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No.10157の一覧
[0] 好む好まざるに関わらず(DQⅡ)[ラップ](2009/07/10 01:09)
[1] 第一章  始まり始まり[ラップ](2010/09/25 23:41)
[2] 第二章  いい日旅立ち[ラップ](2010/09/25 23:41)
[3] 第三章  財布が軽ければ心は重い[ラップ](2010/09/25 23:41)
[4] 第四章  サマルトリア家の人々[ラップ](2010/09/25 23:41)
[5] 第五章  未だ遙かなる旅路[ラップ](2010/09/25 23:41)
[6] 第六章  戦う理由[ラップ](2010/09/25 23:41)
[7] 第七章  初めての強敵[ラップ](2010/09/25 23:41)
[8] 第八章  高嶺の花[ラップ](2010/09/25 23:41)
[9] 第九章  積み重ねしもの[ラップ](2010/09/25 23:41)
[10] 第十章  廃墟の中は[ラップ](2010/09/25 23:41)
[11] 第十一章  荒城の月[ラップ](2010/09/25 23:42)
[12] 第十二章  鏡よ鏡[ラップ](2010/09/25 23:42)
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[10157] 第七章  初めての強敵
Name: ラップ◆f49dce11 ID:9605e67f 前を表示する / 次を表示する
Date: 2010/09/25 23:41
「あー、死ぬかと思った」
「生きているって素晴らしい!」
 ベッドに倒れ込んだ俺達は揃って安堵の表情を浮かべたまま眠りの世界へと堕ちていった。


****************************************


「くそっ! マイル、そいつらは頼んだぞ!」
「はっ、はい! “炎よ、我が敵を焼き尽くせ” 【ギラ】!」
 マイルの指先から放たれた呪文によって、夜空を舞うタホドラキーが炎に包まれる。
 耳障りな断末魔を挙げ、地面へ墜ちた後も炎はモンスターの体を糧に燃え上がり、目前の敵の姿を鮮明に照らし出す。
 俺の前に立ちはだかる敵の名はマンドリル。
 生半可な攻撃ではあの分厚い毛皮の前に歯が立たず、あの丸太のように太い腕から繰り出される一撃で、肋骨が二、三本折れたらしく息をする度に痛みが奔る。
 痛みで集中力が削がれ、長期戦になればなるほど不利になるのは間違いない。ただでさえ先程の断末魔を聞き付けた新手のモンスターが、いつ現れるか分からないのだ。
 痛みを悟られぬよう、マンドリルを見据える。
 こちらも手傷を負ったが、相手も無傷ではない。致命傷とは行かないまでも、大猿の巨体の所々が赤く血塗られ、怒りで瞳を濁らせている。
「どうやらそっちも同じ考えか」
 唸りを上げて迫り来るマンドリルの腕を潜り抜けると、がら空きの脇腹を切り上げる。
 そして、間髪入れず切っ先をマンドリルに深々と突き刺した。
「ガアアァァッ!!!」
 雄叫びを上げるマンドリルの鮮血で視界が赤一色に染められるが、それを意に介している余裕は今の俺にはない。
 このまま一気にトドメを刺すべく、渾身の力を銅の剣に込めようとした瞬間、脇腹を今まで以上の激痛が襲った。
「ぐっ!」
 痛みによって柄を握る力が緩んでしまった俺は、マンドリルの怪力によって振り払われ、大地へと叩き付けられる。
「ガハッ!!」
 全身を襲う衝撃で、肺から空気が押し出される。
 歯を食いしばり、何とか体を起こすが、それが限界だった。これ以上は無理だと体が悲鳴を上げる。
 立ち向かおうにも、武器はマンドリルに刺さったまま。
 万事休すと思われたその時、聞き覚えのある声が辺りに木霊する。
「【ギラ】!」
 力ある言葉と共に放たれた火球がマンドリルの顔面に炸裂した。
「グギャアアアアアアアァァァァッ!!!」
 燃え盛る炎を払おうと暴れもがくマンドリルだったが、やがて地へ倒れ伏しピクリとも動かなくなった。
「酷い顔ですね」
「……お前もな」
マイルの肩を借り、何とか立ち上がった俺は周囲を見渡す。
「他のモンスターは?」
「雑魚はアヴィンが大物の相手をしてくれている間に、何とか。それより大丈夫ですか?」
 苦痛に顔を歪めながら、マンドリルの亡骸から銅の剣を引き抜く。
「ああ、何とか。だけど、これ以上の戦闘は勘弁してもらいたいな。マイル、MPはどれだけ残っている?」
 俺の問いに、マイルは申し訳なさそうに首を振る。
「そうか。そうなると一刻も早く街に着かないとマズイな」
 残っていた最後の薬草で傷の手当てを済ませると、俺達はその場から足早に立ち去った。


