(なんっじゃコレ!?え、ちょ!?体縮んでる?いや、コレは俺がガキの頃の体系じゃねぇか?)
小学生当時の体系がチビでガリガリだったためコンプレックスを抱いてた俺はあのときの姿をいまだに覚えているためすぐに理解した
(・・・大体小学校の低学年位だなこの姿・・・ってことは6,7歳か・・・道理で目がよくなってるわけだわ)
俺は小学校の高学年に上がる頃には既に目が悪くなりだしていたので、それより以前なのは確定だ
そんなことを考えながらも意外と冷静な思考をしているが、傍から見れば茫然自失なように見える感じの俺を追ってオッサンと少年は部屋に入ってきた
「キミ!?大丈夫かね!?どうしたというんだ・・・突然大声を上げて・・・」
「え、あ・・・大丈夫っす」
ここで騒いでいてもしょうがない。ここは流れに身を任せたほうが懸命だなと意外とあっさり俺はこの事実を受け入れることにした
「ふむ・・・ならいいのだが・・・おっと、これは君のものだろう?それから君の名前は?それと両親はどうしたのだ?」
「あ、どうもっす・・・えっと俺の名前は武藤大河です。あと両親は居ないっす。一人っすよ」
パパスは俺のカバンを差し出しながら聞いてきたので、俺も礼を言いながらすごすごと受け取ることにしたのだが、質問に答えたらなぜか場の空気が冷めたような気がしたのでオッサンの顔をそーっと伺ってみた
するとなにやら悲しそうな顔をして俺を見ていたため、自分は何か変なこといったのかと不思議に思うのだった
(ムトウタイガ・・・変わった名前だ。どこかの国の民俗か・・・服装も変わっている・・・。しかしやはり難民のようだな。本人に確認するのは酷だろう・・・こんな小さい子供が一人で・・・早くこの世界に平穏を取り戻さねば・・・)
「・・・そうか、私の名前はパパスという旅の者だ。そしてこの子は息子のリュカという」
少年はオッサンに紹介されて嬉しそうにに挨拶をしてたが、そんなことよりも俺はパパスという名前を聞いて一人驚愕を隠せないで居た
(パパスってあれか!?ドラクエⅤの主人公の親っさんじゃねぇか!?ヒゲとか服装とかのポイントはソフトのジャケ通りだけど、実際実物を見てみるとリアルすぎてまた渋いというか趣があると言うかなんと言うか妙な感じだ・・・パッケージの顔がパパスってイメージがあるだけに余計に・・・)
そして少年改めリュカへとすーっと視線を移す
(・・・パパスと同じでところどころのポイントはドラクエⅤの主人公だ。髪型とか服装とか雰囲気は・・・だがリアルになるとやはり美が付く少年だな。将来はイケメン確定だな~・・・それにしてもこの部屋のレイアウトといいパパスといい・・・ここはドラクエⅤの最初の船の中だな・・・)
辺りをきょろきょろと見回す。改めて見ると、どうみてもやっぱりドラクエⅤの最初の船の中だということを実感した。
(・・・ということは俺が夢にまで見た剣と魔法のファンタジーな世界に突入できたってわけだ。モンスター倒して金稼ぎたい放題だとかレベルアップしたら魔法が使えるようになるとか、誰でも一度は夢見たことがあるような妄想を実現できたってことだよな・・・ウヒョヒョヒョヒョ♪)
「アハハ、どうしたの?うれしそうな顔してー」
「ああ、いや、なんでもないよ。」
「そうなの?よろしくね、タイガ君!」
屈託のなく笑いながら気軽に話しかけてくるリュカは子供特有の憎たらしさを全く感じない不思議。近所のクソガキ共も見習って欲しいくらいだな。それにしてもこの雰囲気と笑顔。何より深く暖かい目を見ると心が和む・・・モンスターが仲間になるのも頷けるな
「あ、俺のことはタイガでいいぞ。同じ位の歳みたいだし。俺もリュカって呼んでいいか?」
(確かゲームでビアンカが6歳とかいってたしな。それに22歳なんて言えん・・・どう見ても子供です。本当にありがとうございました。)
「うん、いいよー。あ、でもボクはタイガ君って呼ぶよー」
「そうか?じゃあ、俺もよろしくなー」
「うんー。タイガ君ってボクと同じぐらいって言ったけど、なんとなくお兄ちゃんって感じがするんだよね。なんでだろう?」
子供の癖にやるじゃないかボーイ・・・。まあ俺一人っ子だったしお兄ちゃんって慕われるってのも悪くないなとまんざらでもない俺であった
(ふむ・・・普段は大人しいリュカがこんなに早く打ち解けるとはな・・・それにこのタイガという少年も落ち着いた雰囲気をしているが、どうやら悪い子でもなさそうだ。)
「ところでタイガ君。君は一人でこの船に乗り込んだみたいだが、行き先はあるのかい?」
「あ、いえ。それが・・・」
さすがに旅の扉っぽい渦に手を突っ込んで気づいたらここに居たなんて言ったところで、誰にも信じちゃもらえないだろうと思い言葉を濁すことにしたのだった
「ふむ・・・それならばどうだろうか?私達はもうすぐで付く港で降りてサンタローズという村に行くのだが、よかったらうちに来ないか?」
「えっと・・・それは悪いような気もするんですが・・・?」
(それに日本じゃまずこんなことありえないしな・・・)
「あ、それがいいよお父さん!ボクもっとタイガ君と色々お話したいし!」
