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No.20619の一覧
[0] 星は夢を見る必要はない(クロノトリガー)【完結】[かんたろー](2012/04/28 03:00)
[1] 星は夢を見る必要はない第二話[かんたろー](2010/12/22 00:21)
[2] 星は夢を見る必要はない第三話[かんたろー](2010/12/22 00:30)
[3] 星は夢を見る必要はない第四話[かんたろー](2010/12/22 00:35)
[4] 星は夢を見る必要はない第五話[かんたろー](2010/12/22 00:39)
[5] 星は夢を見る必要はない第六話[かんたろー](2010/12/22 00:45)
[6] 星は夢を見る必要はない第七話[かんたろー](2010/12/22 00:51)
[7] 星は夢を見る必要はない第八話[かんたろー](2010/12/22 01:01)
[8] 星は夢を見る必要はない第九話[かんたろー](2010/12/22 01:11)
[9] 星は夢を見る必要はない第十話[かんたろー](2011/08/02 16:03)
[10] 星は夢を見る必要はない第十一話[かんたろー](2011/01/13 06:26)
[11] 星は夢を見る必要はない第十二話[かんたろー](2011/01/13 06:34)
[12] 星は夢を見る必要はない第十三話[かんたろー](2011/01/13 06:46)
[13] 星は夢を見る必要はない第十四話[かんたろー](2010/08/12 03:25)
[14] 星は夢を見る必要はない第十五話[かんたろー](2010/09/04 04:26)
[15] 星は夢を見る必要はない第十六話[かんたろー](2010/09/28 02:41)
[16] 星は夢を見る必要はない第十七話[かんたろー](2010/10/21 15:56)
[17] 星は夢を見る必要はない第十八話[かんたろー](2011/08/02 16:03)
[18] 星は夢を見る必要はない第十九話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[19] 星は夢を見る必要はない第二十話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[20] 星は夢を見る必要はない第二十一話[かんたろー](2011/08/02 16:04)
[21] 星は夢を見る必要はない第二十二話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[22] 星は夢を見る必要はない第二十三話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[23] 星は夢を見る必要はない第二十四話[かんたろー](2011/08/02 16:05)
[24] 星は夢を見る必要はない第二十五話[かんたろー](2012/03/23 16:53)
[25] 星は夢を見る必要はない第二十六話[かんたろー](2012/03/23 17:18)
[26] 星は夢を見る必要はない第二十七話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[27] 星は夢を見る必要はない第二十八話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[28] 星は夢を見る必要はない第二十九話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[29] 星は夢を見る必要はない第三十話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[30] 星は夢を見る必要はない第三十一話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[31] 星は夢を見る必要はない第三十二話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[32] 星は夢を見る必要はない第三十三話[かんたろー](2011/03/15 02:07)
[33] 星は夢を見る必要はない第三十四話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[34] 星は夢を見る必要はない第三十五話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[35] 星は夢を見る必要はない第三十六話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[36] 星は夢を見る必要はない第三十七話[かんたろー](2011/08/02 16:08)
[37] 星は夢を見る必要はない第三十八話[かんたろー](2011/08/02 16:07)
[38] 星は夢を見る必要はない第三十九話[かんたろー](2011/08/02 16:06)
[39] 星は夢を見る必要はない第四十話[かんたろー](2011/05/21 01:00)
[40] 星は夢を見る必要はない第四十一話[かんたろー](2011/05/21 01:02)
[41] 星は夢を見る必要はない第四十二話[かんたろー](2011/06/05 00:55)
[42] 星は夢を見る必要はない第四十三話[かんたろー](2011/06/05 01:49)
[43] 星は夢を見る必要はない第四十四話[かんたろー](2011/06/16 23:53)
[44] 星は夢を見る必要はない第四十五話[かんたろー](2011/06/17 00:55)
[45] 星は夢を見る必要はない第四十六話[かんたろー](2011/07/04 14:24)
[46] 星は夢を見る必要はない第四十七話[かんたろー](2012/04/24 23:17)
[47] 星は夢を見る必要はない第四十八話[かんたろー](2012/01/11 01:33)
[48] 星は夢を見る必要はない第四十九話[かんたろー](2012/03/20 14:08)
[49] 星は夢を見る必要はない最終話[かんたろー](2012/04/18 02:09)
[50] あとがき[かんたろー](2012/04/28 03:03)
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[20619] 星は夢を見る必要はない第十一話
Name: かんたろー◆a51f9671 ID:423dceb7 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/01/13 06:26
「エターナリティー・エンシェントレクイエムブラスター!!」


 ロボの体から出てきた中二の少年が『ぼくのかんがえたひっさつわざ』を叫び、右手と左手を交差させながら青いレーザーを縦横無尽に走らせる。その光線は倒れていたエセロボ三体をバラバラの鉄屑に変えて、左手で前髪を掴み、「辛いね……僕の力に耐え得る存在が神以外にいないというのは……僕の本気が発揮できるのは、幾億年経とうと無いというわけか……あの最終戦争、ラグナロクが懐かしいよ、まああの頃は僕もエインヘリャルの尖兵でしかなかったんだけど……」とか戯言を口にしながら自分に酔っていた。未成年の飲酒は禁止されています。


「アンドロイドダト、バカナ、イママデソノヨウナソブリハミセテイナカッタ!」


「当然さ、その為にあの鉄の枷を体に纏っていたんだから。つまり君たちが壊してくれたあのボディは僕の力を封じ込めるだけでなく、偽装としての意味もあったんだね。僕くらいの洞察力がないと見破れないから、恥じることは無いよ」


 一々ムカつく言動の少年の言っていることはさっぱり分からない。あくまでムカつくということしか。
 残る三体のエセロボが少年を軸に三対に並び、同時に襲い掛かる。しかし、少年が「俊雷・ソメイヨシノ!」とまた頭の悪い技名を声に出すと、コンマ一秒以下で逆さに天井から立っていた。……よく分からんが、その技名なのかなんなのかは一々言わなければならんのか? ぶっちゃけ聞いてるこっちも恥ずかしいんだが。


「釈迦に会ったら言っておきなよ、僕を殺すつもりなら運命程度では覆せない大いなる災厄を持って来いってね。ティータイムがてらに相手してやるからさ」


 カッコいいと思ってるんだろうなあ、俺はお前をカッコいいと思うくらいなら弁護士のピエールのファンになる。いや、絶対。
 痛々しい台詞とは裏腹に、地上に降りる瞬間、少年は真下に立つエセロボたちの一人を踵落としで沈黙させて、次いで右側に立つエセロボに闘牛の如き勢いで肩からぶつかり、廊下の奥にすっ飛ばす。残る一体に後ろから殴りかかられるが、その場でしゃがみこんだ後そのまま逆立ちの要領で空中に飛ばし、ソバットを叩き込む。
 この少年、頭はとことん悪そうだが……強い! この格闘技能、技の破壊力、加速機能に状況判断の的確さ。もしかしたら、中世の王妃以上の戦闘力かもしれない。……最初っからお前が出てたらこの工場楽に突破できたんじゃねえのかよ?


