JAの機体全体に斑点のように現れていた赤い光が、各部分の変態を終えるごとに一箇所に集まっていく。そこは、JA中心部にある動力リアクター。俗に原子炉と呼ばれる場所だった。
全ての赤い光が集まると、今度は原子炉が変態を始めた。
ゴワゴワゴワ……… という音が聞こえるような蠢き方で姿を変える原子炉。一部が徐々に丸みを帯びてきたかと思うと、それは瘤の如く盛り上がり、完全な球体となった。
JAの機体の前面部
――――― 人間で言うと鳩尾に当たる部分に亀裂が走る。縦に生まれたその亀裂が観音開きに開くと、そこに原子炉から生まれた赤い球体が姿を見せた。
それと同時に、頭部正面に見える白い歯のような放熱用スリットが上下に裂け、本物の口のように、涎を思わせる粘液を吐き出しながら雄叫びを上げた。それは原子炉の稼動音なのだろうが、時田やミサト達には獣の咆哮に
――――― そして、自分という存在の誕生を知らせる『産声』のように聞こえた。
JAの変わり様に時田たち日重スタッフを始め、披露会招待客らは言葉を失う。
だが、リツコだけは違った。全員の目がJAに注がれている中、彼女は一人、JAの制御盤に歩み寄った。
恐る恐る手を触れる。A.T.フィールドの展開は無かった。
安全だと信じて、制御盤のコンソールを操作する。この異常現象の原因を突き止める為だ。
「(JAが元から使徒だったということは有り得ないわ。 おそらく、何らかの方法で寄生したのね。 ………なら、いったい何処から?)」
リツコがそんな思いに囚われている頃、一人の作業着姿の人物が管制室の外に出た。使徒に寄生されたJAを見て クスッ…… と微笑むと、目深に被っていた帽子を脱ぐ。蒼銀の髪が陽の光に当たって煌めいた。
「………お膳立ては終わったわ。 ………後はあなた次第よ、イロウル………」
そう言うと、その人物は僅かに顔を赤らめ
――――― 「………スーツ姿も似合うのね、碇くん………」
何処かへ消え去った。
GGGオービットベース。
「状況を報告せよ!」
警報が鳴り響くメインオーダールーム。そこに長官執務室から大河が降りてくる。メインオーダールームと長官室は、中央部分のリフトによって繋がっているのだ。
「旧東京埋立地区にA.T.フィールド反応を確認しました。 サテライトビュー、メインスクリーンに出します」
猿頭寺の報告と共にメインスクリーンが開かれる。
「何だ、あれは!?」
出された映像に大河は驚愕した。そこには、生物とも機械とも思えぬ人型の物体が映っていた。
猿頭寺が、さらに報告を続ける。
「場所は旧東京再開発臨海部、国立第3試験場です」
「何じゃと!? 確か、あそこでは今日、日本重化学工業共同体によるJAの起動テストが行われていたはずじゃ!!」
ライガの言葉に大河は ハッ! と気付いた。
「では、まさか………あれはJAか!?」
「その様です。 シン君の記憶、及び諜報部が入手したJAのデータと類似点が多々見られます」
猿頭寺がコンソールを操作すると、モニターにJAのデータが映し出される。
「A.T.フィールド反応ハJAから観測されていマス」
スワンの報告と共に、さらなるデータがモニターに映る。
「しかし、あの変わり様は何だ?」
「それは僕から説明します!」
大河の問いに答えるかのように、二人の人物がメインオーダールームに入ってきた。
「シン君! マイ博士!」
大河の視線の先には、JAの完成披露式典に出席していたはずの綾波親子がいた。この非常事態に二人は急遽、スキル=レリエルを使って移動してきたのだ。
「おお! シン君にマイ君、無事じゃったか。 まあ、シン君がついているのじゃから、大して心配してなかったがのう」
「非道いこと言いますね、ライガ博士」
苦笑いのシン。
「冗談はともかく……シン君、報告を聞こう」
「はい」
シンは、地上で見てきたことを漏らさず報告した。
