巻の六十「活動的な馬鹿より恐ろしいものはない」「ちょいやさーっ!」「なんのっ!」 拳が交差する。 打点のブレた互いの一撃は頬を掠り、虚空へと打ち出された。 僕は目の前の相手――美鈴と視線を一瞬交わし、大きく距離をとる。「よもやこれほど腕を上げていたとは……晶さんの成長度合いには本当ビックリです」「ふっふっふ、自慢じゃないけど『気を使う程度の能力』に頼る頻度は相当数あったからね」「それ、本当に自慢じゃありませんよね?」「振り返させないで! 涙が止まらなくなるからっ!!」「うわぁ、晶さんだぁ……成長しても間違いなく変わって無い晶さんだぁ」 うるさいやい、余計な御世話だ。 何故か嬉しそうな美鈴を軽く笑顔で威嚇しつつ、僕は少し前のめりの姿勢になる。 今度は、両手両足に冷気を含ませた風を纏わせて突撃してやる。 名付けて風神拳! ――って前もやったじゃんコレ。しかも相手同じで。 しかし以前のフェイク技と違い、今回の風神拳はきちんと猛威を振るう仕様となっておりますヨ? さぁ美鈴! 属性異常攻撃デフォルト持ちの恐ろしさを存分に味わうと良い!!「厄介な技を持ちだしてきましたね……ですが、それだけで優位に立ったと思わない方が良いですよ!」「まぁ、‘これだけ’ならね」「へっ!?」 さらに、僕は銀の棒を展開させる。 手に巻きついていた冷気の風は、そのまま棒に纏わりつき武器を強化した。「どうだ! 名付けて、氷華風装!!」「何だかちょっと痛々しいネーミングですね」「う、うぐぅ」「それはまぁそれとして……何ですか、その武器は?」 さらりと人の心を抉りつつ、構えを解いて興味深げに棒を覗きこむ美鈴。 そういや、昨日の組手は動きの確認みたいなものだったから、こういうのは一切使ってなかったんだっけ。 ―――紅魔館に帰還してから二日目の朝。未だ主の帰らぬ吸血鬼の館で、僕と美鈴は再び組手を行っていた。 何故か彼女が張り切っているのが謎だけど、この‘おさらい’はとてもありがたいので問題ない。 「この前、永遠亭に行った時に貰ったんだ。見た目はわりと普通だけど、これで意外と汎用性は高いんだよ?」「なるほど……で、何て名前なんですか?」「はへ?」「名前ですよ。見た所かなり上等な武器みたいですし、さぞや立派な名前が――」「あー、そういや棒としか呼んでなかったねー」「ありゃりゃ、そうなんですか」 渡された時に名前を聞かなかったから仕方が無いんだけど、見た目通り「棒」と呼び続けるのはちょっと抵抗がある。 鎧の方も「魔法の鎧」としか呼んでないワケだし、良い機会だから両方共に名前を付けておこうか。 「ふむ、「シルバー・クリスタル・ブレスト」と「水晶銀甲坤」ってのはどうだろう」「いきなり何を言ってるのか分からないんですけど……晶さんがお嬢様と仲の良い理由が何となく分かるネーミングですね」「いやいや、レミリアさん程のカッコイイセンスは僕にはまだ無いって」 しかしイマイチでしたか。確かに、ちょっと呼びにくいかなぁとは思っていたんですよ。 一々「水晶銀甲坤展開!」みたいな事を言って回るのは――イカすとは思うけどさすがに疲れるからね。 もうちょっと短くて、小粋な呼び方は無いかなぁ……うーん。 「……とりあえず、しばらくは『魔法の鎧』と『ロッド』と呼ぶ事にします」 「何の事だかさっぱり分かりませんが、シンプルで良いと思いますよ?」 結局、何も思いつかなかった。肝心な所で何も出てこない自らの浅い知識力が泣ける。 いーもん! いつかこう、確固たる実力を手に入れた時に、その力に括ったエスプリの効いた名前を付けてやるんだもん! それまで待っててね! 