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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   42話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:a11fdd2d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/05/15 22:07
DQD   42話

密林ともいえる森に囲まれた山の麓に一部だけポッカリと切り開かれたような場所がある。そこにドミール山の内部へと入る洞窟の入り口があった。
元は自然に出来た穴なのだろうが、崩れないように石柱等で補強がしてあった。
この洞窟の奥には『聖竜グレイナル』がいるのは分かっているが、日も暮れ体力、精神ともに疲れてきている。
洞窟の中では昼も夜も関係ないだろうが、疲労があってはどうなるか分からない。今日はここまでにする事にした。

クロコダインから聞いた話になるが、この洞窟の入り口にはモンスターは近づきづらいらしい。何となく胸がざわつき落ちつかなくなるため、モンスターはこの辺りから立ち去るのだ。
多分何かしらの結界があるのだろうと考えられる。

クロコダインが以前ドミール山に来たときは、この入り口ではなく他の場所の入り口から入ったらしい。その場所は険しい山の斜面にあるため、わざわざそこから入るのはお勧めしないとの事だった。
今回はトールもいるため、本来の入り口の方に案内したのだ。ある程度近くまで案内した後は『魔法の筒』で吸い込んでもらい、洞窟内のある程度進んだ場所で開放してもらうつもりだった。
ただトールの仲間になったおかげなのか、洞窟の入り口に近づいても不快にならずにいられたらしい。

とにかくクロコダインほどのモンスターでも近づきづらいなら、他のモンスターでは尚更だろう。今夜は入り口付近で野営を行い明日から洞窟の散策をすることにした。
洞窟に少し入れば雨風も防げると思い入り口に近づいたところで、洞窟の少し中に入ったところに人がいることに気づいた。
トールと同じ競技者の一人かと思ったが少し様子が違う。武器を持たず、鎧も着込まず、冒険者が着る頑丈そうな服でもない普通の服を着た男が一人いた。ある程度の腕はあるように思えるが、ここに来られるような冒険者とは思えなかった。
もちろん普通に見えるだけで特別な素材で作った服かもしれない。魔法を主に使うか、素手で戦うなら武器も必要ないため正確なことは分からなかった。
男はこちらを向くとトールの後ろにいるクロコダインに一瞬だけ驚いたが、『従魔の輪』に気づくと何でもなかったかのように笑みを浮かべてトールの方に近づいてきた。

「競技会の参加者の方ですね」

「……まあ、そうですけど……」

トールは言葉を濁すように答えた。
クロコダインを見た後でも話しかけてきたことには感心するが、明らかに冒険者に見えない男にトールは少し警戒していた。そんなトールの態度に男も気づいたのだろう。
少し頭を下げてから口を開いた。

「これはいきなりすいませんでした。わたくしはトルネコ商会の者です。ここに来られた競技会参加者の皆様のために旅の宿屋を経営しております。一夜のご利用はいかがですか?」

「はあ?」

微笑みながら話す男の言葉にトールは呆然とした声で返すしかなかった。



結局トールは宿屋を利用することにした。一晩の金額は300Gと高めだが、夕食と朝食つきで安心して休むことが出来るなら安いものだろう。
男の案内でトールは洞窟の中へ向かった。宿屋と言うのは洞窟の中を利用して作られているらしい。
元々はドミールの里で儀式として『聖竜グレイナル』に謁見する際、その道中の途中での休憩場所として造られたものらしい。儀式としてドミール山には集団で訪れるのだが、実際に『聖竜グレイナル』と会うのはその中のほんの一握りの者だけらしい。そこはその他の者が休むために作られた部屋で、今回の競技会のためにトルネコ商会がドミールの里より宿屋として借り受けたとの事だ。薬草などの道具も売買しているらしい。
至れり尽くせりだな、とトールが思ってもしょうがないだろう。

