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No.32048の一覧
[0] エヴァちーと【チート・ハーレム・アンチ・多重クロス】[主城](2013/12/29 22:27)
[1] プロローグ[主城](2012/12/15 11:32)
[2] 第壱話 使徒、襲来 Aパート[主城](2012/12/15 11:37)
[3] 第壱話 使徒、襲来 Bパート[主城](2012/12/15 11:44)
[4] 第壱話 使徒、襲来 Cパート[主城](2012/12/15 11:51)
[5] 第弐話 見知らぬ、天井 Aパート[主城](2012/12/15 11:58)
[6] 第弐話 見知らぬ、天井 Bパート[主城](2012/12/15 12:06)
[7] 第参話 鳴らない、電話 Aパート[主城](2012/12/15 12:14)
[8] 第参話 鳴らない、電話 Bパート[主城](2012/12/15 12:25)
[9] 第四話 雨、逃げ出した後[主城](2012/12/15 12:40)
[10] 第伍話 レイ、心のむこうに Aパート[主城](2012/12/15 12:54)
[11] 第伍話 レイ、心のむこうに Bパート[主城](2012/12/15 13:01)
[12] 第六話 決戦、第3新東京市 Aパート[主城](2012/12/15 13:13)
[13] 第六話 決戦、第3新東京市 Bパート[主城](2012/12/15 13:21)
[14] 第六話 決戦、第3新東京市 Cパート[主城](2012/12/15 13:39)
[15] 第七話 人の造りしもの[主城](2012/12/17 13:13)
[16] 第八話 アスカ、来日 Aパート[主城](2012/12/20 09:44)
[17] 第八話 アスカ、来日 Bパート[主城](2012/12/31 23:26)
[18] 第八話 アスカ、来日 Cパート(書きかけ)[主城](2013/12/29 22:25)
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[32048] 第参話 鳴らない、電話 Bパート
Name: 主城◆ce8e3040 ID:99e23a8e 前を表示する / 次を表示する
Date: 2012/12/15 12:25
エヴァちーと 第参話 鳴らない、電話 Bパート[改訂版]


第三新東京市第壱中学校3年A組の教室は、かつて無いほどのギスギス感が張り詰めていた。その原因は先週初めに転校してきた2人(+1人)の可憐な美少女達にある。

現在、この第壱中学では2年A組の転校生『碇シンジ』によるクラスメイトの女子を泣かせ、男子に暴力を振るった事件が問題となっており、犯人(笑)と親しい付き合いをしているアヤカ達もシンジと同じようにクラスで村八分にされてしまっているのである。

また、都合の悪いことに学校にとって『碇シンジ』一派はネルフから特別扱いをするように要請という名の命令、脅迫を受けており、今回の件も先生達は『何も問題は無かった』というスタンスを貫いていた。今回の話を聞いた心ある生徒達が先生に相談に行っても「今は忙しい」とか「すまん、先生は今日耳が聞こえないんだ」とか「じゃあ、なんだ?代わりにお前を退学にすればいいのか?その方が簡単なんだよ」とか「尾○ママにでも電話してろw」と言われる有様だった。

そのため、生徒達の間では先生達への信頼が崩壊、有志の最上級生達が校長室を占拠して事件の真相究明を求める徹底抗戦、所謂立て籠もりを始める始末であった。まあ、先生方はそれを完全無視、彼たちの保護者も自分の子供達の行動に驚き困ったものの、そのほとんどがネルフ関係者であり、『碇シンジ』がどれほど大切な存在なのかもこれでもか!ってほど理解していた。鈴原整備部長の娘さんを助けた恩人でもあり、結局は自分の子供達の方がシンジの事を誤解していると判断した。まあ、弁当くらい届けてやるから気が済んだら家に帰ってこいと、彼らを半ば放置していたのだった。

立て籠もっている生徒達ほど過激ではないが、気持ちとしては第壱中学の全生徒が『碇シンジ』憎しで一致している感じだった。そもそも男子達からすればアヤカ達のような美少女を侍らせているだけでムカつく上に、本人は弱そうなくせに、やたらと物騒なメイドを側に置いて守ってもらっている『卑怯者』にしか見えなかったのである。
女子達もシンジに恋心を抱く生徒は多かったが、それでも第壱中学の『良心』ともいうべき存在の洞木ヒカリをいじめて泣かせたことに関しては許せなかった。

またシンジとは別にアヤカ達も、これまでクラスメイト達とほとんど交流を取ってこなかったのも事態に拍車をかけた。実はアヤカと千鶴は授業そっちのけで内職、つまりお仕事に励んでいて、さらには授業中にいきなり廊下に出て電話をし出すなど態度が悪かった。休み時間にはシンジの教室に行くため、クラスメイト達と交流もない。唯一、夏美だけは普通に授業を受けていたのだが、かわいそうにシンジ達一派に入っていたため、クラスメイトと険悪な感じになると、居づらくなったのか、アーティファクトを使って存在を消し、図書室で授業をサボるようになってしまった。

アヤカ達からすれば、こっちはネルフと生きるか死ぬかの抗争を指揮しているのである。未熟なガキどもにいちいちかかわっている暇などないし、彼らが邪魔をしてこないだけマシだった。そもそも今回の件で悪いのはヒカリとトウジであり、愛するシンジ君は何も悪くはないのだから。


