「おおあきらさんよ まけてしまうとは なさけない」「え? 何事? 何でドラクエの王様風? 文姉何やってるの?」 そして何故に僕の身体は、やたら丸いテーブルの上に大の字で固定されてるんですか? 今までの展開は何だったんですか? え? と言うか僕負けたの?「これはもう、抜本から改造するしかないわね」「幽香さん!? 何ゆえ白衣!?」「と言うかもう、普通に改造するしかないわね」「あ、アリスさん? 何でここに? そしてそのドリルは何ですか!?」「負けちゃった以上は、改造しかないわよねぇ」「ねーさま何で居るのん!?」 うわ、天井から手術に使うライトっぽいモノが降りてきた!? そして周囲にずらっと現れる、人一人を弄るには少々多過ぎる数の白衣の集団。 おまけに斜め上しか見えない僕の視界には、鷹を象ったエンブレムまで表れる始末。 これもう完全にアレだよね!? 悪の怪人に改造される系のアレだよね!? 人間止めろって言うんですか皆さん!?「かーいぞう、かーいぞう」「かーいぞう、かーいぞう」「かーいぞう、かーいぞう」「かーいぞう、かーいぞう」 そして始まる謎の手拍子、視界も土台もグルグル回り出す。 一切状況が判明しないまま畳みかけられる怒涛のボケに、僕は心の底からの叫び声を上げた。「せめて、せめて改造するならバッタ怪人にしてぇぇぇぇええええ――――アレ?」 叫ぶ僕の視界に映るのは、極普通の格天井。 眩しいライトも怪しいエンブレムも、影も形も見えはしない。 えーっとコレは……やっぱりの夢オチ? まぁ、そうだよね。普通は有り得ないよね。地獄の軍団は迫ってこないよね。 だけどやっぱり手足が動かないのと、視界の右側が塞がれているのはどういうワケなのだろうか。「アキラ! 気が付いたんだね!!」「はぇ?」 仕方ないので身体だけ起こすと、見慣れた室内に見慣れない光景が広がっていた。 どうやら、ここは永遠亭の一室であるらしい。断言はできないけど、確か病人用の部屋の一つだった気がする。 で、何故かそこに集結している河童と魔法使いと吸血鬼と風祝。色んな意味でカオスだ。「うう、アキラぁぁぁあ!」「お兄ちゃぁぁあああん!!」 「がふぅっ!?」 等と呑気に考えていたら、河童と吸血鬼――にとりとフランちゃんに思いっきり突撃された。 いや、これは抱きつかれたのか? どっちにしろ、凄い痛い事に変わりは無いんだけど。「―――って、何じゃコリャーっ!?」 そこで初めて、僕は自身の異常な状態に気が付いた。 両手足にはギプスが嵌められ、動かないように其々固定されている。 さらに身体には馬鹿みたいに包帯が巻かれ――恐らくは右目もこれで塞がれているのだろう――全体の動きを阻害していた。 何と言うか、一目で分かる重傷患者って感じだ。これって一体どういう事なんだろうか。「この馬鹿!」「あいてっ!?」「常々馬鹿だと思っていたけど、今回の事で確信したわ! アンタは空前絶後の大馬鹿よっ!!」 素手で僕の頭を殴りとばしたアリスが、掌をブラブラさせながら怒りを露わにする。 それで、ようやく思い出した。自分が何をやらかしたのかを。 ……あー、あー、そういう事でしたか。そりゃまぁこんな風になるよね。むしろ生きてた事すら奇跡だよ。 そして同時にアリスの鉄拳の意味も理解する。他に方法を思いつかなかったとは言え、我ながら無茶をやったもんだ。 フランちゃんもにとりも滅茶苦茶泣いてるし……随分と皆に心配をかけちゃったんだなぁ。「ゴメン、アリス。なんか泣かせるくらいに心配させちゃったみたいで」「……この涙は、アンタのド固い頭をうっかり素手で叩いたせいよ」「ツンデレオツ」 「うるさい! 