(・・・・・・・・ま・・、・・・・を、・・・・て・・だ・・・・)
ん・・・?
何だ・・・?
(お・・・・・・ま・・、・・達を、・・・・て・・ださ・・)
誰の声だ・・・?
よく聞こえない・・・
それより、此処は・・・?
(お願・・・・ま・・、僕達を、・・って・・ださ・・)
・・・っ!?
ぁ、頭が痛い・・・!!
何だ?
何が起きてる?
この声は何処から聞こえる?
此処は一体何処なんだ?
俺に話しかけてくるのは誰なんだ?
(お願い・・ます、僕達を、・・って・・ださい)
うぐっ!?・・・あ、たま・・・が・・・!?
(お願いします、僕達を、・・ってください)
や・・・め、ろ・・・!!
やめ、て・・くれ・・・!!
頭が・・・割れる・・・!!
(お願いします、僕達を、救ってください)
あ、ァああぁアアああアアアああアァア嗚ああアア!!??
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
五年程前、
俺は、こんな感じの不思議な体験を経て、
碇(六文儀)ゲンドウになりました。
ではまず、その時の回想シーンをどうぞ。
Ⅰam Gendo。
紅海
・・・う~む、さっきのは何だったんだろうか。何か、聞いたことのある声だった気がしたんだが・・・う~む。
ま、いっか。どうせ夢だろうし。それよりも、今のことを考えよう。とは言え、これもまた夢なんだがな。
俺は今、前が見えなくなる程の吹雪の中を歩いてる。これが夢じゃないというのなら、きっと何時の間にか護身を完成させていたに違いないね。
しっかし、これまた随分とディテールの細かい夢だなオイ。
聞こえてくる吹雪の音から防寒着越しに伝わる極寒の地の寒さまで、まるで本当に南極とかシベリア辺りに来たんじゃないかと思わせるほどの再現率。更に、聞いたことも無いようなおっさんの声まで聞こえてきましたよ?
いやぁ、人間の想像力って凄まじいよね。はっはっは。
・・・でも、この寒さは異常じゃね?夢なのに。夢の筈なのに。
「お・・・・・・・・、しっ・・・・・・・・くぶ・・!!」
つーかマジで寒い。
ちょっとリアル過ぎないか、これ?
あ~・・・やべ、何か凄い眠くなってきた・・・。
「・・っかり・・・・!・・・・ろ・・・・んぎ!お・・!」
あぁ・・・見知らぬおっさん・・・時が見える・・・
「おい!何を言っているんだ六文儀!しっかりしろ!六文儀!!」
「うおっ!?・・・あ、危ね~、夢の中で永遠の眠りに就くところだった」
うん、誰かは知らんが多謝。
・・・ん?このおっさん、誰かに似てるような・・・誰だったっけか?
「夢?お前何を・・・いや、それより六文儀、私が判るか?冬月だ、冬月コウゾウだ」
おお、聞いてもいない自己紹介ありがとう。
そうそう、このおっさん、EVAに出てくる冬月の若い頃(と言ってもおっさんだが)にそっくりなんだよ。
いや~良かった、これで心の中の取っ掛かりが一つ消えた・・・って、え?
「い、今、何と・・・?」
「本当に大丈夫なのか六文儀!?だから、私は冬t「違う、その前だ!!」・・・何?」
「今、俺のことを何と呼んだ!?」
「・・・やはり、救護班を連れて来るべきだったな。お前は自分の名前も忘れたのか?いいか、お前の名はゲンドウ、六文儀ゲンドウだ」
・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・
「何ィィィィィィィィイイイイイイイイイイイイ!?」
とまぁ、こんな感じでこの世界にやってきた俺。
この後、俺は混乱しながらも夢だろうと思いつつ、目的地である隕石の落下地点、即ち、アダムの堕ちた地点に向かった。
そして、見た。
あの、光り輝く巨人(某ウルトラの人ではない)の姿を。
アニメで観たモノとは比べ物にならない程の存在感、威圧感、そして、神々しさ。
アレを見た瞬間、俺は悟った。
これは、夢や空想なんかじゃない、現実なんだと。
気付けば、体が勝手に動いていた。今にして思えば、あれはきっと、世界の修正力とかそういうものが働いたのだろう。だって俺、卵へ還元とかやり方も知らなかった訳だし。
そしたら次の日、セカンド・インパクト発生。俺や冬月先生は事前に避難していたので助かり、スタッフやミサトの父は死んでしまった。(この時冷静であったなら、死んでしまった人達を助けられたかもしれなかったのに・・・)
そして、セカンド・インパクトの発生直後、俺はこの世界に来る時に感じた、あの凄まじい頭痛によって、意識を失った。回想終了。
で、今俺は人工進化研究所(ゲヒルン)の地下に広がる巨大空間の中で、下半身のキモイ磔巨人と向かいあっている。
・・・え?何?何で?WHY?どういうこと?
いやまて、落ち着こう。仙道も言ってたじゃないか。まだ慌てる程の時間じゃない。
はい、深呼吸~・・・ すー・・・はー・・・ すー・・・はー・・・
・・・OK、落ち着いた所で状況を整理しよう。
まず、セカンド・インパクトから今まで、『俺』に記憶は無い。
・・・じゃあ俺は、今までどうやって生活してきたんだ?
しかも、知らないうちにちゃんとイベントが進んでいたから此処に居るんだろうし。
・・・ということは、『本物のゲンドウ』が、この身体をのっとり返していたのだろうか・・・うん、そういうことにしておこう。楽だし。
よし次。今、俺が解っていることは・・・ここはエヴァの世界で、さらにパラレルワールド(平行世界)だということと、ここが現実だということ位だな。
・・・さて、説明しよう。
何故、ここがパラレルワールドだと判るのか。それは、【俺】がいるからだ。本当のエヴァの世界には、俺なんかいない。エヴァの世界は、既に完結している。つまり、この世界は、エヴァの世界に良く似た違う世界、パラレルワールドだという訳だ。それに、セカンド・インパクトの時には冬月とかいなかった筈だし。
もう一つ、ここが現実だというのは、あのアダムが理由だ。あんな不思議な生物が、夢の中であんなにも存在感を発揮する筈がない。
それに、今試したけど、ほっぺたを抓っても捻っても叩いても目が覚めなかったし。・・・痛い。
まぁ、ほんの少しだけ解った事もあったけど、まだまだ解らない事が腐るほどある。
何故、あそこで俺の意識が消えたのか。何故、俺の意識が戻ったのか。今後、俺の意識はどうなるのか。俺がこの身体をのっとる前にあった筈の、本物のゲンドウの意識は、一体どうなってしまったのか。あの声の主は、一体誰なのか。何故、俺がこの世界にいるのか。
そして、『何故、ゲンドウなのか』。
正直、これが一番の疑問。何で、よりにもよってゲンドウなの?
もっとこう、色々あるじゃん。ほら、シンジとか、オリキャラとか、俺のまんまとかさ。
そういう、何か特別な力がもれなく付いていそうなキャラクターを全部捨ててまで、何故俺をゲンドウにしたの?
確か、声の奴は (僕達を救ってください) とか言ってたよな。
それなのに、何故にゲンドウ?難易度高すぎない?つーかまず、救って欲しけりゃ名を名乗れよ。どうすりゃいいか分かんねーじゃん。あ~もう、面倒くさいなちきしょう!!
・・・こうして、無駄な怒りを発散し終わった俺の、『ゲンドウ』としての人生が始まってしまった。
・・・泣いても、いいよね?