僕の頼れる装備品達!! ……あれ? 今、心なしかロッドの輝きが鈍くなったような。「気のせいかな。まぁとりあえず、続きやりましょうか」「そうですね。それじゃあ、どうぞ遠慮なくかかってきてください」「ではお言葉に甘えて。―――先制マスタースパァーク!」「ほ、本当に遠慮が無いですぅ!?」 ちなみに、組手と名は付いていますが基本的には弾幕ごっこです。 永遠亭の時とは違い、負けても問題ないので伸び伸びと戦う事が出来るのが嬉しいなぁ。「そぉーれっ、氷華風装を解除してさらにダイヤモンドリッパーを射出っ! 不意打ち上等でガンスっ!!」「うわぁ! 避けたと思ったら今度は氷でできたおっきい手裏剣!?」「追撃で風刃下段撃ち! 足止めしちゃうぜ―っ」「しかも風で脚が取られた!?」「どっせい、トドメとばかりに、不安定な姿勢の美鈴へアグニシャインじゃーっ」「タチ悪っ!? この人夢とは別の方向性で強くなってる!?」 ええ、伸び伸びと負けても良い気持ちで戦ってますよ? ちゃんと。 とは言えさすがに相手もベテランの門番。不利な弾幕ごっこで毎回戦ってきただけの事はある。 美鈴は震脚で足に纏わりついた風を振り払い、そのままの勢いでアグニシャインを蹴散らしながら突貫してきた。 うわぁ、何と言う強引な突破法を――って、これ僕も四季面でやったっけ。 やられてみると怖さが分かる。力押しは下手な小細工なんて通用しないからなぁ。「しかし、遠距離攻撃に力を割き過ぎましたね! 同じ能力しか使えない状況なら、私の方が圧倒的に有利!!」「―――えい、狂気の魔眼」「甘いっ! 拳法使いがそんな雑な目線で狂うと思わない事ですっ!!」「拳法使いすげぇーっ!?」 しまった。気を使う能力の気と狂気を操る能力の波長は、同じ様なノリで操れるんだった。 こっちの魔眼はまだまだ未熟な上に、相手は気の扱いに長けた熟練者。さすがに幻覚を仕掛けるのは無理があったか。「とりゃあ! 必殺、さりげなく狂気の魔眼が使える事にビックリしちゃったよパンチっ!!」「それは感想ですねげふぅっ!?」 そのまま、加速した一撃を綺麗に叩きこまれてしまった。 ううっ、さすがに避け専念してなきゃ美鈴の一撃を裁く事は難しいか。 僕は三十メートルほど吹っ飛ばされ、地面との懐かしくも土臭い逢瀬を再び重ねるのだった。 「ばぶばべーびん、びぼぶびばばべばばべばべんべ」「えーっと……『さすが美鈴、一筋縄では勝てませんね』ですか?」「ヴぁい」「そう言われると照れますねー。でも晶さんも相当強くなってますよ? 追いつかれる日もそう遠くは無いかもしれません」「べべばぶべー」「照れなくって良いんですよ、本当の事ですし」「……貴方達の会話を聞いていると、脳が蕩けてくる気がするわね」 僕達が通訳必須の会話を交わしていると、聞きなれた声が割って入ってくる。 若干の呆れを含んだその声の主は、四季のフラワーマスターであり僕のご主人様でもある幽香さんだ。「幽香さん、お早うございます」「ぼばぼぶぼばびばぶ」「とりあえず晶は、いい加減顔を引き上げなさい」「ヴぁーい」 顔を上げ、微妙についた土を払う。 結構派手に一撃を喰らったはずなのに、ダメージの方は思ったよりも少なめだ。 まぁ、それは美鈴も同様だけど。……気を使う程度の能力持ちは本当にタフになるなぁ。 「ところで幽香さん、何か御用ですか? 朝のお仕事ならもう終わりましたけど……」「暇だから顔を出しただけよ。修繕が終わったら本格的にやる事が無くてね」「ううっ、すいません。