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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   41話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:a11fdd2d 前を表示する / 次を表示する
Date: 2011/03/02 22:31
DQD   41話

『リザードマン』の暴風のような攻撃をかわし、時には受け流しながらもトールは隙を見つけ剣を斬りつけるが、相手も一筋縄ではいかない。その巨体に似合わぬ俊敏さで、剣を受け止め、又避けていた。
巨体だからといって動きが鈍いと思うのは、稚拙で身勝手な想像でしかなかった。

思いがけない強敵との遭遇戦。心臓が早鐘のように鳴っているのが分かった。これは決して疲れからだけのものではないだろう。
今まで強敵と戦う時は補助魔法で準備を万全にしてから戦っていたため、精神的な不安を抱えながら戦うのは久しぶりだった。
そう、あの剣を持つのがトラウマになったモンスタートラップもどきの部屋に入った時以来かもしれない。

目の前の『リザードマン』は一匹であの時以上の危機感があった。
何よりもその瞳の輝きには今まで会ったモンスターとは違い、意思あるいは知性と言うものが感じられた。
だからといって会話が成立するとは思っていない。何より先に手を出してきたのは相手のほうなのだ。
幸いスラきちたちとは距離を取る事が出来た。ただショックで動けないのがどれだけの間なのかが分からない。ここは危険な森の中でもあるのだ。早く片をつけるべきだろう。

剣と斧とで何合か切り結ぶ。『ドラゴン斬り』、『はやぶさ斬り』などを使い相手を斬りつけることもあるが、致命的な一撃にはなりえない。
もっと懐に入っての一撃か、強力なスキルの技を使わないかぎり、今の状況を覆すことは出来ないように思えた。だが前者はその懐に踏み込む半歩が難しく、強力なスキルには溜めの時間が要るがその時間がなかった。

『リザードマン』も様々な角度から斧を斬りつけ、又は技を使ってくる。トールも時折攻撃をくらってしまう事もあるが、致命的な一撃と思える攻撃だけは避けていた。
一進一退の攻防が続く。
どうにかしなければ無闇に時間だけが流れるだけだ。
そう思ったのは相手も同じだったのだろう。まるで図ったかのようにお互いが距離をとった。

先手を取ったのは『リザードマン』。トールがスキルを使おうと意識した瞬間、斧を頭上に掲げると叫んだ。

「真空の斧!」

道具が呪文の効果を引き出す。風が吹き荒れ、真空の刃が飛び交う。『バギ』の呪文と同じだ。
道具は確かに一瞬で使えるが、『バギ』程度の威力では今のトールにそれほど効果があるわけではなかった。

(何だ?焦ったのか)

そう思ったのもつかの間、風と真空の刃によって斬り飛ばされた木の葉がトールと『リザードマン』の間を渦巻き、互いの姿を視界から消えさせた。

(何をされた。焦ったわけじゃないのか。計画通りなのか)

目前の状況を把握しようとするが思考がまとまらない。
とりあえずこの視界の悪さをどうにかしなくてはいけない。
『ライデイン』でなぎ払うか。だがそれをすると雷で火がつき、木の葉の渦が火の渦に変わるだろう。ならば『海波斬』で少しでも木の葉を散らして視界を確保するべきだ。
『リザードマン』に対する牽制にもなるだろう。

「海波斬!」

剣から放たれる衝撃波が木の葉の渦を裂く。空気の渦は止み、木の葉が宙に漂い始めた。
『海波斬』は『リザードマン』に当たる事はなかったが、漂う木の葉の向こうに『リザードマン』の姿を捉える事が出来た。
『リザードマン』は顔の前で拳を握り締め何かを集中していた。闘気が拳に集まっていくのを感じる。

(やばい)

瞬間的にトールはそう感じた。
どうにかしないといけない。突っ込むか、防御か、迎え撃つか。
トールは先ず迎え撃つ事を選択。
剣を逆手に持ちかえると、剣の持った手を引き絞るように腰をひねった。
それに反応するように『リザードマン』が動く。

「獣王痛恨撃!」

握り締めた拳を突き出すと、闘気が渦となりトールに襲い掛かる。

「アバンストラッシュ!」

迎え撃つために放たれた矢のような闘気の衝撃波が闘気の渦にぶつかった。
闘気の貯めも少ない『アバンストラッシュ』は闘気の渦に飲み込まれかき消されてしまうが、決して無駄にはならなかった。明らかに闘気の渦の勢いが弱まっていたからだ。
トールは身体の前で腕を十字にクロスさせ、闘気の渦を何とか防御するが、その衝撃に吹き飛ばされた。身体がグルリと回りどちらが空でどちらが地面か分からなくなる。重力がめちゃくちゃになったみたいだった。

