幕間「誰が為に鐘は鳴る」「藍様、久遠さんが移動を開始しました」「そうか。……やはり、な」 太陽の畑を一望できる小高い丘の上で、私と橙は彼らの動向を窺っていた。 紫様が目を付けていた『外の世界に在ってはならない力を持つ者』――久遠晶。 その力の暴走を懸念した紫様は、ヤツから幻想郷に関わる全ての記憶を消し、ここから追放する事を決定した。 ……ふん、素直に従うつもりは無いだろうと思っていたが、想定した以上に行動が早かったな。 「行くぞ、橙。奴等を紫様の所に行かせるワケにはいかん」「え? でも藍様、紫様は「久遠さんの動きを調べたら戻ってこい」って……」「紫様の手を煩わせることも無い。あ奴は、私達の手で処断する」 初めて見た時から、ほとんど直感的に確信していた。 あの男は、紫様の庇護下にありながらその恩恵を何一つ理解していないと。 最後の温情すら蹴ったあの男を、私はこれ以上見逃す事が出来なかった。 ヤツが幻想郷の安寧を揺るがすと言うなら、私が奴を始末する。 それが、紫様の式としての私の役割だ。「分かりました! 私も精一杯、藍様のお手伝いをします!!」「ああ、少しの間で良い。鴉天狗と花の妖怪の足止めをしてくれ。その間に私が奴を倒す」 久遠晶の実力は未知数だが、覚醒したてのヤツが真の能力を使いこなせない事だけは確かだ。 そう育つよう、紫様はヤツの祖父やヤツ自身を誘導していたのだから。 今のヤツならば、私の力でも倒す事が出来るだろう。「――随分と気負ってるじゃない。独断専行は、式として褒められたモノじゃないわよ?」「――うーん、式は妖怪にカウントして良いのでしょうか? 相手が妖怪でないといまいち調子が」「っ、何者だ!」「何だかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情け!」「偶々通りすがった、ただの魔法使いよ」「アリスさぁん、そこは合わせてくださいよぉ」「……知らないわよ、貴女の意図なんて。そもそも私達は偶然ここに居合わせただけでしょう?」「ニャーンテニャ」 漫才の様なやり取りを交わしながら現れたのは、守矢神社の風祝と七色の人形遣いだった。 ……確かどちらも、久遠晶との親交が深い人物だったはず。 だとすると、このタイミングで二人が‘偶々’現れたのは偶然ではないだろう。 私は静かに身構え、無言で橙へと警戒を促した。「一応確認しておこう。……何の用だ」「月夜の散歩よ。新しい人形の試運転も兼ねた、ね」「文さんから、晶君が何かやらかすと聞いたので! 親友として手助けに参りました!」「……貴方のその明け透けさを、今ほんの少しだけ羨ましく感じたわ」「ありがとうございます!」 ふん、双方目的は同じと言う事か。 幻想郷にとっては危険人物でも、人受けの方は悪くないらしい。 守矢の現人神は御幣を構え、魔法使いは人形を展開し、互いに戦う意思を露わにしている。「久遠晶は、幻想郷の平穏を乱す危険人物だ。それを承知の上でヤツに味方すると言うのか?」「もちろんです! この私に、幻想郷の常識は当てはまりませんよ!!」「‘これ’と同じ意見って言うのが凄いシャクだけど、そうよ。常識云々は関係無くね」 ふん。この程度の忠告で躊躇う様なら、始めから立ち塞がるはずが無いか。 それならそれで構わないさ。――こちらも遠慮無く、貴様等を叩き潰す事が出来るからな。「承知した。ではこれから、お前達を排除させてもらおう。……久遠晶を倒す前にな!」 その宣言に合わせて、私は橙に後方へと飛ぶよう指示を飛ばした。 同時に、私もクナイ型の弾幕を二人に向かって放つ。 私と橙――と言うより式神とその主は、会話をせずとも念じる事で意思の疎通を図る事が出来る。 