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No.3797の一覧
[0] 俺はここで生きていく (現実→オリジナルなドラクエっぽい世界) [ノンオイル](2009/03/29 23:44)
[1] 序章 第一話[ノンオイル](2008/12/19 22:25)
[2] 序章 第二話[ノンオイル](2009/02/24 02:50)
[3] 序章 第三話[ノンオイル](2009/02/24 02:50)
[4] 序章 第四話[ノンオイル](2008/12/19 22:26)
[5] 序章 第五話[ノンオイル](2009/02/24 02:49)
[6] 序章 第六話[ノンオイル](2009/02/24 02:49)
[7] 序章 第七話[ノンオイル](2009/02/24 02:51)
[8] 序章 第八話[ノンオイル](2008/12/19 22:27)
[9] 序章 第九話[ノンオイル](2008/12/19 22:28)
[10] 序章 第十話[ノンオイル](2008/12/19 22:29)
[11] 序章 第十一話[ノンオイル](2008/12/19 22:29)
[12] 序章 第十二話[ノンオイル](2008/12/19 22:30)
[13] 序章 第十三話[ノンオイル](2008/12/19 22:31)
[14] 第一章 第十四話[ノンオイル](2008/12/19 22:33)
[15] 第一章 第十五話[ノンオイル](2009/02/24 02:44)
[16] 第一章 第十六話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[17] 第一章 第十七話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[18] 第一章 第十八話[ノンオイル](2008/12/19 22:34)
[19] 第一章 第十九話[ノンオイル](2008/12/19 22:35)
[20] 第一章 第二十話[ノンオイル](2009/02/24 03:14)
[21] 第一章 第二十一話[ノンオイル](2009/02/24 03:14)
[22] 【オマケその一】 魔法について ―― とある魔法使いの手記 3/29  【それぞれの魔法について】 追加[ノンオイル](2009/03/29 23:42)
[23] 第一章 第二十二話[ノンオイル](2009/02/28 19:22)
[24] 第一章 第二十三話[ノンオイル](2009/03/17 21:41)
[25] 第一章 第二十四話[ノンオイル](2009/03/19 18:13)
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[3797] 序章 第十話
Name: ノンオイル◆eaa5853a ID:aa12ef82 前を表示する / 次を表示する
Date: 2008/12/19 22:29
ユートだ。
焚き火がパチパチと音を立てている。
焚き火を囲む俺たちの影が木を揺らめかせ、少し不気味な雰囲気だ。
辺りはもう大分薄暗くなっていて、これから街に戻ろうとしても道中で夜になってしまい危険なので、今日はここで一泊することになった。
……干し肉って意外と美味いんだなぁ。
俺は火で炙っていい感じに柔らかくなった干し肉を噛み締める。
噛めば噛むほど味が染み出てくる。

「周りは暗闇で何も見えなかった! しかし、見えはしないが周りからはモンスター共の息遣いが確かに聞こえる。オラとラマダは慎重に……だが、大胆に歩みを進める!」

「うんうん、それで?」

「ふはは、そう慌てるなセディよっ!」

うん、少し塩味が濃いけどいけるいける。
白い飯があればすごく合いそうだ。
あぁ、酒の摘みとしても最高かもなぁ。
まっ、外の食事だし、贅沢は言えないけどな。
この干し肉だってセディに厚意で分けてもらった物だし、文句なんて言ったら罰があたる。

「暗闇から突然襲い掛かるモンスター! ヒラリと身をかわし、切り裂いて葬り去るオラ!! フッ、華麗なオラの剣さばき、お前達にも見せてやりたかったぞ」

「アナタが持っているのは剣じゃなくて竹槍じゃないですか……」

セディはリアにも渡そうとしていたようだけど『わたしはさっきのギンロの実でもうお腹いっぱいなので、いいです。……それに、お肉はあまり好きじゃないのです』ってことらしい。
あの身体でリンゴを丸々一個食べたんだ、入らなくても当然だろう。

「ついに暗闇を抜け、たどり着いた4階! しかし、そこに待ち構えるのは、なぜか通路いっぱいにひしめくモンスターの大群!! だが、オラは村一番の勇者! モンスターなどに怯みはしないのだっ!!!」

「それで、二人は一体どうなったんですか?」

「……なんで一緒に行ったはずのアナタが聞いているんですか?」

それにしてもあれは美味かった、また食いたいな……って駄目だ駄目だっ!
まだ影響が残ってるのか、気を抜くと思考がそっちの方に行ってしまう。
気をしっかりもたないと。

「オラは大地を一度強く踏み鳴らしてモンスターの群れにこう言ってやった! 『オラはイナカ村随一の勇者カッペ様だっ! この名を恐れぬならばかかって来い!!』ってな。わははは、どうだカッコいいだろう!!」

「まさに田舎っぺならではですね」

「田舎って言うなっ!! イ! ナカだ。イーナーカ!! 田舎じゃねぇっ!!」

「一緒じゃないですか」

「発音がちっがあああああああああああう!!」

……っと。
ぼーっとしてたらいつの間にか険悪な雰囲気になってるし。
ああもう! 少しくらいゆっくり感傷に浸らせろっての!
勢い込んで頼もうとしたら、野営やらの準備で肩透かしくらって、こっちは高ぶった感情を持て余してたってのに!
強い決意を決めての事だったから、透かされた時の脱力感が意外と大きかった。
少し八つ当たり気味に騒いでる二人を睨みつけるが、二人とも全く気づかない。
はぁ…。
俺は肩を落とし思う。
お前たち、なんでそんなに仲悪いんだ?






