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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   25話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:c743701b 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/03/28 23:35
DQD   25話

ルイーダとの話は改めてこの世界の冒険者というものを考えさせた。

『冒険者は気楽な家業ときたもんだ』

事の是非はともかく、一般人がよく口にする言葉である事に間違いはない。皮肉も入っているのだろうが、本心から言っている者も少なからずはいる。
街中で見る冒険者は休暇中であることが多く、酒場やカジノでいるところばかりがよく目撃される。それゆえに気楽そうに見られる一因となっている。

多くの冒険者は一日迷宮に潜っては一日休むというサイクルで探索を続ける。つまりは週の半分は身体を休める事に使っている。
それが怠慢だとは思わない。迷宮探索は命を生死の天秤に載せながら、何処まで行くのかを考えて進んでいくのだ。
その時に少しでも死のほうに天秤が傾くような事が起こればお仕舞いなのだ。少しでも生の方へ天秤を傾けるように、精神と身体を好調な状態にするのは当たり前の事だといっても良かった。

はっきり言えば、トールが異常なだけだった。
休むのは五日に一度ぐらいで、迷宮探索を始めると朝から日が暮れる時間まで8時間ほど通して潜り続けた。
これはトールの持っていた冒険者のイメージが原因だった。

ゲームの中の冒険者は、それこそ一日中でも戦い続ける。DQにおける冒険者もそうだ。
ゲームの中でも朝から夜へと時間は流れるが、街から街への移動やモンスターを倒してのレベル上げを、宿で休む事もせずに何日も過ごす事など良くある事だ。
トールの中に冒険者とはそういうものだという意識があった事はいうまでもない。
ゲームなのだから日常の描写が省略されるのは当然の事なのだが、その当たりに意識が行かなかった。

今回、ルイーダから指摘を受けて自分の探索の仕方が他と違う事に気がついた。
かといって今までの自分のやり方にトールは不都合を感じてはいなかった。
身体の疲れは一日休めば、宿に施してあるリホイミの結界の効果でたいていは回復する。精神的にもただ休んでいるよりも迷宮を探索している方が、目標に向かっているような気がして良い。
今のやり方がトールには合っていると思う。

ただ常識的ではなく、周りに心配をかけるかもしれないという事だけは覚えておこうと思った。


****


この迷宮で11階に至るということは、冒険者として生きていく上で重要な意味を持つ。
この街で冒険者といえば地下の迷宮を潜る者を言うが、何も全ての冒険者がこの街に来るわけでもない。
世界は危険に満ち溢れている。
街や一部の開拓された場所を除いて人の手が延びていない場所はたくさんある。
街の警備、街から街の移動の護衛、危険なモンスターの退治、そして未開の地への探索などが冒険者の仕事として存在する。
冒険者のランク付けの目安の一つとして、この迷宮の階層がある。つまり何処まで潜ったかで冒険者としての力量を図るのだ。
11階に降りたと言う事は、『ゴーレム』と『ドラゴン』という巨大モンスター相手に戦い勝利した事を意味している。
戦闘力に関しては余程の無理を言わない限り文句は出ないレベルなのだ。

実際にこの11階にいけるかどうかが、この迷宮を潜り続けるかどうかの一種の境界線になる。
自動レベルアップのない者は、まずここで躓く。その中でもほんの一握りの者だけがスキルを上げてここを突破するが、それは並大抵の努力では為しえない事だ。
自動レベルアップがあっても簡単ではない事だ。そもそもここに来るまでに死んでしまったり、冒険が出来なくなるような大怪我をする事もあるのだ。
実際思い返してみれば、トールもあと少し運が悪ければ死んでいてもおかしくなかったのだ。
よって11階に至った者は実力と運がある者として扱われるのだ。
『クエスト』自体は5階に降りた時点から受ける事が出来るが、相手方から依頼として指定する際には、11階以上の者を望むのが殆どなのだ。
冒険者としての評価が上がり、依頼料も確実に違っていた。
トールは今のところ『クエスト』等の依頼を受ける気はないが、冒険者としてこの街にいる以上周りからの評価を知っておく事は良いことだった。。


