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No.226の一覧
[0] 新世紀エヴァンゲリオンFINAL ~勇気と共に~(×勇者王ガオガイガー)[SIN](2008/03/10 18:47)
[1] 予告篇[SIN](2005/01/23 22:16)
[2] プロローグ[SIN](2005/04/02 12:59)
[3] タイトル[SIN](2005/03/14 02:14)
[4] 第壱話 【彼方より来るもの】[SIN](2005/04/02 13:02)
[5] 第弐話 【今、ここにいる理由】[SIN](2005/04/02 13:07)
[6] 第参話 【思いがけない再会】[SIN](2005/04/10 01:21)
[7] 第肆話 【勇者王 降臨】[SIN](2005/04/02 13:13)
[8] 第伍話 【破壊の神 VS 福音を告げる者】[SIN](2005/04/02 10:27)
[9] 第陸話 【初号機 消滅】[SIN](2005/04/02 12:56)
[10] 第漆話 【目覚め】[SIN](2005/04/02 19:01)
[11] 第捌話 【罪に塗れし過去の業】[SIN](2005/03/30 00:28)
[12] 第玖話 【邂逅】[SIN](2005/04/10 00:19)
[13] 第拾話 【紅玉(ルビー)の輝きが消えた時………】[SIN](2005/04/30 01:28)
[14] 第拾壱話 【訪れる者たち】[SIN](2005/05/01 09:29)
[15] 第拾弐話 【そして少女は、家族を手に入れた】[SIN](2005/05/02 13:20)
[16] 第拾参話 【騙す者、騙される者】[SIN](2005/05/02 22:05)
[17] 第拾肆話 【 影 】[SIN](2005/05/03 10:23)
[18] 第拾伍話 【大切な日々の温もりを】[SIN](2005/05/04 02:38)
[19] 第拾陸話 【疑念】[SIN](2005/05/04 13:16)
[20] 第拾漆話 【戦場の意味  前篇】[SIN](2005/05/04 18:16)
[21] 第拾捌話 【戦場の意味  後篇】[SIN](2005/05/04 23:57)
[22] 第拾玖話 【暗躍する少年少女】[SIN](2005/05/06 00:38)
[23] 第弐拾話 【天使の実力(チカラ)】[SIN](2005/05/23 23:13)
[24] 第弐拾壱話 【揺るぎない決意】[SIN](2005/05/23 22:59)
[25] 第弐拾弐話 【 Der FreischUtz 】[SIN](2005/05/23 23:36)
[26] 第弐拾参話 【 激戦! 第3新東京市 】[SIN](2005/05/27 02:40)
[27] 第弐拾肆話 【 この手に望む、不変なる日常 】[SIN](2005/05/29 20:45)
[28] 第弐拾伍話 【 招かれざる客(ゲスト) 前篇 】[SIN](2005/05/30 00:56)
[29] 第弐拾陸話 【 招かれざる客(ゲスト) 後篇 】[SIN](2005/05/31 00:20)
[30] 第弐拾漆話 【 標的は獅子 】[SIN](2005/06/01 00:06)
[31] 第弐拾捌話 【 恐怖を祓う竜神 】[SIN](2005/06/02 23:23)
[32] 第弐拾玖話 【 計画(プロジェクト) 】[SIN](2005/06/06 01:55)
[33] 第参拾話 【 紅の少女 】[SIN](2005/06/13 03:10)
[34] 第参拾壱話 【 白き方舟 】[SIN](2005/06/13 22:53)
[35] 第参拾弐話 【 巨神激闘 】[SIN](2005/06/14 12:14)
[36] 第参拾参話 【 旋律が呼ぶ不死鳥の翼 】[SIN](2005/06/15 01:13)
[37] 第参拾肆話 【 SEELEのダミープラグ研究施設 】[SIN](2005/06/27 01:40)
[38] 第参拾伍話 【 紡がれる絆 】[SIN](2005/07/17 22:06)
[39] 第参拾陸話 【 想い、心 重ねて 】[SIN](2005/07/18 22:43)
[40] 第参拾漆話 【 蒼(あお)と紅(あか) 】[SIN](2005/07/19 01:27)
[41] 第参拾捌話 【 閃光の果て 】[SIN](2005/07/21 00:15)
[42] 第参拾玖話 【 悪意の置き土産 】[SIN](2005/11/25 18:10)
[43] 第四拾話 【 双 頭 飛 龍 】[SIN](2005/11/25 17:22)
[44] 第四拾壱話 【 予想外の訪問者 】[SIN](2006/03/19 23:28)
[45] 第四拾弐話 【 Global movement (前篇) 】[SIN](2006/05/06 18:26)
[46] 第四拾参話 【 Global movement (中篇) 】[SIN](2006/05/06 18:37)
[47] 第四拾肆話 【 Global movement (後篇) 】[SIN](2006/11/26 14:09)
[48] 最終章 予告篇[SIN](2006/12/10 22:11)
[49] 第四拾伍話 【 心の隙間の埋め方は 】[SIN](2008/03/10 19:59)
[50] 第四拾陸話 【 反撃の狼煙 】[SIN](2009/03/30 03:25)
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[226] 第弐拾壱話 【揺るぎない決意】
Name: SIN 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/05/23 22:59