           俺はここで生きていく 

           ~ 序章 第十話 ~






「こ、この羽虫……! つぶしちまうぞっ!!」

「ふんっ! やれるもんならやってみなさいっ! イナカッペなんかに捕まるほどわたしは遅くありません!!」

二人は一触即発といった感じで睨みあっている。
そろそろ二人を止めないと本気でまずいな。
俺は援護を頼もうと残りの二人を見る。
ラマダは相変わらずニコニコしているが、我関せずといった感じ。
頼みの綱のセディも『とめなくていいのかい?』といった表情でこっちをただ見つめるだけで、自分から動く気はなさそうだ。
まったく、そう思うなら手伝ってくれっての!
俺は、掴みかかろうと腰を浮かしたカッペを見て慌てて抑える。

「ま、まーまー、そう熱くなんなって!」

「離せ少年っ!! そいつにはもう我慢なんねぇっ!! 締めてやるっ」

カッペは顔を真っ赤にして全身で怒りを示している。
力が強くて大変だが、押されつつもなんとか抑えるのに成功する。
気のせいか元々立ち気味だったカッペの茶髪がさらに逆立っている気がする。
……怒りでキレて金髪になるのはやめてくれよ、頼むから。
って、バカな事考えている場合じゃないな。

「まったく、これだから野蛮人は困るんです。生まれる時を数百年くらい間違えてしまったんではないですか?」

「うぐぐぐぐっ……」

「カ、カッペ、少しは落ち着けって! リアもっ!! 頼むからもう煽るなって!!」

俺の後ろにこっそり隠れてあっかんべーをしていたリアを諌める。
ってか、マジで煽らないでくれ!
鼻息がめっちゃ荒くなってる!
カッペは顔色に比例してどんどん力が強くなってくる。
これ以上はもう抑えておけそうにない!
俺は焦りを隠して後ろを振り返りリアを見る。

「な、カッペ、冷静になってくれ! リア、お前もお前だ。なんかお前らしくないぞ、いったいどうしたんだ?」

「らしくないって…、ユートに何がわかるって言うんですかっ!」

そう声を荒げると、森の暗闇に飛んでいってしまう。
…………だから、そういう所が、だよ。
リアは明らかに様子がおかしかった。
今も声を荒げていて、怒っていたように叫んでいたが、去り際にちらりと見えた表情は怒りよりもむしろ心細そうな、寂しそうな、そんな複雑な顔をしていた。
羽の色も元のまま澄んでいて、むしろ少し青みがかっていたし。
一体どうしたってんだ……?

「……いつまで掴んでるんだ、少年」

と、思いのほか落ち着いた声が上から降ってきた。
怒りも冷めてすでに冷静になっているようだ。
表情も普段通りに戻っている。

「あ、あぁ、悪い。……って! それどころじゃない、早くリアを追いかけないと!!」

どうやら気づかないうちに動揺していたようだ。
落ち着いて考えて、漸くこの暗い森でリアを一人にしておくのは危険だということに思い至る。

「おチビさんの事なら心配はないよ。この森で彼女に追いつけるモンスターはいないし、ここは森だからね。妖精にとっては自分の庭も同然だよ。むしろユートが探しに入るほうが危険だって」

慌てて腰を浮かしかける俺をセディが冷静に抑える。
でも、そうは言っても…。
視線の先の森はもうかなり暗い。
すぐそばに焚き火があるせいで余計に暗く感じる。
明るい時に見た木の生え方を考えると視線のほんの数メートル先にも木があったはずだけど、今はただの闇で何も見えない。

「だ、だからって、一人にしておくわけにも……」

「なーに過保護な事言ってんだ。あんな羽虫、ほっとけほっとけ!」

「これも神のお与えになった試練です。彼女にご教主様のご加護がありますように」

心配して森を見る俺を、カッペは興味なさそうに一瞥すると、座り込んで木にもたれる。
ラマダは元の世界とは少し違うが、十字に良く似た物を切って祈りを捧げている。
助けを求めてセディを見る。

