進め! へっぽこ勇者(?)様!天聖武神杯本戦・第一回戦Ⅱ ~なんか審判もすごい人達でした~・ ――――ユウキです。 只今、遺書を執筆中です………… カリカリカリカリカリカリ…………「ぴっきゅ! ぴききっきぴきゅぴー!(アニキ! 正気に戻るッス!)」「ユウキくん! 地面に石で遺書を刻んじゃダメよ………」 やんわりと俺の肩に手を置いて言うマリアさん。「ほれ、さっさと戻るぞ………」 ズリズリズリズリ……………「え゛う゛ぅぅぅぅぅ……………(泣)」そして、デュオンさんに首を捕まれベンチへと引きずられてゆく俺。(BGM・ドナドナ)そんな様子を、冷や汗を垂らしながら、夜の騎士(ナイツ・ナイツ)の面々が見守るのだった…………「HAHAHA! 災難だなぁ、ボウズ………」そしてベンチには、何故か、一杯やってるおっちゃんが居ました。「おっちゃん何故ココにっ!?」 ―――――確か、昨日の夜ホテルまでは一緒に帰ったはずなんだが………… 朝起きたら、もう居なかったし………「………おう、あの吹っ飛んでったニャン公が気になってなぁ………ちょいと探しに行ってよぉ………見つけたのは良いんだが、案の定落ち込んでたんでなぁ、慰めるために朝まで二人で呑んでたのさぁ…………」 げふぅ~………と酒臭いゲップをかますおっちゃん。 そういえば心無しか顔……って言うか、頭蓋骨が赤いな………「――――って、いやいやいやいやそうじゃなくて! 一体どうやって此処まで!?」 基本、控え室もベンチも選手以外は立ち入り禁止だ。 エルゼさんはチームブレイブの監督的存在なので、関係者として登録しているから入れるだけなんだが………「そりゃあもちろん、こっそりと、な………ねねこのヤツはダメだったみたいだがよぉ………」 若干、遠い目をしつつ、明後日の方向を向くおっちゃん。 「をい。」―――――やっぱり…………ノゾキで磨いた潜入スキルを再び活用しやがったな……… って、ん? そういえばねねこのヤツは………?・ ―――――同時刻、闘技場入口付近。「ほんとにゃあああ!!! 信じてくれにゃああ! ねねこ、『チーム・ブレイブ』の関係者にゃああああ!!」 ――――――ダダダダダダダダダ!!!「ええい、黙れ! 怪しいヤツめ!」「ウソつけこのやろう! 入りたかったらチケット買え! チケット!」「参加チームの関係者って名乗ってタダ見しようとは………ずうずうしいヤツめ!」「俺たちだって見たいんだぞ、本戦! クソ! 今日シフトさえ入ってなければ………うぅ………(泣)」「泣くな! 不法侵入者をとっ捕まえて特別ボーナスを貰って、スペシャルチケットを買うんだ!」「よっしゃ! 俺たちの輝かしい未来のために…………待てぃ侵入者っ!!!!」「なんでこうなるにゃああああああああああ!!!!!!(泣)」 ―――――――スドドドドドドドドドドドドドドドド!!!!! 警備兵達に追い回されている、ねねこであった………・ ―――――ま、いっか。どうせねねこだし、そのうちひょっこり顔出すだろ。『えー、それではー、試合前に、本戦審判団を勤めます、“裁定者(ジャッジメント)”より派遣されました、我々『十二審将(ツヴァイツェーン・ジャッジ)』の自己紹介をさせていただきま~す!』 司会のお姉さんの声が、再び響く。「………何ぃ? “裁定者(ジャッジメント)”の『十二審将(ツヴァイツェーン・ジャッジ)』だと………!」 意味深に呟くおっちゃん。 これは………「――――知っているのか? おっちゃん!」 間髪入れず合いの手を入れる俺。 瞬間、世界が宮下あ○ら画っぽくなる。