「あれよ、流石私が修理しただけのことはあるわね。納得の戦いぶりだわ」


「じゃああのウザイ性格もお前譲りという風に帰結するが、いいんだな? 吐いた唾は飲み込めないんだぞ」


「……保留にしとくわ」


 ルッカでもあの性格は嫌なんだな、分かるよ。ていうかああいう意味も無くでかい事言う奴が一番嫌いなはずなんだけどな、ルッカは。自分が直したってだけでそれほど愛されるのか、俺もロボットとして生まれてくれば良かった。そうすればもう少し優しく応対してくれるだろうに。


「ふふっ、これで終わりか……虚しいね、戦いは虚しい。強すぎる力はこういった弊害を生む。僕が心から高揚感を得る日は来るのかな? この純然たる魂を開放する日、それが世界を混沌の渦中に飲み込まれる時だと分かっていても、そう望んでしまうのは僕のような選ばれた者故のエゴなのか……」


 尋常じゃなくうっとうしいな、いいからさっさとこっちに来て事の説明をしろよこのなんちゃってボーカロイド。


「ああマスター。紹介が遅れたね。僕の名前は……いや、ロボで良いよ、遠い昔に僕は自分の名前を捨てた、そう、あの日の罪を掻き消すために……」


 こういうミステリアスな過去が人の厚みを増させるのさ、とか演技掛かった台詞を続かせて、ロボが遠くを見る眼でこちらを見る。あれだな、お前は前形態でも現形態でも俺に絡もうとしないな。


 説明を聞く前に一発どついたろ、と前に歩き出す。俺の拳がロボ(で良いんだよな?)に届く前に後ろからエセロボの腕が飛んで来てロボの頭にごづ、と嫌な音を立てて当たる。廊下の奥から仕留め損なったエセロボが腕を飛ばし攻撃したようだ。
 だが、それは脅威にはなりえない。先ほど拝見させてもらったロボの活躍を見た後では当然、何よりかろうじて起動しているだけのエセロボに何が出来るというのか? この糞ガキの戦闘力は53万です……やー、流石に地球破壊はできないだろうけどさ。


「…………ふ、」


「あん?」


「ふえええぇええぇえ!! 痛いよおー!!!」


「うぞぐふうっ!」


 振り向いてまた似合いもしないことを言いながら超スピードで走り出すかと思いきや、この糞ガキ俺の腹に猛スピードで飛び込んできやがった。これは凄い、お前アメフトにでも転向すれば? 俺の腹が受けた衝撃はルッカのボディーブローを超えるぜ? んで、その超加速無駄なことに使うなよ、お前のその技は誰がなんと言おうと皮肉を込めてロボタックルと命名してやる。


「ちょっと、どうしたのよロボ! ……クロノ、これどういうこと?」


「お、れ、が、きき、たい……!!」


 俺の腹に顔をうずめてごりごり押し込んでくるロボを少しでも遠ざけようと頭を両手で押さえて力を込めるが一向に離れる気配が無い。機械の力は世界一を実践するな、俺の腹相手に。


「痛いのやだあ!! 怖いよおおぉぉお!!」


「痛みに過度の恐怖を持っている、と解釈すればいいかしら?」


 役に立たない分析ありがとうルッカ。とりあえずこのガキの頭にプラズマガン撃ちこんでくれない? クロノのライフポイントはとっくに0だよ。


「くそ……ルッカ、とりあえず前にいるエセロボを倒すぞ……いや、悪い倒してくれ」


 俺に纏わり付くショタっ子が邪魔で何も出来そうにない。アンドロイドってもっとカッコいいものだと思っていたよ、映画の見過ぎだと言われようと、こんなキャラでそんなセンセーショナルな存在だなんて納得出来るか!


 各関節から火花を散らしながらもエセロボは果敢に戦ったが、ルッカの必殺技『近づいてハンマー』で完全に沈黙した。必殺技の名前なんぞこれくらいシンプルなのが良いんだよ。


 戦いが終わっても泣き喚くロボをルッカの頼みで俺が背中に背負って、さらには元ロボの残骸も持たされて、プロメテドームまで運ぶ。元ロボの残骸は当然のこと、このしゃっくりを繰り返してるガキだって体格が小さくても重たいんだぞ。ドラ○もんだって確か100キロくらいあったんだからな。いや、流石にロボが100キロの体重だったら俺に持ち上げることなんてできないけどさ。
 ……でもこいつは何で近くにいたルッカじゃなく俺に抱きついたんだ? いやルッカに抱きついてたら一刀両断の刑に処してたけどさ。俺に対して好印象は絶対持ってなかった筈なんだが……あれか? ツンデレという奴か?
 俺という超絶美男子に惚れたのなら、もしかしたらこいつはショタではなくロリなのかもしらんと背中を動かして胸を捜したが、やっぱり無い。男確定。……俺はロリコンでは無いが、ショタ好きの要素なんぞ毛ほども無いからな、そういった告白をかましてきたらこいつの首をねじ切ってくれる。


 これはまあ余談だが、後になってロボ本人に聞いてみると「僕が泣く? ははは、貴方は奴らのモルガナティックファオルダー。通称幻惑の堅牢により幻覚を見たんですよ、ああ、奴らについては聞かないでください。これはあくまで僕が背負うべき業で一般人の貴方には」
 ここで羞恥心の無い十代にすかさず水平チョップ。
「あ、あのね……僕男の子だから、女の人に頼ったらね、は、恥ずかしいからね、だ、だから……ふああん!! 痛いよお!!」
 まあ、見た目にふさわしい可愛い理由だった。ただその後俺の頭をスリーパーホールドをかけているかのように抱きかかえて泣くのは勘弁。それを見たマールが兄が死んでその亡骸を持ち嘆いている少年の絵に見えたと教えてくれた。悪くない興行収入が得られそうだな、その設定なら。






 プロメテドームまでの道中で血を吐き、ルッカはその心配をせずにスイスイ先を歩くというショッキングな出来事があったが、生きてマールの笑顔を見ることが出来た。血を吐いた理由はロボタックルにより肋骨が折れ肺に刺さったことが原因だった。工場内で負った怪我の類は全てロボによるものだった。仲間ってなんですか? 共闘するってどういう事ですか? 家に帰ったら辞書を引いてみよう、きっとこの謎が解けるはずなんだから。
 俺の背中にいるロボを見て驚いたマールが「まさか……クロノが攻めなの!? ……うん、まあ贅沢は言えないよね。良いよ、クロノ」と苦渋の顔で何かしらを許可してくれたが、やっぱり俺に仲間はいない気がする。だってこいつら俺の心に黒髭危機一髪のようにナイフをドスドス刺してくるんだよ? 弱っている時なんかハイエナの如く。


「……それで、さっさと説明しろよ。何でお前はこのロボットに入ってたんだ?」


「良いよ、まあ少し難解ではあるけれどね。まずは僕の過去から話そうか、そもそも僕はとある領主の子供だったんだ。けれどある日大帝ルシフェルが闇の深淵から屈強なヘルビジニア、通称霧の驟雨大隊を引き連れて」


「知ってるか? 俺子供の耳を引きちぎるのが得意なんだ」


「……僕はこの世界でも希少な人間とほぼ同じ感情を持つアンドロイドというロボットなんだ。僕を含めて二体しか現存しない。だから盗賊なんかから僕自身を隠し、守るためにそのボディに入ってたんだよ、だからちぎらないで?」


「なるほどね、まあその辺は工場でも聞いたわ。それで、その機械から出てきた途端貴方の言動や能力が一変したのにはどんな理由があるのかしら?」


「マスター、僕の能力が増加した理由。それはもう知ってるはずだよ? 僕という器に秘められた大いなる力を抑えるため、とね。僕の性格が変わったことについては僕の創造主たるデウス・エクス・マキナが僕の存在を恐れ破動の力を用いて僕という個を消し去ろうと」