「そんなに心配することないって。おチビさんにも頭を冷やす時間が必要だろうし。大丈夫、少ししたら絶対に戻ってくるよ。……勘だけどね」

「勘って……セディ」

俺が咎めるように言うと、セディは肩を竦めて笑った。

「そうバカにしたもんじゃないよ。僕の勘って良く当たるんだ。まったく根拠がないってわけでもないしね」

クスリとウィンクをする。
……ったく、一々こういう仕草が様になんな、コイツは。
その悪戯っぽい表情を見てると、不安な気持ちが落ち着いてくるから不思議だ。
まだ気にはなったが、なんとか俺は座り直して揺れる火を見つめる。
リアは心配だけど……それでも今の俺にできることは何もない……な。
感情のままに行動してまたあんな目に合うのは避けたいし。
それに、塔で見たリアのあの速さなら、セディの言うとおりモンスターと出合っても大丈夫のはずだ。

「んじゃま、気を取り直してさっきの話の続きといくか!」

カッペは立ち上がるとまた全身で語り始める。

「オラがカッコよく啖呵を切ったところからだったな。モンスターの大群は、それでもジリジリとオラ達の方へと少しずつ近寄ってきたんだ」

……コイツ、さっきまで怒ってたのに、切り替え早いなぁ。

「オラは一角ウサギの突進をヒラリと身をかわし、オオアリクイの体当たりをガシッと受け止め、スライムをズババッっと切り裂く! と、その時だっ! 別の方向からもう一体のオオアリクイが現れる!! あわやカッペ様、絶対絶命の大ピンチかっ!?」

カッペは少し開けたところで避ける動作や剣を振るう動作をしながら騒いでいる。
本当、ノリノリだな、コイツ。
でもカッペ。
さっきリアも言ってたけど、ソレじゃ切り裂くなんてできないから。

「だが、オラは動じることなく落ち着いて攻撃を避ける。空ぶって体勢を崩したをオオアリクイ! いまだっ!! その隙を見逃さず、すかさずメラを打ち込んでやったわ。わははははっ!」

「おぉ~~、すごいですねぇ……」

パチパチパチパチと、ラマダがニコニコ合いの手を入れている。

「ふっふっふっ! そうだろうそうだろう! オラのメラはそんじょそこらのメラじゃないからなっ! オラの熱い炎に燃やし尽くせないものはなああああいっ!!」

カッペはさっきまで座っていた切り株に片足を乗せると、上に向かって竹槍を掲げる。
バックにドーン、という効果音が入りそうな格好だ。

「あはははは」

セディは素直にカッペに話を楽しむことにしたようだ。
メラ、かぁ……。
……あ。
もしかして今ってチャンスなんじゃ?
携帯食料だから元々そんなに量はなく、既に皆食べ終わっている。
もちろん、カッペもだ。
さっきはタイミングが悪くて肩透かしをくらったが、今なら……!

「オラはメラを次々「そう、メラだよっ!」………どうした、少年、いきなり」

俺は少し強引に割り込んで無理やりカッペの注意を引いた。
こうでもしないと話聞いてくれないだろうしな、コイツ。

「なぁカッペ、俺にメラを教えてくれないか?」





俺がカッペに頼みたかったこと。
そう、それはメラを教えて欲しい、ということだった。
最初はラマダにホイミを習うほうが教え方も上手そうだしいいかな、と思ったのだが、塔の暗闇での戦いを思い出したらすぐに考えが変わった。
今の俺には攻撃手段が全くと言っていいほどない。
そんな状況で、たとえホイミを覚えて体力を回復できるようになったとしても、敵を倒しきれるとは思えない。
むしろジリジリとMPを削られて、最終的にやられてしまう事になるのは目に見えている。
それだったら何か一つでも確実な攻撃手段、つまりメラを使えるようになることを優先したほうが断然いい。
攻撃は最大の防御、ってね。
あの時は本当に倒すのに苦労したからなあ。
……はは、ゲームとかでプレイする時は、メラなんてめったに使わなかったんだけどな。
いつもホイミのためにMPを残していたものだった。
状況によって役に立つ物が違うって事だな。
まぁ、欲を言えばホイミもいつか使えるようになりたいけどさ。





「ユート……?」

セディが怪訝な表情でこちらを見ているのが横目に写った。
当のカッペは、気持ちよく話していたところに水を差されたせいか、少し機嫌が悪そうだ。

「あん? なんでオラがそんな事しなきゃならないんだよ?」

カッペは小指で耳を掻きながら、面倒そうに言う。

「カッペ、頼むよ! 俺も戦う力が欲しいんだっ!!」

俺はこの三人の世話になってばかりで何も返せていない。
そして、今のままでは今後も返せる宛がない以上、俺にはただただ頼み込む他なかった。
深々と頭を下げる。

「ユート、魔法なら街に――」

何か言いかけたセディを手で遮ってカッペが俺の前へと出てくる。
誠意が伝わったのか、真面目な顔で俺を真っ直ぐ見つめている。

「少年。なんでメラを使えるように……戦える力が欲しいんだ?」

そう言うカッペの目は意外な程澄んでいて、さっきまでの騒いでいた奴とはまるで別人だった。
正直、俺はハッとさせられた。
まるでまだ心のどこかに残っていた浮ついた気持ちを見抜かれたみたいに。
その目を見つめていると、ふと、無意識のうちに佇まいを直していた自分に気づく。
……これにはきちんとした答えを返さないといけないな。
俺は目を閉じて今一度、じっくりと考えた。







