JA管制室の日重スタッフ、そして式典の招待客達は、突然現れた破壊神の姿に呆然となった。
だが時田だけは、ガオガイガーを見詰めながら ワナワナ と震えていた。自分の夢であった巨大ロボットが目の前に現れたことへの喜びか。それとも、自分より優れたロボットを造り出した人物への嫉妬か。それは彼本人にしか判らないことだった。
超翼射出司令艦ツクヨミ。その艦橋で戦闘指揮を執るGGG参謀 火麻ゲキが、新たな指令を下す。
「JA管制室には、まだ招待客が残ってる。 戦闘に巻き込む訳にはいかねぇ………卯都木、ディバイディングドライバーだ!」
「了解! 座標軸固定!」
火麻の言葉を受け、コンソールを操作するミコト。オペレーションシートからの指令に従い、ツクヨミのミラーカタパルトに二つのドライバーキットがセットされ、ミラーコーティングされていく。
「ディバイディングドライバー………キットナンバー03(ゼロサン)、イミッショォォォン!!」
電磁加速により、カタパルトから二つのドライバーキットが射出される。ドライバーキットは上空で接合を果たし、コーティング粒子が剥離すると『ディバイディングドライバー』が完成した。
同時に、ガオガイガーはガジェットフェザーを展開させ、空中へ飛ぶ。そして、その左腕にハイテクツールがドッキングした。
「ディバイディングッ……ドライバーァァァァッ!!」
ディバイディングドライバーがイロウルの足下に打ち込まれる。それによって穿たれた数十cmほどの亀裂は、解放されたディバイディングコアによって見かけ上の直径数kmの穴に拡大し、JA
――――― イロウルを呑み込んだ。
「
グウゥゥッ!?」
「勝負だ、イロウル!!」
ディバイディングドライバーを分離したガオガイガーが、イロウルと対峙するようにディバイディングフィールド内へ降り立った。
「な……何よ!? この穴は!?」
「なるほど、これがディバイディングフィールドなのね。 戦闘による被害を最小限に抑える為に、空間を湾曲させて別の戦闘フィールドを創り出す………素晴らしい発想と技術だわ」
目の前で起こった状況に驚くミサトとは反対に、興味津々という面持ちで目を輝かせるリツコ。
「なに感心してんのよ、リツコ!!
――――― って………何でそんなこと知ってんの?」
「あなたねぇ………『Der FreischUtz』作戦の時にGGGから渡された装備要項に書いてあったでしょう? ガトリングドライバーの性能説明の欄に………。 本当に作戦指揮官の自覚……あるの?」
「うぐっ………!」
リツコに ジトッ とした目で見られ、言葉に詰まるミサト。
「彼らは敵を倒すことより、敵から人々を守ることを最優先にしている………。 彼らが『防衛組織』を名乗っている理由がここにあるわ。 私達とはえらい違いね」
「何よ………私達だって人類を守る為に………」
「使徒を倒す為なら、どんな犠牲も厭わないのでしょう?」
「うっ………!」
ミサトの反論を ピシャリ と封じ込めるリツコ。
「覚悟の違い……か。 考えさせられるわね………」
そう。リツコの言う通り、覚悟の違いなのだ。
確かに使徒を倒せば人類は救われる。しかし、その為に人死にが出ては本末転倒なのだ。人を守る為の戦いで人を死なせてどうしようというのか。
NERVは「戦いに犠牲はつきもの」「仕方ない」で全てを済ませてしまう。確かに正論なのだが、それが『正しいこと』とは限らない。
リツコはいい加減、そんなNERVに嫌気が差していた。
「ツクヨミ降下! 式典招待客の救助に向かう!」
「了解!」
ツクヨミは、未だ避難できていない招待客らを救出すべく、地上に降下した。
すぐさま救助チームを編成し、火麻自らが指揮を執る。
「卯都木、しばらく任せるぞ!」
「はい!!」
火麻はツクヨミの艦橋を離れ、救助チームと共にJA管制室に向かった。
「な……何だね、君達は?」
突然入ってきた見慣れぬ人間たちに、動揺する日重スタッフと招待客。
「GGG、ガッツィ・ギャラクシー・ガードだ! 救助に来た!」
火麻の言葉に管制室内はざわめいた。
「怪我人はいるか? そいつらが最優先だ」
赤十字の腕章を付けたGGG隊員が数人、ストレッチャーと共に入ってくる。
招待客の中には、逃げ遅れて転んだ者や、JAが踏み抜いた天井の瓦礫に当たって怪我をした人間が数人いた。隊員達は、それらを優先的にツクヨミに移動させていく。
他の招待客も、隊員に先導されてツクヨミ艦内に避難していったが、その途中、一人の男が火麻に近寄ってきた。式典用の軍服を着た恰幅のいい男だ。
