巻の十点五「親の心子知らず」※注意! この閑話では、射命丸の世話焼きお姉さんっぷりを意図的に強く表現しています。 そういった表現が不快な人は回れ右して戻ってください。にとり「さてさて、この『こんぱくとぷりんたぁ』はどんな構造しているのかなぁ」文「ただいま戻りました! 清く正しい射命丸ですっ!!」にとり「おや、おかえ」文「久遠さんは!?」にとり「………まだ帰ってきてないけど?」文「なっ、なにをのんびりしてるの!? にとり!」にとり「何がさ」文「今すぐ、久遠さんを探しに行かないと!」にとり「いやいや、何でそうなるのさ。少し落ちつきなって、文」文「私は冷静よ!!」にとり「どこが冷静なんだか。まだ日も落ちてない内からアキラの心配をしてどーするのさ」文「そんな事はないわ。久遠さんは、僅かな話し合いの最中に行方不明になれるほどのうっかり屋さんなのよ」にとり「……確かに、アレはたまげたけど。さすがにアキラも学習したって」文「いいえ、してないわ。彼はそういう顔をしてたもの」にとり「どんな顔なのよ、それ?」文「宝物を前にした黒白みたいな顔」にとり「……何?」文「あれ、にとりはあの魔法使いのこと知らないの? 今の巫女と一緒に結構な異変を解決してるんだけど……」にとり「そういう話に興味はないねぇ」文「文々。新聞にも掲載したのよ? まったく、ちょっとは読みなさいよ」にとり「気が向いたらね。だけど、文の言いたい事は分かった。つまりアキラは、私らの忠告を右から左へと聞き流したって言いたいんだろ?」文「……さすがにそこまでは言ってないわよ。まぁ、似たようなモノだとは思っているけどね」にとり「似たようなもの?」文「なんて言うかね。私達と彼の『危険』の認識が、思いっきりズレている気がするのよ」にとり「あー、なるほど」文「あの人はもう、本当に警戒心ってものが無いんだから」にとり「確かにそうだね。……だけど、そこらへんも踏まえた上で遠出の許可を出したんだろう?」文「うぐっ」にとり「ま、今のアキラなら大丈夫じゃないの? 全力を出せないとはいえ、あの速さに追いつける妖怪なんてそうそういないでしょう」文「………………そう、なんですけど」にとり「何さ」文「久遠さんの事だから、うっかり弾幕ごっこに応じちゃうとかありそうじゃない」にとり「えーっと……あはははは」文「そのまま、うっかり氷翼出しっぱなしにした状態でスペカ使おうとして、発動せずにピチュられるとかもありそうでしょ」にとり「そ、ソンナコトナイトオモウヨ?」文「……ちょっと私久遠さん探してくるっ!」にとり「ストップ文! ありえないと否定できなかった私が言うのもあれだけど、ちょっと過保護すぎだって!!」文「――――か、過保護? 私が?」にとり「そうだよ。アキラだって全て承知で幻想郷を旅しているんだ。あくまで協力者の私らがアレコレ言い過ぎるのも良くないだろ」文「確かににとりの言うとおりだけど……」にとり「文の心配する気持ちもわかるけどさ。とりあえず日が落ちるまではここで待ってようよ」文「………そうですね。そうしましょう」にとり「ところで、取材はどうだった?」文「ま、おおむね好調ですよ。今回はいい新聞が書けそうです」にとり「へぇ~(……前も聞いたなぁ、おんなじセリフ)」文「ふふっ、コメンテーターとして参加したにとりの注目も、これでぐぐーんとアップですっ!」にとり「ほほぉ~(目立つのは嫌だけど、多分何も変わらないだろうからほっとこう)」文「気のせいかしら。感嘆の声の裏側に何か黒いものが」にとり「気のせい気のせい」文「ならいいけど。……そうね、今のうちに新聞の記事でもまとめておきましょうか」にとり「じゃ、私は『こんぱくとぷりんたぁ』の解析を続けるよ」文「……うーん」にとり「(カチャカチャ)」文「…………(そわそわ)」にとり「(カチャカチャ)」文「………………(すくっ)」にとりう「(カチャカチャ)」文「……………………(うろうろ)」にとり「(カチャカチャ)」文「…………………………(うろうろ)」にとり「(カチャカチャ)」文「――――やっぱり久遠さん探してきますっ!」にとり「いきなり心変わり!? なんでっ!?」文「良く分からないけどね、彼が厄介事に巻き込まれた気がするのよ」にとり「それは間違いなく気のせいだから。もしくは心配のし過ぎ」文「ううっ、だけどぉ~」にとり「今度は何が不安なのさ」文「……久遠さんのあの気質は、より強力な妖怪になればなるほど好まれるでしょう」にとり「まぁ、そうかもね。意外とああいうタイプは幻想郷にいないし」文「そうなると、久遠さんがそういった妖怪に気に入られてお持ち帰りされる危険性がっ!!」にとり「ないない」文「いいえ、きっとそうです! 私、久遠さんを助けに行ってきます!!」にとり「ストップ! ストーップ!! もうどこからツッコミを入れればいいか分からないよ!?」文「まずは永遠亭でしょう! あの薬師なら、久遠さんを拉致監禁してそうです!!」にとり「意味が違うから! それに失礼にもほどがあるって!!」文「は~な~し~て~っ!! 私は久遠さんを探しに行かなきゃいけないんですぅ~!!!」にとり「ああもう。アキラぁ~、早く帰って来てよー!!」