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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   20話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:34cb381a 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/02/14 21:42
DQD   20話

深いまどろみからの目覚めの中で快い暖かさと微かな良い香りがした。
何かに包まれているようだが決して不快ではなかった。

目覚めて目を見開いた時、最初に視界に入ったのは褐色の何かだ。それも面前に、だ。
頭がガッシリとロックされて動かせないため視界にはそれしか映らない。
何が何だか分からず混乱してしまう。
だが頭上からの吐息と時折発せられる聞き覚えのある声がトールに現状を分からせた。
つまりトールは『お姉さん』の胸の谷間に頭を抱かれているのだ。
トールの混乱は更に拍車がかかる。

(何故、どうして、WHY、したのか、覚えてないぞ、どうなってる)

支離滅裂な思考が脳裏を占める。
頬や顔全体に感じるプニプニした感触はトールから思考を奪うのに十分だった。気持ち良いが少し息がしづらいせいもあり、余計に頭がボーッとしていた。
それでも一瞬腕の力が抜けた時に、名残惜しいが『お姉さん』の腕の中から逃げだす事に成功した。

そしてその瞬間見えたのは『お姉さん』の姿だった。
案の定というか、やっぱり裸だ。微妙な足の重なりで大事な部分は見えないが、それでもその豊満な胸、扇情的な姿は目に入る。
心臓がドキドキしだし、頭に血がのぼり思考が鈍る。
少し、いや凄く残念だが足元のシーツを『お姉さん』にかける事にした。
ここまでして大きく息をする事によって、少し落ちついてきた。

陽はいつの間にか昇っており、周りを見れば全く知らない部屋で、ダブルサイズはあろうかと言うベッドにいる。
トールがいつも使っている宿屋の部屋よりも広く、ベッドや備え付けのテーブルなどの家具も少し豪華になっているような気がした。
トール自身も下着もつけておらずやはり裸だ。息子はいつも以上に自己主張しているが、朝だからという事にしておきたい。
今の状況を鑑みてトールは改めて思う。

(やったのか。いや、この場合はやられたになるのか。いやそんなのはどうでもいいとして、実際にしたのか。本当にしたのか。それにしては記憶が欠片もないぞ。全く覚えていないぞ。これはものすごくもったいない事じゃないのか。これからでも、もう一回ぐらい……、いや記憶がない以上それも定かじゃない。そうだ。それよりもまず、昨日の事だ。どこまで記憶があるんだ?)

結局のところ、昨夜の事が思い出せない状態ではどうする事も出来ない。トールはまず昨夜の記憶を掘り起こす事から始めた。


****


モンスタ-バトルロワイアルでコインを30000枚得た後、『お姉さん』と二人で他のギャンブルにも手を出していった。
所詮泡銭のようなもので、コインを換金した時に元の金額に戻るぐらい残れば良いという気持ちもあり、何も気にせず気前よく使ったのだがこれが当たりに当たった。
ギャンブルにつきや流れというものがあると、始めて実感した。

スロットをやれば当たり、ルーレットをかければ当たる。
ポーカーやブラックジャックでも良いカードが来る。もちろん勝ててばかりじゃないが、小負けの大勝ちで明らかにつきがあるのが感じられた。
唯一つ運が悪いところがあるとすれば、100Gスロット台が調整中で使えなかったことぐらいだろう。もし使えていれば、どうなっていたか分からない。
いや、運があったからこそ、100Gスロットが使えなかったのかもしれない。100Gスロットならつきがなければ30000枚を使いきってしまうこともあるだろう。
とにかくあの後もトールは勝ち続け、『お姉さん』もトールの運に乗るような感じで調子をあげ、結果的に二人とも大勝といって良いほどの勝ちを得た。
最終的にトールは53000枚ほどのコインを得た。

そしてその後は『お姉さん』に引きずられるようにして、酒場に連れて行かれた。
そこで改めて自己紹介もした。『お姉さん』はやはりマーニャだった。
普段は踊り子として酒場で踊っているそうだが、冒険者として迷宮に探索にも行くのだそうだ。
話したのは多分当たり障りのない部分だけだろう。冒険者の件を話している時、一瞬だけ真剣な表情になったのをトールは気づいてしまった。DQⅣのような仇をとるといった事情があるのかは分からないし、今はまだそれを知るほどの仲ではないとも思った。