洞窟に入って歩くとすぐ左手に扉が見えた。元は横道が続いていたところに人の手で扉が設置されていた。
男によって開けられた扉の中にトールも続いて入る。そして少し通路を歩いた先に開けた場所があり、そこが酒場兼宿屋になっていた。カウンターには椅子が4脚あり、4脚つきの丸テーブルが3つあった。
それほど広いわけではないが、そもそも年に一度使うかどうかの施設なのだ。これで十分なのだろう。

カウンターには案内した男と同じような服を着た男が一人いた。同じくトルネコ商会の者なのだろう。
案内をした男がカウンターの男に何かを告げると、「後はあちらの者にお話ください。それでは失礼します」とトールに言ってから出ていった。多分扉の前に行って他の競技者たちを待っているのだろう。
ご苦労なことだと思う。

部屋を見渡すと冒険者と思える4人組が一つのテーブルを占拠していた。軽装の黒髪の男、青の法衣を着た女、緑のローブを着た老人、ピンクの鎧を着た巨漢の男。格好がDQⅢの勇者、女僧侶、男魔法使い、男戦士にどことなく似ているような気がした。
トールと同じ競技会の参加者なのだろう。入ってきたトールをニヤニヤとしながら値踏みするように見ていた。
何となく気分が悪かった。
トールの見た目と若さから侮ることは十分にあることだった。だがそれもトールの背後からクロコダインが現れるまでだった。
クロコダインを見た4人組は、「ヒッ」と息を呑むと、椅子をガタリと鳴らし後退る。初見でクロコダインを見れば驚くのは分かるが、案内役の男ですら直ぐに気づいた『従魔の輪』に気づかないほど慌てているのは少し驚きすぎのような気がした。
そんな4人組を見ていると、クロコダインが「ふむ」と何かに気が付いたように呟いた。

「どうしたの、クロさん」

トールはクロコダインのことを『クロさん』と呼ぶようにしていた。何となくクロコダインと呼び捨てにする気になれず、呼びやすい呼称を話しあっているうちに、このように決まったのだ。

「いや、あの4人組だが、見た事があると思ってな。ほら、話しただろう。森で出会った冒険者の事を。あの中で全員ショックで動けなくなったのがあの4人組だ」

クロコダインにそう言われて、4人組の慌てようがやっと理解できた。森で驚かされているのではしょうがない。クロコダインは『リザードマン』で個優種でもあるため区別が付いたのだろう。
ただそれが分かったからといって、トールの方から謝るというのもおかしいと思えた。まあ、相手が何か言ってこない限り知らない振りをしておいたほうがいい。
そういうわけで驚いている4人組を尻目にトールはカウンターに向かった。

「一晩お願いできるかい」

「はい、もちろんです。先ほどお聞きになったかと思いますが、一晩300Gです。それとこれはどうしようもない事になってしまうのですが、お連れのモンスターの方が寝られるベッドはありませんので、床での雑魚寝になってしまう事はご了承ください。よろしいですか?」

言われても見れば確かにそうだろう。ベッドはあくまで人間用に作られているため、ある意味しょうがない事なのだろう。ただすぐには返事が出来ずにいると、クロコダインから声がかかった。

「まあ、当たり前の事だな。俺はそれで構わん。というより『魔法の筒』があっただろう。何ならそれを使ってもらってもいいぞ。飯を食った後での話だがな」

確かにそうするのが一番問題のないように思えた。

「そうだな、そうするよ。じゃあ、僕だけ一晩お願いするよ。ただ他にも仲間があるから、その食事も手配だけはお願いしたい。もちろんその分のお金は払うよ。出来る?」

「もちろんです。それではごゆるりと」




その後、ドランとガボを『魔法の筒』から出し仲間たちと食事をした。食事を終わった後は、ドラン、ガボ、クロコダインを『魔法の筒』に吸い込み、トールとスラきちだけが残った。
そこにクロコダインがいなくなるのを見計らったように、4人組が恐る恐るといった感じでトールに近づいてきた。