客人ももてなせないダメ門番で」 ……門番に接客しろって言うのは、ちょっとばかり無理があるんじゃないだろうか。 内心そう思いながら、僕は美鈴の言葉に苦笑する。 レミリアさんが宴会に行ってからすでに日を跨いでいるのだが、紅魔館の主が帰宅する様子は一切無い。 昔の王侯貴族は一週間ぶっ続けで宴会したって話だけど、レミリアさんも実はそういう事するタイプの貴族なのかなぁ。 神社で? さすがにそれは無いか。「まぁ、もてなす立場の吸血鬼達が居ないのは」「ほへ?」「――事情が事情だから、仕方ないと思うけどね」「じ、事情ですか」 それを何故、僕の目を見つめながら言うのでしょうか? あと、部外者の方が事情知ってるってんで、美鈴がガチ凹みしてるんですが。 「……こちらからも、少し干渉すべきかもしれないわね」「幽香さん?」 頬に手を当てて、何やらブツブツ言ってる幽香さん。 何だろう、不思議とその姿を見ていると背筋が寒くなってくる気がする。 はは、気のせいだよね。うん。 その証拠に、顔を上げた幽香さんの顔には満面の笑みが浮かんでいる。 ええい、気のせいだから止まれよ僕の膝小僧!「ねぇ美鈴、しばらく私と門番の役目を変わらない?」「ええっ!? ど、どうしたんですか急に」「単なる暇つぶしよ。同じのんびりするなら、襲撃される可能性のある門番をやってる方がまだマシじゃない」「……普通は逆だと思うんですが」 さすがは幽香さん、戦場の空気のみが己を酔わせてくれるワケですね。とても漢らしいです。 幽香さんは唖然とした様子の僕等を気にする事も無く、そのまま笑顔で言葉を続けた。「その間、貴女は晶の面倒を見てあげなさい。晶も、吸血鬼が帰ってくるまで館ですし詰めは辛いでしょう?」「まだ二日目ですから辛い事は特にありませんけど……そうですね、強いて言うなら」「強いて言うなら?」「ちょっと紅魔館の中を探検してみたいですね」「―――そう」 前々から気になってたんだよね、この中身が異常に広い館の全容。 色々と屋敷の仕事も任されてるから、それなりに構造自体は把握してるんだけど。 逆に、行かない所にはとことん行かないからなぁ。 不思議大好き晶君としては、そういう攻略済みダンジョンのマップが百パーセントになってないような事態は許容出来ないのですよ。 あ、不思議大好きと全然関係無い例えでしたね。ゴメンナサイ。 ……ところで僕の発言後、幽香さんの笑みが最高潮と言わんばかりに輝きだしたのは何故なんでしょうか。「ほら、晶もこう言ってるわよ」「むぅ……確かに、幽香さんになら門番を任せても問題は……それに晶さんはお嬢様のお気に入りですし、要望には応えた方が……」 幽香さんに話を振られ、困ったように唸る美鈴。 門番の任と僕等へのもてなし、その両方を天秤にかけて迷っているようだ。 それにしても、美鈴の幽香さんへの信頼度の高さにちょっとビックリ。 門番任せても良いと思ってるなんて……やっぱ、同じ仕事をやり遂げたって共通点は大きいんだなぁ。「―――分かりました! 私も紅魔館の一員として、お二人をもてなす覚悟があります!!」「そんな大袈裟な」「この紅美鈴。門番の役職を一時的に幽香さんへ譲り、紅魔館の案内役となろうではありませんかっ!」「……そんな大袈裟なんだ」「意外とプライドがあるのよ、あれでもね」 普段居眠りしている姿からは想像もつかないけど、美鈴は確固たる信念を持って仕事に望んでいるのかもしれない。 ……そのわりには、良くサボってる気がしないでもないですが。 しかし幽香さんがこう言っているのだ。きっと、そんな腑抜けた態度の裏で血の滲むような努力を――。 