バトルフィールドの後方に位置するNERVの戦闘指揮車内。
「GGG………どこまで私の邪魔をすれば気が済むのよ」
怨嗟の呟きと共に、戦闘指揮官 葛城ミサトは3個目の予備マイクを取り出す。
「アスカ! レイ! 聞こえる? GGGより先に使徒を倒すのよ!!」
その通信に、二人の少女は呆れる。さっきの使徒の動きを見ていなかったのだろうか。
〔どうやってよ〕
「へ?」
〔先に倒せって言うからには、何か作戦があるんでしょうね?〕
「あ、え……っと…その、あのね………」
〔単なる思い付きで指示されても、こっちは動きようが無いわ。 具体的な指示を頂戴〕
アスカの指摘通り、ミサトの指示は思い付きというよりも、感情のまま発したものだった。作戦など考えてすらいなかった。
さすがにマズイと思ったらしく、暫らく考え込んだが、何も浮かばない。
期待を込めて自分を見詰める日向を始めとしたオペレーター達や、アスカとレイの無言のプレッシャーが、徐々に彼女を追い詰める。そして、遂には感情の爆発と共に自分でキレた。いわゆる『逆ギレ』である。
「あ~~も~~! るっさいわね!! あんた達は私の部下!! 黙って私の指揮に従って使徒をブッ殺せばいいのよ!! 早く行きなさい!!」
これか、とアスカは思った。シンやレイから聞いていたミサトの無能ぶり。話を聞いた時は「まさか」という感じだったが、実際に目にすると、酷すぎるということがよく判る。ただ突っ込んでいくだけで使徒が倒せるのなら、自分達もGGGもこんなに苦労はしない。
ふう……と一息、わざとらしく嘆息する。
〔話にならないわね………エヴァ弐号機、これよりGGG援護の為、使徒のA.T.フィールド中和行動に入ります〕
〔零号機、同じく………無能は用済み〕
プチッ「なっ!? ちょっとアスカ!? レイ!?」
ミサトは必死に呼び掛けるが
―――――「通信……切れてます」
「あんのガキャァァァッ!!」
バキャッ!!哀れ。3個目の通信マイクは、使用開始わずか10分でその生涯を終えた。
そんな遣り取りが行われている最中、使徒と勇者の戦闘は幕を開けた。
「行きます! 超ッ!分身殺法!!」
「ブロウクンッ……マグナァァァムッ!!」
「マーグキャノンッ!!」
ビッグボルフォッグの造り出した光の残像がイスラフェルを惑わす。
そして、その残像を追いかけるようにチョロチョロと動き回る使徒の足元に、ガオガイガーの放ったブロウクンマグナムとゴルディータンクの砲弾が撃ち込まれ、砕け散る地面と巻き起こった砂煙がイスラフェルの視界を狂わせた。
「「今だ!!」」
見事にハモった声が響いたかと思えば、イスラフェル甲と乙は胸部に強烈な打撃を受け、後ろに飛ばされる。
煙が晴れるのと同時に目の前に現れたのは、まったく同じ動きで攻撃を仕掛てくる二体の竜だった。
「「おおおおおおおっ!!」」
蹴撃!
バキャッ!!殴打!
ドゴォッ!!ライフル斉射!
ガガガガガガガガガガガッ!!そして、胸部装甲を展開させてのエネルギー攻撃!