「知ってるか? 俺子供の腹に蹴りをかますのが趣味なんだ」


「……僕の能力が増したのはあくまでそのボディは防御用で、速度や攻撃面はあまり重要視されてなかったからなんだ。その点僕は攻撃面速度面を重視された型だから、それを脱ぎ捨てれば防御力は下がるけど、他の面では跳ね上がる。性格が変わるのは僕を作った人が『お前の性格がウザイ』って言って、そのボディに性格矯正機能をつけてたからなんだよ、結構無茶な機能だから、状況把握能力なんかが極端に下がっちゃうのが難点なんだ。だからお腹叩かないで、ポンポン痛いのやだ……」


 常にそういう風に臆病なら俺としても優しくしてやらんではないのに、なんですぐ調子に乗るかなこいつは。それと、言うまでもないが俺にそんな特技や趣味は無い。だから引かないで下さいルッカ。そしてしおらしいロボを見て萌え萌え言うのは止めて下さいマール、どこぞのカエルを思い出すので。


 戦闘中以外は比較的まともだった前ロボに戻すため、ルッカはロボが着ていた(この表現が正しいかは分からないが)壊れたボディを現代に持って帰ることにした。今は道具が足りず修理するには心許ないので、実家に帰り本格的に取り掛かるらしい。


 さて現代に帰るかと仕度を終えて開けたドアの中にあるゲートに入ろうとすると、ロボが俺のズボンを掴んでいた。……やめて、何度も言うけど、俺にその気は無いから、上目遣い止めて、お前見た目だけは凄い可愛く見えるんだから。


「僕は……どうすればいいでしょうか……?」


「……お前の好きなように生きろよ、やりたいこととか無いのか? あればそれに向かって突き進めばいいさ」


「……僕は、できれば皆さんと一緒に行きたいです。皆さんのやることが人間、この星の生命を何処に導いていくのか見届けたい……後一人でいるのはつまらないし、寂しいです……」


 嫌だ御免だ勘弁だいいから離せテメエはこの世界のロボットなんだからこれ以上俺に関わるなぶっちゃけお前と話してると腹が立つし時に危機感を覚えるほらさっさと離せ!
 俺の長い長い罵声を聞いてロボが何か言う前にマールが俺の背中に肘鉄、左頬に裏拳、それは見事なミドルキックという三連動作を流して「一人は寂しいもんね! 一緒に行こう!」とさわやかに言い切ってました。ああそうだよな、念願の半ズボンが似合いそうな男の子だもんな。ホモが嫌いな女の子なんていません! ってどこかの教科書に書かれてるもんな。釘刺しとくけどな、クロノ×ロボなんて永久にこないからなクソが。


 マールの誘いを聞いて物凄く嬉しそうに顔を輝かせた後「僕という世界に抑止力をもたらす存在が時を越える、か。この顛末がいかなる結果を歴史に刻むのか。皆さん安心して下さい、僕達に敵意を向ける生物は全て物言わぬ屍となり自然に還ることでしょう……」とこき出したロボが果てしなくウザイ。どうなのかねこういう自分の空気しか生産しない奴って。


 様々な障害や喜劇に悲劇、まっっったく仲間と思いたくないアンドロイドを連れて、俺たちは未来と別れを告げた。中世といい未来といい、なんでもっと良い気分で別れられないのか、そう思うのは俺だけなのか?










 星は夢を見る必要は無い
 第十一話 魔法特性は自分で選びたかった














 ゲートの闇を抜けて、目を開けばそこは俺たちの予想していた太陽の光はなく、かといって未来のように空気が荒れてはいないし、耳を不快にさせる風切り音も無い。石畳の上に寝ていた体を起こして体に付いた微小な砂を払って立ち上がる。俺たちが倒れていた近くに細長い柱があり、その上に電球がついていて、そこから心許ない光が灯っているが、辺りを見回すにはあまりに弱い光源。近くの暗がりに何か恐ろしい魔物が潜んでいるのではと思い、メンバーに緊張を強いさせる。部屋の中央には幾筋の淡い光の柱が床から伸び、その存在感を知らしめている。光が出ている原理はルッカやロボでも解析できず、またこの場所がどういう場所なのかも分からずじまいだった。


「ここは……まさか、エインギルモアの」


「ロボ黙れ、これ以上喋るならパソコンにインストールするぞ」


 自分でも意味の分からない脅しだったが、ロボの妄言を黙らせることに成功した。ただでさえ状況が分からず混乱してるんだ、そこに訳の分からん具材を入れてさらに引っ掻き回すのはやめろ。


「ねえクロノ、あっちにも道があるよ? ……それに、人の気配も」


 マールの指差した方向に暗くて分かりづらいが細長い道があることを確認した。人の気配? 俺には分からんが……半分王女半分野獣のマールが言うなら間違いないだろう。ホント、常識人が俺しかいない。


 細長い道を進み、西部劇に出てきそうなボロボロのドアを開けると、街灯にもたれながら鼻ちょうちんを出している老人の姿があった。全身黒一色、ダッフルコートに身を包み帽子を顔の上半分を隠すほどに深く被った姿はまあ、控えめに見ても変質者だった。


「スルーしようか、あれは多分近づいたらコートを脱いで恥部を見せ付けるタイプの変態だ。露出狂ってやつだな。気をつけろよマール、お前なんか狙われそうな外見なんだから。ロボも気をつけたほうが良い、むしろ男の娘の方が良いなんて奇特な奴もいるんだから。ルッカはやられたら滅殺のカウンター魂がデフォルトだからあえて注意もしない」


「おーい」


 今まで寝ていた老人が俺の的確なアドバイスを聞いて左手を俺に伸ばして手首を曲げた、分かりやすい突っ込みの構えを取っていた。なんか、シュール。


「お前さんたち、というかそこの赤毛の御仁は大層な言い方をなさるのお……」


 しょうがないだろう、根が正直なんだ。俺の長所は嘘をつかない、短所は嘘をつけない。


「あの……ここは?」


 おずおずと後ろからルッカが老人に話しかける。こらこら、あんまり近づくと襲い掛かってきますよ? 猿山の猿みたいに。


「ここは時の最果て……時間の迷い子が行き着く所さ……お前さんたち、どっから来なすった?」


「私たち……こっちの赤毛と金髪の女の子、そして私が王国暦1000年から来たんです」


「僕はA.D.2300年の世界からゲートで顕在したという訳さ」


 ルッカとロボが老人の質問に答え、老人はそれを聞いて小さく首を縦に振り得心をえたという顔を見せる。いや、よく見えないけれども。


「違う時間を生きるものが、4人以上で時空の歪みに入ると、時限の力場が捻れてしまう……しかし、この所、時空の歪みが多くてな。お前さんたちのようにフラリとここへ現れる者もいる……何かが時間全体に影響を及ぼしているのかも知れんな……」


「って事は、誰か一人ここに残ったほうが安全ってことね」


 ルッカが老人の話を引き継ぐが、俺は何が『って事は』なのか分からん。量子力学は苦手だ。シュレディンガーの猫だとかなんとかさっぱりだ。


「ええ、こんな所で置いてけぼりなのー?」


「こんな所は酷いな……何、心配いらんよ。ここは全ての時に通じている……お前さんがたが願えばいつでも仲間を呼び出せる。だが時の旅は不安定じゃ。常に三人で行動することじゃ」


