新世紀エヴァンゲリオン Action-ZERO
序章/誓い ~光輝くモノの為~
「…できた…」
赤い空とL.C.Lの海、巨大なリリスの残骸が残る世界…たった一人、僕だけが残る、人類補完計画の結末である世界。
L.C.Lの海の上に僕は立っている。実際には立っているのではなく、空中に浮いている。
カヲル君も使っていた、ATフィールドの応用だ。
ATフィールド…世界がこうなってから、エヴァもなしに、単独で使える事ができるようになった、心の壁…
遮る為の、相手などいないのに…
しかし、今となっては考えても仕方のないものだ。
僕は自分で創りあげたこの世界で唯一光り輝くモノを前にして、達成感を含んだ息を吐く。
皮肉なものだ。以前はめったに感じなかったのに…
「やっと…できた」
今は、『コレ』の完成を喜ぼう。時を感じる事も難しいこの世界でも、永いと感じる月日をこの『光』を完成させる為に費やした。
「これで…『彼女達』に償える…」
アスカが消えた後、僕はたった一人でこの世界を生きてきた。
たった一人でこの世界にいるのは辛かったけど、退屈だけはしなかった。
L.C.Lに浸かれば、世界中の記憶、経験を感じる事ができる。
人類の結晶ともいえる知識も、秘匿とされる情報も今では簡単に手に入る。
そして、コレとは別にわかった事がある。この赤い世界にたった一人でいる僕には『力』がある。
前の世界では、こういった力を『万能』の神の力というのかもしれない。
その時、ふと思いついた。
-この『力』を使って、世界をもう一つ造る事ができないか?-
その時から僕はもう一つ世界を創り始めた。
L.C.Lを練り上げ、さまざまなカタチにして、
理想のセカイを…
叶う事のなかったセカイを…
彼女達が笑っているセカイを…
そしてようやく完成した。
「これで…僕の願いが叶う」
僕はL.C.Lに両手を浸ける。再びL.C.L時、青と赤の二つの光球を手にして…
「綺麗だな…」
これは大切な人の魂…僕が守りたかった…守れなかった二人の魂。
僕はそれを『セカイ』に近づける。
彼女達の魂は…綺麗で…ウツクシカッタ…
「どうか…今度こそ…」
-心からの笑顔を…-
暫く僕はその『セカイ』を見ていた。
僕の望んだように、そこは理想のセカイ…
母さんが生きていて、父さんはビックリする位母さんの尻に敷かれていて…綾波は二人の養子として引き取られていた。
明るく、元気に笑っている。
アスカも母親と一緒に暮らしていて、勝気な…それでいて心からの笑顔を浮かべるように生きている。
「よかった…」
これで少しは償う事ができたかな…?
この『セカイ』には僕はいない…
綾波とアスカの『魂』はそのままの形で送った。
『こちら側』の記憶は覚えていないが、僕がいると『こちら側』を思い出してしまうかもしれないから…
そんなことになったら、大変だ。
彼女達をまた不幸にしてしまう。
僕は邪魔なんだ…
僕がいたら…彼女達は…
幸せになれないから…
「さて…最後の仕上げだ…」
僕は自分の頭に手を当てる。
僕がここで死んで、L.C.Lになれば、このセカイに干渉できるものがいなくなる。
そうすることによって、この箱庭のセカイは本当のセカイになる。
僕には思い残すことはない…だって…
二人の笑顔が見れたんだから…
ATフィールド…展開…
『キャァァァァァッ!』
「!?」
僕は二人の悲鳴を聞いてセカイを見る。
平和なはずの街の一角が破壊されている。
「まさか…!?そんな!」
街を破壊している『モノ』を見て、僕は絶望する。
「なんで『使徒』が!?創っていないはずだ!」
第三使徒サキエル。僕が戦ったような大きさではなく、サイズは人間より少し大きなサイズだが、それでもその力は絶大だ。
なぜこのセカイに…!?
そしてサキエルの目の前にいるのは…
「綾波!アスカ!」
二人に引き寄せられるように近づいていくサキエル。
「やめろ!やめろよ!やめろぉぉぉぉぉっ!」
綾波とアスカがサキエルの光のパイルに貫かれて死ぬところを見て、僕は本当のゼツボウに包まれ、膝を突く。
一度創ったセカイを創り直す事はできない。巻き戻す事はできるけど、それではなんども綾波とアスカは殺される…
「いやだ…」
そんなのは…
「いやだ!いやだ!…いやだ!」
僕は決心して立ち上がる。方法は一つ。僕自身が使徒を倒しに行く事…幸い、向こうでもATフィールドは使える。
問題はいくつかある。
ひとつは、ATフィールドを持っているとしても、使徒を倒せるのか?
そして、もっとも危険なのは、彼女達がこちら側を思い出すこと…
しかし…僕にはそれらを解決する方法を一つ知っている。
僕はL.C.Lの中に手を浸ける。
それは2007年の誰かの記憶…
とても重い代償を持った緑の戦士の悲しい記憶…
でも…その代償こそが、その力と共に僕には必要だった。
「よい…しょっ!」
ドシンッ!ヴォォォォォォッ!
自分でも思うがよく持ち上げられるな僕。
それは大きな牛の形をした緑の機関車。
重厚で、いかなる障害も打破し、突き進むイメージを持つ電車。
確か…『ゼロライナー』だったっけ。
「これが…時空を駆ける列車…」
(そして…『アレ』が保管されている、列車)
僕はドアの前に立つと、扉が開く。
その向こうには『彼』がいる。
『お前の望みを言ってくれ…』
『彼』は全身が砂でできていて、胴体と下半身が逆で…まるで砂時計だ。
『どんな望みでも一つ…あれ?ここ、どこ?』
『彼』の事は知っている。だから言わなきゃ…
覚悟を胸に…
例え、最も重い代償を払うとしても…
僕は…
二人を…
-タスケタイ-
「僕の望みは…」
序章END
[次回予告]
いつも通りの朝、二人の少女はいつも通り学校へ登校する。
いつもと違うのはただひとつ、転校して来た新しいクラスメイト。
妙な奴だけど、二人は何故か彼の事を知っているという既視感(デ・ジャヴュ)を感じる。
彼はいったい何者なのか?
何故、こんなに彼女達の心をかき乱すのか?
そして…迫り来る脅威を彼女達はまだ知らない…
次回、『転校生』。
こうご期待。
あとがき
初投稿です。よろしくお願いします。
なお、キャラクターの性格構成の殆どは碇シンジ育成計画の方です。
連載モノですが、がんばりたいと思います。
これはもう、自分の妄想で書き上げてるもので、ツッコミどころ満載ですが、勘弁してください。
『僕』というのは勿論シンジです。
二人を救う為に、『未来のなくなった世界』の時に沈んでいたゼロライナーを引き上げたという設定です。
シンジがゼロノスを選んだ理由は、テレビシリーズを見ている人にはわかる、『変身の代償』です。
ある意味、自分の命を投げ出すよりも重い代償…
それを絡めて生きたいと思います。
では、続編まで、さよなら。
注釈:すいません。使徒の大きさあの巨大サイズではなく、最初は人間サイズにしようとしてたのに、書き忘れていました。
編集しましたので、ご考慮ください。