「ちょっといいかい」

話しかけてきたのは黒髪の男だった。笑みを浮かべてはいるが、作り笑いなのが分かった。張り付いた笑顔といってもよかった。
トールが仲間たちと食事をしている時からチラチラとこちらを見ているのは分かっていた。影でちょっかいをかけられると困ると思っていたが、直接話しかけてきたことは面倒がなくてよいと思えた。

「何ですか?」

「さっきのモンスターのことだけど、君の仲間なのかい」

「ええっ、仲間になったのは最近、というより今日なんですけどね。戦って勝って仲間にしたんですよ」

「「「「ええっ!」」」」

トールの言葉に4人が一斉に声を上げた。ある程度予想はしていたのだろうが、はっきりと聞かされるとやはり驚くしかなかったのだろう。

「す、すまないが名前を教えてくれないか。ああ、俺はでろりん。そして――」

「わたしはずるぼんよ」

「わしはまぞっほじゃ」

「へろへろ」

黒髪の男に続くように、僧侶風の女、ローブを来た老人、筋肉質の男が名乗った。
特徴的な名前はトールにも覚えがある。『ダイの大冒険』のニセ勇者パーティー一行の名前だ。目つきが悪いところなど何となくだが面影が感じられた。
漫画では情けない役が多かったが、使っていた呪文等や勇者として騙せた事を考えるとそれなりの腕前があってもおかしくないように思える。実際に競技会の第二試練をクリアーして、このドミール山にいる以上ある程度の強さは持っているのだろう。

クロコダインの『おたけび』で全員動けなくなったらしいが、あの『おたけび』は少しでも油断があればトールでもショックで動けなくなっていただろうから、それだけで弱いと決め付けるのは早計のような気がした。
ただ性格に関しては良いとは言えない。強いものには媚び、弱いものには威張るという印象が強い。漫画の方では最後に少しだけ精神的な成長を見せていたが、今目の前にいる4人がどうなのかは分からなかった。

「僕はトールです」

トールは答えながらも、4人から目は離さなかった。


****


でろりんはトールの名を何処かで聞いたような気がした。いや、未だに競技会に残っているような冒険者は、多かれ少なかれ噂にはなっていてもおかしくないから実際に耳にしたのだろう。
ただ酷く気になってしまった。そんな時にへろへろがポツリ「アバン一門」と呟いた事により、何が気になっていたのかが分かった。

トールと言えば過度に迷宮に潜る冒険者として有名であるが、『アバン一門』の筆頭であるヒュンケルの弟子である事、そして『アバン流刀殺法』を修め『アバン一門』に名を連ねた事でも有名だった。
でろりんとしてはトールが『アバン一門』である事が気になった事だった。というのもでろりん自身が一度は『アバン一門』に身を置いていた事があるからだ。ただそれはほんの少しの短い間だけの話だが。

でろりんは幼いころから才能があるといわれ、伝手から『アバン一門』に身を置く事になったのだが、修練の厳しさに耐えかね逃げ出してしまったのだ。だがそれは何もでろりんだけに限ったことではない。まずは『アバン一門』に入る事自体が厳しいが、入門出来たとしても修練を終える事は出来る者は少数だった。

アバン流を身につけることはそれほど狭き門を潜り抜けると言う事なのだ。更に言うならトールの師であるヒュンケルの厳しさは知れ渡っている。
アバンの訓練は厳しいことは厳しいが、アバンの性格が基本的に穏やかという事もあり怪我などにも気を配りながらの修練だ。
だがヒュンケルは戦士としての性格が前面に出ており、修練も基本的に実戦形式である事が多い。怪我も骨の一、二本が折れるのも当たり前で、それにより痛覚をコントロールする事を前提に修練が行われていた。結果修練からは逃げ出す者ばかりで、ヒュンケルからアバン流を修められた者などほとんどいないという有様だった。
そんなヒュンケル相手にアバン流を修めたトールをでろりんは驚嘆するしかなかった。