「ああ………“裁定者(ジャッジメント)”ってのはな………完全中立を謳い文句に、国家間の戦争からマフィアやギャングの抗争、さらに夫婦間の離婚調停まで、依頼されれば、なんでも裁定する組織の事さ………一切のイカサマも見逃さねぇ、如何なる権力にも屈さねぇ、清廉潔白かつ正確無比なその裁定は、世界的に信頼も高い………。それだけに有名な大会、武術会には、ほとんど審判を派遣してるしな………。そして、『十二審将(ツヴァイツェーン・ジャッジ)』ってのは、組織に君臨してる幹部であり、トップクラスの審判12人だ。本来は、主に国家間戦争とか犯罪組織の抗争なんかの荒事が専門なんだが………」「荒事が専門………?」「万が一のときは実力で鎮圧できるって意味さ………結果に逆恨みした組織や軍隊なんかを相手にな………」 ―――――怖っ!? そんなスゴイ人たちが審判やるの!? うっかり反則なんかしたらその場で殺されそうだ………なんか怖くなってきた…………(泣)「まあ…………あの『十二審将(ツヴァイツェーン・ジャッジ)』が審判を勤めるなら、幾ら女王でも判定に小細工も何も出来やしないだろうね。なにせ40年前の降魔戦争でも“完全中立”を宣言して一切戦いに関与しなかった連中だし………その辺は安心だろうさね…………」 ポツリ、と呟くエルゼさん。 なんか今さらっとすごい事言った気がするのは気のせいでしょうか…………『えー、まずはAブロックを担当する主審、そして副審二名を御紹介いたしま~す! まずは副審を務めます、コードネーム『マスク・ド・タイガー』!』 ――――と、名前を呼ばれた瞬間、まるで空間から溶け出すように、一人の男が現れる。筋骨隆々の身体をタキシードに包み、肩や胸は筋肉で弾けそうなほど。 そして、顔には虎のマスクをすっぽりと被って、腕組みをしている。 その手の甲に、漢字で『寅』と彫ってあるタトゥーが見えた。『そして同じく副審を務めます、コードネーム『みるきぃ☆マウス』!』 次の瞬間、舞台に、ボワン! と音を立て、ピンクの爆煙が上がる。 その煙の中から現れたのは………見た感じ15,6歳の娘………なんだけど……… ベリーショートの黒髪に、某千葉なのに東京なランドで売ってそうなネズミの耳っぽい飾りが付いた、ピンクのカチューシャ。 そして、フリフリのフリルやポンポンなどの、派手な飾りが付いた……… はっきり言ってしまえば魔法少女風のド派手なピンクの服。 御丁寧に、手にはハートと羽のくっ付いたステッキまで持っている。 いろんな方向を向いては手を振って、愛くるしい微笑を向け、観客の、主に男性陣から黄色い声援を受けていた。 そして彼女にも、二の腕に『子』のタトゥー。『そしてっ! 主審を勤めます、私っ!』 刹那、突如観客席から一人の少女が飛び降り、舞台に着地する。 前髪で目を隠している以外は、普通の町娘に見える。『ある時はただの町娘…………』と、次の瞬間どこからか取り出したマイクを手に、その服を脱ぎ捨てる…………と、其処には全くの別人に見えるメイドさんが。『ある時はメイドさん!』 再び服を脱ぎ捨てる………其処にはまた別人に見えるウェイトレス。『またあるときは酒場のウェイトレス! しかして、その正体はっ!?』 そしてまた、再び服を脱ぎ捨てる。 其処に居たのは…………うさみみバンドに網タイツ、そしてバニースーツのバニーガール………さらにジャケットに、蝶ネクタイを装備した、いわゆるフォーマルバニーというヤツだ。 そして、顔には仮面舞踏会なんかでよく付ける、目の周りだけを隠す仮面。 しかも胸でかっ! 分かりやすく言うならばマリアさん以上エルゼさん以下だな……… そして、うなじ斜め下、肩甲骨の辺りに『卯』のタトゥー。