NERV本部、中央作戦室・発令所にGGGから通信が入る少し前。

GGGオービットベースの司令長官執務室において、大河はある人物の来訪を受けていた。




「今回の使徒襲来………厳しいようですな」

「あれほどまでに能力をUPしているとは思っていなかったので………正直、驚いております」

「GGG単独では難しいと?」

「倒せないことはない、とDr.ライガや獅子王ガイ機動隊長は申しておりますが、第3新東京市の被害も馬鹿にならないものがあります」

「犠牲を出してまで使徒を殲滅しても………ですか?」

「それではNERVと何も変わりません」

「その通りですな。 あなた達がこの世界に来た意味が無い」

「はい」




男は、おもむろにソファーから立ち上がり、執務室の窓から外を見る。そこから見える、青く輝く母なる星の姿を。




「シン坊やレイ嬢ちゃん………そして、アスカちゃん――――― でしたか? 苦労を掛けますね。 本来ならば、全て大人の仕事だというのに………」

「悔いるのは後にしましょう。 やるべきことを全て終えた後で」

「そうですな」




そう言うと、男はまたソファーに戻った。




「大河長官。 NERVとの交渉――――― 特に六分儀との交渉は注意してください。 悪知恵だけには頭が働く男ですからな」

「肝に銘じます。 お任せください」

「では、これで失礼させてもらいます。 吉報を待っております」

「お忙しいところを、わざわざ有り難うございました。 グランハム事務総長」




















ジオフロント内、NERV本部 病院施設。






 サァ…………サァ…………






半分ほど開けられた病室の窓。そこから涼やかな風が流れ込み、微かにカーテンを揺らす。

『地底』という密閉空間の常か、完全完璧に空調が整えられたジオフロントの中は、地上の茹だる様な暑さとは無縁の世界。空気循環の為、ときおり流される人工の風は、ここで生活する者にとって無くてはならない清涼剤だ。

そして、これらの恩恵は、この病室のベッドで眠る少女――――― 綾波レイにも与えられていた。

つい数時間前の第4使徒戦。

この戦いでエヴァ零号機からのダメージ・フィードバックを受けて気絶した彼女は、『いつもの』と言ってしまえば語弊があるが、前回の第3使徒戦、そして前々回の零号機暴走事故の時と同じように、この病院――――― この病室へ運ばれていた。

怪我をしたというわけではない。身体的疲労だ。静かに休んでいれば、すぐにも回復するはずなので、別段、点滴や心電図などの医療機器は置かれていない。ただ、彼女が眠るベッドがあるだけだ。