****


これからの事だが、11階まで降りはしたがこのまま先に進んでも良いものか考えている。
レベル20にもなった事だし、気分転換の意味合いも兼ねてヒュンケルのところでまた修練をするのも選択の一つだと思っていた。
この前の修練は迷宮を探索する上で大いに自信をつけさせてもらった。
10階のモンスターの『ゴーレム』と『ドラゴン』を倒せたのは、ヒュンケルとの修練で『闘気法』を習得したお蔭だろう。
もし『闘気法』がない状態で戦っていたなら、今のレベルでは勝つにしても並大抵ではない苦労をしたか、勝てずに逃げ帰っただろう。

修練すればまた何か覚える事が出来るかもしれない。
いやヒュンケルと修練するだけでも得るものは多い。

受講料を支払うにも問題はないし、ヒュンケルのところで修練する事を決めようと思った所で、ビアンカから後二週間ほどでエルシオン学園を卒業すると聞いた。

そうなると思い出すのは、ビアンカ、フローラ、ソフィアの三人との約束だ。彼女たちの最初の冒険に付き合うと約束している。
今回のヒュンケルとの修練がどれほどかかるのかは分からないが、期間が長ければ彼女たちとの約束を果たす事が出来なくなるだろう。
となれば、どうするかは考えるまでもない。トールはヒュンケルとの修練を後にする事にした。
大事にしなければいけないのは、まずは約束事だ。知人の少ないこの世界での数少ない友人との約束だ。破るなんてもっての他だ。
ヒュンケルに関しては私事に過ぎない。三人との約束を果たした後に、改めて修練に赴くことに決めた。


****


そうなると、それまでの二週間をどのように過ごすかであるが、基本的には第二層である5~10階で調査の済ませていない場所への探索を続ける事にした。
その中で今までの生活や冒険から少しだけ変わったものがでてきた。



まずはトルネコ商会の『預かり所』を利用するようになった。

『預かり所』はお金も道具も何でも預かってくれる場所だ。小額からも預かってくれると言う話だが、一々預けたり引き出したりが面倒で使用しなかったが、10000G以上貯まった事だし直ぐには大金を使う予定もないため万が一を考えてGを預ける事にした。
道具に関しては『大きな小袋』にまだ空きがあるため預けるつもりはないが、いつか使用する時も来るだろう。
場所は簡単に見つかる所だった。以前ルイーダは東区で一番大きな建物といったがそれは確かな事だった。
トールは入った事はなかったが以前から場所だけは知っていた。

建物も大きいが、中も負けずに広かった。
受付としての5つのカウンターがあり、その内の空いているカウンターに向かう。
初めての利用である事を告げると、『預かり所』を使用するにはまず手続きを踏まなければいけないとの事だった。とはいっても冒険者の場合は冒険者カードを提示するだけで済むので簡単だった。そして登録料として100Gを払えば終了だ。これで『預かり所』の使用が可能になった。

その後は奥にある部屋のうちの一つに通された。
『預かり所』は多数の人が利用するため、カウンターでは受付のみを行い、実際の『預かり所』としての機能は別の部屋で行うとの事だった。
通された部屋が今後トールがGや持ち物を預けるときに訪れる部屋になる。そしてこの部屋にいる人がトールの担当の係員というわけだ。
金髪で妙齢の女性がそこにいた。どこかで見たような気がしたが直ぐには思い出せなかった。