良いから私に謝るよりも先に、泣きっぱなしの連中を何とかしなさい。全面的にアンタが悪いんだから」 ……そういえば、僕とアリスがこれだけ騒いでるのにフランちゃんもにとりも泣きっぱなしだ。 早苗ちゃんは泣いてこそいないけど、さっきからずーっと惚けたままだし。 冷静に考え無くても、エラい状況じゃないんだろうかコレ。「うう~、ゴメンよアキラぁ。あんな意地悪言って~、まさかあんな無茶するとは思わなかったんだよぉ~」「いやいや、別に気にして無いデスよ? アレは僕を気遣っての事だとちゃんと分かってマスから。むしろこっちがゴメンね、心配かけて」「お兄ちゃん、お゛兄ちゃん、お兄ぢゃん、おに゛ぃちゃぁぁぁん」「よっ、よーしよーし、大丈夫だよー。お兄ちゃんは元気――では無いけど、命に別状は無いよー。………たぶん」「………………すいません。私も抱きつきたいんですけど……………腰が抜けました」「うんまぁ、早苗ちゃんに抱きつかれると男の子として大変困る事になるから、そのままで良いですじょ?」 ちょっとアレな話になっちゃうけど、実際の所下半身さんは絶賛スリープモード中なので特に問題は無いんですけどね? そこはほら、身体がアレでも心がアレになると言うか……まぁ、色々と察してください。 と言うか、一向に宥められる気配が無いんだけど。どーすんのコレ、どうすればいいの僕。 あ、ちょっとアリスさん。ざまぁ見ろ的な御満悦スマイルを浮かべてないで助けてくださいよ。 フランちゃんなんか、さっきからお兄ちゃんとしか言って無いんですよ? え、自業自得? 返す言葉もありません。「……何やってるのよ貴方達。一応そいつは怪我人なんだから、もっと丁寧に使ってくれない?」「あ、姉弟子良い所に! この混沌とした場に是非救いの光を!!」「貴方も、馬鹿な事言ってないで大人しくしてなさい」「……はぁい」 救急箱片手に現れた姉弟子は、テキパキとしがみついた二人を引き剥がし僕の身体を簡単に確認する。 さすがは医療関係者、こういう時の頼もしさは尋常じゃ無い。 「まったく、医者としては呆れるほか無いわね、あんなスペルカード使うなんて。何? 自殺願望でもあったの?」「あはははは、面目無いっす。他に勝つ方法が思いつかなくて――って、何で姉弟子がその事を知ってるんですか?」「皆知ってるわよ。私が全部話したからね」「うわっ、紫ねーさま!?」「はいはい、紫ねーさまよ。お元気そうで何より」 僕の真横に生まれた空間のスキマから、にこやかな笑顔の紫ねーさまが現れた。 そして露骨に嫌そうな顔をするアリスと姉弟子。この嫌われっぷりはねーさまのデフォルトなのだろうか。 ……本人が全然気にしていない所を見ると、いつもの事なのかもしれない。 ねーさまの御顔には、何か特殊なコーティングがされてるんですかね?「失礼しちゃうわね、こんなにも繊細な私を捕まえて」「す、すいません。……ところでねーさま、何故にここに?」「あらあら、色々聞きたいだろうと思って来たんだけど。迷惑だったかしら?」「いえ、正直とってもありがたいです。とりあえず聞いておきたいんですが―――勝負の方はどうなったんですかね?」 まずはそこをはっきりさせておかないと、落ち着いて治療を受ける事も出来やしない。 僕の問いかけに、紫ねーさまはやれやれと肩を竦めて答えた。「――勝負は貴方の勝ちよ、おめでとう。気を失っても、あんな身体になっても、スペルブレイクせず立ち続けた貴方の執念の勝利ね」「いやぁどーも……あんな身体?」 え、なにそれこわい。 紫ねーさまの不吉な物言いに、思わず自分の身体を見つめ直す。 