「チェストウォーマー!!」
「チェストスリラー!!」
強力な熱気、そして冷気の攻撃。エヴァによってA.T.フィールドを中和されているイスラフェルに、それを防ぐ手段は無かった。
見事な連繋で二体に分裂したイスラフェルを圧倒する氷竜と炎竜。その光景を、アスカは驚きの表情で見詰めていた。
「凄い……ロボットがユニゾンしてる………」
よろめく使徒に隙を見た竜達は、素早く後ろに回り込んだ。氷竜はイスラフェル甲を、炎竜はイスラフェル乙を羽交い絞めにし、その動きを封じる。
「隊長殿!」
「コイツらにトドメを!」
「よっしゃあっ! ゴルディー!!」
「おうよ!!」
このタイミングを逃すわけにはいかない。ガイとゴルディーマーグは、最強攻撃ツールを繰り出す体勢に入った。
「ゴルディオンハンマーァァッ! 発動っ承認っっ!!」
GGGオービットベース・セカンドオーダールームの大河長官が、黄金の承認キーでセキュリティを解除した。瞬時に承認プログラムが前戦司令部である超翼射出司令艦ツクヨミに転送され、最強ツールの封印を解かれる。
「了解! ゴルディオンハンマー! セーフティ・デバイス……リリーブ!!」
最終ロックを解除する為、ミコトはカードキーをコンソール・スロットに通す。この瞬間、本来この地上にはありえない破壊力を誇る武器の力が解放された。
「ハンマーァァ……コネクトッ!!」
セーフティ・プロテクトを解除されたゴルディーマーグが、最強の鎚・ゴルディオンハンマーと緩衝ユニット・マーグハンドに分離・変形し、ガオガイガーの右腕に合体する。
「ゴルディオンッ……ハンマーァァッ!!」
ゴルディオンハンマーのGストーンとガオガイガーのGクリスタルがリンクし、凄まじいまでのエネルギーを紡ぎ出した。そこから溢れ出た余剰エネルギーが機体表面に溢れ、ガオガイガーの全身を黄金色に包む。
ここに『金色の破壊神』が降臨した。
「綺麗……」
「うん……」
まばゆいばかりの光を発するガオガイガーを見詰めるアスカとレイ。大きく翼を広げ、光り輝くその勇姿に、彼女達はしばし見惚れていた。
【 破壊神 ジェネシック 】
GGGのメンバーは、ガオガイガーを時折そう呼ぶ。だが、誰がそれを信じるだろう。それほど今の勇者王は神々しく、そして雄々しかった。
ゴルディオンハンマーを振りかざして己に迫る破壊神を前に、何とかこの二体の竜の戒めから抜け出そうと踠き足掻くイスラフェル。だが、それを許す氷竜と炎竜ではなかった。
「離すものか!」
「逃がさねぇぜ!」
ここで逃がしてしまえばイスラフェルを倒すチャンスは皆無となる。ただ倒すだけなら簡単だ。しかし、『二点同時荷重攻撃』と『コアの回収』という絶対条件がある以上、ここで逃がすわけにはいかないのだ。
「ぬん!」
ガオガイガーは、マーグハンドのタイヤホイール部分から光の釘を二本抜き出し
―――――「ハンマーァァ……ヘルッ!!」
イスラフェル甲と乙、それぞれのコアへ同時に打ち込む。そして
―――――「ハンマーァァ……ヘブンッ!! うおおぉぉぉぉぉっ!!」
マーグハンドから展開された専用バール(釘抜き)がそのコアを二つ同時に抜き取り、一つをガオガイガーの左手が、もう一つをビッグボルフォッグが素早く確保した。
「離れろ、二人とも!」
金色の破壊神が生み出すグラビティ・ショックウェーブは、全ての物質を光の粒子に変換させる。それに巻き込まれてしまえば、さすがの氷竜と炎竜とはいえ、消滅は免れない。
コアが抜き取られた以上、こうしてイスラフェルを拘束する必要はなくなった。二体の竜はイスラフェルを離し、巻き込まれないよう、その場を跳び退いた。
よし!! と、ガオガイガーはそれを確認し、ゴルディオンハンマーを振り上げた。
「イスラフェルよ! 光に
――――― 何っ!?」
ガイは驚愕した。左手に確保したコアが、音も無く崩れていく。ビッグボルフォッグが持つコアも同様だ。
さらには、それと同時に、抜き取られたはずのイスラフェル甲と乙の肉体に、そのコアが再生したのだ。
「ちぃぃっ!!」
拙い!
