「大事なのはスタイルだ」
「ほむ」
エリちゃん(母さんにこう呼ぶように言われた)もとい母さんをお見舞いに行ったついでに父さんのお見舞いに来てみた。
話の流れをフローチャートで表すと。
父さんって何で母さんの事好きになったの?
↓
惚気話。
↓
母さんみたいなのが好みなんだ?
↓
総合的な外見で言うとそうでもない。
↓
え、じゃあどんなのが好みなの? ←いまここ。
と言った感じ。
と言う訳で僕の目の前では白昼の残月状態の父さんが女の子について語っている。
「ヒロインたるからにはボンキュッボン、たわわに実った果実、でもそれでいて決してデブではない、それを目撃したその瞬間から、顔なんか記憶に残らなくていい、野郎共のスケベな視線は、右に揺れても左に揺れても、縦でも斜めでも常にそこに釘付けになれ、それがヒロイン、ヒロインの持つべきボイン、もとい…」
そして、父さんは徐に窓の外へと遠い眼を向けると、黄昏るように呟いた。
「スタイルと言うやつだ、出るとこ出て締まるとこ締まった、エロい体が良い…」
「そのまんまエリちゃんに言ってくる」
「待て、まず座れ」
病室を出ようとする僕を、父さんは石田並の弾丸タックルで止めてみせた。
動けるならさっさと退院しろと言った僕に対して、父さんはさも当然のようにこう答える。
「病院なら安全だろうが」
それに対するエリちゃんのコメント。
「あら、お医者様の傍にいるなんて、準備がいいのね~」
六分儀ゲンドウに平和が訪れる日は来るのだろうか…
ねえな。
エヴァ、乗ってみました
第四話 人の創りしうんたらかんたら その2
SIDE-リツコ
とりあえず仕事が一段落ついたので、シンジ君お手製のお弁当を食べながらNERV内のネットを巡回する。
あれ、今日は芋の煮っ転がしが入っていない。
…結構好きなのに。
帰ったらリクエストしておこう。
そんな事を考えながらネルふたばを開くと、新スレが立っていた。
【おまいら】NERV職員晒しスレ Part37【仕事スレ←上手い】
【奇人変人】碇シンジヲチスレ Part25【だから何?】
【一家に一台】しんちゃんを愛でるスレ Part106【万能家事職人】
愛でスレ伸びすぎだろ。
Part1出来たの二週間前なのに…
少しNERVの将来が心配になった。
とりあえずヲチスレから開いていく。
12:インド人を右に:ID:?
俺整備班なんだが、さっきシンジ君が真面目な顔で初号機を眺めてたからどうしたのか聞いたら。
「エレクトラ傷だらけにしちゃって申し訳ないなーって思って」
みたいな事言ってたんだが、結局の所シンジ君って本当に初号機と会話出来るのか?未だに気になってる。
17:N2先輩:ID:?
>>12
AT発破事件があるし、ほぼ赤木博士や上層部公認だしな、信憑性があるのは確か
どうでもいいけど、俺もエヴァスラアアアアッシュ!って言ってみたい。
18:陰陽弾:ID:?
>>17
AT発破事件kwsk
19:レイたんは俺の嫁:ID:?
AT発破知らないとか新規さんか?
17が一人でエヴァスラアアアアアッシュ!と叫んだ所を彼女に見られるという絵が目に浮かんだ。
22:N2先輩:ID:?
>>18
ATF展開実験中にシンジ君が突然エヴァと語り始め、最終的に発動したATFにより実験参加者も含め全てを吹き飛ばしたNERVの黒歴史。
と言って分かるか?って黒歴史ではないか、結果としてATFの糸口がつかめたんだしな。
>>19目撃してくれる彼女がいねえよksg
あとレイたんは俺の嫁だし。
26:陰陽弾:ID:?
ああ、把握。
>>22ありがとう。
あとレイたんは俺の嫁だし。
27:いんぱくと!:ID:?
レイたんはシンジ君とセットが一番(*>ω<)
あの二人のセットは見てて癒される(*´Д`*)
28:インド人を右に:ID:?
