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No.3226の一覧
[0] 目が覚めるとドラクエ (現実→オリジナルドラクエ世界) 改訂中[北辰](2009/06/22 20:26)
[1] その1[北辰](2009/06/22 20:27)
[2] その2[北辰](2009/06/27 20:18)
[3] その3[北辰](2009/06/27 20:19)
[4] その4[北辰](2009/06/22 20:29)
[5] その5[北辰](2009/06/27 20:19)
[6] その6[北辰](2009/06/22 20:31)
[7] その7[北辰](2009/06/22 20:31)
[8] その8[北辰](2009/06/22 20:32)
[9] その9[北辰](2009/06/22 20:32)
[10] その10[北辰](2009/06/22 20:33)
[11] その11[北辰](2009/06/22 20:34)
[12] その12[北辰](2009/06/22 20:34)
[13] その13[北辰](2009/06/22 20:35)
[14] その14[北辰](2009/06/22 20:36)
[15] その15[北辰](2009/06/22 20:36)
[16] その16[北辰](2009/06/22 20:37)
[17] その17[北辰](2009/06/22 20:37)
[18] その18[北辰](2009/06/22 20:38)
[19] その19[北辰](2009/06/22 20:39)
[20] その20[北辰](2009/06/22 20:39)
[21] その21[北辰](2009/06/23 19:35)
[22] その22[北辰](2009/06/23 19:36)
[23] その23[北辰](2009/06/23 19:37)
[24] その24[北辰](2009/06/23 19:38)
[25] その25[北辰](2009/06/23 19:38)
[26] その26[北辰](2009/06/23 19:39)
[27] その27[北辰](2009/06/23 19:40)
[28] その28[北辰](2009/06/23 19:41)
[29] その29[北辰](2009/06/23 19:42)
[30] その30[北辰](2009/06/23 19:43)
[31] その31[北辰](2009/06/23 19:44)
[32] その32[北辰](2009/06/23 19:44)
[33] その33[北辰](2009/06/23 19:45)
[34] その34[北辰](2009/06/23 19:45)
[35] その35[北辰](2009/06/23 19:46)
[36] その36[北辰](2009/06/30 16:50)
[37] その37[北辰](2009/06/30 17:07)
[38] その38 『覚悟』[北辰](2009/06/30 16:48)
[39] その39 『大嘘つき』[北辰](2009/07/02 22:21)
[40] その40 『ゾルムの物語』[北辰](2009/07/09 00:27)
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[3226] その33
Name: 北辰◆a98775b9 ID:2f3048ba 前を表示する / 次を表示する
Date: 2009/06/23 19:45

 昨日、あの後ルイがルイーダの酒場もしくは、訓練所に魔物が潜んでる可能性を皆に話した。
 ルイが冒険者になったその日に、ルイのことを名簿で知ることが出来た人物。
 ルイーダさんの話によると、有り得るのは訓練所の受付の男、そしてルイを担当した魔法使いの教官、もしくはルイーダの酒場のカウンターをルイーダさん以外で唯一任せられる子が居るのだが、その子もルイが登録した日に一度カウンターを任せたらしい。
 なのでその三人に絞られることになる。