ダンッ、ゴツッ。

地面を跳ね、木にぶつかる事によってようやく止まる。頭がグラグラして平衡感覚がおかしい。
だが『リザードマン』はトールの体調などお構いなしだ。一気に間をつめ、斧で襲い掛かる。
トールもその姿を捉えているが、上手く動く事が出来ない。そんな焦る中でも無意識の内にトールは『ライデイン』の呪文を唱えていた。
放たれた雷が『リザードマン』に降りかかる。それでも『リザードマン』は斧を振り上げトールに斬りかかるが、『ライデイン』の影響で明らかに動きが鈍っていた。
転がるように移動して何とか斧を避ける。そして再び『ライデイン』を唱えた。今度は流石に防御されるが、その間にトールは『リザードマン』との距離をとる。

「ライデイン、ライデイン、ライデイン!」

周囲に向かってトールは『ライデイン』を放つ。威力も方向も滅茶苦茶だ。だがそれでいい。別に『リザードマン』に当てようとは思っていない。こちらに近づいてこなければいいのだ。
木を裂き、木の葉を散らし、土煙を巻き上げ、再びお互いを見えなくした。
『索敵能力』は『リザードマン』が動いていない事を告げている。闘気の集まりも感じない以上、様子見をしているのだろう。
この隙にトールは『大きな小袋』の中から、『特やくそう』、『魔法の聖水』、『ばんのうくすり』を取り出し使う。
傷が治り、頭もすっきりした。

「トール」

そんな時に聞き覚えのある呼び声が背後からする。スラきちだ。どうやら動けるようになったらしい。

「手伝ウゾ」

少し震えたような声だが、トールは振り向かない。いや振り向けない。
『リザードマン』から視線を外した瞬間何が起こるか分からなかったからだ。トールが『リザードマン』の位置が分かるように、『リザードマン』の方からもトールの位置を捕まれているような気がした。
一流の戦士になると『盗賊』でもないのに、相手の位置、というより気配が何となく分かるようになるらしい。『リザードマン』もその域に達しているように感じられた。

「いや、出来ればドランとガボと一緒に安全なところまで離れてくれ」

「デモ……」

「早く!」

小さいが厳しい声にスラきちは「分カッタ」とだけ言うと離れていった。仲間のことを気にして戦えるほど簡単な相手ではないとトールは思っていた。
この場にドランとガボも一緒にいたなら『キメラの翼』で退散する事も考えたかもしれないが、仲間が集まったのを『リザードマン』が何もせずに見逃してもらえるとも思えなかった。

何よりそれなりに渡り合えているため、逃げるという選択を取りにくいという事もある。相手が強敵だと思ったのも間違いではないが、トール自身が自分で思っているより強くなっていた事もある。
それでも『闘気法』を修得していなかったら、逃げの一手だっただろう。ただ『闘気法』と潤沢な回復用道具のおかげで渡り合える事が出来、勝ち目も見えている。
生き残ることを第一と考えていた頃とは随分と変わったと思う。
勝ち目がある以上、昔のように逃げるだけではなく戦って勝ちたいという欲も出るようになっていた。



次第に土煙が晴れてくると『リザードマン』も何か草のようなもの咀嚼しているのが見えた。多分『やくそう』の類だろう。『リザードマン』の傷も治っていた。
つまりは仕切りなおしと言う事だった。

ここまでくればトールも目の前の『リザードマン』が誰なのか何となくだが予想は出来る。武器である斧の名前、そして必殺技の名前、この聞き覚えのある二つは非常に特徴的だ。
目の前の『リザードマン』は十中八九、ダイの大冒険のクロコダインなのだろう。
魔王がいない、あるいは魔王が世界征服を企んでいない世界のため百獣魔団の団長と言う事はないだろうが、それでも獣王を名乗るだけの威圧感はあると思った。