トールが話したのは、冒険者をしていて塔に登り、『神龍に会う』事を目標としている事だ。
なるべく曖昧に話していたが、やはり酒を飲めば舌の回りもよくなってしまう。
いつの間にか今の自分の状況も話していた。いや話したというより愚痴を言っていたと言う方が合っているだろう。
剣を持てなくなった自分、戦う気が起きない自分、そんな自分に呆れて何とかしたいと思いながらも、何もする気になれない自分への愚痴だった。
これはマーニャが聞き上手だったこともある。
とにかく酒場で飲み食いをし、仕舞いには気が大きくなり周りに気前よく奢ったところまでは覚えていた。
しかしそれ以降の記憶が曖昧になっていた。



とりあえずこの部屋に入った記憶は全くない。あの後酔いつぶれて寝てしまったように思える。
トールに思い出せる記憶はここまでだ。ということは、やはり何もなかったのだろうか。
自分やマーニャが服を着ていないのも、服に皺が付かないようにするためや、酔っていたため苦しくないようにしたのかもしれないとも思えた。

「どうなのかなあ、一体」

無意識に呟いた瞬間、背後から腕が回されたかと思うと同時に背中に何か大きなふくらみが当てられたのに気がついた。

「何を言ってるの?」

暖かい吐息が耳にかかる。

「えっ」

驚いて振り向けばそこにはマーニャの顔があった。あまりに近くに顔をあったためトールは赤面する。

「どうしたの?」

その問いにトールは言葉が詰まって答えられない。まさか昨夜自分とあなたは関係を持ちましたか、などとは聞けない。
しておいて覚えていないのは失礼なような気がするし、していないのなら自意識過剰のように思えた。
とにかく女性関係に慣れていないトールには、この場合どうする事が正解なのか分からなかった。結果何も言う事が出来なかったのだ。

トールの困惑を余所にマーニャは微笑むと、スッとトールから身を離した。
裸身のマーニャの姿がトールの瞳に映る。日の中で見るその姿は劣情も感じるが、素直に美しいとも思えた。

「そんなにジロジロ見るんじゃないの」

少し恥ずかしそうに言いながら、マーニャはシーツを身体に巻きつけた。それをトールは少し、いやかなり惜しいと思ったが、シーツを纏ったマーニャもこれはこれで色っぽくて良いと思った。

「それで、どうかしたの?」

「何がですか」

「何か考えていたでしょ」

マーニャに再度問われたことで、トールも決心した。駄目元で聞いてみよう。

「そのことなんですけど、昨夜のカジノを出た後のことで……」

「ああ、昨日の事ね。トールは凄かったわ」

「えっ」

「凄い飲みっぷりだったわ。感心して惚れ惚れするぐらいよ」

「凄い……飲みっぷり……ですか」

「ええ、そうよ」

「それだけですか」

「それだけって?」

そういいながらマーニャが微笑む。からかっている様にも見えるし、そうでないようにも見える。
知りたいのなら遠回りな聞き方ではなく、実際にきちんと聞かなければ分からないだろう。
だが、半面こうも思った。実際にマーニャの口から『関係した』と聞いたとして、それは真実なのだろうか。
実際問題としてトールにはした記憶がないのだ。ならば事実がどちらだとしても、その記憶がない以上たいして変わらないのではないのか。
確かに気になる事ではあったが、その考えが正しいような気がした。
意気地がないだけなのかもしれない。

「いえ、こちらのことですから……そうですか、そんなに飲みましたか」

頭をかきながら、誤魔化すようにトールは言った。

「ええ、そうよ。こっちが心配になるぐらいだったわ。酔って帰れなくなったからここに泊まったのよ」

「そうですか……迷惑かけてすいません」

「いいわよ。それより目が覚めたことだし、そろそろ用意して行きましょ」

「えっ、行くって?」

「もうっ、この事も忘れたの?トールのトラウマを治す方法を知ってるって話したでしょ。それの事よ」

そう言われれば確かにマーニャにトラウマの事を話した後に「お姉さんに任せなさい」と言われた記憶がある。ただトールにはあの言葉は酒の場での慰めの一つで、まさか本気で言っているとは思わなかった。

