび上がる。
こちらに背を向けていて顔は見えないが、その背格好や声はよく見知ったものだった。

「ジジィ……?」

そこにいたのは賢者グレゴリ。
わたしを騙して変な契約をさせた張本人……。
いえ、騙した、というのは……正しくないです、ね。
ジジィは一応約束は守りましたし。
……それがたとえ、わたしが望むものではなかったとしても。

わたしは自分の身体に目を落としてため息を一つつく。

『魔法が使えんでも、お前さんの価値に、変わりなんてありはしないじゃろうに』

わたしはその声に顔を上げてジジィの背中を見つめる。

なるほど……夢、ですか。

……この言葉には聞き覚えがあります。
そして、その時のジジィの表情も。
何か懐かしいものでも見ているような優しげな眼差しに、声はひどく穏やかで。
まるで全てを見透かしているようなその視線に見つめられていると、わたしは無性に苛立ってしまって……。

『そ、そんな事、ジジィには関係ないでしょう!?』

そんな声と共に、ジジィの向こう側に、鏡でよく見る姿が浮かび上がります。

『アナタは賢者なのでしょう? わたしを魔法が使えるようにできるんですかっ!? それともできないんですかっ!!?』

その姿は、他人の位置から見れば滑稽な程に必死で。
しかし、その当事者であるわたしには、再び同じ状況になれば間違いなく、ああなると断言できる状態。

『わたしには……わたしには、魔法が必要なんですっ!!』

これは遠い遠い、今から数百年も昔の出来事。

わたしが数百年の眠りにつく事になった直接の原因であり、そしてわたしがユートと出会う切っ掛けでもあります。






           俺はここで生きていく 

          ~ 第一章 第二十三話 ~






「ん……んぅ……」

リアがバスケットの中で目を擦りながら身を起こす。
あの騒ぎから数時間後。
日は既に落ち、帰ってきた宿屋の部屋は蝋燭の明かりでユラユラと揺れている。

「起きたか?」

俺は刺激しないようゆっくりと声を掛ける。

「ユートぉ……? おふぁようごふぁいまふ……」

ろれつの回ってない声で俺を見上げるリア。
しかし、次第に目の焦点が合うと、すぐに顔が悲壮な物に変わる。

「ユ、ユート……、う……腕は……?」

「もう大丈夫だって。ほれ、この通り」

リアの目の前でグルグルと回したり、腕立て伏せをする。
リアは、そうまでしてようやくホッとした弱々しい笑みを見せてくれる。

大分参ってるみたいだな……。
……それでも。

頭にイレールの心配そうな顔が浮かぶ。

……このままにしておくわけにもいかない、よな。
俺は意を決して口を開く。

「……リア、俺に何か隠してること、あるよな? ……そろそろ話してくれないか?」

「な、何の事ですか?」

リアはそっぽを向いてしらを切る。
だが、そうはいかない。
悪いけど、今回は……逃がさない。

「……魔法」

「っ!?」

俺が呟くと、リアはビクッと小さな身体を震わせる。

「……やっぱりか」

「な、なんで……」

呻くように声を出すリアに俺は静かに考えを話す。

「リアさ、何回か今日みたいな事あったけど、それって毎回、魔法に関して話してる時だったからな」

Gモシャスに関してはまだよくわからないが、今は置いておこう。

「その時の状況を思い出すと、いつもリアが魔法を使うとか、そういった話になりそうな時だったから、さ」

「……ぃぃです」

俯いて小さな声で呟くリアに構わず俺は続ける。

「最初はそれでも気のせいだと思ってたんだ。Gモシャスの事もあったしさ。
……でも、“リアが魔法が使えない”んだ、って仮定すると、リアの行動がスンナリ納得でき……」

「もういいですっ!!」

突然顔を上げて大声で俺の言葉をさえぎると、すごい速さで俺へと向かって飛んでくる。
その必死の形相と迫力に、一瞬身体がすくんでしまったが、どんな事があろうと受け止めると決めていたので、目を閉じずにリアを見つめ続ける。
しかし、想像していた蹴りは飛んで来ず、かわりにリアは一瞬で俺の肩から証を取り出すと、俺に投げつけてきた。

「ええ、ユートの言う通りです! わたしには魔法が使えませんっ!!
……見てくださいっ! 証でもMPが0、ってなってます! どんなに努力したって使えるようになるわけがなかったんですっ!!!」

顔に叩きつけられ、下に落ちた証を、俺は無言で拾う。
表示をチラと見ると、リアの言うとおり、MP0/0の文字。

……今日の戦闘の時のリアの様子を見ていなければ、ここですぐに契約魔法の事を伝えていたかもしれない。
こんな魔法があって、これを使えばお前にも魔法が使えるようになるんだ。
だから、そんなに悲しむ必要なんてないんだ、と。