「ロクサーヌと申します。お客様はトール様ですね。今後はよろしくお願いします」

微笑みながらの自己紹介で、トールは目の前の女性が誰に似ているのか分かった。DQⅨのWi-Fiショッピングのロクサーヌだ。色気というものを感じさせる女性だった。

「トールです。よろしくお願いします」

「はい、トール様。では今日はどのような御用でしょうか。Gならば100G単位からお預かりします。荷物は今のトール様ですと『大きな小袋』一つ分ほどがお預かりになれます。いかがいたしますか」

それを聞いて、以前ルイーダからどれだけでも預かってもらえると聞いた事を尋ねると、どうやらそれは全くの嘘ではないが、真実でもないという事だ。
確かにどれだけでも預けられる場合もある。だがそれは『預かり所』でのランク次第だということだ。

『預かり所』では、預けたGによってランクがあるらしい。普通のノーマルから始まってブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの五段階があるらしい。
ランクが上がるごとに預けられる荷物の量も増え、プラチナになればどれ程の量でも預かるらしい。

トールにしてみると疑問を感じたから尋ねただけで、特に問題があったわけでもない。普通に考えれば『大きな小袋』一つ分でもあればそれで十分だし、今のところトールは荷物を預けるつもりはなかった。
もしものときを考えて一応Gを預けておこうと思ったに過ぎなかった。

トールは10000Gをロクサーヌに渡した。

「ありがとうございます。確かに10000Gお預かりしました。預かり額の合計が10000Gを超えましたので、トール様はブロンズランクになりました。お預かりできる荷物の量が二倍になりました。それと『錬金釜』が使用出来るようになりました。アイテムを二つ組み合わせる事により新たなアイテムを作り出すというものです。使用料はいただきますが貴重な体験が出来ると思われます。冒険者であるトール様のお役に立てると思いますので是非ともご活用ください」


たった一度Gを預けるだけで、ブロンズクラスになれたのは良かった事だと思う。荷物の預かり量が増えた事はどうでも良いが、『錬金釜』については興味が沸いた。

その後は『錬金釜』のある部屋に案内された。
『錬金釜』は二種類のアイテムを合成して別のアイテムを作り出す事の出来る装置で、他にも三種類のアイテムを合成できる『錬金釜』もあるとの事だ。
ただそれを使用できるにはシルバークラスに以上からだそうだ。ちなみにシルバークラスになるには50000G以上を貯蓄する事が条件になっている。

『錬金釜』の使い方は簡単だ。釜の中に合成したい二種類のアイテムを入れて、その後蓋をして少し経つと、合成できる場合は新たなアイテムが出来上がる。合成できない場合は、入れたアイテムがそのまま戻ってくる仕組みになっている。
使用料は一回10G。これは成功、失敗に関わらず払う事になっていた。

トールはとりあえずのゲームで覚えているものを試してみる事にした。
やくそうを二つ『錬金釜』に入れてみた。

錬金釜:【やくそう・やくそう → 上やくそう】

予想通りの物を作る事が出来た。



「トール様は、『錬金釜』の使い方を熟知されていらっしゃるのですか?」

トールがあっさりと『錬金釜』を使った事にロクサーヌは驚いているようだった。
『錬金釜』は現存品が非常に少なく、使われる事も一般的にはない。今現在使用できる状態にあるものはトルネコ商会にある物だけだろう。
使い方は分かっているが、何をどのように組み合わせればいいのかは未だに調査中のものも多くが、貴重品であるため誰にでも使わせるわけにもいかない。
だからトルネコ商会では『預かり所』で多くのGを預けてくれたものに対して、特典として使用を許可したのだ。
ある程度のGを預けられる冒険者は、ある程度以上の腕前を持った冒険者である事に違いないからだ。
『錬金釜』の有効性を知れば人を集める要因にもなるし、組み合わせの調査にも役立つ。まさに一石二鳥であった。
元はトルネコ商会の調査の一環により始まった事だが、使う冒険者の方にも利点があるため文句はなかった。
何より新しく『錬金釜』のレシピを見つけた者にはトルネコ商会からの謝礼もあるとのことだった。



