巻の六十四「神の存在を立証しようとするあらゆる試みは、すでに神に対する冒涜である」 そこは、とても不思議な空間だった。 視界に入る光景は全て灰色で、まるでモノトーンの世界に迷い込んだような錯覚を受ける。 遠くに見えるのは地平線らしきボヤケた線のみで、それも見るたびにブレたり歪んだりして正確に把握する事は出来ない。 そもそも、前後左右の感覚からしてすでにあやふやだ。 自分が今どこに居るのかも、ちょっと気を抜いた隙にすぐ分からなくなってしまう。 何もかもが規格外なこの灰色の世界、そこで僕は。「うふふ、アリスちゃんってば幻想郷で楽しくやってるみたいね。良かったぁ」「……まぁその、有意義に暮らしてるとは思いますよ?」 何故か、友達のお母さんと思しき人と呑気に談話しています。 世の中は不思議でいっぱいですね。本当に、何でこんな事になってるんだろうか。 この謎の空間に放り込まれ、体内時計でおよそ三十分。 それだけの時間をかけて僕に出来たのは、自分がアリスじゃないと言う誤解を解く事だけだった。 「晶ちゃんみたいな可愛いお友達も居て、ママ一安心だわ」「……僕、男なんですけど」「もう、謙遜しなくても良いのよ?」 勘弁して下さい、色んな意味で。 さっきから色々話してはいるんだけど、「会話」が成立した回数はとても少ない。 見て分かるほどの半透明っぷりから薄々感じてはいたけど、どうもこの人は今この場に居るワケでは無いらしい。 電波状況が悪い。とでも言うのか、所々で会話がかみ合わずチグハグな感じになったりするのだ。 ……だよね? 素で話を聞いてないって事は無いよね? その場合僕泣くよ? と言うかそろそろ、アリスレポート(お笑い変)を報告するのが辛くなってきたんですが。 せめてお母さんが何者なのかとか、ここはどこなのかとか教えてください。「―――そういえば貴方。‘ここ’に居るって事は今、命の危機に陥ってるのかしら?」「ええ、そうですけど……ここってやっぱり、普通とは違う所なんですか?」「そうよー。鎧の装着主の精神を一時的に切り離して、魔力で構築した仮想空間に召喚したの」「よ、良く分からないけど、それって相当凄いんじゃあ」「ゴメンナサイね、居心地の悪い場所で。時間の流れから一時的に外れる必要もあったから、他が手抜きになっちゃって」 相変わらず微妙に噛み合っていない会話の中で、今さらっとトンデモない話を聞いた気がする。 アリスが、「実力だけは折り紙つき」と言った理由も良く分かるというモノだ。 この人、そうは見えないけど実は相当な実力者だと思う。 ……立ち振る舞いだけなら、どこにでも居そうな普通の母親なんだけどねぇ。 「で、この空間にはどんな意味があるんですかね」「あらあらあら、私ったら何も説明してなかったわね。ゴメンなさい」「いえ、気にしてません。気にしてませんから続けてください」 謝罪云々の話まで始めてしまったら、また噛み合わない会話を延々と続ける羽目になってしまう。それは避けたい。 幾ら時間の流れから切り離されているとは言え、精神衛生上あの状況を放っておくワケにはいかないのだ。 ……戻ったら戻ったで、大変な事になりそうなんですけどね。 「この世界はね、鎧に付けた魔法の効果を説明するためのモノなの」「魔法の効果――の説明、ですか?」「そう。本当は渡す時に説明すれば良いんでしょうけど……アリスちゃん、魔法のかかった品物とか受け取ってくれないから」「そういえばそんな事言ってましたね。自分には必要が無いとか何とか」「アリスちゃんってば意固地だから、弾幕ごっこにママ達の力を借りたくないみたいなのよ」「そういう所、アリスは拘るタイプですからねー」 自分以外の何者かに、最後の一線を委ねる気が無いって事だろう。 色々と頼りまくっている僕が言うのもアレだけど、そういう彼女の覚悟を理解する事は出来る。 お母さんもそこらへんの彼女の感情を分かっているからこそ、こんな特殊な形で魔法の鎧の機能を説明する事にしたのだろう。 このやり方なら、本当の危機に陥るまでアリスはその機能を知らなくて済む。 ……もっともアリスには、あっさり見抜かれていたみたいだけど。「何かスイマセンね。その気遣いを僕が台無しにしちゃったみたいで」「良いのよ。この鎧は‘アリスちゃんの役に立つ’ためのものだから。