全身包帯に覆われて中身がどんな風になっているかは分からないけど、伝わってくる感覚におかしなものは無い。 問題は無いと思うけど……皆なんで明後日の方向を見てるのん? 助けを求める様に視線を巡らせていると、何とか目の合ったレイセンさんが渋々と言った感じで説明を始めた。「……ここに連れ込まれた時の貴方は、かなり深刻な状態だったのよ。それこそ、蓬莱人にするか吸血鬼にするか眷属神にするかの議論が真っ先にされるくらいにね」「人間止めるの前提!? と言うか、永遠亭に色んな人が集まり過ぎてる気がするのですが!?」「色々あったのよ。だけどそのおかげで、貴方は‘人間’のまま回復出来たの。どれか一つでも欠けていたら、今の貴方は無かったわね」「――今、改めて無茶な事をしたんだなぁと自覚致しました」「遅いわよ、大馬鹿」 ああ、皆の冷やかな視線がさっきの倍痛いです。 紫ねーさまはニヤニヤしてるけど、どちらにせよ居た堪れない事には変わりない。 ……あのスペルカードは、二度と使わない様にしよう。そう心に誓った次第でした。 「さて、まだまだこの超馬鹿には言い足りない事がた・く・さ・んあるんだけど」「う、うぐぅ」「それ以上に言いたい事があるらしい貴方のねーさまに、この場は譲るとしましょうか。ほら、行くわよ」「ええっ!? あの私、晶君に何も出来てないんですけど!?」「何もしなくて良いから」「ちょっとちょっと、まだ診察の途中――」「後にしなさい」 人形で全員を持ちあげながら、アリスが溜息交じりに部屋から出ていく。 とりあえず、まだグズってるフランちゃんとにとりまで連れていくのは可哀想じゃありませんか?「……察しなさい、極限馬鹿」 あ、それくらい大切な話って事ですね。物分かりが悪くて申し訳ない。 残されたのは、ニコニコ笑ってはいるけどどこかバツの悪そうなねーさまと、何を言って良いのか分からない僕。 えーっと、これからねーさまの怒涛の説教タイムが始まると思って良いのでしょうか?「ふぅ、まさかあの子に気を遣われちゃうなんてね」「ひ、ひゃいっ! そうでしゅねっ」「そんなに慌てなくて良いわよ、貴方にお説教するつもりは無いから。……むしろ、怒られるのは私の方かもしれないわね」「と、言いますと?」 隙間から身を乗り出した紫ねーさまは、僕の前に静かに正座する。 纏う空気は以前と同じ‘幻想郷の管理者’のモノだが、気のせいかどこか強張ってる様にも見えなくは無い。 表情もいつもの胡散臭い笑顔から、微妙に目を伏せた真顔に移り変わっているし……どれだけ深刻な話をされるんだろうか。 僕が息を呑んだのに気が付いたらしい彼女は、膝に当てた掌にやや力を込めて、まるで懺悔するかのように言葉を紡く。 それは、彼女が今まで行ってきた‘暗躍’の暴露だった。「貴方を幻想郷の住人とするため、私は数々の虚言を弄したわ。本当は、貴方を幻想郷から追い出す理由なんて一つも無いのよ」 な、なんだってー。と、軽く驚いてみたものの、改めて思い返せばその兆候は各所に有った気がする。 チート山盛りてんこ盛りの幻想郷で、何故か一人だけ危険視される僕の能力。 僕が悩むのを待っていたかのようなタイミングで現れての釘刺し。 行動を起こしてくださいと言わんばかりの猶予をくれた上に、居なくても良い場所にワザワザ居てくれる親切さ。 ―――兆候どころか、茶番と称しても大袈裟で無いレベルの仕込みっぷりである。ねーさま苦労してたんだね。 あのスペカを使った僕をやたらと制止していたし、ねーさまのプランでは「勝っても負けてもなんやかんやで居座るのを認める」つもりだったのかもしれない。 