でろりんは逃げだした人間だった。いや、でろりんだけではない。でろりんがパーティーを組んだ3人は皆逃げ出した人間だ。
4人ともが皆、始めはエリートとも言える道筋にいながら、逃げてしまった人間たちだ。
ずるぽんは、ランシールの大聖堂の神官の家に生まれた。
まぞっほは、兄が大魔導師を言われるほどの魔法使いだ。
へろへろは、剣王の里の生まれだ。
でろりんとてあのまま逃げ出さなければ、どこかの国の騎士団に入り、ゆくゆくは騎士団長になる事も夢ではなっただろう。

多くの者を引っ張っていく立場に成れたかもしれなかったが、結局は中途半端な能力を得て、その中途半端な能力を頼りに生きてきた。
それでも冒険者として生きていくだけなら十分すぎるほどの能力だった。要領が良かったという事もあったのかも知れない。
ただその内にほんの少しだけ欲が出てきた。調子に乗った。もっと上を狙えるんじゃないかと。
だから今回の競技会に出た。トルネコ商会の援助が受けられる冒険者となれば格が違ってくるからだ。

第二試練までは何とかなったが、第三試練からが問題だった。モンスターの強さに手を焼くようになった。
それでも何とかなると言い聞かせていたところでトールと会った。
始めはただの小僧だと侮った。だが良く考えれば、ここに来るものがただの小僧であるはずがないのだ。しかも自分たちが恐怖を感じたモンスターを引き連れていた。

結局のところお山の大将になっていた事に今更ながら気が付かされた。
何となくだが、もうこの第三試練はクリアー出来そうもない気がした。元々逃げ癖があるのだ。無理だと分かれば逃げ出すのがでろりんたちの生き方だった。
自分たちが今以上になることはないだろう。何故なら今の状態にある程度満足しきっているからだ。今回の事も結果はどうあれ暮らしていくのには何の問題もない。だから努力が出来ないのだ。

だか目の前のトールは違うと思えた。今回の結果はどうあれ、いつかは大物になるような気がしたからだ。だからこそ、今この縁を繋いでおきたかった。結局のところでろりんがトールに話しかけたのはこのためだった。
打算にまみれた考え方だが、それが自分の生き方なのだとでろりんは思うのだった。


****


理由はどうあれ、襲われたモンスターを見て、冷静でいろ、恨みを持つな、などとはさすがにトールでも言えない。自分がその立場に立ったなら、相手に文句の一つでも言いたくなるのは当然だからだ。
そもそも相手はトールの言う事が真実なのかを知る手がない。競技会の参加者の邪魔をするためにモンスターをけしかけたと言われても、それが事実無根だと証明出来ないのだ。

それでもトールは自分のほうからは頭を下げようとは思わない。ある意味当たり前の事だが、それ以上に冒険者などをやっている以上、不測の事態に陥るのはありえることだからだ。
トール自身もその不測の事態を乗り越えてここにいる。この程度で文句をいってくるのなら、その時点で冒険者など辞めてしまえと言いたい。

第一この件に関してトールは無実なのだ。確かに仲間になったクロコダインのした事だが、仲間になる前のことまで責任を持とうとは思わない。
相手が一般人なら何らかの罪悪感を持ったかもしれないが、冒険者はある以上は自業自得なのだ。
ただ文句があれば聞くだけはしようと思う。あくまで聞くだけだ。その後どうするかはその状況次第だろう。

そんなことを思いながら4人組と話したのだが、取り立てて文句を言われる事もなく、世間話をするだけだった。しかもこのドミール山でのことも話してくれた。
クロコダインの件についての事があったため、話している最中の飲み物代ぐらいは出したが、それもこのドミール山の洞窟の情報料を払ったと思えば安いものだった。
まあ最後の『おれらは駄目かもしれんが、頑張ってくれよ』との別れの言葉が本心かどうかは分からなかったが、とりあえず穏やかに話を終える事が出来た。
その後は部屋に案内してもらい休む事にした。



