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No.30263の一覧
[0] サガフロンティア2 レーテ侯伝[水城](2012/03/13 21:50)
[1] 1226年 アニマ至上主義に対する一見解[水城](2011/10/26 15:27)
[2] 1227年 ジャン出奔[水城](2011/10/31 15:29)
[3] 1232年 ジャン12歳[水城](2011/11/11 10:16)
[4] 閑話1 アニマにまつわる師と弟子の会話[水城](2012/03/12 20:08)
[5] 1233年 少年統治者[水城](2011/11/21 14:15)
[6] 1234年 ケッセルの悪戯[水城](2012/03/12 20:30)
[7] 1235年 ジャン15歳[水城](2012/03/12 20:35)
[8] 閑話2 天命を知る[水城](2012/03/12 20:39)
[9] 1237年 叙爵[水城](2012/01/09 13:37)
[10] 閑話3 メルシュマン事情[水城](2012/01/17 20:06)
[11] 1238年 恋模様雨のち晴れ[水城](2012/01/31 12:54)
[12] 1239年 幼年期の終わり[水城](2012/03/13 16:56)
[13] 閑話4 イェーガー夜を征く[水城](2012/03/13 21:49)
[14] 1240年 暗中飛躍[水城](2012/03/27 10:33)
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[30263] 1235年 ジャン15歳
Name: 水城◆8f419842 ID:517a53cf 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/03/12 20:35
ツール史に於いて、1240年代以前と以降では技術体系において全く違うというのが今日の研究者の主たる意見である。南大陸でツールが発明されてから1240年代に至るまでそれはクヴェルの代用品であり消耗品だった。しかし、それ以降のツールとは、アニマ理論に基づいて作られた高度な道具であり、耐久品とアニマ電池の組み合わせによって本体そのものは耐久品へと変化した。グランツ子爵、レーテ侯爵の時代を通じて発揮した政治的手腕は評価するが、学問の徒として彼の最大の功績はアニマ研究であったといわざるを得ない。そして、彼が死んで40年、彼の後継者であり、義娘でありグランツ子爵夫人である『魔女』が死んで7年経ったサンダイル暦1350年に未公開の資料が発表される。願わくは、我々が生きる現在が約半世紀の前の人間の研究に追いつき、追い越していることを証明したい。そして私は一研究者としてその場に立ち会える幸運に感謝する。
エルンスト・シュトラウスの手記より



1235年
この年のジャン・ユジーヌには監察官という新しい仕事が加わった。とは言ってもやっていることは、代官が派遣されている土地を訪れて不正が行われていないか調査する程度のことなのだが、あの大掃除を行った人物が自分の担当するところに来ると知った代官達は震え上がった。二度目は無いことを知っていたからだ。

反対に領民達はジャンを歓迎した。何しろ彼がケッセルを拝領してから目に見えて横柄な行いをする代官がいなくなったからだ。同時に二年目で膨大な富を築き上げたケッセルの人間を羨んだ。もし、自分達のところの領主になったなら、良かったのにと。

仕事で他領を回って住民と酒を飲み交わしていく内に、そんな意見を言われたことがあったが、ジャンがいくつかの候補地からケッセルを望んだ理由は、ケッセルは未開な部分が残っていたからで、発展性があったからだ。ジャンの目的は権力を手に入れることではなく、権力から身を守る手段の構築である。その理由が師であるシルマールと共同で研究しているアニマの効率的な運用方法だった。

「ツールは壊れるが、クヴェルは壊れない。ツールは材料が蓄えたアニマが消失すればチップになり、ツール制作の際の繋ぎなどに使われる」

ジャンは屋敷の敷地内に新たに作った工房でサガフロンティア2の情報を再確認していた。

目の前には耐久回数を超えたツールがあるが、越えた瞬間バラバラになるというわけではなく、死んだ物質となる。正確に言えばアニマを持たない物質になる。ジャンは死んだ物質にアニマを意識して注ぐが、やがて霧散した。アニマを留めておけないのだ。だがアニマを注げば一時的にでもため込めるのであるなら。