その報告にメインオーダールームは驚愕に包まれる。予想外の使徒襲来に。
「イロウル
――――― 11番目が来たというのか!?」
「その順番はもう当てにできません。 状況は既に裏死海文書を超えています」
ラミエルの時もそうだった。大河はシンの言葉に頷く。
「しかし、何故JAに?」
「狙いは、おそらくガオガイガーじゃな」
「ガオガイガーですカ?」
猿頭寺の疑問にライガが答え、それをスワンが訊き返す。
「ライガ博士の言う通りです。 見てください」
シンはJAが映っているモニターを指差す。そこには、完全に変態を終えたJAが
――――― いや、使徒イロウルが、上空を見詰めるように上を向いたまま、じっと動かないでいた。
「本来ならば第3新東京市に向かうはずの使徒が、未だあそこにいる。 ………奴は待っているんです。 自分達、使徒の天敵となった破壊神を………」
「では、ガオガイガーと戦う為に?」
「おそらく」
大河の問いにシンは頷いた。
「本来のイロウルは、細菌のような姿をしています。 しかし、それではガオガイガーの相手にならない。 だから、対抗する為に機械の身体を手に入れた」
「それがあの姿か………」
大河は改めてモニターのイロウルを見た。その禍々しさは、司りし天使の名
――――― 『恐怖』に相応しいものを感じさせた。
シンは、さらに報告を続ける。
「まだ地上には逃げ遅れた人達が大勢います。 彼等を助けないと」
「うむ! 火麻君、機動部隊出撃だ!」
「おうよ! 行くぞ、卯都木!!」
「了解!!」
「僕も行きます!」
火麻、ミコトと共に、シンがメインオーダールームから出ていく。
「ようし! 総員! 第一級戦闘配備!!」
大河の指令が飛び、超翼射出司令艦ツクヨミの発進準備が始まる。
これから始まる戦闘に支障が無いよう、データの収集を続けるオペレーター達。そんな中、チーフオペレーター・猿頭寺からの報告がGGGにさらなる緊張を齎した。
「大変なことが判りました。 JAの内部構造をスキャンしたところ、内部の動力リアクターとイロウルのコアが一体化しています!」
「なぬーーっ!?」
ライガの額に嫌な汗が滲んだ。何故なら現在、全てを光に変える『ゴルディオンハンマー』が使えない状態にあるのだ。それは、致命的なハンデであった。
「ゴルディーマーグの整備状況は!?」
ライガは牛山の報告を待つ。
「
――――― オーバーホール完了まで、あと3時間12分!」
ヒルメ内のドックでは急ピッチで整備が進められていたが、これが限界だった。
「それでは間に合わん!」
ライガは思わず舌打ちしてしまう。
「ぬうっ! ガイは!?」
〔ツクヨミ内でギャレオンとのフュージョンに入りました! ガジェットガオー装着モードで出撃待機を予定!〕
ツクヨミのオペレーターシートに座ったミコトからの報告。
「ゴルディーマーグのオーバーホールが終わらない以上、コアの摘出は『ヘル・アンド・ヘブン』に頼らざるを得んじゃろう。 じゃが、無理に取り出せば………」
ライガの言わんとすることが解ったのか、スワンはデータを調べる。
「Oh! 計算しマスと、半径10km圏内ハ完全に壊滅しマス!」
計算結果を聞き、ライガはその様子を思い浮かべた。コアを抉り出すと同時に大爆発を起こすJAの原子炉………。
自分の想像に恐怖し、背筋が冷たくなるライガ。身体が ブルッ…… と震えた。
大河の脳裏にもライガと同じ想像が過ぎった。思わず拳を握り締める。
「イレイザーヘッドが使えれば………」
つい愚痴を零してしまった大河。
あらゆるエネルギーを宇宙空間に放出してしまうメガトンツール『イレイザーヘッド』。しかし、それが使える勇者ロボは、未だ眠ったままなのだ。
「諦めてはいけませんわ、長官。 必ず何か方法があるはずです」
「………そうですな、マイ博士」
笑顔で励ましてくれるマイに、大河は自信を取り戻す。
「ツクヨミ、出撃準備完了!」