『七色七変化、『キューティ・バニー』!。わたくしがAブロック主審、および審判長、さらに司会進行と実況を勤めさせていただきま~すっ! みなさ~ん、宜しくお願いしま~す!』舞台の上をくるくると回り、ウサギのようにぴょんぴょん跳ねながら、周囲に手を振る審判長。 そのたびに、豊満な胸がブルンブルン揺れる。 嗚呼………素晴らしい目の保養や………先の『みるきぃ☆マウス』と二人で揃ってパフォーマンスする姿は、まるでアイドルユニットさながらだ……… その後ろに控えてる『マスク・ド・タイガー』はマネージャーかな?―――――ワアアアアアアアアアアァァーーーーーーッ!!!! 観客席から歓声が上がる。 完全にアイドルのコンサートのノリだ。『では………以上我々三名が、影のように身を隠し、厳正な審判を勤めますっ!』 ――――刹那、掻き消えるように、消えうせる三人の姿………「すげぇ………なんかもういろんな意味で………」 呆然と突っ立って、誰も居なくなった舞台を一人眺める俺。『………それでは、両チーム先鋒、前へ!』闘技場に響く、審判長の声が俺の耳に届く。「(一体ドコから実況してんだろ? いや、それよりも、先鋒、誰かな? やっぱトップバッターだからな………ここは、勢いを付けるためにもデュオンさんかな…………?)」―――――とか考えながら、『必勝』と書かれたハチマキ、『勝利』と書かれたうちわ、二つに割れるハリセンメガホンの応援三点セット(ホテルの売店で10G)を手に、完全に応援する気満々な俺の肩が、ポンと叩かれる。「ユウキ、お前だぞ」 (゚Д゚)? 状態でゆっくり振り返ると………そう言いながら、にっこりと微笑む、デュオンさんが。「………………(゚Д゚)?」呆然とする俺に、エルゼさんがニヤニヤしながらメンバー表を俺に突きつける。【チーム・ブレイブ 一回戦メンバー表】先鋒『ユウキ=ソウマ』次鋒『デュオン=ヴァルザード』中堅『バシュラ=ヴァルゼオン』副将『シャリア=ウィンザード』大将『血濡れの聖母(ブラッディ・マリア)』夜の騎士(ナイツ・ナイツ)のメンバー表もあるけど…………名前だけじゃ誰が誰だか全然わかんないな~………アハハハハ………「トップバッター…………俺ですか?」 思わず自分を指差し、呟く俺。「ま、今回はね…………そう言うこと。さ、行ってきな」 ぴっ! っと舞台を指差しつつ言い放つエルゼさん。「ユウキ、がんばれ~♪」「…………ま、気楽にやれ」「がんばりなぁ、ボウズ………」「ユウキくん、ネバーギブアップよ!」「原形とどめて帰ってこいよ~………」 かくして、俺は皆から見送られつつ、再び舞台へと向かう。「うぅ………いきなりかよ………緊張するなぁ………」 独り言を呟きつつ歩きながら、一応装備の確認をする。 リュックにはスラっちを潜ませ、腰にはひかりんと【世界樹の刀】。 リュックの肩口の辺りには【聖なるナイフ】も潜ませてあるし、ジャケットは防御力を上げるためにチャックを閉めてある。 リュックの中には秘策用アイテムも幾つか用意したし………なんとかなるかなぁ?とか何とか考えてるうちに、舞台の前に。シュバッ! と飛び乗れればかっこいいんだけど…………ここは大人しく階段を登って舞台の上へ。―――――――ブーブーブーッ! ブーブーブーッ! ブーブーブーッ! ブーブーブーッ! うう、ブーイングが何気にキツイ………orz でも………ユウキ負けない! いや、パロってる場合じゃねぇし……… カツカツカツカツ…………階段を上がって舞台の上へ、其処には、すでに俺の相手が待っていた。鎧一つ身つけず、袖なしのシャツに軍隊風なズボンとブーツ。腰に剣を一振り、そして棺桶のようなでっかい長方形の箱を担いで居る。