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No.226の一覧
[0] 新世紀エヴァンゲリオンFINAL ~勇気と共に~(×勇者王ガオガイガー)[SIN](2008/03/10 18:47)
[1] 予告篇[SIN](2005/01/23 22:16)
[2] プロローグ[SIN](2005/04/02 12:59)
[3] タイトル[SIN](2005/03/14 02:14)
[4] 第壱話 【彼方より来るもの】[SIN](2005/04/02 13:02)
[5] 第弐話 【今、ここにいる理由】[SIN](2005/04/02 13:07)
[6] 第参話 【思いがけない再会】[SIN](2005/04/10 01:21)
[7] 第肆話 【勇者王 降臨】[SIN](2005/04/02 13:13)
[8] 第伍話 【破壊の神 VS 福音を告げる者】[SIN](2005/04/02 10:27)
[9] 第陸話 【初号機 消滅】[SIN](2005/04/02 12:56)
[10] 第漆話 【目覚め】[SIN](2005/04/02 19:01)
[11] 第捌話 【罪に塗れし過去の業】[SIN](2005/03/30 00:28)
[12] 第玖話 【邂逅】[SIN](2005/04/10 00:19)
[13] 第拾話 【紅玉(ルビー)の輝きが消えた時………】[SIN](2005/04/30 01:28)
[14] 第拾壱話 【訪れる者たち】[SIN](2005/05/01 09:29)
[15] 第拾弐話 【そして少女は、家族を手に入れた】[SIN](2005/05/02 13:20)
[16] 第拾参話 【騙す者、騙される者】[SIN](2005/05/02 22:05)
[17] 第拾肆話 【 影 】[SIN](2005/05/03 10:23)
[18] 第拾伍話 【大切な日々の温もりを】[SIN](2005/05/04 02:38)
[19] 第拾陸話 【疑念】[SIN](2005/05/04 13:16)
[20] 第拾漆話 【戦場の意味  前篇】[SIN](2005/05/04 18:16)
[21] 第拾捌話 【戦場の意味  後篇】[SIN](2005/05/04 23:57)
[22] 第拾玖話 【暗躍する少年少女】[SIN](2005/05/06 00:38)
[23] 第弐拾話 【天使の実力(チカラ)】[SIN](2005/05/23 23:13)
[24] 第弐拾壱話 【揺るぎない決意】[SIN](2005/05/23 22:59)
[25] 第弐拾弐話 【 Der FreischUtz 】[SIN](2005/05/23 23:36)
[26] 第弐拾参話 【 激戦! 第3新東京市 】[SIN](2005/05/27 02:40)
[27] 第弐拾肆話 【 この手に望む、不変なる日常 】[SIN](2005/05/29 20:45)
[28] 第弐拾伍話 【 招かれざる客(ゲスト) 前篇 】[SIN](2005/05/30 00:56)
[29] 第弐拾陸話 【 招かれざる客(ゲスト) 後篇 】[SIN](2005/05/31 00:20)
[30] 第弐拾漆話 【 標的は獅子 】[SIN](2005/06/01 00:06)
[31] 第弐拾捌話 【 恐怖を祓う竜神 】[SIN](2005/06/02 23:23)
[32] 第弐拾玖話 【 計画(プロジェクト) 】[SIN](2005/06/06 01:55)
[33] 第参拾話 【 紅の少女 】[SIN](2005/06/13 03:10)
[34] 第参拾壱話 【 白き方舟 】[SIN](2005/06/13 22:53)
[35] 第参拾弐話 【 巨神激闘 】[SIN](2005/06/14 12:14)
[36] 第参拾参話 【 旋律が呼ぶ不死鳥の翼 】[SIN](2005/06/15 01:13)
[37] 第参拾肆話 【 SEELEのダミープラグ研究施設 】[SIN](2005/06/27 01:40)
[38] 第参拾伍話 【 紡がれる絆 】[SIN](2005/07/17 22:06)
[39] 第参拾陸話 【 想い、心 重ねて 】[SIN](2005/07/18 22:43)
[40] 第参拾漆話 【 蒼(あお)と紅(あか) 】[SIN](2005/07/19 01:27)
[41] 第参拾捌話 【 閃光の果て 】[SIN](2005/07/21 00:15)
[42] 第参拾玖話 【 悪意の置き土産 】[SIN](2005/11/25 18:10)
[43] 第四拾話 【 双 頭 飛 龍 】[SIN](2005/11/25 17:22)
[44] 第四拾壱話 【 予想外の訪問者 】[SIN](2006/03/19 23:28)
[45] 第四拾弐話 【 Global movement (前篇) 】[SIN](2006/05/06 18:26)
[46] 第四拾参話 【 Global movement (中篇) 】[SIN](2006/05/06 18:37)
[47] 第四拾肆話 【 Global movement (後篇) 】[SIN](2006/11/26 14:09)
[48] 最終章 予告篇[SIN](2006/12/10 22:11)
[49] 第四拾伍話 【 心の隙間の埋め方は 】[SIN](2008/03/10 19:59)
[50] 第四拾陸話 【 反撃の狼煙 】[SIN](2009/03/30 03:25)
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[226] 第拾肆話 【 影 】
Name: SIN 前を表示する / 次を表示する
Date: 2005/05/03 10:23