なんか、「一億だ、きっちり払えるか」と尋ねておいて、はいと答えたら「その言葉が聞きたかった」とかツンデレる某白黒先生みたいだ。 まぁ、それに対して僕は「大丈夫です、生命保険入ってますんで! つーかもう割腹してます! がふっ」とかやらかしたんだけどね。 ……例えておいてアレだけど、何と言うか、ただの天然を通り越して何かしらの悪意すら感じる行為だ。やったの僕だけど。 しかし、最初から僕を幻想郷に囲う気だったと言う事は、即ち――「そのための準備は、本当の意味での初対面の時から始まっていたの。――私は、始めから貴方の祖父にあの約定をさせるために現れたのよ」「なるほど。あの時のやたら釣れない態度は、僕の‘価値’を悟らせないためのブラフだったと。……外国観光地で必須の値切りテクニックみたいなモノですね」「間違っては無いけれど……軽いわね」 拍子抜けした様子で、紫ねーさまが苦笑する。 まぁ確かに、長年信じていた保護者が実は――と言う衝撃展開を聞かされた割には薄い反応だろう。 いや、一応言っておくとこれでも大分驚いてはいるのである。 特に「ねーさまうそつかない」とまで豪語していた彼女への信頼は大暴落だ。リーマンショックの時の日本企業くらい株価が下がったんじゃないだろうか。 とは言え、じゃあねーさまを軽蔑したかと聞かれると別にそんな事も無いワケで。 勝手に思い込んで勝手に尊敬してたのはこっちだし、今までお世話になっていた事実が変わるワケでも無いし。まぁ、要するに。「ぶっちゃけワリとどうでもいいです、その話」「……どうでもいい。私が、糾弾されるのを覚悟で話した真実が、どうでもいい」 僕の淡白過ぎる反応に、目に見えて凹むねーさま。 何だか急に親しみ易いキャラになったけど、こっちがねーさまの素だったりするのだろうか。 思い返せば、確かにそういう片鱗もボチボチ見えていた気がする。そうか、ねーさまって萌えキャラだったのですね。「はぁ、もっとショックを受けるかと思っていたのだけど……幻想郷で随分と成長したのね、晶ってば」「どうでしょう。正直、あんまり関係無いと思います」「あらあら、大きく出たわねぇ。そのくらい予想済みだったとでも言うつもりかしら?」「いーえ。―――多少裏があった所で、紫ねーさまが僕のねーさまである事に変わりは無いと分かっているだけですよ」 本人はきっと否定するだろうけど、ねーさまはちゃんと僕の事も気にかけていてくれたのだ。 だから、仮初の能力をわざわざ「外の世界では扱い辛い」モノにした。 だから、幻想郷を探す時に、何の手助けもしようとしなかった。 だから、僕が幻想郷に辿り着いてからも、その行動に介入しようとしなかった。 そう、もっと楽に引き込めるやり方があったにも関わらず、それを選ばなかった事が。 何度も‘引き返せる’チャンスを用意してくれた事が、僕の保護者として最大限譲歩してくれた事を間接的に証明しているのである。「なので僕としては、これからもねーさまにはねーさまで居て欲しいかなぁ……と思う次第であります」 出来る限り図々しく聞こえない様に、僕はねーさまの瞳を覗きこんだ。 唯一の懸念事項はそこである。幻想郷の一員となった以上、紫ねーさまが僕の保護者であり続ける理由はもう無い。 せめて今まで通り、数か月に一度のペースで会うくらいはしたいんだけどなぁ。 そんな風に考えていた僕の希望は、次の瞬間あっさりと裏切られた。……いい意味でなのか悪い意味でなのかは分からないが。「もちろんよっ! これまで通りどころか、これまで以上に可愛がってあげるわっ!!」「わ、わぷっ、ねーさま!?」 