愛でスレでやれ。
何というカオス…。
職員晒しスレはいつも通り司令の悪口だろうし…愛でスレでも見るか…
そう思って愛でスレを見て…
私はシンジ君の護衛を増やすように進言しようと決めた。
やだ…女って怖い…
まあそんな事は置いておいて。
前回の使徒戦から2週間が経った。
使徒殲滅後突如として倒れたシンジ君も目覚め、今では療養の為エヴァに関する仕事を一切停止している。
今までもエヴァ搭乗後の疲労感等の訴えはあり検査が進められてきたのだが、原因は依然として不明である。
ドイツのセカンドチルドレン、惣流アスカラングレーの場合はエヴァに乗ったところで疲労感の訴えはないらしく、これは碇シンジとエヴァンゲリオン初号機特有の症状だ。
当初はセカンドチルドレンとの違いであるATフィールドに原因があると思われたのだが、ATフィールドをともわない長時間搭乗実験において関係性の無い事が証明されている。
つまりは、原因不明という事だ。
個人的にはシンクロの仕方に問題があるのでは無いかと思っているが…仮説はあまり好きではない。
なにしろ初号機は少々特殊な機体だ、色々な意味で。
という訳でこの後の訓練は原因が判明するまでエヴァへの搭乗を最低限にして進める方向で決定している。
シンジ君はエレクトラと会う機会が少なくなるからと拒否する姿勢を見せたのだが、長時間の説得により渋々ながら納得した。
なんとこの説得を行ったのは意外にもミサトである。
作戦部長であり、パイロットの総監督と言う立場ではあるが、性格と今後の戦闘を考え搭乗時間を少しでも延ばそうとすると思っていたのでこれは少々意外だった。
登場時間の短縮に完全合意の姿勢を見せ、説得の際も命令調でなく真摯に対応していた。
どうやら短期間の内に連続した使徒戦の中で何か思う所があったようだが…
まあ私の意見としては、あまり言いたくないのだが、はっきり言ってシンジ君のエヴァ登場訓練は現段階においてそれ程意味がある事ではない。
ユイさんのサルベージによってシンクロ率が100%へと低下してしまったものの、100%なのである。
400%が理論限界値とされているが、実際の限界値は100%なのだ。
100%の時点でエヴァとのA10神経を介した同調の中に差異が無くなる。
つまりこれ以上の伸びしろが無いという事だ。
では100%を超えるという事はどういう事なのかと言うと、それはつまり同調を通り越して融合の領域に入る。
悪く言えば、侵食。
100%を超えた瞬間、エヴァからの精神汚染が始まり身体的にはLCLとの融和が始まる。
最終的にはパイロットはエヴァに取り込まれてしまう。
分かり易い例が過去実験でエヴァに取り込まれてしまった碇ユイ博士だ。
それを防ぐ為、シンクロ率100%をリミッターとする為のシステムが現段階で採用されているのだが…
シンジ君はこの何百回という実験の末に生れた理論を完全に無視し、エヴァとコア融合者の助力という意味不明な方法によって100%の壁を超えてしまった訳だ。
少し話がずれたが、現実的な観点でのシンクロ率限界値は100%。
つまりシンジ君のシンクロ率での伸びしろはない。
エヴァ搭乗訓練の最大の目的であるシンクロ率の向上が望めない以上、搭乗訓練にそこまで大きな意味はないと言うのが私の考えだ。
戦略的に見てどうなのかはミサトにでも聞かないと専門家でない私には分からないが、元々実験と計測という目的が強かったという訳だ。
まあそんなこんなでお休み中のシンジ君。
普段実験をする度に忙しいの嫌ーと文句を言っているのに、いざ完全に暇になるとやる事が無くて困っているようで、私が面白半分で渡した形而学の本を、以前は拒否していたのだが、先日つまらなそうに眺めていた。
最近では学校からNERVでの訓練までシンジ君と共に行動していたレイが訓練の休憩中に暇そう、と言うよりも寂しそうにしているのが目撃されているらしい(某作戦部長談)。
まあシンジ君がこないので仕方なくはあるのだが、レイも変わったものである。
更に意外なのは、最近のレイの行動だ。
よほど暇なのか、最近NERV開発部所属になった碇はか…おっと、春日博士と一緒にパフェを頬張る光景が目撃されている(某葛城ミサト談)らしく、徐々に交遊関係を拡げているようだ。
まあ一方的に春日博士が喋り続けていたとの事だが、まるでシンジ君とレイを見ているようだったらしい。
…もしシンジ君と春日博士を同時に相手にする事になったらレイは捌ききれるのか?