お友達を助けるのだって手助けの一種でしょう?」「ママさん……」「それに機能の説明を聞いておかないと、晶ちゃん死んじゃうわよ?」 あ、そうでした。 すっかり忘れてたけど、僕ってレーヴァテインを喰らう寸前だったんだよね。 勝利に括るつもりは無いけど、命がかかっているなら話は別だ。 この空間に居られる内に、何とかあのスペルカードの攻略法を見つけないと。 ……とは言え、今の僕の手札じゃどーしようも無い。 やっぱりここは、アリスのママさんが言う‘機能’にかけてみるしか無いかなぁ。「あのー、不躾な事聞きますけど、その機能って即死系の技喰らう直前でも有効なモノですかね」「と言うより――喰らってからの方が本番かしら」「ほへ? どういう事です?」「魔法の鎧には、装着者を死に至らしめる攻撃を無効化する魔法が付与されているのよ」「へー……ってそれは凄過ぎじゃありませんか!?」 実質的に、戦闘で死ぬ事が無くなりますよ!? 何てお得な――もとい危険なアイテムなんだろうか。 そんな僕の驚愕に対して、アリスのママさんは申し訳なさそうに苦笑した。 ……やっぱり、そんな都合良く行くワケじゃないか。 うん、分かってたよ? 不利な条件追加は僕のお約束ですもんね。「この魔法を発動するためには、ある程度蓄積した魔力が必要になるのよ」「ええっ!? ぼ、僕、そういう事やってないんですけど」「それは大丈夫。鎧の方が自動で、装着主から影響の無い程度の魔力を常に集めてくれるから。だけど……」「……だけど?」「一気に充填させる事も出来ないの。一度発動したら、再度使用可能になるまでかなり時間がかかるわ」「それって、出来る出来ないはどう見極めるんですかね」「両腕にある宝玉の輝きが戻るまで、魔法は発動しないわよ」 なるほど、この蒼い宝石か。覚えておこう。 しかし困ったなぁ。あくまで出来るのは攻撃の無効化だけなんですか。 いや、機能自体はとてもありがたいモノなんですけどね。現状の打開策としてはちょっと……。 一撃KOだからねー。一回無効化した程度じゃ、延命措置にしかならないっすよ。「うーん、他に何かありませんかね」「無効化した攻撃のエネルギーで、一時的に防御力が上がる。って機能もあるけど」 ……その様子だと、あくまで無効化のオマケ程度のモノなんですね。 そもそもあの炎の剣が相手じゃ、防御力をちょっと上げた所で焼け石に水だよなぁ。 あ、今ちょっと上手い事言った? ……どうでも良いですねゴメンナサイ。 「むぅ、どうしたもん」「じーっ」「かぁーっ!?」 な、ななな、何ゆえママさんの顔が至近距離に!? ビックリした、超ビックリしたっ! これが人妻の実力だと言うのかっ!! いや、僕にそっちの嗜好は無いんですけどね。 マジマジと僕の顔を見つめるママさん。何度も言うけど、この人本当に一児の母なのだろうか。 有り得ない程若々しいんですが、ああそんな無警戒に近寄らないでくださいよ。「貴方、気付かなかったけど随分面白い力を持ってるわね」「力!? あ、ああ、「相手の力を写し取る程度の能力」の事ですか」「ううん、もっとその奥にある――とっても強い力。ほら」「えっ―――」 彼女が手をかざすと、一枚のスペルカードが現れる。 それは、かつて僕が生み出した、僕の能力を大きく超えた力。 スペルカード、「幻想世界の静止する日」。 忘れていた。僕にはたった一つだけ、フランちゃんに対抗し得る力があったんじゃないか。 でも、ダメだ。この力を使うワケにはいかない。 こんな、得体の知れない力を――。「落ち着いて晶ちゃん。そうやって、力を否定してはダメよ」「マ、ママさん?」「力ってとても繊細なモノなの。貴方の心が力を拒否してしまえば、その力は本当に別のモノへと変わってしまうわ」「だけど、この力はとても僕に扱えるものじゃ」「……そう、怖い事があったのね。自分の力を恐れてしまうような、そんな出来事が」 アリスのママさんが、僕の両手を包み込むようにして握る。 それだけで、さっきまで感じていた恐れのようなモノが少し薄れた気がした。 「晶ちゃん。今から、私に少しお手伝いをさせてね」「お、お手伝い?」「少しだけ、‘お話’をさせてあげる。貴方の中に眠る。貴方の力と」 そう彼女が言うと同時に、僕の意識はゆっくりと遠ざか――らなかった。 