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No.6108の一覧
[0] 交錯する過去と紅[dami-](2009/01/25 00:15)
[1] 過去と紅 fast piece Ⅰ[dami-](2009/01/25 00:43)
[2] 過去と紅 fast piece Ⅱ[dami-](2009/01/25 00:40)
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[6108] 交錯する過去と紅
Name: dami-◆9efa3c30 ID:1347db99 次を表示する
Date: 2009/01/25 00:15
 本編は再構成される。時は逆行はしない。


 過去と紅 lasting piece

さざ波が僕の足をくすぐる
蒼い風は猛々しく僕の顔をなぜる
汚れ一つ無い空には塵も雲も無く何処までも底抜けている
力が漲る原始の海は数多の命に溢れて何処までも深い
まず形が無くなり、次に存在が解らなくなった
だから、ここには誰もいない
僕はこの世界にただ一人しかいない
世界には僕がただ一人しかいない
僕しかいない
それしか感じられない
感覚の差異も閾値を越えると、興味を失う
究極的には認識できない
ぬーぶらほっほーや
うん。……。うん。。。。僕は一人だ、痛くない
みんな其所にいるのに、何処にもいない
そう信じていたから、その存在は僕にはあまりに奇異に映った

海と空と陸しかないこの星
その浜辺に、その茶色いモノは在った
まぁ、正確な事は解らないのだ
ここで問題となる
(ヒトの業と叡智の結晶だ)
コレはなんだ生物か
何だかむつかしい事を言っておられる気がするし、確かに其所に在るのに気配しか感じられない
存在が希薄で不明瞭だ
明確な意思を感じるコレは、僕らと同じ生物か
(この地であり得ぬ悠久の時を生きたヒトよ、ついに我を認識せしヒトよ)
……。
コイツは胡散臭い。関わらない方がいいと頭で解っていても、そうは問屋はおろしません
言葉を聞いて
(後悔はあるか)
シャッターを無理矢理こじ開けたのは僕の方ではあるけれどね


後悔は、もう無い
本当だよ
あの紅い海が生まれてから果てるまでの途方も無い時間は全てを浄化するに十分すぎる時間だった
遥か昔ならば、あったあったかもしれない。
でも、今の自分は実は嫌いじゃないし、やり直してより良い未来が見えるとは思えない
後悔は無い、在ったとしてもやり直したいわけでは、ない
やり直す事はだってさ、否定じゃ無いか
アレからイマまでの僕の否定じゃ無いか
僕は最善の選択をしてきたんだ
あの頃の僕には、あれが最善だったんだ
より良い選択をして今の自分であれば、後悔など在るはずが無い

はず、なのに……
その言葉に真っ先に飛びついてしまったのはなんでだろうね
さっぱり解らない
……解りたくもない
(もう一度、繰り返すのが怖いのか)
でも、言わせてもらおう
そうさ、認めたくないだけだよ
こんな現実、クソ食らえだ
こんな現状に飽き飽きしているんだよ
どうして、なぜあの時にさ、気づけなかったんだよ
捨てたものはあんなに大きかったのだと

どこにいても天国となる
認識次第で人間は際限なく幸せになれる
あの時失ったどうでもいい大切な物を、僕は取り戻せるのだろうか
手放すのは簡単な、当たり前だと思っていた認識を取り戻せるのだろうか
……そうさ、死にたい、死にたくない、死にたい、死にたくない
どうか、僕に何も知らない無知をください
生まれ変わったら……


「後悔は先に済ませましたよ」
僕は自分の声を久々に聞いた気がした
気づいたら、ソレはもうそこにはいなかった
僕もそこにはいなかった
病室の中
「………」
リアルが目の前にあった
それは真っ白だった
「知らない天井だ……」

どこか懐かしい響きを感じる言葉だと思った
そして、僕と言う意識が上書きされ消えてゆくのが解った
どういう事、だ

「……」
懐かしい女性の声、少し変わった気がする
長い長い夢から醒めたような気分……
「……」

僕はここに生きている
そうだ、あの最終決戦の時、僕はコクピットごと串刺しにされて、生け贄にされて……
長い間別の世界にいたような気がする
夢、か夢なのか夢だったのかな
そう、まぎれも無い夢オチだった。
そして、一気に醒める。