 ガヤガヤガヤ……… ガヤガヤガヤ………






始業前の学校の教室。

ここは、第3新東京市立 第壱中学校 2年A組。

いつの時代、どこの学校でも、授業の始まる前の時間は騒がしい。

だが、今日に限って、それはいつにも増している。

何故なら、今日は転校生が来るのだ。

皆、その噂で持ちきりだった。




男か?

女か?

背が高い?

低い?

カッコいい?




そういう噂ではなかった。

彼らは登校中に、その転校生らしき人物を見ていた。あの『綾波レイと一緒に登校する少年』の姿を。

『寡黙の妖精』と言われ、誰にも心を開かなかった少女が、とても穏やかな雰囲気で一緒に登校した少年。

噂にならないはずはなかった。

こういう情報に一番敏感で、2-Aの情報発信源となっている少年・相田ケンスケの周りには、情報を求める生徒が殺到したが、ケンスケ自身 情報を探っている途中だったので、まともに答えられる訳はなかった。

最後の手段は『寡黙の妖精』綾波レイ嬢に直接 訊くことなのだが、その近寄りがたい雰囲気は、普段と変わらずであった。

だが、彼女が教室に入ってきた時は少々違った。いつもの彼女ではなく、同年代の普通の少女のような雰囲気があったのだ。

その様子に、しばし教室の時間が止まりかけたが、次の瞬間、それが完全に止まった。




「………………お…おはよう………」




少し顔を赤らめ、挨拶する少女。

レイが勇気を持って踏み出した、最初の一歩であった。




















そして、朝のHR(ホームルーム)。




「それでは綾波君、入ってきなさい」




2-A担任の老教師・根府川が呼ぶと、ドアが開き、一人の少年が教室に入ってきた。

その途端、きゃ~~~!! と女生徒の黄色い歓声が上がる。

同年代の男子に比べて、やや女顔だが、端正な顔立ちで自信に満ちたその表情。少年は所謂、美少年と呼ばれるものだった。




久々のヒットよ~

いや、ホームランかも




と、大半の女生徒が心の中でガッツポーズをしたのはお約束。

そして、男子生徒大半の反感を買ったのもお約束。






 ウッ、ウン!






老教師は一つ咳払いをし、教室を静める。




「では、自己紹介を」

「はい。 京都から来ました綾波シンです。 こちらには、親の仕事の都合と家の都合で来ました。 あと、『綾波』という名前でお気付きかもしれませんが、僕は綾波レイの双子の兄になります」