「それじゃあ早速、門番は幽香さんに任せてゆっくり紅魔館観光と参りましょうか。えへへー、お仕事なら仕方ないですよねー」 努力、してるの? ウキウキしている様にしか見えない美鈴の姿に、僕は頷きかけた首を傾げるのだった。 紅魔館のロビー。丁度玄関に当たる部分で、僕と美鈴は対峙していた。 ……自慢げに胸を張るのは良いけど、その行為であるパーツが強調される事をちょっとは気にして欲しい。 ただでさえ、身長の関係でそっちの方に目が行ってしまうと言うのに。 いや、別にやましい気持ちとかは――ゴメンナサイ、邪な考えを捨てきれないでゴメンナサイ。「こーら、ちゃんとお話を聞いてくれないと困りますよー」「ひゃ、ひゃいっ。わかりましたっ!」「うんうん、素直なのは良い事です」 そんなこっちの葛藤にも一切気付かず、美鈴は楽しそうにお姉さんぶっていた。 彼女の立ち位置を考えると、浮かれる気持ちは分からないでもない。 分からないでもないけど出来るだけ控えてください。貴女のその仕草は、僕の精神衛生上非常によろしくないです。 「じゃあ、後は移動しながら説明しますね。大雑把な部分は晶さんも良く知ってるでしょう?」「あ、はい。そうしてください」 移動のため美鈴が背を向けてくれたおかげで、僕はようやく一息つく事が出来た。 でもまだちょっと心臓に悪いので、出来るだけ彼女の姿は視界の中に収めない様にしておこう。 「まぁ、今更晶さんに説明するのもアレですけど、一応注意しておきます」 それにしても……改めて見直すとシミジミ思う。紅魔館ってやっぱり変な所だよなぁ。 一目見ただけでも分かるほど、目の前の廊下の長さと外観の長さは明らかに噛み合っていない。 当然、廊下に面した部屋の数も有り得ない事になっている。 一部屋六畳計算で考えても、ここ一面だけであっさりと外見面積を越えてしまう事だろう。 どこの四次元ポケットだここは、と思わず言いたくなる光景である。 「まず始めに。紅魔館は危険な所が多い屋敷なので、絶対に私から離れないでください」 聞いた話だが、この驚異の拡張をやってのけたのは咲夜さんの能力であるらしい。 突然消えたり現れたり、さらにはナイフを止めたり出来る上、家の拡張も出来るとか……何でもありにも程があるでしょうメイド長。 と言うか、あの人の能力って結局どんなものなんだろう。 かなりトンデモな能力だって事は何となく想像出来るけど、現状分かるのはそれだけだからなぁ。「あと、残念ながら地下で案内できるのは大図書館だけになります。他は――ちょっと事情があって見せられないんですよ」 と言うか、上記の共通点って何さ。どれもこれも共通点があるようには見えませんよ? 強いて言うなら、全部の現象で空間に干渉しているような気は……。 まさか、空間を操る程度の能力? さすがにそれは勘弁して欲しいっす。反則過ぎます。「ただ、以上の点を守ってもらえれば他は特に――って、晶さん?」 やっぱ今度本人に聞いてみるべきかな? でも、下手に質問するとナイフで串刺しの刑が待っていそうな気がして怖い。 どうしてくれようかこのジレンマは。 ちょっと遠回りして、主であるレミリアさんに尋ねるってのも一つの手だけど……。「うわぁ、説明してる間に居なくなってる!? 晶さぁーん!?」「ほへ?」 おや、そういえばここはどこだろうか。 考え事しながらウロウロしていたら、いつの間にやら見慣れない所に。 わりと清潔なイメージのある紅魔館にしては珍しく、ちょっと小汚い上にジメジメした場所だ。 それに何より、蝋燭の光源が無いと何も見えないくらいに暗い。 僕は視力が強化されてるから平気だけど、ここってひょっとして地下なのかな? 