確かに自分の中に何かが流れ込んでくるような感覚はあるけど、それだって特に痛くもなんともない。 なんかこう、想像していたのと違うなぁ……。 こういう時って、不定形の世界に行って不定形の何かと断片的かつ勿体付けた会話をするんじゃないですか?「あら、貴方今それと似たような世界に居るじゃない」「……でしたっけ」 そういや今、精神だけの状態で不定形な世界に居るんですよね。 普通のノリでいけるから、最初に聞いた時からスルーしちゃってました。「今の状態なら、貴方の力を上手い具合に導いてあげる事ができるわ。さぁ、ゆっくりと集中して」「えーっと、集中してどうすれば良いんでしょうか」「貴方が力を恐れるのは、扱いきれない怖さからなんでしょう? なら、一部だけで良いから扱える様にしましょう」「ママさんがやってくれるんですか?」「私は導くだけ、形にするのは貴方。今、自分がもっとも必要としている力……あるはずよ」 ママさんから流れてくる力が、僕の中から「何か」を引き出し形にしようとしている。 あの時と同じく、自分の知らない自分の力が目を覚まそうとしていた。 だけどそれだけだ。目を覚ました「何か」は、ただ出てきただけで一向に落ち着こうとしてくれない。 ――これに‘理由’を与えるのが、僕の役割って事ですか。 正直に言うと、やりたくなかった。 怖い。分からない事もだけど、分かってしまう事が何よりも怖い。 けどママさんは言った。そうやって否定してしまえば、僕の力は別のモノになってしまうと。 幸運にも、今僕には理由がある。 力と向き合うのに、充分過ぎる程の理由が。「よしっ、やってみるか」 カラー反転した自分とか、ヒゲでグラサンで黒い衣装纏ったオッサンとかと戦わされる心配は無いんだ。お得お得。 僕は目を瞑り、言われた通り「力」に新しい形を与える。 フランちゃんに対抗するための、自分の中に眠る何かに近づくための、新しいスペルカードを。 力が、僕の意思に応え凝縮されていく。 やがて目を見開くと、そこにはうっすらと輝く新しいスペルカードが浮かんでいた。 ……あらら、本当に出来ちゃったよ。「ほら、出来たでしょう?」「出来ましたねぇ……」「ふふっ、これで何とかなるかしらね」「あ、はい。ありがとうございます」 スペルカードの完成を、まるで自分の事のように喜ぶママさん。 アリスの友達だからとはいえ、初対面の自分に何とも親切にしてくれるものだ。 ……いつか、もっとちゃんとした形で本人にお礼を言わないとなぁ。「そろそろ、この空間を維持するのも限界みたいね」 ママさんが空を見上げた。そういえば、灰色の世界は微妙に揺らぎが増しているような気がする。 元々、この世界は事情を説明するためのモノだ。長く続く様には出来ていないのだろう。「お別れの時間ね。結局大事な所しか説明できなかったわ、ゴメンナサイ」「いえ、こちらこそスイマセン。せっかくのアリスとのお話のチャンスを潰しちゃって」「ふふっ、晶ちゃんとお話しするのも充分楽しかったわよ。今度は魔界へ遊びにきなさい、アリスちゃんと一緒にね」「……あの、この空間が消えてなくなる一歩手前にこんなこと聞くのアレなんですけど。――ママさんって何者なんですか?」「あら、言ってなかったかしら」 そういって、アリスのママさんは微笑みながら両頬に指を添える。 ノイズが混じりかけている灰色の世界でやられると大変シュールなんですが、ツッコミは入れちゃダメなんでしょうか。 と言うかソレ、最初の時もやってましたよね。決めポーズなんですか?「『魔界神』神綺。アリスちゃんのママやってまーす☆」 ……色々とツッコミ所はあるけど、とりあえず一つだけ。 今までの流れから考えて、その名乗り方はおかしいですママさん。そっちはとっくの昔に知ってます。 最後に壮大なボケを垂れ流す自称魔界神。後半の頼りになってた姿が色々台無し過ぎる。 そして、空気を読んでツッコミさせる前に崩壊する灰色の世界。 最後の最後でヤル気激減である、僕は肩の力を抜きながら意識を失うのであった。 そして目を覚ますと同時に、炎の剣に飲み込まれました。「ぎゃぼーっ!?」「晶さんっ!」 来る事は理解してましたが反応は出来ませんでした。って言うか無理だから、絶対無理だから。 