さっきセディに言われて考えた、俺にとって今一番大事な事。
そして、そのためにしなくてはならない事。
それは、この世界で生きていけるだけの力を早急に手に入れる事だった。
この世界には向こうにはなかった危険がたくさんある。
モンスターが存在する、というだけでその危険性は説明するまでもない。
しかし、それだけではない。
モンスターに対抗するための武器や魔法が普通にあるという事も大きな問題だと、俺は思う。
あまり考えたくはないが、盗賊や山賊がいるだろう。
治安もいい街ばかりではないだろう。
これから先何が起こるかわからない以上、ある程度の危険は自分だけでも切り抜けるだけの力が欲しい。
最低限そのくらいの力がなければ、この先何をするにしても上手くいくはずがない。

――自分の身すら守れない者が他人を守るなんてできるはずがない。

どこかで聞いたような言葉だが、今なら嫌というほど理解できた。
俺は今日だけで二回もミスをした。
そのうち一回は自分だけでなく、セディまでも危険に晒した。
もうあんな思いはしたくない。
俺にだってプライドがある。
守られて迷惑をかけて頼りきりで。
それでのうのうとしているような奴にはなりたくなかった。
今は傍にいないが、なんだかんだと助けてくれる小さな相棒を思いやる。
守られてるだけでなく、俺だって守ってやりたい。
危険は待っていてはくれない。
今すぐに、なるべく早く力を手に入れる必要があるんだ!
そう、俺は決してただ浮ついた気持ちからだけで魔法を習いたいと思ったわけじゃなかった。
もちろん完全にないとは言い切れないが、少しあるくらいなら意欲を増やすのに役立つはず。
……忘れてはいなかったが、気を引き締めるいい機会になったな。
カッペには感謝をしないといけないかな。







目を開けるとカッペは俺の事を静かに見つめて俺の言葉を待っていた。
セディとラマダも同様だ。
俺は一度息を大きく吸って吐き出すと、今の気持ちを正直にカッペに話すことにした。

「最初は…」

そう、最初は。
こちらの世界に来てこの世界がドラクエの世界だと知った時。
魔法が使えるかもしれない、という事実に何も考えることなく喜んでいた。

「格好いいから、という「気に入ったっ!!!」…………はい?」

『というだけだった』という導入から、『でも今は…』と続けようとした俺の言葉を遮ってカッペが大声を出す。
見ると満面の笑顔で笑っていた。
って、あのうカッペさん……?

「気に入ったぞ、少年! オラのメラを使う姿に感動して憧れて、それで使いたくなった、というわけだなっ!?」

腕を組んでうんうんと頷いている。

「い、いや、だから……」

あわてて訂正しようとするが、またも遮られる。

「いやいや、皆まで言うなっ! なかなか素直じゃないかっ! あの羽虫の飼い主にしておくには惜しいな! その調子でがんばれば名前で呼んでやらん事もないぞ! わはははは」

「おい、少しは人の話を……!」

腹が立つのを抑えて問いかけるが以下略。

「……ぷクク、オラも罪作りな男だな。女だけでなく男まで虜にしてしまうとは! ま~ったく、格好いいのも考え物だな!! くくく………なーっはっはっは!」

「…………、あぁ~もうそれでいいや」

コイツ人の話聞いてねぇ……。
結果的に教えてくれることになったからソレはいいのだが、納得いかない。
シリアスに考えてた俺がバカみたいじゃないか。
大声でバカ笑い声するカッペを見てると頭が痛くなってくる。

「ユート、さっき言いそびれたんだけど――」

「まぁまぁまぁ! いいじゃないですか、面白そうですし」

残りの二人がなにやら話しているが、残念ながら俺の耳には入ってこなかった。

「おい少年! 教えてやるからこっちに来るんだ」

と、さっきまでドタバタと槍を振り回していた場所に呼ばれる。
はぁ……。
まぁ、儲けたんだと無理やり納得しとくか。
俺はもう一つため息をつくと、なんとか気分を変えてカッペの元へ向かった。
どういう流れにせよ、これでやっと魔法を習うことができるんだ。
これでワクワクしなきゃ嘘だよな。





少し離れた場所に木の棒を立てると、戻ってきてカッペはこっちを見る。

「それじゃ、オラが言うように構えるんだ!」

カッペの隣に並んで立つ。

「まず、両足は肩幅に開いて、腰を落とす。んで、右手は腰に……そうだ。で、左手は右手の上にかぶせる様に」
ふむふむ…。
俺は言われたように構えてみる。

「おぅ、なかなか筋がいいじゃねぇか。いいか、その状態を忘れるなよ」

「ああ」

魔法使うのに構えなんてあったんだな。
俺は神妙に頷いてみせる。

「よし。それじゃ、その状態で手に力を込めるんだ」

おし、次は手に力を……。

「そして両手を突き出しながら腹の底から叫ぶ!! メラあああああああぁぁぁぁっ!!」

叫んだ瞬間カッペの身体が一瞬光り、突き出した両手から火の塊が飛んでいく。
飛んでいった火の玉は、少し離れた所に先程立てた木の棒にぶつかりそれを燃やし尽くす。
すごい。
すごいが……。