さて、次の日からがドミール山内部の探索開始だ。
わき道に作られた宿屋から出て通路を奥に進んでいくと、また扉がある。ここまでがモンスターが入ってこない安全地帯と言って良いだろう。
当初は全員で行くつもりだったが、クロコダインから「待った」がかかった。
というものこの洞窟内にいるモンスターは、エレメント系のモンスターが多いからだ。この種のモンスターは属性攻撃の特技や呪文を得意としており、狭い洞窟内ではどう足掻いても避ける事が出来ない場合が多い。しかも集団で行動するためより性質が悪い。
そのため集団で一気に襲われた場合、スラきち、ドラン、ガボのHPでは少々不安だという事だ。このパーティーにはまともな回復役はおらず、道具に頼る事がおおいため混戦の時にスムーズに道具で回復できるか分からないのだ。
スラきちも『モンスター袋』の中に入っていたとしても、全てのダメージを防げるわけではないため、下手をすると袋の中で絶命してしまう可能性さえあった。
それゆえ、ある程度モンスターの傾向がつかめるまで、3匹については『魔法の筒』で待機してもらった方がいいとの事だった。
その言葉に一理あると思ったトールは、とりあえずクロコダインと二人だけで洞窟を進むことにした。



洞窟は段差があり、道幅も広かったり狭かったりと様々だった。岩肌の見える洞窟内は、時折石粒が落ちてきたり、色々な音が木霊したりして落ちつかなかった。
トールは『索敵能力』で周囲を探りながら進む。周囲は壁面が仄かに光っており洞窟内を照らしていた。『光苔』と言われる暗闇で光を発する苔のおかげらしい。
洞窟でもこの苔の生えている場所とそうでない場所があるため、なければ松明や呪文を用意しなくてはいけないが、反面それは洞窟内で的にもなるため注意が必要だ。
以前クロコダインは『聖竜グレイナル』の元まで行っているが、詳しい道順は覚えていないらしい。ただ『光苔』のある場所を通っていった覚えがあるとの事だ。
つまり光苔の生えていない場所は道順が間違っているということだった。これは進む際の目安になるためありがたい情報だった。

地図がない洞窟のためマッピングしながら進んでいく。
『竜の火酒』を使用しているため、洞窟内でもあまり攻撃されないと思っていたがそんな事はなかった。まるで関係ないかのようにモンスターは襲ってきた。
この洞窟にいるモンスターはエレメント系と物質系といわれるモンスターが多いのだが、これらのモンスターは他者から力を借り受けて存在している者が多い。この洞窟にいるモンスターは多分『聖竜グレイナル』の力を借り受けているのだろうと思われる。
そのモンスターに襲われるということは、『聖竜グレイナル』がそう命じていると思っていい。
クロコダインが以前洞窟を潜っていた時よりも頻繁に襲ってくると言っていた為、間違いではないだろう。
『聖竜グレイナル』が態々襲わせるとは考えずづらいが、これももしかしたら競技会がかかわっているのかもしれない。何故なのかと思っても答えは出ない。ならば進むしかないだろう。



結論を言えばクロコダインと二人だけで行ったことは正解だった。
この洞窟にいるモンスターは、ヒートギズモ、フレイム、ほのおのせんし、マグマロン、ようがんまじんのエレメント系5種とスマイルロック、爆弾岩、ストーンマンの物質系3種だった。

ヒートギズモは真っ赤な雲のモンスターで、迷宮にいたギズモの上位種になる。
火の息やギラの呪文を使ってくる。

フレイムは全身炎で、炎そのものが踊り狂っているようなモンスターだ。
火の息、火炎の息と使い、火の塊をなって体当たりをしてきたりする。

ほのおのせんしは戦士風の姿で頭の髪が炎のように燃え上がっているモンスターだ。
このモンスターも火の息と火炎の息を使い、戦士風の風貌もあり拳や蹴りを繰り出して攻撃をしてきた。