炎はそのまま飲み込むように僕の全身を包み――次の瞬間、綺麗に霧散していった。 「――えっ」「ほ、炎が消えた!?」「おおぉ……」 そういうものだと事前に説明を受けていても、やはり実際に見ると驚いてしまうものだ。 両腕の蒼い宝石は輝きを失い、代わりに銀色の鎧が淡い光を放ち始める。 これで、攻撃の無効化は出来なくなった。 ‘オマケ機能’も発動したみたいだけど……それで向上した防御力なんて微々たるモノだろう。 なら、反撃のチャンスは今しかない。 彼女が惚けている間に、新しいスペルカードを発動させる!「セット、スペルカード」 僕は収納状態のロッドを両手で掴む。 これは、‘柄’だ。 フランちゃんに対抗するため、自らの力に歩み寄るため、僕が選んだ力の形。 それは――神代の器物の名を借りた、一振りの剣。 ―――――――神剣「天之尾羽張」 光の奔流が「柄」の先へと集束する。 神話は違えど、炎の神を両断した国産みの神の剣だ。 彼女の「レーヴァテイン」に対抗するのに、これほど相応しい武器は無い。 全長三メートル程の巨大な光の剣は、まるで生きているかの様に轟々と輝いている。 相変わらず得体が知れないけど、今はその不思議さ加減が頼もしい。「チェストォォォォォオオオっ!」「―――っ!?」 僕は目の前の分身フランちゃんを、光の剣で斬りつけた。 不意打ち気味な僕の攻撃に、それでも咄嗟に反応した分身は、炎の剣でその一撃を受け止めようとして。 ―――そのまま、‘受けた剣ごと両断され’消滅した。 返す刀で、僕はさらに美鈴と戦っていた二体のフランちゃんを攻撃する。 今の一撃で光の剣の威力は証明された。 後は、このまま一気に畳みかけるだけだ!「だから頑張って避けてね、美鈴!」「どわぁぁ!? ちょ、ちょっと晶さぁぁぁぁあん!?」「伸びろ、天之尾羽張!!」「その上伸ばさないでくださいよぉっ!?」 僕の意思に呼応するように、光の剣は二倍以上の長さへと伸びて行く。 巨大化してもなお輝きを損ねない神剣で、僕は分身二人を思いっきり薙ぎ払った。「これで、三人っ!」「うそ……」「あっ、危なかった……死ぬかと思いました」 スペルカード「天之尾羽張」は、分身とは言えレーヴァテインを持ったフランちゃん三人をあっさりと屠った。 僕は驚異的な威力を誇る神剣を構えながら、残った本体フランちゃんへ不敵な笑みを浮かべて見せる。 さて、皆様お待たせしました。 ここからは晶君の、スーパー内面描写と言う名のビビり垂れ流しタイムとなっております。 ―――なぁぁぁぁぁあああんじゃこりゃぁぁぁああああああっ!?!? どこの発砲スチロールカッターだよお前さん。スパスパ斬れるったって限度ってモノがあるでしょう!? 全然手応えが無かったんですけど、レーヴァテインに対抗するってレベルじゃねーぞっ! 自分の作ったスペルカードがどれだけヤバげなシロモノだったのかを、僕は今はっきりと自覚いたしました。 こんなもん全域にぶちまけた日には、幻想郷に風穴が空きますヨ? つーか、威力に制限かかって無いのでございますかよこのスペルカード。 おまけにやたら使い心地が良い。伸びるし軽いし疲れない。壊れ性能にも程がある。 本当になんだコレ、剣になった分さらに扱いが面倒臭くなっただけじゃないか。誰だこんなスペカ考えた馬鹿は! あ、僕か! 何とか驚愕と呆然と焦りと恐れを抑え込み分身三人を倒す事は出来たけど、これで本体とチャンバラするのはヤバくない? そもそも、チャンバラのていを成せるんですか? ……無理だろうなぁ。色んな意味で。 結局、範囲が小さくなっても使いづらい事に何の変わりも無いワケだ。 何で外の世界で核兵器が使われないのか、ちょっとだけ分かったような気がする。 しかし、この光の剣が今回の勝負で頼らなければならない切り札である事に変わりは無い。 これを使った上で出来るだけ双方の命の危険が少なく、かつ、フランちゃんを楽しませる方法は……。「――あっ」 困った事に、僕はそのアイディアを思いついてしまった。 恐らくこの方法なら、神剣の威力を気にする事なくフランちゃんを思う存分楽しませられるだろう。 ただし……僕の体力と精神力が持てば、の話になるけれど。 ああ、どうして僕はこう、自分の寿命を擦り減らすような戦い方しか思いつかないんだろうか。 