牛山の報告に大河は頷き
――――― 「GGG機動部隊! 出撃っ!!」
怒号の如き指令がメインオーダールームに響いた。
地上、JA管制室。
ミサトはJAの制御盤を睨みつけていた。
「何でこんな物がA.T.フィールドを張るのよ!?」
「落ち着きなさい、ミサト。 正確にはこのコンピューターが使ったんじゃないわ。 これにハッキングしていた奴が使ったのよ」
日重スタッフに代わってコンピューターを操作するリツコ。緊急事態に部署も所属も関係ないというリツコの説得で、時田らと共に状況確認に当たっている。
「だから、それはどいつよ!!」
目が血走っているミサト。
「アレよ」
リツコが指差した先には、姿を変えたJAがあった。
「逆ハックして確認したわ。 JAは使徒に乗っ取られたのよ」
「使徒!!」
日重スタッフらは驚愕し、ミサトは目を輝かせる。
ミサトは携帯を胸ポケットから取り出し、ダイヤルし始めた。
「何処へ掛けるの?」
「決まってるでしょ! NERV本部よ!!」
「何しに?」
「何しに………って、零号機の出撃よ!」
判りきったことを聞くな! と言いたげなミサトの表情。
だがリツコは、 ハァ……… と嘆息して、説明し出す。
「あのね、ミサト………」
その頃、暢気にも『某所』で行われている愚か者達の集いがあった。
「六分儀君………第5使徒戦においてGGGと共闘したそうだね」
「使徒殲滅を優先させました。 止むを得ない事象です」
「止むを得ない………か。 言い訳にはもっと説得力を持たせたまえ!」
「最近の君の行動には疑問を感じるものが多い!」
「GGGの処置………どうするつもりかね?」
「未確認情報だが、エヴァ初号機は既にGGGによってその存在を消されたという報告がある」
「何だと!?」
「そんな報告はNERVから挙がってきていないぞ!」
「本当かね、六分儀君?」
「………………」
「何故、黙っている!?」
「答えたまえ、六分儀君!」
RRRRRRRRRR! RRRRRRRRRR! RRRRRRRR………突然、電話の呼び出し音が鳴った。
ゲンドウが自分の机の引き出しを開け、そこに入っていた電話を取る。
「冬月、審議中だぞ」
掛けてきた相手を確認することなく言い放つゲンドウ。この電話に掛けることのできる人物は限られている。相手が誰かなど、ゲンドウには最初から判っていた。
だが、その内容までは判らなかったようで
――――― 「何だと!?」
ゲンドウの表情が変わる。
それに気付いた人類補完委員会の面々は、電話の内容に興味を覚えた。普段、何事にも自分のペースを崩さず、表情の読めないゲンドウだ。それを変えてしまうものとは………。
「………判った」
電話を切り、引き出しを閉めるゲンドウ。
「使徒が現れました。 続きは、また後ほど………」
予想も付かなかったゲンドウの言葉に、静まり返る委員会の面々。しかし次の瞬間、嘲笑が沸き起こった。
「ククッ………何を言い出すかと思えば。 笑わせるな! 次の出現は太平洋上のはずだ」
「我々を馬鹿にしているのかね?」
「己の分を弁えたまえ、六分儀君」
いつの間にか、会議室には12枚のモノリスが浮かんでいた。
人類補完委員会は、その正体を現す。
【 S E E L E 】世界を裏から支配する政治的秘密結社である。
その実は、己の正体すら公表することのできない小心者の集まり。
「MAGIによりA.T.フィールド反応・パターン青が検出されました。 それでもお疑いで?」
「情報操作は君の十八番だろう?」
「そんなにこの会議が嫌かね?」
更なる嘲笑が響く。
「NERVは使徒殲滅が最優先です。 これで失礼致します」
退席しようとするゲンドウ。しかし、SEELEはそれを許さない。
「特務機関NERVとしてはそうだが、我々と君にとってはそうではなかろう?」
「補完計画を確実に遂行する為の予備として造られたリリスの分身、エヴァンゲリオン初号機」
