「気持ち悪い」
とかなんとか言われて茫然自失したのも一年前。
この紅い世界に絶望して自棄になったりもしたが
シンジは今日も生きていた。
「さて」
海を見渡せる丘の上に座ってシンジは今日も思考する。
どうしようか。どうするか。
自分はどうしたいのか。
他人の顔色ばかり窺って過ごしていた日々が懐かしい。
この世界には自分独りしか居ない。
窺いたくても窺えない。
傷付けあってもお互いを感じあえる世界を望んだはずが
還ってきたのは赤い髪の少女だけ。
その彼女も拒絶の言葉と共に生命のスープに消えた。
「やっぱり首を絞めたのがまずかったのかなぁ」
彼女と二人で生きていけた可能性はあったと思う。
しかし、あの時の自分にとって絞首は最大の愛情表現だった。
拒絶は、相手の存在を認める手段なのであると知った直後であったから。
その結果、彼女が消えてしまったのはとても悲しいことだ。