まあ、ともあれ、そんな学級崩壊ならぬ、学校崩壊が巻き起こっている第壱中学に綾波レイは数週間ぶりに戻って来たのである。

「・・・・・・」

レイが教室の中に入ると、クラスメイト達の会話が止まり、一斉にレイを見る。

まあ、クラスメイトの女の子が頭に包帯グルグル巻きで登校してきたら驚くのは仕方が無いのだが、それ以外にもなにやら含むものがあるようなキツイ視線だった。

レイはそんな視線をいつものように一切無視して、自分のデスクに座る。まだシンジは登校してきていないようだった。

するとほどなく「はいはーい、どいてどいてー」とあずみが邪魔な生徒達を押しのけて教室に入ってきた。その後を続いてシンジが中に入ってくる。

「おはよう、綾波さん」

「・・・おはよう、碇君・・・(ポッ)」

クラス分け以来、いままで誰とも挨拶すらしてこなかった綾波レイが、少し頬を赤く染めてシンジに挨拶をした・・・。クラスメイト達は驚愕するとともに「やはり綾波も碇一派だったか・・・」と確信した。

綾波レイはネルフの関係者では無いか?という疑念は以前からあった。

彼女はたびたび学校を早退する、というより長期間休むこともしばしば、体育の授業はいつも見学、でもそれで補修を受けてるような様子も無い。そして先生は彼女に何も言わず特別扱い・・・。

今回、碇シンジが特別扱いを受けるのも『ネルフのパイロット』だからということもあり、ならば同じように特別扱いを受ける綾波レイも『ネルフの関係者』なのではないかと予想されていたのだ。まあ、その予想はまったくもって正しいわけだが。

(あーあー、みんな睨んじゃって・・・困ったなーこんな騒ぎになるとは・・・トウジ達は一体ナニをやってるんだよ・・・)

ケンスケはクラス内の殺気立った雰囲気にげっそりしていた。
ちょっとした冗談でクラスメイトにシンジがヒカリを泣かせ、トウジを昏倒させたんだよ!としゃべったのだが、それが瞬く間に広がり大騒ぎになってしまったのである。

事件の当事者であるトウジとヒカリが昨日休んだことで、真相はヒカリのヒステリーであり、殴りかかったのはトウジの方が先だということを伝える者がいなかったのである。

もちろん、ケンスケが伝えても良いのだが、だいたいコイツはそこまで人間ができていない。シンジに対し暗い劣等感も抱えており、まあいいか、これはこれで面白いし!と黙っていたのだ。さすがに立て籠もり騒ぎが起きたのは予想外だったけれども。

「おはよう・・・」

「おはようさん・・・」

今回の騒動の主役であるトウジとヒカリが二人してコソコソと教室に入ってきた。
二人に注目するクラスメイト達の視線を逃れるようにケンスケの元へ来る。

「おい、ケンスケ・・・なんやこの学校の雰囲気は??」

「うん、一体どうしちゃったの??」

「・・・え?どうしたって、トウジと委員長のせいじゃないか」

「わいたちのせい?どういうこっちゃ?」

「だから、碇に委員長が泣かされて、トウジが暴力を受けてケガをしたことが拗れちゃっているんだよ。昨日なんか一日中大騒ぎだったんだぜ・・・。今でも校長室に上級生の有志が立て籠もっているしさ・・・というか、昨日二人は何やってたんだよ!」

「おおおお・・・そうやったんか・・・べべべべ別にナニもやってないで」

「そそそそ・・・そうなの!わわわわ私たちはナニもへんなことはしてないわ」

「・・・・・・そう・・・・・・」

どう見てもこのできたてほやほやのカップルがナニかをしたのは間違いないようであるが、それを突っ込んで聞くのは童貞カメラ小僧である自分にダメージしかなさそうなので、突っ込んで聞くのは止めた。人の幸せトークなどゴミほどの価値しか無い。そんなものは速攻でゴミ箱に捨てたい。

「で?どうすんのコレ?今から実は自分たちが悪かったんですーって言うのかい」

「・・・いや、まあ、それはそうせんとあかんやろけど・・・」

「・・・うん。でも、まずは先生に話してみようと思うわ。碇君には悪いけど」

「碇は大丈夫だよ・・・毛ほども気にしてない。昨日も何人かの男子が碇をボコりにきたんだけど、あのメイドさんが全員返り討ちにして病院送りにしたしさ・・・」

「ああ、そういや昨日ノゾミちゃんの見舞いに行ったとき、なんや随分救急車が来るなーとは思ったわ・・・あれ、うちの生徒やったんか・・・」

「・・・『睾丸破裂で緊急手術!』とか叫んでいたような・・・」

「ボコリにきた男子と一緒に来てた女子たちもあのメイドに全裸に剥かれてM字開脚で椅子に縛られて校庭に放置されてたし・・・なんかさ、もう、二人が「実は私たちが悪かったんですよね、はは」とか言ってもエライことにしかならないと思うよ」

「・・・いや、それはあのメイドさんがダメなんやないか!」

「そうよ・・・いくらなんでもやりすぎよ・・・」

「・・・信じられないことに、アレでかなり手加減したみたいだったよ・・・碇に言われて渋々「これで許してやるかー」って言ってたし・・・」

「さよか・・・」

トウジとヒカリはもし互いがそのような目にあったとしたら耐えられないと震えた。

まあ、ケンスケ個人としては昨日はなかなかに面白い被写体がたくさん撮れたので、大変有意義な一日だったりしたわけなのだが。

結局トウジとヒカリがこの事態をどうしようかと悩んでいるうちに授業が始まり、あっという間に昼休みになってしまった。そして、昼休みに入ってすぐ、シンジとレイにネルフから緊急招集の連絡が入ったのである。