感極まったと言った様子のねーさまに凄まじい力で引き寄せられ、僕の頭は彼女の胸元に抱きかかえられた。 所謂、幸せ固めと言うヤツである。気持ち良いのに苦しいとはこれ如何に。 ――いや、そうじゃない。物凄く浸っていたいけど、今は幸せに溺れている場合じゃない。 ねーさまは僕の顔を胸の中に沈めたまま、わしゃわしゃと豪快に体中を撫でまくる。 それはどこぞの姉を彷彿させる動きであり――僕の知るクールな保護者が絶対にしない行動であった。 え、なにこれ。どういう事なの?「もう、黒幕ぶって自分を抑えなくても良いのね! 晶をモフモフ出来なくて、涙で枕を濡らす日もこれで終わりよ!!」「え、えっ、え?」「これからは、本家本元の姉として二代目のポジションを奪っていくつもりなのでよろしくね? とりあえず、私の事は「ゆかねぇ」って呼びなさい♪」「いや、ねーさまって呼称には僕もわりと愛着があるんですが。と言うか、二番煎じは無個性の始まりですよ?」 我ながら良く分からないツッコミを入れつつ、余りの展開に呆然とする僕。 まさか、本当にまさかの姉馬鹿二号爆裂誕生である。……いや、本人の弁を認めるならこっちが初代なのかな。心底どうでもいいけど。 某動物王国国主の如き撫で廻しを行っているねーさまからは、すでにさっきまで漂っていたカリスマオーラが沈没前の鼠みたいな勢いで逃げ出している。 何て言うか……サヨウナラ、最後に残っていた僅かばかりのシリアス。コンニチハ、いつも通りのドタバタな日々って感じだ。 お願いなんで、誰でもいいから何とかしてくれませんかね。「―――ちょっと待ったぁぁ!」 あ、ゴメン。嘘、今の嘘。人は選びます。主に姉とか姉とか姉とかは除外してください。 襖を勢い良く開けて現れた文姉の姿をぼんやりと眺めながら、僕はこれから巻き起こるであろうカオスの坩堝に思わず遠い目をしてしまう。 案の定、姉と姉は己の尊厳をかけ全力の口合戦を始めるのだった。……合間に僕を挟んで。「『名称:保護者』は引っ込んでいてください! 私こそが晶さんの正式な姉、オンリーワンシスターなのです!!」「ふん、所詮貴女は口先だけの姉! 法律的にも立場的にも家族である、真の姉即ちトゥルーシスターの敵では無いわ!!」「……楽しそうね、貴方達」 僕はそうでも無いです。 呆れ顔で皮肉を漏らす幽香さんをガン無視して、謎の主張を重ねる二人の姉。 しかし僕にとっては不幸な事に、名乗りを上げたのは姉だけではなかった。 幽香さんの後ろから、ドカドカと大量の魑魅魍魎達が突入してくる。「ええいっ、いい加減にせんか貴様ら! 久遠晶は紅魔館で副メイド長兼教育係兼門番をすると運命で決まっているのだ!!」「過労死するわよ。そんな実りの無い仕事をするくらいなら、このままここで薬師をしていた方がずっと良いわ。……姫様のお付きも欲しかったし」「明らかに後半が本音だろうが。それより、幻想郷に正式に住むと言うのなら是非とも人里に来るべきだ。晶は教師の仕事ぶりも中々に好評だったしな」「ふん、この男が人里なんぞに馴染めるとは思えんわ。……まぁ、アレだ。早苗一人だけだと色々と大変だから、雑用係としてなら置いてやっても構わんぞ」「あ、あのぉ……すまんが天狗の手伝いを…………ナンデモナイ」 果たしてどこに隠れていたのやら、突然現れひたすらに場をかき乱す僕の友人達。 さっきからずーっと気になってたんだけど、何で皆永遠亭に揃ってんのさ?「貴方が寝込んだから、宴会の場所が変わったのよ。一応全員来てるわよ。……ほとんどが、酔っ払って話にならない状態だけどね」 僕の疑問に、幽香さんがコメカミを抑えながら答えてくれる。 