「さ、お前の番だ、やってみろ」

「できるかっ!! 叫んだだけで魔法が使えりゃ苦労しないわっ!!」

見物人の二人から小さな笑いが聞こえる。
頬が熱くなるのを感じる。
……くそっ、やっぱりコイツに教わるのは無謀だったか?
真剣に計画の考え直しを考え始めた俺に、カッペが俺以上に真剣な表情で静かに語る。

「少年。お前は試しもせずにそんな事できるわけがない、と。そう決め付けるのか? そんな事で諦めるのか!? 諦めは自分の限界を自分で狭めることになるんだぞっ!! お前の覚悟はそんなものなのかっ!!? お前のオラに対する憧れは、そんなものなのかああああっ!!!?」

「ぅ……」

それっぽい事を言いやがって、コイツは……。
いや、最後のは思い切り否定してやるけどさ。
確かに試しもせずに諦めるのはよくない……いや、そりゃわかるんだが、騙されている感がヒシヒシとするんだよな、本気で…。
少しづつ大きくなるギャラリーの笑い声がさらに不安を誘う。
ラマダまで口をあけて笑ってやがるし。

「くそっ、仕方ない。騙されたと思ってやってみるか。………………メラッ!」

「声が小さあああああぁぁぁぁぃぃいいっっ!!」

手を前に突き出しながら叫んでみる。
照れが入ったことは否定できない。
それでも大きい声で叫んだつもりだったが、カッペはお気に召さなかったようで、俺以上にでかい声で駄目出ししてきた。

「そんなんじゃダメだ駄目だダメ駄目だっっ!! もっとガーーーーーーーッっと、そしてぐわああああああっっ!!! っと唱えるんだ!!」

「わかるかっ、そんなんでっっっ!!」

「そうだ、そのくらいの声の大きさだっ!!」

ああもう、なんなんだよこれは!
ああ言えばこう言うっていうか、こう言えばああ言うというか…。
言葉にできない感情が頭の中で渦巻いて、非常にやるせない。
本気で断言できる。
コイツに教わったのは間違いだった!!

「さあさあさあさあさあっっ!!」

カッペが両手のひらで煽りながら近づいてくる。
だあああぁっ! もうこうなりゃヤケだっ、やってやんよっ!

「メラああぁっ!」

「まだ小さいっ!! もっとだ、もっと腹の底から力を込めて!!」

くそ、まだかっ!?

「メラあああああぁっっ!」

「お前の思いはそんなものかっ!! 全身全霊をかけて叫ぶんだ!!」

やってやる、やってやるよっっ!!
これ以上力を込めて叫ぶと、頭の血管が切れるってくらいに叫んでやらぁっ!!

「こんちくしょをおおおおおお!! メラあああああああああああああああああああああああああぁっっ!!!!」

と、叫んだ瞬間身体を不思議な感覚が走り抜ける。
そして、一瞬俺の体が光ったかと思うと、手のひらに暖かい何かが集中するような感覚がした。

「ぬおぉっ!?」「へぇ!」「……ふむ」

ま、まさか成功したのか!?
こんなんで!!?

と。

ぽんっ、と間抜けな音がしたかと思うと、手にあったあの暖かな感覚が嘘のように消えてなくなり、元通りとなってしまった。
いや、丸っきり元通りというわけではない。
突き出した両手のひらから二筋の細い煙が立ち上る。
……頼りないくらいか細い煙がものすごく哀愁を誘う。

「……ぷっ! ……く…くくっ」

……セディ、堪えようとしているのはわかるけど、正直普通に笑われるよりグサっとくるから。
後ろから聞こえるくぐもった笑い声に顔がメチャクチャ熱くなる。
ラマダがさっきみたいに声を上げて笑ってないのが唯一の救いか。
まぁ、いつも通りニコニコしてるから笑っているといえるのかもしれないけど。
……んで、問題は豪快に笑っているカッペだ。

「わはははははははっ!! ポンって、ポンって!! ククク……」

笑いすぎたせいで呼吸困難になってヒーヒー言っている。
ここまで豪快に笑われるといっそスッキリするな。

「メラ唱えて煙出すなんてやつ、オラ初めて見たぞっ! 才能なさすぎだ! ……ぷっ…くく…わはははっ、はははっっごほっごほ、げぇほっ!」





プチン。
何かが切れたような音が聞こえた気がした。
…………ああ、嘘だ。
思い切り笑われたらスッキリするなんて嘘だ。
コイツが笑うたびに怒りが燃え上がり、そして反対に感情は冷たく冷たく堕ちていくのがわかる。

「ごほっ、ぐほっ……くくっ…わはははっ、げほっ」

なぁ、父上様、母上様…。
コイツ……燃やしちゃって……いいよな?
いや、違うな。
コイツ、燃やしちゃうな?