「いや~~君達、本当に助かったよ。 私は戦略自衛隊の長谷部二将だ。 この件については、改めて日本政府を通じて感謝を述べよう。……で、どうだね? これだけの装備を持つ君達が、何の政治的後ろ盾が無いというのも、今後のことを考えれば深刻な問題だろう? 私が政府に口添えしてやってもいいぞ? んん?」
ニヤついた顔を近付ける戦自の将校。
火麻は、こういう男が一番嫌いだった。それに、今は一刻を争う事態なのだ。戯言に付き合っている暇など無い。
「うるせえぞ!! さっさと艦に乗りやがれ!!」
至近距離で火麻の怒声を浴び、尻を蹴り飛ばされる将校。涙目で逃げていった。
「フン!」
鼻息荒い火麻の背から パチパチパチ……… と拍手が聞こえた。
振り向くと、そこには二人の女性の姿があった。
「赤木博士に………葛城一尉か。 まだ避難してなかったのか?」
「一言ご挨拶を、と思いまして」
「………………」
リツコは軽く頭を下げるが、ミサトは黙ったまま火麻を睨みつけていた。
火麻は当然の如く、その視線を無視する。
「行くぞ! ディバイディングフィールド内とは言え、もし原子炉が爆発したらここも危ない」
「私達も乗せてくれるのですか? NERVの人間ですよ。 不味いのでは?」
リツコは正直に疑問を呈す。仮に、ここで「乗せない」と言われても文句は無かった。自分達は敵対している組織の人間なのだから。
「何をゴチャゴチャと………。 俺達は生命を助ける為に戦っているんだ。 お前達を助けない方がもっと不味い」
そう言うと火麻は、二人を先導するように歩き出した。
「………勝てないわね、私達は」
ここまで意識の違いを見せられると、正直 脱帽だ。彼等の敵は、あくまで使徒。自分達が一方的に敵視していただけなのだ。
リツコは フッ…… と微笑むと、スッキリした面持ちで火麻についていく。
そしてその後ろを、睨み過ぎて醜く歪んだ表情のミサトが歩く。まるで「この偽善者が………」と言わんばかりに。
「いくぞ、イロウル!」
戦闘フィールドでは、遂に戦闘が開始された。先手はガオガイガーだ。
「うおぉぉっ!!」
ガオガイガーは一気に駆け出し、背部スラスターを全開にした。
一瞬でイロウルとの距離が縮まる。
だが、この『恐怖の天使』は慌てなかった。制御コンピューターをハッキングした際、JAの機体性能は全て把握したし、内蔵コンピューターには稚拙ながらも戦闘AIが搭載されていた。そこに入力されていたデータが、イロウルに余裕を持たせていた。
襲い掛かるガオガイガーの右拳を、イロウルは無駄に長い左腕を振るって弾く。
「ぐうっ!」
瞬間、ガイは戸惑った。そのパワーが、今までの使徒とは全く違っていたのだ。
「何だ、この力は!?」
迷いで動きが鈍ったガオガイガーの隙を衝き、イロウルは右腕を鞭のように振り回す。
イロウルのパワーに右腕の遠心力。それらが見事に合わさり、予想を超える攻撃力がガオガイガーを襲った。
「ぐはっ!」
何とか防御に成功したものの、そのパワーに吹き飛ばされる。四肢を踏ん張り、倒れることだけは防いだ。
ツクヨミの艦橋では、火麻が目を見開いて驚いていた。
「ガオガイガーを吹っ飛ばすとは、何てパワーだ!」
同じく艦橋で戦いを見ていたシンは、このパワーの秘密に気付く。
「イロウルは、S2機関の他にもJAの動力リアクターのパワーまで使っています。 あの凄まじい力はその為です」
「そうか! 奴のコアは原子炉と融合しているんだったな」
コクッ とシンは頷く。
「でも、付け入る隙はあります」
シンは、ガイと通信を繋いだ。
「ガイさん! イロウルのパワーは確かに強いですが、防御のA.T.フィールドはそんなに強くありません。 それは本来、イロウルが群体としての形を保つ為に使っているA.T.フィールドの出力を、JAの機体を自由に操る為に使っているからです」
〔つまり、防御力は気にしなくていいってことだな!〕
「そうです! ジェネシックのパワーなら、問題なく突き破れます!」
〔了解だ!!〕
再び戦闘を開始するガオガイガー。
ガイの心に闘志が、勇気が満ちる。Gクリスタルはそれに応え、最強の破壊神の名に相応しい力を生み出した。
だが、イロウルも負けてはいない。S2機関プラス原子炉のエネルギーは、恐怖の天使に破壊神と互角のパワーを与えた。
戦闘中ということもあり、さすがにツクヨミの艦橋には入れなかったが、ミサトとリツコは戦闘の様子を見ようと、外が見える通路に出ていた。
ガオガイガーと互角に戦う使徒が見える。
「強いわね………」
リツコの正直な感想だった。使徒がここまでやるとは思っていなかった。
一方、ミサトは黙ったまま戦闘を見詰めていた。
もしガオガイガーが敗れ、使徒が第3新東京市に侵攻を開始したら………私にコイツが倒せる?