確かに、契約魔法の事をリアに教えてやれば、表面上はすぐにでも解決するだろう。
だが、リアのあんな様子を見てしまうと、その程度の事で問題が解決するような、簡単な物だとは到底思えなかった。
俺は、その場しのぎなんかではなく、もっと根本的な部分から、リアの問題を取り除いてやりたかったのだ。

俺は、リアの悲壮な顔を見るたびに、衝動的に話してしまいそうになるのを必死に抑えて話を聞いていく。

「予想が当たって嬉しいですかっ!? わたしが魔法が使えないのが、そんなにおかしいですかっ!?」

リアは涙を流しながら、激情のままに俺に拳を振るう。
相手にダメージを与えるためではなく、ただただやり場のない憤りをぶつけるだけの拳。
証のせいか、それともリアの力が弱いからか、顔は全く痛くなかった。
……しかし、その表情と涙混じりの声に、心が痛かった。

「……おかしくなんてない」

「嘘ですっ!!」

一際腰の入った拳が顔に入る。
その衝撃によろめきつつも受け止める。

「嘘じゃない。魔法が使えないからって、それがなんだっていうんだ。そんな事でリアの価値は変わらないだろう」

「うっ……」

一瞬リアの目に正気の色が宿ったが、すぐに涙にかき消されてしまう。

「うるさい……うるさいうるさい、うるさいですっ!! ジジィみたいな事言って!! ユートもジジィも、自分が魔法を使えるからそういう事が言えるんですっ!!」

リアはその小さな目に涙を湛えながら叫ぶ。

「わたしは魔法が使えなくちゃいけなかったんですっ! わたしは母さまの娘なんですから、魔法を使えないなんてあっちゃいけないんですっ!! 魔法が使えないわたしなんて……っ! ……そうです、そんなわたしなんて、生きていたって仕方がな「ていっ」痛っ!」

それ以上喋らせたくなくて、デコピンでリアの言葉を止める。
一瞬呆けた顔をしていたが、リアはすぐに怒りの形相になると、俺に噛み付く。

「何するんですかっ!」

「お前が馬鹿な事を言おうとするからだ」

「何が馬鹿なことですかっ! わたしなんて、生きて「ていてぃっ」あぅ゛っ」

おでこを抑えて涙眼で睨んでくる視線を受け流しながら、俺は考えていた。
まだ根っこの部分はわからないが、今のリアの話から、わかった事もあった。
リアの発した、母さま、という言葉。
細部はわからないが、何か目的があって魔法を使う事に固執していたに違いない。
そしてそれに固執しすぎて……。

……おそらく、典型的な目的と手段が入れ違ってしまった状態というわけなのだろう。
それを何とかわからせてやれば……。

「……リア、お前はなんで魔法が使いたいんだ?」

リアとしっかり目を合わせてゆっくりと問いかける。

「わ、わたしは、魔法を使えないと「俺はっ!!」……っ!」

性懲りもなく、また凝り固まった考えで話そうとするリアの言葉を、俺は少し大きめの声で無理やり遮った。

「俺は、こっちに着て早々死に掛けて、思ったんだ。最低限、自分の命を守る事ができる程度の力を持っていないといけないって」

リアが恨めしそうに俺を見上げる。
そんな冷たい視線に心が挫けそうになりながらも、俺は続ける。

「そして、危ない所を助けてくれたカッペやラマダを。色々良くしてくれたセディを、今度は逆に俺が助けてやりたくて、それができる力が欲しかった」

「………」

リアは睨みながらも、無言で俺を見つめる。

「……そして、何より」

俺はそんなリアにしっかりと視線を合わせる。

「俺の命を救ってくれたヤツを。右も左もわからない俺の傍にずっといてくれて、何度も挫けそうになった情けない俺を助けてくれていたヤツを。
……最高の相棒だと胸を張って言えるお前を、今度は逆に俺が助けてやりたいと、そう思って魔法が使いたかった」

「なっ……!」

リアは怒りとは別の感情で頬を上気させつつも、キッと俺を睨む。

「何をいきなり言うんですかっ。そんな適当な事を言ってわたしを丸め込もうだなんて……」

せわしなく赤く羽ばたく羽を見ながら、俺は続ける。

「適当なんかじゃない。俺はお前を守ってやりたい。……いや、これは間違いだってさっき気づいたんだったな。俺は、これからもお前と助け合っていきたい。いい相棒でいきたい。だから魔法が使えるようになりたかった。……でも」

「……でも、……なんですか……?」

「それは魔法じゃなきゃ駄目だ、何て事はない。もしも魔法が使えないなら剣の練習をして強くなる。剣が重過ぎて持てないっていうんだったら、俺にも持てる武器で戦う!
魔法じゃなきゃ駄目だ、剣じゃなきゃ駄目だなんて事はない。それはあくまで手段なんだ。俺にとってのそれが、魔法だろうとなんだろうと構わない」