トールと『リザードマン』はしばし見つめ合う。両者ともに動かなかった。生半可な攻撃では決め手にならない事が分かっているからだ。かといって大技を出すにしても、ある程度の溜めが必要になる。
あの『獣王痛恨撃』も視界を塞ぐ事によって時間を稼いでいたのは明らかだ。
トールとしては『リザードマン』がこのままあきらめて立ち去ってくれるのが一番だと思っている。そうなればもちろん追いかけるようなことはしない。
戦いたいと言う思いはあるが、それでも戦わなくて良い場面でまで戦おうとは思っていない。何より仲間の事を考えると少しでも早くケリをつけたいと思った。
だが、『リザードマン』は逃げるような事はしないだろうと、何となくだが感じていた。

「なかなかやるな、人間」

突然、『リザードマン』が流暢な言葉で話しかけてきた。少し驚いたが、トールの想像通りなら話す事が出来ても不思議ではなかった。

「俺の名はクロコダイン。人間の戦士よ、お前の名を教えてくれるか」

「……トール」

「トールか。良い名だ」

「……何故名前を?」

「お前が良き戦士だからだ。倒すべき戦士の名を知っておきたかった。仮に倒されるにしても俺の名を良き戦士に知っておいて貰いたかった。ただそれだけ、せん無い事だ」

クロコダインは微かに笑った。
トール自身は自分が戦士だとは思っていなかったが、それでも褒められるのは嬉しく感じた。ただどう足掻いても逃がしてもらえそうにないとは思った。

「これから俺は俺が出来る最大の技を放つ。さあ、勝負だ!」

クロコダインは再び顔の前で拳を握り締め、闘気を集中させていく。覚悟を決めて技を出そうとしているのだ。生半可な攻撃をしたところで止める事はできないだろう。
ならばトールも一撃で倒せる技か、防ぐ防御をするしかない。だが先ほどの『獣王痛恨撃』を防げるような防御技をトールは知らない。ならば迎え撃つしかないだろう。

トールは必殺技として『アバンストラッシュ』を教えてもらってはいたが、逆手握りから斬りつけるこの技はトールには合わなかった。漫画での憧れもあり何度も練習したが今一感覚が合わなかった。それなりに素早く使えるようにしたため先ほどは迎撃用に使ったが、あまり威力が高いとはいえなく力負けしてしまった。

剣スキルで覚えた『ギガスラッシュ』も同じだった。横から薙ぎ払うようにして使うこの技も、何度か使ってみたが合わなかった。『稲妻斬り』の上位技とも言える技で、トールの得意属性が雷であるため剣に雷を貯めて放つ事はスムーズに出来たし、広範囲に衝撃波を放つため、多数の敵に対して使うのには便利だと思えた。
両方とも一定以上のダメージを与えるのは確かだが、これだ、と言い切れる技ではなかった。

結局トールにとって最も適した剣の振り方は上段からの斬り下ろしだった。トールはこれを極めたいと思った。
そして『ギガスラッシュ』を使っていて理解した剣に雷を貯める技術を使う。
これがトールの必殺技の雛形になった。

不思議な事に逃げようという気は起きなかった。クロコダインは技のために集中している。今なら『闘気法』を使って全力でスラきちのところまで行って、『キメラの翼』で逃げることも可能だろう。
それなのにトールは馬鹿正直にこの力比べに付き合うことにした。己が放てる最大の必殺技を持って迎え撃とうとしているのだ。
あるいはこの世界に染まってきているのかもしれなかった。ただ漫画で見たあのヒーローたちの一人を前に見苦しい真似をしたくはないと思ったのだ。



トールは剣を頭上に振り上げた。闘気を、そして『ライデイン』による雷を剣に込める。剣が輝き始めバチバチと稲妻を発する。
クロコダインの闘気を込められた拳はぼんやりと赤く発光し、拳の周りを闘気が渦を巻き始めていた。
二人が動いたのは同時だった。

「獣王会心撃!」

「トールブレード!」

『獣王痛恨撃』より更に大きな闘気の渦がトールに襲い掛かる。
だがトールの剣から放たれた白い輝きはそれを斬り裂いた。光の白の斬撃はまるでレーザーのようだった。

斬!

闘気の渦を斬り裂いた斬撃はそのままクロコダインにも襲い掛かり、その右腕を斬り飛ばした。
くるくると宙を舞い地面に落ちる腕。クロコダインは右肩を押さえながら斬りおとされた腕を見た。

「……俺の負けだ」

奥歯を噛み締めるようにクロコダインは呟いた。
クロコダインとて馬鹿ではない。五体満足で仕留められなかった相手を片腕の失った状態で勝てるなどとは思わない。
一撃を浴びせることぐらいなら出来るかもしれない。
相手が油断をするならその隙をつけるかもしれない。
だがクロコダインにはトールがそんな相手とは思えなかった。自信を持って放った必殺技が敗れた時点で敗北は決まったのだ。
事ここに至ってじたばたするのは、クロコダインのプライドを汚すものだった。

トールとしては『負けだ』と言われても、それからどうすればいいのかが分からなかった。
『トールブレード』で勝てた。トールにはそれだけで十分に満足だった。
何度も訓練してきたし迷宮でも使っていたが、これほどの緊張感の中で実際に使用できたことは喜ばしい事だったのだ。
それだけにこれからどうすればいいのかに迷いがあった。
襲い掛かってきたモンスターを殺すことに戸惑いはないが、それらのモンスターは意志の疎通が出来なかった相手だ。相手はこちらを殺すためだけに襲い掛かってきており、そこには敵意しかなかった。
だがクロコダインは違うように思えた。確かに戦いを仕掛けてはきたが、殺すことではなくもっと別の目的を持って戦いを仕掛けてきたように思えた。
トールに勝つだけならもっと簡単な方法があり、クロコダインにその方法が分からないとは思えなかった。

『トールブレード』が完全に命中していればこんなことは悩む必要はなかっただろう。その時は『クロコダイン』は死んでいるからだ。
使う時は当てるつもりで、即ち殺すつもりで放ったのだが、今回は少し逸れてしまった。元々の方向が悪かったのか、『獣王会心撃』で逸らされてしまったのかは分からない。まだまだ修練が必要だということなのかもしれない。
ただクロコダインを殺してしまわずに済んだ事にホッとしているのも確かだった。

「僕の勝ちか……」

「そうだ。さあ、止めを刺すといい」

「止めって……生きたいとは思わないの?」

「好んで死にたいとは思わん。だがお前は人間で俺はモンスターだ。殺し殺される関係だろう。しかも俺の方から戦いを仕掛けた。殺されても文句が言える立場じゃあないだろう」

「……つまり生権与奪は僕が握っているわけだ」

「そういうことだな」

「……それなら僕の仲間にならないか」

「仲間、正気か?いや、モンスターを引き連れていたな、だからなのか。だが俺はお前を殺そうとした相手だぞ」

「分かっている。だけど殺すことが目的じゃあなかったんだろ。それが目的ならスラきちたちを襲えばいい。そうすれば僕は守るために動くしかなかった。でも狙ってきたのは僕だけだった」

「当然だ。弱者と戦うことに何の意味がある。俺の目的は強者との戦いのみ。俺の『おたけび』で動けなくなる者になど用はない」

と言うことはあの時『おたけび』に抵抗しなければ、戦うこともなかったと言うことだろうか。そう考えるとトールは少々複雑な気分になった。

「それは分かったよ。ただ僕としてもこうして話が出来る相手を殺すのは忍びないんだ。というか心苦しい。というか嫌だ。気分も悪くなる」

実際のところこれがまったく知らない人やモンスター相手なら態度も違っただろうが、相手があのクロコダインではないかと思うと殺すという選択が選べなかった。そして何よりも強かった。仲間にして損はないと思えた。

「それに敗者は勝者の言うことに従うべきじゃないのかい」

「……分かった。お前の仲間になろう」



その後、まずはクロコダインの腕の治療をすることになった。
『ホイミ』は体力と傷の回復は出来る。斬りおとされた部分が皮の一枚でも繋がっていればいいのだが、そうでない時は回復出来ない。『特やくそう』も『ホイミ』より体力の回復する効果が高いと思ってもらえばいい。現状でクロコダインの腕を治す方法をトールは持っていなかった。
そのため一度『キメラの翼』を使って町に帰ることも考えたが、そこでクロコダインが腰の袋の中にあるビンを取り出すように言ってきた。
そのビンの薬品を使うことでクロコダインの腕は繋がり、ついでにトールたちの体力も回復した。それは『せかいじゅのしずく』だった。
結構なレアアイテムだ。錬金釜でも使える素材であるためちょっともったいないと思ってしまったのは仕方の無いことだろう。
仲間になる証として袋にある残った道具はトールに渡された。


クロコダインの道具:いやしそう7個、けんじゃのせいすい2個、まんげつそう3個、毒けしそう4個


一段落してからトールはアクセサリーをスカウトリングに付け替えると、クロコダインを仲間にする作業に入った。トールの冒険者カードに触れさせながら、仲間となるモンスターの名を思い浮かべる。今回はクロコダインの名をそのまま思い浮かべた。一瞬だけ冒険者カードが光る。クロコダインが仲間になった証だった。



――― ステータス ―――
クロコダイン  オス
レベル:18
種族:リザードマン
HP:332+10
MP:34
ちから:148+10
すばやさ:92+5
みのまもり:150
かしこさ:144
うん:56
こうげき魔力:32
かいふく魔力:23

装備:武器:真空の斧(攻+48、素+5)
   防具:鉄の胸当て(守+16)

こうげき力:241
しゅび力:166

言語スキル:2(会話2)
斧スキル:8(斧装備時攻撃力+5、大木斬、魔神斬り、斧装備時攻撃力+10、会心率UP、兜割り、蒼天魔斬、斧装備時攻撃力+20)
剣スキル:4(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り剣装備時攻撃力+10)
素手スキル:4(未装備時攻撃力+10、あしばらい、しっぷうつき、会心率UP)
リザードマンスキル:3(自動レベルアップ、おたけび、常時HP+10、ルカニ、常時ちから+10)

特殊技能:闘気法(ためる、獣王痛恨撃、獣王会心撃)、やけつくいき



レベルはトールの方が上だが、ステータスは負けている。装備の充実差によって何とか同等のステータスになっているに過ぎなかった。当初出会った時は不運だと思ったが、結果的には仲間になり戦力アップにもなって良かったと言えるだろう。

クロコダインが仲間になった事で、まずこれからのこと、『聖竜グレイナル』のところへ行く事を話した。

「聖竜グレイナルに会いに行くのか。それは奇遇だなあ」

驚いたようにクロコダインは言った。クロコダインも『聖竜グレイナル』に会う為にここまで来たのだ。
元々クロコダインは武者修行の旅をしており、その最中で一度クロコダインは『聖竜グレイナル』に戦いを挑んだ事があるらしい。だがその時は力敵わず敗北したらしく、負けた後は傷を回復された揚句に外に放りだされたらしい。その悔しさをばねに再度修行して、もう一度挑戦するためにここに来たのだ。

それとクロコダインはここ最近森で人に出会う事を不思議に思っていたが、それにも納得がいったようだった。
本来ならこの森に人が訪れるのはドミールの里の者か、ドミール山で何らかの儀式を行なう一部の者たちだけで、それも決まった時期にだった。
その者たちはこの森ではモンスターに襲われないような用意をしてくる。それは『竜の火酒』を身体に吹きかける事だった。

『竜の火酒』は『聖竜グレイナル』への貢物であり、その匂いのする者は『聖竜グレイナル』の元へ赴く者であるため、この森に住むモンスターならば滅多に襲い掛かるようなことはしない。
このあたりの頂点にたつのは『聖竜グレイナル』であり、その機嫌を損ねるような事があれば命がない事を本能で知っているからだ。もちろん中にはおかしなモンスターもいるため、絶対に襲い掛かってこないとは言わないが、その確率がずっと下がるのは間違いなかった。
これに関してはクロコダインも律儀に守っていた。

そのため『竜の火酒』の匂いもさせずに森をうろついている人間がいることに、クロコダインとしては驚いていたのだ。もっともこの森に入るくらいだから腕は立つのだろうと思い、腕試しも兼ねて喧嘩を売っていた。
もちろんトールに行なったように、まずは『おたけび』で様子を見た。ショックで動けないようならそのまま放っておき、動けるようなら戦いを挑む。

この森では、トールを除いて4組の冒険者と戦ったが、一組は全員がショックで動けなくなった。2組はショックになる者とならない者がいたが、内一組は直ぐに道具で逃げ出し、もう一組は少し戦った後に逃げ出した。残りの一組は全員ショックにならず戦う事になったが、結局途中で逃げ出してしまった。
戦った冒険者もそれなりの腕前で負けはしなかったが、勝つことも出来なかったのが悔しいとのことだった。