ガイは、振り下ろそうとしたゴルディオンハンマーを止めた。このままコアごと光に換えてしまうわけにはいかなかった。
だが、そこに隙が生まれる。
イスラフェル甲と乙、二体の双眸が光り、動きの止まったガオガイガーにエネルギー波が直撃した。
ドゴォォォォォォンッ!!「ぐわぁぁっ!!」
咄嗟のことに防御することができなかったガオガイガーは、衝撃で後方に吹き飛ばされた。
「隊長殿!」
「くっ!」
ガオガイガーの危機を察し、初めに炎竜が動く。それを援護するように氷竜がフリージングライフルを連射した。
しかし、イスラフェル二体はライフルの援護攻撃を難なく避け、まずは向かってきた炎竜に襲い掛かる。
「うおぉぉぉっ!?」
ドゴォッ!!成す術なく倒される炎竜。
「炎竜!」
救護に走る氷竜。
すると、イスラフェルは次の獲物を、この青き竜に定めた。
「うわあぁぁぁっ!!」
ガアァァァンッ!!弟と同じく倒される兄竜。イスラフェルのユニゾン攻撃に一体ずつでは対処の仕様がなかった。
「氷竜! 炎竜!」
倒される仲間達を助けようと、ビッグボルフォッグの手を借りながら立ち上がるガオガイガー。だが次の瞬間、イスラフェルに起こった変化を見て、ガイ達は目を見開き、驚愕した。
「!!……そんな………」
セカンドオーダールームの大河達も、その戦況の変化に戸惑っていた。
「何が起こっているのだ!?」
「まさか、タイミングを外した?」
牛山の推測。
「いえ、計算では誤差0.003秒。 充分間に合っているはずです」
チーフオペレーターの猿頭寺が即座にデータを検証し、報告する。
「ぬぅ………ならば何故だ?」
「ん? あれを見ろ!」
腕を組んで唸る大河に、ライガの言葉が届く。
モニターに視線を移した大河、そしてスタッフ達が見たものは、二体のイスラフェル甲と乙から更に分裂し、四体となったイスラフェルが姿だった。
予想外の展開で動きの止まった勇者ロボに対して、四体のイスラフェルは即座に動き始めた。
標的は破壊神、ガオガイガー。
他の勇者ロボには目もくれず、一斉に襲い掛かった。
「ちぃっ! こいつら!!」
ゴルディオンハンマーを装備している今、ガオガイガーの動きは鈍い。だが、ツールアウトしようにも、その隙を使徒が見逃すはずはない。今できることは、防御に徹し、攻撃を凌ぎきること。ガイはそう判断した。
「プロテクト
――――― 」
防御フィールドを展開しようした刹那、イスラフェル達は四方へ散った。その動きは、今までのイスラフェルのものではなかった。
「これは!?」
後ろから回り込んだイスラフェル乙が、戸惑うガオガイガーの左腕を掴み、フィールド展開を妨害する。
「こいつ!!」
振り解こうと動くガオガイガーの前方からイスラフェル甲が迫る。鋼の輝きを持つ手刀が襲い掛かった。
「くっ! ジェネシックアーマー!!」
オレンジ色の輝きがガオガイガーの機体表面を包む。
ガガガガガガガガッ!!機体そのものにダメージは無い。だが、左脚部から胸部にかけての装甲に傷を負ってしまう。
「ぬあっ!!」
そして、そこに間髪入れず、真後ろのイスラフェル『丙』と『丁』がエネルギー波を放った。
ドゴォォォォォンッ!!「ぐわぁぁぁぁぁぁっ!!」
背面部に強烈な衝撃を喰らい、吹っ飛ぶガオガイガー。地面にうつ伏せで突っ込み、瓦礫や砂埃が中空を舞った。
「「「ガオガイガー!!」」」
救援に向かう氷竜、炎竜、そしてビッグボルフォッグ。追い討ちを加えようとしていたイスラフェル四体に攻撃し、追い払う。
「隊長殿!」
「大丈夫か!」
ガオガイガーを守るように陣形を組み、武器を構える勇者ロボ達。
追い払われたイスラフェル達も、一旦、態勢を整える為、勇者達から離れた所に集まった。
睨み合う使徒とGGG機動部隊。戦闘は膠着状態に陥った。
チャンスだ!
動きの止まった使徒とGGG機動部隊を見て、ミサトの脳裏にある考えが浮かんだ。
「やれっ!」と耳元で悪魔が囁く。
成功時の場景を思い浮かべ、ニヤリとゲンドウばりの笑みを浮かべた彼女は、さっそく実行に移す為、日向に指示を出そうとする
――――― が、そこに指揮車へ通信が入る。待機していたエヴァ弐号機からだった。
〔ミサト、聞こえる? レイと一緒にGGGの援護に向かうわ〕
だが、作戦指揮官殿は即座に却下する。
「駄目よ! そこで待機!」
〔何でよ!!〕
「作戦があるのよ。 大丈夫、任せて」
〔………判ったわ〕
アスカは、ミサトの指示に何か釈然としないものを感じたが、渋々それに従った。しかし次の瞬間、アスカとレイの耳に飛び込んできた通信は、とても信じられないものだった。
「日向君、駿河湾沖で待機中の国連軍にN2爆雷の要請を出して!」
「は?」
ミサトからの突然の指示に、日向は耳を疑った。
『N2』と聞こえたが、どうするつもりだろう?