なるほど確かに襖の合間から覗いて見える庭では、乱痴気騒ぎとしか呼べない宴が行われていた。 幽香さんの言い方からして、僕に気を使って場所を移してくれたんだろうけど……何故だろう、全然嬉しくないや。 と言うか、率先して楽しんでる黒白いのとか赤白いのとかサボり死神さんとかは絶対僕関係無いですよね。ただ騒ぎたかっただけですよね。「お兄ちゃぁぁぁぁああああん!!」「アキラぁぁぁぁぁぁぁあ!」「あーもう、後少しくらい我慢してなさいよ! と言うか、あの中に突っ込むなんて私絶対に嫌よ!?」「そういわずに、お願いですから連れて行ってくださいよぉ~」「アンタはいつまで腰を抜かしてるの!?」「……どうでもいいから、とっとと診察させてくれない?」 ああもう、どこもかしこも騒がしい事この上ない。 何とか不毛な論争の場から芋虫の様に這いずって逃げ出してきた僕は、部屋の隅っこで大きく溜息を吐いた。「はぁ、もう滅茶苦茶だなぁ」「ふふふっ、そうね。でも、幻想郷らしい騒がしさよ」 同じく部屋の隅に避難してきた幽香さんが、僕の愚痴にニヤリと笑ってそう皮肉る。 確かに。皆揃って好き勝手やってるこの光景は、幻想郷の縮図であると言えるのかもしれない。 ……住人にはなれたけど、このノリに慣れるにはもうちょっと時間がかかりそうだなぁ。 等と考えていると、意地悪な笑みを浮かべた幽香さんが僕に話しかけてきた。「そうそう、危うく忘れる所だったわ。晶、ちょっと良いかしら?」「なんですか? ……出来れば、肉体労働系の言い付けは当分止めて頂きたいのですが」「さすがにそこまで鬼じゃないわよ。――ただ、幻想郷の住人となった貴方に、今の気持ちを聞いてみたいだけよ」「そうですね、私もそこは大変気になります」「うわっ、文姉!? ……ねーさまとの姉争いはもう良いんですか?」「何やら話が所有権の問題に移ってきまして。私は晶さんがどこの所属になろうと気にしないので、大人しく抜けてきたのですが」 あ、本当だ。幻想郷のトップ陣が固まって何やら話あっている。 恐らくは身に余るほどの光栄なんだろうけど、残念ながら湧いてくる感情はネガティブなモノオンリーだ。 どんな結論に至るかは分からないけど、きっとまた今後もロクでも無い目に遭うに違いないだろう。 結局、お客様待遇が無くなろうと、僕の扱いが根本的に変わるワケでも無いらしい。 ……それでも、変わるモノはきっとあるんだろうけど。 「ささ、一言どうぞ」「少しは気の利いた事を言いなさいよ?」 ずっと僕の面倒を見てきてくれた二人が、差異こそあれど同じ意味の笑顔を浮かべて僕を見つめてきた。 少しの間考え込んだ僕は、二人と同様の笑みを浮かべて‘感想’を口に出す。「そうですね。色々と言いたい事はありますけど、とりあえずは……」 世は並べて事も無し。平和に、無事に終わった物語の締め言葉は、いつの世も一つと決まっているのだ。そう―――東方天晶花 ~とうほうてんしょうか~巻の結「めでたし めでたし」~The fantasy continues~ ◆あとがきっぽいモノを読みますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【最後に教えろっ! 山田さんっ!!】山田「はいはい、宴会会場からこんばんわ。トリを務めます山田さんです」腋巫女「いきなり何よ。と言うかあそこで伸びてるアンタの部下はほっといて良いの?」山田「羽目を外し過ぎた罰です。まぁ、これからは私が思う存分外すワケですがね!」腋巫女「……あ、そう。じゃあ私はコレで」山田「待ちなさい新アシスタント。