一度『聖竜グレイナル』のところまで行っている為、ここからドミール山までの行き方もクロコダインは知っていた。トールたちはクロコダインの案内でドミール山へ向かう事にした。
トールたちが今まで歩いてきた道のような跡は、所々分かれ道もあるが正しい道を選択すればドミール山まで辿り着けるらしい。ただ蛇行した道のため距離的には遠回りの道らしかった。
森を突っ切って最短でドミール山まで向かう方法もあるのだが、それだと随分と険しい道になるし、モンスターの縄張りにも入る事になるため襲われる確率も高いとの事だった。
ただ今回は『竜の火酒』があるため、それを身体に振りかけておけば、モンスターが襲い掛かってくる確率は減るだろうとも言った。

時間的にはまだ余裕はあるが、早くこの森から抜け出したいと思ったトールは、最短にルートでドミール山に向かう事にした。
ただ、走る速度などのことを考えて、ドランとガボは『魔法の筒』に吸い込んで、スラきちはモンスター袋に入れて連れて行く事にした。



ドミール山に行くまでの間にクロコダインとはいろいろな事を話しながら進んでいった。
クロコダインの目的は強者との戦いで、そのために世界を回っているらしい。これは『リザードマン』の一族では掟のようなもので、クロコダインだけが特別と言うわけでもないらしかった。
生まれつき他のリザードマンよりも強く器用さもあったため、武器もかなり上手く扱えるが、ただMPが少なく魔法は得意ではないらしい。
故郷で強者と戦っているうちにいつの間にか、獣王と呼ばれるようになったとのことだ。

トールは『神龍』に会う為にゴッドサイドで迷宮に潜っている事を話すと、クロコダインは大いに興味を持ったようだった。というのもクロコダインもゴッドサイドの迷宮と塔のことは知っているとの事だった。
迷宮は奥に潜れば潜るほど、強いモンスターがいることも知っており、強者との戦いを目的としているクロコダインも一度は迷宮に潜ってみたいと考えていた。ただ人の街にあるため諦めていた。

クロコダイン自身、自分が強いとは思っているが、それでも負けた事がないわけではない。人間に負けたのもトールが初めての相手ではない。
多くの人間は弱いが、鍛え上げた人間は時折、モンスターよりも化け物じみた存在になる。そして人間の最大の長所はその数による戦術だ。一人ひとりは弱くても徒党を組んだ時に思わぬ強さを発揮する事がある。
それを知っているが故に、クロコダインはゴッドサイドの街に行こうとは思っていなかった。だが、今回トールの仲間になった事によって、ゴッドサイドの迷宮に潜れる事になるのは喜ばしい事だった。
他にも強者と戦える場所に心当たりがあるというトールの言葉は、クロコダインにとって心躍るものだった。



『闘気法』を利用しながらも進んだ結果、その日の陽が暮れる前にドミール山につくことが出来た。





――― ステータス ―――
トール  おとこ
レベル:33
職:盗賊
HP:318
MP:101
ちから:105+5=110
すばやさ:84+60+5=149(+10%)
みのまもり:45+5=50
きようさ:94+70+40=204(+10%)
みりょく:53
こうげき魔力:41
かいふく魔力:51
うん:92

・装備
頭:かげのターバン(守+13)
身体上:しっこくのマント(守+42、みかわし率+3%)
身体下:ブルージーンズ(守+11)
手:あおのグローブ(守+5、器+40)
足:ちんもくのブーツ(守+9、素+5)
アクセサリー: いやしのうでわ(守+4、自動回復大)
武器:光の剣(攻+70)
盾:ライトシールド(守+10)

こうげき力:217
しゅび力:145

言語スキル:4(会話2、読解2、筆記)【熟練度:42】
盗賊スキル:9(索敵能力UP、すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト、ピオリム、しのびあし、盗人斬り、ボミオス、すばやさ+50、とうぞくのはな、器用さ+50)【熟練度:5】
剣スキル:☆(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード、はやぶさ斬り、剣装備時攻撃力+20、会心率UP、魔神斬り、ギガスラッシュ)【熟練度:4】
素手スキル:2(未装備時攻撃力+10、あしばらい)【熟練度:85】
ゆうきスキル:6(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス、べホイミ、ライデイン、いなづま斬り、マホステ、消費MP4分の3)【熟練度:65】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)、スカウト、アバン流刀殺法(大地斬、海波斬、空裂斬、アバンストラッシュ(偽)、常時ちから+5、常時身の守り+5)、トールブレード