「……俺の右手が真っ赤に燃える」

ぼそっと呟く。

「わははは……はぁはぁ…ふぅ。あー、笑った笑った! 少年、オラを笑い死にさせる気か! くくくっ」

まだ言うか。
セドリックとラマダは不穏な空気を感じ取ったのか、離れているというのに。
そう、二人はいつの間にか俺たち二人からかなり離れたところに避難していた。
なかなか懸命な判断と言えよう。
それに比べてコイツは。

「……って、あれ、どうした少年、そんな怖い顔して。お、おーい、二人ともなんでそんなに離れてるんだ?」

漸く気づいたのか、この単細胞は。

「コイツを燃やせと蠢き叫ぶ」

ああ、いい感覚だ。
身体中に何かが満ちているのがわかる。
これが魔力…なのか。

「うおおおおおおおぁあああああああああっっっ!!」

雄たけびと共に身体を巡る魔力を一気に右手に集中させる。
コイツは突然の雄たけびに腰を抜かしたのか、へたり込んでしまった。

「ちょ、ま、まてまてまてまてまてっ!! 少年落ち着け、ひとまず話し合おうじゃあないかっ! なんかソレやばいって!」

お前がそれを言うか。
それに俺はこれ以上ないくらい落ち着いているさ。
へたり込んだ男はぼんやりと光る俺の右手を見ながら、必死の形相でずるずると下がっている。
無様だな、今楽にしてやるよ。
俺はゆっくりと手のひらを向ける。

「な、なんなんだよその手はっ!! い、いや、その、ほら、さっきのは冗談! そう、ほんの冗談のつもりだったんだ! な、許せ、少年! オ、オラはカッペ様だぞ、お前の憧れの、最高に格好いい!!」

残念だが。

「お前に憧れた覚えはない。……メラ」

静かに呪文を唱えた瞬間、コイツが唱えたメラのゆうに数倍はある炎の塊が生まれ、そして一呼吸後に勢いよく飛んでいく。

「ぅわああああああああああああっっ!!」

炎は叫び声をあげる男を包み、骨も残さずに焼き尽くす!
……と思われたがギリギリで直撃せずそれてしまい、男の代わりに後ろの木を燃やし尽くして消えた。

「……何の真似だ、セドリック」

いつの間にか俺の腕を掴む男を見つめる。
俺が魔法を放つ直前に腕の方向をずらして男に直撃させるのを防いだわけか。
全く気づかなかったな。

「セドリック……? いや、何の真似……って、本気かい? 死にはしないだろうけど、あんなメラ食らったらただじゃすまないよ。軽い冗談に対しての仕返しにしてはちょっとやりすぎじゃないかな」

「構わん、コイツは燃やす」

男は自分に飛んでくる炎に死を見たのか、気を失ってしまったようだが、そんなことは関係ない。
俺はコイツを燃やすのみ。

「か、構わんって…。どうしたんだい、ユート。なんかおかしいよ? しっかりしなって!」

セドリックは俺の両腕を掴んで前後に揺する。
や、め、ろ、頭が揺、れ、……るって。
気…も…ち…わるく、なる、って、の!

「ちょ、セディ、やめろって、酔う酔う!」

俺は未だに揺すり続けるセディの手を何とか腕から振りほどく。

「あぁ、良かった、戻ったみたいだね」

セディがほっとした顔で言う。
戻った……?
なんの……いや、俺は。
ぼんやりと光っていた右手を見つめる。
さっきまで…俺は……!
俺はっ!?

「俺、今なにしてたっ!? なんて事を!?」

キレてカッペを殺しかけた事実が実感を伴って襲ってくる。
自分が自分じゃない、そんな身に覚えのある感覚。
意識はあって考えることはできるのに、異常な行動を取ってしまう。
我に返ると自分の取っていた言動が明らかにおかしいと気づくのだが、それまでは全く違和感を感じることができない。
感情や行動に違いはあれど、それはエビルアップルの時と似ていた。
……な、なんなんだよ、一体!?
身体の震えが止まらない。
俺に何が起きてるんだ……一体、どうしたら!?
頭を抱えて思わずしゃがみ込む……と。

――ふわり。

「落ち着いて」

そんな落ち着いた声と共に頭を抱きしめられる。

「今日はユートにとってイロイロあったからね。きっと疲れているんだよ。眠って明日になれば元通りになるさ」

ゆっくり、かみ締めるように言葉を紡ぐセディ。
いつの間にか震えは止まっていた。
……ふぅ。
一つ大きく息を吸って、そして、吐く。
また、か。
俺ってやつは本当に……。

「……固い」

「あはは、鎧着てるからね」

お礼を言うつもりだったが気恥ずかしくなって、違う言葉が飛び出る。

「あぁ。抱きしめられるならかわいい女の子が良かったー。 何がかなしゅーて男の胸に顔を埋めにゃならんのだー」

少し棒読みすぎたか?