さらにタチが悪いのは――そんな戦い方を僕自身が、すでに享受していると言う事だ。 「ねぇ、美鈴」「こ、今度は何ですか……」 先ほどの一撃を何とか避けた美鈴が、息を切らせながら聞き返してくる。 その節は大変申し訳ありません。でもこれから先は、しばらく休めると思うから安心して良いですよ?「悪いけど、ちょっとの間後ろに控えててくれないかな」「え、ええっ?」「ねぇ、フランちゃん。分身もヤラれた事だし、しばらく一対一で遊ばない?」「あははっ、凄いよあきら!! 良いよ、いっぱい遊ぼう!」 ようやく衝撃から立ち直れたフランちゃんが、喜色満面の笑顔で炎の剣を構える。 今の攻撃で、ちょっとは怯んでくれないかなーと期待していた僕涙目だ。 でもまぁそんなフランちゃんなら、この‘お遊び’も楽しんでくれる事だろう。「あ、晶さん、何を……?」「いやなに、そろそろ初期の目的を達成させようと思っただけですよ」 光の剣を携えながら、笑顔のフランちゃんの前に立ち塞がる。 内心の動揺を抑え込むように僕も笑い、彼女へ向かって高らかと宣言した。「さて、我慢比べと参りましょうか。――最後まで、思う存分付き合って差し上げますよ」 ……その前に、遺言を言っておいた方が良いかもしれないけどね。主に僕が。 ◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【色々教えろっ! 山田さんっ!!】山田「久しぶりの登場にテンション激熱確変確定山田ですっ!」死神A「いや、パチンコなんてやった事ないでしょうに。死神Aです」山田「今回は晶君のスペルカード祭りです。大変おめでたいですが量も多いので、サクサク行きますよ!」死神A「せめて自分のボケくらいは拾ってくださいよ……」 Q:ところで、【幻想化した『凍結』の概念】ってナンデスカ!?山田「良い質問です。有耶無耶な解説ばかりでちゃんと説明しない作者に聞かせてやりたいくらいです」死神A「ツッコミしにくいボケも止めてください」山田「これには以前、花の妖怪等が言っていた「凍結の概念を付与」と同じ意味があります」死神A「言い方を変えただけって事ですか。で、どういう意味なんですか?」山田「まぁ要するに、「本来は凍らない物すら凍る様になった」と言う事ですね」山田「炎や「気」の様な本来凍らないモノすら凍らせる。物理法則を完全に無視した「幻想」、それがあのスペルカードの特徴なワケです」死神A「なるほど、ビームやら弾幕やらすら凍るってワケですか。それは確かに凄いですねぇ」山田「これとは逆に、科学的な「凍結」の概念を極大化したのが今回の「天之尾羽張」です」死神A「あれですか。やたらスパスパ切れてた」山田「物理の概念なので幻想郷在住の私には上手く説明できませんが、物体の凍結には原子の動きや振動などが関わってきています」死神A「今、微妙に予防線を張りましたね」山田「晶君の「天之尾羽張」は、そういった凍結における「物体の熱エネルギーを奪う」という概念を極大化しているのです」死神A「所謂絶対零度って奴ですかね」山田「はい、しかもそこからさらに派生しています。「天之尾羽張」は、「あらゆるエネルギーを奪い尽くす」と言う特性を持っているのです」死神A「うわ、ヤバそう」山田「実際の所かなりヤバいですね。奪うエネルギーは幻想、実存問わずですから。あの吸血鬼の分身が一太刀でやられたのもそれが原因です」死神A「え? アレは斬られたからじゃないんですか?」山田「剣の形はしてますが、基本はエネルギーの塊ですよ。分身が消失したのは、あらゆるエネルギーを奪われて身体を維持出来なくなったからです」死神A「……普通に斬られたよりタチが悪くありません?」山田「タチ悪いですよ。元がそれを視界内全てに撃ちだす「幻想世界の静止する日」ですし」死神A「何事も無いかのように言わないでくださいよ……」山田「まぁでも、私は物理学に詳しくないので説明は間違ってるかもしれませんが。私は物理学に詳しくないので」死神A「ゴリ押ししないでくださいよ……はぁ、ではではまた次回~」山田「ツッコミに元気が無い。昇給カット」死神A「どう転んでも地獄!?」山田「誰が上手い事を言えと」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど