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No.13837の一覧
[0] DQD ~ドラゴンクエストダンジョン~ (現実→オリジナルDQ世界)[ryu@ma](2010/10/02 23:31)
[1] DQD   1話[ryu@ma](2009/11/10 23:28)
[2] DQD   2話[ryu@ma](2009/11/10 23:42)
[3] DQD   3話[ryu@ma](2009/11/11 23:03)
[4] DQD   4話[ryu@ma](2009/11/12 22:35)
[5] DQD   5話[ryu@ma](2009/11/14 00:01)
[6] DQD   6話[ryu@ma](2009/11/14 22:32)
[7] DQD   7話[ryu@ma](2009/11/15 23:14)
[8] DQD   8話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[9] DQD   9話[ryu@ma](2010/01/03 22:37)
[10] DQD   10話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[11] DQD   11話[ryu@ma](2010/01/03 22:38)
[12] DQD   12話[ryu@ma](2010/10/07 22:18)
[13] DQD   13話[ryu@ma](2010/10/07 22:19)
[14] DQD   14話[ryu@ma](2010/10/07 22:21)
[15] DQD   15話[ryu@ma](2010/10/07 22:22)
[16] DQD   16話[ryu@ma](2010/10/07 22:24)
[17] DQD   17話[ryu@ma](2010/01/31 22:16)
[18] DQD   18話[ryu@ma](2010/01/31 22:08)
[19] DQD   19話[ryu@ma](2010/02/07 22:28)
[20] DQD   20話[ryu@ma](2010/02/14 21:42)
[21] DQD   21話[ryu@ma](2010/02/28 23:54)
[22] DQD   22話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[23] DQD   23話[ryu@ma](2010/03/28 23:23)
[24] DQD   24話[ryu@ma](2010/03/28 23:24)
[25] DQD   25話[ryu@ma](2010/03/28 23:35)
[26] DQD   26話[ryu@ma](2010/05/10 23:13)
[27] DQD   27話[ryu@ma](2010/04/14 23:31)
[28] DQD   27.5話[ryu@ma](2010/05/10 22:56)
[29] DQD   28話[ryu@ma](2010/05/10 23:18)
[30] DQD   29話[ryu@ma](2010/05/28 22:28)
[31] DQD   30話[ryu@ma](2010/06/13 00:30)
[32] DQD   31話[ryu@ma](2010/07/06 22:16)
[33] DQD   32話[ryu@ma](2010/09/03 20:36)
[34] DQD   33話[ryu@ma](2010/10/02 23:14)
[35] DQD   34話[ryu@ma](2010/10/02 23:11)
[36] DQD   35話[ryu@ma](2010/10/02 23:21)
[37] DQD   35.5話[ryu@ma](2010/10/07 22:12)
[38] DQD   36話[ryu@ma](2010/11/21 00:45)
[39] DQD   37話[ryu@ma](2010/12/07 23:00)
[40] DQD   38話[ryu@ma](2010/12/30 22:26)
[41] DQD   39話[ryu@ma](2011/01/26 23:03)
[42] DQD   40話[ryu@ma](2011/02/09 22:18)
[43] DQD   41話[ryu@ma](2011/03/02 22:31)
[44] DQD   42話[ryu@ma](2011/05/15 22:07)
[45] DQD   43話[ryu@ma](2011/09/25 22:54)
[46] DQD   44話[ryu@ma](2011/12/30 21:36)
[47] DQD   45話[ryu@ma](2012/05/04 21:57)
[48] DQD   46話[ryu@ma](2012/05/04 21:50)
[49] DQD   47話[ryu@ma](2013/03/22 23:00)
[50] DQD   47.5話[ryu@ma](2013/03/22 22:57)
[51] DQD   48話[ryu@ma](2013/10/11 22:33)
[52] DQD   設定[ryu@ma](2010/10/07 22:13)
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[13837] DQD   15話
Name: ryu@ma◆6f6c290b ID:88d25b8f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/10/07 22:22
DQD   15話

「トールです。こちらこそよろしく、アリーナさん」

トールは何とかアリーナに向かって笑みを浮かべた。だがアリーナは憮然たる表情をする。
もしかしたら笑みが引きつっていたのだろうか。
トールはそんな心配をしたが、アリーナからの反応はトールの想像と違っていた。