そんな珍しい物を目の前にして、直ぐに使用したのだからロクサーヌが驚くのもある意味当然といえた。

トールはといえば『錬金釜』というDQで馴染みとなった道具に少し浮かれていた。
これで上やくそうや特やくそうが作れると思ったからだ。
新たに回復呪文の『べホイミ』を覚えたのは良いが、やはりMPはなるべく節約したいと思うし、もしもの時を考えると回復量の大きなアイテムがあればそれに越した事はないと思っていた。
はっきり言えばやくそうの回復量では少々心もとなくなっていた。
回復量の多い上やくそうは迷宮の宝箱やモンスターの落し物等で見つかるようになってきたが、街の道具屋では売っていない。
どうにかならないかと思っていたときに、この『錬金釜』の存在がこの世界でもある事が分かった。
ゲームと見た目のそれほど変わっては見えない。それならば使い方も変わっていないと考えるのはおかしい事ではないだろう。
それゆえついつい先走ってしまった。

「二つ入れれば出来るって言ってたじゃないですか。だからそのまま入れただけですよ。勢いってやつですか。はははははっ」

知っていたと言えば、それが何処から知ったのかという話になり説明するのもややこしくなると思い、トールは笑ってごまかす事にした。

ロクサーヌはジト目をするが、直ぐに元に戻り頭を下げた。

「そうですか。わかりました。不躾な事をお尋ねしてしまいどうもすいません」

どうやらロクサーヌはごまかされてくれるようだ。こちらの都合に合わせてくれたのだろう。これからも顔をあわせる事も考えると関係はよい状態にするべきだと思ったのかもしれない。

「こっちも勝手に使ってしまってすいません」

「いえ、トール様はすでに『錬金釜』を使う資格を得ていられます。わたしにそれをと咎める権利はありませんので、謝罪はわたくしの方のみがするべきことです。トール様はお気になされないようにお願いします。ところでトール様、今日はこれ以後も『錬金釜』をお使いになられますか?」

トールは頷く事で承諾の意を示した。

錬金釜:【やくそう・やくそう → 上やくそう】  19回
     【やくそう・上やくそう → いやし草】  5回
     【上やくそう・上やくそう → 特やくそう】 5回
     【やくそう・毒消し草 → 上毒消し草】 5回
     【上やくそう・まんげつそう → きつけそう】 6回
使用料:400G

とりあえずは道具関係で覚えているレシピを試してみたが、どれも成功した。
後で覚えているレシピを何かに書き出しておくべきだろう。この世界の『錬金釜』のレシピと同じなのかは分からないが、道具関係のレシピが同じである以上、多少は似ていると思う。

その日、トールはそれで帰る事にした。

お金に関しては15000Gぐらい貯まるごとに10000Gを預けに行く事に決めた。


****


宿屋に関しても少し変わった。
相変わらず『ダンカン亭』に泊まっているのは変わらないが、宿泊する部屋が変わった。
ダンカンさんの方から話があり、出来れば他の部屋に移ってほしいと言われたのだ。というのも、そもそもトールが使っている部屋は冒険の初心者やあまりお金のない人のために用意されていた部屋で、室内にはベッドとテーブルとイスぐらいしかないが、その分値段も安くなっていた。

初めて『ダンカン亭』を訪ねてきたトールはお金もなく冒険者になったばかりの初心者であったため、その部屋を借りるのに何の問題もなかったが、今のトールはレベルも上がり冒険者としてもそれなりの実力を持っておりGもある。
だからこそ安値の部屋ではなく、それなりの部屋に移って今の部屋は新たに冒険者になる者に譲ってほしいとの事なのだ。

そう言われてはトールにしても断るわけにはいかない。
この世界に来てほとんどを過ごして来た部屋だから多少の愛着はあるが、ダンカンの言葉も分かる。
トールは部屋を変わる事を承諾した。