『総員、第一種戦闘配置』

『了解。対地迎撃準備、用意よし。照準はマギに移管します』

『国連軍より要請があり次第、目標への攻撃を開始する』


「司令が不在の時に第四の使徒襲来か・・・。意外と早かったわね」

「前は15年、今回はたったの2週間とちょと・・・ですからね・・・」

「こちらの都合はお構いなし・・・女性に嫌われるタイプね」

「モテる男は女性に自分の都合を合わさせますからねぇ」

日向はミサトのつぶやきにそう答えた。誰のことかというとシンジのことである。
この2週間、シンジと付き合って、ほとほと彼のプレイボーイぶりには呆れを通り越して尊敬の念を覚えるほどである。

同僚である伊吹マヤが彼に熱を上げてるのはともかく、ネルフに勤めている女性職員のだれもかれもがシンジに夢中であった。パイロット控え室には連日ラブレターや手作りお菓子が届き、担当のカエデがその処理に四苦八苦している有様である。

さらに皆を驚かせたのが、あの『ファーストチルドレン』がシンジに懐き、毎日のように控え室にやってきてはシンジが訓練から戻ってくるのを待っているということだった。

唯一、我が愛する上司であるミサトと技術部長のリツコはシンジと距離を取っていた。
日向ももしミサトが他の女性職員のようにシンジに熱を上げていたら、サードインパクトが起こるのを覚悟の上で、シンジの戦死を願ったかもしれない。

しかし、実のところ男性職員の中でもシンジの評判は案外良かった。

鈴原整備部長を筆頭に保安部長、人事部長の要職3人がシンジを高く評価していたし、保安部の職員達はシンジの類い希なる格闘センスに敬意を持っていた。自分たちの手で世界最強の戦士を作ってやろうと様々な格闘技をシンジに教えていたりしていた。

だいたい、いくらネルフの女性職員が彼に熱をあげたとしても、彼女達は最年少でも22歳、8歳以上も下の未成年の少年に本気になってお付き合いをしたい!などと考える不届き者はいなかったのである(マヤを除く)。あくまでアイドルに熱をあげるミーハー的なものであり、そもそもシンジには雪広と那波という婚約者がいるのである。

それに司令の息子でもあり、高嶺の花。みんなして愛でているだけということである。
男性職員たちもそれはわかっていたので、シンジに嫉妬するという愚かな行為は青葉のような一部を除いては存在しなかったのである。まあ、その一部はすでにとあるメイドさんによって制裁を受けていたわけなのではあるが。

ちらりと日向は隣のロン毛を見た。本人は髪型を変え前髪で隠しているが、綺麗に眉が剃られている。だから、シンジ君に「伊吹には近づかないでくれ」なんて言いに行くんじゃないって止めたのに・・・。そもそも言うんだったらマヤに「目を覚ませ」と言うべきである。


「税金の無駄使いだな・・・」

発令所の正面モニターでは現在、国連軍が使徒に対しミサイル攻撃を続けていた。
無論、使徒にはなんの効果的な影響を及ぼしていないのは明らかであった。

「統合幕僚本部より攻撃の全権をネルフに委任するとの連絡がありました」

「委員会よりエヴァの出撃要請が来ています」

「うるさい奴らね・・・言われなくても出撃させるわよ。リツコ準備できてるわよね」

「ええ、とっくにね」

「ならばよし、エヴァンゲリオン初号機発進!!」


というわけで、ガコン!!と再び長いトンネルを抜けて初号機は射出された。

(・・・また敵の正面に出したよ、あいつ・・・馬鹿なんじゃないのか?いや馬鹿決定だろ?!なんで作戦課長なんてやってるんだ・・・。作戦課のミーティングにも全然出てこないし・・・せっかく、作戦課の人たちといろんな作戦考えたんだけどなぁ・・・今回のようなイカ?みたいな使徒はさすがに考えつかなかったけど、似たようなヤツならあったしさ・・・よし、進言してみるか!)

「ミサトさん、作戦課の作戦ファイルS-18項を開いて下さい。今回の使徒戦における作戦のいい叩き台になるはずです。なんとか時間を稼ぎますので作戦の細部を応変して指示して下さい」

『いいこと、シンジ君?訓練どおり、パレットガンの一斉射よ!』

ガコンと近くの武器保管ビルからパレットガンが飛び出してくる。

(あれ?聞こえてないのかな?なんか前もスルーされた記憶があるんだけど・・・)

「日向さん!S-18です。一緒に考えたじゃないですか!僕が初号機で接近して使徒のATフィールドを中和しますから、Cブロックの兵装ビルから使徒のコア目がけて貫通ミサイルを一斉に撃って下さい!!それでコアが破壊されれば良し、ダメの場合はプログ・ナイフで怯んだ使徒へトドメを刺します!!周辺への影響はなんとか僕のATフィールドで防ぎますから心配いりません。タイミングは任せますよ!!」