「……手段」

俺の言葉を繰り返して呟くリアの目には、少しだけ理性が戻ってきていた。
涙も、さっき流れたのを最後に、新たな涙は流れていない。

「……リア。もう一度聞く。お前は、なんで魔法が使いたいんだ?」

「わ、わたしは……」

リアは自分の感情を表す言葉を必死に探そうとしていた。

リアの脳裏で、遥か昔の、そして、リア自身の感覚では数年程度前の出来事が浮かんでは消えてゆく。









……わたしの母さまは最高の母さまでした。
魔力が総じて高い妖精の村でも、一番の魔法の使い手で、しかも女王様直属の兵士。
村のみんなからは尊敬され、慕われていました。

流行病いのせいでわたしがまだ小さい頃に亡くなってしまったけど、それでも、母さまの姿は今でも覚えています。
綺麗な透き通る羽に、長く流れる水のような青い髪。
柔らかな微笑みは、見るだけでわたしを幸せにしてくれましたし、優しく抱きしめてくれた時の暖かさは、この先も決して忘れません。
母さまは、村中みんなの人気者でしたけど、その中でも一番母さまを好きだったのはわたしだと、断言できます。
本当に大好きでしたし、……今でも大好きです。

……母さまが死んでしまったあの日から、しばらくは何もする気が起きませんでした。
泣き続けて泣き続けて……。
食事も全く喉を通りませんでした。
そんなわたしを村のみんなは心配して、良くしてくれました。
それでも、慰めの言葉はわたしの耳には届かず、日に日に弱っていく身体に、このまま母さまの下へ行くのもいいかな、なんて馬鹿な事を考えはじめていた頃。

女王様がわたしに仰ったんです。
そんな情けない姿を見て、母さまが喜ぶのですか。
母さまが大好きなら、その大好きな母さまの誇れるような娘になりなさい。
そうじゃないと、母さまは安心して眠る事もできないのですよ、と。

それからは必死に魔法の練習をしました。
他人と同じだけ練習してもうまくいかないのなら、その二倍の時間。
それでも駄目なら、四倍の時間。
いつしか、食事と睡眠時間以外、全ての時間を魔法に費やしていました。
……それでも、わたしには魔法を使う事ができなかったんです。
練習以外にも、試せる事はなんでもやりました。
魔力をあげる練習方法があれば、全て試しましたし、魔力を増加させる食べ物があれば全て食べてみました。

それでも、結果は変わりませんでした。
皆は優しく、慰めてくれます。
あの母さまの娘なのだから、いつか必ず魔法が使えるようになるはずだ。
だから、そう焦らずに、もっと自分の身体を大切にしなさい、と。
女王様もわたしの身体を気遣ってくれました。
それでも、わたしにはこうする事しか思いつかず……、そして、そんな日々に疲れ切ってしまいました。
皆の優しい言葉も段々つらくなり、そして、あの日。
何もかもが嫌になり、わたしは妖精の村を……いえ、妖精界から逃げ出して人間界へとやってきたんです。

そして、人間界に来てすぐに、賢者と名乗るジジィに会いました。
そこで、ジジィは報酬をエサに、わたしに契約を持ちかけます。
その契約とは、わたしに魔法という報酬を渡す代わりに、召喚の魔法陣の一部になって欲しい、というものでした。
運が悪ければ数百年は眠ったままだ、とも言われましたが、母さまはもいない、そんな世界で、魔法すら使えないままに生きていく生になんの意味があるんでしょうか。
わたしは特に躊躇う事なくその話を受けました。
魔法を自由自在に扱える自分を、そして、そんなわたしを見て母さまが微笑む姿を夢見て、数百年の眠りについたんです。









「わたしは……わたしには、魔法を使えるようにならないといけないんですっ!」

リアは先程より幾分弱々しい声でそう叫ぶ。
俺は無言でその先を待つ。

「母さまの誇れるような娘に……、母さまが天国で安心して過ごせるくらい立派な娘にならなきゃいけないんですっ!!!」

リアは涙ながらに、想いを叫ぶ。
自分の母さまがどれ程すごかったかを。
そして、そんなすごい母さまの娘として恥ずかしいままでは、母さまが安心して眠ることもできない、と。
だから、わたしは魔法が使えないといけないのだ……と。

途切れ途切れに、そして、たまに激高したかのように声を張り上げながら訴える。
感情のままに叫んでいるせいか、要領を得ない部分もあったが、それだけに、かえってリアの心情は直接に響いてきた。