「ははは!子供が遠慮なんてするんじゃない。子供が一人や二人増えるくらい大したことではないぞ?それに船を下りたとしても周りはモンスターが出るため子供が一人歩きするには危険が多すぎる」
「はあ・・・」
「そしてなにより私達親子は旅をしていてな。各地を転々としているため長く一箇所に留まるということがないのだ」
「はぁ・・・」
「リュカもせっかく仲良くなった子がいてもすぐに分かれることになってな・・・この子にはいつも寂しい思いをさせている」
リュカが寂しそうな顔でしゅんとうなだれている。パパスはリュカに申し訳なさそうな顔をすると俺に向き直り、話を続けていった
「それでキミさえよければリュカの友達になってやって欲しい。一応私達はそのサンタローズの村でしばらく腰を下ろすつもりなのでな。・・・どうだろうか?」
「いや~・・・確かに行く宛てはありませんし、リュカ君と友達になることにも問題ありません・・・ですがお邪魔していいんですかね?」
チラッと横を見るとリュカうれしそうな顔をすると俺を上目使いで「一緒に行こうよ~・・・」といった感じで俺を見ている
ああ・・・その目はやめてお願い・・・俺が悪いことしてる気分になるぅぅぅぅ!!!!と心の中で悶絶していた
「タイガ君・・・一緒に行こうよ~・・・」
「リュカもこう言っていることだし・・・どうだろうか?」
(こっちとしては体もこんなだし非常に助かるしなぁ・・・ってあああ・・・こんなこと考えてる間にリュカの目がだんだんウルウルしてきてるもうダメだ!ままよ!)
「あ~・・・じゃあ・・・よろしくお願いします!」
「!やったぁ~!!!」
おお、リュカが喜んでる・・・頷いてよかったかもしれん。あの目は反則だと思うよ君。
「そうか、ではリュカと仲良くしてやってくれ」
パパスはニカッと笑った。丁度その時外から声が聞こえたので俺達は耳を傾けた
---港に着いたぞー!イカリを下ろせー!帆をたためろー!---
(お?港に着いたのか?)
「ふむ、ビスタ港に着いたようだな。村に戻るのはほぼ2年ぶりだ。リュカはまだ小さかったから覚えていないだろう?」
「ん~・・・あんまり覚えてないけど、早くサンチョに会いたいな~」
(サンチョってトルネコみたいなオッサンだったよな確か・・・リアルだとどんなんなんだろうな)
「そうか、サンチョも喜ぶぞ。ではいくとするか!」
パパスは立ち上がり部屋を出て行ったので俺とリュカは一緒に部屋を出て階段を上り船上に出た
階段を上った先目の前に広がったのは一面の蒼。海の表面が太陽の光を反射し、キラキラと輝いていた
「すごい・・・空と海が綺麗だ。そして何より空気が違う・・・」
「うん!すごく綺麗だよね~」
俺は自分のいた世界とはまるで違う光景に驚き、思ったままの感想を口にしていたのだった。すると隣で俺の言葉を聴いていたリュカは俺の感想に嬉しそうに同意を示していた
先に外に出ていたパパスは船長と話をしていたので、リュカと一緒にパパスの元へと駆け寄った
「では船長世話になったな・・・おや?どなたか船に乗り込まれるようだな?」
「おお!ルドマンさま。お待たせいたしました!」
なんか知らんがどえらいカッコのオッサンが船へと乗り込んできた
(アレがルドマンか・・・なんていうか大富豪!って感じのオーラが出てるな・・・)
「これは旅のお方、お先に失礼いたしますよ。ご苦労だったな船長」
「お帰りなさいませルドマン様!そのご様子では今回の旅はすばらしいものだったようですな」
「もちろんだよ船長。さぁ、わしの娘を紹介しよう!フローラや。こっちへ上がっておいで」
ルドマンのオッサンが呼ぶと、青く綺麗な髪と優しそうな目をしていて胸元にピンクのリボンの付いた白いワンピースを着た少女フローラ
フローラは船に上がろうとするがなかなか入口が高いのだろう。船に乗り込むことができないでいた
(アレがフローラか・・・お嬢様オーラがでてる・・・それにしても幼女の状態でこれだ。後15年もすればめちゃくちゃ美人になるな・・・PS2ではここでちゃっかり出てくるのか・・・。)
「おや?フローラにはこの入口は高すぎたかな?」
船に上がろうとぴょこぴょこ飛んでがんばっている姿が微笑ましく見えた俺はなぜだか知らんが、保護欲を書き立てられた
(・・・いっちょ助けますかね)
「どれ私が「大丈夫?手貸して?」・・・お?」
「あ・・・」
パパスを横目に俺は入口にいるフローラに駆け寄ると手を差し出した。するとフローラは少し驚きながらも、おずおずと俺の手をとった
「引っ張るよ?よっこいせっと!!」
「あ、ありがとう・・・」
「おお、ありがとうよ少年」
「うむうむ」
フローラは船上に上がると恥ずかしそうにお礼を言ったので俺はニカっと笑った。そんな様子を見ていたルドマンのオッサンは俺の頭を撫で、パパスのオッサンもニコニコしながら頷きながら感心しているようだった
「よしよし。フローラや。長旅で疲れたろう・・・。君、悪いがフローラを奥の部屋に連れて行ってやってくれ」
「は、はいぃ!」
(・・・確かあの先ってSFCじゃなんもなかったよな・・・PS2になって変わったのかな?)