「シルマール先生が思いついたのは、ツール内のアニマを消費せずに自分のアニマを使う手段ですね」

「その通りです。クヴェルは周囲のアニマを取り込んでいるのですが、私の作るツールでは自分のアニマを供給して壊れないようにすることが限度でした」

アニマは一定の流れがある。ツールが術という現象を発する際にアニマが零れるが、それは他のアニマで補填されることはない。クヴェルが特別なのは、周囲のアニマで性質を維持できるからだ。シルマールが考えたのは、自分のアニマで補填するという方法である。それは作る時点でツール内に自分のアニマを注ぐことで、注がれるアニマはツール自身のアニマと錯覚させる。

「でも一般の人にそれできないですよね。価格面の問題もありますし」

シルマールの発案は画期的であるが、それはワン・オフ作品という意味であり、手間やコストがかかりすぎる。それはジャンの求めるツールではない。

「いっそのこと電池にして全体のエネルギーのロスを抑えるか」

「どういうことですか?」

「現状のツールだと、素材の持つアニマを消費して術の媒体にしていますよね。術が使えなければツールの力を引き出せない。要は俺たちは火種なんですよ。もし術不能者が術という火種を使わずにツールの力を使えるならば」

術を使える人間は全体の8割、術の使えない人間が2割。術が使える人間の中で術法が使える人間は全体の3割、さらに術法の専門家である術士レベルの人間が1割。つまり8割の人間がツールの恩恵を受けることができるが、2割は受けることができない。それは術、そしてツールの使用を前提としている現代のサンダイルでは致命的だった。術不能者であるというだけで、彼らはまともな職業に就けない。統治者にとっては使えない存在。それが術不能者だった。そして彼らは貧民であり、貧民街は犯罪の温床になりうる場所である。

ジャンの母であるソフィーは、王妃時代にテルムの貧民街で炊き出しなどをして緩和に努めたが、それは対症療法、あるいは場当たり的なもので、政治的な解決を意味していない。ジャンはサンダイルに貴族として生まれ落ちてからずっと考えてきた。確かにギュスターヴによる鉄の再発見、あるいは鋼鉄革命は画期的であるが、鉄を愛用したのはヴィジランツや傭兵達であり、社会には浸透しなかった。何故ならそれでもツールを利用した方が楽だからだ。ギュスターヴに実子がいて、鉄を重視した政策を維持できたのであれば話は変わったのだが、フィリップ3世は術の象徴であるファイアブランドとフィニー王家の後継者であり、シンボルとしては弱かった。何より鋼鉄兵の強さを再び印象づけたのはエッグに乗っ取られた偽のギュスターヴであり、継承者を自認するチャールズを敗死させたのだから笑えない。

そこでジャンが考えたのは、術不能者が使えるツールを作ればいいということだった。術不能者はツールを使えないのは常識である。そこで思考停止がおこって数百年が経過した。そろそろ社会の有り様も変えなければならないだろう。幸い、ジャンの師匠はツールに関しては本職に引けを取らないシルマールだ。

「押すでも引くでもいいからアクションを起こしてしまうんです。俺たちは自分達の意識でオンオフをしていますが、それは全部機構に押しつけます」

「言いたいことは何となく分かりました。そこで私の考えた回路が生きてくるわけですね」

「はい。アニマを注ぐという部分を人ではなく別の物質に置き換えます。できれば特定の属性に依らない純エネルギーを」

本当ならグールの塔にあるアニマ結晶体を見たいところだが、あれは人のアニマを抽出し、さらに塔周辺のアニマを実害がないレベルで補填して作られたものだ。年数が掛かるし、それでは意味が無い。

「チップを加工してできないかと考えているのですが第一に形状、第二に耐久性、第三に価格、そして最後に流通の問題があります」

普及させなければならないので基本的に大量生産しなければならない。その為には規格を統一しなければならない。材料はどこでも取れる物で無くてはならない。この要件を満たす素材はチップだった。

「どうしました先生?」

「いえ、ジャン君は幼い頃から変わらないなと思いまして」

未知や不可能とされてきた行為に挑戦するのは若い者の特権だとシルマールは考えている。思えば7年前に一人で砂漠を越えようとした青年も若さ故の無謀だったのだろう。そして、そう思えるのは自分が年を取ったからだろうと気がついたのだ。