身体を休めるには最高と言ってもいい環境で、レイは心地良くまどろんでいた。しかし暫くすると、その心地良さとはまた違った別の温もりが、彼女を包み始めた。

温もりは、急速に意識を覚醒させていき、レイはゆっくりと目を覚ました。




「………知ってる天井」




彼女にしてみれば三度目――――― というより、『以前』から数えれば、何度も何度も世話になった病室だ。覚えてしまうのは当然だろう。




「………あ」




ふと、右手から先程の温もりを感じた。

そちらに視線を向けると、そこには、両手で自分の右手を握り、優しい眼差しで見詰めている愛しき母がいた。




「………お母さん」

「あら、起こしちゃったかしら? ごめんなさいね」

「ううん……いい」

「大丈夫?」

「うん………お母さんの手……温かい」

「そう?」

「………大好き」

「フフ……ありがとう、レイ」




満面の笑顔を向け、優しく娘の頭を撫でるマイ。レイも自然と微笑み返し、目を細めて母の温もりを甘受する。




「………あ、お兄ちゃんは?」

「シンはGGGに行ってるわ。 作戦会議中よ。 私は、一足先にクシナダで地上に降りたの」




クシナダとは、GGGディビジョンⅧ・最撃多元燃導艦タケハヤの艦首にドッキングしている脱出兼偵察艇の小型艦だ。航宙能力、大気圏突入能力、重力下飛行能力を有し、様々な用途に使用されている。この世界に来てからは、NERVや戦略自衛隊などの組織に見つからないようにステルス機能を追加され、主に隊員の地上とオービットベースとの行き来に使われている。

因みに、シンが異次元空間でGGGと出会った時に見た黄色の艦とは、このクシナダであった。




「………お母さん」

「ん?」

「ごめんなさい。 心配かけて………」

「いいのよ、こうして無事だったんだから。 それにね、あなたのおかげでガイ君は助かったのよ。 ミコトさんも言ってたわ、ありがとうって」

「………ガイさん……無事だった………よかった」




レイは、ほっ…… と息をついて安堵した。それが一番気掛かりだったからだ。




「だから、安心して休みなさい。 後はGGGに任せてね」

「………でも、使徒は」

「レイ」




マイは少し厳しい表情でレイの言葉を遮った。




「………お母さん?」

「私はね、あなたにチルドレンなんて続けて欲しくないの。 あなたは充分に頑張ったわ。 この世界でも、前の世界でも」

「………………」

「だから、もうあなたは戦わなくていいの。 子供は戦争なんかしちゃいけないわ」

「でも、私は―――――






 コンコン






またもやレイの言葉を遮って、今度は病室のドアがノックされた。




「はい?」

「失礼します」




訪れたのは葛城ミサト。珍しく真面目な顔で入ってきた。

さすがの彼女も、部下の母親がいる手前、おちゃらけることはできない。それくらいは判っていた。

それに、家族に『葛城ミサトは優秀な上司である』と思わせようとする打算もあった。




「こんにちは、お母さん」

「こんにちは、葛城さん。 娘がお世話になっております」




挨拶を交わすと、ミサトはレイに視線を向ける。




「どう? 調子は?」

「………大丈夫です。 問題ありません」

「そう。 よかったわ」




ホッと一安心。これで作戦が進められる、とミサトは喜んだ。

作戦を考えているはずのミサトが何故ここにいるのかと言うと、早い話がサボタージュである。

彼女の頭には、最初に考えた作戦である【ヤシマ作戦】と命名した超長距離攻撃作戦しかなかった。リツコに何と言われようと、『自分の指揮』で使徒を倒すこの作戦を捨てきれない彼女は、「最初の作戦をベースに、指摘された問題点だけを解決しなさい」と日向を始めとした作戦部員に命令して(押し付けて)ここに来たのだ。