マグマロンはとろけたマグマで構成された紅蓮の身体をしたモンスターだ。
そのまま体当たりでも攻撃力はあるが、それ以上に呪文の『メラミ』と『イオラ』が厄介だ。

ようがんまじんは、真っ赤な灼熱の岩石で巨大な顔と右手だけを地面から出しているモンスターだ。地面の下に他の部分があるかは分からない。
火炎の息や灼熱の岩を投げたり、力を溜めての強力な一撃などを繰り出してくる。

スマイルロックとばくだんいわは、両方とも丸い岩石に顔がついたモンスターだ。
基本的にそこにいるだけでこちらから攻撃しなければ何もしてこない。ただ他のモンスターがそばにいると話は違ってくる。スマイルロックの方は問題ないが、問題なのはばくだんいわの方だ。他のモンスターの攻撃である程度ダメージを受けると、『メガンテ』をしてくるのだ。命の石が必要不可欠なモンスターでもある。

ストーンマンは以前迷宮で戦ったゴーレムと似たモンスターだった。
呪文は使わないが、高いパワーで暴れまわり、更に力を込めての強力な一撃や痛恨の一撃なども繰り返すモンスターである。



この洞窟のモンスターは基本的に集団で戦闘を仕掛けてくる。
ヒートギズモ、フレイム、ほのおのせんしらが集団で火の息や火炎の息を仕掛けてくるときは『海波斬』で切り裂き対応する。これらはHPが少なめで攻撃力自体もあまりないため対応できるが、それでもドランやガボではきついと思った。
もちろん一対一なら勝てるだろうが、ここのモンスターは集団で襲ってくるためそんなことも言っていられない。これらの相手は『空裂斬』もよく利くためトールはそれほど対応には困らないが、それは仲間がクロコダインだけと言う状態だから言える事であり、他の仲間がいる場合にはそうはいかないだろう。

マグマロンとようがんまじんは、今まであったモンスターより強かった。マグマロンの『イオラ』と『メラミ』、ようがんまじんの攻撃力は厄介なものだった。しかも集団で襲ってくるのだから尚更だ。
ただこれらのモンスターは、こちらが逃げようと思えば追いかけて来ないため、戦わずにおこうと思えば戦わずにいられた。

スマイルロックとばくだんいわは基本的には無視して進むが、他のモンスターがいるときは、逃げるか、トールかクロコダインのどちらかが、他のモンスターの相手をしている間に全力でばくだんいわを仕留める事にしている。
失敗して『メガンテ』をくらうこともあったが、命の石やアクセサリーでで死ぬのだけは免れた。それでもダメージを受ける事になるが、『メガンテ』で周りにいるモンスターも全滅するため、ダメージを受けたところに追い討ちをかけられるようなことがないのは助かる。それでも『メガンテ』をくらうのは心理的にも嫌なことだった。

ストーンマンはその巨体もあり、あまり集団で襲ってくるようなことはないが、他のモンスターの盾のような役割をすることがある。防御力もHPも高いためストーンマンを倒すまで、後ろから他のモンスターに遠距離攻撃をくらうことがあるのが面倒といえば面倒だった。

この洞窟のモンスターは氷系の呪文や特技があれば楽に倒せるのだろうが、トールの仲間内で持っているのはドランの『つめたいいき』と『こごえるいき』だけだ。集団で出てくるモンスターを相手にするには少し心許なく感じる。
周りを心配しながら戦うことを考えると、やはりトールとクロコダインだけで戦う方が今のところいいような気がした。



モンスターの蔓延る迷宮を進むのは苦労する。しかも道順も分かっていない。ある程度進んでは戻るを繰り返しながら、迷宮を少しずつ進んでいった。
ここにはゴッドサイドの迷宮のように宝箱はないが、それでも時折鉱石の類があったりもした。