「普通の家庭に生まれたなら、自分は術だけを追求したと思います。ですが、貴族に生まれたのならば、自分の力は社会に還元しなくてはなりません。どれだけ強力な術でもそれは個人の資質に過ぎません。ですが、ツールならば一度作ってしまえばより広く使えますから。


「君はフィニー王になりたくなかったのですか?」

シルマールもフィニーを訪れる前に様々な政治家を見てきたが、ジャンには優秀な為政者になれる資質がある。ファイアブランドの行使とて、アニマの出力をコントロールできる弟子なら今からでも問題無いだろう。そして、ジャンの術があれば支配することはたやすいのだ。野心を焚きつける気は全くなかったし、彼の母親であるソフィーとも何度かこの話題について相談したことがある。メルシュマン程度なら過不足なく統治できる人間をこんなところで燻らせて良いのかと。

「ギュスターヴが先に生まれたのは天命であり、俺がフィニーの玉座を欲しないのは好きなことに割く時間が無いからです。基本的にナルセスさんと似たタイプですからね」

弟子はまず苦笑し、そして次に真剣な面持ちで師の問いに答えた。この答えにシルマールは安堵した。場合によっては多くのアニマが失われる可能性があったからだ。

「ナルセス殿ですか、私は先ほどネーベルスタン君を思い出していましたよ。ネーベルスタン君は故郷に戻ってお父上の跡を継いだと手紙で聞きましたが、ナルセス殿は何をしているのやら」

「口悪いけど面倒見はいい人だから何だかんだ言いながら世話焼いている気がしますが」

もし自分にシルマールとの縁がなければ、ナルセスの弟子になりたいとジャンは思っていた。あのアニマに対する造詣の深さは賞賛に値する。そしてあのクヴェルに触れる機会が多いということだ。

学術的な興味として古代文明は何故滅んだかについてはとても興味があり、できれば彼と『対話』を望んでいた。だがそのような機会は多分どの立場であっても得られることはないだろう。そして、現実的に彼は領地持ちの貴族になった以上、領民と主君に対して責任があり、もし介入するタイミングがあるとするならば二度しかない。そしてどちらの時期に挑むにせよ、あのクヴェルを切り裂けるほどの強靱な剣と、それをなす事ができる純粋な剣士が必要だった。

そしてジャンが知る限り、このサンダイルでそんな奇跡を起こせるような存在は、自分の血縁者と人の業で鍛え上げられた剣を振るう幽鬼くらいなものだ。

「ところでジャン君、領主としての仕事は如何ですか」

「あと一つくらい領地を抱えてもいいだろうといわれてはいますが、ケッセルの開発と中央の書類仕事に追われて無理だと断っています。何よりケッセルはまだ開発可能ですからね。将来的には今のケッセルの他に街を作ってそちらを中心に発展させます。10年くらいかかると思いますけど」

「テルムに戻る気もないようですね」

「スイ王陛下に仕えることで仕事は増えましたが、陛下が私を権力という壁で守って下さっているから私は好き勝手ができるのです。自分でその手間を省くことを考えれば、国家についてお茶しながら話したり、与えられた領地の収益を増やすなんて気楽なもんですよ。ダメなら一人でどこかに逃亡すればいいですし」

愛弟子の言葉にシルマールは頭が痛くなった。世の文官が聞けば殺意を覚えるような発言だが、ジャンに言わせれば政治とはまず生産であり、自分達の領域で自己完結してしまえるなら問題無い。足りない場合は対外との交渉が必要だから経済と軍事が必要になる。集団が小さければ軍事活動が経済活動を優先するが、現在のサンダイルでは経済が優先されていることに加えて、南大陸で軍事活動と言えば基本的にモンスターや盗賊・山賊の対処であって、野心でも無い限りは大仰な兵力は必要無かった。収益が増えたというがあれは個人ができるレベルでやってしまったことで、逆に言えば過剰な戦力は周囲を刺激する。

「メルシュマンを統一するだけなら俺の力は必要ありません。オート侯がいくら精強でもシュッドやノールと連合しているフィニーが負けるはずがない。それこそ今の段階で父上が死なない限りは」