疑問の表情を作る日向。
「使徒の動きが止まっている今がチャンスよ。 あの穴ん中に目掛けてN2をブチ込むのよ!!」
指揮車内が一瞬にして静まり返る。通信の向こうではアスカとレイの息を呑む音が聞こえた。
それを気にすることもなく、ミサトは言葉を続ける。
「使徒は四体もいるからね………一発じゃ生温いわ。 三発は撃ち込みなさい♪」
「そんな! あそこではまだGGGが戦っているんですよ!」
声を荒げて反論する日向。しかし、ミサトは馬鹿にするような目で見返す。
「どこに? 私の戦いを邪魔するバカは見えるけどね」
「葛城さん!!」
「ウルサイわね! さっさと要請しなさい! あんたは私の言うことを聞いていればいいのよ。 あんた、私の部下でしょ? 上司の命令には従いなさい!!」
「ぐっ………」
日向は言葉に詰まってしまう。NERVは特務機関であり、命令系統は軍隊に準ずるものだ。上からの命令に反論は許されない。
俯き、震える日向の手がコンソールに伸びる。
〔ダメよ、日向さん! ダメ!!〕
〔………やめて!〕
スピーカーから聞こえてきたアスカとレイの声が日向を躊躇わせた。が
―――――「もういいわ……貸しなさい!! 私が連絡する!」
業を煮やしたミサトは、日向のイヤホン付きマイクを奪い取ると、国連軍への通信回線を開いた。
NERVからの要請に、国連軍の兵士達は大いに戸惑った。使徒という化け物だけならまだしも、N2爆撃要請地点にはエヴァとGGGのロボットがいるのだ。
彼等は、太平洋艦隊に所属する友人達からGGGのことを耳にしていた。酒の席での話ではあったが、彼等は友人達が熱く語るGGGの勇姿に興味を惹かれていた。
太平洋艦隊を全滅の危機から救った勇者達。
言わば、国連軍にとってGGGは、恩人以外の何者でもないのだ。NERVは、その恩人達がいるところに爆弾を放り込めと言う。
当然、躊躇する。しかし、上官である将校は要請に従い、N2ミサイルの発射を指示した。軍において、上官の命令は絶対だ。逆らうことは許されない。
彼等はミサイルの発射ボタンを押した。
「………すまない」
と呟いて。
彼等は知らないことだったが、その将校は、ある組織の一員だった。
その組織の名は『SEELE』。
超翼射出司令艦ツクヨミのレーダーに三つの影が捉えられた。すぐに分析され、その正体に火麻を含めた全員が驚愕した。
「ミサイルだとぉっ!?」
「種別特定……N2です!」
「一直線に戦闘フィールドへ向かっています!」
「あそこには、まだ機動部隊が!」
「ガイ! みんな! 早くそこから離れて!!」
迫り来るミサイルにアスカとレイも気付く。
「だめ!!」
その途端、レイは弾かれるように零号機を走り出させ、ディバイディングフィールド内に入っていった。
「バカレイ! 何やってんのよ!!」
レイの行動は考えたものではない。仲間が危ないと感じた時、反射的に動いたものだった。
しかし、彼女は後悔していなかった。好きな人達、大切な仲間達を守る為に、自分は戦っているのだから。
「バカ」とレイを叱ったアスカだが、彼女の気持ちは始めから判っていた。だからこそ、レイに続き、自分も動いた。
「………アタシもバカの仲間入りね」
自嘲気味に微笑むアスカ。以前と違い、こんな風に思える自分が少し嬉しかった。
〔あんた達!!〕
ミサトから通信が入る。「止まれ!」だの「戻れ!」だの煩わしく、五月蝿い。手動操作で通信を遮断すると、即座にインダクションレバーを動かし、高機動モードでレイの後を追った。
自分の言うことを聞かず、あまつさえ勝手に通信を切った二人に腹を立てたミサトは、戦闘指揮官として、してはならないことをしてしまう。
「全神経接続をカットして!」
「はい!?」
「シンクロ強制カットよ! 何度も言わせないで!!」
思わず聞き返してしまったマヤは、般若のようなミサトの表情に、半ば反射的にエヴァ二体のシンクロをカットしてしまう。だが、その後で ハッ と気付く。今ここでエヴァの動きを止めてしまうことが、どういう結果を招くのか。