余談だが、以前マヤが「レ、レイちゃんが自分からこんにちはって挨拶してくれたんですっ!」と言いながら私の部屋に飛び込んで来た事があったが、あれはシンジ君の教育の賜物だ。
しかし…
NERVを代表する非常識が教える常識ってどうよ。
まあいい。
食べ終わった弁当箱を片付けると、仕事を再開する。
最近私は完全に餌付けされてしまったようで、食堂や外食をするという選択肢が一切頭に浮かんで来ない。
そう言えばこの前食堂に行き、日替わりランチを食べる春日博士の前でシンジ君お手製のお弁当を食べた時は気持ちが良かった、生きてて良かった。
一口要求された際、何となくお手をするよう要求した時に伸びてきたNERV女性職員の手の数には若干の恐怖を感じたが…まあいい。
さて、私には山積みになった仕事を終わらせる作業が残っている、それも7時までに。
大丈夫、私の仕事効率は通常の赤木リツコに比べて3倍は早い。
何故急ぐのかと言われれば、それに対する答えはたった一つ。
夕飯に間に合わない。
SIDE-冬月
目を通した書類の内容に思わず米噛を押さえる。
見間違いだろうか。
改めて書類に目を通す。
何時かはこの日が来ると思っていたが、これ程決断が早いとは思わなかった。
「本気かね?」
「あぁ」
私の問いに対してゲンドウは全く動じる事無く言葉を返す。
「ユイが戻ってきた以上、人類補完計画への協力の意味は無い、寧ろ計画自体が邪魔でしかない」
「…はぁ」
「どうした」
「胃が痛くてな」
お前ら親子の所為でな。
「そうか、当面は今迄通りの計画協力の姿勢を進める」
それはつまり、人類補完計画に関するプロジェクトから抜けるという事だ。
「裏で、か」
「あぁ、その為にもセカンドチルドレン徴収に合わせ、彼を呼び戻す」
ドイツのセカンドチルドレン、惣流アスカラングレーといったか。
キョウコ君の娘。
赤木リツコ、碇シンジ、惣流アスカラングレー。
これで日本に東洋の三賢者に連なる者が全て揃う事になる。
そして、碇ユイ。
現世に蘇った魔女すらも。
問題はその全員に若干の…若干の?性格的な欠陥がある点だが…
まあいい。
まだ見ぬセカンドチルドレンはまともな人間だといいな…
しかし、最大の問題はゲンドウの言う彼だ。
加持リョウジ。
諜報員としての腕は確かなものがある。
あから様に怪しく動き回るが、その実本当の目的は悟らせない。
だからこそ、手駒としては最も扱い辛い。
「ゼーレの狗でもあるが?」
「真実を教えてやるさ」
あぁ…胃が痛い…
確かに多少強引な方法を取らなければ計画に立ち向かう事など出来ないのは分かる。
しかし、この男は計画的に見えて根本的に慎重さとは縁のない男なのだ。
「春日、赤木両博士には既に話をしてある」
「その他のメンバーは?」
そうゲンドウに尋ねると、私が持ったままの書類を顎で指してみせた。
ペラペラとページを捲っていくと、メンバーらしき人物の写真と詳細が書かれた項目に行き当たった。
そこには信用のおける保安部メンバーや、先にも名の挙がった加持、赤木博士直属の伊吹・阿賀野等のオペレーター陣。
葛城作戦部長の写真を見た時は驚いた。
しかし当然と言えば当然である。
彼女はある意味使徒に最も近い人物なのだから。
それから先も確保しておきたい人材が名を連ねる。
どうやら興味がないように見えて、ゲンドウはゲンドウなりにNERV職員を観察していたようだ。
「ふむ、妥当だな」
そう納得しかけながら捲ったページ、そこに今までよりも詳細に書かれた人物2人の項目があった。
その2人が誰なのか理解した瞬間、我が目を疑った。
「おい、この二人…ファーストチルドレンは兎も角…本気か?」
「あぁ」
「しかしだな…」
ファーストチルドレン綾波レイ。
我々の計画への参入は当然と言える。
しかしここに書かれているのは計画中枢への参加だ。
あの綾波レイに計画の全貌を説明し、自分の意志で参加の意思を問うと書いてあるのである。
綾波レイに、自分の意志で?
あの綾波レイに?