「・・・・・・(すまん・・・シンジ君)」

「さぁ!って・・・・・・・・・・・・え??」

「シンジ君!なにをわけのわからない事を言ってるの!早く撃ちなさい!命令違反をするつもりなの!!」

「おい!こら!!使徒のATフィールドをまだ中和もしてねーのに撃ったって劣化ウラン弾のゴミ(放射能)をまき散らすだけだろーが!アホかあんたは!!」

「撃ちなさいシンジ君!!今ならその暴言は聞かなかったことにしてあげます」

「・・・まじか・・・」

前回はここでミサトを見限ったわけなのだが、今回は自分もネルフの特務三尉様なのだ。さすがに上官であるミサトの命令を簡単に無視するわけにもいかない。

シンジは渋々パレットガンを構え、使徒に向かい三点バーストでの集中と分散を交互に組み合わせながら放っていく。

しかし、当然ながら使徒のATフィールドに阻まれ、目標に対してはかばかしい成果は得られなかった。そして、劣化ウラン弾がATフィールドに着弾したことで発生した煙で使徒が見えなくなってしまった。

『バカ!煙で使徒が見えないでしょ!』

「バカはお前だ!もういい、副司令!!」

『ああ・・・、なんだね』

「葛城一尉を拘束してください。先ほどからの支離滅裂な言動は気が狂っているのか、利敵行為をしているのか、いずれにしても危険です。早急に発令所から排除してください」

『なにおぅ!ふざけたこと言ってんじゃないわよ!この糞ガキ!!ガキはガキらしく大人の命令にしたがってりゃいいのよ。優しくしてやったらつけあがって!!』

「副司令!」

『むむむ・・・(困ったな、ゼーレのシナリオではゼロチルドレンが使徒戦を指揮しなくちゃならんのだ・・・さらに彼女がこうも無能なのは、あえて苦戦させることでチルドレン達を精神的に追い詰めるという策なのだし・・・すまん、シンジ君)・・・シンジ君、すまないが葛城一尉に従い給え』

シンジはろうじんのその言葉に一瞬カッとするも、すぐに冷静になり考え込んだ。

(ん?なんだ、なんで今副司令は謝ったんだ?副司令にはあのバカを解任する権限が無いのか?父さんが不在の中、ネルフの最高権力者は副司令じゃ無いのか?もしかして父さんですらあのバカを解任する権限を持っていないのか??おかしいと思っていたんだ・・・。作戦課長という要職にあるにも関わらず、副官に仕事を押しつけてろくに働かない。戦術に関しても底が浅く、そもそも検討会にすら出席しない・・・。会食の時に否定されたけどやっぱり父さんの『愛人』なんじゃないかなんて思ったけど、その様子も無い・・・。つまり、あのバカを作戦課長という職につけていないと都合の悪い連中がいるんだ。それはネルフよりも上位の機関ということになる・・・委員会か??だとしたらその理由は・・・次のポイントが溜まったら『情報』にも使わないとなぁ・・・)

シンジがそんなことを考えていると、イカ使徒さんが触手を初号機に伸ばしてくる。

「うわっ!しまった!」

触手は初号機の片足に巻き付くと、とてつもない力で初号機を投げ飛ばした!!


さて、ここで時間は少し遡る。

警報が発令され、ここ第壱中学校にも生徒をシェルターへ避難させるようにとの命令が出された。つまりは自分たちの『責任問題』になる事態である。教師達は慌てて立て籠もっている校長室のドアを破壊、反抗する生徒達にビンタを食らわせて、ガムテープで拘束するとシェルターの中に放り込んだ。他の生徒達も目を血走らせて金属バットを構える体育教師に怯え、粛々とシェルターの中に入っていった。まあ、事の問題である碇一派はこの場に誰一人いなかったので、揉めるようなことも無かったのだが。