俺はその話を最後まで聞いて、一つ深く息を吐く。

母さま……か。

正直、リアの意見は、論理的とは言いがたい部分が多い。
しかし、今のリアにとってそれは真実で、矛盾等全く無い論理なのだ。

……はぁ。
しっかし、なんでコイツはこうも ―― に似てるんだか。
そんな顔見せられて、放っておけるかっての。

「……リア、お前の村の妖精って、みんな魔法を使えるのか?」

「……いえ、使えるのは半分くらいです」

突然話を変えた俺に、リアは戸惑いつつも、素直に答える。

「それじゃ、リアの母さんって、結構酷いヤツなんだな」

「なっ!?」

俺は心の中でリアの母さまに謝りつつも続ける。

「リアの母さんは魔法を使えないヤツが嫌いなんだろ? つまり、村に住んでる妖精の半分を嫌ってるわけだ。みんなから好かれてるのに自分は嫌うなんて酷いっ、っつ!……ぐっ」

「ユート、それ以上言ったら、アナタでも許さないです……」

リアは俺の顔に膝をめり込ませながらそう凄む。
が、俺も既に口に出してしまったんだ。
こんな所でひいてはいられない。

「だってそうだろ! さっき自分で言ってたじゃないか。“魔法が使えないと、母さまは誇ってくれない”ってさ! 自分の娘でも、魔法を使えない程度で誇れない程狭量だってんなら、魔法の使えない、それも赤の他人なら嫌うに決まってるだろ!?」

「違いますっ! 母さまは……母さまはそんな人じゃないですっ! 魔法が使えないからって他人を嫌いになんて……っ!!」

俺はその言葉を聞いて、少し調子を落として、口調を静かにする。

「……だったら、なんでリアの母さんがお前を誇りに思わないなんて思うんだ。お前の母さんは魔法が使えようと使えまいと、差別しないんだろ?」

「そ……それは、わたしが母さまの娘だから……」

「娘だったら余計にそうだろうが! お前の母さんは一度でもお前に魔法が使えないから駄目だとか言ってたのか!?」

「………」

「違うんだろっ!? そうやって、魔法を使えない駄目だとか言ってると、自分が母さんを魔法が使えないと差別するようなヤツだって貶めてる事になるんだぞ!」

リアは俺の言葉を聞きたくないとばかりに首を振ると、幼子のように叫ぶ。

「ユートにはわからないですっ! それでもわたしは魔法を使えなきゃならなかったんです!!」

泣きじゃくるリアに、俺は途方にくれていた。

「……なんでそんなに魔法に拘るんだよ」

……いや、本当はなんとなくだが理由はわかっていた。

おそらく、幼かったリアは、母親を失ってしまった悲しみから逃げるために、何かに縋らずにはいられなかったのだろう。
何かに打ち込まないと、悲しみから逃れられなかったに違いない。
そして、その感情が、リアが育つに連れて間違った方向へと少しづつずれていってしまったのだ。



俺はなんて声を掛けたらいいかわからず、しばらくリアの様子を見つめていた。
興奮のせいで大きく上下していた肩が、治まってくる。

「……なんで」

「……え?」

前触れなくポツリと呟いた言葉に聞き返す。

「なんで……ユートは怒らないんですかっ?」

「お、俺っ!? なんで俺が怒るんだよ」

予想外に唐突に怒られ、思わず素で反応してしまう。

「わたしは騙してたんですよっ!? 魔法が使えるって言ったのに……っ! わたしが魔法を使えていれば、塔で危険な目に合わずにすんだのにっ!
……あんな風に暗闇を怖がるようにならずにすんだのにっっ!!!」

「お前………起きてたのか」

俺は思わず目が大きく見開くのを感じた。









眠りについて、数百年後。
目が覚めて、わたしは変な人間と出会いました。
……出合ってから、まだそれほど時間が経ったわけではありませんが、がむしゃらに魔法の練習ばかりしてきたわたしには、ユートと過ごす騒がしい時間はとても新鮮で、とても楽しいものでした。

それでも、たまに思ってしまうのです。
わたしに魔法が使えれば、最初に塔で出会った時にユートを危険な目に合わせる事も無かったのに。
わたしに魔法が使えれば、ギンロのお化けに襲われた時も、すぐに助けられたかもしれないのに。
わたしに魔法が使えれば、わたしに魔法が使えれば、わたしに魔法が使えれば……。

それは、魔法についてユートに聞かれ、とっさに嘘をついてしまった罪悪感と共に、わたしに重く圧し掛かってきました。

そして、極めつけは昨日の夜。
ふと目を覚ました時に見た光景が頭から離れません。
蝋燭を前に、顔を蒼白にして震えるユートを見て、その口から毀れる言葉を聞いたとき、わたしは我慢できずに声を掛けていました。
どんな顔をしていいかわからずに、その場は寝たフリをしてやり過ごしてしまいましたが……。

その時のわたしは、もちろんユートの心配もしていたのですが、それよりも、ただただ怖かったんです。
わたしが魔法を使えないせいで、ユートをあんな目にあわせてしまったことが。
そして、いつか嘘をついていたことがばれて、ユートに嫌われてしまうかもしれないことが。
……ユートと一緒にいられなくなってしまうことが。