「………葛城一尉……使徒を倒す作戦は?」

「大まかな概要しか決まってないけどね。 いい?」

「はい」




本当は全然決まっていないのだが、最初に立案した作戦を説明しようとする。しかし、マイがそれに待ったを掛けた。




「葛城さん」

「何でしょう、お母さん?」

「今回のことで、私は改めて思いました。 レイはもう戦わせません」

「な!? それは―――――




突然のマイの言葉にミサトは当惑する。




「………お母さん!」




同じように戸惑うレイ。非難めいた抗議の為か、彼女にしては珍しく、つい声を荒げてしまう。




「レイ! お母さんの言うことを聞いてちょうだい」

「でも……私は………!」

「騒がしいなぁ………ここは病院だよ」




遅ればせながらドアを コンコン と叩いて、喧騒を静めるようにシンが病室に入ってきた。




「お兄ちゃん」

「シン、いつ来たの?」

「ついさっき」

「こんにちは、シン君」

「どうも、葛城さん」




一見 和やかな挨拶だが、シンはミサトと視線を合わせなかった。

ちょっとムカつくミサト。




――――― で、何を騒いでいたのさ?」




ミサトの存在など最初から無いようにマイと話し出すシン。




「レイを辞めさせるの」

「チルドレンを?」

「そう」

「レイがそれを望むならいいさ。 ………レイ、どうなの?」

「………私の気持ちは変わらない」

「レイ!」




思わず声が大きくなるマイ。




「母さん」




シンは、シーッと人差し指を口に当てる。




「………お母さんの気持ちは……とても嬉しい。 でも、私は決着を……つけたいの」

「決着?」




マイの頭に疑問符が浮かぶ。『決着』など、初めてレイの口から聞いた言葉だからだ。




「何と決着をつけるというの?」

「私の……運命………」

「………………!」




娘の言葉に、マイは思わず口を噤んだ。反対にシンは、レイの答えを最初から知っていたかのように微笑んでいた。




「だから……私は戦うの。 ……この運命に…打ち勝って……お母さんやお兄ちゃん達を……守る為に………」




レイの真剣な眼差し。元々、シンには異論など無かった。




「判ってるよ」

「シン!?」

「レイが望むなら僕達は何も言わない。 自分で考えて、自分で決めたことなら」

「ちょっと、シン!」




マイは、「僕達じゃないでしょ! 私は………」と言いかける。

しかし―――――




「母さん、レイの意思を無視しちゃダメだよ。 レイはもう『綾波レイ』なんだから」




あの男の人形ではない、という意味を込めた瞳で、シンはマイを見る。

視線が交錯する。






…………………………………………………………………………………。






暫くの沈黙の後、マイは ふう…… と嘆息すると、今度はレイを見た。彼女の瞳にも同じ強さの色が見えた。




「………私の負け。 ずるいわ、二人がかりだなんて」

「悪いと思ってるよ。 それはレイだって同じ。 ね、レイ?」

「………ごめんなさい、お母さん。 ありがとう………」




穏やか雰囲気が親子を包んだ。

それに居心地の悪さを感じたミサトが、少々遠慮がちに話し掛ける。




「ええと……いいかしら?」

「あ、まだ居たんですか」




というシンの台詞に、ビキッ! とミサトのこめかみに青筋が立った。




「あのねぇ、私は――――― !!」






 RRRRRRRRRR! RRRRRRRRRR! RRRRRRR………






ミサトを遮るように備え付けの電話が鳴った。




「はいはい」




マイがその電話を取った。二言三言話すとミサトの方を向く。




「葛城さんによ」




何よ、もう! とブツブツと文句を言いながら電話を替わるミサト。




「はい、もしもし!」




虫の居所が悪い為、無意識に声が大きくなる。