 じいさん、多分マールはこの場所が薄気味悪いから嫌がってるんじゃなくて、あんたみたいな得体の知れない人間と二人きりになるのが嫌なんだと思う。ちゅーか、自己紹介してもいいんじゃないか? そこまで親切に色々教えてくれるんならさ。


「じゃあ、誰か残らないと駄目だね」


「誰が残る? クロノ。私を残すつもりなら別に良いわよ? それはそれであんたの意思だしまあこんな所に私を残す気ならまあ特に思う事は無いけれどそうなるとマールやロボみたいな過ちを犯しやすそうなメンバーで行くことになるからまあねー私としてもそういった危険を無くすためにもあんたの×××を潰すのはやぶさかではないというか……で、どうするの?」


「よーし、ルッカは連れて行こうか。頼りになるし、俺の相棒だからね」


「……ルッカずるい、クロノの臆病者……」


 なんと言われようが一向に構わん。俺は俺の道を行くのだ。俺の大切な肉体を潰させるわけにはいかん。TSとやらが流行っていようと俺自身でそれを体現したくないし、そんな乱暴な性転換聞いたことねえ。


 まあ順当に行って残りの一人はマールを仲間に入れるべきかと発言したらロボがまたぐずりだした。おまえもうどっちかのキャラにしてくれないか? 苛々が百倍になってパーティーの主役になれそうだ。
 結局とりあえずは俺、ルッカ、ロボのパーティーメンバーになり、マールがすねるという事態になった。仕方ないだろう、ロボが万力の握力で俺の手首を握りつぶそうとするんだから。
 まあ、現代に帰った後早急にコイツのボディを直して装着させるためにもこのメンバーは妥当といえるかもしれない。


「決まったか。Yボタンでわしを呼び出せばいつでもここに残った仲間とメンバーチェンジが」


「じじい、Yボタンって何だよ」


「……仕方ないのお、こいつを持っておくが良い」


 じいさんは小さなマイクのような機械を手渡し、そこに喋りかければわしと繋がっているのでメンバーチェンジをさせてやろうとのことだった。
 ……まだ理解できない。何処の時代のどんな場所でも仲間を送り届けてくれるのか? そう聞いてみると「いつでもというわけではない。そう度々メンバーの入れ替えをされるとわしの魔力が尽きてしまう。戦闘中も止めておいたほうがいい。激しく動かれている状態では時代間の転送は不可能じゃし、転送された側も一定の時間帯硬直状態になってしまう。安全が確保された状況のみ活用することじゃ……」との事。……魔力?


「私たちの時代に戻るにはどうすればいいの?」


 俺が質問する前にマールがじいさんに話しかけた。まあ、老人の戯言だろうから別にいいんだけどさ。


「お前さんたちがやってきた場所に光の柱があるじゃろう? あれはあちこちの次元の歪みとここ、時の最果てを繋ぐものじゃ。一度通った事のあるゲートからはいつでもここに来られるじゃろう。光に重なり念じればゲートに戻れる……じゃが、そこのバケツから繋がるゲートには気をつけるんじゃな……」


 じいさんが指差す方向には奇妙な光を底から溢れさせている古ぼけたバケツがぽつ、と置かれていた。


「そこはA.D.1999……『ラヴォスの日』と言われる時へ繋がっとる……世界の滅ぶ姿が見たいなら行ってみるのもいいが……お前さんたちまで滅びちまうかもしんぞ」


 そんな悪趣味なもん誰が見たいか! 自傷癖どころの騒ぎではない。M? Mというのは自分を傷つける存在が同じ人間であるから生まれる特殊な……どうでもいい。


 じいさんの話を聞いた後に光の柱に向かおうとすればまたじいさんが俺たちを呼び戻す。一回で言いたいことは言えよ。二度手間三度手間をかけさせる人間は職場で嫌われるんだぞ。
 そう急がずに奥の扉に入ってはどうだとじいさんが勧めてきたが、「面倒くさえ」の一言でまた光の柱に戻ろうとする。すると今まで動かずを貫いていたじいさんが恐ろしい瞬発力で俺に飛び掛りジャーマンスープレックスをかまして定位置に戻った。頚骨が折れたら歩けなくなるんだぞ? その危険性を知った上での行為というならば俺も刃物を出さざるを得ない。
 顔を真っ赤にして怒る俺を抑えてルッカとロボが俺を奥の扉まで引っ張っていく。これでつまらなかったらどうなるか覚えてろ。
 中に入ると白い毛むくじゃらの生き物が「なんだおめーら? 俺か? 俺はスペッキオ。獣の神! こっから色んな時代の戦見てる!」と聞いてもいないことを朗々と語りだす。その上自分のことを強そうに見えるか? と聞いてきたので「鼻くそレベル」と返してやれば「そうか、俺の強さお前の強さ。つまりお前鼻くそレベル。ダサイ」と答えてきた。どうですかねこの会話。おかしいよね。
 スペッキオとしばらく口げんかをしていると、スペッキオが「ん、お前らも心の力を持ってる」とか言い出した。あれ、こいつロボと同じ病気? ああ変なものに絡まれたなあと溜息をついた。
 それから魔法が使いたいと念じながらこの部屋を三周走れとかスポーツのコーチみたいな命令を俺たちに下し、やる気無しにその命令をこなした。俺だけ三回やり直せと言われた。まっすぐ行ってぶっ飛ばす。ストレートでぶっ飛ばす……


「よーし! そっちのツンツンの鳥頭は微妙だけど、お前ら良く出来た! よくやった!」


 ……腹へって機嫌が悪いときに、この毛むくじゃらの狸が……言うに事欠いて鳥頭? ふざけんな! これは別にワックスとか使って髪が尖ってるんじゃねえ! 天然なんだよ畜生!


「ハニャハラヘッタミターイ!」


 それが魔法なら俺でもホグワーツで主席を取れそうなしょうもない魔法? の言葉を高らかに叫びスペッキオがいい顔をしていた。何もやりきってねえよ、と馬鹿にしていたのだが……


「……!? 体から、電流が流れてくる!!」


「わ、私も、右手から炎が……!」


「……僕は?」


 俺とルッカに異変が起こる。俺の体の周りに電撃が走り、俺の意思で自由自在に動き出す。その電撃は俺の体に触れても一切俺を蝕まず、戯れるように宙を舞う。
ルッカは左手から轟々とした火が溢れ出し、部屋の中に熱気を作り出していた。勿論、服や体を燃やすことなく、神話の炎の神のように左手を動かし炎を操っていた。
 ロボはきょとんとして自分の体を眺めていた。


「魔法は天、冥、火、水の四つの力で成り立ってる。ツンツン頭は天。こっちのメガネのねーちゃんは見たとおりの火の力。てな具合に魔法だけでなく全てのバランスはこの四つで成り立ってる」


 それからスペッキオの話が始まり、それによるとずっと昔、魔法が栄えた国があり、そこでは全ての人々が魔法を使えたそうだ。しかし、魔法に溺れ滅びた今では、魔族以外に魔法を使える者はいなくなったそうだ。最後に、魔法は心の強さ、それをスペッキオは念入りに教えてくれた。
 ちなみに人間ではないロボは魔法の力を使えなかった。悔しいだろうな、ロボみたいな中二が魔法を一人だけ使えないなんて。むしろ自分だけは使えるはずなんて思ってたに違いない。その幻想をぶっ壊す。
「まあ、僕だけ使えないというのもまた選ばれた素質ゆえの物ですからね、きっと天地魔界の創立者達が僕の力に妬んだんですよ」と口では強がっていたが、ずっと肩が震えていた。ほんのり可哀想だと思った。
 とはいえ、ロボのエンシェント……回転レーザーは冥に似た力を持つとの事で、決して悲観したものではないとスペッキオにフォローを告げられる。まあ、俺がロボに何か言えることがあるとしたら、ざまあ。


 その後マールを連れて来てみると、マールは水、それも氷寄りの力を持っていた。ほらほらロボ、後でチョコレートあげるから俺の背中にすがりつくのは止めなさい。
 一度俺、ルッカ、マールでスペッキオと戦ってみたが結果はボロ負け。まだ自分の能力を操りきれない俺たちでは自在に全ての属性を操るスペッキオに歯が立たなかった。悔しいのは悔しいが、新しい自分の力を得たことに対する喜びが勝り、怪我の痛みも忘れるほどだった。ただ、俺の力、天だが、天は雷を操る力が主らしく、相手に雷を落とすというのが最も簡単な技だと分かったのだが、どうにも敵に落ちず俺に当たることが多い。別にダメージは無いんだが、かっこ悪いことこの上ない。何度隣でスペッキオと戦うマールやルッカに笑われたことか。スペッキオには指を指されて爆笑された。唯一俺を慰めて「格好良かったですよ」と言ってくれたのはロボだけだった。ごめん、お前の事ウザイとか言って。時の最果てでロボが俺のフラグを立てた。後好感度150以上で俺とロボの濡れ場が発生する。


 部屋を出る際にスペッキオがまた新しい仲間が出来れば連れて来いと告げる。出来れば、ね。
 外に出た俺たちにじいさんが「ほれ、わしの言うことに間違いは無い」と自慢げに言う。そういうことを言わなければ普通に感謝できるのにな、そんな性格だよあんた。
 じいさんはとりあえず自分たちの時代に帰ってみては? という助言と何か分からんことがあれば力になると頼もしいのかどうか境界線なじいさんに言われてしまった。まあ、たまには寄ってみてもいいか。


 短い間ではあったが、俺たちは時の最果てを後にすることにした。
 光の柱に触れると、頭の中でA.D.1000年『メディーナ村』と浮かぶ。自分の思考以外が浮かぶって、妙な感覚だな。
 他の光の柱にも触れるが、現代に帰れそうな所はこのメディーナ村という所しかない。聞いたことが無い場所だが、時代が同じならなんとかなるだろうと光の中に飛び込むことにした。




 次に眼を覚ませば、目の前で懐かしの青色丸と緑色丸が驚愕の表情を浮かべて俺たちを見ていた。
 後ろを見て、俺たちが出てきたところを確認すると、どうやら俺たちはこのモンスター達の家の中、それもタンスの中から出てきたようだ。そんな状況で驚かないわけは無いわな……おや? この嗅覚を甘く刺激する匂いは……?


「たたた食べ物だぁああぁあ!!」


 モンスター二匹が囲んでいるテーブルの上に果物ケーキ何より肉! が所狭しと並んでいる。パーティーでもするつもりだったのか知らんが、とにかく食べる、後でこのモンスターたちに襲い掛かられようが知ったことか。今俺が捉えるは己が体を動かすエネルギーの塊のみ!


「ルッカ! それは俺の狙っていたバナナだ! 汚え手で触れるんじゃねえ!」


「あんたはそこのキウイを食べれば良いでしょうが! 私だってあんたを助けようとした日から朝ごはんも食べてないのよ!」


 俺が食事を始めて数瞬後、ルッカが俺の食卓に入り込み俺の食べ物を蹂躙してくる。止めろ! 俺は愛しているんだ、その果物を! その野菜を! そして肉を!
このまま二人で食べていればどちらも満腹になれないのは必至。俺はルッカに勝負を挑むことにした。


「ルッカ、今すぐ俺と決闘しろ! 俺が勝てばお前はこの食事に手を出さずひもじそうに外で指を咥えていろ!」


 俺の発言に食事を止め、レモンソースを口端に付けたままニヤリと笑みを浮かべた。いいね、そこで乗らない奴はルッカじゃねえ。


「いいわよ、私が勝てば私以外のメスに近づかず話しかけずを一生貫いてもらうわ。そして貴方は私と一緒の墓に……」


「重たいな、一生かよ。それに一緒の墓? 心中しようってことか? やっぱり重たいな。つくづくお前の発想は怖い」


 覚えたての魔法を俺に使うのは良くないぞー? と思っている俺はただいま絶賛炎上中。気分は原作オペラ座の怪人。




 正気を取り戻した俺たちはモンスターたちに警戒態勢をとるが、青色丸の「お腹が空いてるなら、まだたくさんありますし、一緒に食事でもどうですか」の一言で世界は分かり合えると知った。
 蛇足だが、黒焦げの俺を治療してくれたのはロボのエンジェルストラブト……もうケアルビームでいいや、であった。この胸に飛来するときめきはもしかしなくとも恋だろうか?


 青色丸と緑色丸の話を聞くに、ここメディーナ村は400年前、つまり中世の時代人間との戦いに敗れたモンスターたちの末裔が集まる小さな村だとのこと。いきなり襲い掛かったりあからさまな蔑視の眼で見てくる者がほとんどだろうとも教えてくれた。西の山の洞窟の近くに住む変わり者の爺さんを訪ねれば良い、きっと力になってくれると最後を締めて俺たちを送り出してくれた。いきなり現れていきなり食事を平らげたのにここまで親切にしてくれるとは、人間なんかよりよっぽど人が出来てる。いつかこの旅が終わればここに住まわせてくれないだろうか? ……どうせルッカが追いかけてきて終わりか。まいったねどうも。


「教えてくれたのは嬉しいけど、何で私達にそんなことを……?」


 ルッカが不思議そうに、そして訝しげに眉を歪めて二人に問う。当然か、俺もここまで丁寧に教えてくれればなにがしかの罠があると見てしまう。すると緑色丸が肩をすくめて一言「信用されないのは当然だろうが……」と前置きする。


「人間と魔族が戦ったのは400年も昔の事だ。いつまでも過去にとらわれていても仕方が無い。まあ、私達のような考えを持った魔族はほとんどいないが……それでも、我々魔族全てが人間を殺そうと考えているわけではない。どこかで禍根を断たねば、憎しみは消えないのだよ」


 緑色丸の言葉には、言外に人間への憎しみは消えたわけではないと告げている。ただ、いつかは拳固にされたその拳を解かねば終わらないのだと考えている。それはただ許すということよりも辛く、誇りあるものなのではないだろうか。
 ちょっと含蓄のあることを思っていると横でロボが「言ってみたいな……ロボ台詞集に入れておこう」とメモとペンを取り出しペンの先を舐めていた。取り上げるしかあるまい。
 ちょっとした騒動が起こったが、俺たちはその家を後にして二人の言う爺さんの家に向かった。最近爺さんに縁があるよなあ。ヤクラといい大臣といいドンといい最果てのじじいといい。