母さまに誇ってもらえないかもしれない、というのと同じくらい、その事が怖かったんです。

だからわたしは、たとえそれがいつかはばれてしまう事なのだとしても、少しでも長く、魔法を使えない事をこのまま隠しておきたかった。
そして、魔法以外で、ユートに何かを与える事ができる部分を持ちたかった。

それでも、唯一ユートに与える事ができたはずの魔法の知識は、魔法屋のせいで、あっけなく無意味な物になってしまいました。

そんな時に、思いの外、戦えたモンスターとの戦い。
もしかしたらこれでわたしもユートと肩を並べて戦えるかもしれない。
これでわたしの居場所ができるかもしれない。
そう思って、調子に乗ってしまって……、結局、またユートに怪我をさせてしまいました。

そして、今ではユートに魔法が使えない事もばれてしまったんです。



ふふっ……あはは……あははははっ。
馬鹿みたいですよね、わたし……。
一人でゴチャゴチャ悩んで、結局空回りして。

なにが、“わたしがいないとユートはダメですよね”ですか……。
そう言って、“だからわたしはユートの傍にいてもいいんだ”なんて思い込もうとしてただけじゃないですかっ!

もう……いいです。
わたしには……なにも。

なにも……。









「なんで怒らないんですか……っ! あんな怖い目にあったのはわたしのせいだっていうのに、どうしてそんな風に普通にしていられるですかっ!」

リアは泣きながら俺の胸を叩く。

「怖かったんでしょう? 辛かったんでしょう? わたしを責めればいいじゃないですかっ! お前が魔法を使えないせいで俺は暗闇が怖くなったんだって!! ……うぅっ……っく……グスッ…」

最後に一つ、大きく俺を叩くと、崩れ落ちる。

俺はそんな様子を見て……これ見よがしにため息をついた。

「……はぁ。リア、お前、意外とバカだろ」

「………」

リアは顔を俯ける。
その様は、これから俺に言われる罵声を全て受け入れる、そんな悲壮な決意が見て取れた。
自暴自棄になったともいえる。

……そんなだからバカだっていうんだ。

だいたいなぁ

「俺がお前を怒る理由なんてないだろうが」

「なんでですかっ!! わたし、知ってるんですよっ! アナタが昨日の夜……っ!」

「ああ、確かにさ、俺、暗闇……っていうか、狭くて暗い部屋か? それがトラウマになったっぽい。でも、どうしてそれがリアのせいになるんだよ」

「だって!! ……だって、わたしが魔法を使えていれば、あんな風に……」

「そりゃ俺だって一緒だろうが。俺があの時点で魔法を使えてれば。それか、剣を使えてれば。それとも、セディのような強さをもっていれば。
そんな“もし”があれば、確かにあの部屋で、あんな風に怖い思いしなかったかもしれない。
でも、そんな仮定に意味なんてないだろうが!
俺にも魔法は使えなかったんだし、剣だって無理。セディのような強さなんて、正直これから何年経てば持てるのかすらわからねぇ。なのにそんなことをゴチャゴチャ言う意味なんてあるのか?」

「で、でも! わ、わたし、嘘をついて……」

「嘘なんて誰でもつくっての! ……それに、リアのは嘘って言うより、魔法が使えないの知られたくなくて思わず……って感じの方が強いじゃねーか。あんなの、全く気にしてねーっての」

「でも……でもでも……っ」

なおも言い募ろうとするリアを手で制する。

「……それに、リアは自分のせいでああなった、って責めてるみたいだけどさ。俺はお前のこと、命の恩人だって思ってるんだぞ?」

「……わたしは何もしてません。助けたのはセディ達で……」

「そのセディ達を呼んできてくれたのはお前だろ? それも必死の形相でさ」

俺はその時の事を思い出してクククと笑う。

「確かに、俺はセディ達に救われた。でも、リアが急いで呼びに行ってくれなけりゃ、絶対に間に合わなかったんだ」

「わ、わたしは……」

「昨日の夜の事だってさ。確かに、体の震えは止まらないし、暗闇は怖いし、正直何がなんだかわけがわからなかった。
……でも、リアが声を掛けてくれて、お前が俺の傍にいてくれてるって考えたら、怖さなんて吹っ飛んじまったよ」

「……ぅ」

「昨日だけじゃない。こっちに着てからまだ数日だけど、右も左もわからない俺がこうして今も正気を保っていられるのは、お前のおかげなんだ。いきなり全く知らない場所に放り出されて、しかも帰れないかもしれないなんていわれて、普通、焦らないと思うか? お前がいたから、俺も今こうやって笑っていられる。
……俺にとってお前は、魔法が使えようと使えまいと、大切な仲間……、一番の相棒なんだ」