「あ……い、伊吹です」




何か悪いことしたかな? と不安になり、どもってしまったマヤ。




「何だ、マヤちゃんだったのね。 どしたの?」

「すぐ発令所に戻ってください。 GGGから通信が入ったんです」

「何ですって!? 判ったわ!!」




受話器を戻し、すぐさま部屋を出ようとするミサトを「あ、葛城さん」と、シンが呼び止めた。




「レイの体調に問題は無いようなので、少し休ませた後、発令所に向かわせます。 それでよろしいですか?」

「ええ、もちろんよ。 レイ、作戦については発令所でね」

「判りました」




と、レイが言い終わらない内に、ミサトは駆け出していた。

廊下を走らないで! という看護師の注意も聞かず、全速で駆けるミサト。暫くして、ドガシャン!! という大きな音と共にガラスの砕ける音や金属の甲高い音、そして医者や看護師達の怒声とミサトの悲鳴が病院内に響いた。

その様子を、病室から首だけを出して眺めるマイ、シン、レイの三人。




「無様だわ」

「無様だね」

「………無様」




















ミサトが滑り込むように発令所に入ってきた。髪型や服装は崩れ、あちこちに擦り傷らしきものが見える。




「何してたの、葛城一尉?」




リツコの、冷ややかながら怒りの感情を孕んだ声に、ミサトは一瞬たじろぐ。




「い……言い訳はしないわ! 状況は!?」




リツコは、クイッ と顎を動かし、モニターを見ろ! と言う意味の視線を向ける。

発令所のモニターには、一人の紳士が映っていた。長い金髪を後ろで束ね、きりっとした面持ちで貫禄ある佇まいの男性がそこにいた。




「あんた、誰よ!!」




ミサトの、礼儀も何もない、無礼極まりない台詞。

本当に国連直属機関の要職に就いている人間の言葉だろうか? と、男は耳を疑ってしまった。

しかし、友人でもある作戦参謀や自分達がサポートする少年から予め聞かされていたので、何とか平然と聞き流すことができた。

だが、NERVにとってはそうはいかない。相手は、ちゃんと礼を尽くした挨拶で通信を入れてきたのだ。その相手に対して作戦課長の最初の言葉がコレでは、この後の交渉がどう転がるか判らない。

リツコは当然、そして冬月も焦る。総司令たるゲンドウは、表立ってはそんな様子を見せないが、サングラスの奥の瞳はミサトを睨んでいた。余計なことを言うな! と言わんばかりに。

それに気付かないミサトが更に続ける。




「何とか言いなさいよ!! あんたは―――――

「口を慎みたまえ! 葛城一尉!!」

「!!」




滅多に聞かれない冬月の怒声がミサトを硬直させる。

固まった彼女に、そっとリツコが近付いた。




「こっちの立場を悪くしないで」

「あいつらの機嫌をとれって言うの!?」

「そうは言わないわ。 ただ、少しでも多くの情報を引き出さないと、この先、彼らに太刀打ちできなくなるわよ」




ヒソヒソと囁き合う女性幹部の二人。

ミサトのフォローをリツコに任せ、冬月は気を取り直してモニターを見た。




「失礼した。 主要スタッフはこれで全員揃ったが………」

「では、改めて自己紹介させていただきます。 私は大河コウタロウ。 地球防衛勇者隊ガッツィ・ギャラクシー・ガードの司令長官をしております」




こいつがGGGのTOPか! とミサトはモニターの大河を睨みつけた。




「特務機関NERV総司令、六分儀ゲンドウだ」




相手のTOP自ら来たのであれば、こちらもTOPが応じる。これが組織間の礼儀というもの。ゲンドウでもこれぐらいは判る。しかし、彼女は判らなかったようだ。




「あんた達は!! いつまで私らの邪魔を…モガ……モガガ!!」




邪魔ばかりして何も理解していないミサトの口をリツコが押さえる。殺気――――― というより、明確な殺意を込めたリツコの目が、ミサトを射抜いた。






私の実験室に異動辞令を出してもいいのよ?






耳元での魔女の囁き。

静かにしてますぅ……… と、ミサトは涙目で答えた。




















騒ぎも収まり、元の静けさを取り戻したNERV病院施設内。

シンは、自動販売機のある休憩コーナーで長椅子に座ってコーヒーを飲んでいた――――― と、そこにマイがやってきた。




「こんなところに居たの?」




うん、と頷くと、シンは残っていたコーヒーをグイッと飲み干した。




「レイは?」

「また眠ったわ。 よほど負担が掛かったのね」

「そう………」




会話が止まる。ジオフロント内を照らす人工の夕日が、二人を赤く染めた。

マイが話を切り出す。




「シン。 どうして、あんなこと言ったの? レイが危険な目に合ってもいいの?」

「よくないさ」

「だったら!」




つい、声が大きくなってしまうマイ。




「僕だって本心からいえば、レイにはエヴァに乗って欲しくない。 でも、今回の作戦はレイの零号機が絶対に必要なんだ。 初号機は消滅、弐号機はまだヨーロッパ。 ポジトロンライフルを扱えるエヴァが一体しかいない以上、レイにはどうしても頑張ってもらわないといけないんだ」

「だからって………」

「母さんの気持ちも判るよ。 でもね、今回は仕方がないって思ってよ。 ラミエルがあそこまで強くなっていると、GGGだけじゃ勝てないんだ」

「………………」

「もうすぐアスカが日本に来る。 そうしたら弐号機からキョウコさんをサルベージする。 それでもう『チルドレン』はこの世界からいなくなる。 そうすれば、後は僕とGGGが、このくだらない運命の鎖を断ち切るよ」

「運命の鎖………?」

「『進化』という甘い罠に魅入られた愚か者達………。 その奴らが僕達に無理やり括り付けた欲望と悲しみの鎖だよ」

「………シンはNERVをどうするの?」

「叩き潰すさ。 補完計画実行不能にまで追い詰めても、まだ抗うようなら、SEELE共々ね」

「シン………」

「この星を、生命溢れる勇気に満ちた世界にする為に………」




遠い目で夕日に照らされた外を見るシン。

同じように赤色に染まった世界でも、この景色はとても美しかった。例え人工物に囲まれていようとも、生命の煌めきを肌で感じることができるこの世界が、シンは大好きだった。

だからこそ、この世界を愚かな欲望で壊そうとするゲンドウやSEELEの老人達が赦せなかった。たった一握りの人間が好き勝手にしていい世界ではないのだ。




「でも……『仕方がない』って言ったら、僕もあいつらと同じだよな。 目的の為にレイを危険な目に合わすんだから………」




そのシンの呟きを聞いたマイは、後ろからそっと彼を抱き締めると「そんなことないわ」と優しく励ました。




「ありがとう……母さん」




















NERV総司令官公務室は、重苦しい雰囲気に包まれていた。




「GGGとの共同作戦か」

「………………」




ふと冬月が呟くが、ゲンドウは応えない。

自分の思い通りにいかなかったことがそんなに気に食わないのか、あれから一時間以上も経つというのに、ずっと黙ったままだ。

ふうっ……… と一息嘆息すると、冬月はこの雰囲気を作り出した先程のTOP会談を思い返し始めた。




















「第5使徒殲滅について作戦提案があるそうだが?」




ゲンドウがいつものポーズで大河に問う。偉そうな口調なのは『我々が国連の直属機関であり、自分はその総司令なのだ』という強い自尊心からだ。自ら非合法組織などと名乗ったGGGとは格が違うと言いたげであった。