 次の日改めて、昨日最後まで残っていた面子でルイーダの酒場に集まったのだが、
 何故か俺達を見たルイーダさんの顔が曇っていた。
 訳を聞くと、訓練所の魔法使いの教官と受付の男が揃って姿を見せていないらしい。
 別にその二人が今日は休日、というわけでもなく、普通に出勤する筈の日にも関わらず…だ。
「露骨に怪しいな…」
「だな、このタイミングでその二人が偶然来なくなるってのもねぇだろ。その二人で決まりじゃねーか?」
 アレスとゾルムさんの会話を横に聞きながら、ルイーダさんに質問してみる。
「その人達の住所って分かります?」
 ルイーダさんは冒険者の名簿とはまた違う名簿を取り出し、それを読み始めた。
「えーと、南西地区の『月の雫』って名前の宿屋に二人とも宿を取ってるみたいよ」 
 南西地区、つまりこのルイーダの酒場があるエリアであり、俺の宿のあるエリアでもある。
「お前の宿じゃねぇか」
 ゾルムさんが目を丸くして俺を見ている。
「…ありゃ?あそこってそんな名前だったのか」
 まったく知らなかった。
 特にそんな看板も無かった様だが、そんな立派な名前があったとは。
「シュウイチくんは会ったことないの?」
「んー、受付の男の人って、どこか眠そうな顔してる人ですよね?」
 マリィさんの質問に答える前にルイーダさんに確認を取ってみる。
 ルイーダさんは頷いて見せた。
「俺もここで冒険者登録するときにあの人に受付してもらったけど、そのとき以来会ったことはないかな。…もちろん宿でも。魔法使いの教官は顔を知らないから分からないや」
「なにはともあれ、一度その宿に確認に行った方がいいだろう」
 リハルトがそう提案してきた。
「ちょっと待ってください、その二人は来ていないってことは、もう一人の人は来ているんですよね?その人はどこですか?」
 ルイの言葉に、ルイーダさんがテーブルの方で接客している一人のバニーへ視線を向ける。
「…あの子よ、名前はカレンちゃん」
 カレンと呼ばれたバニーはこちらの視線に気付いた様で、きょとんとした顔をしている。
 …それはそうだろう。
 リハルトのパーティとアレスのパーティ、そして俺のパーティにゾルムさん。カウンターに集まっていた一団、合計11人の視線が集まっているのだ。
 気づかない方がおかしいだろう。
「…はぁ、いきなり気付かれちゃいましたね。上手くいくか分かりませんが、会話でそれとなく確かめてみます。ルイーダさん、彼女を呼んでもらえますか?」
 ルイが溜息をついてみせた。
「分かったわ、カレンちゃん!ちょっとこっちに来て頂戴!」
 ルイーダさんの言葉に少しびくびくしながらカレンが歩いてくる。
 リハルトが俺達から一歩離れる。
「では私達は宿の方に確認を取ってくるよ。あのカレンという子が魔物の可能性は低そうだし、我々全員で取り囲むこともないだろう」 
 リハルトの言葉に少し考える。
 俺の泊まっている宿だし、俺が着いて行った方がいいだろう。
「俺も行きます。実際に泊まってる俺なら宿の主人にも説明しやすいでしょうし」
「そうだな、それではシュウイチ君は私達のパーティと一緒に来てくれ。後はルイさんに着いてあげてて欲しい」
 そう言って店を出ようとするリハルトのパーティについていこうとしたが、あることを思い出し、ポケットを漁る。
 手に当たる固い感触。
 取り出した小瓶には昨日のまま聖水がごく僅かだが残っている。
「ルイ」
 こちらを見ているルイに小瓶を放り投げて渡す。
 ルイはその小瓶を少し慌てた様子で受け取った。
「それ、昨日の聖水の残りだ。それさえあればすぐにでも確認できるんじゃないのか?」
「結局残してたんですか…。これならすぐに終わりそうですね」
 ルイの言葉に頷く。
「それじゃ、そっちは任せた。宿の方を見てくるよ」
 入り口の所で待っているリハルト達のとこへ早足で歩いていく。
 これであのカレンとかいうバニーが尋問されて困ることにはならないだろう。




 リハルト達と大通りを歩く。
「正直、昨日まではこうやって君と歩いてるなんて想像もつかなかったよ」
「そうでしょうね、何分俺達は容疑者の立場でしたし…」
「あのときはすまなかった、俺達もまんまと魔物に躍らされていたんだな…」
 リハルトさんの表情が曇る。
「キールとは、私が冒険者になって初めて組んだパーティで出会ってね、あいつも冒険者になったばかりだったらしいんだが、私とは性格が合わなくて最初はよく口論にもなった…」
 リハルトが懐かしむような表情になった。
「私も負けず嫌いだったからね。実力を示して黙らせようとしたんだが、キールも同じようなことを考えたらしい、いつも競うように魔物を倒してきたよ。…少しずつランクも上がってきて、いつの間にかあいつは私の掛け替えの無い友人になっていた」
 リハルトが空を見上げる。
「…いつからあいつは魔物に入れ替わってたんだろうなぁ。長い…、本当に長い付き合いだったのに、私は何一つ気付けなかったよ」
 ──掛ける言葉が見つからない。
 長く連れ添った友人を魔物に殺され、そしてそのことに気付けなかった無念。リハルトの胸中は強い自責の念に囚われている様だ。
 貴方のせいではない、と口にするのは容易い。だが、そんな安っぽい慰めは彼も望んではいないだろう。
 後ろを歩いている魔法使いと僧侶の男も黙ったままだ。
「…すまないな、つまらない話を聞かせてしまった。──しかし、君は何かと話しやすい人間だな…どこか人を安心させる雰囲気を持っている。だから君の周囲には私の弟を含め、様々な人間が集まるのかもしれないな」
 リハルトが柔らかく微笑んで見せる。
「…買い被り過ぎですよ。俺の周囲に優しい人が多いだけで、危なっかしい俺を放っておけないんでしょう」
 彼の様な人物に褒められると非常に照れてしまう。
 そんな話をしている内に、いつも俺が泊まってる宿の前に辿り着いた。
「どうします?流石に魔物を確かめるため、とは言わない方がいいですよね?」
「犯罪者が逃げ込んでるという情報が入ったとでもいって、全ての部屋を改めさせてもらうか」
 俺の質問に魔法使いが答えた。
「それでいいだろう。では行くか」
 リハルトに続き、宿の中に入る。