リアは、涙でぐしゃぐしゃになった顔を怯えた表情にして、それでも何かに縋るような目を、俺に向ける。

「わ、わたしは……魔法、使えなくても……いいんでしょう……か。母さまは……魔法が使えなくても、許して……くれるでしょうか……?
わたしを誇りに……、安心して眠ってくれるでしょうか……」

俺はできるだけ優しい表情を意識して、笑いかけてやる。

「一人の人間にこうまで言わせたお前が、お前の母さんに誇りに思われないわけあると思うか? 大丈夫、俺が保証するよ。リア・ビュセールは、お前の大好きな母さまの、自慢の娘だよ」

「……っく……グスッ……ぅ……ぅわああああああああああっ」

堰を切ったように泣くリアを受け止め、その髪を撫でる。
その感触を受けて、さらに大声で泣くリアを、俺はどこかホッとした気持ちで抱きしめていた。







リアはあれからしばらく泣き続け、さすがに疲れた様子で鼻をならして涙を拭う。
そして、一度俺を見上げ、目が合うと、少し戸惑ったように顔を俯ける。

「ユート……」

「……ん?」

「その……ありがとうございます。……ほんとうに」

そういってこっちに向けた笑顔は、涙で目は赤く、顔も少し腫れぼったかったが、憑き物が落ちたかのようにサッパリしていて、酷く魅力的だった。

「お、おぅ、まぁ気にすんな。俺も色々助けてもらってるし、さ」

俺は、その顔を直視していられず、顔を背けながら答える。
少しぶっきらぼうになってしまったかもしれない。

「でも」

急にわざと声色を変えるリアに視線を戻すと、そこには少しご立腹なお姫様がいた。

「わたしを奮い立たせるためとはいえ、母さまの事を悪く言ったのは許せません。最後にもう一度だけ、叩かせてください!」

「ちょ、おまっ! あれは……っ!!」

弁解しようとするが、リアの目は真剣で、全身で“反論は受け付けない”と言っていた。

「……はあぁ……しゃーねぇな。一発、だからな? その、手加減してくれよ?」

「考えておきます」

リアは全く考えてなさそうな笑顔で拳を握る。
その笑顔に、まぁ、仕方ないかという気分になってしまう。
……元気になったみたいだし、な。
俺は覚悟を決めて、目を瞑り歯を食いしばる。

そして、俺の顔の横で羽ばたきの風を感じると

「……んっ」

という声と共に、何か柔らかい物が頬に押し付けられた感触がした。

「へっ?」

間抜けな声と共にリアの方を見ると、目のほんの数センチ先の所に、顔どころか、全身、羽にいたるまで真っ赤に染めたリアが、こちらを怒ったように睨んで浮いていた。

「い、今……?」

「い、一発は一発、ですっ! な、何か文句ありますかっ!?」

か、勘違い……じゃ、ないよな?

「い、いや、文句なんて……いやっ! もう一発!! なっ、今度は唇にっ!! なっ……ぐっ!?」

「調子に乗らないでくださいっ!」

言い終わらないうちに、視界いっぱいにリアの赤い顔が広がったかと思うと、足の裏が唇に叩き込まれてしまった。





しばらく、居心地の悪い、それでも決して嫌ではないそんな微妙な空気が部屋に流れたが、リアが落ち着いたのを見計らって声を掛ける。

「……な、なぁ」

「なん……ですか?」

顔は当然の如くまだ赤く染まっていた。
少し照れくさそうに見上げる目を覗き込むと、しっかりとした光がある。
もう問題はなさそうだった。
俺はそんな様子を見て満足すると、疑問だったことを聞いてみることにした。

「結局、Gモシャスって、なんだったんだ? 魔法じゃないのか?」

「あぁ、それですか……」

リアは少し寂しそうに笑うと話し始める。

「わたしが魔法陣の一部になって数百年の眠りについていた事は、初めてあった時に話した通りです。でも、わたしがなぜ魔法陣の一部になることを了承したかは、まだ話してなかったですよね?
……もう想像がついているかもしれませんが、わたしは、魔法を使えるようにしてもらう、という条件で、魔法陣の一部になることを了承したんです」

「魔法を使えるように……? ……そういうことか!」

「……? ユート?」



その言葉を聞いた瞬間、ようやく俺はグレゴリのじーさんのやりたかった事がわかった気がした。

マリアさんに話を聞いて、少し気にはなっていたんだ。
何故、契約魔法以外の研究の発表をしなかったのか……。
それは全く逆だったのだ。
契約魔法以外のものを発表したくなかったわけじゃなく、契約魔法だけは、どうしても発表しなくてはならなかったんだ。