「アリーナでいいです。同い年ぐらいなんだから話し方も普通で良いです。わたしのほうもそうするつもりですから」

少し拗ねた様な言い方だ。
相手が余程幼いか、知り合いでもない限り、トールの口調が畏まったものに近くなるのは一種の癖のようなものだが、今回はそれがマイナスに働いたようだ。
理由は分からないが堅苦しい物言いは嫌いなのだろう。

「わかったよ、アリーナ」

望まれた事を態々断るほど、空気が読めないわけじゃない。
これから数日は一緒に行動する事になるのだから、楽な口調で話せたほうがいいに決まっている。
トールの言葉を聞いて、アリーナは微笑んだ。その笑顔が綺麗でトールは一瞬だけドキリとした。

それにしてもこんなところでアリーナに会う事になるは思わなかった。
DQⅣとこの世界が一致するわけではないから詳しい素性は分からないが、姓を名乗ろうとした事から王侯貴族の一員である事は間違いないだろう。

トールはこの世界の地理に関しては殆ど調べていないから良くは分からないが、「サント……」までは言ったのだから、この世界にもサントハイムはあるのかもしれない。
ただアリーナが姓を隠そうとしているのは、トールにも理解できた。
心の中に生まれた不安はなくならないが、この場合文句を言うなら相手はハッサンだろう。
ここは聞かなかった事にするべきだ。

「じゃあアリーナはハッサンさんからこれからの事って聞いてる?」

「5階の階段室まで行って、6階に降りてこいって言われたけど……」

「僕の方も似たようなことを聞いたよ。多少は手出しするかもしれないけど、あくまで道案内って事だからそのつもりで」

「うん、お願いするね」

「じゃあ、パーティー登録するから、冒険者カードを出して」

アリーナは「分かったわ」と答えて、自分の『大きな小袋』から冒険者カードを取り出した。

パーティー登録の仕方はそれほど難しくない。パーティーになる者達が己の冒険者カードを10秒ほど重ね合わせればいい。そうして冒険者カードが仄かに光れば、それがパーティーを組んだ証になる。
その後冒険者カードの裏面、神鳥ラーミアの紋章が描かれている面にパーティーの組んだ者の登録名が刻まれる。
冒険者カードからパーティーになった者の一部のステータスもこれで見る事ができるようになる。
見る為には「パーティーステータス」と心の中で念じるだけだ。
トールも一度念じてアリーナのステータスを見てみる事にする。
どの程度のステータスか興味もあったし、フォローが必要なのか考えるためにも知りたかった。



――― ステータス ―――
アリーナ  おんな
レベル:3
職:武闘家

・装備品
頭:ヘアーバンド(守+2、攻魔+2) / 身体上:たびびとのふく(守+4) / 身体下:けいこぎズボン(守+5) / 手:皮のてぶくろ(守+2、器+15) / 足:皮のブーツ(守+2) / アクセサリー:竜のうろこ(守+5) / 武器:鉄の爪(攻+17) 

HP:24
MP:0
攻撃力:38
防御力:32

武闘家スキル:1(おたけび、常時すばやさ+5)
素手スキル:6(未装備時攻撃力+10、あしばらい、しっぷうきゃく、素手時の会心率アップ、きゅうしょづき、まわしげり)
爪スキル:3(爪装備時攻撃力+5、ウイングブロウ、裂鋼拳)
オーラスキル:0(自動レベルアップ)

特殊技能:武神流(ためる、波動拳)



レベルの割にスキルが高い。今まで修行してきたためだろう。
格闘の素手スキルだけでなく爪スキルもあるのは、鉄の爪を装備していることからも明らかだ。
少なくとも直ぐにフォローしなければいけないほど弱いとは思えない。

ステータスを見られた事により、パーティー登録が終わった事に間違いはない。初めての事なので、ちゃんと出来ているか心配だったのだ。

トール自身の能力が偶然か、それとも何らかの要因があるのかは分からないが、一人で迷宮探索するのに適した能力だったため、自分からパーティーを組まなければいけないという考えを持つに至らなかった。
それが良いことなのかどうかは分からないが、今回パーティーを組む経験を得られたのは今後のとこを考えても良い事だと思う。