てっきり強制的に参加させるものだと思っていた。
「彼女に…判断できるか?」
「出来る」
私は正直な所レイの事は分からない。
最近はシンジ君と一緒にいる光景をよく目にする、彼女は変わったという話も耳にする。
だからといって、あの綾波レイに自分で判断させる…
可能とは思えないな。
「どちらにせよ彼女は必要だろう、下手に意思を尊重するよりも命令した方が…」
「レイは…もう私の手を離れた」
そう言ってゲンドウは自嘲気味に笑った。
「いや、元々私の手の内になどいなかったのだがな」
雛鳥はいつか必ず巣立つという訳か。
まあいい。
しかし…
私はもう一人の人物についても問おうかと思ったが、考え直した。
彼が必要だという事は分かりきっている。
完全に理解している。
ただ何というか…
面倒だ…
彼、碇シンジと組むという事が。
「人類補完計画の最重要人物二人だ、計画に反旗を翻す以上、協力無くしてどうして成就できる」
「尤もな話だがね…不安だ」
あぁ…頭が痛い。
今気付いた。
人格破綻者ばかりじゃないか…
「問題ない」
この男は本当にこれから我々が行う事の意味を理解しているのだろうか。
思わず書類を丸め、ゲンドウの頭を叩きながら怒鳴りつける。
「一度でいいから問題児を問題視してみろ馬鹿者!」
計画を叩き潰す、それはゼーレの敵に回るという事。
世界の中核に座し、その全てを操るゼーレを敵に回すという事。
それはつまり。
私達はたった数枚の書類に記されたメンバーと共に。
世界の敵になるという事なのだ。
SIDE-シンジ
卵を落としたらそのまま目玉焼きが出来そうなアスファルトの上を、僕は死人のようにぐにゃぐにゃと歩く。
周りには誰もいない。
まあ平日昼間の住宅街なんてこんなもんだよね。
みんな今頃授業中で、早く帰りたいなーなんて思ってるんだろうか。
レイたんは僕がいない間ちゃんとあいさつとか出来てるかな。
またお昼ご飯に変な薬飲んでたりして…
この時間ならリツコさんはお弁当食べて仕事再開した頃かな。
基本的に平日はニトロとマクロをリツコさんがNERVまで連れていっている。
何かその方が仕事効率が段違いらしい。
そんな事を考えながら、ぼーっと空を見る。
あ、やめやめ。
また戦闘機でも降ってこられたらたまんないや。
「あぁ…暇だなあ…」
思わず呟いて俯く。
怪我による自宅療養で僕が思い知った事。
それは意外と僕って趣味とか無いんだなって事だ。
アニメや漫画を見ようにも大抵の物は見つくしているし。
ゲームはずっとやってたら流石にやり疲れた。
「あついよぉー」
あーもう歩きたくない。
気分転換に外に散歩に出てみたけど、よく考えたら超インドア系男子の僕に日の光を当てるとか刀魔の血刀紋に破魔鎚を打ちこむようなものだ。
死んじゃうよ~。
思わず僕は座り込んで声を上げた。
「飯沼さ~ん、どこ~?乗せてって~暑くて死んじゃうよ~」
一分程何も起きなかったけど、あっちも僕が動くつもりがないと諦めたのか、僕の背後から突然声を発する。
「本来私らは接触しちゃいかんのですが…」
振り向くと、中肉中背のいかにも何処にでもいるサラリーマンのような姿をした男がしかめっ面を浮かべて立っていた。
この人はNERV保安部で僕の護衛を担当してる人の内の一人、飯沼さん。
色々あって存在を知ったので、ある日の夜中に差し入れを渡しにいったら大層驚かれた。
「このまま放っといたら僕死んじゃうでしょ!きんきゅーそちだよ!」
そう言って立つと僕は男の顔を見てにこにこと微笑んだ。
あっちも暫く睨んでいたけど、やがて諦めたのか溜息をついて胸元の通信機にボソボソと呟く。
そして僕の顔を見ると、もう一度溜息をついた。
「…内緒ですよ」
「やったー!」
その言葉と共に曲がり角から現れた車の後部座席に僕は乗り込んだ。
あぁ~冷房が効いてて涼しい。
フヒヒ、温室育ちでサーセン。
僕は、運転席に座っていたもう一人の保安部員、佐竹君に向かって話しかける。
「あ、佐竹君、マルヨシってスーパー分かる?そこ寄ってって、買い物も済ませちゃうから」
「碇さん…あのですね…」
僕の言葉に、また飯沼さんが渋い顔でこちらを見る。
お腹でも減ったのかな。
「今日の差し入れ?何がいいかな?」
「はぁ…」
飯沼さんはまた溜息をついて前を向き直した。
何だったんだろ。
やがて車は動き出して、佐竹君がぼそりと飯沼さんに呟く。
「前から思ってたんすけど、何で僕らの名前知ってるんですかね…」
「知るか」
MAGIって物知りだよね!
内緒だけど。
そのまま車は走り続けて、スーパーマルヨシの通りへと入っていく。
今日は特売のお肉を買って、ハンバーグでも作って…
でも夕飯まで全然時間あるし、う~ん。
下拵えでも凝ってみる?
それしか無いかなぁ。
「あ~」
思わず窓の外を見ながら呟いた。
「暇だなぁ」
普段は一人でも余裕だぜ!って思ってるのに、都合のいい時だけ誰かと居たくなるんだよね、人間って。
あー暇だ。
「何か面白く、且つ僕に全く危険性が無い単発モノのSSみたい事起こらないかなぁ」
思えばこれがフラグだった。
~あとがき~
よし
にちように こうしん できたぞ
本当に申し訳ありませんでした嗚呼嗚呼嗚呼ああ!
忙しかったのもあったんですが、SSを書くくらいの時間は余裕でアリマシタ。
でも全く話が思い浮かばなくて・・・
今話完全に繋ぎの話なので面白みも何もありません。
たぶん後々この回も書き直しになると思われます。
最後に待ってくださった方々、お待たせしたのにこの程度で申し訳ないです。
う~ん・・・
あ、2chネタはモロに元ネタのアニメがあります。
分かったら神を超えた存在だと思いますが。