「いらっしゃいませ!…あれ、お客さんのお知り合いで?」
 新規の客かと顔に笑みを浮かべていた主人だが、
 俺の顔を見た途端その表情に少し落胆が混ざったのが分かる。
 …最近何かと人を連れ込んでたからな。
 客ではないと主人は判断したのだろう。
 実際その通りなのだが。
「どうも、今は冒険者としての仕事でここに用がありまして…、ここに犯罪者が逃げ込んでるって情報が入ってきたので、自分達が検めさせてもらいにきました」
 俺の言葉に主人の顔が驚愕に変わる。
「そんな…、うちにそんな人なんて居ませんよ!」
「それを我々が検めようと言ってるのだよ」
 魔法使いの物言いに、なんだかこちらが横柄な役人になった様な気分になってくる。
「ケーン、止めないか。ご主人…申し訳ないが、これも街の安全の為と理解していただきたい」
 魔法使いを制止し、リハルトが主人に語りかける。
「…分かりました。私も同行させていただいても?」
「もちろんですとも。前もって主人から客に説明していただけるのなら、我々の仕事も円滑に進みます」
 リハルトが主人に微笑んで見せた。



 主人を先頭に一部屋ずつ回っていく。
 何部屋かには客が部屋に居り、迷惑そうな顔をしていたが、事情を説明すると納得してくれた。
 最後に一応俺の部屋も確認されたが、訓練所の受付の男と魔法使いの教官は見つからなかった。
 最後にリハルトが二人の特徴を伝え、見たことはないかと主人に尋ねたが、そのような客は少なくとも主人の記憶する限りでは見たこともないそうだ。

 宿を出てルイーダの酒場に向かって歩く。
「あの宿に泊まってること自体が嘘だったか…」
 魔法使いが呟く。
「あの二人が魔物だったという結論で間違いなさそうだな」
 リハルトの言葉に僧侶の男が頷く。
 俺は彼が言葉を発するのを聞いたことがない。寡黙な人間なのだろうか。


 姿を消した二人の男の住所は偽りのものだった。実際には登録された住所には住んでおらず、宿を取っていなかったことになる。
 つまりその二人が魔物だった、そして正体がばれて殺されるのを恐れ、街を去った、ということで話は終わりそうなのだが…。
 どうにも腑に落ちない。
 人間としての姿が偽りの物であろうが、普段過ごす場所は確保しないのだろうか?
 魔物だから外でも平気、と言われればそれまでだが、わざわざ毎日人目の着かない場所へこそこそと身を隠すのも効率的ではない。
 堂々と宿を取ればいいのだ。まさか魔物が宿代を節約なんて真似をしたりもしないだろう。
「シュウイチ君、どうかしたのか?」
 首を傾げてる俺にリハルトが声をかけてきた。
「…いえ、なんでもないです」
 …考えすぎだろうか。