「その存在が消滅したということは、既に失敗が許されない状況になったということだぞ」
「初号機が造り出されるまで、どれだけの経費と時間が掛かったのか判っているのか?」
「やはり、君のような者にNERVを任せたのは誤りだったのかも知れんな」
「忘れてもらっては困るよ、六分儀君。 君の代わりなど幾らでもいるということを」
「ぐっ………!」
ゲンドウは唇を噛み締める。自分の目的を果たすまで、絶対にこの地位から転がり落ちる訳にはいかないのだ。何とか打開策を考えねば………と、思案を廻らす。
「まあ、待て」
その言葉に静まり返る暗闇。それは『SEELE 01』と記されたモノリスから発せられた言葉であった。
「六分儀はこれまで、我等の同志として存分に力を発揮してくれた。 大目に見てもよかろう」
「しかし、議長!」
議長と呼ばれたSEELE 01。このモノリスの正体こそ、SEELEのTOP『キール・ローレンツ』。
反論を無視してキールは続ける。
「六分儀。 我等の悲願、忘れるでないぞ」
「承知しております」
フッ……… とゲンドウを映していたホログラフが消え、暗闇にはSEELEのモノリスだけが浮かんでいる形となった。
「議長、本当によろしいので?」
「奴の首など何時でも切れる。 動ける間は動いてもらう。我々の為に」
「なるほど。 それに、もうすぐ『鈴』がNERVに届きますからな」
「『リオン・レーヌ』と共に」
「ならば問題ないな」
「全て修正可能です」
「では
――――― 」
「「「「「「「「「SEELEのシナリオ通りに」」」」」」」」」
道化は、何処までいっても道化である。
老人達の厭味から何とか逃げ出すことに成功したゲンドウは、発令所に入るとエヴァ零号機の発進を指示した。しかし、冬月がこれに待ったを掛ける。零号機は発進不可能だと告げた。
「なぜ零号機が発進できん!?」
「本気で言っているのか、六分儀?」
ミサトの言葉にリツコが呆れたように、冬月もゲンドウの言葉に呆れ果ててしまった。本当にお前はNERVの総司令なのか?………と。
「零号機は今、換装作業中よ」
「へっ!?」
ミサトは、リツコの言うことが咄嗟に理解できなかった。
「確か、作戦部の方からの言われたと記憶しているんだけど………。 『このままの零号機では戦闘能力に不安がある。 だから、早急に戦闘用に調整し直すべきだ!』とね………葛城作戦課長さん?」
「あ……あら? あははははははははははは」
ようやく思い出し、乾いた笑いを発するミサト。
「それにね、もう遅いわ。 ほら、来た」
リツコの視線の先には、既に見慣れたGGGの飛行艦の姿があった。
「ツクヨミ、旧東京上空に到着しました!」
「頼むぞ、勇者………」
ここまで来たら、もう何も言うことは無い。ただ見守るだけの大河であった。
「ガイガー、出撃する!」
〔待って、ガイ! イロウルのコアを無事に抜き取る方法を探らないと! ヘル・アンド・ヘブンでは危険すぎるわ〕
「大丈夫だ! 原子炉の爆発くらい、ジェネシックアーマーを全開にすれば耐えられる!」
〔確かにガオガイガーの機体は耐えられるかもしれない。 でも、ガイは………〕
ミコトの心配は、爆発の衝撃にガイの身体そのものが耐え切れないのでは? ということだった。それに、ヘル・アンド・ヘブンは攻撃と防御のエネルギーを一点に集中させる技の為、放った後、一時的にガオガイガーの防御力はグンと下がってしまう。そうなったら機体だって危うい。
しかし、ガイは自信を持って断言した。
「ミコト、俺は超人エヴォリュダー。そして、破壊神ジェネシックだぜ!」
何の揺るぎも無いガイの言葉。ミコトは覚悟を決めた。いや、ガイを信じた。
〔………判ったわ。 気を付けてね、ガイ。 私も全力でサポートするわ!〕
「サンキュー、ミコト」
〔ガイガー発進、どうぞ!〕