今父であるギュスターヴ12世が死ぬようなことがあれば、ジャンは兄であるギュスターヴを連れて、ダメなら単身でもフィニーに戻り対策を立てなければならないが、幸いなことに死ぬとしても10年も先の話だ。その頃にはフィリップがそれに耐えうるというか耐えうるように成長していることだろう。

「極端な話、幼年期に私に仕えてくれたノールの貴族やテルムの庶民が困らないといいなあと思いますけど、フィニー王国には愛着湧きませんからね。陛下なんてシルマール先生と母の伝がありましたし色々と思惑もあったでしょうが、政治のカードに使えるかどうか分からない7歳の子ども二人に高等教育施したんですよ。もっともギュスターヴはグレましたけど」

そして兄がグレた原因の一つは間違いなく、天才で行動がぶっ飛んだ弟にあるのだが、母親であるソフィーは具体的な対策ができなかった。ギュスターヴに関しては生んだ自分に問題があったのではと思いつつ、だからこそ人間としてはまともに育てなければならないと奮起した。幸いフリンという子分ができたことで、やりきれない怒りを暴走させることはあったが孤立はしなくなった。そしてジャンは水を得た魚のように術を積極的に学び、優秀な官僚から政治を学び、王宮では習い事を学んでいた。ただ同年代の貴族の子弟からソフィーやギュスターヴのことを乏しめるようなことがあれば、言葉で反論し、激昂して術や殴りかかってきたら許容範囲で撃退した。結果彼は同世代から孤立したのだが、ジャン曰く、

「別に彼らが自分の生活費を出しているわけじゃありません。陛下が止めろと言うのなら止めますが。許容されるということはそれは陛下に益があるからですよ」

諸侯の力が強まるとナ王家に対する侮りがどうしても親から子に伝染する。その意識を放置しておけばやがてはナを中心とした冊封体制からの離脱を試みるだろう。現にヤーデに隣接するワイドではその傾向がある。

「先生、術が使えなくても人間でいられますけど、1万の人間を虐殺できる術士は人間でいられるのでしょうか」

ジャンの研究は、物事の根源の事象をしるアニマを扱うということは、人間を容易に支配できるということであり、殺すことができるということだ。

「君が研究している武器は、自分の力を隠すために」

「強力な術法が使えるならツールは必要ありませんからね。そして陛下が私の壁である限り私は陛下に尽くすのです」

自分の力が異常かどうかは周囲が判断する。だがジャンはその生まれ故に自分の存在が異常であることに気付いていた。自分の持つ力が異常はオマケだ。つまり最初からどう足掻いても立ち回らなければならないことを覚悟していた。父親の元にいるということは兄と、あの鋼鉄兵と戦うことを意味するので最初から選択肢になく、母親には後ろ盾がない。師であるシルマールは人間的には尊敬できるが、自分を庇いきれるかというと疑問が残る、善人であるヤーデ伯トマスは息子を制御できない。だからスイ王を頼る。自分にできる範囲で協力しながら守って貰うために。

「まあ難しい話はちょっと抜きにして作りたいツールがあるんです」

「なんですか?」

「アニマが枯渇した人間の命をつなぎ止めるためのツールです」

ジャン・ユジーヌの開発したツールの中で一番の発明はと尋ねたとき候補に挙がるのは、音のツールである通信機、風のツールである飛空挺、火の兵器であるフレイムボルトの三つが上がるが、彼の弟子達は知っていた。

限定的ではあるが死を止める指輪をはじめとした根源に作用する秘宝だと。



1235年というとギュスターヴは鋼鉄剣を完成させ、ウィリアム・ナイツはディガーとして華々しいデビューを飾るわけですがジャンは書類仕事をする傍ら色々と準備をしている。異常に異常が重なったところで異常であることに違いはない。言うなればジャン・ユジーヌは社会の中で暮らしたいといったところ。靜かに暮らすのはまず無理。

術の進捗度だとようやくアニマを意識して取り込むことができる程度です。まだ人間止めてません。

次回は閑話2でようやくナイツ編のある人が主役です。殺すか殺さないかで結構迷いました。

予想より語りが長かったのでムダに時間がかかりました。



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