 ルイーダの酒場に戻ると、カウンターで残りの面子が座っているのが見えた。
 先程のカレンと呼ばれたバニーも普通に接客をしている。
 どうやら彼女は白だったらしい。

 カウンターに近づく俺達に気付いたサイが手を上げた。
「よお、そっちはどうだった?」
「あの宿に例の二人が泊まりにきたことはないそうだ。──彼らは魔物だったと見て間違いないだろう」
 リハルトの言葉に皆の顔に緊張が走る。
「そちらは…聞くまでもないようだな」
 リハルトがカレンに視線を送り、呟く。
「はい、彼女には残り少ない聖水を舐めていただきましたが、無反応でした。そちらは二人とも魔物でしたか。…まぁ同じ宿を取っている時点でかなり怪しかったですけど」
 ルイの言葉はもっともだ。
 確かに話が出来すぎだろう。
「でもこれで問題なく旅立てますね」
 トーマス君が安堵の笑みを浮かべる。
「そうだな、あとの住人達の確認と説明は我々に任せて、君達は君達のすべきことに専念してくれ」
 トーマス君の言葉にリハルトが頷いてみせる。
「キールのこともあって出自の確認は無意味かとも思ったが、そうでもない場合もあるようだしな、調べることである程度篩いにかけることも出来るだろう。そこのルイといったかな…、君の使った手も利用させてもらおう」
 魔法使いの男が少し笑ってみせる。
「あ、そうだ。あなた達に渡しておくものがあったんだわ」
 ルイーダさんが急に声をあげ、カウンターの下から一枚の紙を取り出した。
 そして俺のほうに差し出してくる。
「はい、これも旅先で必要になるでしょうし、持っていきなさい」
「何ですか、これ?」
 紙を受け取り見てみると、
 そこには今回の旅に出る面子の名前とランク、職業が書いてあり、
 最後に、
『以上の者達はカナンの勇敢な冒険者であることをここに証明する。
                    マリス・シャルロッテ』 
 と書かれて判子が押されている。
「このマリス・シャルロッテって誰ですか?」
 俺の質問にルイーダさんが笑って見せた。
「それは私の本名よ。『ルイーダ』は冒険者の酒場を仕切る者に代々伝わる称号みたいなものよ」
 なるほど。
 確かにそれなら、ルイーダという名前がたびたびにゲームに出てくるのにも納得がいく。
「その証明書を見せれば、他の街にあるルイーダの酒場でも登録してもらえる筈よ。旅の途中でお金が無くなりました、じゃ話にならないものね」
 ルイーダさんがウインクしてみせる。
「そこまで考えが廻ってませんでした、助かります」
 ルイーダさんに頭を下げる。
「じゃあ、今日はこの辺で解散するか。明日の朝、北門に馬車を止めておくから準備をして集まってくれ」
 アレスの言葉でその場は解散となった。




「…で、何でお前は俺に着いてくるんだ?」
 横を歩くルイに疑問を投げかける。
「何でって準備も出来てて、明日もう出発するのにわざわざ森に帰れって言うんですか?」
 シュウイチさん酷いです、とルイが少し頬を膨らませる。
「いや、そうじゃなくて、もしかして今日も俺の部屋に泊まるつもりか?」
「…駄目ですか?」
「駄目です」
 間髪入れずに返す。
「えー」
 不満そうな声をルイがあげる。
 