パーティーを組んだ時の利点といえば、パーティーで倒したモンスターの経験値を仲間内で分配する事にある。
例えば僧侶は戦う際に補助呪文や回復呪文などで仲間のフォローをするが、モンスターを直接倒すわけではない。経験値は基本モンスターを倒した者が得るため、そうなると僧侶には経験値は入らないのだが、決して戦闘の役に立っていないわけではない。そういう場合に僧侶にも経験値を分配するためにパーティー登録をするのだ。
後は、攻撃魔法の範囲からパーティーを除く効果もある。爆発などによる石が飛び散るなどの付随効果はともかく、攻撃魔法の効果そのものはパーティーには効果を及ぼさないため、戦いの際には有効になる。
補助魔法もそうだ。複数に有効な補助魔法、例えば『スクルト』などの防御を上げる魔法は、パーティー登録をしていなければ、個人個人にしか有効にならない。このようなこともあり一緒に冒険する者が魔法を使えるならば、殆どがパーティーを組む事になる。

今回に限ってはハッサンに頼まれた事が大きい。パーティーを組むという事をアリーナに経験させたかったとのことだ。後は、道案内と監視とはいえ一緒に迷宮に潜るトールへのお礼の一部として、経験値を分配するという意味もあった。得たGも折半するということだ。

「それじゃあ行こう」

「はい」

二人は入り口から迷宮へと入っていった。


****


トールの役目である道案内だが、本来は先頭に立って迷宮を進んでいくのだろうが、その場合はアリーナがモンスターと戦うというもう本来の目的に副わなくなる。
どのようにモンスターと相対するかも、モンスターと戦う上で大切な事の一つだ。
よってトールは後ろから行き先を示していく事になる。
「当分まっすぐ」や「二つ先の四つ角を右に」などだ。
そしてモンスターが姿をあらわしても、根本的にトールは手出しをしない。勿論向かってきた場合は別だが、トールから手を出して戦う事はしなかった。

アリーナはモンスターと戦かった事は殆どない。
戦ったとしてもそれは師匠や兄弟子達が側にいて、何かあれば直ぐに助けてもらえるという立場であったため心配や不安というものを感じさせないものだった。
今回は一応の保険としてトールはいるが、一人で戦わなければ行けない事に少し不安があるとアリーナは語っていた。
それは当然だろう。アリーナの実力をトールが知らないように、トールの実力をアリーナは知らないのだから。知らないものを信用するのは難しい。
ただアリーナはその生まれから、自分がある程度人を見る目があると思っている。
その感性がトールのお人よしそうな雰囲気は信じてられそうだと思っていたし、兄弟子であるハッサンの選択も信じていた。



そしてモンスターと出会ったアリーナがどうしたかというと、怯えるところか一気にモンスターに迫り突きや蹴りの連打で倒した。

「不安を感じる前に、一気に倒したの」

モンスターを倒した後にアリーナはそうトールに言った。
実際に一度相対した事で緊張がほぐれたのだろう。その後は落ちついた様子で戦っていった。

モンスターにあった瞬間、『しっぷうきゃく』による先手とると『あしばらい』で相手の体制を崩し爪による一撃で止めを刺す。
流れるような一連の動きは素人目に見ても見事と言って良かった。何年も修練をしているのは伊達じゃないのだろう。
集団のモンスター相手でも、まずは『おたけび』で相手を怯ませた瞬間に、集団の中に入り込み『まわりげり』で周囲にダメージを与え、その後確固撃破で倒していった。
今まで習った事を確かめるようにアリーナは戦った。

アリーナの戦い方を見て、トールは修練の効果というものを垣間見た。突きや蹴りなどの攻撃から特技への繋ぎ方が非常にスムーズだ。
ヒュンケルは修練と特技のイメージトレーニングをすることによって、次第に特技も自然に使えるようになるといわれたが、未だに一々集中しなくては使えない。やはり要修練といったところだろう。