ルドマンのオッサンは近くにいた船員に声をかけると、船員は恐縮した感じでフローラを部屋に連れて行った
SFCではフローラが少女姿で出てこなかったこともあるが、フローラの行った先の部屋がどんな風になっているのかが気になった。さすがに金持ちの所有物らしき人の部屋に突貫するのも気が引けたのでフローラに声を掛けてみることにする
「あ、ねぇ?君?」
「あ・・・はい?」
(・・・ん?なんか顔が暗いな・・・どうしたんだろ?)
「なんか暗い顔してるけどどしたの?」
俺の質問に気がついたのだろう。部屋に向かおうとするフローラは振り返り、俯きながらポソポソと話し出した
「・・・私、お父様の言いつけで修道院に行くことになるのだけど、今回はその修道院の下見に行ってきたの」
「うんうん。それで?」
「・・・それで私はお父様やお母様の元を離れて暮らすのが不安で・・・できれば修道院になんて行きたくないの・・・」
(・・・ふ~む・・・確かにこのくらいの歳で親元を離れて一人で知らないところで生活するのはきついかもなー。まだまだ甘えたい盛りだろうし・・・でもルドマンのオッサンみたいな大富豪からすると早いうちからの花嫁修業ってのもあるんだろうなー・・・)
漠然とそんなことを考えていたが体は子供、頭脳は大人な俺は元気付けるためにひとつ話をすることにした
「なるほどね。お父さんやお母さんから離れて生活するのは不安かもしれないな・・・。でも確かに最初は寂しいかもしれないけど周りの人たちは、きっと君に優しくしてくれると思うぞ?」
「そうかしら・・・」
「まあ、つらいこともあるかもしれないけど、それでもそこで学ぶことは決して後悔することのない経験になると思うよ?」
俺自身こんな結論が浮かぶようになったのはつい最近のことだ。するとリュカが突然俺の横からひょっこり顔を出した
「うん・・・一人はやっぱり寂しいよね?でもボクはどんなことも必ず意味があることだと思うんだ」
「意味・・・ですか?」
「うん。だから修道院に行ってがんばってみるっていうのも一つの道なんじゃないかなとボクは思うよー?」
(ほー、リュカは天然培養の子供のはずなのに考え方が違うな・・・パパスから色々学んでんだろうな・・・一応一国の王子だし?)
リュカの言葉を聞いたフローラは顔を上げる。なにやらつき物が落ちたような晴れやかな顔をしていた
「うん・・・そうかもしれない。・・・うん。そうですよね・・・寂しいかもしれないけど、がんばってみる!お父様も何かお考えがあってのことかもしれないし」
そうしてフローラはにこりと笑ったのを見て俺とリュカもつられるようにしてにこりと笑った
「それにしても・・・ふふっ、あなたどうしてそんなにぶかぶかな服を着ているの?」
「あ~いや、これはちょっと理由があってねぇ・・・」
俺が苦笑いをしながら答えるとフローラは上品に口に手を押さえくすくすとおかしそうに笑っている
「ふふっ、そういえばあなた達のお名前はなんていうのかしら?」
「あぁ、俺はタイガって言うんだ。よろしく」
「ボクはリュカだよー」
「タイガさんとリュカさんっていうのね?私はフローラっていいます。よろしくね?・・・」
「おーい!リュカー。タイガ君ー?」
そんな風にお互い自己紹介をしているとパパスが呼ぶ声が聞こえてきたのだった
「あ・・・」
「お?リュカ、パパスさんが呼んでるしそろそろいくか」
「そうだね。お父さんを待たせるわけにはいかないし・・・」
「それじゃあ、フローラ。元気でな!」
「またね!フローラちゃん!」
「はい・・・また会えるといいですね」
俺達がパパスの元に向かおうとするとフローラはにこりと笑いながらも名残惜しそうに手を振った
「おまたせっす。パパスさん」
「あの子と話していたのかい?・・・リュカ。忘れ物はないか?タンスの中も調べたか?」
「うん!」
「うむ。タイガ君は大丈夫かね?」
「大丈夫っす!もともと荷物はこのカバンだけですしね」
俺は自分のボディバッグをパンパンと叩く
「そうか。それではいくとするか!」
「旅のお方、道中お気をつけて!」
とルドマンのオッサンや船長の見送りを背にし港へと降り立ったのである
つづく
あとがき
今回は非常に長い文になってしまいました
ちなみに4話も結構長いですごめんなさい見捨てないでおねがいします(゜∀。)