「「「「「何~っ!?」」」」」




「綾波さんのお兄さん?」

「美少年と美少女の兄妹………」

「素敵………」

「売れる! 売れるぞ~~!」




一気に教室が騒がしくなる。




「あ~あ~、まだ済んでませんよ。 静かにしなさい」




優しい口調で老教師が諌める。徐々に静かになる教室。




「………え~、訳あって今まで別々に暮らしてきましたが、この度、やっと家族一緒に暮らせるようになりましたので、とても嬉しいです。………レイ」




シンがレイを呼ぶと、レイはトコトコと前に出てきてシンの横に立つ。




「妹ともども、宜しくお願いします!」

「………します」




シンが頭を下げると、一拍遅れてレイも頭を下げる。

そのレイの仕草に、教室の男子生徒の心は鷲掴みにされた。後日、本気でシンを「お兄さん」と呼ぼうか議論されたほどだ。

女生徒も、その可愛い仕草に、レイに対する認識を改めた。彼女は寡黙なのでなく、ただ人付き合いが苦手なだけの普通の少女なのだと。

これをきっかけに、レイとクラスメートの関係は、少しずつ良いものになっていった。

シンとマイの願い通りに。




















NERV本部、総司令官公務室。




「六分儀、綾波シンがコード707に接触した」

「何?」

「第壱中学校に転入してきたらしい。 レイと同じ教室だ」

「あそこにはチルドレン候補を集めているのだぞ。 なぜ候補でもない者が入れる?」

「碇家からの圧力だ。 表向きは学校だからな。 文部科学省の意向には逆らえんらしい」

「第2東京の腰抜け共が………。 で、あの二人の正体は?」

「MAGIによると、彼らは実在の人物だ。 電子データだが、レイ誘拐と思われる新聞記事と、当時の捜査記録を見つけた」

「馬鹿な……そんなはずは………」




これは予め、シンがMAGIをスキル=イロウルでハッキングして支配下に置いている為である。NERV本部の中枢にありながら、MAGIはGGGの味方なのである。GGGに都合の悪い情報は、NERVに伝わらないようになっている。




「貴様についていくことが本当に正しいのかどうか、最近 特に考えるよ」

「ユイに逢う為だ。 正しいに決まっている。 冬月、貴様もそうではないのか?」

「そう考えると、碇ソウイチロウ抹殺のテロ事件、失敗して良かったと思うよ」

「何故だ?」

「自分の父を殺したのが夫の謀略だと判ってみろ。 ユイ君はどう思うかな?」




その状況を想像して、顔が青ざめるゲンドウ。




「………彼の言う通りだな。 お前は頭が悪い」




















シン転入の数日前、レイはNERVの病院施設から退院した。

その際、リツコは強硬に反対した。シン達には、怪我は大した事はないと言ったが、実際は内臓に損傷があり、動かすにはまだ危険な状態であった。

しかし、レイ自身が退院を強く希望した。もう大丈夫だと言うのだ。

シン達も退院させると言うので、検査の結果が良好なら退院を許可するとリツコは約束した。

その結果、レイは全快していた。

リツコは結果に驚愕し、もう一度検査するとレイを連れて行こうとしたが、シンとマイがそれを許さなかった。

レイの怪我はシンが治療していた。スキル=リリンによる『A.T.フィールド・コントロール』で損傷部分をL.C.Lに変換、瞬時に再構成することで怪我を治したのだ。もちろん、リツコやミサトに気付かれないように。