でろりんたち以外の冒険者とも宿屋で顔を合わせるが、挨拶をする程度にとどめていた。あまり余裕がなかったということもある。
予想以上に厳しかった。モンスターもそうだが、洞窟の道のりもだ。起伏のある道のり、そして火山でもあるこのドミール山の内部は蒸し暑かった。
ドミールの里の人たちもこの通路を通って『聖竜グレイナル』の元に行くはずなのだが、本当にそうなのかを思ってしまう。直通の隠し通路ぐらいあってもおかしくない気はした。
最もそれを探す気は無い。あるかないかも分からないようなものを探す暇は流石になかった。

そして5日たったときだった。通路の先に両開きの扉が見えたのは。

「見覚えがあるぞ。この扉だ。この扉の向こうに『聖竜グレイナル』がいる」

扉を見たクロコダインが言う。
とうとうトールはグレイナルの元に辿り着いたのだ。



『拾い物』:鉄鉱石19個、プラチナ鉱石8個、ミスリル鉱石3個

『落とす』:どくがのこな12個、ようがんのかけら6個、ヘパイトスのひだね1個、とうこんエキス2個、せいすい5個、まほうのせいすい7個、けんじゃのせいすい1個、ばくだんいし6個、いのちのいし2個、つけものいし2個



――― ステータス ―――
トール  おとこ
レベル:34
職:盗賊
HP:325
MP:105
ちから:108+5=113
すばやさ:87+60+5=152(+10%)
みのまもり:46+5=51
きようさ:96+70+40=206(+10%)
みりょく:55
こうげき魔力:42
かいふく魔力:52
うん:97

・装備
頭:かげのターバン(守+13)
身体上:しっこくのマント(守+42、みかわし率+3%)
身体下:ブルージーンズ(守+11)
手:あおのグローブ(守+5、器+40)
足:ちんもくのブーツ(守+9、素+5)
アクセサリー: いやしのうでわ(守+4、自動回復大)
武器:光の剣(攻+70)
盾:ライトシールド(守+10)

こうげき力:220
しゅび力:146

言語スキル:4(会話2、読解2、筆記)【熟練度:42】
盗賊スキル:9(索敵能力UP、すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト、ピオリム、しのびあし、盗人斬り、ボミオス、すばやさ+50、とうぞくのはな、器用さ+50)【熟練度:23】
剣スキル:☆(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード、はやぶさ斬り、剣装備時攻撃力+20、会心率UP、魔神斬り、ギガスラッシュ)【熟練度:26】
素手スキル:2(未装備時攻撃力+10、あしばらい)【熟練度:85】
ゆうきスキル:6(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス、べホイミ、ライデイン、いなづま斬り、マホステ、消費MP4分の3)【熟練度:84】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)、スカウト、アバン流刀殺法(大地斬、海波斬、空裂斬、アバンストラッシュ(偽)、常時ちから+5、常時身の守り+5)、トールブレード

経験値:264108




――― 仲間のステータス ―――
スラきち  ?
レベル:25
種族:スライム
HP:28
MP:38+15
ちから:14
すばやさ:41
みのまもり:26
かしこさ:51
うん:53
こうげき魔力:9+15
かいふく魔力:9

装備:
防具:モンスター袋の中にいるためなし
アクセサリー:ソーサリーリング(攻魔+15、MP+15)

こうげき力:14
しゅび力:26

言語スキル:1(会話1)
スライムスキル:5(自動レベルアップ、ホイミ、スクルト、ルカナン、リレミト、メラミ、フバーハ)



ドラン  ?
レベル:16
種族:ドラゴンキッズ
HP:126
MP:0
ちから:87
すばやさ:71
みのまもり:53
かしこさ:36
うん:59
こうげき魔力:4
かいふく魔力:4

装備:
武器:魔よけのツメ(攻+43)【4000G】
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)