移った部屋は一晩20Gの部屋だ。一月で600Gだが今のトールには何の問題もない。
今までの部屋は4畳ほどでベッドとテーブルで部屋が一杯になっていたが、今度の部屋は今までの3倍ほどの広さがあり、ベッドも広くなっている。内装も豪華になっているし、この広さならスラきちが走り回っても問題ないだろう。今までの部屋はさすがに狭くてスラきちにもあまり走らないようにさせていた。
生活するのに問題がなかったため、特に部屋や宿を変わろうという気にはならなかったが、せっかくGもあることだし、少しぐらい良い部屋に泊まるのも悪くないと思った。


****


『鍵』に関しても随分と考えた。
探索していて鍵のかかった扉や宝箱の存在がちらほら目立ってきたため、何とか『鍵屋』を探したいとは思っているが、何の目的地もなく街中を彷徨って探すのはあまりにも効率が悪かった。
場所を知っている者が他人に教えるのを禁止されているため、ハッサンやマーニャといた数少ない冒険者の知り合いに相談しても教えてもらう事が出来ない。
大人しく町中を探し回るしかないのだろうか。
そう考えたときに、頭の中にひらめく事があった。
誰かに聞くという方向で、ついこの間、その手の専門家と知り合った事を思い出したのだ。しかも相談に乗ってくれるという本人からの言葉だ。
『夢占い師グランマーズ』、探し物の専門家といってもいいのかもしれない。
トールはグランマーズの所へ向かう事にした。



「あっトール君、いらっしゃい」

出迎えてくれたのはミネアだった。

「姉さんなら今寝ていますけど、起こしてきましょうか」

トールを見てミネアがそう言うがのもある意味しょうがないのかもしれない。
平日の昼間はともかく、夜にはカジノでトールはマーニャとしばしば会っているのは事実だからだ。
気晴らしも兼ねてカジノで遊んでいるが、コインは余りかけず本当に楽しむためだけにゲームをしていた。
そのカジノで同じ時間帯にいれば、トールはマーニャと二人で行動していた。
勝ちが多ければ、その分を換金して酒場へ行き、その後は酔ったマーニャを送り届けにきた事もあった。
そのせいもあり、グランマーズの館にいる人たちとは知り合いといってもよいようになっていた。

「今日はおばあちゃんに用があるんだけど、いるかな?」

「ああっ、そうなんですか。なら運がいいですね。今ちょうどお客さんもいないときですから、会えると思いますよ。ちょっと聞いてきますね」

そのままミネアは奥に行ったかと思うと、直ぐに帰ってきた。

「会うから直ぐに来てくれって」

「ありがとう」

ミネアの言葉にトールは礼を言うと、そのまま奥へと入っていった。



「わざわざ昼間から会いに来たってことは何か迷ったって事かい?」

グランマーズにそう言われるが、実際の所迷宮探索で今の所不都合はない。扉に鍵がかかっていても、その向こう側へは他の通路を通って行く事は出来るし、宝箱も中身を取らなければ先に進めないわけでもない。こう考えると鍵はなくても探索事態には支障はない。
トールの好奇心を満たすのに必要なだけだ。

「迷ったってわけじゃなくて、ただ知りたいだけなんだけど……」

「ふむ、まずは話を聞かないと何ともいえないねえ」

「『鍵屋』の場所を知りたいんだけど、これって教えてもらえるのかなあ」

「なるほどねえ、西区のタルハルドっていう道具屋に行ってごらん。そこで売ってもらえるはずだよ」

「えっ?」

あまりにもあっけなく教えてもらえたためトールは呆けた様に呟いてしまった。

「何て顔しているんだ。お前さんは正解を引いただけだよ。『鍵屋』の存在を知るにはどうするか。答えは聞けばいいんだよ。わたしたちのような存在にね。冒険者同士での教えあいは確かに禁止されているけどね。それ以外から教えてもらうのは禁止されていないんだよ。わたしのほかにも街で占いをしているものたちに聞けば教えてくれるよ。そもそもこの街の何処にあるのかも分からない『鍵屋』を何のヒントもなく探すなんてまず無理だよ。これは言葉の裏を旨くつかめることができるかどうかっていうのをためすためのものだね。今のところの相談はこれだけかい」