リツコの突き刺さるような疑惑の視線を背に、綾波親子は病院を後にした。

ミサトは、地上への移動手段であるモノレールの駅まで送ると言い、ニコニコと微笑みながらついてくる。

時折「家族で暮らせるようになってよかったわね~」と話し掛けてくるので、シン達も無視する事はないだろうと会話に参加していた。

だが、ミサトのこの一言が、場の雰囲気を一変させた。




「レイも元気になったし、もうすぐ零号機の調整も終わる。 これでドイツから弐号機が来れば、使徒戦は万全ね。 もう、あいつ等にデカイ顔はさせないわ」

「あ……そうそう、その件なんですけどね」




シンが口を開く。




「レイにチルドレンを辞めさせようと思います」

「!?」




シンの一言に、ミサトは目を見開いて驚く。




「ちょっ……どういうことよ!!」

「レイは14歳の女の子ですよ。 戦いなんて出来るわけないでしょ」

「エヴァは――――― ……って!?」




ミサトはあることに気付いた。最高機密であるエヴァとチルドレンの存在。何故、彼は知っているのか。




「どうして知ってるの?……って顔ですね」

「……そうよ。 どうして?」




シンは、さっき総司令室で話した事を、ミサトにも話した。




「親の承諾もないのに『チルドレン』なんて危険な仕事………させられませんよ!」

「でも、知ってるんでしょ? エヴァは14歳の少年少女じゃないと動かせないわ! それに、全人類の未来が懸かっているのよ!!」

「シンジにもそう言って強制させた。 怪我したレイを見せつけて、乗るしかない状況に追い込んだ!」

「!!」

「シンジは僕達の大事な家族だった。 そのシンジを見殺しにしたNERVを、僕たちは許さない」

「見殺しなんてしてないわ。 私たちは………」

「精一杯やった、と言いたいんですか?」

「そうよ!」

「あの戦い、NERVとGGGの戦力差は一目瞭然だったはず。 それでも戦闘させたのは何故です?」

「………………」




ミサトは答えられなかった。

あの時、誰もがシンジが素人だという事を忘れていた。GGGを押さえ、使徒のサンプル、そして彼らの技術を手に入れることを最優先として、エヴァパイロットの生命など考えていなかった。

最前線で戦っているのは、まだ14歳の少年だというのに………。




「そういうことです。 信用の置けないところに大事な家族を預けるわけにはいかない。 まあ、レイがチルドレンを続けたいと言うのであれば、こちらとしても条件付きで考えますがね」

「ホント!?」




ミサトがレイに訊ねると、レイは続けると言った。

シンとマイは難色を示したが、レイの「お兄ちゃんとお母さんを助けたい」という言葉にしぶしぶ認めた。条件に関してはシンとマイに任せると言うので、後日知らせるということにして、綾波親子はジオフロントを後にした。

街に戻り、碇家が用意したマンションに向かっていると、レイが何かに気付いた。




「………お兄ちゃん」

「後ろだろ。 気付いているよ」

「どうしたの?」




と、マイが訊ねる。




「NERVの保安諜報部………三人か……尾行してる」

「まあ、当然でしょうね」

「じゃあ、先にオービットベースに行こうか? レイにみんなを紹介したいしね」

「そうね。 いい、レイ?」

「うん」

「あの角を曲がったら僕に掴まって………スキル=レリエル」




シン達が曲がり角の向こうに消えると、小走りに黒服を着た男三人が角に近付く。

そっと覗くと、もうそこには誰もいなかった。驚き、辺りをキョロキョロ見回すと、弾かれたように三人が走り出す。だが、どこを探しても、尾行していた綾波親子を見つけることはできなかった。

その際、MAGIはA.T.フィールドの反応を捉えたが、パターンがシンのものだと確認すると、MAGIは自動的にそのログを消去した。




















尾行していた保安諜報部の三人が上司に大目玉を食らっている頃、綾波親子はGGGオービットベースにいた。メインオーダールームに集まったスタッフにレイを紹介していた。




「………綾波…レイ……です。 ………よろしく」




ぺこっ、とレイは頭を下げる。

それに続き、GGGスタッフが自己紹介していく。そして、最後にガイが自己紹介をすると、瞬間、レイの視線が冷たく変わった。

ツカツカと、ガイに近寄るレイ。




「?………何かな、レイちゃん?」




怒ってる?




どういうことなのか、ガイには判らない。




「………あなたが……碇くんをいじめたのね」

「へっ?」

「………碇くんが乗った初号機を……消し去ったわ」




レイの言葉に、ようやく合点がいったガイとみんな。




「い、いや……あれは作戦で………なあ、シンジ君」

「僕はシンですよ」

「ああ、そうだった。 シン君、助けてくれよ」

「………赦さない」




レイはガイの両頬を掴むと、ムニッと左右に引っ張った。




「い…いひゃいよ、ひぇいひゃん」
(い…痛いよ、レイちゃん)




呆気にとられるGGGメンバー。




「ぶわはははははははははははっ!!」




シンが笑い転げる。

マイもクスクス笑ってる。




「わひゃってひゃいで、はひゅひぇへぇ~」
(笑ってないで、助けてぇ~)

「だってさ。 どうする、レイ?」




レイは上目遣いにガイを見て、




「ニンニクラーメン、チャーシュー抜き」

「ひぇ?」
(え?)