そんな不安がミサトの脳裏を過ぎっていた。
「進化の模索………」
「え? なに?」
不意に呟かれたリツコの言葉。それが聞こえなかったミサトは、思わず訊き返した。
「管制室での調査で気付いたんだけどね。 あの使徒は、常に進化の方向性を模索しているようだったわ。 その答えがアレなのかしら?」
「アレって?」
ミサトの問いにリツコは地上を指差す。その先にはガオガイガーと使徒の姿。
「使徒は、ガオガイガーを超えようとしているのかもしれない………」
殴り合う両者。しかし、ガオガイガーにはサキエルやシャムシエル戦で見せた、あの迫力が感じられない。
それもそのはず。相手は動く原子炉なのだ。一部分でも原子炉を破壊してしまったら何が起こるか判らない。それが、ブロウクンマグナムや両膝のドリルでの攻撃を躊躇わせていた。
それに調子に乗ったイロウルは思わぬ攻撃に出る。間合いを取ると、おもむろに両腕を広げた。
「何だ!?」
〔気を付けて! イロウルの両手にA.T.フィールドの集中を確認!〕
ミコトからの通信。
赤い光がイロウルの掌を包んだ。
「何をする気だ!?」
ガイの問いに答えるように、イロウルは両の掌を繋ぎ合わせ、突撃して来た。
「こいつ! ヘル・アンド・ヘブンを真似て!?」
A.T.フィールドを纏った赤く輝く両拳が、ガオガイガーに迫る。
「ちいっ! プロテクトシェェードッ!!」
予想外の攻撃に戸惑ったガイだが、即座に左腕から防御フィールドを発生させ、真正面から迎え撃った。
ドガガガガガガガガガガガガガガガッ!!何とか防ぐが、次第に、S2機関プラス原子炉のダブルパワーに押され始めてしまう。
「凄いパワーだ! ぐわぁぁっ!!」
吹き飛ばされ、倒れるガオガイガー。
イロウルは休むことなく、さらに攻撃を加えた。両腕を伸ばして襲い掛かる。
「くっ……! 調子に乗るな!!」
掴み掛かろうとするイロウルの腕を逆に掴むガオガイガー。
立ち上がると、図らずも力比べの体勢になった。
だが、攻撃が防がれたというのに、イロウルは ニタァ…… と笑うかの如く、口のように見える部分を上下に開いた。
「な、何だ!?」
突如、ガイは奇妙な感覚に囚われた。身体の中に何かが入ってくる。そういった感覚である。
「ぐうっ………!?」
イロウルを掴んでいるガオガイガーの手に、電子回路のような幾何学模様が浮かんでいるのが見えた。それはJAの機体の中心、イロウルのコアから伸びており、まるで一つの完成された模様のように繋がっていた。
「これは………まさか!?」
その幾何学模様に光が走る。イロウルから何かが送り込まれてきた。
ガイはイロウルの意図に気付き、突き放そうとするが、イロウルの腕はしっかりとガオガイガーを掴んで離さなかった。
「ぐううっ! があああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
突然苦しみ出すガイ。
「ガイ!?」
ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!ガイの身体状況をモニタリングしているコンピューターが警告音を発する。
ミコトは戸惑った。見た目には何のダメージも受けていないのだ。しかし、現にガイは苦しんでいる。
状況確認を急がねばならない。キーボードを叩くミコトの指先は、いつも以上に速く動いた。
「ぬう! いかんぞ、あれは!!」
ガイと同じく、セカンドオーダールームのライガもイロウルの作戦に気付いた。
「不純物が……身体の中に………があぁぁぁぁぁっ! ぐはぁぁっ!!」
内外を問わず、全身を掻き毟られるような苦痛がガイを襲い、堪らず鮮血を吐いた。
「Dr.ライガ、これはいったい!?」
突然のガイの変調。大河には理由が判らない。
「ガイ君の身体にウイルスを送り込んだのね」
「マイくんの言う通りじゃ。 肉弾戦で勝つのは難しいと踏んだのじゃろう。 奴は情報攻撃に切り替えたのじゃ」