すでにアヤカ達はシンジと一緒に学校を出ていて、雪広ビルに避難していたのである。


「ちぇ、やっぱりだめだ。・・・なあ、外に出て見たいと思わないか?」

ケンスケは報道規制によって避難指示をする文字だけの携帯テレビの電源を落とすと、親友にそう呟いた。

「おのれはなにを言ってんのや、外なんかでたら死んでまうぞ」

「それはここに居たって同じ事だよ・・・死ぬ前に一度、本物の戦闘を見てみたいんだ」

「だめよ、相田君!委員長として絶対に許すことはできないわ!」

「そうや、ネルフのロボットに任せとけ。そのためにアレはあるんやろ」

「そのネルフのパイロットに殴りかかったのは誰だよ。なあ、トウジ。お前の頭を蹴り飛ばしたせいで、碇が満足に戦えなかったらどうするんだよ」

「なんでわいの頭蹴り飛ばしたことであいつが戦えんようになるんや!」

「なあ、委員長。碇を平手打ちした委員長はあいつの戦いを見届ける義務があるんじゃないのか?」

「・・・義務・・・」

「そう、義務さ・・・義務義務、ということで一緒に行ってあげるから見に行こう」

「お前は・・・ほんま自分の欲望に忠実なやっちゃのう・・・」

「・・・わかったわ・・・でも・・・危なくなったらすぐに戻るからね」

「うん、それでいいよ」

「ちょっと待たんかい・・・わかった、わかったから、わいも一緒にいくで!ヒカリを守るって昨日誓ったさかいにな」

「トウジ君・・・ありがとう」

「ええ、当然や」

「はいはい、メロドラマはいいから、早く行こう。終わっちゃたらどうすんだよ」

ということで、3人はシェルターから外に出るため行動を開始した。

「でもどないするんや?入り口は閉じとるんやで」

「こっちだよ。このシェルター、まだ一部工事中で、こっちのダクトを伝っていけば学校の裏山の出口に通じてるんだ。そこだったら二人いれば扉は開くよ」

「・・・なんで相田君はそんなことを知っているの?」

「まあ紳士の嗜みってやつさ」

「ほんもんの紳士やったらこんなことせんやろうけどな」

3人はそうこうしつつ、無事シェルターを抜け出ることに成功した。


「おお!見える見える!!すげーーー本物のロボットだーーーー!!」

ケンスケは歓声をあげると、もっとよく見るため裏山の頂上へ向けて走り出した。

「おっおい、ちょっと待たんか!」

一人駆けだしたケンスケを止めようとトウジは慌てて彼を追いかける。

「ちょっと!あまり扉から離れたらだめでしょ!」

「すまん、ヒカリ。ちょっとそこで待っててくれ。あいつを連れ戻してくるわ」

トウジは振り返りヒカリにそう言うと、すでに頂上でロボットにカメラを向けてパシャパシャやっているケンスケの所へ駆けだした。

トウジはケンスケの元に追いつくと片手でケンスケの肩を押さえた。

「こら、ケンスケ!危ないやろが!早く扉の所まで戻るぞ!あそこでも十分見えるやろが!」

「うわ!ってトウジ、揺らすなよ、ブレちゃうだろ!わかったよ、わかったから。このフィルムを使い切ったら降りるからさ・・・って!!!」

「うおーーーーーーこっちに来るぅーーーーー!!」


ドーン!!


ピンポン、ピンポン、ピンポン・・・

「ん??なんだぁーうるせぇーなー」

ネルフ本部、パイロット控え室。
愛する主人が出撃しているにもかかわらず、いつものようにソファに横になって寝ていたあずみをなにやらチャイム音が起こした。音の方を見てみるとあずみがシンジから委託を受け預かっている『チートシステム』の時計だった。

シンジは自分がシステムを操作できないときは、アヤカ達にチートシステムを委託していた。つまりネルフ本部ではあずみに渡していたのだ。そうでないと、訓練中にもし外で操作が必要なことがあったときに対応できないからだ。今回もいつものようにあずみに渡していたのである。

「えーと・・・おい、カエデ。お前ちょっと廊下に出てろ」

「へっ?なんでですかって、わかりました。わかりましたからそんなに睨まないで!」

カエデは逃げるように控え室を出て行った。部屋にはもう一人レイがいて、シンジの戦闘の様子を液晶テレビで鑑賞していたのだが、レイはシンジが『家族の一人』にしようとしている女の子だったので、あずみは特に彼女には出て行くように言わなかった。
まあ、言ったところで彼女はその言葉を聞いたりはしないだろうが。

あずみは、先ほどのチャイム音の原因を確認しようとチートシステムを起動した。

「んーなになに・・・」


<<原典破壊ボーナス(特大)>>
『洞木ヒカリが死亡した。彼女の死はこの世界のシナリオに多大な影響を与える。その影響を鑑みて君にボーナス1000万を進呈する』


<<システムからのお知らせ>>
『原典においての主要キャスト『洞木ヒカリ』が死亡しました。彼女が死亡したため、美少女召喚『碇シンジ育成計画』洞木ヒカリが解除されました』


「・・・あー、あの女か・・・ふん、死んじゃったのか。・・・で?・・・」

あずみはそのシステムのメッセージを受けて、さあてどうしようかと悩んだ。
別にどうでも良いような気がするが、この『主要キャスト』というのが気にかかる。また『多大な影響』とも書いてある。ということはこれを放っておくのはシンジになにやら悪いことになるかもしれない・・・。

「・・・誰が死んだの?・・・」

あずみの呟きを聞いたレイが珍しく彼女に問いかけてきた。

「あん?ああ、シンジ様のクラスの委員長様だよ。シンジ様を引っぱたいた糞女」

「・・・洞木さんが・・・そう・・・」

「なあ、あんたあの女に詳しい?だろ、どうしたらいいと思う」

「・・・わからないわ・・・でも・・・」

「でも?」

「彼女がいないとクラスがバラバラになってしまうと思うわ・・・」

「今でも十分酷い有様だと思うけどな。まっいないと一応困るヤツなんだな?」

「ええ」

「本当はシンジ様に確認が必要なんだが・・・仕方ない。その『影響』ってやつが悪い方へ出ちゃったら困るし・・・えーと召喚ってどうやるんだ・・・ああ、これね・・・洞木ヒカリ、洞木ヒカリっとよし、なんだ7000ポイントぽっちしかいらねーのか。悩んで損した。ほい、召喚っと」

あずみはあっさり『洞木ヒカリ』を召喚した。
しかし、もちろんここで何が起こるわけでは無い・・・。

「・・・・・・何をしているの?・・・・・・」

「ああん?おめーは気にしなくていいんだよ!さて寝直すかねー」

あずみはレイの疑問の解消よりも、自身の睡眠欲の解消を優先した。
レイはしばらく小首を傾げていたが、ちょうど使徒戦の様子が最終盤にさしかかっており、結局はそちらを見ることの方を優先した。


「あーびっくりしたー。戦闘中に考え事はしてちゃダメだね。失敗、失敗」

シンジはとりあえずミサトの件は後で考えるとして、目の前の使徒戦に集中することにした。

イカ使徒はゆっくりゆっくりとこちらに向かって近づいてきている。
シンジは初号機を起こすと、ナイフを構えなおした。

「あれ、あーしまったなぁ・・・『シェルターの扉を潰しちゃった』よ・・・まあ、戦闘中に扉のそばにいるような人はいないだろうけど・・・ってなんだ??」

シンジはなにやら初号機の足下で騒いでる人間を見つけた。『ハイテク』なマギはその人間が彼のクラスメイトの鈴原トウジ、相田ケンスケであることを表示していた。

「なにやってんだコイツら・・・まさか戦闘を見物するため、シェルターから出てきたのか(-_-;」

シンジは心底呆れ果てた。今までは何もわかっていないガキだから大目にみてあげていたが、さすがにこの行動はダメだ・・・。踏みつぶしてもいいのだが、さすがに人殺しはさすがにシンジも躊躇してしまう。仕方が無いので発令所に対応を聞いてみることにした。