「はは、またそれかい? ……もう大丈夫そうだね」

あぁ、お前のおかげでなんとかな。
セディの優しい表情を見ると、顔が熱くなる。
くそ、小さいな、俺…。
これ以上ないくらいに感謝している思考とは裏腹に、照れ隠しの言葉がどんどん出てくる。

「お前……まさかとは思うけど……そっちの趣味の人じゃないよな?」

膝枕の次はそっと抱きしめだもんな~、と付け加える。

「……? そっちの趣味って?」

何を言われたか全くわかってない様子のセディに心が笑う。
セディの両肩に手を置いて、一度目を瞑って開くと、深刻な表情で真っ直ぐに目を見つめる。

「な、なんだい…?」

我ながら無駄に凝った演出だけど、こうなったら止まらない。
面白そうだし、さっきは俺も笑われたからな、この機会にちょっと仕返ししてやれ。

「つーまーり! お前って、実は、所謂同性が好きな人だったりする?」

意識して意地の悪い顔で笑ってやる。

「…………っ!? そ、そんな事あるわけないに決まってるだろっ!!」

最初はキョトンとしていたが、俺に何を言われたのか理解した瞬間、顔を真っ赤にして慌てる。
あはは、いい表情サンクス!
ってか、セディのこんな顔、初めて見たな……実は結構からかいがいのあるやつなのかも、コイツ。

「わはは、冗談冗談! くくくっ」

「ユートッ!!」

怒って軽く手を振りかぶるセディからおどけながら逃げ出す。
表情は怒っているが、セディもどこか楽しそうにしているのがわかる。
(……本当、サンキューな)
この礼は言葉じゃなくて行動で返す。
今は無理でもいつか絶対に!

「友達だからね」

と、聞かれないようにこっそり呟いたつもりだった言葉にしっかりとした声で返されてしまい、思わず止まってしまう。
振り返って見てみると、口元にわずかに笑みを浮かべているが、真剣な表情でこっちを見つめていた。

「友達、だからね」

少し嬉しそうに自分に言い聞かせるようにもう一度呟く。
そんな顔でそんな事言われると、こっちが照れるっての!
俺の顔が赤くなっているのを見て取ったのか、笑いの色が濃くなる。
はぁ、まったく、コイツは……。

「……って…は……れ…?」

唐突に視界が暗く狭くなった。
あ~覚えあるな、この感覚。
…こりゃまた意識を失うな。
俺は下手に逆らわず、その覚えのある感覚に身を任せた。







「ユ、ユート!?」

突然僕の目の前で糸が切れたように崩れ落ちるユートに慌てて駆け寄る。

「あぁ、これはただのMP切れですね。疲れと一気にきて寝てしまっただけですよ」

避難していた場所からこっちにきて後ろから覗き込んだラマダ君が、落ち着いてそう診断する。
確かによく見てみると、ユートは穏やかな寝息を立てている。

「それにしても……面白いですね、ユートさんは。まさかあんな方法で魔法が使えるようになるとは思いもしませんでしたよ。なかなか豊かな魔法使いの才を持っているようで」

そうだった。
それどころじゃなくて忘れかけていたけど、ユートは契約もなしに魔法を使ってみせたのだ。
それも、様子がおかしかったとはいえ、初めてなのにあんな威力のメラを。
すごい。
素直にすごいと思う。
だけど、この流れはまずい。
この男が偶々この任務に参加したならともかく、もしも何か目的を持って来ていたのだとしたら……!
考えすぎかもしれないけど、“コイツら”はどこか怪しい!

「そうだね、僕も驚いたよ。でも、このくらいの魔法使いはそれこそたくさんいるからね。ユートもこのくらいでMP切れ起こしてるようじゃまだまだだよ」

……少しわざとらしかったかな。
これで誤魔化せるといいんだけど。

「……ふむ。それもそうですね」

笑顔に動きがなく、その表情からは何を考えているのか読み取ることができない。
常に笑顔というのは、実は無表情な人よりももしかしたら厄介かもしれない。

「さて、それじゃ私はカッペさんの方を見てみます。まぁ、なんともないでしょうが」

僕の言葉が功を奏したのか、そう言うと倒れたまま放置されていたカッペ君に近寄る。
――彼、ラマダ君の着ているローブはあの光の教団特有の物。
黒い色はただの一般信者の証だから考えすぎかもしれないけど、わざわざこんな任務に……何かひっかかる。
コランの城下街での事だって……いや、憶測で物を考えるのはやめとこう。
考えないのもまずいけど、考えすぎて泥沼にはまるのはもっとまずい。
とりあえず今は。