こうげき力:130
しゅび力:74

言語スキル:0
ドラゴンキッズスキル:5(自動レベルアップ、ひのいき、つめたいいき、あまいいき、おたけび、かえんのいき、こごえるいき、やけつくいき)



ガボ  オス
レベル:14
種族:聖白狼
HP:97
MP:32
ちから:43
すばやさ:51
みのまもり:24
かしこさ:22
うん:40
こうげき魔力:10
かいふく魔力:7

装備:
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)

こうげき力:41
しゅび力:45

言語スキル:0
聖白狼スキル:2(自動レベルアップ、ほえろ、かみつけ、ぶつかれ)



クロコダイン  オス
レベル:19
種族:リザードマン
HP:336+10
MP:35
ちから:150+10
すばやさ:93+5
みのまもり:150
かしこさ:147
うん:57
こうげき魔力:32
かいふく魔力:23

装備:武器:真空の斧(攻+48、素+5)
   防具:鉄の胸当て(守+16)
   アクセサリー:まよけの聖印(守+4、即死無効)

こうげき力:243
しゅび力:170

言語スキル:2(会話2)
斧スキル:8(斧装備時攻撃力+5、大木斬、魔神斬り、斧装備時攻撃力+10、会心率UP、兜割り、蒼天魔斬、斧装備時攻撃力+20)
剣スキル:4(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り剣装備時攻撃力+10)
素手スキル:4(未装備時攻撃力+10、あしばらい、しっぷうつき、会心率UP)
リザードマンスキル:3(自動レベルアップ、おたけび、常時HP+10、ルカニ、常時ちから+10)

特殊技能:闘気法(ためる、獣王痛恨撃、獣王会心撃)、やけつくいき




所持金:35166G (預かり所:450000G)

Gコイン:26570


・持ち物『大きな小袋』
道具:やくそう(15個)、上やくそう(18個)、いやしそう(7個)、特やくそう(15個)、毒けし草(35個)、上毒けし草(5個)、特毒けし草(10個)、まんげつそう(7個)、きつけそう(11個)、おもいでのすず(5個)、せいすい(16個)、いのちのいし(3個)、まほうのせいすい(38個)、けんじゃのせいすい(7個)ばんのうくすり(2個)、ゆめみの花(5個)、キメラの翼(1個)いのりのゆびわ(2個)、ドラゴンシールド(守+25)1個、毒針(攻+1)、プラチナソード(攻+51)、ちからのルビー(攻+9)1個、銀のむねあて(守+25)、しっぷうのバンダナ(守+11、速+20、回魔+8)、どくがのこな(12個)、ようがんのかけら(6個)、ヘパイトスのひだね(1個)、とうこんエキス(2個)、ばくだんいし(6個)、つけものいし(2個)、鉄鉱石(19個)、プラチナ鉱石(8個)、ミスリル鉱石(3個)


大事な道具:モンスター袋、リリルーラの粉、オクルーラの秘石、自動地図、魔法の筒4本、従魔の輪2個、竜の火酒、スカウトリング

小さなメダル:8枚

・預かり所
前回と変わりなし。




――― あとがき ―――

トールの必殺技についての皆さんのご感想を読ませていただきました。
「ダサい」とか「かっこ悪い」といった感想があるだろうとは思っていましたが、とりあえず必殺技にトールの名を入れるのは、『アバンストラッシュ』から考えて決定事項でした。
雷神剣も必殺技名として一瞬考えた事もありますが、これは武器(DQⅢで『雷神の剣』としてでている)として出すかもしれないと思い止めておきました。雷光剣というもの考えましたが上記の理由で却下にしました。

まあ十台半ばでこんな世界に来たので、厨二病をこじらせたとでも思ってください。

ただ『トールセイバー』や『トールザンバー』といった意見はありのような気もしました。
変わるのもあるかもしれません。



さて今回でとうとうグレイナルがいる部屋の前まで来ました。次回はようやくご対面となります。


それでは、また会いましょう。


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