大河の問いにマイが答え、ライガが補足した。
「情報攻撃?」
「ガオガイガーにフュージョン中のガイは『超進化動力体』としてジェネシックという名のプログラムシステムの一部、云わばガオガイガーを動かす為のメインコンピューターと化しておる」
「それに気付いたイロウルは、ガイ君にウイルスの送り込み、ガオガイガーのシステムそのものを奪おうとしている………」
「おそらくな。 狡猾な奴じゃよ。 破壊することよりも、自分の物にすることを考えたのじゃ」
「ガオガイガーが使徒になるというのか!?」
大河は、驚愕に目を大きく見開いた。
最強の破壊神が使徒になる。その想像は絶望を呼ぶものだった。
ウイルスに全身を侵され、力無く片膝をついて屈するガオガイガー。
イロウルは「勝った!」と言わんばかりに下卑た雄叫びを上げるのだった。
沈黙がセカンドオーダールームを包む。
大河とライガ、そしてマイは、何か打開策はないかと脳をフル回転させる。猿頭寺たちオペレーターも、過去のデータを検証し、各々が状況打破を模索する。
しかし、それを打ち破る報告が牛山に届いた。
「極輝覚醒複胴艦ヒルメ内、メンテナンスルームから急報です!」
屈したガオガイガーを完全に自分の物にしようと、イロウルはさらにウイルスを送り込もうとする。
しかし、そんなイロウルの腕をガオガイガーの手が掴み直した。徐々に力が増していき、ビキッ!と装甲がヒビ割れた。
イロウルは慌ててガオガイガーを離そうとするが、今度はガオガイガーが離さなかった。
ツクヨミのオペレーターシートでガイの身体状況を警告していたコンピューターの警告音が止む。ハッ、とミコトは俯いていた顔を上げた。
「ガイ!?」
ガオガイガーの瞳に光が宿る。
「心配するな、ミコト。 俺は超人エヴォリュダー。 パルパレーパのケミカルナノマシンすら撥ね返したんだ。 この程度の………プログラムなどっ!!」
今度は逆に、ガオガイガーのコアであるガイの身体からイロウルに向かって光が走った。
ガイはエヴォリュダーの能力を駆使し、送られてきたウイルスを無害なものに、そしてイロウルにとっては有害なものにプログラムを書き換え、送り返したのだ。ジェネシックオーラのおまけを付けて。
光がコアの中に入り込むと、今度はイロウルが苦しむこととなった。JAの機体が震え、関節部分からオイルが激しく噴出す。
ガイは、この隙を逃さなかった。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
一気にパワーを全開にして、動きの鈍ったイロウルの両腕を引き千切る。装甲が砕け、部品が飛び散った。
「そのコア! 貰うぞ!!」
ガイはヘル・アンド・ヘブンの体勢に入ろうとする。一瞬、ガイの頭に原子炉爆発の光景が過ぎるが、無理やり振り払った。
しかし、そこにライガから通信が入った。
〔ガイ! 聞こえるかの?〕
「伯父さん!?」
〔喜べ! 最高の助っ人を連れてきてやったぞい!!〕
「助っ人!?」
そのガイの目に飛び込んできたのは
―――――「ヒルメ!?」
GGG機動部隊の運搬・回収・整備を担当するディビジョンⅨ・極輝覚醒複胴艦 ヒルメであった。
ヒルメから降下してくる二つの光。よく見ると、それは青色のクレーン車と赤色のハシゴ消防車であった。
「システム・チェーェェンジ!!」
それぞれの車体がシステムを組み替え、人型に変形する。
「氷竜!」
「炎竜!」
同型AIを持つ双子のビークルロボ、氷竜と炎竜が遂に目覚めた。
「氷竜! 炎竜!」
ガイは喜びを隠せなかった。当然だろう、頼もしい仲間が甦ったのだ。
「隊長殿、遅くなりました」
兄の氷竜。
「復活したぜっ!」
そして、弟の炎竜。
「よく目覚めてくれた!」
「隊長殿、私達の役目は判っています」
「派手にブチかましてやろうぜ!」
「ああ! 頼むぞ!」
ガオガイガーは、再びイロウルに向き直った。
「いくぞ、炎竜!」