****************************************


「あ痛たたた……」
 この街に着いて直ぐに宿屋に併設されている診療所での傷の手当てを終え、ベッドに倒れ込んだところまでは覚えているのだが……。
 身体の節々がまだ痛むが、歩けないほどではない。何とかベッドから這い出た俺は、食堂で暢気にお茶を飲むマイルを見付けると、向かいの椅子に腰を下ろし、給仕に向かって食事と飲み物を注文した。
「あれだけの大怪我の後でそんなに食べるつもりなんですか?」
 マイルはそう言って肩をすくめると、給仕に向かってお茶のお代わりを注文する。
「お前の方こそ大丈夫なのか?」
「ええ、お陰様で。僕の傷は軽傷でしたから」
 テーブルに並べられた料理をあらかた片付けると、頃合いを見計らったようにマイルが口を開いた。
「さて、これからどうしましょうか?」
 その言葉に思わずフォークを持つ手が止まる。
「まずはムーンブルク城へ向かう予定でしたが」
「ああ。今のままでは、邪教討伐どころか、連中の本拠地に向う前にあの世行きだ」
 今の俺達には足りないものだらけだ。装備、経験、そして実力。この大陸に渡った俺達は、それをイヤって程思い知らされた。
 城にいた頃、兵士達を相手に腕を磨いてきた。技量にも自信を持っていた。
 だが、モンスターとの戦いは、人間とは勝手が全く違っていた。人間ではあり得ないような角度、距離からの攻撃が繰り出され、武器に頼った人間のとは全く別種の攻撃手段を持つ。
 この大陸に棲まうモンスターは、俺達がどれだけ無謀な冒険に挑もうとしていたのかを教えてくれたのだ。
「……甘く見ていました。蟻やナメクジを圧倒できたから、それが他のモンスターにも通じるわけなんてなかったのに」
 己の未熟さを噛み締める。
「だが、ここで立ち止まっているわけにはいかない。まずは、ここを拠点にして、一から自分を鍛え直す。全てはそれからだ」
「そうですね。今の実力のままでは二進も三進も行きそうにありませんし。それに、この街はリリザと違って、武器や防具の品揃えも豊富ですから、装備を調えることも出来そうですね」
 いつの間にマイルはそんなことを調べたのだろうか。普段のあいつからは考えられない手際の良さだ。
「そうそう。他にも色々と面白い話を聞けましたよ。ムーンブルクについてのこととか」
「ムーンブルク? あの『王女』のことか?」
「いえ、その情報に関しては全く」
残念そうにマイルは首を振る。
「それにしても、いつの間にそこまで調べたんだ? ここに着いたのは昨日の晩だろ」
「何を言ってるんですか? あなたは三日三晩寝てたんですよ。それくらいのことを調べるだけの時間は十分にありましたよ」
 なるほど。それなら起きた時の空腹にも納得がいく。そして、それだけの間、何も食べていなかったのかと思うと、余計にお腹が空いてきた。
「まだ食べるんですか?」
 呆れ顔のマイルを無視し、追加の料理を注文するために給仕を呼ぶ。
 まずは、腹ごしらえ。戦いの準備はその後だ。



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