第零話(陰)『鬼龍』
2,015年、15年ぶりの使徒襲来の運命の日の一週間前、かつての日本の首都、第一東京市…かつて、東京寛永寺と呼ばれていた場所。
表向きには知られていないが1,999年の春、その場所…かつて、寛永寺と呼ばれていた場所では、世界の運命を左右する一つの戦いが行なわれた場所でもある。
一部だけが銀色になった真紅の髪を持った中性的な顔立ちの美しい外見の少年がかつての寛永寺の有った場所を見下ろしている。周囲は海に沈み陸地からでは、けして、見下ろす事の出来ないその場所を少年は見下ろしている。…上空から…
翼は無いがその美しい外見から、地上に降りた天使とも見間違う少年はその瞳に強く深い憎しみを浮かべて呟く。
「感じる…この場所で消えた男の憎しみに満ちた声が…。君の力と怨念…その全てをオレが貰う。」
少年が手を伸ばすと血に染まった赤い学生服がいつの間にかその手に握られていた。少年は無言のまま、その学生服を着ると今までそれを染めていた血が少年の体に吸収されるように消えていく。
「クックックッ…さあ、断罪の時…復讐の時が来た…碇ゲンドウ、葛城ミサト、ゼーレの老人共…下らない欲望、身勝手な欲望でお前達が犯した罪は重い…。ただじゃ殺さないさ、これ以上無いほどの最高の苦しみを味合わせてやろう、神はお前達など選んではいない!!!」
彼は叫ぶ己の中にある憎しみの全てを吐き出すように。
彼の吐き出す憎しみか彼の持つ人の域を超えた《力》に呼応する様に海が割れ、かつて寛永寺と呼ばれていた場所から一振りの刀が少年に向かって飛ぶ。少年は十年以上の長い年月、海水につかり続けながら、今だ曇り一つ無い新品同然の輝きと禍々しい陰の《氣》を放つその刀を手に取ると静かに鞘に収める。
何度もその動作を繰り返し続けた者だけに許されるであろう美しい動作で再びその刀を抜き、感触を確かめる様に遮るものの無い彼だけが支配する空間である空で縦横無尽にその刀を振るうと再び鞘に収める。
彼は幾つもの名を持っている。
「お前の名を受け継ごう、凶星の者よ。」
一つは過去との決別と同時に捨てた名、一つはこの瞬間に戻った時に与えられた名、一つは新たに手に入れた名、そして…
「オレの名は…。」
怨念と共に少年が手にした名、最悪の剣鬼にして、不死の体を持ち、邪を司る凶星の者の名
「我が名は『柳生 鬼龍』!!! ネルフ、ゼーレ!!! そして、碇ゲンドウ!!! 貴様らに復讐する者にして、貴様らを断罪する者なり!!! さあ、復讐劇の始まりだ。」
彼は吼える、彼はその地に眠る怨念達に宣言する、己が内に秘めた憎しみを忘れぬようにその全ての憎しみを己が復讐の相手に叩きつけるように
《陰》の鬼と《陽》の龍、そして、《邪》の柳生…その全てを名に持つ者…彼の名は『鬼龍』、復讐の為、其の地に戻りし者
つづく…