この日は3階へ降りる階段室まで行き、それ以上進まなかった。
確かにアリーナは今まで修練してきたため強かったが、レベルが低いため体力が心許ない事に変わりはなかった。
3階以降は少しだけ厄介なモンスターも増えてくる。
そのため一度この辺りでレベル上げをする事にしたのだ。
こうしてアリーナとの迷宮探索一日目は終わった。


****


アリーナと分かれた後、トールはハッサンを探しに街へ出た。
やはり一言ぐらいは言いたい事もあった。
根本的な解決にはならないだろうが、心の安息を得ることぐらいは出来るかもしれない。
ルイーダに聞くと、心当たりのある場所を教えてくれた。
夜の酒場は昼には感じさせない雰囲気があった。酒場から漏れる明かりや男女の声、トールには分からぬ事ばかりだった。
まだ15の少年でしかないトールには入りづらく、一瞬このまま帰ってしまおうかとも思ったが、一度ハッサンと話さない事には気がすまない。
それに明日もアリーナと一緒に迷宮に潜るのだ。変なわだかまりを持っていては、もしもの時に困る。
もっとも今日の様子を見れば、そのもしもの時はないように思えるが、それでも一日の大半を一緒に過ごすのなら気まずい雰囲気でいたくはない。
意を決して扉を開け酒場に入る。
中は熱気と酒気と喧騒に満ちていた。
一度ぐるりと酒場を見回したところ、目的の人物、ハッサンは見つかった。戦士風の男とテーブルを囲んでいた。

「ハッサンさん」

テーブルに近づきトールは声をかけた。振り向いたハッサンはトールの顔を見て一瞬顔をしかめると、深く息を吐いた。

「言いたい事は多々あるかもしれんが、まずは座ろう」

少し肩を落としたようにしながらハッサンは言った。

「俺は席を外した方がいいかな」

トールとハッサンの顔を見てから戦士風の男が言う。

「そうだな。悪い」

「いいさ」

それだけ言うと、戦士風の男はグラスを持って席を立つとカウンターの方へ歩いていった。

トールはそれを見届けてからは席に着く。すぐに話が終わる世は思えなかったし、ウエイトレスがチラチラとこちらを見ているのも気になったからだ。

「今日の迷宮の報告に来てくれたって訳でもないんだろうな。その様子だと」

「ええ、ちょっと聞きたい事が出来たんで来ました」

それだけ聞くとハッサンは大きくため息をついた。

「こちらから少し聞きたいが、事情はどのぐらいまで知っている」

「殆ど知りませんよ。ただ彼女が自己紹介のときに性まで言いかけました。それで何となくは察しがつきました」

「そうか」

再びハッサンはため息をついた。

「まあ、言い訳にもならんし、詳しく話すわけにもいかんが、トールの察しの通りアリーナは所謂やんごとない身分という奴だ。言わなかったのはその方が都合が良かったからだ。身分なんかで身構えられるのは、アリーナが嫌う事の一つでな。知らないなら、普通に接するだろう。だからそうした。本来ならアリーナも普通に自己紹介するはずだったんだがなあ。長くなっても一週間程度だからそれで済ますつもりだった。あいつは変に馬鹿正直なところがあるから、てんぱったかなあ。まあ、これがこちらの理由だな」

「……一言ぐらいは言って欲しかったですね」

「何となく匂わせるような事は言ったつもりなんだが……これはこっちの勝手な言い分だな。ただあいつの身分の事で迷惑をかける気がなかったのは本当だ。最初俺がトールと会った時にいた言葉を覚えてるか。冒険者を名乗る以上、冒険者は自分の行いに自己責任をもつ義務がある。これはアリーナにも当てはまる。何かあってもそれは全てアリーナが自分で選択した事だ。アリーナには冒険者にならずとも生きていける場所があった。それを捨てて冒険者である事を選んだ。誰かに文句を言えることじゃない。ここまで言ったからにはついでに言っておくが、今回の事も本来ならアリーナ一人でやらせるつもりだった。だけどアリーナのお付の爺さんが心配性でな、慣れるまでは誰かそばについていて欲しいって頭を下げるモンでなあ。世話になってることもあるし、気持ちが分からないでもないから……」

「僕に依頼をしたってわけですか」

「そうだ。まあ、逆の立場なら気分が悪く感じるのも分かる。ただ知らない方が自然に接する事ができると思ったんだ。普通に気軽に付き合える知り合いの一人でも紹介したかったっていうのもあるかな。だが、確かにこれはこっちの落ち度だな。悪かった、すまない」

ハッサンはトールに頭を下げる。
こうなると、トールはまるで自分の方が悪い事をしたように感じてしまう。確かにハッサンが何かを隠しているであろう事は感づいていた。
それなのに依頼を受けたのはトール自身の判断だ。今になって文句を言いに来た事を恥ずかしく思ってしまった。

「いえ、いいです。理由は分かりましたから」

「そうか。それでどうする?」

「どうするって、何がです?」

「この依頼だ。本当の事を知っていたら依頼を受けなかったってことも考えられる。もし無理なら今からでも断ってくれて良いぞ」

「……いえ、続けますよ。理由は如何あれ受けるの決めたのは僕ですから」

アリーナが武術に対して真剣に取り組んでいるであろう事、そしてアリーナ自身が良い子なのは、この半日ほどの付き合いしかトールにもよく分かっていた。

「そうか。そう言ってくれるとこちらも助かるよ。ところでもう晩飯は食ったのか」

「いえ、とりあえず話が聞きたくて、迷宮出てからルイーダさんにいそうな場所聞いて直ぐにここに来ましたから」

「そうか。じゃあ迷惑料代わりにここを奢るから、何か食ってけよ」

ハッサンはホッとしたような笑みを浮かべながら言うのだった。


****


その後もアリーナとの探索は何の問題なく続いた。その関係も何事もなく穏かなものだ。
迷宮を案内し、アリーナが傷つけば時には回復をする。

「こんな傷大した事ないのに」

少しすねたようにアリーナが言う。実際戦うのに影響はないだろう。アリーナにしてみれば特別扱いされているようで嫌なのだろう。
ただトールにしてみれば、どんな傷であれ女の子に傷がつくのを見るのは、あまり良い気がしない。

「女の子の顔に傷がついたままっていうのもね」

トールがアリーナに『ホイミ』をかける理由の大半はこれになるだろう。
自分以外の他人が傷ついているのを見るのは、精神的にきつい。女の子なら尚更だ。
初日こそ相手の殆どがスライムやドラキーといったモンスターだったため大した傷も負わなかったが、二日目以降になるとモンスターからの攻撃を受け、傷を負うようになっていった。

アリーナは強い。それはトールも認めるところだ。
レベルで勝るが、実際に戦った時に自分が確実勝てると言える自信がトールにはなかった。技術的な差、そして数年に及ぶアリーナの修練と一月にも満たないトールの修練の差がそこにはあった。
勝とうとするならレベルによる体力の差で持久戦に持ち込むしかないだろうとトールは思う。

それでもアリーナが女の子である事に変わりはない。冒険者を女の子扱いするのは侮辱していると捉えられても仕方がないことかもしれないが、この辺りの頭の切り替えが今のトールには出来なかった。

トールに『ホイミ』をかけられたアリーナは軽く頬を染めるが、迷宮の薄暗さがトールにそれを気づかせなかった。

「……ありがと」

「どういたしまして」

ポツリと呟いたアリーナにトールは答えた。



初めは見ているだけで楽だと思っていたが、実際の戦闘で見ているだけというのは辛い。アリーナがモンスターの集団と戦う時は特にそう感じる。
初めは心配して心臓に悪かったが、ある程度アリーナの実力が分かってからは手持ちぶさたを感じるようになる。
戦闘に加わるわけにも行かない。どうしようもない場合を除いて戦うのをアリーナに任せるのが依頼の一つでもある。
かといって避けているばかりもつまらない。戦わず邪魔にもならずに何か出来ることはないのだろうか。
答えは『ぬすむ』をする、だ。
勿論アリーナに気をかけるのが一番だが、それでも時折モンスター相手に『ぬすむ』をしていった。
レベルアップして『きようさ』や『すばやさ』の能力値が上がったのおかげか、スキルが上がったおかげか、若干前よりも『ぬすむ』がし易くなっているような気がした。もっとも気のせいなのかもしれない。

それでも成果があったのは事実だ。
やくそう:15、スライムゼリー:1、毒消し草:6、まんげつそう:2、せいすい:3。
これらのものを手に入れる事が出来た。

手に入れたアイテムはアリーナと折半する事にした。
『ぬすむ』を落ちついて出来たのは、アリーナ本人にその気はなかったとはいえアリーナが囮のような役割をしてくれた事が大きかった。

アリーナとの迷宮探索はこのようにして概ね問題なく進んでいった。


****


特に問題なく探索も進み、後は5階の探索だけになった。
多少のレベル上げをするにしても今日明日中に探索も終わるだろう。
いつもどおり待ち合わせの迷宮の入り口でアリーナを待っていると、「おまたせ」という声が聞こえた。
ただいつもの明るい声じゃなく、何処となく不機嫌そうに感じる声。そちらに顔を向けるとそこにはアリーナだけでなく、二人の若い男がいた。

男は二人ともトールには見覚えがある顔だった。
一人はアリーナと関わり深く、緑の神官服に背の高い帽子をしている生真面目そうな男、クリフトだった。
もう一人は赤いスーツに銀の髪、腰にはレイピアがあり軽薄そうな感じの男、ククールだ。

何事が起こったのか。トールは呆然と見つめるしかなかった。




――― ステータス ―――

トール  おとこ
レベル:14
職:盗賊
HP:80
MP:41
ちから:36
すばやさ:31+10(+10%)
みのまもり:16
きようさ:42+15+20(+10%)
みりょく:26
こうげき魔力:17
かいふく魔力:21
うん:25
こうげき力:78
しゅび力:39

言語スキル:2(会話、読解、筆記)【熟練度:50】
盗賊スキル:3(索敵能力UP、常時すばやさ+10、ぬすむ、器用さ+20、リレミト)【熟練度:36】
剣スキル:4(剣装備時攻撃力+5、ドラゴン斬り、メタル斬り、剣装備時攻撃力+10)【熟練度:98】
ゆうきスキル:2(自動レベルアップ、ホイミ、デイン)【熟練度:94】

特殊技能:闘気法(オーラブレード、ためる)


経験値:10286

所持金:2574G

持ち物:やくそう(38個)、毒けし草(21個)、おもいでのすず(5個)、スライムゼリー(1個)、まんげつそう(1個)、せいすい(1個)



――― パーティーステータス ―――
アリーナ  おんな
レベル:7
職:武闘家

・装備品
頭:ヘアーバンド(守+2、攻魔+2) / 身体上:たびびとのふく(守+4) / 身体下:けいこぎズボン(守+5) / 手:皮のてぶくろ(守+2、器+15) / 足:皮のブーツ(守+2) / アクセサリー:竜のうろこ(守+5) / 武器:鉄の爪(攻+17) 

HP:41
MP:0
攻撃力:45
防御力:41

武闘家スキル:2(おたけび、常時すばやさ+5、常時ちから+10)
素手スキル:6(未装備時攻撃力+10、あしばらい、しっぷうきゃく、素手時の会心率アップ、きゅうしょづき、まわしげり)
爪スキル:3(爪装備時攻撃力+5、ウイングブロウ、裂鋼拳)
オーラスキル:1(自動レベルアップ、常時みりょく+10)

特殊技能:武神流(ためる、波動拳)




――― あとがき ―――

ひきが前回と似たようになってしまいましたが今回はここまでです。


スキルでの特技・呪文の習得のことで一つ説明不足を補足します。
基本的に『すばやさ+5』という付加能力や『ぬすむ』といった特技は、スキルが上がる時に一つ覚えれるか、全く覚えれず呪文を覚えるのだが、呪文を覚えるのは一つだけとは限らず同時に2つや3つ覚えれたり、付加能力や特技を覚えた時に一緒に覚える事もある。

特殊能力は、トールの『闘気法』やアリーナの『武神流』のように修練によって身につけたものをいいます。例えば教会の司祭達が、職の僧侶にならずに修練によって『ホイミ』を身につけた場合は、『ホイミ』は特殊能力になります。


それでは、また会いましょう。


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