「本当だったんですか」

「当たり前よ。じゃあ早く行きましょう。それとももう少しここでゆっくりしていく?」

本気かからかいなのかわからない流し目をマーニャはする。

「あっ、いえ、行きましょう」

いきなりの展開にトールは慌ててそう言うしか出来なかった。直ぐ後に少し惜しい事をしたなあと思ったが、それは後の祭りというものだった。


****


『グランマーズの占い館』は西区の歓楽街の一角にある屋敷の事であり、そこがマーニャに連れて行かれた場所だった。
トールには始めて来た場所だった。こうしてみると、この街で訪れていない場所はまだまだ沢山ある事を実感する。

「ここがそうよ」

それだけ言うと、マーニャは扉を開けさっさと中に入っていき、トールはそれについていく。

「おばあちゃん、いるんでしょ」

「あら、マーニャじゃない。どうしたのよ」

広めの玄関ホールでマーニャを出迎えたのは、長い金髪の美しい女性だった。何処か神秘的な感じがする。

「あっ、ミレーユ、おばあちゃんいるでしょ」

「もちろんいらっしゃるわ。それよりどうしたのよ、いきなり」

「お客さんよ」

そう言いながらマーニャは入ってきたトールを向く。
ミレーユは僅かに頭を下げ会釈し、トールもそれに答えて会釈した。

「それで、おばあちゃんは――」

マーニャの言葉を遮るようにドタドタと床を踏み鳴らす音が聞こえたかと思うと、玄関ホール奥に見える扉が開き一人の少女が現われた。
マーニャと似ているが、少女の方が大人しそうに見えた。だが次の瞬間にはキッと目元が釣りあがったかと思うと怒鳴り声を上げた。

「昨日は何処に行っていたのよ、姉さん!」

「あら、ミネアじゃない」

「ミネアじゃない、じゃないわよ。パノンさんからは何処行ったか聞きかれえるし、私のへそくりはなくなるし、またカジノでしょ。姉さんは下手の横好きなんだからいい加減に――」

怒鳴るミネアの前にマーニャはズイッと皮袋を差し出す。

「ありがとね、ミネア。色を付けといといたから許してね」

ミネアは呆然としながら受け取った皮袋の中を見た。それは想像通り、いやこの場合は想像以上のものが入っていた。

「……嘘よ。姉さんが勝つなんて……こんなの夢よ。そうに決まってるわ」

「あら、本当ね。これは珍しいを通り越して奇跡かも」

皮袋の中を見て同じようにミレーユも驚いたように言う。

「二人とも酷い言いようねえ。まあいいわ。それよりもおばあちゃんはいるわよねえ」

「ええ、メルルとこっちに来てるわ。わたしは姉さんの声が聞こえたから先に着たけど、もう直ぐ来るはずよ」

「そう、ならいいわ。じゃあ先に紹介しておくけど、こっちがトール。おばあちゃんにお客よ」

入り口の扉の前で立っていたトールを手で差し示すようにしながらマーニャは言う。
それで始めてトールの存在に気づいたのか、ミネアは慌てて佇まいを直した。

「ミネアです」

「ミレーユよ。よろしく」

「トールです。その、よろしくお願いします」

いきなりのドタバタで少し場が混乱したが、一応の落ち着きは取り戻したようだった。
そこに開かれたままの奥の扉から、一人の老婆と一人の少女が現われた。

「まったく、いつもいつも慌しい子だねえ」

老婆はそう口にしながらも、それを迷惑とは思っていないように感じられた。

「もういいよ、ありがとう、メルル」

身体を支えてくれていた少女に老婆は礼を言うと、杖をついて一人で立った。

小柄な身体に黒いローブに黒いとんがり帽子。ドラゴンボールの占いおばばそのものといった姿は、DQⅥの夢見占い師グランマーズに間違いないだろう。
一緒に来たのは長く艶やかな黒髪に黒目がちの瞳をした少女、まだ幼さが残っているが将来は美人なるであろう事が予想された。
メルルという名前と見た目から、『ダイの大冒険』のメルルであると思われた。ただ少し若いような気がしたが、その考えは間違っていないように思える。
先の二人も呼ばれていた名前から、金髪の美女はDQⅥのミレーユに間違いないだろうし、マーニャに似た少女はDQⅣのミネアだろう。
何気に占い関係と思われる人たちとトールは出会った事になる。

「それで大きな声で呼んでいったいどうしたんだい、マーニャ」

「あのね、この子、トールって言うんだけど」

マーニャに紹介されて、トールは頭を下げる。

「この子を、ちょっと診て欲しいのよ。ほら、ちょっと前にトラウマで戦えなくなった人を治してたじゃない。トールもちょっとトラウマ持ちみたいなのよね。だから診てもらえないかなあって思って」