「すみませーん。この民間人の少年達はどうしたらいいですかね?」

発令所でもシンジのクラスメイトが突然現れたことで混乱していた。

『シンジ君、プラグ内に入れなさい』

『ミサト、あなた何を言っているの!そんなこと許可できないわ!』

『私が許可します(キリッ』

「あのー、僕も拒否します。異物をプラグ内に入れてシンクロ率が下がったら、エヴァが動かなくなります。そうなると使徒との戦闘を継続出来ません」

『あんた前の戦いで勝手に入れてたじゃない(怒』

「あの子は幼女、こいつら少年(ガキ)、もうこんなに成長してると影響も大きいです。なんでわざわざチルドレンの最適年齢を13~16歳にしてると思ってるんですか、この年齢くらいの子供が一番エヴァにシンクロし易いからでしょうが!僕と同い年の子供を二人も入れたら間違いなくシンクロに影響ありますよ。それでもいいんですか!作戦課長!!エヴァが戦えなくなって敗退したらどうするんですか!ネルフにはまだ隠し球があるんですか!!」

『ないわ、まだ零号機は動かせない・・・使徒に有効な武器もない・・・人類滅亡ね』

ミサトに代わってリツコがシンジに答える。

「だったら、さっさと保安部に二人を連れて行くように連絡しろよ!無能!!その時間はなんとか稼ぎますから!」

シンジはそう怒鳴ると、足下でうろついている二人にもスピーカーで怒鳴る。

『おい、お前ら、ここを早く離れろ!保安部にさっさと保護してもらえ!邪魔だ!』

「うるさい!!おまえのせいでヒカリが!!ヒカリが!!」

シンジの操るロボットが彼の愛する女性をシェルターの入り口もろとも押しつぶしたと思っている(事実だが)トウジは、その辺に落ちている木の棒で初号機の足を叩いていた。

ケンスケはトウジを連れてなんとか逃げだそうと、彼のジャージを引っ張っている。

「ヒカリ???委員長か??ああ、こいつ本当にバカだな。シェルターの入り口が潰れてもシェルターが潰れたわけじゃ無いんだよ・・・。錯乱しているのか・・・仕方ない・・・少しケガをするかもしれないけど・・・」

シンジは二人の説得を諦めると、初号機の足をスコップのように使い、二人を土ごとすくい上げると、全力でこちらに向かってきている保安部の人たちの方へ蹴り捨てた。

それは抜群の力加減とコントロールであり二人は見事、保安部の面々の目の前に土砂と一緒に落ちてきた。・・・多少の打撲、骨折は目を瞑って欲しい。まあ、生きてはいるようだし。

「よし、邪魔者は消えた・・・。問題はここからだよな・・・兵装ビルの支援は受けれないし(?)、武器はナイフのみ・・・どうする?前回と同じようにケーブルを切断して接近、ATフィールドで中和後、コアを突き刺すか・・・。しかし、あの触手がやっかいだな・・・あれをどうにかしないと近づけない・・・」

シンジはしばし考える。

「決めた。触手は伸ばしてきたら切ろう・・・保安部の人たちと最近ナイフ教練もやってるし・・・いけるだろう。一か八かだけどね・・・」

『ちょっとシンジ君!一旦撤退を・・・』

スピーカーからは相変わらず寝たぼけた指示が小うるさく聞こえてきている。

「撤退・・・無理です。撤退してどうします?次はジオフロント内で戦うんですか?ジオフロント内には対空設備が無い、兵装ビルも無い。つまりはエヴァ単独で接近戦をするしかない、ならば今ここでやったほうがいい・・・。少なくとも障害物があるぶん勝機がありますからね」

シンジはそう答えると、使徒に向かって走り出した。途中ケーブルが最大限伸びるが、その瞬間に切断、内部電源に切り替える。

イカ使徒は初号機に向かって触手を伸ばす。

初号機はATフィールドをナイフに纏わせるように展開、瞬時に触手のATフィールドを打ち消すと、見事触手を切り落とした。

『そんな!ATフィールドをナイフに纏わせるなんて!!』

リツコの叫びを他所に、初号機はイカ使徒に接近成功、コアにナイフを突き刺す。

『痛いでゲソー!!』とイカ使徒は暴れるが、初号機にしっかりと体をつかまれているため逃げることができず、程なくしてコアはその光を失った・・・。


<<使徒破壊ボーナス>>
『おめでとう。君は見事第4使徒を撃破した。その行為に敬意を表し4000万ポイントを進呈する。これからも頑張ってくれたまえ』


『目標、活動を停止!!パターンブルー消失!!』

『初号機、至急外部電源の場所を指示するようにとのことです。Dブロックの電源ソケットを指示しました』

『少年達ですが保安部が保護しましたが・・・重傷です。このまま病院へ移送します』

発令所では使徒戦が無事勝利に終わり、早速後処理の仕事に取りかかっていた。

そんな中ミサトは激憤を隠しきれない様子で、肩を震わせながら正面モニターを睨んでいた。

「葛城一尉」

ろうじん副司令が上からミサトに声をかけた。

「はっ」

「サードチルドレンはよくやってくれた。多少言葉の行き過ぎがあったようだが、パイロットとはああいう人種だ。おおむね彼が言っていることに間違いはない。今回は全て不問とするように」