「おお! 訪ねてきおったか。ワシの自慢のコレクションでも見て行くと良い」


 青色丸たちの家を出て西の山の麓にある家に入ると、どこかで見たような顔の爺さんが馴れ馴れしく声をかけてくる。ごめんなさい、俺初対面とか凄い苦手なんで。合コンとかでも女の子達にトイレで「右端に座ってる赤毛の男、なんか暗いよね」とか言われるくらいなんで、いきなり手とか握らないで、男とフラグが立っても嬉しくないし。ロボ? あいつは男の娘だから良いんだよ。


「おや? わしの顔を覚えとらんか? ほれ、リーネの祭りで会ったじゃろうが」


「……ああ! マールのペンダントを見せてくれとか言いながら胸の谷間を覗き込んでた爺さんかあんた。確か名前はボッシュだったか?」


「うわ、最低ねこのジジイ……」


 俺の発言にルッカが胸を両手で押さえて後ずさる。おいおいお前は谷間が出来るほど無いだろう? パット入れてるくせに、と茶化したら壁に掛けてあった大剣を振り回して俺を二分割しようとしてきた。それ、ドラゴン殺しって銘が彫られてるんだけどさ、良く振り回せんね。ガチでお前剣士に転向しろよ。


「全く下らんことを覚えておるのう……そこのお嬢ちゃんもその辺で止めときなさい。あんたもあのポニーテールのお嬢さんには負けるが良い尻をしとる。安産型じゃな。胸はみそっかすじゃが」


 俺とボッシュが最後に聞いた言葉は「斬刑に処す」だった。その後はご存知ロボ君大活躍。やっぱりヒロインはお前のようだ。今度モロッコに連れて行ってやろう。


「そうじゃ、ワシの作った武器でも買ってゆかんか? 安くしとくぞ」


 頭からだくだくとピナツボ火山みたく血を吹き出させながら笑顔を崩さないボッシュは男っちゃあ男である。ただルッカの20ゴールドで全部売りなさいという恐喝には汗を流していたが。
 商売人の意地なのか、顎にナイフをぺたぺた擦り付けられても値下げはしなかった。あのさあルッカ、ロボが怖がってるから。マスターであるお前にレーザー撃とうとしてるから。その辺にしたげて? それ以上すると俺はお前を警察に突き出さなくちゃならんくなる。
 結局武器の類は買わずポーションを五つほど購入することにした。ボッシュの作った武器とやらは手にすることが出来なかったが、一つの生命には変えられない。「武器はな……生命をうばうための物ではないぞ。生かすための物であるべきじゃ」と言うボッシュの言が命乞いにしか聞こえず哀れだった。
 家を出る前に「そうじゃ、おぬし達。トルース町に帰りたいのであれば、この家の北にある山の洞窟を抜けて行くが良い」と教えてくれたのには感謝だ。俺なら絶対教えないね、家の中を滅茶苦茶にしたあげく脅してくるような奴らに。


 驚いたのは西の山に向かう途中でルッカが急に座り込み「胸、小さくないもん……平均だもん」と泣き出したこと。どうやら現代の大臣といい今回といいかなり気にしていたらしい。俺がマジ泣きだと気づかず「いや、平均以下だと思うぜ? それでパット入れてるならさ」と突き放したことも相まって号泣してしまった。 後ろから睨みつけるロボの視線が痛いわ怖いわレーザーの稼動音が聞こえてくるわで俺も泣きたくなった。
 俺が「胸なんかでルッカの魅力は変わらないよ、むしろそんなことを気にする男の方が器が小さいんだから。少なくとも俺は気にしない」と出来るだけ優しく諭してあげる。まあ、本音は巨乳が好きなんですけども。大概の奴は巨乳の方が良いと思うけども。
 ルッカが赤い目で「ほんとに?」と聞いてきたときには思わず「全てはフェイク!」と言い放ちたかったがロボの右手が赤く光っているので「勿論さ!」と答えておいた。言いたいことも言えないこんな世の中。
 機嫌が直ったルッカは山道にもかかわらずスキップで先を進みだした。俺を追い抜く折にロボが俺の肩を叩いて「男は女の涙を止めるために生きている……分かってるじゃないですか、クロノさん」としたり顔でサムズアップを見せてきたのにはちょっとイラりと来た。今までお世話になったのでまあ、今回は目を瞑ろうか。


 しばらく歩くと山道に看板が立ち、その後ろに雑草が生い茂っていて中を覗きこみ辛い洞窟がひっそりと存在していた。看板にはヘケランの巣と記されていた。これがボッシュの言っていた洞窟で間違いないだろう。


「ヘケラン? 僕の内臓コンピューターで登録されている名前には該当するものはありませんね」


「そりゃあロボは未来のアンドロイドだし、現代ではその機能あまり役に立たないかもよ? 現代のみに生息した生き物、もしくは地名ならお手上げでしょう?」


「確かに……まあどんな障害であれ、僕の前では塵芥程の困難にも成り得ませんが」


「おーい、馬鹿なことやってないで先に行こうぜ? あんまり長い間家を留守にしてるから母さんが心配してると思うんだ。早く帰って顔を見せてやりたい」


「大丈夫よ、ジナさんならあんたが刑務所に入れられたって聞いたときにも笑ってビールを吹き出してたから」


「? ジナさんとは?」


「覚えとけよロボ。ジナという名前の人間はお前の最優先抹殺対象だ」


 心温まる会話を経て俺たちはヘケランの巣に足を踏み入れた。あのババア、マジで脳天叩き割ってやる……






 洞窟内部は水源か海に繋がる場所があるのか、水の流れる音が遠くから聞こえる。その為空気が湿って、床にはコケやキノコが生えて、天井から水滴が滴り落ちてくる。全体的に青みがかった石の壁は清涼感というよりも冷たい印象を与える。床に流れる数センチ程度の水の流れ付近には小さな水草が点在し、その形は苦痛から逃れるように捩れて、見る者に不安をもたらせる。


「なんだか居心地の悪い場所だな……」


「それに肌寒いわ、外の気温とは大違いね」


 俺もそうだが、半袖のルッカが二の腕を擦り体を震わせる。何も言わずに俺は青い上着を脱いでルッカに手渡した。フェミニストクロノ、此処に在り。


「ありがとうクロノ、でもごめんあんたの服汗臭い」


「人の優しさ及び純情をボロ布のようにしてくれてどうもありがとう。とっとと返せ!」


 こいつは人の心を何のためらいも無く傷つける。それを悪いことと思ってない辺りが凄いよ、ちょっと尊敬するよ。むしろ畏怖の念に到達するね。
 ルッカの握る服を取り返そうと腕を伸ばせばルッカが「良いの、クロノの汗が付いてるなら、それはそれでいいの……」と拒否する。なんだ? 道中臭い臭いと言って俺をさらに傷つける魂胆か。こいつのサドっぷりには頭が上がらないよ。
 そのまま俺は白い肌着一枚で薄ら寒い洞窟を練り歩くこととなった。ロボが暖めてあげましょうか? と服を脱ごうとしたので慌てて止めさせる。今の傷心状態でそんなことされたら本格的に落ちてしまう。そして堕ちてしまう。あくまでプラトニックにいこう。