「はい。 今回の使徒は非常に強力です。 我等が協力して立ち向かわなければ、勝利は望めません。 いえ、例え勝利したとしても、その被害は甚大なものになるでしょう」

「フッ、さすがのGGGも、あの使徒に単独で勝利するのは難しいようだな」




ゲンドウが嘲笑う――――― が、大河は無視する。




「我々が当初立てた作戦では、使徒を倒せても第3新東京市に多大な損害を与えてしまいます。 第3新東京市を守りながら使徒を倒すには、NERVと共同で作戦に当たることがベストだと判断し、こうしてお話をさせて頂いております」






――――― このようにNERVとGGGのTOP会談は始まった。






会談が進むにつれ、話の主導権は、徐々にGGGに傾き始めた。

ゲンドウも当初は話を上手く切り返してペースを掴むかと思われたが、合いの手のように入るミサトの暴言が全てを駄目にした。

彼女にしてみたらGGGという存在は、使徒への復讐という自分の目的を奪う憎むべき敵以外の何者でもない。大河の一言一言に感情を爆発させていた。

これに煽りを喰らったのはゲンドウである。当初は、この交渉を優位に進め、向こうに頭を下げさせ、NERVに作戦参加を懇願させる腹積もりであった。その上で条件を付け、NERVへの恒久的な指揮下編入や、あわよくば初号機コアの返還などを要求するつもりだったのだ。

それらを全て、ミサトの短慮さが無にした。

反撃も思うようにいかない。

ゲンドウが何とか大河の論拠の隙を突こうとするが、大河はそれを許さず、逆にミサトの暴言を利用して、一気呵成にNERVを劣勢へと追いやった 

国連事務総長ショウ・グランハムや綾波シンが評したように、六分儀ゲンドウという男は交渉事に掛けては一流であったが、上には上がいるもので、大河コウタロウは組織の上に立つ者としては超一流と言って間違いない程の才能を持っていた。伊達に『宇宙開発公団』・『ガッツィ・ジオイド・ガード』・『ガッツィ・ギャラクシー・ガード』と、三つの組織のTOPに立った訳ではないのだ。

さらに大河の味方したのは、NERV戦術作戦部の立案した作戦が不完全なものであったことだ。ボルフォッグと使徒との戦闘データでリツコに指摘された問題点を解決できなかったのだ。

問題点は次の二つである。使徒の攻撃射程20kmに対抗する長距離射撃兵器。そして、使徒のA.T.フィールドを貫く大出力を何処から持ってくるかである。

これに対してGGG側から提案が出された。

射撃兵器は改良プランが提示されたのだ。戦略自衛隊が開発した試作陽電子砲とNERVが開発したエヴァ専用ポジトロンライフルを組み合わせ、GGGの技術を一部組み込むことで何とか射程15kmが可能だという。これは未だ使徒の射程圏内であるが、零号機へ使徒の攻撃は来ないというデータがGGGから示され、万が一の防御手段も考慮された作戦が組まれることになった。

次に、A.T.フィールドを貫き、使徒にダメージを与える為のエネルギー確保であったが、当初予定していた日本中からの電力徴発では必要なエネルギー出力が確保できないと判り、急遽GGGから勇者ロボの動力源であるGSライドの使用が提案された。GSライドのフル出力は使徒のA.T.フィールドを貫く為に必要な出力、2億2500万kWを優に超える出力を弾き出し、NERV技術開発部員全員を驚愕させた。

殺意と憎しみに彩られたミサトを無視して、最終的に作戦はGGG主導で行われることが決定し、作戦に必要な機材・人員が第3新東京市に集められることになった。

なお、この作戦の成功率はMAGIにより89.6%である。






かくして、第5使徒殲滅の準備は始まった。




















余談ではあるが、会談終了後、葛城ミサトは「恥を掻かせた」と言って日向とその他の作戦部員を責めたが、責任者である彼女が命令するだけで何もしてなかったことが判明し、六ヶ月30%の減棒。さらに、会談中の数々の暴言がNERVに不利益を与えたとして、今後五年間の全面ボーナスカットが言い渡された。




















第弐拾弐話へ続く







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