邪神の電波を受信できる貴方を逃がすと思っているんですか」腋巫女「ああ、やっぱりそうなるのね」山田「とりあえず、邪神から新しい電波が送られてきていないんですか? と言うか送らせなさい、何としても」腋巫女「えーっと……『こんなに長くなるとは思わなかった、そして出来るとも思って無かった。皆様応援ありがとうございます』だって」山田「至極平凡ですね」腋巫女「芸は無いわね。どうでもいいけど」山田「まぁ、まったく期待して無かったのでもうこれで良いです。それでは、最後の質問に参りましょうか」腋巫女「アンタもやるのね、それ……」山田「むしろ私が元祖ですよ。あれはあくまで代役です」 Q:結局、第二期はやるんですか?腋巫女「第二期って何よ」山田「メタ的に言うと、新規スレッドで始める新しいお話です。内容は緋想天以降の異変をなぞる事になりそうですが」腋巫女「メタ? スレッド? 緋想天?」山田「けっ、最後までカマトトぶりますか貴方は」腋巫女「何の事よ。と言うか態度悪過ぎよ、いつものアンタらしくない」山田「私はあくまで山田なのでオール問題無しです。で、例の邪神はこれに関して何か言ってますか?」腋巫女「言ってるわね。『正直続けたいけど、続けて良いのか悩んでる』だそうよ」山田「優柔不断め。もうすでに大まかなプロットを作ってる癖に」腋巫女「……ぷろっと?」山田「ちなみに、二期があるとしたらこんな感じになるみたいですよ?」 「色んなヤツに話を聞いてはみたんだけど、全然分からなかったからさ。直接本人に聞く事にしたんだぜ!」 「それと僕が拉致られてる事に、何の関係があるんですかっ!?」 「大丈夫、ちょっと借りるだけさ。私が死ぬまでな」 「僕の身体はレンタルしてませんよ!?」 「いつの世も、悪の栄えた試しは無い! 朱点華蝶、ただいま参上!! ――ってね」 「……知り合いか? 人形華蝶」 「………まぁ、顔見知りではあるわね。本当に知ってるだけだけど」 「あっはっはっはっは、固い事は気にしなさんな。華蝶同士仲良くしようさ! ……ヒック」 「いい加減にしなさいよ! アンタ達、私の事を何だと思っているの!?」 「―――馬鹿」 「―――えーっと、不良さん?」 「オッケー、二人ともそこに並びなさい。私の剣の錆にするから」 「ちょっと待ってちょっと待って霊夢ちゃん!? どこに連れて行かれるの!? 僕は何をされるの!?」 「良いから、黙って頷きなさい。それ以外の返事は認めないわよ」 「本当に何事なの!? 少しくらい説明してよ!?」 「――貴方、私と付き合いなさい」 山田「尚、本編の内容は警告無く変わる場合があります。御注意を」腋巫女「本当に何の話なのよ……」山田「後、作者はヘタレで臆病者なので、感想掲示板に『二期希望』ってたくさん書いて頂けた方がヤル気になれます。面倒でしょうが御協力を」腋巫女「ああ、これは分かるわ。乞食行為よね」山田「身も蓋も無い事を言えばそうです。まぁ、どちらにしろ番外編と言う名の妄想アフターストーリーは二話ほどやる予定ですが」腋巫女「今、邪神から何か挨拶っぽいものを受信したわ。面倒だから無視したけど」山田「そうですね。ルール無用の山田さんで最後まで意見が通ると思われても困ります。このまま終わらせて貰いましょう」腋巫女「じゃあ、私はそろそろ飲みに戻るわね。黒白いのも兎と語り合うのに飽きた頃でしょうし」山田「お疲れ様でした。では皆様、『第二期だよ! やっぱり教えろ山田さん!!(仮称)』でお会いしましょう」 じ・えんど?死神A「………さ、最後の最後で出番無しって……………どんな嫌がらせですか……がくっ」