「しかし!彼は私の命令に従っていません!!」

「はて?彼はちゃんと従っていたではないか。君の言うようにパレットガンは撃ったし・・・。あの少年達をプラグ内に入れるのは問題外だ。赤木『三佐』も反対していただろう。撤退云々に関しても、撤退して外の防衛はどうするのかね?市街に被害が増えるだけではないか・・・。とにかく、今回は君のことも不問にしてやるから、それで納得したまえ。いいな!」

「・・・わかりました・・・」

さすがにこれ以上副司令に逆らい、減給50%がさらに増えても困る・・・。
自らの矜持と現実の問題(ローン・えびちゅ)を天秤にかけ、ミサトは現実を取った。

とはいえ、彼女は後でシンジにはガツンと言ってやらねば!と思っていた。しかし、その機会はこの後、彼女に降り掛かる騒動によって永遠になくなるわけなのであった。


シンジがケージに戻ると、今回も鈴原整備部長が彼を出迎えた。
そして彼はシンジに土下座し、息子のあまりにも愚かな行為を謝罪した。

「鈴原さん、もういいですよ、頭を上げて下さい。確かにシェルターを勝手に出ていたのは悪いことですが・・・どうやら僕がシェルターの入り口を使徒に投げられた際に潰したことで、友達が死んでしまったと誤解して錯乱していたようですから・・・ってシェルターは本当に大丈夫でしたよね(汗」

すると、整備部長と一緒に来ていた保安部長が頷き、

「ああ、大丈夫だ。誰一人けが人は出ていない。鈴原君の息子さんが言っていた『洞木ヒカリ』さんも『シェルター内にいる』ことは確認が取れている。息子さんはなにやら彼女と一緒に外に出たとか言っているようなのだが・・・」

「そうですか?うーん・・・あの時、二人しかいなかったと思ったんですが・・・とにもかくにも全員無事で良かったです。鈴原整備部長、息子さんをケガさせてすみませんでした(ペコリ)」

「いえ・・・とんでもない。命があっただけ幸運です。私から厳しく叱っておきます。後ほど謝罪にも行かせますので・・・」

「え?・・・まあ、僕は別に気にしてないですが、はは・・・では」


こうして、2回目の使徒戦をシンジは乗り切った。

パイロット控え室に戻るとなぜかカエデが部屋の外でうずくまっていた。理由はわからないが、そんなカエデを優しく立たせてあげると一緒に部屋の中に入った。部屋の中ではレイとあずみが彼を出迎えてくれた。

しばらくして、カエデがあずみによって再び外に出されると、ヒカリの件がシンジに報告される。

「・・・そっか・・・彼女死んじゃってたのか・・・あのジャージが言ってたことは正しかったんだね」

「はい。それと出過ぎたことを致しましたが『洞木ヒカリ』を召喚しました。指示も仰がず申し訳ございません」

「いや、それは助かったよ。おかげで保安部の目をごまかせたしね。それに彼女が死んじゃってたら僕になにか責任を被せられても困るし・・・。でも困ったね。ヒカリさんってクラスの委員長だからなにかと人付き合いも多いし・・・。母さんのようにこの世界の母さんと全然別人だったら、さすがに怪しまれるよねぇ・・・家族もいるんだし」

「それは・・・」

「よし、とりあえず、一度帰ってみんなで相談してみよう」

シンジはそう言うと、大人しく待っていたレイの頭をよしよしと撫でてあげ、さっさと家に帰ったのであった。


そして、ビルに着くと件の洞木ヒカリがすでにここに来ておりシンジを出迎えた。

「碇君。初めまして洞木ヒカリです。状況は・・・だいたい理解してるけど、随分と酷いことになっているみたいね」

「うん、初めましてだね・・・ヒカリちゃん。早速だけどどうだろう?こっちで暮らすのは大丈夫かな?とくに家族とか学校とか??」

「うん!それは全然大丈夫。別に私はあっちの世界でも碇君達のお仕事に関わっているわけじゃないし、友達とかまったく同じってわけじゃないみたいだけど、ほとんど生活自体は変わらないわ・・・でも・・・」

「でも??」

「今のあの学校崩壊しちゃっているのは、私一人の力だけじゃ・・・」

「だよねー。まあ、なんやかんやで5000万ポイント入ったし・・・どうにかできそうな人を呼んでみようかな?さすがにあの状況は改善しないとマズイよ。楽しくないし」

「はい!シンジ様。私が以前リストを見てた時、こういう状況にうってつけの人物がおりましたのでメモしてありますわ。今後のことを考えてもぜひお仲間の一人に加えたいですわ!」

アヤカが懐から手帳を出して、シンジにそのオススメの人物の名前を見せる。
シンジにはその名前が正直読めなかったのだが、プロフィール画面を開き、彼女の可憐な容姿を見て大満足だった。その能力も破格であり、しかも同い年なのが良い!!