同じ地下でも、パチュリーの居る大図書館とはえらい違いだ。「しかし、いつのまに地下に来たのさ、めいり……」 あれれー? おかしいな、中国娘さんの姿がどこにも見えないぞー? これは所謂迷子って状況なんですかね。 まったくもう、美鈴さんったらだらしないな――って、迷ったのはどう考えても僕ですよね、はい。 「……どうしたもんかなぁ」 帰ろうにも、そもそもどこから来たのかが分からない。 遭難時のセオリーを考えると、大人しくしているのが正しい対処法なんだろうけど。 実を言うと、溢れんばかりの冒険心がわりとウズウズしているんですよ。 この何かありますよと言わんばかりの素っ気ない廊下――僕何だかワクワクしてきた! 『ケケケ、構う事はねぇよ。好き勝手にうろついちまえ!』「あ、こういう時に有りがちな悪い心の囁き!」 でも、言う事は僕の欲求に正しくそっているので特に反対する気は無い。 そうだよねー。元々そういうつもりだったんだし、一人で冒険するのだって有りだよねー。『えっ、ちょい待てよ。せ、せめて良心の囁きぐらい待ったらどうだ?』「どうせ悪い心に同意して、「僕の心に良心はいないのかいっ!」ってオチになるから遠慮します」『言いきるなよ! ちょっとは自分の中の善の心を信じたらどうだっ!?』「ほら、僕って両親居ないじゃん。だから良心もいない。なーんちゃってー」『その冗談は重すぎるわっ! とにかく、今はまだ即決をさけてこの場に残ってだな』「さーて出発!」『聞けやぁぁぁぁぁああああっ!!』 悪魔の囁きを無視し、謎の廊下を進む事にした冒険隊。 はたしてそこに待ちうけるモノは何か! BGMは某秘境を旅する探検隊でお願いします!!「……って、もう行き止まりについちゃった」 ざんねんわたしのぼうけんは――ってこれは最初の頃にやったなぁ。 行き止まりの壁には、この廊下に不釣り合いなほど高級な木製の扉がポツンと取りつけられている。 ううむ、これでもうこの地下迷宮は終わりなのかな。 だとしたら幾らなんでも早すぎる。せめて、分かれ道の一つや二つ有っても良いんじゃないだろうか。 後は罠とか。地下なんだから落ちてくる岩とか剣山付き落とし穴とかの、侵入者撃退用トラップがあるべきじゃない? ……さすがに無いか。迷宮ならともかく、館の地下じゃ防犯としてイマイチだもんねぇ。「はぁ、残念」 落胆の溜息を漏らしつつ、僕は目の前の扉を開く。 ――あ、そういえば、この先に何があるのか全然調べて無かった。 今更ながらその事に思い当たり、僕は身体を強張らせる。 扉の向こう側は、そこが地下である事を忘れてしまうほど煌びやかな部屋だった。 天井から吊り下げられている豪華なシャンデリア。それが邪魔にならない程広大な規模の部屋。 その中央に置かれた、僕が六人は寝転がれそうな巨大なベット。 「……ナニコレ」 王侯貴族の部屋、と言われても信じてしまう程の凄い部屋だ。 強いて言うなら物が少なすぎる気がするけど、過剰な装飾のおかげで全然気にならない。 そしてその中央には、ポツンと女の子座りしてこちらを見上げる少女の姿が。 金色の髪を右側だけ結った少女の背中には、何故か天井にあるシャンデリアの様な飾りがぶら下がっていた。「えーっと、どちらさまで?」「それ、フランの台詞だと思うんだけど……」 謎の少女は、僕の問いかけに困ったように首を傾げる。 その姿はかなり愛らしいのだけど、僕の危機感知センサーは荒れ狂う暴風の如く警報を発していた。 ――――良く分からないけど、どうやらトラブルの匂いがするのは確かみたいだね。