MPが無いせいで、魔法を使えないリアのために作った契約魔法を、どうにかしてリアに伝えてやるためには。

契約魔法は、その魔法の性質上、身体に魔法陣を書き込む人間……つまり、契約師が必要だ。
しかし、グレゴリのじーさんには、自分が生きている間には、リアの眠りが醒めないだろう事がわかっていたのだろう。
そのため、どうすればいいか考えたとき……、世界中に普及させれば、リアにも伝わるに違いないと考えたに違いない。
それで、その時代で一番有名だった……名前は忘れたが、ナントカっていう魔法都市で発表して広めようとしたのだろう。

だろう、だとか、違いないだとか、推測が多いが、そうだと思って考えてみると、スンナリ納得のいくことが多い。
契約魔法のシステムなどまさにそれだろう。
魔法力が無くても使えるようになる魔法。
これ程リアに適した魔法もない。

すごい……グレゴリのじーさん、あんたすげーよ!
契約とはいえ、リアのために一つの魔法を生み出すなんて!!
この話、リアに話したら喜ぶだろうな!
リアの喜ぶ顔が目に浮かんで、俺の頬も少し緩む。

……って、まてよ?
でも、それなら何故リアは契約魔法の事を知らなかったんだ?
普通、伝言なり何なり、わかるように残しておくものだと思うんだが……。

俺は首を捻りながら、考え込む俺をおいてさっきから続いていたリアの話に耳を傾ける。



わたしが数百年の眠りから目が覚めたのは、おそらくユートが召喚されたのとほぼ同時でした。
何かが揺れる感覚がして、急に目が覚めて……、そして、目の前に小さな水晶玉が浮いているのに気がついたんです。

その水晶玉には、ジジィのメッセージが入ってました。

『目が覚めたかね? ほっほっほ、気分はどうじゃな。この魔法が発動したという事は、すぐそばに異世界の者がおるじゃろう。そやつの事、よろしく頼むぞぃ』

言われて下を見ると、そこには人間……ユートが倒れていました。

「……そんな事はどうでもいいんですっ! それより、わたしとの約束はどうなったんですか!?」

『そうそう、これはメッセージを入れてあるだけじゃからの。何か問いかけられても答えられんので、そのつもりでおってくれ』

「………」

その言葉とは違い、会話が成り立っているような気もしましたが……まぁ、偶然なのでしょう。
わたしがどこかで見ていないのか辺りをチラチラ見回しているのをよそに、水晶玉は話し続けます。

『そうそう、それで、例の報酬の、魔法を使えるようにするという話じゃがな。リア、意識を集中して、Gモシャスと唱えてみるのじゃ!』

わたしは、言われたとおりに唱えてみました。
すると、体から光が発したかと思うと、次の瞬間、わたしは今までとは全く別の服を身に纏っていました。

「これは……?」

『やってみたかの? これはワシの研究の成果で、Gモシャスという魔法じゃ!! この魔法を唱えると、お主の着ているその服、Gスーツというんじゃが、それが別の服に変化するのじゃ! どうじゃ、すごいじゃろう!』

「……そ、それだけ、ですか? メラは、ヒャドは……ホイミは使えないんですかっ!?」

『それだけじゃないぞぃ』

で、ですよね、よかった……。

『なんと、その変化する服は数百種類にもおよぶのじゃ!! せくしーな服も何着か入れておいたぞぃ。好みの男がおったら、それで悩殺してやるんじゃな! ほっほっほっほ。
……まぁ、自分で選べんという欠点はあるんじゃが、それはどうでもよいよの? あぁ、それと、一日五回までしか使えんから、そこにも注意するんじゃ。使い切ると、元の服にもどってしまうからの』

……わたしは手のひらの震えを押さえ切れませんでした。
わたしはこんな魔法を手に入れるために、数百年も眠っていたんですか……!?
キッと睨みつけても、水晶玉はノンビリ喋るだけでした。

(『ふぉっふぉっふぉ、冗談じゃ! そう怒るでない。ちゃ~んと本当の魔法は用意……』)

何かまだ喋っていたようですが、わたしはあまりの怒りにそのボールを蹴っていました。
水晶玉は思ったよりもよく飛び跳ね、周りにあったガラスの容器をなぎ倒して、床に落ちると、何も喋らなくなってしまいました。
……まぁ、あんなバカなジジィの話なんて、聞く必要なんてないですよね ――



リアはそこまで話すと、ため息を深くつく。
俺はそんなリアの様子を見ながら、召喚された時の様子を思い出す。

……それで俺が起きた時、あんなにガラスが散らばってたってわけか。
地震だけのせいじゃなかったんだな……。

「……それでも、初めて使う魔法は、……嬉しかったんです。確かに望んでいたものとは違いましたけど……、何の役にも立たない、使えない魔法ですけど、それでも……嬉しいっていう気持ちはありました。
まぁ、結局は、本当に魔法を使えるようになったわけじゃなかったんですが……」

