※この話は過去のわりとどうでもいい話をだらだら描いたものです。 過度な期待を抱かれると作者のストレスがマッハ。 なお今回の話は、巻の二十五のネタバレを多分に含んでおります。 天晶花・昔語り①「晶と隙間とお茶会と」紫「ようこそ、素敵なお茶会に」晶「……はれ?」紫「まずはファーストフラッシュの爽やかな香りで春の訪れを感じましょう?」晶「うぇぇぇええええっ!? なにココ!? どこココ!?」紫「(にこにこ)」晶「え? だって今、部屋から出て? うわっ! ドアが無い!?」紫「(にこにこ)」晶「というか何で紫ねーさまがここに!? そもそもお茶会って何のこと!?」紫「(にこにこ)」晶「……えーっと、その」紫「(にこにこ)」晶「………はい、イタダキマス」紫「良く出来ました。次はもっと小粋な返しを期待させてもらうわ」晶「次があるんですか……というか正直、何が起こっているのかさっぱり分からないんですけど」紫「あら、不思議な事なんてあったかしら?」晶「僕の部屋の扉が絵本に出てきそうな庭に繋がってましたが、これは不思議な事になりませんかね」紫「扉は場所と場所とを繋げるもの。どこにも繋がってないものを扉とは言わないわ」晶「ああなるほ……ど?」紫「晶の部屋の扉は優しいのね。貴方に会いたい私の気持ちを汲んで、こんなサプライズを用意してくれたわ」晶「驚いているのは僕だけでしたが」紫「ええ、晶の驚いている姿が堪能出来たわよ?」晶「部屋の主に対する配慮が足りない扉だ」紫「扉だって、自分の事を分かってくれる相手に尽くすものよ」晶「……分かりました、もうその事は良いです。それで紫ねーさまは、僕と会ってどうする気だったんですか?」紫「(にこにこ)」晶「トリアエズオカワリモラエマスカ」紫「あら、私の用意した紅茶はお気に召したようね」晶「(返答が貰えない状態で、それ以外に何を選択しろと言うんですかねーさま)」紫「お茶会を楽しみなさい」晶「……らじゃあ」紫「それで晶、生活の方はどうかしら? 不自由は無い?」晶「いきなりこの場に似つかわしくない普通の会話が始まりましたね」紫「あら、私は貴方の後見人よ? 会う機会は少ないんだから、聞くべき事は聞いておかないと」晶「この前修学旅行の積立金の話が来た直後に謎の振り込みがありました」紫「ピッタリだったでしょう?」晶「保護者面談の日程がいつの間にか決まってた上に、知らない間に終わってました」紫「なかなか話の分かる先生だったわ」晶「……僕の事嫌いですか?」紫「あら、後見人の責任を果たしているだけなのに酷い言われよう」晶「何故暗躍する必要が」紫「妖怪は陰に生きる者だから、表の世界にあまり顔を出すわけにはいかないのよ」晶「普通に顔を出すより悪目立ちしてませんか、ソレ」紫「妖怪は悪戯好きでもあるの」晶「何でもありですね、妖怪」紫「何でもありよ、妖怪」晶「まぁ、おかげで生活的な不自由は無いですよ。報告する事すら無いのが困りものですが」紫「貴方自身から聞く事に意味があるのよ」晶「そう言われると……うーん。報告する事、する事」紫「そうね。―――なら、教えて貰えないかしら? 『幻想郷』の事、どこまで分かった?」晶「あはははは、全然分かんないっす。闇雲に図書館で本漁っても、オカルトな知識しか集まらなくて」紫「ふふっ、それでは不満なの?」晶「『実録! 妖怪のすべて』なんて子供向け漫画で、妖怪の事が分かるとは思いたくないです」紫「それが幻想を綴ったものなら、どこかに必ず‘真実’が含まれているものよ。例え人間向けに内容を湾曲された書物でも、ね」晶「………つまり、‘真実’を知らないと何が正しくて何が間違っているのか分からないと」紫「(にこにこ)」晶「やっぱり闇雲に探すのはダメかぁ。なら次は……どうしよう」紫「(にこにこ)」晶「紫ねーさま、人の悩みを肴に紅茶を飲まないでください」紫「妖怪は人を食べるものよ」晶「やたら上手い事言いますね」紫「人の不幸は蜜の味」晶「ダージリンでロシアンティーはどうかと」紫「それはジャムねぇ」晶「……精進します」紫「そうなさい。さて、他に報告する事は?」晶「今後は、有意義な報告が出来るよう頑張ります」紫「それは重畳。私も、無理やり絞り出したような途中経過をそう何度も聞きたくはないわ」晶「うぐぅ……」紫「あら、もうこんな時間。……今日はこれまでね」晶「結局何も出来なかった気がしますが」紫「お茶会は出来たわよ?」晶「……左様で」紫「ふふっ、じっくり話すのはまた次の機会に、ね。今度はもっと楽しいサプライズも用意しておくわ」晶「いえ、次のサプライズは僕が考えときますよ。そうしないと、今度はベッドが気を利かせそうですから」紫「あらそう? なら期待させてもらうわね」晶「そうしてください。で、紫ねーさま。………僕はどうやって帰ればいいんでしょうか」紫「あら、お茶会の終わりは主催者の挨拶と相場が決まっているでしょう?」晶「なるほど、閉会と同時に送迎までやってくれるんですね。全自動って便利」紫「ええ、招待も入場も全自動よ。凄いでしょう」晶「お願いだからそっちは半自動にしてもらえませんか」紫「(にこにこ)」晶「……挨拶お願いします」紫「では、二人っきりの素敵なお茶会。最後までお付き合いくださいありがとうございました」晶「いえいえ、久しぶりにねーさまの顔を見れて良かったです」紫「ふふっ。ではまた、次回の開催をどうぞご期待ください」晶「(……このお茶会は続くんだ)」紫「それじゃあ、また会いましょうね」晶「はい、お疲れさ――――あれ? 紫ねーさまぁー?」晶「……本当に全自動で戻った。どういう仕掛けになってるんだろう」晶「それにしても、またなにも聞けなかったなぁ。……どうもあの人と話していると、本題から話がそれちゃうんだよね」晶「まぁ、そこらへんの話はまた今度会う時に聞けばいいか。次の機会にじっくり話そうって言ってたし」晶「……とりあえず、今は次会った時の「サプライズ」でも考えとこうかな」晶「そうだ! お茶会のお礼に何か手料理でも振舞ってみよう!!」晶「料理は……お袋の味、肉じゃがとかでっ!」晶「よーしっ! 頑張るぞーっ!!」 続く(?)