「判ってるぜ、氷竜!」
同調率を示すシンパレート値が急上昇する。既に兄弟の心は一つなのだ。
「「シンメトリカル・ドッキングッ!!」」
青と赤の勇者は空に舞い、一つの機体へとドッキングした。
「超ォォォォ竜ゥゥゥゥ神ィィィィィン!!」
兄弟ロボット・氷竜と炎竜は、そのAIのシンパレート値が頂点に達した時、『シンメトリカル・ドッキング』によりハイパワーロボット・超竜神に変形合体するのだ。
「キカイダー?」
………………古いぞ、ミサト。
「俺の後ろにはあいつらがいる………もう、恐れるものは何も無い! トドメだ、イロウル! ガジェットツールッ!!」
尾の一部が分離し、瞬時に形態を組み替えると、それはガオガイガーの両拳に装着された。
「ヘルッ……アンド……ヘブンッ!!」
攻撃と防御、二つの力が両の掌に集中していく。
「ゲム……ギル……ガン……ゴー……グフォ………はあっ!!」
両掌を繋ぐことで溢れ出たエネルギーは、両拳からE.M.トルネードとなって放たれた。その爆発的なエネルギーの奔流に、イロウルは身動きを封じられる。
「受けてみろ! これが真のヘル・アンド・ヘブンだ! ………ウィーータァァァッ!!」
最後の言霊によって一点に集中されたエネルギーは、天使をも貫く最強の矛となり、JAの中心を
――――― イロウルのコアを正確に捉えた。
「イレイザーヘッド……射出っ!!」
火麻の怒号の如き指令がツクヨミの艦橋に響く。
ミラーコーティングされたメガトンツール『イレイザーヘッド』が戦闘フィールドに向かって射ち出された。
「うおぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
ガオガイガーはコアをJAの中から抜き取る。原子炉と融合していようが関係なかった。
己の半身となっていたイロウルのコアを力任せに抜き取られた原子炉は、それに反発するかのように溜め込まれていたエネルギーを解放する。
「原子炉圧壊! 爆発します!!」
猿頭寺の報告。
セカンドオーダールームの全員に、さらなる緊張が走る。
次の瞬間、大爆発の閃光がモニターを、そして戦闘フィールド内を白く染め上げた。
「イレイザーヘッド、発射ぁぁっ!!」
ドオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!鼓膜が破れるのでは? と思われる程の爆音と共に、全てが消滅していく
――――― ことはなかった。爆発エネルギーは一本の巨大な光の柱となって、天高く駆け上がっていったのだ。
「な、何これ!?」
「爆発エネルギーが全部 上へ流れていく!?」
ミサトとリツコは見たことも無い光景に目を疑った。
やがて光が全て晴れ、戦闘フィールドに残っていたのは二体のロボット。
イロウルのコアを携えたガオガイガー。そして、イレイザーヘッドの銃身を構えた超竜神だけだった。
「イレイザーヘッド、正常稼動を確認!」
「爆発エネルギー及び放射能、宇宙空間へ全放出!」
「戦闘フィールド内、放射能反応ゼロ!」
「パターン青、消滅! 使徒イロウル、殲滅されました!」
「ミッション・コンプリート!!」
オペレーター達の報告をライガが締め括ると、セカンドオーダールームは喜びに沸いた。絶体絶命のピンチを見事に凌いだのだ、無理もないだろう。ライガに至っては、あまりの喜びようにジェットスケーターでセカンドオーダールーム内を飛び回っている。いつものことと言えば、いつものことなのだが………。
そんな中で
―――――「よくやってくれた、勇者達!!」
長官である大河は、万感の思いでモニターに映っている勇者達を称えた。
そして、それと同時に彼女は、自らの運命を変えた。
「決めたわ!」
リツコの突然の大声にびっくりするミサト。
「何よ、急に?」
「私、GGGに行く」
「へ!?」
目が点になるミサト。
「ミサト、私………NERVを辞めるわ」
第弐拾玖話へ続く