茶色い瞳に、やや長めな金髪の男。歳は………22、3てとこか? …………いったいあの箱、何入ってんだろ?大型水晶スクリーンには[ユウキVSレクス]と表示される。「…………チッ、ハズレかよ…………」 うわ、レクスに舌打ちしながら睨まれた……… 確かにハズレですけどね俺………否定できねぇもん……… よし、だったら………むしろ………! 真正面からレクスを睨み点け、俺は叫ぶ!「じゃあ…………最初に言っておく! 俺はか~な~り弱い! だから………お手柔らかにお願いします………」 ――――バッ! 迷わず土下座する俺。 アイ・アム・ノープライド。 それが俺クオリティ。――――――どごぐしゃっ! ×いっぱい 闘技場中の人間が一斉にズッコケる。 まぁ、試合前にこんなことやらかしたのは俺が前代未聞だろうな………。 ベンチの『チーム・ブレイブ』の皆さんは………慣れてるせいか、冷や汗かいてるだけか………「ぬぐぅ………やる気あるのかテメェっ!?」 よろよろと身を起こしながら、言い返すレクス。「当ったり前だッ! 俺はいつでも常にどうやったら生き残れるかを最優先に全力で考えているっ!」 立ち上がりながら言い返す俺。「だったらさっさとギブアップしろっ!」 うがー! という感じで若干キレながら俺に言い返すレクス。「それは、のっぴきならない事情が有りまして………できないんです………(泣)」 るー、るー、と涙を流し、肩を落としながら答える俺。「事情…………?」「ギブアップした場合…………チームメンバーから、シバいて治すの∞ループなオシオキが待ってるんです…………うぅ………(泣)」 あれ………眼からしょっぱい汗が………止まらねぇ………「おまえ………なんかいろいろと大変なんだな…………いや、なんて言うか………俺が言うのもなんだが…………ガンバレ! きっと言い事有るさ………うん……」 ―――――対戦相手に同情されている俺だった…………「うぅ………ありがとうございます………」 嗚呼、なんかエエ人や………この人………「まぁなんだ………そっちはそっちで大変みたいだが………コッチも遊びでやってるわけじゃないからな…………同情はするが、手加減は無しだ!」 シュランっ! と腰の剣を抜き放つレクス。 あのデザインは……………【テンペラーソード】か! 攻撃力は確か【はがねのつるぎ】よりちょっと上。Ⅷの僧侶ポジション、ククールの専用装備だから…………レクスのバトルスタイルもククールと似ている可能性はあるな。 回復と攻撃呪文には注意しないと………ヘタすりゃ【ジゴスパーク】まで撃たれかねん!「出来れば手加減もしてくれたら嬉しいのに…………」 言いながら、まずはひかりんを温存。 【世界樹の刀】と【聖なるナイフ】を抜き放ち………二刀を構える。『一回戦・第一試合! ユウキVSレクス! 試合………開始ッ!』 審判長が、高らかに試合開始を宣言する。―――――ワアアアアアアアアアアァァーーーーーーッ!!!! 大歓声の中、ついに戦いの幕は開いた―――――――・【続く】・・・・【あとがき】どうも! 作者です。やっとこさ第一試合開幕。果たしてユウキの運命は!?なお、今回出てきた“裁定者(ジャッジメント)”&『十二審将(ツヴァイツェーン・ジャッジ)』は、ほぼネタキャラと考えていただいて結構です。天聖武神杯編には審判としてしか関わりませんのであしからず。ま、今後出番はあっても間違いなくギャグ要員ですね。一応12人全員はどこかで出したいとは思ってますんで。みなさんの感想が力と励みになりますので、一言だけでも是非!必ず返信させていただきますんで。では、また次回!