日向も、他のオペレーター達も気付いたようだ。進言しようとするが、ミサトの悪魔のような笑みに気圧され、動くことができなかった。
「私の作戦は、誰にも邪魔させないわ」
指揮車からの信号で、無理やりシンクロをカットされた零号機と弐号機。エントリープラグ内の灯りが落ち、暗闇がレイとアスカを包んだ。
「ミサト!? 何のつもり…いぃぃぃいぃぃいいぃい!?」
全速で駆けていた二機のエヴァ。シンクロをカットされたからと言って、急にピタッと止まることなどできる訳もなく、慣性の法則に従い、もの凄い勢いで前のめりに倒れ、転がった。
「「あああぁあぁあぁあああぁぁぁああぁああ!?」」
衝撃で程好くシェイクされるプラグ内の二人。千数百mほど転がって、やっと止まった所は、奇しくも勇者達の足元だった。
迫るミサイルから退避しようとしていた勇者達だったが、いきなり足元に転がり込んできた零号機と弐号機に戸惑った。
呼び掛けても応答がない。
何故ならシンクロカットされている上に、彼女達はさっきの衝撃で気絶していたから。
ツクヨミ艦橋。
予定が狂った。エヴァを二体も抱えては退避が遅れる。火麻は別案を指示した。
「イレイザーヘッド、緊急射出!!」
しかし、返ってきたのは非情な答え。
「駄目です! 着弾の方が早い………間に合いません!!」
「ならば、残る方法はただ一つ!!」
ミサイルが来る方向を見上げるガオガイガー。N2ほどの威力のある兵器を止める方法は、もうこれしか思いつかない。それは他の勇者達も同じだった。
「隊長! ここは僕達に任せてくれ」
「判った………頼むぞ!!」
炎竜の言葉に頷くと、ガオガイガーはスラスターを全開し、上空へ舞い上がった。それを撃ち落とそうとイスラフェル達の双眸が光るが、氷竜達が牽制する。
地上から3~400mほど上がったところで、ミサイルがガイの視界に捉えられた。
「ゴルディー、やるぞ!!」
「おう!!」
「ゴルディオンッ……ハンマーァァッ!!」
迫り来るミサイルの前に立ちはだかる『金色の破壊神』という名の壁。
「光になれぇぇぇっ!!」
ミサイルは、この壁を突破することができなかった。
ガオガイガーの振り下ろすハンマーが一発目のミサイルを光に変え、返す刀で二発目のミサイルを消し去る。続いて三発目のミサイルを光に変えた時、ツクヨミから緊急通信が入った。
「大変よ、ガイ! 別方向からミサイルがもう一基!!」
「なにっ!?」
振り向くガイの目に映ったのは、逆方向から戦闘フィールドに向かって落ちる弾道ミサイルの姿だった。
ミサトも与り知らぬ四発目のミサイル。その発射ボタンから手を離す国連軍の将校は、ミサイルの軌跡が映るモニターを見てニヤリと醜い笑みを浮かべる。
「馬鹿正直に気を取られおって………これで終わりだな、GGG……クックックックック」
兵士達は、この上官の突然の凶行に固まっていた。
全速でミサイルを追うガオガイガー。ガイの額に焦りの汗が滲む。
「みんな、逃げろ!!」
ガイは叫ぶ。だが、氷竜達には判っていた。
間に合わない! ………それなら!!
覚悟を決めた勇者達の行動は早かった。
動けないエヴァ二体を庇い、上に覆い被さる氷竜と炎竜。そして、それを守るように両腕を広げ、ミラーコーティングを発動させるビッグボルフォッグ。
「間に合え……ガジェットツールッ!! うおおおおおおおおおおっ!!」
ガイの選択したガジェットツールが、ガオガイガーの尾から分離するのと同時に爆発するN2ミサイル。凶悪なまでの爆発光がディバイディングフィールドに広がり、ビッグボルフォッグを、氷竜と炎竜を、エヴァ零号機と弐号機を、そしてガオガイガーとゴルディーマーグを飲み込んでいった。
「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ミコトの悲鳴が聞こえたのか………それは判らない。だが、それと同時刻、極輝覚醒複胴艦ヒルメのメンテナンスルームで眠る風と雷の龍達の瞳に光が宿ったのだった。
第参拾玖話へ続く