純粋な実力だけで考えれば、未熟な橙を連れている分こちらの方が不利だろう。 だがこれが、二対二の‘タッグマッチ’となるのなら話は別だ。「上等よ、上海!」「オレ、コノセンソウガオワッタラケッコンスルンダ」「弾幕には弾幕です! ――って、ああっ!?」「ドウミテモフラグデシタ、ホントウニアリガトウゴザイマス」 こちらの弾幕に合わせて、魔法使いが二体の人形を展開する。 しかしその二体は、こちらに攻撃を飛ばす前に風祝の弾幕を受け吹き飛ばされてしまった。「ちょっと、私の人形に何をやってるのよ!」「す、すいません。けど、弾幕は急に止められませんよぉ~」 私の弾幕自体は風祝の弾幕で相殺出来たが、代わりに相性の悪さを露見させたな。 どうやら本人達の言っていた通り、二人が同時にここへ現れたのはただの偶然であるらしい。 ならば当然、連携する事など想定していなかっただろうし、出てきたタイミングを考えれば話し合う時間も一切無かったはずだ。 例え実力で劣っていても、同期の取れていない相手ならば私と橙の敵では無い。「……しょうがないわね。守矢の巫女! 貴女、前衛は出来る!?」「えっとその、私、あんまり殴り合いは……」「なら、貴女は後方から援護! もう誤射はしないでよ!」「あ、アリスさぁん!?」 なるほど、前衛後衛をはっきり分けて戦うつもりか。 確かにその方法なら、先程の様な同士撃ちは避けられるだろう。 連携の方は相変わらずだが、互いが邪魔をしなければ後は力量差で何とかなる――とでも思っているのだろう。 まったくもって、度し難い認識である。 ……八雲の名を持つ私の式を、海千山千の妖猫と一緒にして貰っては困るな。「橙!」「はいっ!!」「なっ!?」 距離を詰めた人形遣いが放ってきた人形を、後方から飛んできた橙が全て叩き落とす。 ふん、如何に不得意の無い万能型を謳う貴様でも、妖怪の腕力と真正面からぶつかって勝てるワケではあるまい。 そして橙により攻め手を奪われた今、無暗に接近した貴様は格好の餌食だ! ―――――――式神「仙狐思念」 人が丸ごと入れてしまいそうな巨大な弾丸を、私は人形遣い目掛けて放つ。 中に無数の弾幕が詰められたソレを、至近距離で喰らえばどうなるかは想像に難くない。 それでも咄嗟に反応し防御を固める所はさすがだが、ダメージを受ける事は避けられないだろう。 始まって早々で悪いが、貴様にはこれで退場してもらうぞ。 「っ、危ないです!」「きゃあ!?」 しかし私の弾幕が命中する前に、真横から放たれた一発の弾丸により魔法使いの身体が吹き飛ばされた。 ちっ、守矢の巫女め、思い切りの良い真似を。 場慣れしていないと聞いていたが、まるっきり戦いを知らないワケではないらしい。 ――だが、私の弾幕はここからが本番だ。 巨大な弾丸が弾けると同時に、中に詰まっていた弾幕が幾何学模様状に広がっていく。 先の弾丸に近かった程被弾率の高くなる弾幕だ。致命傷を避けたとしても、二人がダメージを受ける事は確実だ。「アリスさん、人形をこっちに!!」「――分かったわっ、上海!」「ワタシヲウケトメテー」「引っ張ります! 糸を巻きとってください!!」「くっ、離さないでよ?」「もちろんです! そしてこれで――」 ―――――――秘術「忘却の祭儀」 風祝の近くに人形遣いが引き寄せられるのと同時に、二人の周囲に星型の結界が発生する。 さすがは現人神にまで祀られた秘術の遣い手、防御結界程度はお手のものと言う事か。 私の弾幕は、全て守矢の結界に阻まれてしまった。 「藍様、私が仕掛けますか?」「……いや、必要無い。スペルカードである以上、あの結界も時間が来れば消えるはずだ」 攻撃を重ねれば破壊する事も可能かもしれないが、あの強度だ。こちらの消耗も馬鹿にならんだろう。 私はスペルブレイクし、相手の次なる行動に備えた。「だ、大丈夫ですか? 思いっきり顔から突っ込んでましたけど……」 「……辛うじてね。ありがと、助かったわ」「い、いえ、こちらこそすいません!」「謝らなくて良いわよ、今のは迂闊に近づいた私のミスだもの。あの妖猫を式の式だと侮り過ぎていたわね」「そうじゃなくて……その、アリスさんの援護を出来なくて……」「そっちも、悪いのは私だから気にしなくて良いわ。ちなみに今更だけど、貴女援護得意?」「そもそも複数で戦うのが初めてです!」「……そういえば貴女って晶より新参なのよね、正直忘れてたわ」 作戦会議――している様には見えんな。ただ話しているだけか。 だがこの猶予、少々面倒な事になるかもしれん。 何より、時間をかけ過ぎるとそれだけヤツの討伐が難しくなってしまう。 やはり仕掛けるか。何発か弾丸を当ててやれば、結界の弱い部分も見えてくるだろう。「でも、どうしましょうか。連携して戦うのもダメ、どちらかが近付いて戦うのもダメだなんて」「………くっ」「どうしました? やっぱり顔、痛かったですか?」「顔は大丈夫。ただちょっと、「こんな時にアイツがいれば」と考えた自分に腹が立っただけだから」「ああ、晶君の事ですね!」「……認めたくないけど、そうよ」「確かに居てくれたら助かりますよねぇ。神奈子様とも五分に戦ったそうですし―――あ、そうです!」 何かを思いついた様子の巫女が、魔法使いの耳元に何事か囁いた。 人形遣いは最初怪訝そうな顔をしていたが、彼女の話を聞き終えると呆れ顔で肩を竦める。 「滅茶苦茶な作戦ね。考案者の性格が良く分かるわ」「でも、今の私達には一番有効な作戦だと思いますよ!」「……確かに。それじゃあ時間切れを待つのもシャクだし、とっととアイツら倒しに行きましょうか!」「はいっ!!」 こちらが弾丸を放つよりも早く、風祝が自らを守る結界を解除した。 そして同時に、人形遣いがこちらに向けて駆け出してくる。 また近接戦闘を仕掛ける気か? 先ほどの相談で、何か打開策を見つけて? 橙に念で警戒を促し、私達は来るべき相手の攻撃に備える。 だが魔法使いは我々を無視し、そのまま後方へと駆け抜けていった。 ――まさか挟撃? 数を撃つ弾幕ごっこで、しかもロクに連携の取れぬ状態で? 馬鹿な、誤射するのが目に見えているぞ。「皆、弾幕よ!」「ワタシタチノウタヲキケー!」「さーて、どかんと行きますよー!」 こちらの疑問を嘲笑うかの様に、巫女と魔法使いが弾幕をばら撒く。 両側から迫る大量の弾幕。一人ずつならそうでもないが、合わさると下手なスペルカードよりも激しい。 ちっ、この場に留まって避けきるのはさすがに無理か。 「橙、飛べ!」「はいっ!」 弾幕の被害圏内から離れるため、私と橙はその場から飛んで逃げようとする。 しかしそんな私達を再び挟みこむ様に、魔法使いと巫女は弾幕を放ちながら移動を始めた。 双方、互いの弾幕が互いにも向かっている事は一切頓着していない。 どういう事だ? 仲間割れしている……風には見えんが。「くっ、相討ちが怖くないのか貴様ら!?」「関係無いわ。生憎だけど、二対二はとっくに止めてるの。今は一対一対二よ!」「なんだと!?」「晶君直伝――ではありませんが、神奈子様にも有効だった手です。名付けて「敵の敵はやっぱり敵」大作戦!」 そう言う事か、厄介な。 共闘し連携を図るのではなく、互いを‘戦わない敵’として扱い、始めから連携を捨てるとは。 確かにこれなら、相手に気を使う必要は無い。 いやそれどころか、私達にとってはこの上なく不利な状況だ。 相手も「自分以外が全て敵になった」と言えば、我々の方が有利になった様にも聞こえなくは無い。 だが、弾幕ごっこをする者にとって「四方から攻撃される」状況も「複数から攻撃される」状況も有って当然の話なのだ。 決して普段より、不利な状況になったと言うワケでは無い。 「そして我々は、常に二人からの弾幕に晒されると言うワケか」 形の上では乱戦になったとはいえ、二人の目的はあくまで同じだ。 下手な策を弄した所で、本当の意味で「一対一対二」になる事はまずあり得ないと考えて良いだろう。 だとすると残った手段は……分断して、各個撃破を狙うくらいか。 確かに不可能ではないし、このまま戦うより勝率は上がるだろう。だが、問題は……。「藍様、その案で行きましょう」「橙、しかしだな……」「大丈夫です! 花の妖怪や鴉天狗を相手に時間稼ぎをする事を考えれば、このくらい!!」「馬鹿な事を言うな、目的が違い過ぎる。奴等と違って数分持たせれば良いと言うワケでは無いのだぞ?」 もちろん、久遠晶を過小評価するつもりは無い。だが想定していた状況と現状では、幾らなんでも条件が違い過ぎる。 私がヤツとの戦いで狙っていたのは、不意打ちを主眼とした一撃離脱の戦法だ。 当然、橙の時間稼ぎも言う程大したものではない。相手の注意を引く役割の方が重い位だ。 「藍様が言ってくれたんじゃないですか。八雲の名を持つ藍様の式を舐めるなって」「……橙」「命じてください、久遠さんを倒すためにも! 藍様が勝つ時間くらいは稼いでみせます!!」 橙が二つある尾を逆立て、戦う意思を私と二人に訴える。 そんな彼女に、私が命じようとしてかけた言葉は何だったのか。 残念ながらそれは、誰にも理解する事は出来なかった。 唐突に、第三の闖入者が現れた事によって――「お前達ぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいっ!!」 弾幕勝負を遮る様に、一本の炎の剣が地面に突き刺さる。 剣のやってきた方向に顔を向けるとそこには、月を背景に二本目の炎剣を掲げる宝石の様な翼を持った少女が居た。 片側を束ねた金色の髪に、狂気――いや、むしろ底知れない怒りに満ちた赤い瞳。……まさか、ヤツは紅魔館の『悪魔の妹』か!?「お兄ちゃんに、何をする気だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああっ!!」「あぅあぅ、何もしません何もしません! 私達はむしろ晶君の味方です!!」 「……安心なさい。どうやら私達は、始めから眼中に無いみたいよ」 魔法使いの言うとおり、悪魔の妹の殺意は全てこちらに向けられているようだった。 黙って様子を窺っていた……等と言う、器用な真似が出来るタイプには見えない。 恐らくは、本当の意味で‘偶々’通りがかったヤツに、運悪く橙の言葉を聞かれてしまったのだろう。 こちらにとっては最悪の闖入者だ。背筋が凍る。幻想郷最強クラスの看板に嘘偽りは無いらしい。 先ほどまではやる気になっていた橙も、吸血鬼から向けられる殺意にすっかり縮こまってしまっている。 ――この状況下で、私達が勝つ事はまず不可能だ。 そう即座に判断した私は、念にて橙へ撤退の意図を伝えた。 なりふりは構っていられない。まずはこの場から離れて、どうにか体勢を立て直さないと―――「おっと、この隙を逃すと面倒になりそうね。悪いけどここで決めさせて貰うわ」 こちらが動き出すよりも一瞬早く、人形遣いがどこからか一体の人形を取り出した。 黒い髪を束ね、脇の露出したメイド服を来たその人形は、まるで……。 ―――――――氷鏡「極寒の水晶人形」 閃光が、私達の身体を瞬く間に撫ぜた。 ダメージらしきものは無い。だが、次の瞬間私と橙の身体は氷の楔に囚われてしまう。 ……何だこれは、‘私達の霊力’が凍らされているだと? 力を込め頸木を解こうと抵抗するも、私達を縛る氷はピクリとも動かない。 馬鹿な。概念すら凍結させる、冷気の魔法など聞いたことも無いぞ!「あ、アリスさん、今のって……」「ふふん。以前の宴会で晶にブチかまされた後、こっそり‘参考’にさせて貰ったのよ。魔法使いは勤勉で無いとね」 なるほど、これが久遠晶の使う『凍結の光』か。 威力を犠牲に凍結属性の強化を図ったと聞いていたが、まさかこれほどとは。 脱出は……難しそうだな。「あれー、もう終わっちゃったの?」「ええ、貴女が注意を引きつけてくれたおかげでね。……だから、暴れる必要は無いわよ」「ツマンナイなぁ。コイツ等なら、キュッとしても大丈夫だと思ったのに」「……そうされると困るから、早めに手を打っておいたのよ」 余りにあっけない幕切れに戦意を奪われたのか、素に戻った吸血鬼が残念そうな顔でゆっくりと降下してきた。 風祝も納得がいかないのか、怪訝そうな顔でこちらを睨みつけている。「とりあえず、このキツネさんはもう大丈夫なんですか?」「このまま見張っていれば、下手な真似はしないでしょうね。けど、放置しておいたらどうなるかはさすがに保障出来ないわよ?」「ええ、そんなぁ!? それじゃあ晶君をお助け出来ないじゃないですか!?」「……晶の‘お守り’は、自称『保護者』共に任せれば良いじゃない。私達は、無粋な乱入者を抑える裏方で充分よ。ねぇフラン?」「んー……そのお人形を私にくれたら、そういう事にしても良いよ?」「え゛っ」「おーっ! それはナイスアイディアですフランちゃん!! その晶君人形、是非とも私達にも分けてください!」 ああ、やはりあの人形、久遠晶を模していたのか。 ……正直それがどうしたと言う感じだが、あの二人には事情が違うのだろう。 こちらの事を完全に無視して、異常な盛り上がりを見せる三人。 しかしさりげなく人形で監視もされているため、脱出のチャンスは結局の所無いようだ。 ……つまり我々は、ずっとこのどうでも良いやり取りを見させられるワケなのか。 「悪いけど、今の所量産は考えて無いの。色々と特別な部品も使ってるから、あげるなんてもっての他よ?」「なっ、独占ですか!? ちっちゃい晶君を、モフモフしたりクンカクンカしたり一人でやりたい放題天国ですか!?」「どこぞのダメ姉と一緒にしないでよ! そういう意図で人形を作った事は一度も無いし、今後も一生そんな人形を作る予定は無いわ!!」「ぶーぶー。私、お兄ちゃんを助けるために紅魔館壊したり美鈴倒したりしてここまで来たんだよ? 諦めるならそれくらいの対価貰っても良いと思うなぁ」「……形だけで良いなら、幾らでも作ってあげるけど――って、今さらっと聞き捨てならない事言わなかった貴女!?」「やた、言質とりましたよー!」「わーい! お兄ちゃんの人形ゲットー!!」「ああもうっ、圧倒的にツッコミが足りてないわっ! ツッコミぃーっ!!」「チャンチャンッ」 切実な叫びをあげる人形遣いに同情しながらも、私はこんな連中に負けたのかと慨嘆の溜息を漏らす。 とりあえず、式を通して紫様に連絡だけはしておこう。 身体が冷えたためか、毒気を抜かれたためか、必要以上に冷静になった私は、動かない肩を竦めるフリをしながらもう一度深い溜息を吐くのだった。 ―――せめて、橙だけは風邪を引かない内に開放して欲しいものだよ。 ◆白黒はっきりつけますか?◆ →はい いいえ(このまま引き返してください)【色々教えろっ! 山田さんっ!!】山田「前回のフリに関してはノーコメント、皆の山田さんです」死神A「そこはコメントしましょうよ……死神Aです」山田「じゃあとりあえず。私は上体操服下スク水のロリキャラであって肩幅ドゥではありません」死神A「何を拾ってるんですか!?」山田「あと、ワイバーンは特に好みでは無いです。角とか鱗とか羽根とか正直ウザイ」死神A「自分で言った要望を自分で否定した!?」山田「では早速、最初の質問です」死神A「もうこの無視もお馴染になっちゃいましたねぇ……」 Q:正直、山田様は死神Aをどう思ってますか?死神A「……どう思ってるんですか?」山田「なんですか? まさかギャグパート専門の私に「実は私、貴方の事が……」なんて謎展開を望んでるんですか? 馬鹿ですか? 死にますか?」死神A「そ、そこまで言わなくても良いじゃないですか。あたいはただ、どう思われてるのか気になっただけで」山田「マジレスすると「単なるアシスタント」ですね。貴女の代わりはいくらでもいる的な」死神A「想像以上にバッサリ切られたのに、あんまり痛くないのは何でだろう……」山田「実在の人物とは一切関係ないからでしょう。ここでの関係はここでだけしか適用されませんし」死神A「喜んでいいのかなぁ、それは」山田「まぁ、お情けで好意的に言うなら「代わりの無いツッコミ役」ですかね。代役、普通に何人も来てますけど」死神A「色んな意味で酷い台詞だ!?」 Q:晶はやりそうにないですが「『無』を『有』にする程度の能力」で能力持ちの生物を創ってその能力をコピーしたらほぼ無敵になるんじゃないですか?山田「そしてその結果、厄介な能力を持った生き物たちが野に放たれるワケですね」死神A「……消えたりとかしないんですか、そう言うの?」山田「だから、すでに有るモノは消せないんですってば。まぁ、自滅機能とかついてたら別でしょうけど」死神A「能力を覚えるためだけに作られた生き物ですか」山田「ゲームのラスボスがやってそうですね、特に露骨に外道なタイプとかが。反乱防止機能なんてのもついてそうです」死神A「ちなみに、質問の通り無敵にはなれるんですかね?」山田「勝つ時は勝つし、負ける時は負けるでしょう。どんな能力にせよどんな相手にせよ」死神A「……そんなもんですか」山田「そんなもんです。自分もチートなら相手も大概チートなんです、幻想郷は」 Q:山田さん、死神Aさん、日頃の激務でお疲れのお二方にプレゼントです つ「どこかの平行世界でみすちーの能力をコピーした晶君と騒霊トランペッターメルランが全力で謳うライブCD(八雲プロ)」山田「なぜみすちー本人を呼ばなかったし」死神A「身も蓋も無い!? つーか、質問じゃないですよねコレ?」山田「まぁ、そこは気にしない方向性で。……ところで、晶君って歌上手いんですかね?」死神A「それを山田様が聞くんですか? えっと確か、番外編で破戒音波を出して居た様な……」山田「作者的には、「鼻歌程度なら聞けるけど、マイクを持たすとアウト」なんだそうです。マイクと壊滅的に相性が悪いそうで、実際の上手さは不明だと」死神A「不明ですか」山田「作者が決めかねている。でも可」死神A「……それはひどい」山田「まぁ、どちらにせよ確定している事が一つありますがね」死神A「なんです?」山田「マイクを介して録音したであろうこのCDの出来は、凄惨極まるモノになっていると言う事ですよ。と言うワケで―――」死神A「わーっ、わーっ! 今日はここまで!! ここまででお願いしまーすっ!!!」山田「………ちっ」 とぅーびぃーこんてぃにゅーど