「それで許してあげる」

「わ…わひゃっひゃ」
(わ…判った)

「うん」




レイは、引っ張っていたガイの頬を離した。




「あー、痛たたた」




頬をさするガイに、ミコトが苦笑しながら冷たく濡らしたハンカチを差し出す。




「大丈夫、ガイ?」

「ああ。 サンキュ、ミコト」




ハンカチを頬に当てるガイの袖を、レイが引っ張る。




「行きましょ」

「へ?」

「………ここの食堂は美味しいって……お兄ちゃんが言ってたわ」

「ああ、判った判った。 そんなに引っ張るなって」

「あ…ちょっと、私も行く」




レイに引っ張られ、ガイとミコトが出て行く。

三人がいなくなると、メインオーダールームに爆笑が広がった。




「やれやれ………あれ教えたの、母さんでしょ?」




シンが嘆息する。




「そうよ。 レイも努力してるの。 少しでもみんなとの距離を縮めようとね。 その為なら、私はどんな協力も惜しまないわ」

「水臭いな。 僕も相談に乗るのに」

「女のことは女に任せるの。 男の人じゃ絶対に出来ないことがあるんだから」

「なるほど」




納得だ。




「私達も食堂に行きましょう。 ちょっと早いけど、ここで夕飯にしましょう」

「そうだね」




シンとマイも食堂に行く為、笑いに包まれたメインオーダールームを後にした。

途中、マイがふと、あることに気付いた。




「ニンニクラーメンなんてマニアックなもの、ここの食堂にあるの?」

「僕がメニューに入れてって頼んでおいたんだ」

「………………兄バカねぇ」

////………うるさいなぁ」




















楽しい食事の後、メインスタッフ全員は、オービットベース下層にある研究モジュールに集まった。ここには、サキエルのコアを浄解したコアクリスタルが保管してある。




「お兄ちゃん、ここで何をするの?」

「もう少し後でも良かったんだけど、できるだけ早めにやっておかないと。 今後、何があるか判らないからね」

「………?」




レイは首を傾げる。




「レイを『人間』にする」

「………!!」

「正確には、君の魂とリリスの魂を切り離す。 その後封印し、リリス本来の肉体に戻した後、浄解してコアクリスタルに変換させる。 肉体に戻す作業は、もうちょっと後のことになるけど、とりあえず、今回はリリスの魂を封印し、レイを人間にする」

「私……人間に……なれるの?」

「そうだよ。 怖いかい?」

「………………」




俯き、スカートを握り締めるレイ。




「レイ、これはとても重要なことなの。 あなたの中にあるリリスの魂をそのままにしておくと、あなたはまた補完計画に利用されるかもしれない。 もちろん、そんなことは私達が絶対にさせないけど………万が一のこともあるし、今のうちにやっておいた方がいいと思うの」




マイは屈んでレイの目線と自分の目線を合わせ、手を優しく握り、諭すように言う。

すると、ポタッ ポタッと水雫がレイの目から零れ落ちた。




「レ…レイ!?」

「レイ、やっぱり怖い? 嫌なら、また今度でも―――――




オロオロとうろたえるマイとシン。

そんな母と兄の様子に気付いたのか、レイは顔を上げ、満面の笑顔を浮かべた。




「ううん、嬉しいの」

「「嬉しい?」」




ユニゾンする母子。




「お兄ちゃんやお母さん……みんなが私のことを……こんなに想ってくれるのが……すごく……嬉しいの」




そう言ってレイは、視線をGGGメンバーに向ける。




頷くガイ。

手を振るミコトとスワン。

親指を立てる火麻と大河。

鼻頭をポリポリ掻いて照れるウッシー。

長い口髭をピンと張るライガ。

照れて顔を赤く染める猿頭寺。

笑顔のスタリオン。




皆が優しい顔で、当然だと言っている。




「だから大丈夫よ、お兄ちゃん。 ………ガイさん達が教えてくれたもの。 人を信じる心………勇気さえあれば、何も恐れることはないって。 ………私はお兄ちゃんを信じる。 お母さんを信じる。 ガイさんやミコトさん、スワンさん、みんなを信じる。 だから……大丈夫………」




