第0話
「エヴァの世界に入る」
二次小説ではよくある話である。
現実世界から非現実世界に引きずり込まれ、自身がシンジや綾波、アスカになり、自らの置かれた状況に困惑しながらも戦うというのが最も一般的だろうか。
今回自分が体験したのもこれである。異世界に自分が入り、その世界の住人となる。
最初は大いに喜んだ、自分の最も望むことのひとつが現実になったのだから当然である。
しかし、それはあくまでも「最初は」なのだ。
自分がその世界に入って最初に居た場所は、驚くことにシェルターであった。
女子生徒の制服、「特別非常事態」と表示された液晶パネルに書かれた「第三新東京市」の文字から、ここがエヴァの世界であることを理解するのにはさほど時間は掛からなかった。
周辺は第壱中学校の生徒だらけである、クラス単位でこの一角に集まっているのだろう
(オレはトウジなのか?)
そう思い自分の服装を見てみたが、ジャージでは無く普通の制服、男子のようだ。
(じゃあケンスケか?)
顔に手を当てる、メガネは・・・無い。
自分が誰なのかわからず、半ば呆然として少し周りを見渡すと、ケンスケと委員長、そして落ち着きが無く、どこか不安そうなトウジがいた。
(そうか、妹が避難に遅れて・・・)
外では戦闘が続いているらしく、時々爆発音のようなものが聞こえてくる・・・
一旦落ち着いて考えてみる。2年A組の生徒で、ストーリーに顔を出すのはわずか6人。
一人目は碇シンジ、恐らくまだNERV本部でミサトと迷子になっているころだろう。
二人目は綾波レイ、彼女もまた本部である。
三人目は惣流・アスカ・ラングレー、まだ来日すらしていない。
残りの、鈴原トウジ、洞木ヒカリ、相田ケンスケは既にこのシェルター内にいる。
この六人の中にオレは居ない、キャラクターが与えられていないのだ。
この世界でのオレの位置付け・・・それはあろうことか、「同級生A」に過ぎない存在だった。
第0話 終