 ヘケランの巣を歩いていると、物陰から突然現れたモンスターたちが「魔族の敵に死を!」と叫びながら襲い掛かってくる事がよくよくあった。最初は焦った俺たちだが、進化系ロボの格闘能力に強力なレーザー。俺とルッカの新しく得た魔法という力の前では特に苦戦することも無く先に進むことが出来た。特に、ルッカの新しい技、ファイアはこの洞窟内で恐ろしいほどの力を発揮した。数匹のモンスターもその業火に為す術も無く倒れて炭となる。俺の天の力、相手の頭上に雷を落とすサンダーは全く当たらないが、雷鳴剣に電撃を流し込みさらに電力を増させるという試みが成功してその切れ味は今までの剣とは比較にならないものとなった。カブト虫のような外見の甲殻虫はロボの回転レーザーで硬い外殻ごと焼き切って一掃する。……もしかしたら、俺たち最強なんじゃないか? この洞窟に入ってからそれなりに戦闘をこなしたが、誰一人怪我をすることなく先に進んでいる。
 戦闘をある程度続けていたら気づいたのだが、魔法の力、つまり心の力は使えば使うほど強力になるようだ。その変化は一度の使用では微々たる物だが、俺もルッカも使い続けていくうちに炎や電撃の量が増えたり、変化のバリエーションが増えたりなど、確かな進化を遂げていた。これはマールも積極的に戦闘に参加させたほうが良いかもしれない。難点は魔法を使うたびにロボが俺やルッカを睨むことか。


「魔法ね……覚えるまでは半信半疑な能力だったけど、使いこなせれば役に立つどころじゃないわね……これなら本当に私達が未来を救えるかも……」


「流石ですねマスター。本当、気持ちいいんでしょうねそういう不思議な力が使えるって。ケッ!」


「もうすねないでよロボ、あんただって十分凄い力を持ってるんだから」


 この通りだ。ちょっと悪いなーとは思うが、戦闘の度にへそを曲げられてはスムーズに行く旅も鈍重なものとなる。やっぱりある程度役に立たないとは言ってもロボボディは必須だな、なんなら戦闘中だけあのボディを脱ぐという方法を取ってもいいんだし。


 旅を続ける上での問題点や変化を確認しているうちに、俺たちは今までに無い広い空間に出た。先を見るにどうも行き止まりのようだが、今までの道のりで他に奥に進める道は無かった。まさかボッシュの爺さん、耄碌して勘違いした情報を俺たちに流したんじゃないだろうな……


「……奥の湖に飛び込めば水流に乗って海に出られるようですね……多分あそこに入るのが正解なんじゃないですか?」


 ロボが目玉を光らせてこの部屋の構造を解析する。こいつの利便性は計り知れない、次はこいつとマールで旅に出ることにしよう。穏やかで快適な旅が出来そうだ。


「湖に入って海に出る? ……ロボを疑うわけじゃないけど、何か信じられないわね……」


「でも他に行くところもないんだ、腹を括るしかないだろ?」


 立ち止まるルッカの背を押して、ロボの言う湖とやらに近づいてみる。覗き込んでみると小さな渦が水面に浮かび上がり、波がかんなで削れて行くように重なり合って流れている。海に通じているというのは間違いなさそうだ。
 俺は後ろを向いてルッカたちに先に飛び込むぞと声を掛ける……が、二人は青い顔をして少しずつ俺から離れていく。何だよ、レディファーストも守れないのかっていうタイプの引きか? 別にいいじゃねえか誰が先でもさ。


「クロノ……後ろ」


「志村なんかいねえよ」


「違くて! 水! 水の中からほら!」


 必死な形相で俺の後ろに指を向けるルッカと、何で気づかないのこの人という顔で戦闘準備に入るロボ。何だよ俺一人分かってないのか? 身内ネタで盛り上がってるところ知らない名前の子の話題だからついていけず愛想笑いを浮かべている状況に酷似している。


「あー……しくった、今日はボウズだわ。魚一匹も捕まえられねえ……」


「え?」


 後ろから野太い声が聞こえたので振り向くと、今俺が飛び込もうとしていた海に繋がる湖から体中に刺が付いた大きな青色のモンスターが這い出てきた。


「……え? 人間? ……ちょ! ちょっと待ってこういう時のために台詞を用意してあるんだ!」


 モンスターは両手を前に出して何事かブツブツ言いながら頭をポンポン叩いていた。凄いビビったけど、なんだかほんわかさせるモンスターだなあ。
 俺たちはモンスターから距離をとり、各々の得物を取り出す。魔力はまだ残ってる、ルッカもまだまだ戦えそうだし、ロボのエネルギーも充分。どうもこの洞窟の主のようだが、今の俺たちなら負けることは無いだろう。


「あ、そうだ。魔族の敵に死を!」


 ……思い出すほどの台詞かよ。




 先手はモンスター。口から大きな泡を吐き出し俺たちに向けて放つ。そのスピードの遅さに気を抜いた俺が無視してモンスターに攻撃を仕掛けようと走り出す。その瞬間ロボが「危ない!」と俺の飛び出しを阻止して岩陰に引っ張る。走り出していればちょうど俺が近くにいただろうという位置で泡が弾けとんだ。空気の表面を囲っていた水が飛び散り、その水滴はまさに弾丸。地面に転がる石や岩を穿ち、散弾銃のような破壊力を見せ付けた。


「あ、危ねえ! 助かったぜロボ」


「泡の内部に高密度の空気が確認できましたから、流石魔族ですね、並の威力の魔法じゃないです」


 ロボが戦闘中なのにおかしな言動をしない。これはつまり、相当やばい敵だということか? 俺以上に力量のあるロボだからこそ分かる青トカゲの力……爬虫類恐るべしっ! ……あ、もしかしなくてもあいつがヘケランなのか? ……多分そうだろ、ていうかアイツ以外にこの洞窟の主がいるとは思いたくない。


 俺とロボが隠れている間にルッカがヘケランの側面からファイアを唱える。これまでの敵を触れただけで燃やし尽くしたファイアをヘケランは雄たけび一つで掻き消し、目に映ったルッカにその鋭く尖った爪を迫らせる。
 その腕に向けてロボがレーザーを収束して打ち出し軌道を変えてルッカがその隙にヘケランの背後に回りもう一度ファイア。背中に直撃を貰ったヘケランは一瞬その巨体をぐらつかせたが、すぐに体勢を戻し離れた場所にいるルッカに掌を向けた。


「ネレイダスサイクロン!」


 ヘケランが魔法を唱えると、ルッカの立つ地面から水が噴出して意思を持っているかのように水が体を締め付ける。ルッカはその体を捻らされて体から血飛沫が舞い上がる。傷ついていくルッカの姿に目の前が赤くなるが、ロボが俺に目配せをした後先に飛び出してルッカにケアルビームを当てる。優しい光に照らされてルッカの傷は癒えていく。
 その隙を狙いヘケランが右腕を振りかぶり二人を引き裂こうとするが、ロボに少し遅れて飛び出した俺の刀が巨椀を止める。これ以上やらせるかっ!
 雷鳴剣に迸る電流を嫌がりヘケランは俺の刀を力任せに弾いて後ろに飛ぶ。ルッカの治療も終わり、立ち上がってプラズマガンをヘケランに構えている。ロボがいて助かった。ルッカが倒れて俺の頭に血が上った状態で勝てる相手じゃない。戦闘において治療役は重要なキーパーソンだと理解した。


「厳しいな……俺たちの魔法は効かないわけじゃねえんだろうけど、あいつの魔法は一度食らえばロボの治療が無ければ戦闘不能。バランス悪いぜ」


「僕のエネルギーも無限じゃありません……そう何度も治療は出来ませんよ……?」


「あの大きな泡はともかく、ネレイダスサイクロンとやらは出も早いし、見切るのは厳しいわね、とにかく動き回るのが正しい避け方かしら」


 俺たちが攻略法を探ろうと相談していると、ヘケランが顔の半分を占める大きな口を真横に広げてその場に座り込んだ。……なんだ? どういう作戦だ?