食堂で一緒に食事をとった時、ガイ達はいろいろな事をレイに話した。

最初は聞くだけだったレイも、徐々に自分から話題を振るようになった。

そうする内、彼らの強い心はレイにとって憧れとなった。

レイは、彼らのようになりたかった。

そして、教えられた。まずは人を信じ、心を開くことが大切だと。




「判った。 じゃあ、始めるよ?」

「うん」




シンとレイを除くメンバーが、邪魔にならないように離れる。




「スキル=リリン、発動!」




シンの容姿が変わる。レイを思わせる銀髪と赤い瞳に。




「お兄ちゃん、綺麗」

「そ、そう?」




照れるシン。




「妹相手に照れないの!」




真面目にやれ、とユイ。




「さ、さてと………いくよ!」

「うん」




緑色の輝きがシンとレイを包んでいく。




【クーラティオー・テネリタース・セクティ――――― !?】




突然、シンから発せられていた光が消える。髪が黒くなり、赤くなった目も元に戻った。

何事か、と不安になるGGGスタッフ一同とマイ。それはレイも同じだった。




「ど…どうしたの、お兄ちゃん?」

「いや……まさか!? レイ、ちょっとゴメンね?」




シンはレイの髪の毛を一本引き抜いた。




「………痛い」

「ごめん! ………ライガ博士! 至急、レイの遺伝子を調べてください!!」




















数十分後。




「結論から言うとじゃなぁ………レイちゃんは『人間』になっとるんだなぁ、これがぁ」

「「「「!?」」」」

「どういうことだね?」




大河が訊ねる。それにシンが答えた。




「レイの身体からリリスの波動が感じられませんでした。 いつ、どの時点で抜けたのかは判りませんが、既にレイの身体にリリスの魂はありません」

「では、いったい何処に?」

「リリスの魂ほどモノが宿るとしたら、それなりのスペックが必要です。 単純に考えればドグマにあるリリス本来の肉体か―――――

「私の予備の身体?」

「うん、その可能性は高いね」

「これもまたイレギュラーかのう、シン君?」

「そうですね、ライガ博士。 この世界はもう、全く違う世界なのかもしれません………」




















NERV本部地下、セントラルドグマ。




「ふう………。 もう補完計画なんて実行不能もいいとこなのに………どうして私はここにいるのかしら」




リツコはL.C.Lが満たされた水槽を見詰める。綾波レイの予備、魂の無い肉の塊が力無く漂っていた。




「あら?」




ふと、リツコはある違和感を感じた。

何かが違う。水槽の外じゃない………内側(なか)?




「まさか………」




リツコの手が震えた。




「1……2……3……」




数を確認する。素体の数を。




「……13……14!?」




足りない!!




「まさか!? そんな!? 昨日まで、確かに15体あったはず………何故? どういうこと?」




リツコは混乱した。




「ここの存在を知ってるのは司令と副司令、そして私とレイ…………まさか、レイが!? ………そんなはずないわね。 ここの存在はレイも知られたくないはず」




思考の海に浸るリツコ。そんな彼女に近寄る一体の人影があった。

彼女は気付かない。






 シュッ!






影の右手刀がリツコの延髄を捉えた。




「うっ!?」




急激に意識が遠くなり、崩れるリツコ。

倒れたリツコに影が近寄る。彼女の頭にそっと手を添えると、ボウっと淡い光が発せられた。




「……まだ…知られるわけには…いかないの。 ごめんなさい……赤木博士……クス♪」




影は静かに笑ったかと思うと、次の瞬間、忽然と消え去った。

それからしばらくして、リツコは目を覚ました。




「……う……ここ…は?」




ノロノロと起き上がる。




「私……何故ここにいるの?」




前後30分間の記憶が無いリツコであった。




















そして、まだ誰も気付かなかったが、ターミナルドグマの奥深くに封じられているリリスの肉体が、ゆっくりと崩壊を始めた。




















第拾伍話へ続く







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