「火の見張り、どうしようか…」

4人いたはずなのに今は2人しか起きていない。
それはつまり、見張りの担当時間が単純に二倍になるということ。
僕も少し疲れてるんだけどなぁ。
幸せそうな表情で寝てるユートを見ているとため息が出てくる。
……はぁ。
少しの間鼻を摘んで、苦しそうになるユートの顔を見て溜飲を下げると、僕は少なくなった焚き木を取りに行くために立ち上がった。












~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



――― 悪魔の果実 ―――


危険度 ☆☆☆☆☆
希少度 ☆☆☆
価値  ☆☆☆☆


・内容
別名『傾国の果実』。
ただの一度のみではあるが、食した者のMPと魔力を上昇させるという効果を持つ、奇跡の果実。
魔法を扱う者に取って、その価値が計り知れない程高いことは容易に想像がつくだろう。
では、なぜ悪魔の果実や傾国の果実といった名前で呼ばれているか。
それは、この果実は食したものに奇跡の効果の代償に恐ろしい副作用をもたらすためだ。
この効果の副作用には個人差が存在する。
一日中眠りにつくという軽いものから、食した瞬間に死に至るという重いものまで様々だ。
他にも、破壊衝動に襲われる、精神に異常をきたす、特定の食物に異常な関心を示すなど、その副作用は多岐にわたる。
また、効果の時間も一生直らなかったという事例から一時間で直ったという事例まで、こちらも個人差がある。
これだけならまだ、危険性と効果を天秤にかけ危険に軍配があがる者が多かったかもしれない。
だが、この果実の悪魔たる所以は、全く副作用を受けずにすんだ人物が存在した、という所にある。
その幸運な人物は決して多くはないが、その幸運な者達の多くが大魔法使いとして名を上げてしまった。
食するだけで大きな力を手に入れることができる。
そして、危険はあるが無事に済む場合もある、という誘惑がこの果実を求める者を大量に作った。
数百年前まではこの果実を入手する方法が確立されていたらしく、大金さえ積めば手に入った事もその風潮に拍車をかけたのだろう。
幾人もの人間がこの果実に挑み、そして儚く散っていった。

その最たるものが彼の有名な『魔法王国フォルトゥーナの悲劇』だろう。
今から約200年前。
当時、魔法大国として並ぶ国がない程に名を馳せたフォルトゥーナでこの果実が大量に出回った事が全ての始まりで、そして終わりだった。
国で最強の魔法使いでもあった国王テュケー四世を始め、国の上層部のほぼ全員がこの果実の誘惑に耐えられなかったのだ。
そして、それは上層部のみならず一般市民に至るまで及んだ。
もちろん、幸運にも無事に生き残った人間は何人もいた。
しかし、この国を襲った最大の不幸は、国王テュケー四世の副作用に破壊衝動が現れてしまったことだろう。
その結果、この国は最初に果実が出回ったと確認されてからわずか2ヶ月で、国王自らの手で滅亡してしまった。(この話は『傾国の果実』という諺の語源として伝えられているため、知っている者も多いだろう)
当時の各国首脳はこの事態を重く見て、この悪魔の果実について、見た目や味等、果実を特定するのに至ってしまう情報を破棄し、民に語り継ぐ事を禁じた。
しかし一方、自戒のためにこの悲劇や悪魔の果実の存在、そして危険な副作用については詳細に記し、後世に伝えた。
そのため、存在や奇跡の効果、そして危険な副作用についての記述は数多く残っているが、それに反して外見や味については全くと言っていい程資料がない。
この徹底振りからも、彼らがどれ程この問題を重要視していたかわかるだろう。


・評価
多数の症例があるという事は、それだけこの果実が存在する、という事に他ならない。
それだけならば希少度は☆一つだったのだが、現在その入手方法が完全に失われているという事を加味して☆を三つとした。
現在も、恐れ知らずな魔法使いが独自に多額の懸賞をかけたりしているため、価値は☆四つ。
そして、危険性には☆五つを与えた。
このことについては最早語ることもないだろう。


・著者 ジャギウ・ドーキュア
・参考文献 『大魔法使いポイボスの生涯』、『魔法王国フォルトゥーナの隆盛と衰退』、『失われた魔法と新たな魔法』


――― 冒険者の友 天空の章 呪いの項 2ページより抜粋 



~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~



――― 冒険者の友 天空の章 呪いの項 序論 ―――


この『呪い』の項では天空の章の他の項、即ち『武器』『防具』『道具』『伝説』に入れるのは危険と判断された物を取り扱っている。
価値の面では『伝説』に含めても遜色のない物もあるが、少しでも危険のある物はこちらに記載してあるので、注意されたい。
賢明な冒険者諸氏の中には様々な理由からこれらのアイテムを追い求める者達もいるだろう。
だが、その場合は行動に移す前にこの項を熟読し、その利益と危険性をよく吟味した上で臨んでもらいたい。
私の記した知識が諸君の道を照らさんことを願い、ここに記す。


――― 編集者 コバク・リューノ


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