「攻撃してみろ! そうしたら……」


「「「………」」」


 アホだな。間違いない。アホだ。
 呆れながらヘケランの頭を剣で貫いてやろうと近づくが、ルッカがそれを止めて、素晴らしい案を提案する。ロボにそれで良いかと確認を取れば一も無く頷いて賛同する。


 俺とルッカが右側、ロボが左側からヘケランの後ろに回りこみ、それを見ながらヘケランが不敵な笑みを凶悪な顔に張り付かせて俺たちの動向を探る。座り込みながらもその何者をも切り裂く鋭い爪を擦り合わせ、ヌラリと唾液で光る牙がかちかちと音を立て、俺たちの体を引き裂き噛み千切ることを楽しみにしている。背中に生えた突起は心なしか天井に向かって伸びているように見えて、俺たちが近づくその時をただ静かに待ち続けている。


「……じゃあ、お邪魔しました」


 俺たちはヘケランの後ろに位置していた湖に飛び込み、ヘケランの巣から脱出を果たした。やっとれんよ、あんなバケモノの相手なんぞ。


 水流に飲み込まれる前に後ろから「ええ!? 嘘ちょっと待てええと確か……そうだラヴォス神を生んだ魔王様が400年前に人間共を滅ぼしておいて下されば今ごろこの世界は我ら魔族の時代になっていたものをクソーッ! っていうかマジで逃げるのお前らーっ!?」と早口で悔しそうに怒鳴っていた。やられた時もしくは逃亡されたときの台詞まで用意していたとは頭が下がるね。そういう人間は出世するよ、いや本当に。




 ヘケランの巣から抜けて俺たちはトルース町近海に顔を出すことになった。水流に飲まれて体力が残り少ない状態でも泳いで陸に着ける距離だったことに安心して大地に足を着ける。驚いたのはロボがアンドロイドのくせに一番スイスイ泳げたことだろうか? おぼっち○ん君くらい万能なんだな。


「ヘケランの口ぶりからすると、中世の魔王がこの星の未来をメチャクチャにしたラヴォスを生んだのね……」


 陸地に着いた後膝に手をつけて呼吸を整え、そのまま大の字になり寝転んでいるとルッカが深刻そうな顔で去り際にヘケランがこぼした言葉を解釈する。


「僕達の手で中世の魔王に猛き制裁を下せば、未来を救うことが出来るのでしょうか? 


 それに便乗してロボが微妙になりきれてない中二発言を繰り出すが、今の俺は疲れている。突っ込みはセルフでお願いしたい。


「千年祭広場のゲートを使えば中世に行ける筈……ほらクロノ、いつまでも息を乱してないでさっさと行くわよ! 目指すは打倒魔王! ……柄じゃないけど、なんだか王道な展開に燃えてきたわ!」


「ええ、世界に崩壊の種を撒き散らさんとする魔族の王、奴に振り下ろすべき鉄槌を握りまたその権利を持つ僕達が、世界終焉の鍵を砕き世に輝きと安穏を齎せましょう!」


 ロボはスルーとして、俺の幼馴染殿はどうもとんとん拍子に謎が解明していくのが楽しくなってきたようだ。あれか、ドラク○4でトルネコの章まできたらノンストップになる性質だな。
 ……駄目なんだろうな、ここで「え? お前らマジで世界救うとか言ってんの? 臭っ!」とか言ったら。ルッカもマールの言葉になんだかんだで流されちゃったのか……ロボはそういう話の流れは大好物だろうし、俺と同じ気だるく生きようとする奴はいないのか……


 ルッカの催促を耳にしながら、俺は仰向けで空を見上げた。青く澄んだ空に太陽の光が合わさりその色彩は自然界独特のものとなって俺たちを包む。時間はゆっくりと進んでいくものなのに、何で俺たちだけせかせか時空を移動して戦いに明け暮れなければならないんだろう……
 太陽に手をかざして、俺は肺の奥に溜まった暗い息を外に吐き出した。たまらんね、こんな人生。


 ずぶ濡れの体を起こして、手を振り回すルッカとロボに追いつくべく強めに地面を蹴り上げた。


















 おまけ







「お前が大電撃部隊隊長サカヅルか、ふっ、まあ俺の敵ではないが、かかってこい!」


 サカヅルはとてつもない動きで閃光の覇者並びにボルケーノまたは天より舞い降りた闇の宿業を背負うものの二つ名を持つ、俺、テンペストリア目掛けて走り出した。
 俺は全力の100000000分の1の力で動いて攻撃をかわした。凄まじい威力だった。しかし俺のさらに1000000倍の力で粉砕した。


「なんて強いんだ! ぜひ私を連れて行ってくれ!」


 サカヅルの仮面の下から美しい女性の顔が現れた。


「俺という究極の力を持つ戦士にして選別者の俺に仲間などいらんが、ついてくると言うなら止めはせん」


「な、なんて男らしい! 惚れた!」


 また俺の力に魅せられた女が増えたか……だが俺の行く道は修羅、女に構っている暇は無い。


 俺は次の城に向かい、城の扉を開いた。


「お前が超絶火炎部隊隊長イマドケか、ふっ、まあ俺の敵ではないが、かかってこい!」


 イマドケはあり得ない動きでラグナロクの再来並びにモノデボルトまたは地獄の底からやってきた正義の使者の二つ名を持つ、俺、テンペストリア目掛けて走り出した。
 俺は全力の10000000分の1の力で動いて攻撃をかわした。えげつない威力だった。しかし俺のさらに1000000倍の力で粉砕した。



「素晴らしい力ですわ! 私を連れて行って下さいまし!」


 イマドケのマスクの下から例えようもない可憐な顔の美少女が現れた。


「俺というアルティメイトな力を持つ剣士にして武闘家の俺に仲間などいらんが、ついてくると言うなら止めはせん」


「な、なんてたくましい御方! 惚れましたわ!」


 また俺の力に魅せられた女が増えたか……だが俺の行く道は修羅、女に構っている暇は無い。


 俺は次の城に向かい、城の扉を開いた。


「お前が超級大銀河天絶無限大魔王のルインガーか。ふっ、まあ俺の敵ではないが、かかってこい!」


 ルインガーは愉快な動きでジェダイの騎士並びに黄金聖闘士または結構気配り上手の二つ名を持つ、俺、テンペストリア目掛けて走り出した。
 俺は全力には程遠い力で動いて攻撃をかわした。お下劣な威力だった。しかし俺はさらにお下劣なので倒した。


「わ、私が黒幕ではないただの三下だという事実があったとしても、パーフェクトな力である! 私を連れて行け!」


 魔王と思っていた人物の被っていた兜が外れ、中から文字に出来ない煌びやかな美しい女性の顔が視線に晒された。


「俺という完全無欠な力を持つサラリーマンにして営業部長の俺に仲間などいらんが、ついてくると言うなら止めはせん」


「な、なんて広い心を持った人間なのだ! ハグして欲しい!」


 また俺の力に魅せられた女が増えたか……だが俺の行く道は修羅、女に構っている暇は無い。














「どうですかクロノさん、僕の書いた小説は。不死身ファンタジアの新人賞に投稿しようと思うのですが」


「え? こんなのが60ページ以上あるの?」


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