ガジェットガオーを背に装着したガイガーにミラーコーティングが施され、電磁加速によりツクヨミのカタパルトから射出される。
ミコトの表情に、もう迷いは無かった。
凄まじいスピードでイロウルがいる国立第3試験場に着くガイガー。ミラーコーティングだけで無く、ガジェットガオーを装着していたことがプラスになったようだ。
「ガジェットガオー、分離!」
イロウルの前に降り立つガイガー。そこにライガから通信が入る。
〔気を付けるんじゃ、ガイ! 奴は既に、単なる使徒とは別種の存在じゃぞ!!〕
「了解!! 機械との融合か………ゾンダーを思い出すぜ」
イロウルを睨みつけるガイ。それに応え、ニタァ…… と笑うイロウル。
「初っ端な全力でいかせてもらう! ジェネシックマシン!!」
ガイはオービットベースに合体要請を出した。
「長官! ガイガーよりファイナルフュージョン要請シグナルを確認しまシタ!」
スワンから報告が入る。大河には何の異論も無かった。
「うむ! ファイナルフュージョン、承認っ!!」
「承認シグナル、ツクヨミに転送します」
猿頭寺が前線司令部であるツクヨミへ承認シグナルを送信する。
「オーダールーム、コレよりセカンドへ移行しマス」
スワンが傍らのレバーを操作すると、メインオーダールームは下降を始めた。作戦司令室である『セカンドオーダールーム』に移動するのだ。
「オービットベースより入電! ファイナルフュージョン、承認されました!」
そう報告が入ると、旧東京上空を飛行するツクヨミの艦橋ではGGG参謀火麻が「待ってました!」とばかりに指令を下す。
「ようし、卯都木ぃっ!!」
「了解! ファイナルフュージョン…………ジェネシック……ドラーァァァイブッ!!」
振り下ろされたミコトの拳が、ドライブキーの保護プラスチックを叩き割ると、ファイナルフュージョンプログラムが起動した。
「ファイナルッ……フュージョンッ!!」
ガイガーは腰部スラスターを噴かせ、空中に飛び上がると、ファイナルフュージョン保護のE.M.トルネードを発生させる。
イロウルは、合体を阻止しようとE.M.トルネード内に入ろうとする
――――― が、いきなり後頭部にガジェットガオーの強烈な体当たりが直撃した。
「
グオッ!」
前方につんのめった所に、今度は正面からブロウクンガオーとプロテクトガオーが突貫する。
そして、スパイラルガオーとストレイトガオーがイロウルの足下の地面を突き破り、崩れた地面に脚をとられたイロウルは、勢いよく転倒してしまう。
ジェネシックマシンはE.M.トルネード内に進入すると、合体フォーメーションに入った。
それぞれが己の機構を組み替え、破壊神の各パーツを成し、合体していく。
そして最後に、Gクリスタルの光を額に宿した鋼鉄の兜(ヘルム)が装着されると、エネルギーアキュメーターで構成されたオレンジ色の髪を靡かせた、最強の勇者王が姿を現した。
その力を鼓舞するかのように両の拳をぶつけ合うと、溢れ出たエネルギーが放電と火花となって飛び散った。
「ガオッ! ガイッ! ガーァァァッ!!」
黒鉄の巨神がイロウルの前に立ちはだかる。
イロウルは、待ち焦がれた恋人がようやく現れたと言うように、禍々しい笑みを深くした。
その頃、ファーストチルドレン・エヴァ零号機パイロットである綾波レイはというと
――――― 「新刊が出てるわ。 買わないと………」
妖しい文庫本を購入中だった。
因みに、使徒襲来の知らせを受けてNERV保安諜報部の黒服達がレイを本部に連れて行こうとしたが、「お嬢様のお買い物を邪魔するな!」と、碇家のガードが全て殲滅。使徒はGGGに任せるように、と碇老から言われているのである。
なお、NERVに持たされた携帯は、自室の机でブルブル震えていた。(マナーモード設定中)
というわけで、レイは何の気兼ねなく、ヒカリ達とのショッピングを楽しんだ。
第弐拾捌話へ続く