「本当に使えるように……ってどういうこと?」

「さっきジジィがGスーツを……って言ってたって話ましたよね。この服、Gスーツって言うらしいんですけど、Gモシャスってこの服以外じゃ使えないんです」

「へ?」

「ユートが起きる前に試してわかったんです。別の服を着て唱えても何も変化ありませんでした。……たぶん、この服自体に魔法がかかってるんじゃないでしょうか」

「あ~……そういうこと、か」

うん、ようやく理解できた。
そして、グレゴリのじーさんのアホな失敗も。
……なんていうか、このじーさん、本当、どっか抜けてるよなぁ。

たぶん、その水晶玉でも、『な~んちゃって! 実は魔法の件は別に用意してあるから安心するのじゃ! その服はサービスじゃよ』とか何とか吹き込んでおいたんじゃないだろうか。
で、リアの性格を考慮に入れてなかったのかは知らんが、最後まで聞く前にそのメッセージの水晶玉を壊されてしまった…と。
おそらくそんな感じなのだろう。

……正直、グレゴリのじーさんって、色々とすごいことやってるとは思うんだけどな。
なんかいまいちしまらないなぁ……。

俺は少し呆れながら、契約魔法の存在と、じーさんについて推察した考えを話す。
リアは最初、驚き戸惑っていたみたいだが、だんだんと自分の中に理解が広がっていくと、リアの目が少しづつ潤み出す。

(……まぁ、しまらないっていうのは確かだけどさ)

そして、リアは服を大事そうにかき抱くと、静かに涙を流す。

(リアにこんな表情をさせるのは、同じ男として少し羨ましい……かな)

目から涙を流しながら、それでもすごく嬉しそうな表情で微笑むリアは、言葉では言い表せないほどに、綺麗だった。








~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



――― 冒険者の証 リアのステータスその1 ―――


┏━━━━━━━━━━┓┏━━━━━━━━┓
┃      リ ア     .┃┃    ちから:  6┃
┠──────────┨┃   すばやさ: 19┃
┃    家出妖精     .┃┃  たいりょく:  5┃
┃    あ そ ぶ ま   .┃┃   .かしこさ:  7┃
┃    レベル : 3    ┃┃  うんのよさ: 13┃
┃   HP  6/10   ┃┃  こうげき力:  6┃
┃   MP  0/ 0   .┃┃   しゅび力: 32┃
┗━━━━━━━━━━┛┗━━━━━━━━┛
┏━ そうび ━━━━━━┓┏━ じゅもん ━━━┓
┃E:Gスーツ        .┃┃           .┃
┃               ┃┃           .┃
┃               ┃┃           .┃
┃               ┃┃           .┃
┗━━━━━━━━━━┛┗━━━━━━━━┛


レベル2 HP+2 ちから+1 かしこさ+1
レベル3 HP+2 すばやさ+1 うんのよさ+1


(*ステータス中の文字で、このドラクエ世界の文字で書いてある部分は太字で、日本語で書かれている文字は通常の文字で記述してあります)





~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



――― ??? ―――


私は、賢者グレゴリ様の下で魔法武具学を学んでいる、大勢の弟子の内の一人だ。
グレゴリ様は、世間ではあまり知られておらず、評価が低いのだが、世界中でも最高の賢者の一人だろうと私は確信している。

もっと研究成果を世に出せば、金も地位も名誉も思いのままだろうに、グレゴリ様はそのような事に興味はない、と仰って発表しようとなさらない。
我々弟子達としては、敬愛する師匠が周囲から評価されないのは我慢がならない部分もあるのだが、それでも、そういったグレゴリ様の性格も弟子達に慕われる要因の一つなのだから、仕方ないといえば仕方ない。

しかし、先日グレゴリ様は、契約魔法という新たな魔法の技術を、魔法王国フォルトゥーナで発表された。
世に出せばもっと名誉を得られる研究もたくさんあるのに、何故契約魔法だけを発表するのか、そして、何故ご自身で契約魔法を使われないのか(グレゴリ様は、魔法の研究者としては最高の腕を持つが、魔法使いとしての才能は残念ながら人並み以下の物しかお持ちになっておられなかったのだ)、私は気になって尋ねてみた。

すると、グレゴリ様は、ただ一言、『大事な大事な友のためじゃ』と、苦笑しながら仰るだけで、それ以上は教えてくださらなかった。
その時の少し寂しげな様子が、印象深かった。

私はこのグレゴリの塔で学ぶ弟子達の中で一番の新参者だ。
私がこの塔に来る前に、何かがあったのだろうか。
興味を覚えた私は、この事に調べる事を決心した。
それが昨日の事。

しかし、今日。

『良いジジィにはの、秘密がつきものなのじゃよ♪』

という言葉と、嫌に手慣れた様子のウィンクを頂き、その気持ちは一瞬で失せてしまった。



――― 大賢者グレゴリ 最後の高弟の日記より






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