「うんうん、いままでで最大のポイント量だけど・・・匹敵するほどの価値があるよね!!よーし!!では『食蜂操祈(しょくほうみさき)』を2000万ポイントで召喚!!」


トウジとケンスケが学校に戻ることができたのは、案外早かった。
全身骨折の重傷と最初診断されたのだが、次の日にはなぜかただの全身打撲になっていたのである。それは千鶴がヒカリに頼まれて、妹のノゾミをアーティファクト『天体観測者』で治療するために病院を訪れた際、シンジからこの二人の治療もお願いされたからだ。

千鶴は心底自分のネギ(杖)を少年達に突き刺すのは嫌だったのだが、この世界のヒカリを殺してしまってゴメンねというシンジの謝罪が含まれていたので、渋々、渋々治療してあげたのである。

ということで、翌日には退院できた二人はそのまま保安部の黒服さんたちにネルフ本部へ連行され、彼らの父親を交えての大説教大会が繰り広げられたのだった。

トウジはヒカリがシンジによって潰されて死んだことを強弁したが、大人達からヒカリはシェルター内で無事が確認されており、今も普通に元気に学校へ通っていると言われあっけに取られた・・・。そしてよかったぁよかったぁと泣きじゃくったのである。

そしてさらに翌日、トウジとケンスケは第壱中学にいつものように登校したのである。


「・・・トウジ・・・どうしたんだよ。そのひっかき傷・・・」

「サクラのヤツにな「兄ちゃんなんか死んでまえ」って怒鳴られて引っかかれた・・・」

「ああ、そう、そりゃ仕方ないね」

「そやなぁ・・・って・・・なんやあのでかい横断幕・・・」

「え?・・・『碇シンジ君街を守ってくれてありがとう!』・・・だってさ」

二人は学校の屋上から垂らされた巨大な横断幕をポケーっと見上げる。

「・・・ま・・・まあ、これは事実やしな・・・おかしなことあらへん」

「ああ・・・。機密の問題とかどうなってるのかな?とは思うけど・・・」

二人は横断幕に驚きながらも自分たちの教室を目指す。

廊下には『碇シンジ君の偉業を讃えよう!』とか『碇シンジファンクラブ会員募集中』とか、よく意味がわからないが『シンジ様と操祈様を囲む会明日16時開始』などのポスターが至る所、そこら中に貼りまくられていた。

「・・・なんなんやこれ?」

「さあ?」

困惑し首を傾げながら二人が教室に入ると、クラスメイト全員がシンジに向かって土下座していた。唯一していないのはシンジ本人と綾波レイ、謎の金髪の巨乳美女、そして洞木ヒカリだった。

「ねえ、操祈・・・これはやり過ぎだよ・・・」

「あら、シンジ様に逆らっていたんだから、これくらい当然でしょ」

「いや、過ごしにくいでしょ・・・逆に・・・」

「そうかしら、これくらい当たり前だと思うけどな」

食蜂操祈の能力『心理掌握(メンタルアウト)』読心、洗脳、記憶の操作・・・などなど精神を操ることにかけては最高の能力であり、彼女は所謂超能力者であった。

操祈は能力を使い、学校を瞬く間に掌握、生徒全員をシンジの下僕にしたのである。
それが、先ほどの巨大横断幕であり、ポスターであり、このクラスメイト達の土下座であった。

さすがにシンジとしてはこれはやり過ぎと感じており、翌日には多少は緩和されるのであるが。

「ひ・・・ヒカリぃ!!!!」

トウジはシンジの横で元気そうにしているヒカリに向かって叫んだ。

「へっ?ああ、鈴原君、相田君、おはよう」

「えっ??鈴原君って・・・ヒカリ、一体どうしたんや?」

「え??鈴原君は鈴原君でしょ。というよりなんで私のこと名前で呼んでるの??少し気持ち悪いんだけど・・・。ちょっと何、そんなに近づいてこないでよ」

ヒカリはトウジが自分に急に近づいて来たので、慌ててシンジの後ろに隠れた。
当然、このヒカリは別世界のヒカリであり、シンジラブのヒカリである。

この世界のトウジへの長年の想いが叶ったヒカリでは無いため、トウジに対してはただのクラスメイト、それ以上でもそれ以下でも無い関係なのである。

「ヒカリ・・・」

「鈴原君も相田君も勝手にシェルターから外に出て碇君に迷惑をかけたんだから、しばらくは大人しくしていなさい。ほら、SHRが始まるから席につく!・・・あの操祈さん、他の人たちも座らせてあげてね」

「はーい。ほら、あなたたち、さっさと席につきなさい。あっそれとあの二人がヒカリさんに変なことしないように守ってあげるのよ。ヒカリさんもシンジ様の大事な女の子なんだからね♪」

「「「「はい!操祈様」」」」

操祈は下僕(クラスメイト)達の返事に満足すると、シンジの後ろの自分の席に座った。

ほどなくして、担任の教師が入ってくると彼はまずシンジに深々と一礼し、そしてみんなに挨拶するといつも通りのホームルームが始まった。

「えー最後に今週の標語が決まりました『碇シンジ様おめでとう』です。みんなで唱和しましょう」

教師がそう言うと生徒達は立ち上がり、大きな声でその言葉を唱和した。

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

すると他の教室からも同じ言葉が聞こえてくる。

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『碇シンジ様おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

『『『おめでとう』』』

シンジはそのみんなからの言葉を受け恥ずかしそうにハニカミながら、

「みんなありがとう」

と答えた。

ジャージとカメラ小僧だけがただただそのあまりにも非現実的な光景に茫然自失していた。

「んな・・・あほな・・・こんなのありえんわ・・・」

「トウジ、『ありえない』なんて事はありえないだぜ」


第四話 雨、逃げ出した後 Aパートへ続く



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