マーニャの言葉にグランマーズは深いため息をつくと、ちらりとトールの方を見る。

「少年……トールといったかのう。うちの馬鹿が随分と迷惑をかけたようですまんのう」

「誰が馬鹿よ。誰が」

「お前じゃ。何がちょっと見てほしいじゃ。お前はここを何だと思っておる。『占い館』じゃ。教会でもなければ、病院でもないんじゃ」

「でも治してたじゃない」

「あんなものは特例に過ぎん。とはいってもここまで連れて来てしまった以上、無碍に追い帰すわけにもいかんじゃろう。丁度午前中は予定もないし、まあいいじゃろう。トールさんといったねえ、とりあえず話は聞くが余り期待はしないようにのう。それじゃあこちらに着いて来とくれ」

グランマーズはやれやれといった感じで奥に向かっていった。
トールとしては何となく居心地が悪かったが、ここまできて帰るわけにもいかずグランマーズの後を着いていった。





薄暗い小さな部屋の中でテーブルの上に置かれた水晶球だけが仄かに光っているのが印象的だった。
部屋の奥の席にグランマーズが座り、その向かいにトールが座る。
他の4人は周りで立って二人を見守っていた。

「トールさん、あんたはマーニャと知り合いのようだが、実際どういう人物かわたしは知らない。だからあんたがどういう人物か知るために、ちょっとだけ見てみたいが構わないかね」

「ええ、構いませんよ」

要は信用が足りないのだろう。トラウマの治療してもらうのに必要なら多少の事は構わないと思った

「なら、少しだけ見させてもらうよ」

グランマーズはそう言いながら水晶玉に両手を翳す。そして両目を閉じると、聞き取れないほどの小さな声で何事かを呟いた。それに答えるかのように水晶玉は内部の光を目まぐるしく変えていった。そして再び元の仄かな光に戻ると、グランマーズはゆっくりと目を開けた。

「これはまた珍しいのに会っちまったねえ。トールさん、あんた、『渡り人』だね」

「渡り人?」

マーニャが始めて聞く言葉に頭を傾げる。
トールとしてはここでこの言葉が出てくるとは思わなかった。一流の占い師の名は伊達ではなかったということだろう。
だが、トールはここで何も言うことができなかった。突然の事でどうすることが最善なのか考え付かず、結局黙ることしかできなかった。

「まあ、そういう珍しい部族の末裔だと思っておくれ」

黙るトールに代わってグランマーズはそれらしいことを言って話を逸らした。
年を取っているからか、仕事柄なのか、他人が知っていい事かどうかを判断できたのだ。トールが『渡り人』の事をあまり人に知られて欲しくないと思っている事を察したのだろう。

「それを抜きにしても、お前さん、面白い相をしているねえ。波瀾万丈の相があるよ。今回の事もこれ絡みだと思って良いねえ。まあ、運命のようなものかねえ。ただこれはあくまで占いによるものさ。絶対じゃあない。それを忘れなければ穏やかな一生を過ごすこともできるさ。さて、見るのはこれくらいにして、まあ信用しても良いじゃろうな。それじゃあこれからがお前さんにとっての本番になるかねえ。まずはどういう具合なのか話してもらえるかい」

グランマーズにそう言われて、トールはトラウマに至った経緯を話した。
剣を持った腕を切られて、その後死にそうになり、今では剣を持つと気分が悪くなる。実際にモンスターと戦ってはいないが、多分戦うこと自体ができないのでないかと思っている。
治す方法のためになるならと、なるべく詳しく話した。

「なるほど、話はわかったよ。確かに何とかなるかもしれないねえ」

「ほら、やっぱりそうでしょ」

「まだ答えは早いよ、マーニャ。確かに治せるかもしれない方法はある。だけどねえ、これには問題があるんだよ。マーニャはあまりこの件に関わっていないから、結果だけ知って簡単に考えていたかもしれないけど、この方法を行うには大きな大きな問題があるんだよ」