経験値:229632




――― 仲間のステータス ―――
スラきち  ?
レベル:25
種族:スライム
HP:28
MP:38+15
ちから:14
すばやさ:41
みのまもり:26
かしこさ:51
うん:53
こうげき魔力:9+15
かいふく魔力:9

装備:
防具:モンスター袋の中にいるためなし
アクセサリー:ソーサリーリング(攻魔+15、MP+15)

こうげき力:14
しゅび力:26

言語スキル:1(会話1)
スライムスキル:5(自動レベルアップ、ホイミ、スクルト、ルカナン、リレミト、メラミ、フバーハ)



ドラン  ?
レベル:16
種族:ドラゴンキッズ
HP:126
MP:0
ちから:87
すばやさ:71
みのまもり:53
かしこさ:36
うん:59
こうげき魔力:4
かいふく魔力:4

装備:
武器:魔よけのツメ(攻+43)【4000G】
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)

こうげき力:130
しゅび力:74

言語スキル:0
ドラゴンキッズスキル:5(自動レベルアップ、ひのいき、つめたいいき、あまいいき、おたけび、かえんのいき、こごえるいき、やけつくいき)



――― ステータス ―――
ガボ  オス
レベル:14
種族:聖白狼
HP:97
MP:32
ちから:43
すばやさ:51
みのまもり:24
かしこさ:22
うん:40
こうげき魔力:10
かいふく魔力:7

装備:
防具:けがわのマント(守+15)
アクセサリー:命の指輪(守+6、自動回復)

こうげき力:41
しゅび力:45

言語スキル:0
聖白狼スキル:2(自動レベルアップ、ほえろ、かみつけ、ぶつかれ)



――― ステータス ―――
クロコダイン  オス
レベル:18
種族:リザードマン
HP:332+10
MP:34
ちから:148+10
すばやさ:92+5
みのまもり:150
かしこさ:144
うん:56
こうげき魔力:32
かいふく魔力:23

装備:武器:真空の斧(攻+48、素+5)
   防具:鉄の胸当て(守+16)
   アクセサリー:まよけの聖印(守+4、即死無効)

こうげき力:241
しゅび力:170

言語スキル:2(会話2)
斧スキル:8(斧装備時攻撃力+5、大木斬、魔神斬り、斧装備時攻撃力+10、会心率UP、兜割り、蒼天魔斬、斧装備時攻撃力+20)
剣スキル:4(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り剣装備時攻撃力+10)
素手スキル:4(未装備時攻撃力+10、あしばらい、しっぷうつき、会心率UP)
リザードマンスキル:3(自動レベルアップ、おたけび、常時HP+10、ルカニ、常時ちから+10)

特殊技能:闘気法(ためる、獣王痛恨撃、獣王会心撃)、やけつくいき




所持金:13375G (預かり所:450000G)

Gコイン:26570


・持ち物『大きな小袋』
道具:やくそう(15個)、上やくそう(21個)、いやしそう(7個)、特やくそう(20個)、毒けし草(35個)、上毒けし草(5個)、特毒けし草(10個)、まんげつそう(7個)、きつけそう(11個)、おもいでのすず(5個)、せいすい(16個)、いのちのいし(4個)、まほうのせいすい(40個)、けんじゃのせいすい(6個)ばんのうくすり(2個)、ゆめみの花(5個)、キメラの翼(1個)いのりのゆびわ(2個)、ドラゴンシールド(守+25)1個、毒針(攻+1)、プラチナソード(攻+51)、ちからのルビー(攻+9)1個、銀のむねあて(守+25)、しっぷうのバンダナ(守+11、速+20、回魔+8)、


大事な道具:モンスター袋、リリルーラの粉、オクルーラの秘石、自動地図、魔法の筒4本、従魔の輪2個、竜の火酒、スカウトリング

小さなメダル:8枚

・預かり所
前回と変わりなし。




――― あとがき ―――

トールの必殺技ですが、感じとしてはFateのエクスカリバーのようなものだと思ってください。

さて必殺技の名前ですが、トールの名前が雷神トールから来ているため、雷神トールと言えば『トールハンマー』 → でもトールが使っているのは剣 → なら『トールハンマー』は変 → ならハンマーの部分を剣に変えればいい → 剣と言えばブレードとソードのどちらにするか → ブレードにしよう。
というわけで『トールブレード』にしました。


さて今回は強力なお方が味方になってくれましたが、それだけでトールが楽になるとは限りません。


それでは、また会いましょう。


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