「あっ、はい。どうもすいません」

「いいさ。また何かあったなら来ると良い」

「はい、そのときはお願いします」

トールは元気よく返事をした。


****


鍵を売っている道具屋は直ぐに見つかった。そこで「鍵がありますか」と聞いたら直ぐに売ってくれる事になった。
売ってくれる鍵の数は以前聞いたように、10個で一セットの鍵の束だ。
10個を使い終わるまで次の鍵を売ってくれないという条件の他に、一つの変化期の間に一セットしか売ってくれないという条件もあった。
つまりどの鍵を開けて、どの鍵を放っておくかを選択しなくてはいけないと言う事だろう。

鍵を売る場所も1変化期ごとに変わるらしく、次の変化期には別の道具屋での販売になるため、また占い師などに聞かなくてはいけないと言う事だ。
値段は一セットで1000Gと高めだ。鍵つきの宝箱といえども、中身はやくそうのみと言う事もあるらしいので、元が取れるかは微妙だが、珍しいレアアイテムと言われる物は、鍵つきの宝箱に入っているとのことなので、Gもそれなりにある今買わない手はないだろう。
トールは鍵を一セット買うと店を出た。

とりあえずまだ変化期は来ていないが、平均的な期間を見てもここ一週間ぐらいで来るだろう。
何とかそれまでに鍵を使いきることにした。


宝箱:やくそう(2個)、上やくそう(4個)、まほうのせいすい(3個)、はやてのリング(1個)、ちからのゆびわ(1個)、450G




そして二週間後、ビアンカ、フローラ、ソフィアの三人はエルシオン学園を卒業した。




――― ステータス ―――

トール  おとこ
レベル:21
職:盗賊
HP:158
MP:63
ちから:57
すばやさ:54+10(+10%)
みのまもり:26
きようさ:59+20+30(+10%)
みりょく:34
こうげき魔力:26
かいふく魔力:31+5
うん:42
こうげき力:112
しゅび力:89

言語スキル:3(会話2、読解、筆記)【熟練度:52】
盗賊スキル:5(索敵能力UP、常時すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト、ピオリム、しのびあし)【熟練度:2】
剣スキル:6(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード、はやぶさ斬り)【熟練度:67】
ゆうきスキル:4(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス、べホイミ)【熟練度:24】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)、スカウト

経験値:43112

所持金:6856G (預かり所:20000G)

Gコイン:34050

持ち物:やくそう(7個)、上やくそう(13個)、特やくそう(5個)、毒けし草(19個)、上毒けし草(5個)、きつけそう(6個)、おもいでのすず(5個)、スライムゼリー(3個)、、せいすい(6個)、いのちのいし(5個)、まほうのせいすい(8個)、スカウトリング、モンスター袋、従魔の輪、リリルーラの粉、オクルーラの秘石


――― ステータス ―――
スラきち  ?
レベル:15
種族:スライム
HP:18
MP:22
ちから:8
すばやさ:24
みのまもり:16
かしこさ:29
うん:31
こうげき魔力:6
かいふく魔力:6

こうげき力:8
しゅび力:16

言語スキル:0
スライムスキル:3(自動レベルアップ、ホイミ、スクルト、ルカナン)




――― あとがき ―――

今回は幕間のようなお話です。
生活環境、冒険環境、共に少しずつ良くなっていきます。

次回からはいよいよビアンカたちとの冒険になります。とは言うもののトールの立場は保護者のようなものですけど。
ヒュンケルとの修行はその後になります。


それでは、また会いましょう


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