「あ、シュウイチさん、どうもお久しぶりです」

 突然横合いから掛けられた声に目を向けると、
 少しぽっちゃりとした柔和な顔つきをした男がこらちを見ている。
「…?」
 首を傾げている俺を見て、ルイが疑問に思ったようだ。
「シュウイチさん、知り合いじゃないんですか??」
「いや…どこかで聞いた声な気もするんだけど…」
 そんな俺の様子を見て男はがっくりと肩を落とす。
「そ、そうですよね。ぼ、僕なんて覚えてるわけないですよね」
「…んんん?」
 このどもり方には覚えがある。
「違ってたら悪いんだけど…イワン?」
 男の顔がぱっと輝く。
「そ、そうですそうです!覚えてて下さったんですね!!」
 感激といわんばかりに両手を握りしめてくる。
「…変わった方ですね」
 横でルイの呟きが聞こえてくる。
「ひ、久しぶりだな。元気にしてたか?」
 自分でも顔が引きつるのを感じながらイワンに話しかける。
「えぇ、昨日は大変でしたね。まさかシュウイチさんがあんなことになってるなんて…」
「えっ、イワンも居たのか?」
 思わず聞き返す。
 俺の言葉にイワンは少し傷ついた表情をした。
「い、居ましたよ。一度シュウイチさんとも目が合ったんですけど、気付かなかったみたいで…」
 目が合ったこと自体気が付かなかった…。
 良く考えたら、そもそも俺のイワンのイメージは全身鎧か、あるいは上半身は鎧、下半身パンツのみのどちらかだ。気付くわけがない。
「あれから二回程パーティに参加したんですけど、それ以来すっかり誘われなくなっちゃって…」
 イワンが顔を伏せ、落ち込んだ声をだす。
 確かに、鎧の重みでまともに動けない戦士を誘う人間はまず居ないだろう。
 イワンが急にぱっと顔を上げ、何かを期待したような顔でこちらを見る。
「も、もし良かったら、僕ともう一回パーティを組んでいただけませんか!?」
「…あー、悪いんだけど」
 俺の言葉にイワンの顔が曇る。
「そ、そうですよね。僕なんかが組みたいって言っちゃ迷惑ですよね…」
「いや、そうじゃなくて、俺達明日から旅に出るからしばらくこの街に居ないんだ」
 イワンが怪訝そうな顔をする。
「旅ですか?」
「あぁ、遠くの王都ガーブルに色々あって行くことになってさ、それがなけりゃお前と一緒にパーティ行っても良かったんだけど…」
「あ、そういえばシュウイチさんの出身はガーブルだと昨日言ってましたね。実家に帰るんですか?」
 イワンの言葉に少し考え込む。
「あぁ、わざわざカーンが俺を連れ戻しに来たし、一度戻らないとまずそうだしさ」
 この街の一部を除いた冒険者達の俺に対する認識は、王都ガーブルから家出してきた貴族のボンボンだ。気を抜くとその設定を自分で忘れそうになる。
「そ、そうですか。折角友達が出来たと思ったのに残念です…」
「その内お前にも仲間が出来るさ。…あれだ、とりあえずお前は鎧を変えるとこから始めよう」
 イワンがショックを受けた表情になる。
「そ、そんな!アレはおじいちゃんから受け継いだ由緒ある鎧なのに…!」
「いや、その鎧のせいで動けなくなってたら意味ないだろ。もう少し鍛えて、体力付いてきてから改めてその鎧を着たらいいんじゃないか?」
「で、でも、でででも…」
 どもりすぎだ。
「そうだ、約束しようか。俺がガーブルから戻ってきたときに、パーティを組もう。お前があの鎧を着こなしてる姿を見せてくれよ」
 イワンの肩をぽんと叩く。
「は、はい!」
 イワンが少し気合いの入った表情で頷いて見せた。
「じゃ、そろそろ宿に戻るよ。元気でな」
 イワンに手を振ってみせる。
「は、はいぃ。シュウイチさんもお元気で!」
 イワンの言葉を背に宿への道を歩く。
「ガーブルから戻ったらあの人もパーティの一員ですか?」
 横に並んできたルイが聞いてくる。
「あ、そうか。ルイとマリィさんに確認取らずに言っちゃったな…悪い」
「私は構わないし、マリィさんも笑って許してくれそうですけど、いいんですか?あの人多分戦士ですよね。パーティの編成が戦士二人に武闘家一人、それに魔法使いって、すごい攻撃的な組み合わせですけど」
 確かにすごい組み合わせだ。
 攻撃に偏りすぎていて、すぐに燃え尽きそうな編成だ。
「僧侶をなんとか見つける方向で…じゃ駄目か?」
「…あ、シュウイチさん!」
 突如ルイが声を張り上げる。
「どした?」
「私達のした僧侶募集の張り紙のこと、忘れてました!」
「…あ」
 そういえばそんなこともしたっけか。
 完全に忘れていた。
「まぁ、ルイーダさんと顔を合わせてるのに何も言ってこないところを見ると、応募一つもなかったんでしょうね…」
 ルイがガックリと肩を落とす。
「だな、とりあえず俺達は旅に出るんだし、張り紙は剥がしておくか…」
「…ですね」
 ルイーダの酒場に戻り、張り紙を剥がしてから一応ルイーダさんに応募は無かったか聞いたが、予想通り応募は一切無かったそうだ。


 ──予想通りとはいえ、少し落ち込んでしまった。


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