「何なんですか?」

「まず治療費に50000Gかかるんじゃよ」

「50000Gですか」

高額だがカジノで勝ったため払えない額ではない。だが普通に考えられる金額でもないだろう。

「そうじゃ。そして50000G払ったとしても、確実に治るとは限らない。50000G払った挙句に治らないこともある。この前治療した者は、お金の支払いについては何ら問題なかったが、お前さんはどうじゃ。50000Gもあれば一生とは言わんがそれに近い年月暮らしていける金額じゃ。わたしから言えばわざわざこの治療を受ける意味が本当にあるのか、今一度よく考えてほしいんじゃ。トラウマは時が解決してくれることもある。それを待つのも一つの手だとわたしは思うがどうするかね」

「……お願いします」

今なら支払う金が十分にあるということもあるが、ここで弱腰になってトラウマから逃げ出すと一生立ち向かえなくなる気がした。
その原因の一つが今回得たコインだ。あれだけあれば、本当に遊んで暮らせるだろう。それに慣れきってしまえば、自分はもう二度と戦う心構えを持てなくなるだろうと思う。だからこそ、まだかろうじてトラウマのことを気にかけている今の内に対策をとらなくてはいけないと思った。

「50000Gじゃぞ、言っておくが分割というわけにはいかんぞ」

「大丈夫よ、おばあちゃん。昨日トールは大勝ちしたからそれくらい何とかなるわよ」

「大勝ちって……お前はまたカジノに行っていたのかい。まあ、今はそのことはいいよ。お金があるんなら前払いでお願いするよ。この治療法にはいろんな秘薬がいる。50000Gといっても、その大半は用意する秘薬で使っちまうのさ。その余りがわたしたちの報酬というわけだよ。今貰えるならこれから用意に入るが、準備には一週間ほど時間をもらうけどどうするんだい?」

「今手持ちがないですからちょっと待ってくれますか」

「こちらとしては一向に構わないよ。お金が貰えたら用意を始めるだけだからねえ。治療法もそのときに話すよ。それじゃあ治療は代金を受け取ってからだいたい一週間後だよ。忘れないようにね」

トールは頷く事で答えた。


****


トールはさっそくカジノに向かった。
コインをGに換金するためだ。他にも良いアイテムや武具防具があれば交換しても良いと思っている。
昨日は少し現金に換金しただけで、交換できるアイテムで何があるかをよく見ていなかった。

交換所にあるアイテムは以下の通りだった。

まほうのせいすい:50枚
いのちのいし:300枚
エルフののみぐすり:500枚
いのりのゆびわ:700枚

これらのアイテムが常時用意されているが、他のアイテムについては時期によって様々な物になるとのことだ。
ちなみに今のアイテムはこうだった。

ミスリル鉱石:1000枚
オリハルコン鉱石:1800枚
せいれいのたて:2500枚
せいれいのよろい:3000枚
グラコスのやり:8000枚
ミラクルメイス:15000枚

そして異彩を放つようにあるアイテムがあった。

世界樹の葉:100000枚

無茶とも思える枚数だが、死人が生き返るという奇跡を起こすアイテムだ。ある意味安いと言うべきなのかもしれない。

とりあえず今の時点で交換するアイテムはない。
もしトラウマが解消されたら、『ザキ』系呪文の対策として、とりあえず『いのちのいし』と交換するのもいいかもしれない。
だがそれも治ったらの話だ。

トールは50000G分を換金すると、グランマーズの館へと戻っていった。




――― ステータス ―――

トール  おとこ
レベル:17
職:盗賊
HP:115
MP:50
ちから:45
すばやさ:41+10(+10%)
みのまもり:20
きようさ:50+20(+10%)
みりょく:30
こうげき魔力:21
かいふく魔力:26+5
うん:31
こうげき力:45
しゅび力:39

言語スキル:3(会話2、読解、筆記)【熟練度:3】
盗賊スキル:3(索敵能力UP、常時すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト)【熟練度:87】
剣スキル:5(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10、ミラクルソード)【熟練度:48】
ゆうきスキル:3(自動レベルアップ、ホイミ、デイン、トヘロス)【熟練度:41】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)
     スカウト


経験値:19264

所持金:53258G

Gコイン:42300

持ち物:やくそう(39個)、毒けし草(21個)、おもいでのすず(4個)、スライムゼリー(1個)、まんげつそう(2個)、せいすい(2個)、スカウトリング




――― あとがき ―――

マーニャ、ミネア、ミレーユ、メルルがグランマーズの元にいる理由は、今後話の中で書いていく予定です。

話数20、感想100、PV100000を超えましたので、次回からはスクエニ板に移ろうと思います。

それでは、また会いましょう



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