***

「……ただいまです、ミサトさん」
「お帰りなさい。よく頑張ったわね。そして、よく帰ってきてくれたわ」
 言いながら目に涙を溜めるミサトさん。心配かけてごめんなさい。僕は多分もう、迷いません。
「あれから、どうなったのですか」
「……あの時に何が起こっていたのかを知る人はいないわ」
 あの最後のインパクトの時に何が生じていたのかを知る人はいないのだという。国連などの機関は未だに原因や詳細を究明しているらしいが、成果はあまりよくないらしい。
 ミサトさんはここで真剣な表情になる。
「ただね、ゼーレの存在が世界に明らかになったわ。同時に、ネルフと使徒の戦いもね。……まぁ、それからハードな情報戦あらがあったのだけれども、ともかく、安心して。世界はネルフを受け入れ、ゼーレは裁かれることになったわ。今現在も解体やその関係者の処罰が続いている」
 その言葉の意味、重大性を僕はすぐには認識できない。ゼーレが解体?使徒との戦いは……
「使徒はエヴァと使徒はどうなりました」
「使徒はあれから出現していないわ。彼が、最後の使者だったのね」
 彼……僕に殺してくれと言った悲しき使徒。自らを最後の使者と名乗った、……僕の友人。彼は、安息の地を見つけられたのだろうか。
「それと、エヴァは完全に凍結、時期をみて全機が解体される事が決まったわ」
「そうですか……」
 ふと脳裏に、父と母の姿が過った。その時……
「レイ、待ちなさいよ」
 よく響く声が廊下は愚か、病室にまで響き渡る。にわかに外が騒がしくなった。
「先に入るのは私よ」
「貴方、体調不良を理由に早退した。病人は家に帰って休んでいればいい」
「な、何の事よ……。大体、アンタこそヘリをチャーターするなんてやり過ぎよ」
「乗れないからってリニアの出発を数分遅らせた貴方には言われたくないわ」
「権力を傘にリニアを臨時停車させたのはどこのどいつよ」
「さぁ、貴方のよく知っている人じゃないかしら」
「あ、アンタねぇ」
「やっている事は貴方とあまり変わらない」
「確かに言われてみればそうね。って、何いわせるのよ……いいわ、アンタには一度きっちりおとしまえつけてもらたろうか」
「私に勝てると思ってるのね」
 懐かしい声に涙が出てきた。早く顔が見たいと思ったけれども、二人はどうやら当初の目的も忘れて喧嘩を初めてしまったようで扉が開く気配は全くない。まぁ、そのうちお医者さんか誰かが注意するんだろう。
 それにしても、レイもレイだが、アスカもアスカだ。乗り突っ込みなんていつ覚えたんだろう。というか、最後の時代劇じみた言葉は何の影響だろう。使い方を大幅に間違えているような気もする。頭はいいはずなのにどこか着眼点がおかしいんだよなぁ。いや、そもそもリニアやらヘリやら、人様に迷惑をかけた事をこれっぽっちも気にしていないのはどうだろう。
 ……いつの間にあの二人はこんなに仲良くなったのだろう。昔は気づかなかったけれど意外と二人はかみ合っているのかもしれない。
「やるわねぇ、あの二人」
 ミサトさんの顔に苦笑が浮かんだ。ただ、笑みが若干引きつっているのはきっと、気のせいじゃない。多分、事後処理、ご愁傷様……。
「うん、ただいま、だ」
 僕の言葉はミサトさんはよく聞こえなかったようで、首をかしげられた。
 まぁ、そんな独り言などどうでもいい。ミサトさんもそう思ったようで、今度は綺麗に笑った。
 指揮官としての力強い笑みでも、あの時最後に見た儚い笑みでもない。多分、初めて見るこの人のニュートラルの笑み。加持さんが見たかった、全てから解放されたミサトさんがここにいた。
「シンジ君、全て、終わったのよ」
「……はい」
 僕はその言葉の意味を良く咀嚼しながら、ゆっくりと返事を返した。
 窓の外を見ると、桜の花びらがハラハラと散っていた。

 春、全てを始める季節。それが過ぎれば騒々しくも青々しい夏が来るのだろう。
 僕はまだ満足に動かない自分の体を見回して、嬉しくなる。
 騒がしさの様相を変えた外の喧騒(喧嘩の仲裁?)を聞いて、嬉しくなる。
 幸せもあれば絶望もある。ずっと幸せなんてあり得ない。
 でも、僕は今、これ以上無く幸せだと思った。


 幕引きは次の始まりの為にあるのかもしれない。
 だって、僕らは生きている。
 そんな終わらない物語の破片。

 ふと目を閉じると、永遠にも似た蝉の声が聞こえたような気がした。



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